以下、本発明に係る実施の一形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。
図1は、実施形態における超音波診断装置の外観構成を示す図である。図2は、実施形態における超音波診断装置の電気的な構成を示すブロック図である。図3は、実施形態の超音波診断装置における超音波探触子の構成を示す図である。図3(A)は、超音波探触子の全体構成を示す斜視図であり、図3(B)は、超音波探触子を構成する複数の第1圧電素子のうちの一素子分を示す断面図である。
超音波診断装置Sは、図1および図2に示すように、図略の生体等の被検体に対して超音波(第1超音波信号)を送信すると共に、この被検体で反射した超音波の反射波(エコー、第2超音波信号)を受信する超音波探触子2と、超音波探触子2とケーブル3を介して接続され、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を送信することによって超音波探触子2に被検体に対して第1超音波信号を送信させると共に、超音波探触子2で受信された被検体内から来た第2超音波信号に応じて超音波探触子2で生成された電気信号の受信信号に基づいて被検体内の内部状態を超音波画像として画像化する超音波診断装置本体1とを備えて構成される。
超音波診断装置本体1は、例えば、図2に示すように、操作入力部11と、送信部12と、受信部13と、相関部14と、画像処理部15と、表示部16と、制御部17と、参照信号記憶部18とを備えて構成されている。
操作入力部11は、例えば、診断開始を指示するコマンドや被検体の個人情報等のデータの入力や後述の参照信号の各重み付け係数g(n)を微調整する指示を受け付けるものであり、例えば、複数の入力スイッチを備えた操作パネルやキーボード等である。
送信部12は、制御部17の制御に従って、超音波探触子2へケーブル3を介して電気信号の送信信号を供給して超音波探触子2に第1超音波信号を発生させる回路である。送信信号、ひいては第1超音波信号は、予め定められた方式により符号化されている。送信信号には、例えば、周波数を時間経過に伴って予め設定された所定割合で変化させるチャープ波が用いられ、符号化される。チャープ波の前記所定割合は、周波数が時間経過に従って徐々に高くなるチャープ波であってもよく、また、周波数が時間経過に従って徐々に低くなるチャープはであってもよい。なお、チャープ波に代え、送信信号は、いわゆるPN符号系列により符号化されていてもよい。送信部12は、例えば、制御部17からの送信信号s(t)に応じて送信ビームを形成する送信ビームフォーマ回路122、および、送信ビームフォーマ回路122から後述の超音波探触子2の各第1圧電素子20を駆動するための駆動信号を生成する駆動信号生成回路121等を備えて構成される(図4参照)。受信部13は、制御部17の制御に従って、超音波探触子2からケーブル3を介して電気信号の受信信号を受信する回路であり、この受信信号を相関部14へ出力する。受信部13は、例えば、受信信号を予め設定された所定の増幅率で増幅する増幅器等を備えて構成される。
相関部14は、受信部13の出力と予め設定された参照信号との相関処理を行うことによって受信部13の出力から第2超音波信号を検出するものである。この参照信号は、第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における検出すべき高調波の次数、被検体の診断部位(診断部位の種類)、および、被検体の診断深度に応じて設定されている。
参照信号記憶部18は、例えば、ROMあるいはEEPROM等の記憶素子を備えて構成され、第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における検出すべき高調波の次数、被検体の診断部位、および、被検体の診断深度に応じて設定された複数の参照信号を記憶するものである。そして、上記相関部14は、第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における検出すべき高調波の次数、被検体の診断部位、および、被検体の診断深度に応じて参照信号記憶部18に記憶されている複数の参照信号から1つの参照信号を選択して相関処理を行う。これら検出すべき高調波の次数、被検体の診断部位および被検体の診断深度は、例えば、操作入力部11から入力される。
ここで、参照信号は、後述するように、第1超音波信号に基づいて生成される関数であってよい。より具体的には、参照信号は、例えば、第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における検出すべき高調波の次数を2n(nは正の整数)とした場合に、第1超音波信号が正の値である場合には+1を乗算した第1超音波信号の2n乗であって、第1超音波信号が負の値である場合には−1を乗算した第1超音波信号の2n乗である。また例えば、参照信号は、第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における検出すべき高調波の次数を(2n+1)(nは正の整数)とした場合に、第1超音波信号の(2n+1)乗である。なお、参照信号は、その振幅がフォーカルポイント深度に応じて増減されていてもよい。
タイミング発生部19は、超音波診断装置本体1の各部の動作タイミングを生成し、動作タイミングの必要な各部へ出力するものである。
画像処理部15は、制御部17の制御に従って、相関部14で相関処理された受信信号に基づいて被検体内の内部状態の画像(超音波画像)を生成する回路である。画像処理部15は、例えば、後述の各相関処理部50−1、50−2、50−3、・・・、50−nからの各出力y−1、y−2、y−3、・・・、y−nに対し遅延時間を補正する遅延補正回路151、および、遅延補正回路151の出力を整相加算する整相加算回路152等を備えて構成される(図4参照)。表示部16は、制御部17の制御に従って、画像処理部15で生成された被検体の超音波画像を表示する装置である。表示部16は、例えば、CRTディスプレイ、LCD、有機ELディスプレイおよびプラズマディスプレイ等の表示装置やプリンタ等の印刷装置等である。制御部17は、例えば、マイクロプロセッサ、記憶素子およびその周辺回路等を備えて構成され、これら操作入力部11、送信部12、受信部13、相関部14、参照信号記憶部18、画像処理部15および表示部16を当該機能に応じてそれぞれ制御することによって超音波診断装置Sの全体制御を行う回路である。
超音波探触子(超音波プローブ)2は、被検体内に第1超音波信号を送信しこの第1超音波信号に基づく被検体内から来た第2超音波信号を受信する装置であって、例えば、図3(A)に示すように、圧電材料を備えて成り、圧電現象を利用することによって電気信号と超音波信号との間で相互に信号を変換することができ、2次元アレイ状に配列された複数の第1圧電素子20を含んで構成されている。複数の第1圧電素子20は、平面視にて互いに線形独立な2方向に、例えば、互いに直交する2方向にm行×n列で配列されている(m、nは、正の整数である)。複数の第1圧電素子20は、クロストーク等の相互干渉を低減するために、互いに所定の隙間(溝、間隙、ギャップ)を空けて基板上に配置される。なお、さらに相互干渉を低減するために、超音波を吸収する超音波吸収材がこの隙間に充填されることが好ましい。この超音波吸収材には、例えば、ポリイミド樹脂やエポキシ樹脂等の熱硬化性樹脂等が用いられる。
図3(A)は、24個の第1圧電素子20−11〜20−46が、互いに直交する2方向に配列された2次元アレイを構成している例を示している。実際の超音波探触子では、例えば、第1圧電素子20が64×64の4096個であったり、また例えば第1圧電素子20が128×128の16900個であったり、多数の第1圧電素子20を備えていることは言うまでもない。超音波探触子2は、本実施形態では、2次元超音波探触子(2次元アレイ超音波プローブ)である。
なお、本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。また、添え字のうちの左側の添え字は、行番号を示し、その右側の添え字は、列番号を示している。例えば、第1圧電素子20−23は、行番号2で列番号3の第1圧電素子20である。
超音波探触子2における複数の第1圧電素子20は、被検体内へ第1超音波信号を送信する場合では、超音波診断装置本体1の送信部12からケーブル3を介して入力された送信の電気信号を圧電現象を利用することによって第1超音波信号に変換して被検体内にこの第1超音波信号を送信し、そして、被検体内から来た第2超音波信号を受信する場合では、圧電現象を利用することによってこの受信した第2超音波信号を電気信号に変換して受信信号をケーブル3を介して超音波診断装置本体1の受信部13へ出力する。超音波探触子2が被検体に当てられることによって、第1圧電素子20で生成された第1超音波信号が被検体内へ送信され、被検体内からの第2超音波信号が第1圧電素子20で受信される。
これら複数の第1圧電素子20のそれぞれは、第2圧電素子22と、第2圧電素子22に積層された第3圧電素子25とを備えて構成されている。複数の第1圧電素子20のそれぞれにおいて、第3圧電素子25は、直接的にあるいは図3(B)に示すように他の層を介して間接的に第2圧電素子22上に積層されている。
本実施形態では、図3(B)に示すように、第2圧電素子22は、平板状の音響制動部材(バッキング層)21の一方主面上に配置され、第2圧電素子22上に第1音響整合層23が積層され、第1音響整合層23上に音響制動部材(バッキング層)24が積層されている。第3圧電素子25は、この音響制動部材24上に積層され、第3圧電素子25上に第2音響整合層26が積層されている。そして、第2音響整合層26上に音響レンズ27が積層されている。
