JP5061977B2 - 凝固組織が等軸デンドライトを有する鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼の連続鋳造過程において金属元素を添加することにより、凝固組織を等軸デンドライト組織を有する鋼組織とした連続鋳造鋳片の連続鋳造方法に関する。
自動車用素材として用いられる鋼板は、軽量化による環境負荷低減を目的として高強度化が図られている。自動車用の熱延鋼板は、使用される部位により要求される特性が異なり、高強度および高靱性であるとともに、良好な深絞り性、張り出し性、穴拡げ性、および曲げ性といった加工性をも具備することが要求される。これらの特性を向上させるためには、要求される特性のレベルに合わせて熱延鋼板の鋼組織や析出物を最適化する必要がある。
例えば、自動車の足回り部分として使用される高強度鋼板における穴拡げ性を向上させる方法として、特許文献1に開示された技術がある。同文献には、フェライトと、ベイナイトを主体とする第二相とからなり、また鋼板中に介在物が総量で0.05%以下、かつA系+B系介在物が合計で0.01%以下であることを特徴とする穴拡げ性に優れた高強度鋼板およびその製造方法が開示されている。
今後ますます進められる鋼板の薄肉軽量化に対応して、自動車の内装材、外装材などへの薄肉鋼板の適用を拡大するためには、鋼板表層部および内部における機械的特性の均一化が求められるが、従来の技術では上記の特性の均一化は困難であった。この理由は、前述のような熱延後の鋼組織の制御を行なっても特性の均一化は十分ではなく、鋳片の凝固組織の影響が残存するため、鋼板の表層部と内部とでの鋼組織に差が存在するからである。
連続鋳造法により製造される鋳片の凝固組織においては、鋳片の表層から柱状デンドライトが成長し、鋳片中央近傍に粗大な等軸デンドライト組織が形成されている。凝固過程で、隣接する柱状デンドライトの間隙に溶質成分元素が偏析するため、柱状デンドライトの中心部と間隙部での溶質成分の組成に差異が生じ、成分組成が不均一になる。柱状デンドライトは鋳片の表面から内部に向かって成分偏析を増大させながら成長するため、偏析の及ぶ範囲は柱状デンドライトの長さに相当する。これに対し、等軸デンドライトは核を中心として成分偏析を増大させながら成長するため、偏析の及ぶ範囲は等軸デンドライトのサイズに相当する。
表層から成長する柱状デンドライトは、鋳片中央に向かって成長するにしたがって、冷却速度が低下するため、柱状デンドライトの1次アーム間隔および2次アーム間隔が増大するとともに、溶質元素が濃化する。このため、柱状デンドライトの間隙における偏析とともに、鋳片の表層近傍と内部とでの溶質元素の濃度に差異が生じる。
また、鋳片の中央近傍では等軸デンドライトが形成され、等軸デンドライトの内部と樹間とでは溶質元素の濃度が異なる。等軸デンドライトのサイズが大きい場合には、この濃度の差が大きくなる。
このような凝固組織を有する連続鋳造鋳片を、鋼板にまで圧延する過程において、成分組成の不均一を解消することは容易ではない。そのため、鋼板の組成に依存して生成するフェライトとベイナイトの割合が変化することになり、鋼板の表層から内部において鋼組織が不均一となる。フェライトとベイナイトでは硬さや延性が異なることから、鋼板に深絞り、曲げ、穴拡げなどの加工を施した場合に、割れや破断、すじ模様といった欠陥が発生することになる。
柱状デンドライトが形成された鋼組織を有する鋳片において、成分組成の不均一を解消するには、隣接する柱状デンドライトの間隙を小さくして、連続鋳造後の工程において、偏析元素の拡散を促進させればよい。隣接する柱状デンドライトの間隔は冷却速度に依存して変化し、冷却速度が大きいほど小さくなる。しかし、実際の連続鋳造鋳型の抜熱能を大きく変化させることは困難であることから、柱状デンドライトの間隔を変えることは難しい。
一方、等軸デンドライトは、溶鋼を過冷却状態にするか、不均質核を生成する物質を添加することにより生成する。不均質核が存在する場合には、等軸デンドライトは核を中心として周囲に向かって等方的に成長することから、不均質核が溶鋼中に分散していれば連続鋳造鋳片の表層と内部とでほぼ同一サイズの微細な等軸デンドライトが生成する。また、等軸デンドライトでは偏析の及ぶ範囲は等軸デンドライトのサイズに相当するため、等軸デンドライトが微細であるほど偏析の範囲も小さくなる。そのため、等軸デンドライトが形成された組織を有する鋳片において組成の不均一を解消するには、溶鋼中に不均質核を生成する物質を分散させ、微細な等軸デンドライトを多数生成させればよい。
