JP5091885B2 - 定着装置及び画像形成装置 - Google Patents
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Description
そして、定着ベルトがヒータによって加熱された金属部材によって加熱されて、ニップ部に向けて搬送された記録媒体上のトナー像がニップ部にて熱と圧力とを受けて記録媒体上に定着されることになる。
Bmax≧A>Bave
なる関係が成立するように形成されたものである。
図1〜図8にて、この発明の実施の形態1について詳細に説明する。
まず、図1にて、画像形成装置全体の構成・動作について説明する。
図1に示すように、本実施の形態1における画像形成装置1は、タンデム型カラープリンタである。画像形成装置本体1の上方にあるボトル収容部101には、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した4つのトナーボトル102Y、102M、102C、102Kが着脱自在(交換自在)に設置されている。
ボトル収容部101の下方には中間転写ユニット85が配設されている。その中間転写ユニット85の中間転写ベルト78に対向するように、各色(イエロー、マゼンタ、シアン、ブラック)に対応した作像部4Y、4M、4C、4Kが並設されている。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、露光部3から発せられたレーザ光Lの照射位置に達して、この位置での露光走査によって各色に対応した静電潜像が形成される(露光工程である。)。
その後、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、中間転写ベルト78及び第1転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kとの対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上のトナー像が中間転写ベルト78上に転写される(1次転写工程である。)。このとき、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上には、僅かながら未転写トナーが残存する。
最後に、感光体ドラム5Y、5M、5C、5Kの表面は、不図示の除電部との対向位置に達して、この位置で感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の残留電位が除去される。
こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上でおこなわれる、一連の作像プロセスが終了する。
ここで、中間転写ユニット85は、中間転写ベルト78、4つの1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79K、2次転写バックアップローラ82、クリーニングバックアップローラ83、テンションローラ84、中間転写クリーニング部80、等で構成される。中間転写ベルト78は、3つのローラ82〜84によって張架・支持されるとともに、1つのローラ82の回転駆動によって図1中の矢印方向に無端移動される。
そして、中間転写ベルト78は、矢印方向に走行して、各1次転写バイアスローラ79Y、79M、79C、79Kの1次転写ニップを順次通過する。こうして、感光体ドラム5Y、5M、5C、5K上の各色のトナー像が、中間転写ベルト78上に重ねて1次転写される。
その後、中間転写ベルト78は、中間転写クリーニング部80の位置に達する。そして、この位置で、中間転写ベルト78上の未転写トナーが回収される。
こうして、中間転写ベルト78上でおこなわれる、一連の転写プロセスが終了する。
詳しくは、給紙部12には、転写紙等の記録媒体Pが複数枚重ねて収納されている。そして、給紙ローラ97が図1中の反時計方向に回転駆動されると、一番上の記録媒体Pがレジストローラ対98のローラ間に向けて給送される。
その後、記録媒体Pは、排紙ローラ対99のローラ間を経て、装置外へと排出される。排紙ローラ対99によって装置外に排出された被転写Pは、出力画像として、スタック部100上に順次スタックされる。
こうして、画像形成装置における、一連の画像形成プロセスが完了する。
