JP5070991B2 - 捲縮を有する導電糸 - Google Patents
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Description
しかしながら、特許文献2の導電繊維は導電層に吸湿性を有するポリアミドを用いているため、温湿度変化に伴う導電性の変化が大きいという問題を有している。そのため、画像形成装置に搭載されている感光体を清掃するためのブラシに用いた場合、長時間のランニングにて、徐々にトナー清掃性が低下し、記録画質が低下するといった問題があった。
該PPTには、本発明の趣旨、すなわち高濃度でカーボンブラックを含有した場合の高い溶融紡糸性を損ねない範囲で他の成分が共重合されていてもよく、例えばジカルボン酸化合物を共重合せしめることができる。該ジカルボン酸化合物として例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、フェナントレンジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、ジフェニルエタンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、5ーナトリウムスルホイソフタル酸、5−テトラブチルホスホニウムイソフタル酸、アゼライン酸、ドデカンジオン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジカルボン酸およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができ、これらジカルボン酸化合物のうち1種を単独で用いてもよいし、または発明の趣旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、ジオール化合物を共重合せしめることができ、該ジオール化合物として例えば、エチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタンジオール、ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、ハイドロキノン、レゾルシン、ジヒドロキシビフェニル、ナフタレンジオール、アントラセンジオール、フェナントレンジオール、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、4,4´−ジヒドロキシジフェニルエーテル、ビスフェノールS、といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができ、これらジオール化合物のうち1種を単独で用いてもよいし、または本発明の趣旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、共重合成分としては、1つの化合物に水酸基とカルボン酸を具有する化合物、すなわち、ヒドロキシカルボン酸を挙げることができ、該ヒドロキシカルボン酸としては、例えば乳酸、3−ヒドロキシプロピオネート、3−ヒドロキシブチレート、3−ヒドロキシブチレートバリレート、ヒドロキシ安息香酸、ヒドロキシナフトエ酸、ヒドロキシアントラセンカルボン酸、ヒドロキシフェナントレンカルボン酸、(ヒドロキシフェニル)ビニルカルボン酸といった芳香族、脂肪族、脂環族ジオール化合物およびそれらのアルキル、アルコキシ、アリル、アリール、アミノ、イミノ、ハロゲン化物などの誘導体、付加体、構造異性体および光学異性体を挙げることができ、これらヒドロキシカルボン酸のうち1種を単独で用いてもよいし、または発明の趣旨を損ねない範囲で2種以上を組み合わせて用いてもよい。 また本発明の繊維は、該導電層と繊維形成性を有するポリエステルからなる非導電層とが複合構造を形成している。なお、ここでいう「導電層」及び「非導電層」とは、別々に用意した「導電成分」(カーボンブラック含有ポリマー)と「非導電成分」(カーボンブラック非含有ポリマー。1成分に限定されず、2成分以上であってもよい)から構成される複合繊維において、複合界面を境界として、導電成分からなる部分を「導電層」、非導電成分からなる部分を「非導電層」と呼ぶ。本発明の導電層の主成分であるPPTの融点が225〜230℃であることから、良好な曳糸性が得られる温度範囲、すなわち該ポリエステルの融点に近い温度で溶融紡糸することが好ましい。そのため、芯部を形成する非導電成分は、融点が210〜250℃である繊維形成性ポリエステルであることが好ましく、220〜245℃であることがより好ましい。ここで繊維形成性ポリエステルとは、例えばジカルボン酸化合物とジオール化合物のエステル結合から形成される重合体を挙げることができ、これらにかかるポリマーとしては、その主たる繰り返し構造単位がエチレンテレフタレート、プロピレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート、エチレンナフタレート、プロピレンナフタレート、テトラメチレンナフタレートあるいはシクロヘキサンジメタノールテレフタレート、であるポリエステル、あるいは芳香族ヒドロキシカルボン酸を主成分とする溶融液晶性を有する液晶ポリエステル、などが挙げられる。
