JP5073997B2 - 黄銅材用圧延油組成物 - Google Patents
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圧延に用いられる圧延油には、低圧延荷重で高圧下率が得られること、苛酷な条件下でヒートスクラッチを生じないこと、及び圧延板の光沢が高いことが要求される。特にステンレス鋼材の圧延においては、ロールコーティングむらが起こりやすく、これが転写により圧延板の表面にむらを生じさせて光沢むらを引き起こすことが知られており、この課題を解決することを目的に、基油と特定のジエステル、モノエステル、及びリン系化合物を含むことを特徴とする冷間圧延油組成物が提案されている(例えば、特許文献1、請求項3参照)。
さらに、圧延板の光沢度を上げるためには、ワークロールの表面を圧延板に転写させる必要があるが、ロールコーティングが厚く生成すると転写が十分に行われず、高い光沢度の圧延板を得ることが困難となる。
すなわち、本発明は、
(1)基油に(A)主骨格が飽和又は不飽和の分岐炭化水素鎖からなる炭素数12〜28の脂肪族ジカルボン酸と炭素数1〜6の直鎖脂肪族アルコールとの反応生成物であるジエステル0.5〜30質量%、(B)炭素数13〜48のモノエステル0.5〜40質量%、及び(C)多価アルコールの部分エステル0.01〜10質量%を配合してなる黄銅材用圧延油組成物、
(2)さらに(D)ベンゾトリアゾール系化合物100〜1000質量ppmを配合してなる上記(1)に記載の黄銅材用圧延油組成物、及び
(3)さらに(E)フェノール系酸化防止剤0.01〜5質量%を配合する上記(2)に記載の黄銅材用圧延油組成物、
を提供するものである。
また、合成油としては、例えば、炭素数8〜14のポリ−α−オレフィン、オレフィンコポリマー(例えば、エチレン−プロピレンコポリマーなど)、あるいはポリブテン、ポリプロピレン等の分岐オレフィンやこれらの水素化物、さらにはポリオールエステル(トリメチロールプロパンの脂肪酸エステル、ペンタエリスリトールの脂肪酸エステルなど)等のエステル系化合物、アルキルベンゼン等を用いることができる。
なお、後に詳述する(C)成分である多価アルコールの部分エステルは乳化剤としても作用するため、さらに適切な乳化剤を加えることで、基油に水を加えたエマルジョン型の圧延油組成物とすることもできる。
本発明においては、基油として、前記鉱油を一種用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよく、前記合成油を一種用いてもよいし、二種以上組み合わせて用いてもよい。また、該鉱油一種以上と合成油一種以上を併用することもできる。そして、該基油としては、温度40℃における動粘度が、2〜30mm2/sの範囲にあるものが好ましい。この動粘度が2mm2/s以上であると十分に引火点が高く、引火による火災などの危険性がない。一方、30mm2/s以下であると、圧延板表面にオイルピットが発生して光沢度が低下することがなく、また巻きズレが発生することがなく、さらには焼鈍性の点からも好ましい。以上の点から、より好ましい動粘度は、4〜20mm2/sである。
該脂肪族ジカルボン酸の炭素数が12未満のものでは、耐ヒートスクラッチ性能に劣り、一方28を超えるものは、特に低粘度の基油を用いた場合にジエステルの溶解性が悪くなる。好ましい炭素数は14〜24であり、さらには16〜20が好ましい。
また、該脂肪族ジカルボン酸は主骨格として分岐鎖を有する。分岐鎖を有することにより、ジエステルの基油に対する溶解性が良くなり、所望の性能を有する圧延油組成物が容易に得られるという利点がある。
本発明においては、前記脂肪族ジカルボン酸として、飽和及び不飽和のいずれも用いることができるが、飽和脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。この飽和脂肪族ジカルボン酸としては、例えば下記一般式(I)で表される化合物を好ましく挙げることができる。
本発明において、(A)成分であるジエステルに用いられる、主骨格が飽和又は不飽和の分岐状炭化水素鎖からなる炭素数12〜28の脂肪族ジカルボン酸の具体例としては、下記の化学式で表される化合物などを挙げることができる。
このような直鎖状脂肪族アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、n−ブタノールなどを挙げることができる。
(B)成分のモノエステルとしては、例えば一般式(II)で表される化合物を挙げることができる。
RCOOR’ …(II)
式中、Rは炭素数11〜22のアルキル基、R’は炭素数1〜25のアルキル基を示し、RとR’の合計炭素数は12〜47である。
前記一般式(II)で表されるモノエステルの好ましい炭素数は13〜36の範囲である。該モノエステルの具体例としては、ステアリン酸メチル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸オクチル、パルミチン酸オクチルなどが好ましく挙げられるが、これらの中で、性能及び入手の容易さなどの点から、ステアリン酸ブチル及びパルミチン酸オクチルが好ましい。