図2は、定着装置20を示す構成図である。図3は、定着装置20を幅方向にみた図である。図4は、定着装置20のニップ部の近傍を示す拡大図である。図5は、定着ベルト20と固定部材26との摺接部を示す拡大図である。
図2に示すように、定着装置20は、定着部材としての定着ベルト21(ベルト部材)、固定部材26、金属部材22(加熱部材)、補強部材23、断熱部材27、加熱手段としてのヒータ25(熱源)、加圧部材としての加圧ローラ31、温度センサ40、等で構成される。
定着ベルト21の表面層21a(内周面)は、層厚が50μm以下であって、フッ素を含有する材料で形成されている。具体的に、表面層21a(摺動層)を形成する材料としては、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフロオロプロピレン共重合体)等のフッ素樹脂材料や、これらにポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂を混ぜたもの、を用いることができる。なお、定着ベルト21の表面層21aについては、後でさらに詳しく説明する。
定着ベルト21の基材層は、層厚が30〜50μmであって、ニッケル、ステンレス等の金属材料やポリイミド等の樹脂材料で形成されている。
定着ベルト21の弾性層は、層厚が100〜300μmであって、シリコーンゴム、発泡性シリコーンゴム、フッ素ゴム、等のゴム材料で形成されている。弾性層を設けることで、ニップ部における定着ベルト21表面の微小な凹凸が形成されなくなり、記録媒体P上のトナー像Tに均一に熱が伝わりユズ肌画像の発生が抑止される。
定着ベルト21の離型層は、層厚が10〜50μmであって、PFA、PTFE、ポリイミド、ポリエーテルイミド、PES(ポリエーテルサルファイド)、等の材料で形成されている。離型層を設けることで、トナーT(トナー像)に対する離型性(剥離性)が担保される。
定着ベルト21の内部(内周面側)には、固定部材26、ヒータ25(加熱手段)、金属部材22、補強部材23、断熱部材27、等が固設されている。
ここで、固定部材26は、定着ベルト21の内周面に、フッ素グリス等の潤滑剤を介して摺接するように固定されている。そして、固定部材26が定着ベルト21を介して加圧ローラ31に圧接することで、記録媒体Pが搬送されるニップ部が形成される。図3を参照して、固定部材26は、その幅方向両端部が定着装置20の側板43に固定支持されている。なお、固定部材26の構成・動作については後で詳しく説明する。
そして、金属部材22は、ヒータ25の輻射熱により加熱されて定着ベルト21を加熱する(熱を伝える。)。すなわち、金属部材22がヒータ25(加熱手段)によって直接的に加熱されて、金属部材22を介して定着ベルト21がヒータ25(加熱手段)によって間接的に加熱されることになる。定着ベルト21の加熱効率を良好に維持するためには、金属部材22の厚さを0.1mm以下に設定することが好ましい。
金属部材22の材料としては、ステンレス鋼、ニッケル、アルミニウム、鉄、等の金属熱伝導体(熱伝導性を有する金属である。)を用いることができるが、その中でも単位体積の熱容量比(密度×比熱である。)が比較的小さいフェライト系ステンレス鋼が好適である。本実施の形態1では、金属部材22の材料として、フェライト系ステンレス鋼であるSUS430を用いている。また、金属部材22の厚さを0.1mmに設定している。また、金属部材22の外径(常温時の外径である。)が29.5mmに設定されている。
なお、金属部材22と定着ベルト21との関係については、後で詳しく説明する。
また、金属部材22と定着ベルト21とが摺接しても定着ベルト21の磨耗が軽減されるように、定着ベルト21の内周面には、フッ素を含む材料からなる表面層が形成されるとともに、双方の部材21、22の間にはフッ素グリス等の潤滑剤が塗布されている。さらには、金属部材22の摺接面を摩擦係数の低い材料で形成することもできる。
なお、本実施の形態1では、金属部材22の断面形状が略円形になるように形成したが、金属部材22の断面形状が多角形になるように形成することもできるし、金属部材22の周面にスリットを設けることもできる。