カーボンブラックによる導電性付与にあたっては、カーボンブラックの連鎖構造であるストラクチャーの形成が肝要である。高い導電性を得るためには、該ストラクチャーを破壊せずにポリマー中に分散させ、長い繋がりを保持しつつ高密度に存在させなくてはならない。この手段として、延伸工程において、未延伸糸の自然延伸比(以下、「NDR」と記載)近傍で延伸することで、ストラクチャーの破壊を抑制しつつ、繊維長手方向へストラクチャーを引き伸ばすことが可能となる。また、コイル捲縮の程度、すなわち本願でのCR値を制御するためにも延伸倍率が有効である。我々の検討においては、NDR×0.9〜NDR×1.3倍が好ましい。すなわち、NDRが2倍であれば1.8〜2.6倍、自然延伸比が3倍であれば2.7〜3.9倍で延伸すればよい。より好ましい延伸倍率は、NDR×0.95〜1.25倍、さらに好ましくはNDR×1.0〜1.2倍である。なお、NDRは定張力伸長域伸度から下式により求めることができる。
また、熱処理温度を制御することによってもカーボンストラクチャーを制御することができる。熱処理温度を高くする、もしくは熱処理時間を長くすることにより、導電層におけるポリエステル成分の結晶化を促進させ、結晶部からのカーボンブラックの排除によりストラクチャーの局在化および高密度化が進み、導電性が向上する。熱処理方法は特に制限されるものではないが、延伸時のホットロールや熱板、未延伸糸や延伸糸のパッケージを乾燥機にてエージングする方法、ブラシや布帛にしてから熱処理してもよい。
偏心芯鞘複合繊維の場合は、偏心度が大きいほどコイル径が小さくなり、単位繊維長当たりのコイル数は多くなるが、構造弾性回復は小さくなる傾向がある。一方、偏心度が小さいとコイル径は大きくなり、単位繊維長当たりのコイル数は少なくなり、捲縮特性が低下する。したがって、偏心度は0.04〜0.6であることが好ましい。より好ましくは0.1〜0.5であり、さらに好ましくは0.15〜0.45である。
T:糸長1m当たりの撚数、D:糸条の繊度(dtex)
ここで、糸長1m当たりの撚数Tとは電動検撚機にて90×10−3cN/dtexの荷重下で解撚し、完全に解撚したときの解撚数を解撚した後の糸長で割った値である。
(株)東洋精機社製キャピログラフ1Bを用い、窒素雰囲気下、バレル径9.55mm、ノズル長10mm,ノズル内径1mmで、ポリマー押出ピストン速度1mm/分(剪断速度12.16(1/秒))で、サンプル充填直後から10分経過したのち測定した。5回測定した値の平均値を各剪断速度での溶融粘度とした。
B.融点
Perkin elmer社製DSC−7を用いて2nd runで結晶融解のピーク温度を融点として測定した。この時、試料重量を約10mg、昇温速度を10℃/分とした。なお、導電層と非導電層とが複合された繊維の場合は、それぞれの層を分離する必要がある。非導電層の融点を測定する場合には、繊維を表面エッチング(例えばアルカリ溶液による溶解)して導電層を取り除くことで、非導電層のみ取り出すことができる。また、導電層の融点を測定する場合には、OCPを用いて繊維表層の導電層のみを溶解し、溶解後のOCP溶液を揮発させることで導電層のみを取り出すことができる。
C.繊度および単繊維繊度
糸を長さ100m分カセ取りし、そのカセ取りした試料の重量(g)に100を掛けて求める。3回測定した値の平均値をその糸の繊度(dtex)とし、繊度を構成フィラメント数で割った値を単繊維繊度(dtex)とした。
D.強度、残留伸度、初期引張抵抗度
JIS L1013(1992年)「化学繊維フィラメント糸試験方法」に準じ、オリエンテック社製テンシロン引張試験機(TENSILON UCT−100)を用い、未延伸糸であれば初期試料長50mm、引張速度400mm/分で、捲縮糸であれば初期試料長200mm、引張速度200mm/分で荷重−伸長曲線(以下、「S−Sカーブ」と記載)を求めた。S−Sカーブの最大点張力を繊度で割り返した値を強度、最大点張力を示したときの伸びを初期試料長で割り返した値を残留伸度とし、5回測定した平均値を測定値とした。初期引張抵抗度は、初期試料長200mm、引張速度200mm/分、チャート速度100cm/分、応力フルレンジ500gとして記録し、引張初期曲線の最大の傾きから求めた。
