JP5054265B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、芳香族ポリカーボネート、液晶ポリエステルおよび硫黄含有有機金属塩化合物からなる樹脂組成物に関する。更に詳しくは剛性、難燃性、成形加工性に優れ、殊に薄肉成形品に好適な樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐熱性、耐衝撃性、寸法安定性などに優れた樹脂であり、電気・電子部品分野、機構部品分野、自動車部品分野、OA機器部品分野など幅広く使用されている。特に、その寸法安定性、耐衝撃性を活かしてOA機器などにおける外装材としての利用も広がっているが、近年、製品の軽薄短小化が進んでいることから、材料に対しては薄肉製品を設計した場合でも強度を保つことができる高い剛性、成形加工性を保つことができる良好な流動性、及び製品の安全性を保つことができる高い難燃性が強く求められている。
【0003】
従来、剛性を改良するためには、ガラス繊維などの繊維状無機強化材や無機充填剤を混合する方法が用いられてきたが、その場合樹脂の流動性が損なわれるといった欠点を有していた。
【0004】
熱可塑性樹脂に液晶性を示すポリマーを配合し、液晶性ポリマーを組成物中で繊維化させることにより、剛性と流動性を同時に改良する方法は多く提案されている。芳香族ポリカーボネート樹脂においても、液晶性ポリマーを配合する試みは多くなされており、特開平07−258531号公報などには更に剛性を高めるために繊維状無機強化材を配合した例が記載されている。また下記に示すとおり、難燃性を付与するため臭素系難燃剤あるいはリン系難燃剤を配合した試みも既に行われている。
【0005】
しかしながら、上記の難燃剤は難燃性達成のため比較的多くの量を必要とし、他の特性に与える影響のため適切でない場合があった。また近年は環境に対する影響を考慮して、臭素化合物やリン化合物を含まない難燃性の樹脂材料が求められる場合もある。
【0006】
特開平03−95255号公報には、特定構造および耐熱性を有する液晶ポリマー、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂、および有機臭素化合物からなる樹脂組成物が記載されている。しかしながらかかる公報は臭素化合物による、液晶ポリマーが主成分の場合の難燃性を開示するのみであり、また液晶ポリエステルにおける有機金属塩の効果を開示するものではなかった。
【0007】
特開平07−331051号公報には、ポリカーボネート樹脂、液晶ポリマー、難燃剤、およびポリテトラフルオロエチレンからなる樹脂組成物が記載されている。当該公報はポリカーボネート樹脂を主体とする難燃性樹脂組成物が記載され、ポリカーボネート樹脂を主体とする場合には、難燃助剤たるポリテトラフルオロエチレンを配合しても尚、十分な難燃性が得られない旨が開示されている。一方でかかる公報も比較的多めの難燃剤の配合により難燃性を向上しており、少割合の成分により難燃性を向上する旨、殊に液晶ポリマーを含む樹脂組成物における有機金属塩の効果を開示するものではなかった。
【0008】
特開平8−134343号公報には、ポリカーボネート樹脂、液晶性樹脂、無機繊維、難燃剤からなるディスクドライブシャーシ用樹脂組成物が記載されている。しかしながらかかる公報においても比較的多めの難燃剤の配合により難燃性を向上しており、液晶ポリマーを含む樹脂組成物における有機金属塩の効果を開示するものではなかった。
【0009】
一方で芳香族ポリカーボネートとポリエステルからなる樹脂組成物の難燃性を臭素やリンを含まない難燃剤で行う提案も既になされている。
【0010】
特開昭57−151643号公報には、二価フェノールと芳香族ジカルボン酸からなるポリアリレート、および難燃化量の芳香族スルホン酸のアルカリ(土類)金属塩からなる樹脂組成物が記載され、さらに芳香族ポリカーボネート樹脂を少割合で配合した樹脂組成物が開示されている。特開昭57−31950号公報にはジフェノールと、イソフタル酸および/またはテレフタル酸等からの芳香族ポリエステル(カーボネート)および有機酸のアルカリ金属塩等からなる樹脂組成物が記載されている。更に、特開平11−181265号公報にはポリカーボネート樹脂、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、およびポリエステル系樹脂からなる樹脂組成物が記載されている。しかしながらいずれの公報においても、液晶ポリエステルに関する記載はなく、液晶ポリマーを含む樹脂組成物における有機金属塩の効果を開示するものではなかった。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上記問題点を鑑みた上で、剛性及び流動性を改良しつつ、環境負荷に対する懸念が小さく、比較的少量の難燃剤で難燃化した芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を提供することにある。
【0012】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意検討した結果、芳香族ポリカーボネート、液晶ポリエステル、および更に特定の金属塩化合物を特定量含む樹脂組成物が、上述の目的に合致することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(A)芳香族ポリカーボネート(A成分)、(B)液晶ポリエステル(B成分)、及び(C)硫黄含有有機金属塩化合物(C成分)からなり、A成分とB成分との重量比率が(A)/(B)=98/2〜40/60であり、かつC成分の割合が全組成物100重量%当たり0.001〜0.8重量%である樹脂組成物にかかるものである。
【0014】
本発明はより好適には、更に(D)繊維状無機強化材(D成分)を、全組成物100重量%当たり1〜50重量%含有する上記樹脂組成物にかかるものであり、また本発明はより好適には(E)燐酸、亜燐酸、及びそれらのエステルまたは金属塩から選ばれた少なくとも1種の化合物(E成分)を、全組成物100重量%当たり0.01〜3重量%含有する上記樹脂組成物にかかるものである。
【0015】
更に本発明は好適には、上記C成分がパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩である上記樹脂組成物にかかるものである。
【0016】
以下本発明の詳細を説明する。
【0017】
本発明に用いられるA成分の芳香族ポリカーボネートは、二価フェノールとカーボネート前駆体とを反応させて得られるものであり、反応の方法としては界面重縮合法、溶融エステル交換法、カーボネートプレポリマーの固相エステル交換法、および環状カーボネート化合物の開環重合法などを挙げることができる。
【0018】
