以下、本発明の好適な実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
図1は、本発明の一実施の形態に係るインクジェットヘッドを含むインクジェットプリンタの内部構成を示す縦断面図である。図1に示すように、インクジェットプリンタ101は直方体形状の筐体101aを有している。筐体101a内には、マゼンタ、シアン、イエロー、ブラックのインクをそれぞれ吐出する4つのインクジェットヘッド1(以下、ヘッド1とする)、及び、搬送機構16が配置されている。また、筐体101aの天板内面には、ヘッド1や搬送機構16等の動作を制御する制御部100が取り付けられている。搬送機構16の下方には、筐体101aに対して着脱可能な給紙ユニット101bが配置されている。給紙ユニット101bの下方には、筐体101aに対して着脱可能なインクタンクユニット101cが配置されている。
インクジェットプリンタ101の内部には、図1に示す太矢印に沿って用紙搬送経路が形成されており、用紙Pが給紙ユニット101bから排紙部15に向けて搬送される。給紙ユニット101bは、給紙トレイ11と、給紙ローラ12とを有している。給紙トレイ11は、上方に向かって開口した箱形状を有しており、複数枚の用紙Pが積層された状態で収納される。給紙ローラ12は、給紙トレイ11の最も上方にある用紙Pを送り出す。送り出された用紙Pは、ガイド13a、13bによりガイドされ且つ送りローラ対14によって挟持されつつ搬送機構16へと送られる。
搬送機構16は、2つのベルトローラ6、7と、搬送ベルト8と、テンションローラ10と、プラテン18とを有している。搬送ベルト8は、両ローラ6、7の間に架け渡されるように巻回されたエンドレスのベルトである。テンションローラ10は、搬送ベルト8の下側ループにおいて、その内周面に接触しつつ下方に付勢されており、搬送ベルト8にテンションを付加している。プラテン18は、搬送ベルト8によって囲まれた領域内に配置され、ヘッド1と対向する位置において、搬送ベルト8が下方に撓まないように搬送ベルト8を支持している。ベルトローラ7は、駆動ローラであって、その軸に搬送モータ19から駆動力が与えられることで、図1中時計回りに回転する。ベルトローラ6は、従動ローラであって、ベルトローラ7の回転により搬送ベルト8が走行することによって、図1中時計回りに回転する。なお、搬送モータ19の駆動力は、複数のギアを介してベルトローラ7に伝達される。
搬送ベルト8の外周面8aは、シリコーン処理(シリコン樹脂層の形成)が施されることによって粘着性を有している。ベルトローラ6と対向する位置には、ニップローラ4が配置されている。ニップローラ4は、給紙ユニット101bから送り出された用紙Pを搬送ベルト8の外周面8aに押さえ付ける。外周面8aに押さえ付けられた用紙Pは、その粘着力によって外周面8a上に保持されながら用紙搬送方向(図1中右方であって副走査方向)へと搬送される。
ベルトローラ7と対向する位置には、剥離プレート5が設けられている。剥離プレート5は、用紙Pを外周面8aから剥離する。剥離された用紙Pは、ガイド29a、29bによりガイドされ、且つ二組の送りローラ対28によって挟持されつつ搬送される。そして用紙Pは、筐体101aの上部に形成された排出口22から、筐体101a(天板)の上面に設けられた排紙凹部(排紙部)15へと排出される。
4つのヘッド1は、互いに異なる色のインク(マゼンタ、イエロー、シアン、ブラック)を吐出する。これら4つのヘッド1は、主走査方向に長尺な略直方体形状を有している。また、4つのヘッド1は、用紙Pの搬送方向Aに沿って並べて固定されている。つまり、このプリンタ101はライン式のプリンタであり、搬送方向Aと主走査方向とは互いに直交する関係にある。
ヘッド1の底面は、インクを吐出する複数の吐出口108(図5参照)が形成された吐出面2aとなっている。搬送される用紙Pが4つのヘッド1のすぐ下方を通過する際に、用紙Pの上面に向けて吐出口108から各色のインクが順に吐出される。これにより、用紙Pの上面、すなわち、印刷面に所望のカラー画像が形成される。
各ヘッド1は、インクタンクユニット101c内のインクタンク17と接続されている。4つのインクタンク17には互いに異なる色のインクが貯留されている。各インクタンク17からは、チューブ(図4参照)を介してヘッド1にインクが供給される。