E.定張力伸長域伸度
上記E項の未延伸糸の測定で得られるS−Sカーブより、図3に示すように原点(a点)からネッキングが形成され(b点)一定張力で伸長する領域が完結する点(c点)が求められる。このc点までの伸びを初期試料長で割り返した値を定張力伸長域伸度(%)とした。
F.体積固有抵抗P、体積固有抵抗Pと標準偏差Qとの比ESR(ESR=Q/P)
中温中湿度(25℃湿度65%RH)で少なくとも1時間保持した試料を、送糸ローラーと巻取ローラーからなる1対の鏡面ローラー間にて、東亜DKK製絶縁抵抗計SM−8220に接続された2本の棒端子からなるプローブと接するように走行させる。棒端子の太さφ2mm、測定距離2.0cm、印加電圧100V、送糸速度60cm/分、ローラー間の糸張力0.05〜0.1cN/dtexの範囲となるようにして、絶縁抵抗計でのサンプリングレート5Hzで120cmの長さ分を測定し、得られた値(600点)の平均抵抗値(Ω)を棒端子間で接する糸の距離(2.0cm)で割った値を平均抵抗率(Ω/cm)とし、その値に試料の糸断面積(cm2)を掛けて体積固有抵抗P(Ω・cm)を求めた。また同時に得られた全ての体積固有抵抗(600点)の標準偏差Qを求め、PとQとの比ESR(ESR=Q/P)を算出した。なお、収縮後の体積固有抵抗P’は、試料を乾熱150℃オーブン中で5分間処理した後に測定して求めた。
体積固有抵抗P(Ω・cm)=R×(D/2)2×π/10
G.重量平均分子量、数平均分子量
重量平均分子量Mwと数平均分子量Mnは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)により、WATERS社製GPC−244を用いて測定した。測定条件は、カラムとしてShodex HFIP 806M(内径8.0mm/長さ30cm、カラム2本)、溶媒としてとしてヘキサフルオロイソプロパノールを用い、温度23℃、流量0.5ml/分で実施した。標準試料としてポリマーラボラトリー社製PMMA(ポリメチルメタクリレート)を用いて検量線を作成し測定した。さらに分散度Mw/Mnを求めた。なお、導電層中のポリマーの平均分子量Mw及びMnを測定する場合には、予めカーボンブラックとポリマーを分離する必要がある。その場合、導電層の試料を一旦オルソクロロフェノール(以下、OCPと記載。溶解温度は溶解状態により常温〜160℃で実施)に溶かし、遠心分離機(通常6,000〜30,000rpm)にてカーボンブラックを取り除いた後、OCPを揮発させることで試料を得ることができる。
H.沸騰水収縮率
検尺機を用いて初荷重:(0.088×繊度(dtex))cNで、カセ長50cm、巻き数10回のカセを作り、規定の荷重を掛けた状態で試料長L1を測る。これを実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中15分間処理し、1昼夜風乾した後、束の長さL2を測定して下式により沸騰水収縮率を算出した。なお、荷重は下式により求めたものを使用した。
荷重(cN)=(繊度(dtex)/1.111)×0.1×0.9807×巻取回数×2
I.CR値
捲縮糸をカセ長50cm、巻き数10回でカセ取りし、実質的に荷重フリーの状態で沸騰水中で15分間処理し、24時間風乾した。このサンプルに0.088cN/dtex(0.1gf/d)相当の荷重をかけ水中に浸漬し、2分後のかせ長L3を測定した。次に、水中で0.088cN/dtex相当のカセを除き0.0018cN/dtex(2mgf/d)相当の微荷重に交換し、2分後のかせ長L4を測定した。そして下式によりCR値を計算した。
J.カーボンブラックの平均粒径
繊維または樹脂をエポキシ樹脂中に包埋したブロックに、酸化ルテニウム溶液を用いて染色し、ウルトラミクロトームにて切削して60nm〜100nmの厚さの超薄切片を作製する。この試料を透過型電子顕微鏡(TEM)観察装置(日立製作所製H−7100FA型)にて、加速電圧75kV、倍率2万〜10万倍の任意の倍率で観察し、得られた写真を白黒にデジタル化した。コンピュータソフトウェアの三谷商事社製WinROOF(バージョン2.3)において、黒で見えるカーボンブラックを画像解析することによって平均粒径を確認した。平均粒径は写真上に存在する全てのカーボンブラックの面積を計算し、該面積値から略円形と判断して計算したカーボンブラックの直径の平均値によって算出した。
K.ジブチルフタレート吸収量の測定