音響制動部材21は、超音波を吸収する材料から構成され、複数の第1圧電素子20から音響制動部材21方向へ放射される超音波を吸収するものである。音響制動部材24は、超音波を吸収する材料から構成される。音響制動部材21、24は、一般に、ダンパあるいはバッキング層とも呼ばれる。そして、各第1圧電素子20のそれぞれに接続する複数の複数の信号線282が音響制動部材21を貫通している。なお、各第1圧電素子20のそれぞれに接続する複数の接地線(アース線)283は、各第1圧電素子20からそれぞれ引き出される。
第2圧電素子22は、導電線の信号線(送信信号線)282と接続する導電材料から成る信号電極層222と、信号電極層222上に形成され、圧電材料から成る圧電層221と、圧電層221上に形成され、導電材料から成る接地電極層223とを備えて構成される。すなわち、これら複数の第2圧電素子22のそれぞれは、互いに対向する一対の第1および第2電極を備え、これら第1および第2電極間に、圧電材料から成る圧電部が形成されている。圧電材料は、例えば、無機圧電材料が用いられる。無機圧電材料は、電気エネルギを超音波振動エネルギに変換する変換効率の高いセラミック圧電材料が好ましく、例えば、いわゆるPZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸タンタル酸カリウム(K(Ta,Nb)O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等である。あるいは、水酸化カリウムと酸化ニオブ(Nb2O5)と水酸化カリウム(KOH)を用い、150−200℃に加熱する水熱合成法によりKNbO3の高品質粉末を得る技術が提案されており(例えば特開2004−284889号公報参照)、このような材料も採用可能である。この系統は、化学式で(K、Li、Na)(Nb、Ta)O3と表される。これらの音響インピーダンスは、20〜50の範囲にあり、比較的高い音響インピーダンスをもち、好適である。
そして、超音波探触子2では、複数の第2圧電素子22のそれぞれが、複数の区域に分割され、これら複数の区域(区画、領域)のそれぞれに、共振周波数が互いに異なる。
例えば、図3(B)に示す例では、第2圧電素子22は、平面視にて第2圧電素子22の一辺に平行な第1および第2境界(図3(B)では紙面に垂直な方向に沿った境界)で第1ないし第3区域Ar−a〜Ar−cに分割されている。これら3個の第1ないし第3区域Ar−a〜Ar−cは、図3(B)に示す例では、平面視にて互いに同一形状の矩形となっている。この第1区域Ar−aには、第1厚さt1の圧電材料から成る圧電部221−aが信号電極層222と接地電極層223との間に形成され、第1共振周波数fc1を持つ。第2区域Ar−bには、第2厚さt2の圧電材料から成る圧電部221−bが信号電極層222と接地電極層223との間に形成され、第2共振周波数fc2を持つ。第3区域Ar−cには、第3厚さt3の圧電材料から成る圧電部221−cが信号電極層222と接地電極層223との間に形成され、第3共振周波数fc3を持つ。そして、これら第1ないし第3厚さt1〜t3が互いに異なる厚さとされることで、第1ないし第3共振周波数fc1〜fc3は、互いに異なる周波数となっている。圧電部221−a〜221−cの圧電材料と性能が同一である場合には共振周波数定数が一定であるので、例えば、第1厚さt1>第2厚さt2>第3厚さt3の関係にある場合では、第1共振周波数fc1<第2共振周波数fc2<第3共振周波数fc3となり、第1ないし第3区域Ar−a〜Ar−cには、共振周波数が低周波数から高周波数へ順に配列されることになる。なお、共振周波数定数は、(共振周波数)×(圧電素子の振動方向の厚さ)で与えられる。例えば、圧電部221−a〜221−cの圧電材料として、共振周波数定数が約2000Hz・mのPZTが用いられる場合では、第1厚さt1が200μmに設計されると、第1区域Ar−aでは、共振周波数は、10Mzとなり、第2厚さt2が100μmに設計されると、第2区域Ar−bでは、共振周波数は、20Mzとなり、そして、第3厚さt3が50μmに設計されると、第3区域Ar−cでは、共振周波数は、40Mzとなる。
ここで、このように各区域Ar−a〜Ar−cにおける各圧電部221−a〜221−cの厚さが異なるため、各圧電部221−a〜221−cにおける接地電極層223側の各面が面一とされると共に、圧電部221−a〜221−cにおける信号電極層222側の面が信号電極層222に当接されると、圧電部221−bおよび圧電部221−cにおける信号電極層222側の各面と第1音響制動部材21との間に、空隙が形成されることになる。このため、この空隙に誘電材料224が充填される。この空隙に充填される誘電材料224の誘電率は、約2ないし約40であることが好ましい。
第1音響整合層23は、第2圧電素子22の音響インピーダンスと第3圧電素子25の音響インピーダンスとの整合をとる部材である。第1音響整合層23は、第1圧電素子20の音響インピーダンスと第2圧電素子25の音響インピーダンスとの間の値を採用することが好ましい。第2圧電素子25に例えばセラミック圧電材料を使用すると、その音響インピーダンスは、20〜50(Mralys)の範囲になり、第3圧電素子25に例えば有機圧電材料を使用すると、その音響インピーダンスは、2〜10(Mralys)の範囲になる。したがって、第1音響整合層23の音響インピーダンスは、2から30の範囲が好ましい。第2圧電素子22の音響インピーダンスZtと、第3圧電素子25の音響インピーダンスZrとした場合に、それらと第1音響整合層23の音響インピーダンスZiの関係は、Zt<Zi<Zrの関係になるのが好ましい。本実施形態では、第1音響整合層23は、少なくとも1層必要である。n層とする場合、送信側から受信側に掛けてZi1、Zi2、Zi3、・・・、Zinの関係は、Zi1<Zi2<Zi3<・・・<Zinのような関係になることが好ましい。第1音響整合層23は、この関係で多ければ多い程整合が採り易いが、性能と生産性から2層から3層程度が好ましい。2層の場合では、2<Zi2<7、10<Zi1<30の範囲が好ましい。この値より小さい場合や大きい場合は、音響整合が採りにくくなるからである。音響インピーダンスの採り方は、デジレ(Desilets)のKLMモデルやドール(Doll)の計算式を適用してもよい。第1音響整合層23の樹脂素材は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエスエル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの共重合体がもっとも好ましい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、種々のポリアミンや酸無水物が使用される。ポリイミド樹脂としては、ビフエニルテトラカルボン酸二無水(BPDA)とジアミンとの縮重合によるものが好ましい。シリコン樹脂は、シロキサン結合したオルガノポリシロキサンが好ましく、オルガノ基の選択により好適な構造を選択することができる。このような樹脂のなかに、各種添加物、例えば、タングステン粒子、タンタル粒子、銅粒子、アルミニウム粒子、銀粒子、白金粒子などを添加することにより音響インピーダンスを調整することができる。タングステン粒子をビスフェノール型のエポキシ樹脂に添加することにより、第1音響整合層23に必要な音響インピーダンスである2〜50(MRayls)を得ることが可能である。
第3圧電素子25は、導電線の信号線(受信信号線)281と接続する導電材料から成る信号電極層252と、信号電極層252上に形成され、圧電材料から成る圧電層251と、圧電層251上に形成され、導電材料から成る接地電極層253とを備えて構成される。すなわち、これら複数の第3圧電素子25のそれぞれは、互いに対向する一対の第1および第2電極を備え、これら第1および第2電極間に、圧電材料から成る圧電部が形成されている。圧電材料は、例えば、有機圧電材料が用いられる。有機圧電材料は、例えば、フッ化ビニリデンの重合体を用いることができる。また例えば、有機圧電材料は、フッ化ビニリデン(VDF)系コポリマを用いることができる。このフッ化ビニリデン系コポリマは、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体(コポリマ)であり、他の単量体としては、3フッ化エチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、パーフルオロアルコキシエチレン(PAE)およびパーフルオロヘキサエチレン等を用いることができる。フッ化ビニリデン系コポリマは、その共重合比によって厚み方向の電気機械結合定数(圧電効果)が変化するので、例えば、超音波探触子の仕様等に応じて適宜な共重合比が採用される。例えば、フッ化ビニリデン/3フッ化エチレンのコポリマの場合では、フッ化ビニリデンの共重合比が60mol%〜99mol%が好ましく、有機圧電素子を無機圧電素子に積層する複合素子の場合では、フッ化ビニリデンの共重合比が85mol%〜99mol%がより好ましい。また、このような複合素子の場合では、他の単量体は、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、パーフルオロアルコキシエチレン(PAE)およびパーフルオロヘキサエチレンが好ましい。また例えば、有機圧電材料は、ポリ尿素を用いることができる。このポリ尿素の場合では、蒸着重合法で圧電体を作成することが好ましい。ポリ尿素用のモノマとして、一般式、H2N−R−NH2構造を挙げることができる。ここで、Rは、任意の置換基で置換されてもよいアルキレン基、フェニレン基、2価のヘテロ環基、ヘテロ環基を含んでもよい。ポリ尿素は、尿素誘導体と他の単量体との共重合体であってもよい。好ましいポリ尿素として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を用いる芳香族ポリ尿素を挙げることができる。