また、補強部材23における、ヒータ25に対向する面の一部又は全部に、断熱部材を設けたり、鏡面処理を施したりすることもできる。これにより、ヒータ25から補強部材23に向かう熱(補強部材23を加熱する熱)が金属部材22の加熱に用いられることになるために、定着ベルト21(金属部材22)の加熱効率がさらに向上することになる。
また、本実施の形態1では、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径とほぼ同等になるように形成したが、定着ベルト21の直径が加圧ローラ31の直径よりも小さくなるように形成することもできる。その場合、ニップ部における定着ベルト21の曲率が加圧ローラ31の曲率よりも小さくなるために、ニップ部から送出される記録媒体Pが定着ベルト21から分離され易くなる。
なお、本実施の形態1では、ニップ部を形成する固定部材26の形状を凹状に形成したが、ニップ部を形成する固定部材26の形状を平面状に形成することもできる。すなわち、固定部材26の摺接面(加圧ローラ31に対向する面である。)が平面形状になるように形成することができる。これにより、ニップ部の形状が記録媒体Pの画像面に対して略平行になって、定着ベルト21と記録媒体Pとの密着性が高まるために定着性が向上する。さらに、ニップ部の出口側における定着ベルト21の曲率が大きくなるために、ニップ部から送出された記録媒体Pを定着ベルト21から容易に分離することができる。
金属板を曲げ加工することにより形成する略パイプ状の金属部材22は、その肉厚を薄くすることができるために、ウォームアップ時間を短縮することができる。しかし、金属部材22自身の剛性は小さくなっているため、加圧ローラ31の加圧力に抗しきれずに、撓んだり、変形することがある。パイプ状の金属部材22が変形してしまうと所望のニップ幅が得られずに、定着性が低下するという問題が生じる。これに対して、本実施の形態1では、薄肉の金属部材22とは別に高剛性の固定部材26を設置してニップ部を形成しているために、そのような問題が生じるのを未然に防止することができる。
本実施の形態1では、定着ベルト21と金属部材22とがほぼ全周にわたって近接しているため、加熱待機時(プリント動作待機時)においても定着ベルト21を周方向に温度ムラなく加熱できる。したがって、プリント要求を受けた後、速やかにプリント動作をおこなうことができる。このとき、従来のオンデマンド方式の定着装置(例えば、特許第2884714号公報参照。)では、ニップ部で加熱待機時に加圧ローラを変形させたまま熱を与えてしまうと、加圧ローラのゴムの材質によっては、熱劣化を起こして加圧ローラの寿命が短くなってしまったり、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生してしまったりする(ゴムの圧縮永久ひずみは、ゴムの変形に加熱が加わることにより増大する。)。そして、加圧ローラに圧縮永久ひずみが発生すると、加圧ローラの一部が凹んだ状態になり、所望のニップ幅が得られないため、定着不良が発生したり、回転時に異音が生じたりする。
これに対して、本実施の形態1では、固定部材26と金属部材22との間に断熱部材27が設置されているために、加熱待機時に金属部材22の熱が固定部材26に達しにくくなる。したがって、加熱待機時に加圧ローラ31が変形した状態で高温加熱される不具合が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
これに対して、本実施の形態1では、固定部材26と金属部材22との間に断熱部材27が設置されているために、金属部材22の熱がニップ部の潤滑剤に達しにくくなる。したがって、潤滑剤の高温による劣化が軽減されて、上述の問題が生じるのを抑止することができる。
これにより、双方の部材21、26の摺接面に保持される潤滑剤の保持性が著しく高められ、定着ベルト21や固定部材26の磨耗が著しく低減されることになる。
定着ベルト21の表面層21a(摺接面)は、層厚が50μm以下であって、フッ素を含有する材料で形成され、さらに表面層21aの表面エネルギーが潤滑剤の表面張力よりも大きくなるように形成されている。具体的に、表面層21a(摺動層)を形成する材料として、PFA(テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、FEP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフロオロプロピレン共重合体)等のフッ素樹脂材料に、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド等の樹脂を混ぜたものを用いている。