図2は、ヘッド1の分解斜視図であり、図3は、ヘッド1の主走査方向に直交する面に沿った縦断面図である。図4は、ヘッド1の副走査方向に直交する面に沿った縦断面を含む、インク循環機構の模式図である。なお、図4においては基板80の図示を省略している。
図2〜図4に示すように、ヘッド1は、インクを吐出する複数の吐出口108(図6参照)が形成されたヘッド本体33と、ヘッド本体33にインクを供給するリザーバユニット30とを有している。リザーバユニット30はヘッド本体33上に積層され、リザーバユニット30の上面にはインク供給口51及びインク排出口52が形成されている。本実施形態では、リザーバユニット30とヘッド本体33とで、本発明の流路体を構成している。
本実施形態には、ヘッド1へとインクを供給すると共に、ヘッド1の内外でインクを循環させるインク循環機構が接続されている。インク循環機構は、ヘッド1の内外でインクを循環させることによって、インク流路内に混入した空気を排出するためのものである。
このインク循環機構は、インクタンク17からインクを吸引し、ヘッド1にインクを供給するポンプ25と、インクから空気を分離するサブタンク26とを含んでいる。さらに、インク循環機構は、ポンプ25とインク供給口51とを接続するインクチューブ27a、インク排出口52とサブタンク26の流入口とを接続するインクチューブ27b、サブタンク26の流出口とポンプ25を接続するインクチューブ27cを含んでいる。インクチューブ27cには、開閉弁24aが介挿されており、循環を開始したり停止したりできる。また、サブタンク26の上部には、開閉弁24bが介挿された排気チューブ27dが接続されており、サブタンク26内の空気を大気に放出可能となっている。インクタンク17とポンプ25の間にも開閉弁24cが介在している。ポンプ25、開閉弁24a〜24cは制御部100によって制御される。
リザーバユニット30は、樹脂で一体成型されたフィルタユニット41と、複数枚の金属プレート42〜45が積層された積層体40とを有している。フィルタユニット41と積層体40とは、主走査方向に沿って形成された隙間1a及び1bを挟んで対向している。フィルタユニット41内には、インク流路61〜67が形成されており、積層体40内には、貫通孔42a、43a等からなるインク流路が形成されている。
フィルタユニット41の下部には積層体40に向かって突出する積層体40との接続部41aが形成されており、接続部41aを介してフィルタユニット41側のインク流路と積層体40側のインク流路とが互いに接続されている。本実施の形態では、接続部41aは、フィルタユニット41の主走査方向に関してほぼ中央部に設けられている。隙間1aと隙間1bとは、この接続部41aを挟んで主走査方向に関して両側に配置され、互いにほぼ同じ長さを有している。接続部41aは、均熱板70の中央部付近に形成された後述の貫通孔70aを上下方向に貫通しつつ積層体40の上面に接合されている。
フィルタユニット41内には、図4に示すように、インク供給口51と上端で連通したインク流路61が形成されている。インクチューブ27aからインクが供給されるとインク供給口51を介してインク流路61へとインクが流れ込む。インク流路61は、フィルタユニット41の図2中の左端部においてほぼ鉛直下方に延びている。インク流路61の下端はインク流路62の図2中左端に連通している。インク流路62は、インク流路61との連通位置から、隙間1aに沿って接続部41a付近まで延びている。インク流路62は、フィルタユニット41の下面に開口しており、その開口は、樹脂製の薄膜であるダンパフィルム54によって封止されている。ダンパフィルム54は、インクの振動に応じて変位することでインクの振動を吸収し減衰させる。
インク流路63は、インク流路62より上方においてインク流路62に対向して配置されている。インク流路62及び63間には、インクを濾過するための複数の微小な貫通孔が多数形成されたフィルタ53が設けられている。フィルタ53を含み、フィルタ53と上下に対向するインク流路62及び63の領域がフィルタ室を構成している。インク流路62内のインクがフィルタ53を通過してインク流路63へと流入する際に、インクから異物が除去される。