そして、超音波探触子2では、複数の第3圧電素子25のそれぞれが、第2圧電素子22と同様に、複数の区域に分割され、これら複数の区域(区画、領域)のそれぞれに、共振周波数が互いに異なる。
例えば、図3(B)に示す例では、第3圧電素子25は、平面視にて第3圧電素子22の一辺に平行な第1および第2境界(図3(B)では紙面に垂直な方向に沿った境界)で第1ないし第3区域Ar−d〜Ar−fに分割されている。これら3個の第1ないし第3区域Ar−d〜Ar−fは、図3(B)に示す例では、平面視にて互いに同一形状の矩形となっている。この第1区域Ar−dには、第4厚さt4の圧電材料から成る圧電部251−dが信号電極層252と接地電極層253との間に形成され、第4共振周波数fc4を持つ。第2区域Ar−eには、第5厚さt5の圧電材料から成る圧電部251−eが信号電極層252と接地電極層253との間に形成され、第5共振周波数fc5を持つ。第3区域Ar−fには、第6厚さt6の圧電材料から成る圧電部251−fが信号電極層252と接地電極層253との間に形成され、第6共振周波数fc6を持つ。そして、これら第4ないし第6厚さt4〜t6が互いに異なる厚さとされることで、第4ないし第6共振周波数fc4〜fc6は、互いに異なる周波数となっている。圧電部251−d〜251−fの圧電材料と性能が同一である場合には共振周波数定数が一定であるので、例えば、第4厚さt4>第5厚さt5>第6厚さt6の関係にある場合では、第4共振周波数fc4<第5共振周波数fc5<第6共振周波数fc6となり、第1ないし第3区域Ar−d〜Ar−fには、共振周波数が低周波数から高周波数へ順に配列されることになる。
そして、このように各区域Ar−d〜Ar−fにおける各圧電部251−d〜251−fの厚さが異なるため、各圧電部251−d〜251−fにおける接地電極層253側の各面が面一とされると共に、圧電部251−d〜221−fにおける信号電極層252側の面が信号電極層252に当接されると、圧電部251−eおよび圧電部251−fにおける信号電極層252側の各面と音響整合層23との間に、空隙が形成されることになる。このため、この空隙に誘電材料254が充填される。
ここで、上述の超音波探触子2において、第2圧電素子22における隣接する圧電部221−a〜221−c間には、それらの境界に沿って厚さ方向の溝(隙間、間隙、ギャップ)225が形成されてもよい。同様に、第3圧電素子25における隣接する圧電部251−d〜251−f間には、それらの境界に沿って厚さ方向の溝(隙間、間隙、ギャップ)255が形成されてもよい。このように互いに隣接する圧電部221間や圧電部251間に溝を形成することによって、それら間におけるクロストーク等の相互干渉が低減される。
第2音響整合層26は、第1圧電素子20の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスとの整合をとる部材である。したがって、第2音響整合層26は、第1圧電素子20の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスとの差が最も小さくなるように設定される。第2音響整合層23は、単層で構成されてもよく、あるいは、複数層で構成されてもよい。第2音響整合層26は、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が好ましい。これらの樹脂の音響インピーダンスは、2〜5であり、音響インピーダンスを調節する混合材料として、シリカ粒子、硝子粒子、金属粒子(タングステン、亜鉛、アルミニウム、錫、銀、白金、金等)が添加されてもよい。なお、第3圧電素子25は、有機圧電材料で形成されているため、その音響インピーダンスは、低い。このため、第2音響整合層26は、省略可能である。
音響レンズ27は、円弧状に膨出した形状とされ、被検体に向けて送信される超音波を収束する音響素子である。
これら複数の第1圧電素子20のそれぞれは、第2圧電素子22と、第2圧電素子22に積層された第3圧電素子25とを備えて構成されている。第3圧電素子25は、直接的にあるいは図3(B)に示すように他の層を介して間接的に第2圧電素子22上に積層されている。
本実施形態では、図3(B)に示すように、第2圧電素子22は、平板状の音響制動部材(バッキング層)21の一方主面上に配置され、第2圧電素子22上に第1音響整合層23が積層され、第1音響整合層23上に音響制動部材(バッキング層)24が積層されている。第3圧電素子25は、この音響制動部材24上に積層され、第3圧電素子25上に第2音響整合層26が積層されている。そして、第2音響整合層26上に音響レンズ27が積層されている。
音響制動部材21は、超音波を吸収する材料から構成され、複数の第1圧電素子20から音響制動部材21方向へ放射される超音波を吸収するものである。音響制動部材24は、超音波を吸収する材料から構成される。音響制動部材21、24は、一般に、ダンパあるいはバッキング層とも呼ばれる。そして、各第1圧電素子20のそれぞれに接続する複数の複数の信号線282が音響制動部材21を貫通している。なお、各第1圧電素子20のそれぞれに接続する複数の接地線(アース線)283は、各第1圧電素子20からそれぞれ引き出される。
第2圧電素子22は、導電線の信号線(送信信号線)282と接続する導電材料から成る信号電極層222と、信号電極層222上に形成され、圧電材料から成る圧電層221と、圧電層221上に形成され、導電材料から成る接地電極層223とを備えて構成される。すなわち、これら複数の第2圧電素子22のそれぞれは、互いに対向する一対の第1および第2電極を備え、これら第1および第2電極間に、圧電材料から成る圧電部が形成されている。圧電材料は、例えば、無機圧電材料が用いられる。無機圧電材料は、電気エネルギを超音波振動エネルギに変換する変換効率の高いセラミック圧電材料が好ましく、例えば、いわゆるPZT、水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸タンタル酸カリウム(K(Ta,Nb)O3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等である。あるいは、水酸化カリウムと酸化ニオブ(Nb2O5)と水酸化カリウム(KOH)を用い、150−200℃に加熱する水熱合成法によりKNbO3の高品質粉末を得る技術が提案されており(例えば特開2004−284889号公報参照)、このような材料も採用可能である。この系統は、化学式で(K、Li、Na)(Nb、Ta)O3と表される。これらの音響インピーダンスは、20〜50の範囲にあり、比較的高い音響インピーダンスをもち、好適である。
そして、超音波探触子2では、複数の第2圧電素子22のそれぞれが、複数の区域に分割され、これら複数の区域(区画、領域)のそれぞれに、共振周波数が互いに異なる。
例えば、図3(B)に示す例では、第2圧電素子22は、平面視にて第2圧電素子22の一辺に平行な第1および第2境界(図3(B)では紙面に垂直な方向に沿った境界)で第1ないし第3区域Ar−a〜Ar−cに分割されている。これら3個の第1ないし第3区域Ar−a〜Ar−cは、図3(B)に示す例では、平面視にて互いに同一形状の矩形となっている。この第1区域Ar−aには、第1厚さt1の圧電材料から成る圧電部221−aが信号電極層222と接地電極層223との間に形成され、第1共振周波数fc1を持つ。第2区域Ar−bには、第2厚さt2の圧電材料から成る圧電部221−bが信号電極層222と接地電極層223との間に形成され、第2共振周波数fc2を持つ。第3区域Ar−cには、第3厚さt3の圧電材料から成る圧電部221−cが信号電極層222と接地電極層223との間に形成され、第3共振周波数fc3を持つ。そして、これら第1ないし第3厚さt1〜t3が互いに異なる厚さとされることで、第1ないし第3共振周波数fc1〜fc3は、互いに異なる周波数となっている。圧電部221−a〜221−cの圧電材料と性能が同一である場合には共振周波数定数が一定であるので、例えば、第1厚さt1>第2厚さt2>第3厚さt3の関係にある場合では、第1共振周波数fc1<第2共振周波数fc2<第3共振周波数fc3となり、第1ないし第3区域Ar−a〜Ar−cには、共振周波数が低周波数から高周波数へ順に配列されることになる。なお、共振周波数定数は、(共振周波数)×(圧電素子の振動方向の厚さ)で与えられる。例えば、圧電部221−a〜221−cの圧電材料として、共振周波数定数が約2000Hz・mのPZTが用いられる場合では、第1厚さt1が200μmに設計されると、第1区域Ar−aでは、共振周波数は、10Mzとなり、第2厚さt2が100μmに設計されると、第2区域Ar−bでは、共振周波数は、20Mzとなり、そして、第3厚さt3が50μmに設計されると、第3区域Ar−cでは、共振周波数は、40Mzとなる。
ここで、このように各区域Ar−a〜Ar−cにおける各圧電部221−a〜221−cの厚さが異なるため、各圧電部221−a〜221−cにおける接地電極層223側の各面が面一とされると共に、圧電部221−a〜221−cにおける信号電極層222側の面が信号電極層222に当接されると、圧電部221−bおよび圧電部221−cにおける信号電極層222側の各面と第1音響制動部材21との間に、空隙が形成されることになる。このため、この空隙に誘電材料224が充填される。この空隙に充填される誘電材料224の誘電率は、約2ないし約40であることが好ましい。