溶鋼中に不均質核生成物質を形成し易い金属元素を添加するには、塊状の金属元素を溶鋼の湯面に投入するか、または金属元素の単味で作製されたワイヤーまたはロッド、それらの金属元素をアルミニウムや鋼などにより被覆したワイヤーまたはロッド、それらの金属元素を含有する合金により作製されたワイヤーまたはロッドにより添加する方法などが採用されている。しかしながら、これらの方法を用いてマグネシウム(Mg)、ストロンチウム(Sr)、ビスマス(Bi)、カルシウム(Ca)、希土類元素(REM)などのように蒸気圧が高く、融点の低い金属元素を溶鋼中に精度良く添加することは困難である。その理由は、蒸気圧が高い金属元素が溶鋼中に添加されると、溶鋼の湯面近傍において、金属元素が気化して大気中に放散されるため、溶鋼中への添加量を制御することが難しく、添加歩留りも低下して、均一に添加することが困難だからである。
また、金属元素が気化する際の体積膨張が大きいことから、溶鋼の湯面近傍で気化した場合には、溶鋼の飛散が激しく、鋳造操業の安全確保が困難となる。さらに、添加金属元素の融点が低い場合には、添加前に溶鋼の輻射熱により軟化あるいは溶融し、所定量を添加することが困難となる。溶鋼よりも密度の小さい金属元素を添加する場合には、添加された金属が溶鋼の表層部のみに偏在し、溶鋼の内部にまで侵入しない。密度の大きな金属元素を添加する場合には、添加位置から溶鋼内部に沈降するのみであり、溶鋼全体に均一に混合させることは困難である。
特開2003−3240号公報(特許請求の範囲および段落[0009]) 特開2004−249315号公報(特許請求の範囲および段落[0011]〜[0017]) 特開2005−169404号公報(特許請求の範囲および段落[0011]〜[0016]) 特開2005−219072号公報(特許請求の範囲および段落[0013]〜[0020])
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、その課題の第1は、微細な等軸デンドライト組織を高い比率で有する連続鋳造鋳片を提供することにある。また、課題の第2は、上記の凝固組織を有する鋳片を得るために必要な金属元素の適正量を溶鋼中に効率良く添加し、鋳片内に均一に分散させることのできる連続鋳造方法を提供することにある。
鋳片の凝固組織の形態は、凝固過程における固液界面での温度勾配と凝固組織の成長速度により決定される。固液界面での温度勾配が一定の場合には、組織形態は凝固組織の成長速度に依存して変化する。温度勾配が一定で、凝固組織の成長速度が小さい場合には柱状デンドライト組織が形成され、成長速度が大きい場合には等軸デンドライト組織が形成される。また、温度勾配が一定でない場合には、温度勾配が大きくなるにつれて、柱状デンドライトから等軸デンドライトに変化するのに必要な成長速度は大きくなる。
しかしながら、現実には連続鋳造鋳片の表層から柱状デンドライトが成長し、鋳片中央近傍で粗大な等軸デンドライトが形成されている。連続鋳造において冷却条件を大きく変化させることは事実上困難であることから、温度勾配と凝固組織の成長速度との相互関係を制御することにより等軸デンドライトを形成させることは難しい。
そこで、本発明者らは溶鋼中に不均質核を形成する金属元素を添加することに着目し、微量で不均質核生成能の高い金属元素を添加することにより、等軸デンドライトを生成させることが可能であることを実験的に確認するとともに、上記金属元素の適正量を連続鋳造鋳片内に効率良く、しかも均一に添加するための連続鋳造方法を検討し、下記の(a)〜(d)の知見を得て、本発明を完成させた。
(a)自動車用鋼板をはじめとする高強度冷延鋼板は高強度であるとともに、その適用拡大のためには機械的特性が良好であることが求められる。連続鋳造鋳片の凝固組織形態は熱間圧延および冷間圧延後の鋼板の機械的特性にも影響を及ぼす。これは、凝固組織形態により溶質元素の偏析挙動が変化することによる。