インク流路63は、主走査方向に沿って延びており、フィルタユニット41の上面に開口している。インク流路63の開口は樹脂製の薄膜であるダンパフィルム56によって封止されている。ダンパフィルム56は、インクの振動に対してダンパフィルム54と同様に機能する。インク流路63は、フィルタユニット41の中央付近においてインク流路64の上端と連通している。インク流路64は、インク流路63との連通位置からほぼ鉛直下方に向かって延び、接続部41aを通って積層体40側のインク流路と連通している。
インク流路65は、接続部41a内にインク流路64とは別の流路として形成されており、インク流路64と異なる位置において積層体40側のインク流路と連通している。インク流路65は、接続部41a内を上方に向かって延びており、接続部41aの基部付近においてインク流路66と連通している。インク流路66は、主走査方向に沿ってインク排出口52の下方まで延びている。インク流路66は、フィルタユニット41の下面に開口しており、その開口は、樹脂製の薄膜であるダンパフィルム55によって封止されている。ダンパフィルム55は、インクの振動に対してダンパフィルム54と同様に機能する。インク流路66はインク排出口52の下方においてインク流路67と連通している。インク流路67は、インク流路66からインク排出口52までほぼ鉛直上方に延びており、インク排出口52と連通している。
次に、積層体40の構成について説明する。積層体40は、孔や凹部がそれぞれ形成された金属プレート42〜45を、孔や凹部が連通し合ってインク流路を形成するように積層したものである。いずれの金属プレートも水平に沿って延びた平板部材であり、水平な表面を有している。
金属プレート42には、フィルタユニット41側のインク流路64と連通する貫通孔42a、及び、インク流路65と連通する貫通孔42bが形成されている。貫通孔42a及び42bは、平面視でインク流路64及び65と重なる位置において、ほぼ積層体の積層方向にプレート42を貫通している。
プレート43には、貫通孔43a及び43bが形成されている。プレート42を取り除いた積層体40の平面図である図5(c)に示すように、貫通孔43aは概略的に主走査方向に関して長尺な長方形の平面形状を有しており、右端部43cが、プレート43の中央付近に向かって先細りになっている。貫通孔43aは、右端部43cの先端付近において貫通孔42aと連通している。また、貫通孔43bも概略的に主走査方向に関して長尺な長方形の平面形状を有しており、左端部43dがプレート43の中央付近に向かって先細りになっている。貫通孔43bは、左端部43dの先端付近において貫通孔42bと連通している。
プレート44にはその下面に開口する凹部44aが形成されている。凹部44aは、主走査方向に長尺な長方形の平面形状を有しており、図5(c)に破線で示されるように、平面視において、貫通孔43a及び43bが形成された領域を含んでいる。図4、図5(c)に示すように、凹部44aの左端には貫通孔44bが形成されている。貫通孔44bは貫通孔43aの左端と連通している。また、凹部44aの右端には貫通孔44cが形成されている。貫通孔44cは貫通孔43bの右端と連通している。凹部44aは、プレート45により開口が塞がれており、これによって、貫通孔44bと貫通孔44cとを連通させるインク流路を構成する。
プレート45には、凹部44aと連通する複数の貫通孔45aが形成されている。貫通孔45aは、主走査方向に関して互いに間隔を空けて配列されている。貫通孔45aは、後述のヘッド本体33内のインク流路に連通している。また、プレート45とヘッド本体33の間には、副走査方向の一端から他端付近に向かって延びる隙間45bが形成されている(図3参照)。ヘッド本体33の上面において、隙間45bに面した領域には、後述のアクチュエータユニット21が貼り付けられている。この隙間45bによって、ヘッド本体33上には、アクチュエータユニット21が積層されると共に、このアクチュエータユニット21を挟んでリザーバユニット30が積層されている。
このように積層体40のプレート42〜45には複数の貫通孔や凹部が形成されており、これらが互いに連通することにより、貫通孔42aから貫通孔43a、44b、凹部44a、貫通孔44c及び43bを経て貫通孔42bに至るインク流路が形成されている。そして、リザーバユニット30全体では、積層体40側のインク流路とフィルタユニット41側のインク流路とが連通することにより、インク供給口51からインク流路61〜64、積層体40側のインク流路、及び、インク流路65〜67を経てインク排出口52に至る供給排出流路が形成されている。さらに、供給排出流路からは貫通孔45aからなる複数の分岐流路が分岐しており、これらの分岐流路がヘッド本体33へと向かっている。