固定部材26の表面層26aは、フッ素系のコート(固体潤滑剤としてのフッ素粒子が分散されたコート剤や、フッ素分子が分散された共析メッキ等である。)や、フッ素樹脂(PFA、PTFE、FEP)、フッ素樹脂フィルム等で形成され、さらにブラスト処理やエッチング処理が施されて多孔質状に形成されている。また、固定部材26の表面層26aとして、ガラスクロスの表面にフッ素系のコートをさせたシートや、フッ素樹脂を繊維化し編みこんだメッシュ等を用いることもできる。なお、本願において、「多孔質状」の表面層26aとは、表面層26aの表面(おもて面)から裏面にかけて多数の孔が貫通しているもののみではなく、表面層26aのおもて面(摺動面)に凹凸(裏面まで貫通しない孔)が多数形成されているものも含まれるものと定義する。
また、双方の部材21、26間に介在する潤滑剤としては、フッ素グリス等を用いることができる。
さらに、双方の表面層が互いに平滑に形成されてしまうと、フッ素系材料で形成された表面層の表面エネルギー(潤滑剤に対する濡れ性)が低いために、摺接面で潤滑剤がはじかれてしまい摺動性が悪くなってしまう。これに対して、本実施の形態1では、一方の表面層を多孔質状に形成しているために、経時においても表面層の孔に潤滑剤が保持させる。すなわち、図5に示すように、巨視的にみると、多孔質状に形成された表面層26aの網目(図5に示すように、白丸と白丸との間に多くの隙間が形成されている構造である。)に潤滑剤Qが入り込んで、潤滑剤Qが表面層26aに強固に保持された状態になる。このように、定着ベルト21と固定部材26との低摩擦性、低磨耗性が向上するとともに、双方の摺接面における潤滑剤の保持性が高くなり、定着装置20としての耐久性が飛躍的に向上する。
装置本体1の電源スイッチが投入されると、ヒータ25に電力が供給されるとともに、加圧ローラ31の図2中の矢印方向の回転駆動が開始される。これにより、加圧ローラ31との摩擦力によって、定着ベルト21も図2中の矢印方向に従動(回転)する。
その後、給紙部12から記録媒体Pが給送されて、2次転写ローラ89の位置で、記録媒体P上に未定着のカラー画像が担持(転写)される。未定着画像T(トナー像)が担持された記録媒体Pは、不図示のガイド板に案内されながら図2の矢印Y10方向に搬送されて、圧接状態にある定着ベルト21及び加圧ローラ31のニップ部に送入される。
そして、金属部材22(ヒータ25)によって加熱された定着ベルト21による加熱と、補強部材23によって補強された固定部材26と加圧ローラ31との押圧力とによって、記録媒体Pの表面にトナー像Tが定着される。その後、ニップ部から送出された記録媒体Pは、矢印Y11方向に搬送される。
図6は、金属部材22と定着ベルト21とを幅方向にみた図(図3の図示方向に対応したものである。)であって、金属部材22の加熱変形の状態を示す模式図である。図6(A)及び図6(B)に示すように、金属部材22は、常温状態から加熱されることにより加熱変形が生じて撓むことになる。したがって、常温時に金属部材22と定着ベルト21との間に設けられていたクリアランス量Aは、加熱時において金属部材22の変形量Bに応じて減ぜられることになる。そして、通常の場合(後述する可逆変化が生じる条件で加熱・冷却がおこなわれる場合である。)には、加熱状態にある金属部材22が冷却されて常温状態になると、クリアランス量Aは常温時のものに戻ることになる。
なお、金属部材22と定着ベルト21との常温時におけるクリアランス量Aとは、図6(A)に示すように、常温時における金属部材22の外径と定着ベルト21の内径との差(部分的な差異がある場合には、その最小値)である。また、金属部材22の変形量Bとは、図6(B)に示すように、径方向の撓み量であって、常温状態からの撓み量である。