第1音響整合層23は、第2圧電素子22の音響インピーダンスと第3圧電素子25の音響インピーダンスとの整合をとる部材である。第1音響整合層23は、第1圧電素子20の音響インピーダンスと第2圧電素子25の音響インピーダンスとの間の値を採用することが好ましい。第2圧電素子25に例えばセラミック圧電材料を使用すると、その音響インピーダンスは、20〜50(Mralys)の範囲になり、第3圧電素子25に例えば有機圧電材料を使用すると、その音響インピーダンスは、2〜10(Mralys)の範囲になる。したがって、第1音響整合層23の音響インピーダンスは、2から30の範囲が好ましい。第2圧電素子22の音響インピーダンスZtと、第3圧電素子25の音響インピーダンスZrとした場合に、それらと第1音響整合層23の音響インピーダンスZiの関係は、Zt<Zi<Zrの関係になるのが好ましい。本実施形態では、第1音響整合層23は、少なくとも1層必要である。n層とする場合、送信側から受信側に掛けてZi1、Zi2、Zi3、・・・、Zinの関係は、Zi1<Zi2<Zi3<・・・<Zinのような関係になることが好ましい。第1音響整合層23は、この関係で多ければ多い程整合が採り易いが、性能と生産性から2層から3層程度が好ましい。2層の場合では、2<Zi2<7、10<Zi1<30の範囲が好ましい。この値より小さい場合や大きい場合は、音響整合が採りにくくなるからである。音響インピーダンスの採り方は、デジレ(Desilets)のKLMモデルやドール(Doll)の計算式を適用してもよい。第1音響整合層23の樹脂素材は、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン樹脂、シクロオレフィン樹脂、ポリエスエル樹脂、ポリビニルブチラール樹脂が好ましい。エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAとエピクロルヒドリンの共重合体がもっとも好ましい。エポキシ樹脂の硬化剤としては、種々のポリアミンや酸無水物が使用される。ポリイミド樹脂としては、ビフエニルテトラカルボン酸二無水(BPDA)とジアミンとの縮重合によるものが好ましい。シリコン樹脂は、シロキサン結合したオルガノポリシロキサンが好ましく、オルガノ基の選択により好適な構造を選択することができる。このような樹脂のなかに、各種添加物、例えば、タングステン粒子、タンタル粒子、銅粒子、アルミニウム粒子、銀粒子、白金粒子などを添加することにより音響インピーダンスを調整することができる。タングステン粒子をビスフェノール型のエポキシ樹脂に添加することにより、第1音響整合層23に必要な音響インピーダンスである2〜50(MRayls)を得ることが可能である。
第3圧電素子25は、導電線の信号線(受信信号線)281と接続する導電材料から成る信号電極層252と、信号電極層252上に形成され、圧電材料から成る圧電層251と、圧電層251上に形成され、導電材料から成る接地電極層253とを備えて構成される。すなわち、これら複数の第3圧電素子25のそれぞれは、互いに対向する一対の第1および第2電極を備え、これら第1および第2電極間に、圧電材料から成る圧電部が形成されている。圧電材料は、例えば、有機圧電材料が用いられる。有機圧電材料は、例えば、フッ化ビニリデンの重合体を用いることができる。また例えば、有機圧電材料は、フッ化ビニリデン(VDF)系コポリマを用いることができる。このフッ化ビニリデン系コポリマは、フッ化ビニリデンと他の単量体との共重合体(コポリマ)であり、他の単量体としては、3フッ化エチレン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、パーフルオロアルコキシエチレン(PAE)およびパーフルオロヘキサエチレン等を用いることができる。フッ化ビニリデン系コポリマは、その共重合比によって厚み方向の電気機械結合定数(圧電効果)が変化するので、例えば、超音波探触子の仕様等に応じて適宜な共重合比が採用される。例えば、フッ化ビニリデン/3フッ化エチレンのコポリマの場合では、フッ化ビニリデンの共重合比が60mol%〜99mol%が好ましく、有機圧電素子を無機圧電素子に積層する複合素子の場合では、フッ化ビニリデンの共重合比が85mol%〜99mol%がより好ましい。また、このような複合素子の場合では、他の単量体は、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)、パーフルオロアルコキシエチレン(PAE)およびパーフルオロヘキサエチレンが好ましい。また例えば、有機圧電材料は、ポリ尿素を用いることができる。このポリ尿素の場合では、蒸着重合法で圧電体を作成することが好ましい。ポリ尿素用のモノマとして、一般式、H2N−R−NH2構造を挙げることができる。ここで、Rは、任意の置換基で置換されてもよいアルキレン基、フェニレン基、2価のヘテロ環基、ヘテロ環基を含んでもよい。ポリ尿素は、尿素誘導体と他の単量体との共重合体であってもよい。好ましいポリ尿素として、4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を用いる芳香族ポリ尿素を挙げることができる。
そして、超音波探触子2では、複数の第3圧電素子25のそれぞれが、第2圧電素子22と同様に、複数の区域に分割され、これら複数の区域(区画、領域)のそれぞれに、共振周波数が互いに異なる。
例えば、図3(B)に示す例では、第3圧電素子25は、平面視にて第3圧電素子22の一辺に平行な第1および第2境界(図3(B)では紙面に垂直な方向に沿った境界)で第1ないし第3区域Ar−d〜Ar−fに分割されている。これら3個の第1ないし第3区域Ar−d〜Ar−fは、図3(B)に示す例では、平面視にて互いに同一形状の矩形となっている。この第1区域Ar−dには、第4厚さt4の圧電材料から成る圧電部251−dが信号電極層252と接地電極層253との間に形成され、第4共振周波数fc4を持つ。第2区域Ar−eには、第5厚さt5の圧電材料から成る圧電部251−eが信号電極層252と接地電極層253との間に形成され、第5共振周波数fc5を持つ。第3区域Ar−fには、第6厚さt6の圧電材料から成る圧電部251−fが信号電極層252と接地電極層253との間に形成され、第6共振周波数fc6を持つ。そして、これら第4ないし第6厚さt4〜t6が互いに異なる厚さとされることで、第4ないし第6共振周波数fc4〜fc6は、互いに異なる周波数となっている。圧電部251−d〜251−fの圧電材料と性能が同一である場合には共振周波数定数が一定であるので、例えば、第4厚さt4>第5厚さt5>第6厚さt6の関係にある場合では、第4共振周波数fc4<第5共振周波数fc5<第6共振周波数fc6となり、第1ないし第3区域Ar−d〜Ar−fには、共振周波数が低周波数から高周波数へ順に配列されることになる。
そして、このように各区域Ar−d〜Ar−fにおける各圧電部251−d〜251−fの厚さが異なるため、各圧電部251−d〜251−fにおける接地電極層253側の各面が面一とされると共に、圧電部251−d〜221−fにおける信号電極層252側の面が信号電極層252に当接されると、圧電部251−eおよび圧電部251−fにおける信号電極層252側の各面と音響整合層23との間に、空隙が形成されることになる。このため、この空隙に誘電材料254が充填される。
ここで、上述の超音波探触子2において、第2圧電素子22における隣接する圧電部221−a〜221−c間には、それらの境界に沿って厚さ方向の溝(隙間、間隙、ギャップ)225が形成されてもよい。同様に、第3圧電素子25における隣接する圧電部251−d〜251−f間には、それらの境界に沿って厚さ方向の溝(隙間、間隙、ギャップ)255が形成されてもよい。このように互いに隣接する圧電部221間や圧電部251間に溝を形成することによって、それら間におけるクロストーク等の相互干渉が低減される。
第2音響整合層26は、第1圧電素子20の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスとの整合をとる部材である。したがって、第2音響整合層26は、第1圧電素子20の音響インピーダンスと被検体の音響インピーダンスとの差が最も小さくなるように設定される。第2音響整合層23は、単層で構成されてもよく、あるいは、複数層で構成されてもよい。第2音響整合層26は、例えば、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等が好ましい。これらの樹脂の音響インピーダンスは、2〜5であり、音響インピーダンスを調節する混合材料として、シリカ粒子、硝子粒子、金属粒子(タングステン、亜鉛、アルミニウム、錫、銀、白金、金等)が添加されてもよい。なお、第3圧電素子25は、有機圧電材料で形成されているため、その音響インピーダンスは、低い。このため、第2音響整合層26は、省略可能である。
音響レンズ27は、円弧状に膨出した形状とされ、被検体に向けて送信される超音波を収束する音響素子である。
このような構成の超音波診断装置Sでは、例えば、操作入力部11から診断開始の指示が入力されると、制御部17の制御によって送信部12で電気信号の送信信号が生成される。この生成された電気信号の送信信号は、ケーブル3を介して超音波探触子2へ供給される。より具体的には、この電気信号の送信信号は、超音波探触子2における第1圧電素子20へ供給され、第1圧電素子20では、第2圧電素子22における各区域Ar−a〜Ar−cの圧電部221−a〜221−cへそれぞれ供給される。第2圧電素子22では、これら圧電部221−a〜221−cのうちの、この電気信号に対応する共振周波数を持つ圧電部221−a〜221−cが、この電気信号の送信信号が供給されることによってその厚さ方向に伸縮し、この電気信号の送信信号に応じて超音波振動する。この超音波振動によって、第1圧電素子20は、第1超音波信号を放射する。第1圧電素子20から音響制動部材21方向へ放射された第1超音波信号は、音響制動部材21によって吸収される。また、第1圧電素子20から第1音響整合層23方向へ放射された第1超音波信号は、第3圧電素子25、第2音響整合層26および音響レンズ27を介して放射される。超音波探触子2が被検体に例えば当接されていると、これによって超音波探触子2から被検体に対して第1超音波信号が送信される。