次に、インク循環機構の動作について説明する。ヘッド1へとインクを初めて導入する際には、開閉弁24aを閉じた状態にし、開閉弁24b、24cを開いた状態にしてポンプ25を駆動することで、供給排出流路内にインクを充填させる。その後、開閉弁24aを開いた状態にし、開閉弁24bを閉じた状態にして、制御部100によってポンプ25を強めに駆動することで、貫通孔45aを介して、インクをヘッド本体33へと流れ込ませる。これによって、ヘッド1内は、インクタンク17からのインクで満たされることになる。
インクを循環させながらヘッド1へとインクを供給する際には、制御部100は、開閉弁24aを開いた状態にし、開閉弁24bを開いた状態にすると共に、開閉弁24cも開けた状態にして、ポンプ25を駆動する。これによって、インクタンク17からのインクがインクチューブ27a及びインク供給口51を通じてヘッド1に供給される。これと同時に、インク排出口52及びインクチューブ27bを通じてヘッド1からのインクがサブタンク26に流れ込む。サブタンク26内では、空気がインクから分離して上方に移動し、排気チューブ27dを介して大気に放出される。
この間、ヘッド1内では、図4の一点鎖線に示すように、インク供給口51から流入したインクが、フィルタユニット41及び積層体40内に形成された供給排出流路を経てインク排出口52に向かって流れる。所定の期間、この状態を持続すると、リザーバユニット30内の供給排出流路がインクタンク17からの新たなインクで充填される。このとき、貫通孔45aを通じてヘッド本体33へのインクの流れ込みが生じない程度にポンプ25を駆動することが好ましい。これにより、ヘッド本体33側の吐出口108に形成されるメニスカスを破壊することが抑制される。
インク循環流を形成する際には、制御部100は、開閉弁24aを開いた状態にし、開閉弁24bを閉じた状態にすると共に、開閉弁24cを閉じた状態にして、ポンプ25を駆動する。これにより、サブタンク26からのインクがインクチューブ27a及びインク供給口51を通じてヘッド1に供給される。そして、ヘッド1に流れ込んだインクは、リザーバユニット30内の供給排出流路を経て、インク排出口52及びインクチューブ27bを通じてサブタンク26に流れ込む。サブタンク26内のインクは、インクチューブ27c、ポンプ25及びインクチューブ27aを経て、再びヘッド1へと流れ込む。
ところで、インクをヘッド1から適切に吐出させるためには、インクの温度を適切な範囲に維持することが好ましい。本実施形態には、ヘッド1内のインクを適切な温度にするための加熱機構が設けられている。以下、インクの加熱機構について説明する。
フィルタユニット41及び積層体40の間には、図2及び図3に示すように、金属製の均熱板70(当接部材)が水平に設置されている。均熱板70は、インク流路が形成されておらず、フィルタユニット41や積層体40とは別の部材である。均熱板70の材料は、積層体40を構成する材料より熱伝導率の大きい材料、例えばアルミニウムからなる。均熱板70は、図2、図5(a)に示すように、平面視において金属プレート42とほぼ同じ大きさの長方形の概略形状を有している。均熱板70の中央付近には、接続部41aが挿入される貫通孔70aが形成されている。図4に示すように、隙間1aに均熱板70のほぼ左半分が、隙間1bに均熱板70のほぼ右半分が配置されている。
均熱板70において副走査方向の両端には、上方に向かって突出した8枚の突出板71が固定されている。これらのうち4枚の突出板71は、均熱板70の一端において主走査方向に沿って等間隔に配列され、残りの4枚は、均熱板70の他端において主走査方向に沿って等間隔に配列されている。また、図5(b)に示すように、正面視において8枚の突出板71が互いに重なることなく、主走査方向に沿って等間隔に千鳥状に配列されている。各突出板71は、均熱板70となる平板部材の端部に切り欠き70bを形成し、2つの切り欠き70bに挟まれた部分を上方に折り曲げた構造を有している。切り欠き70bに挟まれた領域は、突出部72が形成された領域に接続されている。突出板71は、副走査方向に直交する平面に沿った表面を有している。