JIS K6217−4:2001の「DBP吸収量の求め方」に準じ、アブソープトメータを用いて測定した。
L.複合比率、繊維横断面における周長に対する導電層の露出長の比率、偏心度
繊維をエポキシ樹脂中に包埋したブロックを作製し、ミクロトームにて繊維軸方向に垂直な繊維横断面方向に切削して薄切片をつくる。これを光学顕微鏡200倍で透過光にて観察・撮影し、得られた繊維横断面写真を、前述の三谷商事株式会社製WinROOFにて画像解析することで、複合比率は導電層と非導電層の面積から比率を算出した。繊維横断面における周長に対する導電層の露出長の比率は、繊維横断面における周長と導電層の露出長を計測して比率を算出した。また、偏心芯鞘複合断面の偏心度は、図1に示すとおり複合繊維全体の断面から求められる重心aと、芯部のみの断面から求められる重心b、繊維直径Dを三谷商事株式会社製WinROOFにて画像解析することで求め、下式により偏心度を算出した。なお、重心を求める際の前提として、芯部および鞘部の密度差はないものとした。
M.単繊維直径の測定
FEI Company社製 走査型電子顕微鏡(SEM) STRATA DB235を用いて、加速電圧2kVで、白金−パラジウム蒸着(蒸着膜圧:25〜50オングストローム)処理を行った後、繊維外径が全て視野に入る倍率(単繊維直径が25μm〜50μmであれば5千倍、15μm〜25μmであれば1万倍、5μm〜15μmであれば2万倍)で確認した。なおこの際、単繊維直径は少なくとも該測定を同一繊維において3cm以上の間隔をおいた任意の5点について観察、測定して得た平均値を単繊維直径とする。N.画像評価方法
導電糸をブラシ加工し、清掃装置に組み込んで配設したモノクロレーザープリンターにて、長時間連続印刷を行った。初期および2万枚印刷後の画像評価を以下に示す基準で評価した。
(1)初期性能評価
◎:鮮明均一な画像が得られる。
(2)繰り返し(2万枚)画像評価
◎:初期と同様な鮮明均一な画像が得られる。
重量平均分子量83000、分散度Mw/Mn3.4、融点(Tm)229℃のPPTペレットを150℃10時間真空乾燥した後、窒素雰囲気下で粉粒体とし、カーボンブラックとしてDegussa社製ファーネスブラック(タイプL、平均粒径23nm、ジブチルフタレート吸収量116cm3/100g、以下「FCB」と記載)を窒素雰囲気下で粉体同士混ぜ合わせた。続いて東芝機械(株)製2軸エクストルーダTEM35B(軸長L:1440mm、軸径D:37mm、L/D:38.9)にて軸回転数:300rpm、混練温度C1〜C4およびH:250℃、吐出量:15kg/hr、ベント:約5Torrにて溶融混練した。ここで、FCBの濃度は混練終了後に得られるPPT/FCB混練物に対して25重量%となるように調製した。混練した後、吐出されたガット状の樹脂組成物を15℃の水道水で冷却したのちカッターで切断して導電層用のペレット(以下、「PPT−CB」と記載)を得た。該ペレットの溶融粘度を測定したところ、2010(Pa・秒)(測定温度260℃、12.16(1/秒))であった。ペレタイズ前のガットの比抵抗値を測定したところ101.4Ω・cmであった。
カーボンブラックの含有量を17重量%および37重量%にした以外は、実施例1と同様の方法で評価し、実施例2および参考例3の導電糸を得た。実施例2の体積固有抵抗は1.2×107Ω・cmであり、実施例1に比べて除電性能がやや劣るものであったが、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず、実用上問題ないレベルであった。参考例3の体積固有抵抗は3.4×100Ω・cmであり、高い導電性能を示したが、カーボンブラックの含有量が多いことから、紡糸性が若干低下した。ESR値は0.32となり、糸長手方向の導電斑が実施例1よりも高くなった。また導電糸の強度が0.9cN/dtexと低く、実施例1に比べて耐久性が低下し、印刷回数とともにトナー清掃性がやや低下した。
カーボンブラックの含有量を12重量%および45重量%にした以外は、実施例1と同様の方法で評価し、比較例1および比較例2の導電糸を得た。比較例1の体積固有抵抗は2.1×109Ω・cmであり、体積固有抵抗が高すぎて、除電性能を得ることができなかった。また比較例2は、カーボンブラックの含有量が多いために曳糸性が悪く、紡糸の際に糸切れが多発して引き取ることができなかった。