なお、超音波探触子2は、被検体の表面上に当接して用いられてもよいし、被検体の内部に挿入して、例えば、生体の体腔内に挿入して用いられてもよい。
この被検体に対して送信された超音波は、被検体内部における音響インピーダンスが異なる1または複数の境界面で反射され、超音波の反射波(第2超音波信号)となる。この第2超音波信号には、送信された第1超音波信号の周波数(基本波の基本周波数)成分だけでなく、基本周波数の整数倍の高調波の周波数成分も含まれる。例えば、基本周波数の2倍、3倍および4倍等の2次高調波成分(=2×1次高調波成分)、3次高調波成分(=(2×1+1)高調波成分)および4次高調波成分(=2×2次高調波成分)等も含まれる。この第2超音波信号は、超音波探触子2で受信される。より具体的には、この第2超音波信号は、音響レンズ27および第2音響整合層26を介して第1圧電素子20の第3圧電素子25で受信される。すなわち、この第2超音波信号は、第3圧電素子25における各区域Ar−d〜Ar−fの圧電部251−d〜251−fでそれぞれ受信され、これら圧電部251−d〜251−fのそれぞれで機械的な振動が電気信号に変換されて受信信号として取り出される。
ここで、第3圧電素子25における各圧電部251−d〜251−fは、それぞれ、第2超音波信号に含まれる周波数成分のうちのその共振周波数にほぼ対応する周波数成分で機械的に振動し、その振動に応じた電気信号を出力する。そして、第3圧電素子25は、互いに共振周波数の異なる複数の圧電部251−d〜251−fを有するので、第2超音波信号に含まれる複数の周波数成分、すなわち、広い周波数帯域に亘って第2超音波信号を受信することができる。
そして、第1圧電素子20(第3圧電素子25)で取り出されたこの電気信号の受信信号は、ケーブル3を介して制御部17で制御される受信部13で受信される。受信部13は、この入力された受信信号を受信処理し、より具体的には、例えば増幅した後に相関部14へ出力する。そして、相関部14で相関処理を行うことで所定次数の高調波成分が取得され、画像処理部15へ出力される。
ここで、上述において、各第1圧電素子20から順次に超音波が被検体に向けて送信され、被検体で反射した第2超音波信号が複数の第1圧電素子20で受信される。
そして、画像処理部15は、制御部17の制御によって、受信部13で受信され相関部14で相関処理された受信信号に基づいて、送信から受信までの時間や受信強度等から被検体の超音波画像を生成する。
画像処理部15は、Bモード処理回路、ドプラ処理回路またはカラーモード処理回路を備えている。Bモード処理回路は、エコーの振幅情報の映像化を行い、エコー信号からBモード超音波ラスタデータを生成する。ドプラ処理回路は、ドプラ偏移周波数成分を取り出し、さらに(高速フーリエ変換)FFT処理等を施して血流情報を有するデータを生成する。カラーモード処理回路は、動いている血流情報の映像化を行い、カラー超音波ラスタデータを生成する。血流情報には、速度、分散、パワー等の情報があり、血流情報は、2値化情報として得られる。また、直交座標系で表される画像を得るために、超音波ラスタデータは、直交座標で表されるデータに変換される。例えば、Bモード処理回路から出力されたデータに対してDSC処理が施されると、被検体の組織形状を2次元情報として表す断層像データが生成される。また、DSC処理では、断層像データをリサンプリング処理することによって、ボクセルデータを生成することも可能である。ボクセルデータに対してボリュームレンダリング処理などを行って3次元画像データ等が生成される。表示部16は、制御部17の制御によって、画像処理部15で生成された被検体の超音波画像を表示する。
次に、相関処理に関し、より具体的に説明する。
図4は、相関処理の説明に当たって、実施形態にかかる超音波診断装置のより具体的な構成を示す図である。図5は、相関演算を説明するための図である。図6は、アナログ積和演算を説明するための図である。
アナログ信号をデジタル変換してから相関処理を行ったのでは、高調波成分が受信信号全体に占めるエネルギ量が微弱であるため、良質な超音波画像の形成に必要なダイナミックレンジが取れない。そのため、本実施形態における相関部14では、相関処理自体をアナログで行うものである。
図4において、相関部14は、超音波探触子2の複数(n個)の第1圧電素子20ごとに複数の相関処理部50−1、50−2、50−3、・・・、50−nを備えて構成されており、各相関処理部50−1、50−2、50−3、・・・、50−nは、同様に構成されている。その一つについて説明すると、相関処理部50は、CCD原理に基づくアナログ積和演算を行うことによって受信部13の出力と参照信号との相関を演算する回路であり、例えば、サンプルホールド部51と、電荷転送部52と、重み付け設定部53と、デジタルアナログ乗算部54と、加算部55とを備えて構成される。
サンプルホールド部51は、タイミング発生部19からの動作タイミングに応じたサンプリング周期で、受信部13の出力を保持する回路である。サンプルホールド部51は、動作タイミングに応じたタイミングで、この保持した受信部13の出力に対応する電荷を電荷転送部52へ出力する。
電荷転送部52は、電荷を保持する複数の電荷保持部521−1、521−2、521−3、・・・、521−nを備えて構成されている。これら各電荷保持部521−1、521−2、521−3、・・・、521−nは、直列に接続されており、タイミング発生部19からの動作タイミングに応じたタイミングで自己の電荷保持部521で保持している電荷を順次に後段の電荷保持部521へ転送する。この点がCCD原理に基づいている。そして、電荷転送部52の各電荷保持部521で順次に転送された電荷は、高調波検出部15へ出力される。
デジタルアナログ乗算部54は、各電荷保持部521に対応して設けられた複数のデジタルアナログ乗算器(DA乗算器)541−1、541−2、541−3、・・・、541−nを備えて構成されている。DA乗算器541は、重み付け設定部53によって自機に設定されている重み付けで電荷保持部521からの出力値を乗算し、この乗算結果を加算部55へ出力する。
重み付け設定部53は、参照信号記憶部10に記憶されている参照信号に基づいてデジタルアナログ乗算部54の各DA乗算器541−1、541−2、541−3、・・・、541−nに対し、重み付け値を設定するものである。この重み付け値は、操作入力部11の補正値入力部111から補正値が入力された場合には、この入力された補正値で補正される。
加算部55は、デジタルアナログ乗算部54の各DA乗算器541−1、541−2、541−3、・・・、541−nから入力された乗算結果を加算し、この加算結果を画像処理部16へ出力する回路である。
このような構成の相関部14(相関処理部50)では、次のように動作する。
アナログ相関処理では、CCDに用いられる電荷移送技術を用いて、2つ以上の電荷を1つの容量素子にまとめあげることで加算を行い、1つの電荷を2分し、一方をさらに2分し、それを繰り返すことで、1/2、1/4、1/8、1/16、・・・の電荷を用意し、乗数の2進表現に従い、取捨し、再度ひとつの電荷にまとめることで乗算を行うアナログ電荷積和遅延が行われる。この点が、アナログ積和演算である。ここで言う相関処理とは、2つの波形がどの程度似ているかを判定する処理であり、例えば、2つの数列xnとynがあった場合、次の式1で示されるzが大きいほど、2つの数列が似通っていることになる(通常、信号を検出すると図5のグラフのような急峻なピークを示す)。
z=Σxkyk ・・・(1)
ただし、Σは、k=1からk=nまでの和を求める。
電荷転送部52の電荷保持部521の各ステージに蓄えられている電荷量Qkに参照信号(テンプレート)の対応する重み付け値を乗じ、和をとることで、ノイズの中に信号が存在するか否かを高いS/N比で計算することができる。
相関処理部50は、アナログ量である電荷量Qを用い、遅延、加算および乗算が可能なデバイスであり、これを用いることで、高分解能、高速かつ低消費電力に、相関処理などの演算処理が可能となる。実際のデバイスの構成としては、上述したようにCCD類似のデバイス形態となる。例えば、CCDでは、電荷移送を行う場合、ポテンシャル井戸の深さが転送方向に向かって深くなるように調節することによって行われる。図6(A)のように電荷を図上では左から右へ移動させていくことで信号の流れを制御する。加算を行う場合は、図6(B)に示すように、二つ以上のポテンシャル井戸が一つになるように、駆動電圧を制御する。乗算を行う場合は、例えば、一つのポテンシャル井戸を2分割するような駆動電圧を制御して(例えば上記加算器の逆)、電荷QをQ/2、Q/4、Q/8、Q/16、Q/32、Q/64、・・・というように分割し、それを乗数(デジタル値)のビットに応じて捨てたり残したりする。すなわち、ビットが0の場合には、捨て、ビットが1の場合には残す。その後に、残した電荷をすべて足すことで、乗数Mが0≦M<1の乗算を行う。例えば、Q×0.36827(10進数)は、Q×0.01011110(2進数)となって、Q×(0+0/2+1/4+0/8+1/16+1/32+1/64+1/128+0/256)となる。
これら絶対値電荷に加え、絶対値である電荷量の正負を表す符号ビットを用いて積和演算を実現する。
また、相関処理とは、2つの波形がどの程度似ているかを判定する処理であり、例えば、上述したように、2つの数列xnとynとがあった場合、上記式1で示されるzが判定基準となる。