まず、ウォーミングアップ時等において、常温状態(又は、それに近い状態)にある金属部材22の加熱がヒータ25(加熱手段)によって開始されるが、その加熱は定着ベルト21を目標の定着温度(140〜180℃程度である。)に昇温させるためのものであって、比較的急激な加熱である。したがって、金属部材22の温度分布は、特に加熱開始直後に、全体的に不均質なものになる。具体的には、金属部材22において、ヒータ25から遠い側(外周面側である。)の温度は近い側(内周面側である。)の温度に比べて低くなり、肉厚方向に比較的大きな温度勾配が生じる。これにより、金属部材22に部分的な熱膨張差が生じて、金属部材22に熱変形(加熱変形)による撓みが生じる。そのときに、金属部材22に生じる最大の変形量をBmaxとする。しかし、その後に、通紙(定着工程)がおこなわれる準備が完了して、定着ベルト21の定着温度が目標値近傍に安定すると、金属部材22の温度が全体的に均質化されて(肉厚方向の温度勾配が小さくなって)、金属部材22の変形量Bは小さくなり安定的な変形量Baveが維持される。
Bmax≧A>Bave
なる関係が成立するように設定している。具体的に、上式の関係が成立するように、定着ベルト21の内径や金属部材22の外径(クリアランス量A)、金属部材22の材料や厚さ、定着温度等の定着条件、加熱手段の種類、等が設定される。
このように設定することにより、クリアランス量Aと最大変形量Bmaxとの関係(Bmax≧A)から、定着ベルト21が静止状態にあるウォーミングアップ時には金属部材22が定着ベルト21の内周面に強く接触することになり、空気を介することなく金属部材22から定着ベルト21への熱伝導が積極的におこなわれるため、定着ベルト21の加熱効率が向上することになる。具体的には、金属部材22が定着ベルト21から離れた状態でウォーミングアップがおこなわれる場合に比べて、定着ベルト21の昇温時間が短縮されることになる。
また、クリアランス量Aと安定時変形量Baveとの関係(A>Bave)から、定着ベルト21が走行状態にある通紙時(定着工程時)には金属部材22が定着ベルト21の内周面に対して微小なクリアランスをあけて対向することになり(又は、接触するにしても極めて弱い力で接触することになり)、定着ベルト21や金属部材22の磨耗を低減しつつ、定着ベルト21を効率的に加熱することができる。
まず、金属部材22の加熱効率の向上(熱容量の低下)を達成するために金属部材22の厚さを0.1mm以下に設定した場合に、金属部材22に非可逆変化による加熱変形が生じてしまう金属材料が多い。この「非可逆変化」による加熱変形とは、図7に示すように、加熱と冷却とを繰り返しても加熱時に生じた金属部材22の撓み(変形量B)が常温時にもと通りになる「可逆変化」とは異なり、加熱と冷却とを繰り返しても加熱時に生じた金属部材22の撓みが常温時にもと通りにならずに塑性変形として残る現象(このような現象を「折れ現象」という。)である。このように金属部材22に折れ現象が生じると、通紙時において定着ベルト21の内周面に金属部材22が局所的に強く接触して、定着ベルト21の内周面が削れてしまったり、定着ベルト21の表面温度にムラが生じて出力画像に定着不良や光沢ムラが発生してしまったりしてしまう。
そして、本願発明者は、このような金属部材22の非可逆変化による加熱変形(折れ現象)を防止するためには、金属部材22の硬度を最適化することがよいことを知得した。詳しくは、金属部材22の硬度が高すぎる場合には、金属部材22が熱変形に抗しきれずに折れ現象が生じてしまう。これに対して、金属部材22の硬度が比較的低い場合には、金属部材22が熱変形しても弾性的に復元する余地があるために、可逆的な熱変形となる。
この実験は、ビッカース硬度の異なる種々の金属部材(いずれも厚さ0.1mmのものである。)の表面に定着ベルト(金属部材側から、ニッケル層35μm、シリコーンゴム層200μm、PFA層15μmが順次積層されたものである。)を貼り付けた実験ピースをいくつか作製して、金属部材を急激に所定温度まで加熱したときに折れ現象が生じるかを判定したものである。
図8において、横軸は金属部材のビッカース硬度を示し、縦軸は定着ベルトの表面温度(PFA層側の温度である。)を示す。また、図8において、「●」は折れ現象が生じなかった結果を示し、「×」は折れ現象が生じた結果を示すものである。例えば、ビッカース硬度が約300Hvの金属材料からなる金属部材22は、定着ベルトの温度が約190℃になるように急激に加熱した場合には折れ現象が発生することはなかったが、定着ベルトの温度が約210℃になるように急激に加熱した場合には折れ現象が発生した。