導電層のマトリックスポリマーとして重量平均分子量Mwが55,000、90,000、130,000、350,000のPBTを各々用いた以外は実施例1と同様の方法で評価した。参考例4は紡糸性がやや低下してESR値が0.09となり、糸長手方向の導電斑が実施例1よりもやや高くなったが、実用上問題ないレベルであった。体積固有抵抗は5.6×101Ω・cmであり、印刷初期の除電性能は良好であったが、導電糸の強度が1.9cN/dtexと若干低く、実施例1に比べて耐久性が低下し、印刷回数とともにトナー清掃性がやや低下した。参考例5の体積固有抵抗は1.5×102Ω・cm、ESR値0.04、CR値16%であり、実施例1と同様、優れた除電性能を有し、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず優れていた。参考例6の体積固有抵抗は5.2×102Ω・cm、ESR値0.04、CR値14%であり、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず、除電性能は良好であった。参考例7の体積固有抵抗は9.4×102Ω・cm、ESR値0.08であり、初期の除電性能は良好であったが、CR値が10%と実施例1に比べて若干低く、捲縮特性の低いものであり、印刷回数とともにトナー清掃性がやや低下した。
導電層のマトリックスポリマーとして重量平均分子量Mwが480,000のPBTを用い、延伸倍率を2.1倍(NDR×1.00)とした以外は実施例1と同様の方法で評価した。参考例8の体積固有抵抗は7.8×102Ω・cm、ESR値0.11、CR値9%であり、実施例1に比べて除電性能が劣るものであったが、実用上問題ないレベルであった。
導電層のマトリックスポリマーとして重量平均分子量Mwが600,000のPBTを用い、延伸倍率を1.9倍(NDR×0.90)とした以外は実施例1と同様の方法で評価した。参考例9の体積固有抵抗は4.3×102Ω・cm、ESR値0.19、CR値7%であり、実施例1に比べて除電性能が劣るものであったが、実用上問題ないレベルであった。
非導電層の繊維形成性ポリエステルとして、ポリエチレンテレフタレート(表中、「PET」と記載)(融点255℃)を用いて、紡糸温度を285℃にした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。参考例10は曳糸性が低下して糸切れが実施例1に比べてやや多いものであった。得られた導電糸のESR値は0.35であり、異常放電跡が若干認められた。
導電層のマトリックスポリマーとして、IPAを10モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(表中、「共重合PET」と記載)(融点227℃)、非導電層としてポリエチレンテレフタレート(表中、「PET」と記載)(融点255℃)を用いて、紡糸温度を285℃にした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。比較例3は曳糸性が低く、紡糸の際に糸切れが多発した。導電性のばらつきを示すESR値は0.60であり、これに伴い、画像が不鮮明であり、スジ斑が目立った。
非導電層の繊維形成性ポリエステルとして、アジピン酸を5モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(表中、「共重合PET」と記載)(融点243℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で評価した。実施例11の導電糸は非導電層がコイル捲縮の外側を形成しており、体積固有抵抗は4.6×102Ω・cm、ESR値0.12であり、実施例1に比べて除電性能が若干劣るものであったが、捲縮堅牢度が優れており、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず良好であった。
芯鞘複合比率を10/90および30/70にした以外は、実施例1と同様の方法で評価し、参考例12および実施例13の導電糸を得た。参考例12は繊維形成性能を担う非導電層の比率が10%であるため紡糸性がやや低下し、ESR値は0.31であった。またCR値は8%、強度は1.6cN/dtexであり、初期の除電性能は優れていたものの、実施例1に比べて耐久性が低下し、印刷回数とともにトナー清掃性がやや低下した。実施例13の体積固有抵抗は1.9×101Ω・cm、ESR値0.05、CR値17%であり、実施例1と同様、優れた除電性能を有し、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず優れていた。