(b)上記(a)のように鋼板の鋼組織に影響を及ぼす鋳片の凝固組織は、表層から中央部に向かって柱状デンドライトが成長し、中央部には等軸デンドライトが生成した組織である。いずれのデンドライトも粗大化するにつれて溶質元素の偏析が著しくなる。この偏析を拡散により解消するには、鋳片を高温に加熱し長時間保持する必要があり、これは操業効率を著しく低下させる。
(c)鋳片の凝固組織において、微細な等軸デンドライト組織の比率を増大させることができれば、偏析した成分元素の拡散距離を低減することができ、その結果、鋼板の表面性状を向上させることができる。等軸デンドライトの比率を増大させるには、溶鋼中で不均質核を生成する金属元素を添加して不均質核を生成させればよく、そのためには不均質核生成能の高いストロンチウム(Sr)、マグネシウム(Mg)、希土類元素などの金属元素を添加することが有効である。ここで、希土類元素とはセリウム(Ce)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)およびジスプロシウム(Dy)のうち1種または2種以上の混合物を意味する。
(d)上記(c)のような不均質核生成能の高い金属元素は、蒸気圧が高く且つ融点が低く、これらの金属元素を溶鋼中に添加する場合、それらの添加金属は、溶鋼との接触または溶鋼からの輻射熱により溶融あるいは気化する。溶鋼中に添加する以前に、または添加した瞬間に金属元素が溶融あるいは気化すると、これらの金属元素を溶鋼中に均一に、かつ歩留り良く添加することは困難となる。このような問題を解決し、連続鋳造鋳片内に金属元素を均一に添加するには、連続鋳造鋳型に近いタンディッシュ内、または連続鋳造鋳型内の溶鋼に、金属元素の蒸気および/または金属粒子を添加する方法が最適である。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記の(1)および(2)に示す連続鋳造鋳片、ならびに(3)に示す鋼の連続鋳造方法にある。このうち(1)および(2)に示される発明は、本発明の参考例としての発明である。
(1)鋼中に0.0002〜0.01質量%のストロンチウムを含有し、鋳片の凝固組織が等軸デンドライトを有する鋼組織であることを特徴とする鋼の連続鋳造鋳片。
(2)さらに、前記鋼が0.0002〜0.01質量%のマグネシウムおよび/または0.0002〜0.01質量%の希土類元素を含有することを特徴とする上記(1)に記載の鋼の連続鋳造鋳片。
(3)鋼中に、0.0002〜0.01質量%のストロンチウム、0.0002〜0.01質量%のマグネシウムおよび0.0002〜0.01質量%の希土類元素を含有し、凝固組織が等軸デンドライトを有する鋼組織である鋳片を製造する、タンディッシュ内または鋳型内の溶鋼中に浸漬させた浸漬ランス内に、ストロンチウムマグネシウムおよび希土類元素を含有する金属のワイヤーもしくはロッドを挿入することにより、該浸漬ランス内で金属蒸気および/または金属粒子を発生させ、該金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに溶鋼中に添加することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
本発明において、「等軸デンドライト」とは、デンドライトの成長開始点を起点として三次元かつ等方的に、すなわち球状に成長するデンドライト組織を意味する。等軸デンドライトは、鋳片表面近傍の過冷却状態の溶鋼中で成長し、この時の温度分布はデンドライトの成長界面で温度が最も高く、成長界面から離れるにつれて三次元等方的に温度が低くなる。
「金属蒸気および/または金属粒子」とは、金属蒸気および/または、蒸発が不十分なために液体または固体粒子として存在する金属粒子もしくは金属蒸気が凝縮して形成される金属粒子を意味する。また、「金属」とは、純金属および合金のいずれをも含む。
以下の説明では、鋼の成分組成についての「質量%」を、単に「%」とも表示する。
本発明の鋳片は、ストロンチウムおよびマグネシウムといった不均質核生成能の高い金属元素を含有させることにより鋳片内の凝固組織に微細な等軸デンドライトを生成させており、偏析のおよぶ範囲が狭く、組成分布が極めて均一であることから、高強度かつ表面性状に優れた鋼板を製造するための素材として好適である。