均熱板70の下面には、下方に向かって突出した複数の突出部72が形成されている。突出部72の下面は水平に沿っており、いずれも積層体40の上面に密着している。なお、突出部72は熱伝導性を有する接着剤を介して積層体40に接合されていてもよいし、接着剤を介さずに積層体40に直接当接していてもよい。これらの突出部72は、ほぼ半数が図5(a)において均熱板70の左半分に分布しており、残りの半数が右半分に分布している。
突出部72は、均熱板70の下方に配置された貫通孔43a、43bなどのインク流路の形成領域に応じて分布している。例えば、平面視の単位面積当たりで、積層体40に形成されたインク流路の容積に応じて、突出部72の配設数が変えられている。図5(c)に示すように、平面視において貫通孔43aの形成領域には、均熱板70の左半分に分布した突出部72が重なっている。これらの突出部72は、左方の領域R1においては単位面積当たりの数がほぼ均等になるようにマトリクス状に配列されている。一方、貫通孔43aの右端部43cを含む領域R2においては、右端部43cに近づくにつれて、単位面積当たりの数が減るように配置されている。
また、貫通孔43bの形成領域には、均熱板70の右半分に分布した突出部72が重なっている。これらの突出部72は、右方の領域R4においては単位面積当たりの数がほぼ均等になるようにマトリクス状に配列されている。一方、貫通孔43bの左端部43dを含む領域R3においては、左端部43dに近づくにつれて、単位面積当たりの数が減るように配置されている。
なお、本実施形態においては、平面視において貫通孔43aや43bなどのインク流路が形成されていない領域には突出部72が配置されていない。
図3に示すように、各突出板71の副走査方向に関して外側の表面には、ドライバIC73(駆動回路ユニット)が固定されている。つまり、ヘッド1には突出板71と同じ数の8つのドライバIC73が設けられている。ドライバIC73は、後述のアクチュエータユニット21へと駆動信号を供給する駆動回路を有している。ドライバIC73は、概略的に直方体の形状を有しており、平面に沿った一の表面が熱伝導性の接着剤を介して突出板71に接合されている。なお、ドライバIC73が熱伝導性を有する弾性部材などのその他の部材を介して突出板71に固定されてもよい。
ドライバIC73は、平型の柔軟基板であるCOF(Chip On Film)48上に実装されている。COF48は、ドライバIC73において突出板71とは反対側に設けられた接続部に接続されている。COF48の一端は、ドライバIC73から突出板71及びフィルタユニット41の側面に沿って上方へと引き出され、基板80上に設置されたコネクタ81に接続されている。また、COF48の他端は、ドライバIC73から突出板71及び積層体40の側面に沿って下方へと引き出され、金属プレート45とヘッド本体33の間に形成された隙間45bへと引き込まれて、アクチュエータユニット21に接続されている。COF48には信号線が配設されており、この信号線を通じて基板80からドライバIC73へ、ドライバIC73からアクチュエータユニット21へ信号が伝達される。
以上の構成により、ドライバIC73の電子回路等から熱が発生した際、その熱が突出板71に伝達され、均熱板70の水平部分を介して、突出部72に当接した積層体40へと伝達される。したがって、ドライバIC73からの発熱を利用して、積層体40内のインクを加熱することができる。
本実施形態では一体の金属部材である均熱板70に全てのドライバIC73が固定されており、均熱板70の下面に沿って複数の突出部72が分布して積層体40に当接している。このため、ドライバIC73ごとに発熱にむらがあったとしても、均熱板70内を熱が伝達されて各突出部72に到達する過程で均等に熱が伝達されるので、突出部72ごとにむらが生じることなく、積層体40に均一に熱が伝達される。
また、下方へと突出した突出部72が積層体40の上面に当接する構成なので、積層体40上面の所望の位置に選択的に熱を伝達しやすい。本実施形態では、積層体40内に形成された貫通孔43a及び43bと平面視において重なる位置にのみ突出部72が配置されているので、貫通孔43a及び43b内のインクへと熱が直接伝わりやすい。