送信信号をs(t)とし、送信信号s(t)に雑音を含ませたものをz(t)とし、上記の式1からなる判定基準をzとすると、図5に波線で示すように、参照信号と受信信号が重なる瞬間に急峻なピークが検出される。このピークが大きければ大きいほど、参照信号とよく類似した信号が受信されたことになる。ノイズ耐性を高めるためには、できるだけ冗長な、自然界に無い信号を送信信号(参照信号)s(t)に用いることが望ましい。実際には、図4のように、受信部13が受信する連続信号s(t)を時間τでサンプリングホールドし、離散量f(t)、f(t−τ)、f(t−2τ)、f(t−3τ)、f(t−4τ)、・・・とする。これらに各々相当する重み付け係数g(1)〜g(n)をかけて総和をとることによって得ることができる(式2)。
z=Σf(t−kτ)g(k) ・・・(2)
ただし、Σは、k=1からk=nまでの和を求める。
このzの値がある閾値より大きい場合に、第2超音波信号の高調波成分をzに比例する強度で受信したとして画像処理部15へ出力する。画像処理部15では、このzから遅延時間や信号強度を求めて超音波画像を生成する。
例えば、3MHz〜5MHzのチャープ波を用いた送信信号を以下のようにする。
s(t)=A・sin{2π[(fc-Bw/2)t+(Bw/(2Tw))t2]}・W(t) ・・・(3)
W(t)は、窓関数(本実施形態では例えばハミング窓を使用)であり、fcは、チャープ波の中心周波数であり、Bwは、チャープ波の掃引周波数であり、Twは、チャープ波の時間幅である。本実施形態においては、fc=4MHz、Bw=2MHzとし、Twは、診断領域の面積により設定される。
相関処理によって検出する高調波の次数をnとすると、nが偶数の場合の参照波形r(t)は、式4となる。
r(t)=f(d,n)・(s(t)/|s(t)|)・{s(t)}n ・・・(4)
一方、nが奇数の場合の参照波形r(t)は、式5となる。
r(t)=f(d,n)・{s(t)}n ・・・(5)
f(d、n)は、診断深度、診断対象および次数によって決定される項であり、フォーカルポイントごとに用意された補正値入力部111の重み付けスライダ等によって、ユーザが出力画像を見つつ最適な値を選択してもよい。この関数r(t)を規定のサンプリング周波数でデジタル化したものが参照信号のg(1)〜g(n)に書き込まれる値として、診断深度、診断対象および検出次数ごとに参照信号のデータとして参照信号記憶部18に記憶される。
制御部17がROIを基に指定するステアリング角度とフォーカルポイント深度からビームフォーマの遅延が送信ビームフォーマ回路122で設定され、駆動信号生成回路121でPCMによって形成した上記チャープ波が、超音波探触子2の第1圧電素子20に印加され、電気音響変換(圧電現象)によって第1超音波信号が発生される。フォーカルポイントにて収束された超音波信号は、被検体内の組織界面で反射されるとともに音圧強度に依存した高調波が発生される。組織界面で反射し、被検体内を伝播した第2超音波信号は、超音波探触子2の第1圧電素子20によって受信され、受信部13で受信処理される。受信部13からの出力は、その受信波形をサンプルホールドすべく、各第1圧電素子20ごとに、サンプルホールド部51によって時間方向に離散化される。それらは、一定の動作タイミングのタイミング(制御クロック)によって、電荷転送部52に入力される。電荷転送部52では、xa(1)〜xa(n)のn段の電荷保持部521−1、521−2、521−3、・・・、521−nを持ち、動作タイイングごとにそれぞれの値が次の段に移動する。電荷転送部52の各電荷保持部521−1、521−2、521−3、・・・、521−nの各段xa(1)〜xa(n)は、それぞれ、保持する値を出力するDA乗算器541−1、541−2、541−3、・・・、541−nを有し、それぞれが対応するDA乗算器541へと接続されている。各DA乗算器541−1、541−2、541−3、・・・、541−nには、それぞれ相関処理のための重み付け係数g(1)〜g(n)が重み付け設定部53の設定によって保持されており、また、これら重み付け係数は、制御部17に制御による重み付け設定部53によって、書き換え可能とされている。制御部17は、参照信号(テンプレート)のデータを参照信号記憶部18から選択し、重み付け設定部53を介して各DA乗算器541−1、541−2、541−3、・・・、541−nが保持する重み付け係数g(1)〜g(n)を書き込む。各DA乗算器541−1、541−2、541−3、・・・、541−nは、重み付け係数g(k)のビット数に比例する遅延を経て、xa(k)×g(k)を出力し、これら出力が加算部55によって加算され、相関係数zaが得られる。なお、添え字aは、超音波探触子2の複数の第1圧電素子20のうちのa番目の第1圧電素子20に関連していることを表している。超音波探触子2のアレイ状に配列された第1圧電素子20それぞれに対して相関係数zaが得られ、また相関係数zaのピーク位置を基に遅延補正回路151で遅延補正を行った後、各第1圧電素子20の相関係数を整相加算回路152で整相加算することで、全体の相関係数z、すなわち相関処理された受信信号y(t)が得られ、これを基に超音波画像が形成される。
このように本実施形態の超音波診断装置Sでは、2次元アレイ状に配列された複数の第1圧電素子20を含む2次元の超音波探触子2を備えるので、ボリュームスキャンを行って3次元的な生体情報を収集することができ、3次元の超音波画像の形成が可能となる。このため、ボリュームスキャンを行なうことによって、2次元のスキャン面をスキャンする場合と比べて、画像診断に有用な情報が多く得られる。そして、送信電気信号が符号化されており、この送信電気信号が第1超音波信号に変換され、符号化された第1超音波信号が被検体内に送信され、この第1超音波信号に基づく被検体内から来た第2超音波信号が受信電気信号に変換され、この受信電気信号が相関処理され、第2超音波信号の受信電気信号が検出される。このため、この送信電気信号の符号化と相関処理とによって、第2超音波信号の高調波成分を比較的高いSN比で取得することが可能となる。
また、上述の超音波診断装置Sでは、第1超音波信号(送信電気信号)が自然界に通常存在しないチャープ波であるので、その高調波成分を検出する場合に、ノイズ成分と区別し易い。このため、より高いSN比で高調波成分を取得することが可能となる。チャープ波に代え、送信電気信号がPN符号系列により符号化される場合も同様に、より高いSN比で高調波成分を取得することが可能となる。
また、上述の超音波診断装置Sでは、互いに異なる複数の参照信号が参照信号記憶部18に記憶され、相関部14が、検出すべき高調波の次数、被検体の診断部位および被検体の診断深度に応じてこれら複数の参照信号から1つの参照信号を選択して相関処理を行うので、診断領域全体に亘ってより適切な参照信号が選択され、相関処理が行われる。このため、診断領域全体に亘って、より高いSN比で高調波成分を取得することが可能となる。
また、上述の超音波診断装置Sでは、参照信号は、第1超音波信号に基づいて生成される関数である。より具体的には、参照信号は、第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における検出すべき高調波の次数を2n(nは正の整数)とした場合に、第1超音波信号が正の値である場合には+1を乗算した第1超音波信号の2n乗であって、第1超音波信号が負の値である場合には−1を乗算した前記第1超音波信号の2n乗である。このため、2n次高調波成分を取得するための参照信号を生成することが可能となる。あるいは、参照信号は、第1超音波信号の周波数を基本周波数とした場合における検出すべき高調波の次数を(2n+1)(nは正の整数)とした場合に、第1超音波信号の(2n+1)乗である。このため、(2n+1)次高調波成分を取得するための参照信号を生成することが可能となる。
また、上述の超音波診断装置Sでは、相関部14は、CCD原理に基づくアナログ積和演算装置を備えて構成される。このため、微弱な信号レベルである高調波成分でもより適切に相関処理を行うことが可能となる。
また、上述の超音波診断装置Sでは、第1圧電素子20は、送信用の第2圧電素子22と受信用の第3圧電素子25とに分離されている。このため、第2圧電素子22には、例えば圧電材料に無機圧電材料を使用することによって送信に適した圧電素子とすることができ、そして、第3圧電素子25には、例えば圧電材料に有機圧電材料を使用することによって受信に適した圧電素子とすることができる。このため、よりに高調波成分を取得することが可能となる。なお、上述の超音波診断装置Sでは、送信用の第2圧電素子22と受信用の第3圧電素子25とは、超音波信号の送受信方向に積層されているが、複数の圧電素子を送信用の圧電素子と受信用の圧電素子25とに分離するに当たって、超音波信号の送受信方向に略垂直な平面において、並置され、2次元アレイ状に配列された複数の圧電素子が領域ごとに分割されたものであってもよい。
また、上述の超音波診断装置Sでは、受信用の第3圧電素子25には、比較的広帯域で超音波を受信することができる有機圧電素子が用いられているので、より適切に高周波成分を受信することが可能となる。
次に、超音波探触子の製造方法について説明する。
(超音波探触子の製造方法)
図7は、実施形態における超音波探触子の製造方法を説明するための図である。
本実施形態における上記構成の超音波探触子2は、例えば、次のように製造することができる。