また、本発明の連続鋳造方法は、上記の高強度かつ表面性状の良好な鋼板を得るために必要な、蒸気圧が高く融点の低い金属元素の適正量を溶鋼中に効率良く添加し、連続鋳造鋳片内に均一に分散させることのできる最適の連続鋳造方法である。
本発明は、上述のとおり、鋼中に0.0002〜0.01%のストロンチウムを含有し、鋳片の凝固組織が等軸デンドライトを有する鋼組織である鋼の連続鋳造鋳片である。また、本発明は、鋼中に、0.0002〜0.01質量%のストロンチウム、0.0002〜0.01質量%のマグネシウムおよび0.0002〜0.01質量%の希土類元素を含有し、凝固組織が等軸デンドライトを有する鋼組織である鋳片を製造する、タンディッシュ内または鋳型内の溶鋼中に浸漬させた浸漬ランス内に、ストロンチウム、マグネシウムおよび希土類元素を含有する金属のワイヤーもしくはロッドを挿入することにより、該浸漬ランス内で金属蒸気および/または金属粒子を発生させ、該金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに溶鋼中に添加する連続鋳造方法である。以下、本発明の内容についてさらに詳細に説明する。
1.鋼組成の範囲および限定理由
本発明において、鋼中のストロンチウムの含有率の適正範囲は0.0002〜0.01%である。これは、後述する実施例の結果から得られた知見に基づくものである。すなわち、ストロンチウムの含有率が0.0002%未満では、鋳片の凝固組織における等軸デンドライトの割合が小さいため、鋼板の機械的特性の向上の効果が得にくく、一方、0.01%を超えると、鋳片の凝固組織における等軸デンドライト組織の割合が飽和するからである。
また、後述する実施例の結果から、上記範囲のストロンチウムに加えてマグネシウムを添加すると、鋳片の凝固組織における等軸デンドライトのサイズが、ストロンチウムを単独で添加した場合よりも微細化されることが判明した。
マグネシウムの含有率の好ましい範囲は、0.0002〜0.01%である。その含有率が0.0002%未満では、等軸デンドライトのサイズがマグネシウムを添加していない場合に比べて十分には微細化されないことから鋼板の機械的特性の向上の効果が得にくく、一方、0.01%を超えて高いと、微細化の効果である鋼板の機械的特性の向上効果が飽和する。
さらに、後述する実施例の結果から、上記範囲のストロンチウム単独またはストロンチウムおよびマグネシウムに加えて希土類元素を添加すると、鋳片の凝固組織における等軸デンドライトのサイズが、ストロンチウムを単独で添加した場合ならびにストロンチウムおよびマグネシウムを添加した場合よりも微細化されることが分かった。ここで、希土類元素とはセリウム(Ce)、ランタン(La)、ネオジム(Nd)、サマリウム(Sm)、プラセオジム(Pr)、イットリウム(Y)およびジスプロシウム(Dy)のうち1種または2種以上の混合物を意味する。
希土類元素の含有率の好ましい範囲は、0.0002〜0.01%である。その含有率が0.0002%未満では、等軸デンドライトのサイズが希土類元素を添加していない場合に比べて十分には微細化されないことから鋼板の機械的特性の向上の効果が得にくく、一方、0.01%を超えて高いと、微細化の効果である鋼板の機械的特性の向上効果が飽和する。
ストロンチウムの融点は768℃、沸点は1380℃であって、融点および沸点ともに鉄に比べて低い。ストロンチウムのように、融点または沸点が低い金属元素を溶鋼中に添加する場合には、それらの添加金属元素は、溶鋼と接触するかまたは溶鋼からの輻射熱を受けることにより溶融または気化する。溶鋼中に添加する以前、あるいは添加した瞬間に金属元素が溶融または気化すると、これらの金属元素を溶鋼中に均一に歩留り良く添加することは困難である。また、連続鋳造鋳片内に金属元素を均一に添加するには、連続鋳造鋳型に近い位置にあるタンディッシュ内の溶鋼、または連続鋳造鋳型内の溶鋼に添加する方法が最適である。
これまでに本発明者らは、特許文献2、特許文献3および特許文献4において、金属元素の蒸気あるいは金属元素の化合物をタンディッシュ内の溶鋼または連続鋳造鋳型内の溶鋼中に効率よく添加する方法を提案した。これらの方法により、金属元素あるいは金属元素の化合物の適正量を溶鋼中に均一に、しかも歩留り良く添加することが可能になった。