さらに、突出部72の数は、貫通孔43a及び43bの形成領域に応じて調整されている。例えば、積層体40において、平面視の単位面積当たりで、領域R1内に形成されたインク流路は領域R2内に形成されたインク流路より容積が大きい。また、領域R1内では、貫通孔43の幅は一様である。したがって、領域R1内では領域R2よりインク流路が一様に大きく、内部に存在するインクが多くなるので、領域R2より多くの突出部72が一様に配置されており、熱がより多く伝達されるように構成されている。一方、領域R2においてはインク流路が小さく、且つ、右端部43cに近い位置ほど貫通孔43の幅が先細りになっているため、内部のインクも少なくなる。これに伴い、右端部43cに近づくほど突出部72の数が減らされており、インク量に応じた大きさの熱が伝達されるように構成されている。
突出部72の数は、積層体40の平面視において単位面積を有する領域内に存在するインク流路の容積に応じてより厳密に決めてもよい。例えば、図5(c)において、積層体40を鉛直方向に貫通し且つ底面が単位面積を有する任意の柱状部分T1をとったとき、T1内に存在するインク流路の容積が大きいほど、T1に当接する単位面積当たりの突出部72の数が大きくなるようにしてもよい。
以下、ヘッド1の下部に設けられたヘッド本体33について説明する。図6はヘッド本体33の平面図である。図7は、図6において隣り合う2つのアクチュエータユニット21に跨る部分の拡大図である。図8は、図6に示すVIII−VIII線に沿った流路ユニット9の部分断面図である。また、図9(a)及び図9(b)は、図8中に一点鎖線で示した領域の拡大断面図及び個別電極の平面図である。なお、図7において、図面を分かりやすくするために、破線で描くべきアパーチャ112を実線で描いている。
ヘッド本体33は、図6に示すように、流路ユニット9、及び、流路ユニット9の上面9aに固定された8つのアクチュエータユニット21を含んでいる。図6に示すように、流路ユニット9は、上面9aに形成された空孔である圧力室110等を含むインク流路が内部に形成されている。アクチュエータユニット21は台形の平面形状を有している。アクチュエータユニット21は、各圧力室110に対応した複数のアクチュエータを含んでおり、圧力室110内のインクに選択的に吐出エネルギーを付与する機能を有する。
流路ユニット9は、積層体40とほぼ同じ平面形状を有する直方体形状となっている。流路ユニット9の上面9aには、積層体40(プレート45)側のインク流路の開口に対応して、計18個のインク供給口105bが開口している。流路ユニット9の内部には、インク供給口105bに連通するマニホールド流路105及びマニホールド流路105から分岐した副マニホールド流路105aが形成されている。マニホールド流路105は、平面視でアクチュエータユニット21の台形の斜辺に沿って延びている。アクチュエータユニット21の下方には4本の副マニホールド流路105aが主走査方向に沿って延びている。これら4本の副マニホールド流路105aは、アクチュエータユニット21の一方の斜辺側においてマニホールド流路105から分岐し、主走査方向に沿って延び、他方の斜辺側において別のマニホールド流路105と合流している。流路ユニット9の下面には、図7及び図8に示すように、多数の吐出口108がマトリクス状に配置された吐出面2aが形成されている。
圧力室110は流路ユニット9の長手方向(主走査方向)に沿って配列されており、これによって複数の圧力室110からなる複数の圧力室列が流路ユニット9の上面9a上に形成されている。各圧力室列に含まれる圧力室110の数は、後述のアクチュエータユニット21の外形形状(台形形状)に対応して、その長辺側(下底側)から短辺側(上底側)に向かって次第に少なくなるように配置されている。吐出口108も、これと同様に配置されている。ただし、吐出口108が配列して作る複数の吐出口列は、平面視で、いずれも副マニホールド流路105aに対して、これを避けると共に平行に配置されている。
流路ユニット9は、図8に示すように、9枚のステンレス鋼からなる金属製のプレート122〜130から構成されている。これらプレート122〜130を互いに位置合わせしつつ積層することによって、流路ユニット9内に、マニホールド流路105から副マニホールド流路105a、そして副マニホールド流路105aの出口から圧力室110を経て吐出口108に至る多数の個別インク流路132が形成される。