図8の実験結果から、ビッカース硬度が280Hv以下の金属材料からなる金属部材22を用いた場合には、定着温度の設定値に関わらず、金属部材22に折れ現象が生じないことがわかる。また、ビッカース硬度が340Hv以下の金属材料からなる金属部材22を用いた場合であっても、定着温度を180℃以下に設定すれば、金属部材22に折れ現象が生じないことがわかる。
ちなみに、ニッケルの特性値は、密度:8.9×10-3kg/m3、比熱:0.439kJ/kg℃、ヤング率:210Gpa、ビッカース硬度:96Hv、単位体積の熱容量比:3.91である。また、SUS304−1/2Hの特性値は、密度:7.93×10-3kg/m3、比熱:0.502kJ/kg℃、ヤング率:197Gpa、ビッカース硬度:250Hv、単位体積の熱容量比:3.98である。
図9にて、この発明の実施の形態2について詳細に説明する。
図9は、実施の形態2における定着装置を示す構成図であって、前記実施の形態1における図2に相当する図である。本実施の形態2における定着装置は、金属部材22が電磁誘導によって加熱される点が、前記実施の形態1のものとは相違する。
Bmax≧A>Bave
なる関係が成立するように設定している。
ここで、本実施の形態2における定着装置20は、加熱手段として、ヒータ25の代わりに、誘導加熱部50が設置されている。そして、本実施の形態2における金属部材22は、ヒータ25の輻射熱によって加熱される前記実施の形態1のものとは異なり、誘導加熱部50による電磁誘導によって加熱される。
定着ベルト21が図9中の矢印方向に回転駆動されると、定着ベルト21は誘導加熱部50との対向位置で加熱される。詳しくは、励磁コイルに高周波の交番電流を流すことで、金属部材22の周囲に磁力線が双方向に交互に切り替わるように形成される。このとき、金属部材22表面に渦電流が生じて、金属部材22自身の電気抵抗によってジュール熱が発生する。このジュール熱によって、金属部材22が電磁誘導加熱されて、さらに加熱された金属部材22によって定着ベルト21が加熱される。
なお、金属部材22を効率的に電磁誘導加熱するためには、誘導加熱部50を金属部材22の周方向全域に対向するように構成することが好ましい。
これらの場合にも、金属部材22の材料や厚さや、金属部材22と定着ベルト21とのクリアランス量A、等を前記各実施の形態と同様に最適化することで、前記各実施の形態と同様の効果を得ることができる。
20 定着装置、
21 定着ベルト(定着部材)、
22 金属部材(加熱部材)、
23 補強部材、
25 ヒータ(加熱手段)、
26 固定部材、
27 断熱部材、
31 加圧ローラ(加圧部材)、
50 誘導加熱部(加熱手段)、 Q 潤滑剤、 P 記録媒体。
Claims (4)
- 所定方向に走行してトナー像を加熱して溶融するとともに、可撓性を有する無端状の定着部材と、
前記定着部材の内周面にクリアランスをあけて対向するように固設されて前記定着部材を加熱するとともに、加熱手段によって加熱される金属部材と、
前記定着部材に圧接して記録媒体が搬送されるニップ部を形成する加圧部材と、
を備え、
前記定着部材と前記金属部材との常温時におけるクリアランス量をAとして、前記加熱手段によって常温状態から加熱開始されたときに前記金属部材に生じる最大の変形量をBmaxとして、その後に前記金属部材の温度が全体的に均質化されたときに前記金属部材に生じる安定的な変形量をBaveとしたときに、
Bmax≧A>Bave
なる関係が成立するように形成されたことを特徴とする定着装置。 - 前記金属部材は、その厚さが0.1mm以下であって、そのビッカース硬度が280Hv以下となるように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
- 前記金属部材は、フェライト系ステンレス鋼で形成されたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の定着装置。
- 請求項1〜請求項3のいずれかに記載の定着装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
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