また、炭素数12〜24の脂肪酸が好ましく、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよく、また飽和でも、不飽和でもよい。直鎖状の飽和脂肪酸として、具体的には、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、ノナデシル酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸などを挙げることができる。直鎖状の不飽和脂肪酸として、具体的には、リンデル酸、5−ラウロレイン酸、ツズ酸、ミリストレイン酸、ゾーマリン酸、ペトロセリン酸、オレイン酸、エライジン酸、コドイン酸、エルカ酸、セラコレイン酸などを挙げることができる。
しかしながら、本発明の圧延油組成物においては、(D)ベンゾトリアゾール系化合物を前記(A)成分、(B)成分及び(C)成分と併用することで、圧下率をさらに向上させることができる。ここで用いられるベンゾトリアゾール系化合物としては、下記一般式(III)で表されるベンゾトリアゾール及びこれの誘導体が該当する。該誘導体としては、下記一般式(IV)で表されるアルキルベンゾトリアゾール、一般式(V)で表されるN−アルキルベンゾトリアゾール、及び一般式(VI)で表されるN−(アルキル)アミノアルキルベンゾトリアゾールを含むものである。
また、本発明の圧延油組成物における(D)ベンゾトリアゾール系化合物の配合量は、上述のように、100〜1000質量ppmの範囲が好ましい。100質量ppm以上であると、十分な圧下率の向上が得られるとともに、本発明の圧延油組成物に対して、十分な防錆・防食効果を付与することができる。また、経済性及び溶解性の点から、1000質量ppm以下であることが好ましい。以上の点から、(D)成分の配合量は200〜500質量ppmの範囲がさらに好ましい。
フェノール系酸化防止剤酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチルフェノール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2,4−ジメチル−6−t−ブチルフェノール、などが挙げられ、これらのうち、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾールが特に好ましい。フェノール系酸化防止剤の配合量は、圧延油組成物全量基準で0.01〜5質量%の範囲が好ましく、さらには0.1〜1質量%の範囲が好ましい。
防錆剤及び腐食防止剤としては、例えば、脂肪酸、アルケニルコハク酸ハーフエステル、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩、脂肪酸アミン、酸化パラフィン、アルキルポリオキシエチレンエーテル等が挙げられる。
消泡剤としては、例えばジメチルポリシロキサン,ポリアクリレート等が挙げられる。
これらの添加剤は、それぞれ一種単独で、又は二種以上を混合して使用することができる。また、これらの添加剤の配合量は、通常、それぞれ組成物基準で0.1〜10質量%の範囲であり、好ましくは0.1〜5質量%の範囲である。
評価方法
(1)圧下力(kN);第1表に示す条件及び第2表に示すパススケジュールで圧延を行った際の3パス時の圧下力で評価した。また、圧延板表面損傷の有無は目視及び顕微鏡観察により判定した。評価基準は以下のとおりである。
○;表面損傷なし
×;表面損傷発生
◎;光沢度620以上で非常に良好であった。
○;光沢度580以上620未満であり良好であった。
×;光沢度580未満であり不良であった。
◎;わずかに汚れあり
○;軽度の汚れあり
×;中度以上の汚れあり
第3表に示すように、基油に(A)〜(C)成分及び添加剤を配合し、圧延油組成物を得、上記方法によって評価した。その結果を第3表に示す。
*1 基油1;パラフィン系鉱油(40℃動粘度8.0mm2/s)
*2 基油2;ナフテン系鉱油(40℃動粘度4.1mm2/s)
*3 ジエステル1;下記式で表される脂肪族ジカルボン酸とメチルアルコールとのジエステル
*5 多価アルコール部分エステル;グリセリンモノオレエートとグリセリンジオレエートの混合物(質量比 1:1)
*6 フェノール系酸化防止剤;2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール
*7 ジエステル2;ジノニルアジペート
Claims (3)
- 基油に(A)主骨格が飽和又は不飽和の分岐炭化水素鎖からなる炭素数12〜28の脂肪族ジカルボン酸と炭素数1〜6の直鎖脂肪族アルコールとの反応生成物であるジエステル0.5〜30質量%、(B)炭素数13〜48のモノエステル0.5〜40質量%、及び(C)多価アルコールの部分エステル0.01〜10質量%を配合してなる黄銅材用圧延油組成物。
- さらに、(D)ベンゾトリアゾール系化合物100〜1000質量ppmを配合してなる請求項1に記載の黄銅材用圧延油組成物。
- さらに(E)フェノール系酸化防止剤0.01〜5質量%を配合する請求項2に記載の黄銅材用圧延油組成物。
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