流路ユニット9におけるインクの流れについて説明する。図6〜図8に示すように、積層体40からインク供給口105bを介して流路ユニット9内に供給されたインクは、マニホールド流路105から副マニホールド流路105aに分岐される。副マニホールド流路105a内のインクは、各個別インク流路132に流れ込み、絞りとして機能するアパーチャ112及び圧力室110を介して吐出口108に至る。
次に、アクチュエータユニット21について説明する。図6に示すように、8つのアクチュエータユニット21は、それぞれ台形の平面形状を有しており、インク供給口105bを避けるよう千鳥状に配置されている。さらに、各アクチュエータユニット21の平行対向辺は流路ユニット9の長手方向に沿っており、隣接するアクチュエータユニット21の斜辺同士は流路ユニット9の幅方向(副走査方向)に関して互いにオーバーラップしている。
図9(a)に示すように、アクチュエータユニット21は、強誘電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)系のセラミックス材料からなる3枚の圧電シート141〜143から構成されている。各圧電シート141〜143は、いずれも複数の圧力室110に跨る形状とサイズを有した一枚のシートからなっている。最下層の圧電シート143の下面が流路ユニット9に固定される固定面となっている。また、最上層の圧電シート141の上面は、COF50が接合される接合面となっている。この接合面における圧力室110に対向する位置には、個別電極135が形成されている。最上層の圧電シート141とその下側の圧電シート142との間にはシート全面に形成された共通電極134が介在している。個別電極135は、図9(b)に示すように、圧力室110と相似な略菱形の平面形状を有する。平面視で、個別電極135の大部分は、圧力室110の領域内にある。略菱形の個別電極135における鋭角部の一方は圧力室110の外に延出され、その先端には個別電極135と電気的に接続されつつ圧電シート141の上面から突出した個別バンプ136が設けられている。なお、圧電シート141の上面には、共通電極用の個別バンプも形成されている。共通電極134は、圧電シート141に形成されたスルーホール内の導電体を介して上記の個別バンプと電気的に接続されている。
共通電極134は、すべての圧力室110に対応する領域において等しくグランド電位が付与されている。一方、個別電極135は、COF50を介してドライバIC73の各出力端子と電気的に接続されており、ドライバIC73からの駆動信号が選択的に供給されるようになっている。
圧電シート141はその厚み方向に分極されている。個別電極135を共通電極134と異なる電位にして圧電シート141に対してその分極方向に電界を印加すると、個別電極135に対応した電界印加部分が圧電効果により歪む活性部としてそれぞれ働く。つまり、アクチュエータユニット21には、圧力室110の数に対応した複数のアクチュエータが作り込まれており、個別電極135と圧力室110とで挟まれた各部分が個別のアクチュエータとして働く。例えば、分極方向と電界の印加方向とが同じであれば、活性部は分極方向と直交する方向(平面方向)に縮む。このように、アクチュエータユニット21は、圧力室110から離れた上側1枚の圧電シート141を活性部が含まれる層とし、且つ圧力室110に近い下側2枚の圧電シート142、143を非活性層とした、いわゆるユニモルフタイプのアクチュエータである。なお、非活性層は、電界の印加に対して自発的に歪まない。図9(a)に示すように、圧電シート141〜143は圧力室110を区画するプレート122の上面に固定されているため、圧電シート141における電界印加部分とその下方の圧電シート142、143との間で平面方向への歪みに差が生じると、圧電シート141〜143全体が圧力室110側へ凸になるように変形(ユニモルフ変形)する。このとき、圧力室110内のインクには、吐出エネルギーが与えられることになる。