図3および図7において、まず、送信用の第2圧電素子22を音響制動部材21上に製作する。図3に示す送受信分離型の第1圧電素子20は、送信用の第2圧電素子22と受信用の第3圧電素子25を第1音響整合層23および音響制動部材24を挟んで積層した構造になっている。送信用の第2圧電素子22は、図3に示すように薄い圧電薄板と電極層の挟み込み構造をなしてもよい。このような構造は、例えば圧電セラミックグリーンシートに銀ペースト等によって電極を印刷形成したものを焼成前に積層して一体で焼結することによって作成することができる。グリーンシートは、目的の共振周波数fcに応じて厚みを調製できる。厚み方向の圧電素子の周波数定数が2000MHz・mのPZTのグリーンシートでは、4MHzの周波数を発振するには、500μmであり、8MHzでは250μmであり、16MHzでは125μmとなる。このように、圧電材料の周波数定数から求めた最適な共振周波数の厚さ(焼結後の最終厚さ)を求めて、第2圧電素子22(圧電部221)の厚さを設定できる。この厚さを計算した後には、最も厚い圧電薄膜を順次研削や加温圧着して厚さを薄くして所望の周波数になるように調整し、各圧電部221の両端には、共通電極222、223を取り付け、その後、第1音響整合層23を取り付けていく。送信用の第2圧電素子22として、低周波から高周波までを発振するためには、好ましい方法としては、3領域の設定にすることが好ましい。すなわち、それぞれ3〜6MHz、7〜11MHzおよび12〜25MHzから選択されること、あるいは7〜11MHz、12〜15MHzおよび16MHz〜25MHzから選択されることである。その理由は、3〜6MHzは、断層深部(10〜20cm)に、7〜11MHzは、中程度(3〜10cm)に、12〜25は、浅部断層(0.1mm〜3)に、それぞれ適した超音波周波数であるからである。
同様にして、受信用の第3圧電素子25は、PVDF、P(VDF/3FE)尿素樹脂などの有機圧電素子の周波数定数から厚さを求め、その厚さになるように塗設や延伸を行う。延伸は、1軸と2軸延伸があり、多軸延伸としては、鍛造が好ましく適用される。鍛造は、ハンマーや圧着器等で叩いて圧力を加え、有機薄膜内部の空隙をつぶし、結晶を微細化し、結晶の方向を整えて強度を高めると共に圧電素子の形状に成形することで、本実施形態では、5kPa〜1GPaの圧力の範囲で加圧することが好ましい。この圧力以下では、薄膜内部の結晶や分子配列の制御が充分でなく圧電性能が向上しない。また、これ以上の圧力では、膜が破壊されてしまうので好ましくない。
本実施形態では、送信用の第2圧電素子22の上に第1音響整合層23を少なくも1層設ける。第1音響整合層23は、重合された樹脂中にフィラーを充填して1層から5層の範囲で複層で設けることもできるし、傾斜時材料的に、フィラーの充填量を変化させてもよい。フィラーの充填量を変化させる方法としては、例えば特開2003−169397号公報の如く光造形用樹脂をレーザー光照射により硬化させてもよい、インクジェットで樹脂材料とフィラーを吐出しながらフィラー濃度を変化させてもよい。樹脂の溶解が難しいときには、オリゴマーやモノマー原料液をインクジェットヘッドから吐出して塗布するのが好ましい。受信用の第3圧電素子25は、送信用の第2圧電素子22と同様に予め作成した板又はシートを接着剤で張り合わせてもよいし、第1音響整合層23の上に樹脂を塗布乾燥して製膜してもよいし、ここでも樹脂原料モノマーやオリゴマーをインクジェット式でヘッドから吐出させて薄膜を形成しても製作することができるし、または、モノマーを塗布して熱重合や光線、X線、電子線で重合することもできる。電極は、銀ペースト、白金ペースト、パラジウムペースト等を使用して形成しても良い。
本実施形態の超音波探触子2は、第1音響整合層23が第2圧電素子22上に光または熱硬化性樹脂の硬化層が積層されてもよい。この場合、第2圧電素子22の上に第1音響整合層23を接着せずに形成することができるため、接着剤の使用による気泡などの発生の恐れがなく、特性のバラツキが少ない第1音響整合層23を作成することができる。
また本実施形態の超音波探触子2は、光または熱硬化性樹脂に任意のフィラーが混入されて第2音響整合層26が形成されていることが好ましい。これにより、超音波の送受信を効率良く行なうために必要とされる適正な音響インピーダンスの第2音響整合層26を容易に作成することができる。第2音響整合層26は、厚み方向に音響インピーダンスが順次異なっていてもよい。第2音響整合層26が、フィラーの含有量が順次異なる複数の層を積層したことで、音響インピーダンスが順次異なる第2音響整合層26が形成されていると第1圧電素子20から送受信する超音波信号を効率良く伝達することができる。
本実施形態の超音波探触子2は、粒径が2種類以上のフィラーの混合物または層方向に異なったフィラーを混合した光または熱硬化性樹脂で第2音響整合層26を形成することが好ましい。これにより、超音波の送受信を更に効率良く行なうために必要とされる適正音響インピーダンスの第2音響整合層26を調節することができ、第1圧電素子20の超音波信号を効率良く送受信することができる。
また、本実施形態の超音波探触子2は、密度が2種類以上のフィラーの混合物または層方向に異なったフィラーを混合した光または熱硬化性樹脂で第2音響整合層26を形成することができる。これにより、第1圧電素子20の超音波信号を効率良く送受信することができる。超音波探触子2は、光硬化性樹脂にフィラーとしてタングステン、フェライト、あるいはアルミナのいずれか1種類以上を混入していることが好ましい。これにより、第1圧電素子20の音響インピーダンスと人体の音響インピーダンスとの中間的な値の第2音響整合層26を容易に形成することができ、超音波信号を効率良く送受信することができる。前記において、フェライトとは、鉄(Fe)が有する結晶構造体をいう。フィラーの樹脂中への充填量は、質量0%〜2000質量%の範囲で混合することが好ましい。第2音響整合層26を構成する樹脂層を複数層で形成し、下層の樹脂層の密度を大きく、表層の樹脂層の密度を小さくして、厚み方向の音響インピーダンスが異なるように成形することが好ましい。前記樹脂に混合したフィラーの沈降速度を利用して、下層のフィラー存在量が高く、表層のフィラー存在量を低くして、厚み方向の音響インピーダンスが異なるように成形する傾斜技術が好ましい。また前記樹脂層の密度は、フィラーの添加量、平均粒子径、及び密度から選ばれる少なくとも1つを異ならせることにより制御することが好ましい。
フィラーを充填するに好ましい熱硬化性樹脂は、ウレタンアクリレート系、エポキシアクリレート系、エステルアクリレート系、アクリレート系などのラジカル重合反応で硬化するタイプと、エポキシ系、ビニルエーテル系等のカチオン重合反応により硬化するタイプ等がある。どのようなタイプの樹脂を使用するかは、反応速度、収縮歪み、寸法精度、耐熱性、強度などによって使い分ける。樹脂としては、ウレタンアクリレート系とエポキシ系のものが主に使われているが、ウレタンアクリレート系は、反応速度が早く、分子間凝集力が大きく、機械的強度/熱的強度がエポキシ系に比べて有利で、強度を重要視した場合適当であり、一方、エポキシ系は、重合反応速度が遅く、収縮歪みが小さいのが特徴である。よって、エポキシ系の光造形樹脂は、寸法精度の点で有利で、精度を重視する場合に好適である。
上記積層および電極の挿入には、電極の固定化のために有機結合材を使用しないでもよいが、簡便な方法として採用する場合には汎用の接着剤を使用してもよい。特に、セラミック圧電素子と有機圧電素子を合体させる際に、有機圧電素子を挟む電極と有機圧電素子の界面の接着強度が不足して剥離し易いので有機結合材を使用するのが好ましい。好ましい有機結合材として以下のものを挙げることができる。
ポリビニルブチラール、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリエステル、ポリスルホン、シリコーンおよびその誘導体からなる樹脂等である。ポリビニルブチラールは、化審法の既存化学物質として(6)−708(CASNo.63148−65−2)を代表例に挙げることができる。ポリアミドは、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミドMXD6、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド46、メトキシ化ポリアミド(既存化学句物質(7)−383等である。ポリイミドは、NASAが開発した既存化学物質番号(7)−2211(CASNo.611−79−0)を挙げることができる。シリコーンとしては、既存化学物質(7)−476,(7)−474,(7)−477,(7)−483,(7)−485等が挙げられる。エポキシ化合物としては、ポリフェノール型、ポリグリシジルアミン型、アルコール型、エステル型などがあるが、特に、脂環式型が好ましく、既存化学物質番号で3−2452、3−3453、4−47、5−1052等が好ましい。脂環式型は、耐熱性もよく、接着力もよいので好ましく使用できる。これら樹脂の使用量は、求める感度、周波数特性などで適宜選択されるが、膜厚にして、10nmから60μm、好ましくは20nmから30μmである。
樹脂の使用方法は、DMSO,DMF,DME等の溶媒に溶解して使用してもよいし、溶媒を使用せず、バルクを溶解温度まで加温して熱溶解して使用してもよい。
結合剤の使用方法は、素子の積層において何れの層にも使用してよいが、好ましくは送信用の第2圧電素子22と受信用の第3圧電素子25を接合する際に使用するのが好ましい。送信用の第2圧電素子22には、既に電極が印刷または塗工されて形成されている場合には、電極が印刷されていない受信用の第3圧電素子25の上に使用するのが好ましい。