さらに、本発明者らは、表層組織が等軸デンドライトである鋳片を製造するにあたり、等軸デンドライト組織の形成に有効な効果を有する金属元素を連続鋳造鋳片内に効率良く、しかも均一に添加するための連続鋳造方法を検討し、上述の(a)〜(d)の知見を得て、本発明を完成させたのである。
2.連続鋳造方法
本発明の連続鋳造方法は、上述の通り、タンディッシュ内または鋳型内の溶鋼中に浸漬させた浸漬ランス内に、ストロンチウムを含有する金属のワイヤーもしくはロッドを挿入することにより、または、ストロンチウムに加えて、マグネシウムおよび希土類元素のうちの1種以上を含有する金属のワイヤーもしくはロッドを挿入することにより、該浸漬ランス内で金属蒸気および/または金属粒子を発生させ、該金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに溶鋼中に添加することを特徴とする。
また、上記の連続鋳造方法を実施するための装置としては、例えば、後述する実施例にて説明する通り、タンディッシュと、タンディッシュ下部に設けられタンディッシュ内の溶鋼を鋳型に供給するための浸漬ノズルと、タンディッシュの下方に位置する鋳型と、タンディッシュ内の溶鋼にワイヤーもしくはロッドを供給するための浸漬ランスまたは鋳型内の溶鋼にワイヤーもしくはロッドを供給するための浸漬ランスと、浸漬ランスの孔内にワイヤーもしくはロッドを供給するためのワイヤーまたはロッド供給装置と、浸漬ランス内にキャリアガスを供給するガス供給装置とを有する連続鋳造装置が好適である。
本発明の連続鋳造鋳片および連続鋳造方法の効果を確認するため、以下に示す試験を実施して、その結果を評価した。
〔試験条件〕
溶鋼:後述する表1に記載の成分組成を有する溶鋼
溶鋼温度:1600℃
鋳型サイズ:幅2000mm×厚さ250mm
鋳造速度:1.0m/分
添加金属:ストロンチウム、マグネシウムおよび希土類元素
添加方法:以下の組成の直径3mmの金属ワイヤーのうち少なくとも1種類を供給
5%Sr−Si合金、
純Mg金属、
10%Sr−Mg合金、
5%Sr−Mg合金、
5%REM−5%Sr−Si合金、
5%REM−5%Sr−Mg合金、
5%REM−Mg合金、
およびREM金属
添加位置:タンディッシュ内
キャリアガス:アルゴンガス10L/分
ガス圧力:0.03MPa
本試験では、溶鋼中のストロンチウム濃度、マグネシウム濃度および希土類元素濃度を変化させた連続鋳片を製造するため、金属のワイヤーの供給速度を変化させてタンディッシュ内の溶鋼に添加するストロンチウム、マグネシウムおよび希土類元素の添加量を変化させた。
図1に、金属ワイヤーを浸漬ランスを通してタンディッシュ内の溶鋼に供給しながら連続鋳造する方法を示す。取鍋3からタンディッシュ2に供給された溶鋼1は、浸漬ノズル7を経由して鋳型9内に注入され、下方に引き抜かれながら凝固シェル8を形成して鋳片となる。添加金属元素を含有する金属ワイヤー50が、タンディッシュ2内の溶鋼1中に浸漬された浸漬ランス4の孔内に所定の速度で挿入される。
浸漬ランス4の上端部はワイヤー供給機5に接続されている。金属ワイヤー供給機5にはワイヤーリール51が装填されており、金属ワイヤー50は、ワイヤー繰出し速度制御装置53によりその繰出し速度を制御されたワイヤー繰出しロール52により、浸漬ランス4内に挿入供給される。金属ワイヤー供給機5には、流量圧力制御装置57の指令により作動する流量制御弁56および圧力指示調節弁55により流量および圧力を制御されたキャリアガス54が導入され、金属ワイヤー50とともに浸漬ランス4内に供給される。
一方、比較例の試験として、ストロンチウムを添加しない条件においても、同様の連続鋳造試験を行った。
試験に用いた合金鋼の成分組成を表1に示した。表1の本発明例1〜6のうち、本発明例1〜4および6は、本発明の参考例である。
Figure 0005061977
〔試験結果〕
試験結果を前記表1に併せ示した。前記表1における等軸デンドライト率および微細化指数は、下記の方法により求めた。
(1)等軸デンドライト率