図10は、プリンタ101の制御系を示すブロック図である。図10に示すように、ヘッド1の基板80には、制御部100から印刷指令が入力される。基板80は、制御部100からの印刷指令に基づいてCOF48を通じてドライバIC73へと印刷データを送信する。ドライバIC73は、基板80からの印刷データに基づいて駆動信号を生成し、COF48を通じてアクチュエータユニット21の個別電極35へと供給する。この駆動信号は、アクチュエータユニット21を上記のようにユニモルフ変形させる電圧信号である。個別電極35に駆動信号が供給されると、アクチュエータユニット21の変形によって圧力室110内のインクに吐出エネルギーが付与され、吐出口108からインクが吐出される。制御部100が基板80に送信する印刷指令は、吐出口108からのインクによって印刷用紙P上に所望の画像が形成されるように調整されている。
以上説明した本実施形態によると、複数のドライバIC73からの熱を、均熱板70を介して積層体40へとむらなく伝達させることができる。
特に、本実施形態の積層体40のように、内部のインク流路が平面に沿って広がっている場合には、ドライバIC73からの熱をインク流路内のインクへと均一に伝達させにくい。これに対して、本実施形態の均熱板70の下面には、平面に沿って広がる貫通孔43a及び43bに平面視で重なるように複数の突出部72が下面に沿って分布している。したがって、これらの突出部72を介してドライバIC73からの熱をインク流路内のインクに均一に伝達させることができる。
また、本実施形態では、均熱板70の水平部分から上方へと突出する突出板71を設け、その突出板71ごとにドライバIC73を固定している。これにより、ドライバIC73を積層体40の当接部である突出部72から離隔して配置しても、均熱板70と積層体40を均熱板70を介して適切に熱的に結合することができる。また、各突出板71を通じてドライバIC73からの熱を無駄なく突出部72へと導くことができる。
また、突出板71を挟むように2つの切り欠き70bが形成されており、これらの切り欠き70bに挟まれた領域が突出部72の形成領域に接続されている。このため、ドライバIC73からの熱を拡散させることなく、突出板71から突出部72に向かって適切に伝達させることができる。
<変形例>
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々な変更が可能なものである。
上述の実施形態では、積層体40内に貫通孔43aや43bが平面に沿って広がって延びている。しかし、本発明はこれに限られず、流路体の内部に流路が平面に沿って分布しているあらゆる場合に適用される。図11は、内部にインク流路205が形成された流路体240の平面図である。インク流路205は、平行に配列された複数の直線状のインク流路から構成されており、これらの複数のインク流路が、積層方向への連通路を有するとしても、全体として平面的に分布している。このように、インク流路自体が平面に沿って広がっていなくても、複数のインク流路が形成されることにより、インク流路全体が平面に沿って分布している場合にも、インク流路内のインクに均一に熱を伝達させるのは困難である。したがって、このような構成においても、インク流路205の形成領域に重なる範囲に平面的に分布した複数の突出部172を有する均熱板を介して、ドライバIC73からの熱を流路体240に伝達させることにより、本発明を適用することができる。
また、上述の実施形態では、積層体40側のインク流路の形状に応じて複数の突出部72を分布させることにより、インク流路内のインクに均一に熱が伝達されるようにしている。しかし、図12の均熱板270に示すように、積層体40側のインク流路の形状に合わせた形状を有する突出部272を設けてもよい。突出部272は、平面視において、積層体40側のインク流路である貫通孔43aにちょうど重なる大きさ及び形状を有している。この場合にも、突出部272と積層体40との当接箇所が貫通孔43aと重なる範囲のみに分布することとなるため、ドライバIC73からの熱がインク流路内のインクに適切に伝達される。
なお、上述の実施形態では、均熱板70に突出部72を設けて積層体40に当接させているが、突出部72を設けず、均熱板の下面の平坦な表面を積層体40に直接当接させてもよい。この場合、インク流路の分布状態に応じて熱が伝達されるように、均熱板70と積層体40の間に、この分布状態に対応したパターンでシリコングリス層や、熱伝導性シリコンシート等の熱伝導性の樹脂層を形成してもよい。
また、本実施形態では、アクチュエータとして圧電方式のものを用いていたが、静電方式や抵抗加熱による方式のものにも適用可能である。