上記の積層製作行程では、送信用の第2圧電素子22と受信用の第3圧電素子25をそれぞれセラミックシートと有機薄膜シート状態で何れか一方の電極を印刷しておいて、第1音響整合層23を挟んで張り合わせることで合体化製作することができる。この場合に、圧電素子材料の送受信感度特性や駆動あるいは受信部13の入出力インピーダンス等を考慮して各積層構造の厚みや材料を選択して送信用および受信用の各圧電素子を製作することが必要である。したがって、送信用の第2圧電素子22、第1音響整合層23および受信用の第3圧電素子25は、それぞれ、インピーダンスを適宜選択したものとなることが好ましい。また、送信用の第2圧電素子22のみをグリーンシートの積層工法によって焼成製作し、第1音響整合層23および受信用の第3圧電素子25を後から張り合わせて被覆してもよいし、フッ化ビニリデン系の場合には、予めシートとして塗布乾燥され、1軸延伸されたシートを重ねて加工したものを使用し接着させた構造でもよい。特に、フッ化ビニリデン系は、予め圧電効果が最大となるように一軸延伸し、分極処理(ポーリング処理)を掛けたシートを有機結合剤を使用して貼り合わせた積層型のものが好ましい。
有機圧電シートしては、低い引張弾性率を有する高分子圧電膜であるフッ化ビニリデン/3フッ化エチレン共重合体が特に好ましい。例えば、製膜後の熱処理工程(強誘電−常誘電相転移点と融点との間の温度の熱を印加することで結晶性を高める工程)時の徐冷速度を3℃/分程度に早めることにより得られるものや、さらに、圧電膜を分極後、100度の温度で数10分(20〜30分間)アニーリングを施すことで、弾性率を若干下げることができる。また、この他にも製造工程中の操作で引張弾性率を低下させるのであればどのような方法を用いてもよい。
原料ポリマーの分子量に関しては、一般に、高分子では分子量の増加にともなって高分子特有の柔軟性やしなやかさを持ち、低い引張弾性率をもった圧電膜となる。P(VDF−TrFE)および/またはP(VDF−TeFE)において、230℃におけるメルトフローレイト(Melt Flow Rate)が0.02g/分以下、より好ましくは、0.01g/分以下である高分子圧電体を使用すると引張弾性率の低い高分子圧電 膜になり、高感度な圧電シートが得られる。上記VDFは、フッ化ビニリデンを、TrFEは、3フッ化エチレンを、TeFEは、テトラフルオロエチレンをそれぞれ示す。
一方、フッ化ビニリデン/3フッ化エチレンの場合、共重合比によって厚み方向の電気機械結合定数(圧電効果)が変化すので、例えば、前者の共重合比が60mol%〜99mol%が好ましいが、セラミック圧電素子と有機圧電素子を重ねる時に使用する有機結合剤の使用方法にもよるので、その最適値は、変化する。最も好ましい前記前者の共重合比の範囲は85モル%〜99モル%である。フッ化ビニリデンを85モル%〜99モル%にして、パーフルオロアルキルビニルエーテル、パーフルオロアルコキシエチレン、パーフルオロヘキサエチレン等を1モル%〜15モル%にしたポリマーは、送信用のセラミック圧電素子と受信用の有機圧電素子との組み合わせにおいて、送信基本波を抑制して、高調波受信の感度を高めるので特に好ましい。本実施形態の複合素子では、パーフルオロアルキルビニルエーテル(PFA)やパーフルオロアルコキシエチレン(PAE)、パーフルオロヘキサエチレンを使用することが好ましい。
その他の圧電素子用の高分子としてポリ尿素樹脂が挙げられる。好ましいポリ尿素としては、下記のa/bの組合せによるポリ尿素を挙げることができる。4,4′−ジアミノジフェニルメタン/3,3′−ジメチルジフェニル−4,4′−ジイソシアナート、4,4′−ジアミノジフェニルメタン/o−ジアニシジンジイソシアナート、4,4′−ジアミノジフェニルメタン/メチレンビス(4−イソシアナート−2−メチルベンゼン)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン/4,4′−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン/2,4−トルエンジイソシアナート(2,4−TDI)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン/2,6−トルエンジイソシアナート(2,6−TDI)、4,4′−ジアミノジフェニルメタン/ビス(4−イソシアナートフエニル)エーテル、4,4′−ジアミノジフェニルメタン/p−フェニレンジイソシアナート、4,4′−ジアミノジフェニルメタン/1,5−ナフタレンジイソシアナート等を挙げることができる。シアナートモンマーとジアミンモノマーを重合させた素材である。
高分子膜の製法は、それぞれのモノマーを真空中で蒸発させ、重合させる蒸着重合で薄膜を製法する方法や予めモノマー同士を重合させたポリマーを適当な溶媒で溶解し、溶媒を蒸発させて薄膜を形成する塗布方式などが存在する。圧電性は、ポリマーの重合度、分子量分布、共重合比で変化するので、適宜選択することが好ましい。特に、延伸することにより、分子を一定方向に配向させるので、2軸延伸や多軸延伸である鍛造が好ましい。鍛造は、薄膜を圧力で多方向に引き延ばすもので、元の薄膜を2倍から6倍の範囲で多軸に延伸することができ、圧電性の付与には得に好ましい。圧力は、前述のごとく5kPa〜1GPaの範囲で任意に実施することができるので、加温しつつこの方法を採用することは素子の作成が簡便であるというメリットがある。
高分子圧電膜は、ポーリングは分極反転が起こるまでポーリングすることが好ましく、分極反転は、ポーリング電場をその方向を繰り返し反転させて印加することによって得られる。このような分極分布状態の形成が充分するには温度によって異なり、常温では数万回〜数十万回と必要であるが、80℃以上の高温では数回〜数十回でよい。また、受信用圧電素子の場合には該素子の薄膜形成時に1mW〜1kW/cm2のコロナ処理を常圧で実施してもよい。
送信用の第2圧電素子22の材料は、PZTが屡々使用されるが、鉛を含まないものであってもよい。水晶、ニオブ酸リチウム(LiNbO3)、ニオブ酸タンタル酸カリウム[K(Ta,Nb)O3]、チタン酸バリウム(BaTiO3)、タンタル酸リチウム(LiTaO3)およびチタン酸ストロンチウム(SrTiO3)等である。
超音波の収束のために音響レンズ27を第2音響整合層26に接合させてもよい。またここでは第2音響整合層26は、単層であっても多層であっても、あるいは第2音響整合層26がなくてもよい。好ましい第2音響整合層26の層数は、2〜3である。
次に、実施例について説明する。図3に示す構成で超音波探触子2を作製した。送信用の第2圧電素子22としては、周波数4MHzの発振が可能な音響インピーダンス34MraylsのPZTを使用した。この素子の3分の1は、厚さを半分にして8MHz、更に3分の1を厚さを半分にして16MHzに共振する区域を形成させた。図3に示す圧電部221−aの区域Ar−aが4MHzであり、圧電部221−bの区域Ar−bが8MHzであり、圧電部221−cの区域Ar−cが16MHzで発振する。受信用の第3圧電素子26としてトリフッ化エチレンが25%モルであり、75モル%がフッ化ビニリデンからなる数平均分量量30万の共重合体:P(VDF/3FE)を使用した。このPVDFの音響インピーダンスは、4.5であり、このP(VDF/3FE)を4MHz、8MHzおよび16MHzの各周波数を共振して受信することができるように3区分して振動方向の厚さを鍛造設定した。図3に示す圧電部251−dの区域Ar−dが4MHzであり、圧電部251−eの区域Ar−eが8MHzであり、圧電部251−fの区域Ar−fが16MHzである。鍛造は、ハンマーで区域Ar−dを5MPaで、区域Ar−eを10MPaで、区域Ar−fを20MPでそれぞれ薄膜を温度120℃で一定にしながらおこなった(試料1)。比較用として鍛造なしで溶媒メチルエチルケトンに溶解して塗布乾燥した薄膜も作成した(試料2)。第1音響整合層23は、2層型としてビスフェノールA型エポキシ樹脂に平均粒子径3μmのタングステン粉末を分散して、音響インピーダンスが7(受信側に近い)および15Mray(送信側に近い)を作製した。受信用の第3圧電素子25と音響レンズ27の間の第2音響整合層26は、添加物なしのシリコン樹脂のみの層を使用した。音響制動部材21にはビスフェノール型エポキシ樹脂に平均粒子径5μmのタングステン粉末を添加してP(VDF/3FE)膜の音響インピーダンスが7Mrayとなるように作製し、PZT膜の音響制動部材は、37Mrayとなるように作成した。電極は、アルミニウム蒸着で配線し、接地線283、送信信号線282および受信信号線281を図3の如く配線し、送信部12および受信部13に結線した。第1圧電素子20は、8列直線上に並べた。図7のP1,P2およびP3は有機薄膜の鍛造圧力の方向を示す。間隙は、エポキシ樹脂で封印した。図7の切削1および切削2は、PZTを高強度切削加工機で研磨する方向を示す。切削後の間隙wの部分には、タングステン粉を入れたエポキシ樹脂で封入した。図3の溝の部分は、エポキシ樹脂で硬化封印した。
性能評価は、信号として、送信基本波が4MHz、8MHzおよび16MHzで発振されていることを確認し、高次高調波として8MHz(2倍波)、12MHz(3倍波)、16MHz(4倍波)、24MHz(6倍波)までの受信試験を行った。鍛造処理なしの比較に対して鍛造したものは、広い周波数域の高い感度(6dB)と−6dB比帯域で+260%広帯域の感度を得ることができることを確認した。送信用の第2圧電素子22と受信用の第3圧電素子25の間に第1音響整合層23があると感度が高く、帯域が広くなった。第1音響整合層23の挿入方法として、1層であるよりも第1音響整合層23を2層入れて音響整合することが好ましいことも確認した。有機薄膜としてp(VDF/3FE)の代わりに4,4’−ジアミノジフェニルメタン(MDA)と4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート(MDI)を使用する芳香族ポリ尿素を使用した圧電素子も受信周波数帯域の広がった性能結果が得られた。3周波化工のない圧電素子では、帯域幅は−6DB比帯域で80%であった。
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。