芯鞘複合比率を70/30および90/10、複合口金を変更して偏心度を変えた以外は、実施例1と同様の方法で評価し、参考例14および参考例15の導電糸を得た。繊維横断面は図2(b)に示すとおりであり、偏心度は0.15であった。参考例14の体積固有抵抗は3.2×102Ω・cm、ESR値0.07、CR値25%であり、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず、除電性能は良好であった。参考例15は導電性能を担う導電層の比率が10%であるため体積固有抵抗は4.1×103Ω・cm、ESR値0.15と実施例1に比べてやや高くなり、除電性能が若干劣ったが、実用上問題ないレベルであった。
複合比率(非導電層/導電層 重量%)を12/88、25/75、50/50、70/30、さらに複合口金を変更してサイドバイサイド型に変えた以外は、実施例1と同様の方法で評価し、参考例15、16、実施例17、18の導電糸を得た。参考例16の導電層の露出長の比率は85%、実施例17の断面は図2(c)、導電層の露出長の比率は70%、実施例18の断面は図2(d)、導電層の露出長の比率は45%、参考例19の断面は図2(e)、導電層の露出長の比率は35%に示すとおりであった。
非導電層の繊維形成性ポリエステルとして、アジピン酸を5モル%共重合したポリエチレンテレフタレート(表中、「共重合PET」と記載)(融点243℃)を用いた以外は、実施例1と同様の方法で評価した。実施例20の導電糸は非導電層がコイル捲縮の外側を形成しており、体積固有抵抗は5.3×103Ω・cm、ESR値0.25であり、実施例1に比べて除電性能が若干劣るものであったが、実用上問題ないレベルであった。
複合口金を変更して偏心度を変えた以外は、実施例1と同様の方法で評価した。導電糸の断面は図2(b)に示すとおりであり、偏心度は0.04であった。体積固有抵抗は2.8×101Ω・cm、ESR値0.03、CR値3%であり、実施例1に比べて捲縮特性の低い導電糸であった。初期の除電性能は良好であったものの、印刷回数とともにトナー清掃性が低下した。
複合口金を変更して偏心度を変えた以外は、実施例1と同様の方法で評価した。導電糸の断面は図2(b)に示すとおりであり、偏心度は0.15であった。体積固有抵抗は2.9×101Ω・cm、ESR値0.03、CR値12%であった。実施例1に比べて捲縮特性が若干低かったが、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず、除電性能は良好であった。
延伸での第2ホットローラーの温度を120℃とした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。導電糸の断面は図2(a)に示すとおりであり、偏心度は0.3であった。体積固有抵抗は1.5×102Ω・cm、ESR値0.04、CR値18%であり、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず、除電性能は優れていた。
複合口金を変更してサイドバイサイド型に変え、延伸倍率2.4倍(NDR×1.15)、延伸での第2ホットローラーの温度を160℃とした以外は、実施例18と同様の方法で評価した。導電糸の断面は図2(d)に示すとおりであった。体積固有抵抗は7.1×100Ω・cm、CR値が47%であった。実施例24はブラシ加工は可能であったが、ブラシの品位が悪かった。また、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性はやや劣っていたものの実用上問題のないレベルであった。
延伸倍率を2.6倍(NDR×1.25)とした以外は、実施例24と同様の方法で評価した。導電糸の断面は図2(d)に示すとおりであった。体積固有抵抗は2.7×101Ω・cm、CR値が52%であった。比較例4は捲縮が強すぎてブラシ加工性が悪く、ブラシを作製することができなかった。
延伸での第2ホットローラーの温度を100℃とした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。導電糸の断面は図2(a)に示すとおりであり、偏心度は0.3、体積固有抵抗は6.8×103Ω・cm、ESR値0.04、CR値16%、沸騰水収縮率8.4%であった。熱収縮率が実施例1よりも若干高いものであったが、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず、除電性能は良好であった。
延伸倍率を2.4倍(NDR×1.15)とした以外は、実施例25と同様の方法で評価した。導電糸の断面は図2(a)に示すとおりであり、偏心度は0.3、体積固有抵抗は7.9×102Ω・cm、ESR値0.07、CR値22%であった。沸騰水収縮率が12.6%と高く、収縮後の体積固有抵抗が2.6×101Ω・cmまで大幅に低下するものであった。これに伴い、印刷初期から2万枚までで印刷の鮮明性、トナー清掃性が経時的に悪化するものであった。