連続鋳片における等軸デンドライトの生成を確認するため、採取した鋳片のサンプルの横断面を鏡面研磨した後、ピクリン酸飽和溶液で組織を顕出した。次いで、組織を顕出した横断面全体について写真を撮影した。この写真において組織の形態を観察し、横断面全体に占める等軸デンドライトの面積比率を算出し、これを等軸デンドライト率とした。
(2)微細化指数
等軸デンドライト率の算出に用いた写真において、観察される個々の等軸デンドライトの領域を円形と見なした場合の直径(円相当径)を測定し、その1個当たりの平均値を算出した。そして、比較例1で観察された等軸デンドライトの領域の円相当径を基準(1.0)として指数化し、これを微細化指数とした。この微細化指数が小さいほど、等軸デンドライトが微細であることを意味する。
等軸デンドライト率は、ストロンチウムを添加しない比較例1〜4では、マグネシウムまたは希土類元素を添加した場合も含めて5〜27%であった。一方、ストロンチウムのみを添加した本発明例1〜3では53〜72%と、比較例に比べて等軸デンドライト率は高く、ストロンチウム含有量が多いほど高い値を示した。また、ストロンチウムに加えて、マグネシウムを添加した本発明例4および希土類元素を添加した本発明例6ではいずれも80%以上と、より高い値を示した。さらにマグネシウムおよび希土類元素を添加した本発明例5では95%と極めて高く良好な値であった。
微細化指数は、比較例1〜4ではマグネシウムまたは希土類元素を添加した場合も含めて0.77〜1.0であった。一方、ストロンチウムのみを添加した本発明例1〜3では0.36〜0.48と、比較例と比べて微細化指数は小さく、ストロンチウム含有量が多いほど小さい値となった。また、ストロンチウムに加えて、マグネシウムおよび希土類元素の少なくとも一方を添加した本発明例4〜6では0.33以下とより一層小さい値となった。
これらの結果から、ストロンチウムを添加しない比較例では、凝固組織における等軸デンドライトの比率が低く、且つ等軸デンドライトが粗大であり、ストロンチウムを添加した本発明例では、凝固組織における等軸デンドライトの比率が高く、且つ等軸デンドライトが微細であることが判明した。
本発明の鋳片は、ストロンチウムを含有させることにより、等軸デンドライトの比率が高く、且つ等軸デンドライトが微細な組織とされているので、鋼組織が均一であり、強度および延性といった特性に加えて、鋼板の穴拡げ性などの加工性に優れ、自動車用の高強度鋼板をはじめとする高強度高加工性鋼板を製造するための素材として好適である。また、本発明の連続鋳造方法は、上記鋳片を得るために必要な金属元素の適正量を溶鋼中に効率良く添加し、連続鋳造鋳片内に均一に分散させるための最適な連続鋳造方法である。
したがって、本発明の鋳片は、自動車用熱延鋼板をはじめとする強度、靱性および加工性に優れた構造用または加工用鋼材として、また、本発明の鋳造方法は、上記鋼材製造用鋳片を鋳造するための連続鋳造方法として、それぞれ広範に適用できる。
金属ワイヤーを浸漬ランスを通してタンディッシュ内の溶鋼に供給しながら連続鋳造する方法を示す図である。
符号の説明
1:溶鋼、 2:タンディッシュ、 3:取鍋、 4:浸漬ランス、
5:金属ワイヤー供給機、 50:金属ワイヤー、 51:ワイヤーリール、
52:ワイヤー繰出しロール、 53:ワイヤー繰出し速度制御装置、
54:キャリアガス、 55:圧力指示調節弁、56:流量制御弁、
57:流量圧力制御装置、 7:浸漬ノズル、 8:凝固シェル、 9:連続鋳造鋳型

Claims (1)

  1. 鋼中に、0.0002〜0.01質量%のストロンチウム、0.0002〜0.01質量%のマグネシウムおよび0.0002〜0.01質量%の希土類元素を含有し、凝固組織が等軸デンドライトを有する鋼組織である鋳片を製造する
    タンディッシュ内または鋳型内の溶鋼中に浸漬させた浸漬ランス内に、
    ストロンチウムマグネシウムおよび希土類元素を含有する金属のワイヤーもしくはロッドを挿入することにより、
    該浸漬ランス内で金属蒸気および/または金属粒子を発生させ、該金属蒸気および/または金属粒子をキャリアガスとともに溶鋼中に添加することを特徴とする鋼の連続鋳造方法。
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