延伸倍率を2.6倍(NDR×1.25)とした以外は、実施例25と同様の方法で評価した。導電糸の断面は図2(a)に示すとおりであり、偏心度は0.3、体積固有抵抗は9.7×102Ω・cm、ESR値0.18、CR値31%であった。沸騰水収縮率が16.4%と高く、収縮後の体積固有抵抗が2.9×101Ω・cmまで大幅に低下するものであった。これに伴い、印刷初期から2万枚までで印刷の鮮明性、トナー清掃性が経時的に大幅に悪化した。
延伸での第2ホットローラーの温度を110℃とした以外は、実施例1と同様の方法で評価した。導電糸の断面は図2(b)に示すとおりであり、偏心度は0.04であった。体積固有抵抗は4.1×102Ω・cm、ESR値0.04、CR値2%であり、捲縮特性の低い導電糸であったため、除電性能がやや劣るものとなり、さらに印刷回数とともにトナー清掃性が低下した。
導電層に用いるカーボンブラックとして、電気化学工業(株)製アセチレンブラック(タイプHS−100、体積固有抵抗0.14Ω・cm、平均粒径48nm、ジブチルフタレート吸収量140cm3/100g)にした以外、実施例1と同様の方法で評価した。体積固有抵抗は4.7×101Ω・cm、ESR値0.15、CR値19%であり、実施例1と同様、印刷初期から2万枚まで印刷の鮮明性、トナー清掃性は変わらず優れていた。
導電層に用いるカーボンブラックとして、ケッチェン・ブラック・インターナショナル社製ケッチェンブラックEC(体積固有抵抗0.20Ω・cm、平均粒径38nm、ジブチルフタレート吸収量405cm3/100g)にした以外、実施例1と同様の方法で評価した。参考例29は曳糸性が低下して、糸切れが実施例1に比べてやや多いものであった。得られた導電糸の体積固有抵抗は3.5×103Ω・cm、ESR値は0.40であり、異常放電跡は認められないが、画像がやや不鮮明であった。
実施例1で得られた延伸糸に撚糸数300T/m(撚係数:4450)とした以外は、実施例1と同様にしてブラシローラーを作製した。実施例30は、実施例1よりもさらに印刷の鮮明性、トナー清掃性が優れていた。
参考例19で得られた延伸糸に撚糸数500T/m(撚係数:7416)とした以外は、参考例19と同様にしてブラシローラーを作製した。実施例31は参考例19よりも印刷の鮮明性、トナー清掃性が安定して優れていた。
1’:B成分ホッパー
2:A成分押出混練機(エクストルーダー)
2’:B成分押出混練機(エクストルーダー)
3:計量ポンプ
4:紡糸ブロック
5:紡糸パック
6:口金
7:冷却装置
8:糸条
9:給油ガイド
10:第1ゴデットローラー
11:第2ゴデットローラー
12:巻取機
13:巻取糸パッケージ
A:非導電層
B:導電層
Claims (6)
- カーボンブラックを含有した、主たる繰り返し構造単位がプロピレンテレフタレートであるポリエステルからなる導電層と、繊維形成性を有するポリエステルからなる非導電層とがサイドバイサイド複合もしくは偏心芯鞘複合を形成しており、非導電層が繊維横断面積の60%以下であり、かつ導電層が、カーボンブラックを含有し、重量平均分子量Mwが75,000〜500,000、分散度Mw/Mnが1.5〜6であるポリエステルで繊維表面の少なくとも一部を形成した複合繊維から構成されたマルチフィラメントであって、糸長さ方向の体積固有抵抗Pと、その標準偏差Qとの比ESR(ESR=Q/P)が、0.3以下であり、かつ体積固有抵抗Pが10−1〜107Ω・cm、CR値が3〜50%であることを特徴とする導電糸。
- 沸騰水収縮率が0〜15%であることを特徴とする請求項1記載の導電糸。
- 繊維横断面における周長に対する導電層の露出長の比率が50%以上であり、かつ導電層がコイル捲縮の外側であることを特徴とする請求項1または2記載の導電糸。
- 繊維形成性を有するポリエステルからなる非導電層が芯部を形成する偏心芯鞘複合構造であることを特徴とする請求項1または2記載の導電糸。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の導電糸を少なくとも一部に用いたブラシ。
- 撚係数Kが400〜20,000の撚が施された請求項1〜4のいずれか1項記載の導電糸。
(ただし、撚係数K=T×D0.5
T:糸長1m当たりの撚数、
D:糸条の繊度(dtex)
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