二価フェノールの代表的な例としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(通称ビスフェノールA)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、9,9−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}フルオレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンおよびα,α'−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼンなどを挙げることができる。特に、ビスフェノールAの単独重合体を挙げることができる。かかる芳香族ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性が優れる点で好ましい。
【0019】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が使用され、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられる。
【0020】
上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重縮合法または溶融エステル交換法によって反応させて芳香族ポリカーボネートを製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。また芳香族ポリカーボネートは三官能以上の多官能性芳香族化合物を共重合した分岐ポリカーボネートであってもよい。三官能以上の多官能性芳香族化合物としては、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタンなどが使用できる。
【0021】
分岐ポリカーボネートを生ずる多官能性化合物を含む場合、かかる割合は、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%である。また特に溶融エステル交換法の場合、副反応として分岐構造が生ずる場合があるが、かかる分岐構造量についても、芳香族ポリカーボネート全量中、0.001〜1モル%、好ましくは0.005〜0.5モル%、特に好ましくは0.01〜0.3モル%であるものが好ましい。尚、かかる割合については1H−NMR測定により算出することが可能である。
【0022】
更に芳香族または脂肪族の二官能性カルボン酸を共重合したポリエステルカーボネートであってもよい。脂肪族の二官能性カルボン酸としては、例えば炭素数8〜20、好ましくは10〜12の脂肪族の二官能性カルボン酸が挙げられる。かかる脂肪族の二官能性のカルボン酸は、直鎖状、分枝状、環状のいずれであってもよい。脂肪族の二官能性のカルボン酸は、α,ω−ジカルボン酸が好ましい。脂肪族の二官能性のカルボン酸としては例えば、セバシン酸(デカン二酸)、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、オクタデカン二酸、イコサン二酸等の直鎖飽和脂肪族ジカルボン酸が好ましく挙げられる。
【0023】
更にポリオルガノシロキサン単位を共重合した、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体の使用も可能である。
【0024】
芳香族ポリカーボネートは、上述した各種二価フェノールの異なるポリカーボネート、分岐成分を含有するポリカーボネート、各種のポリエステルカーボネート、ポリカーボネート−ポリオルガノシロキサン共重合体など各種の芳香族ポリカーボネートの2種以上を混合したものであってもよい。更に下記に示す製造法の異なるポリカーボネート、末端停止剤の異なるポリカーボネートなど各種についても2種以上を混合したものが使用できる。
【0025】
芳香族ポリカーボネートの重合反応において界面重縮合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0026】
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。また、末端停止剤は単独でまたは2種以上混合して使用してもよい。
【0027】
溶融エステル交換法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1.33×103〜13.3Pa程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0028】
カーボネートエステルとしては、置換されていてもよい炭素数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0029】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができ、かかる重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、二価フェノールのナトリウム塩、カリウム塩等のアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属化合物、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルアミン、トリエチルアミン等の含窒素塩基性化合物などの触媒を用いることができる。更にアルカリ(土類)金属のアルコキシド類、アルカリ(土類)金属の有機酸塩類、ホウ素化合物類、ゲルマニウム化合物類、アンチモン化合物類、チタン化合物類、ジルコニウム化合物類などの通常エステル化反応、エステル交換反応に使用される触媒を用いることができる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10-8〜1×10-3当量、より好ましくは1×10-7〜5×10-4当量の範囲で選ばれる。
【0030】
溶融エステル交換法による反応ではフェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に、例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネート等の化合物を加えることができる。
【0031】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後のポリカーボネートに対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩なとが好ましく挙げられる。
【0032】
芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は特定されないが、粘度平均分子量が10,000未満であると強度などが低下し、50,000を超えると成形加工性が低下するようになるので、10,000〜50,000のものが好ましく、12,000〜30,000のものがより好ましく、更に好ましくは18,000〜28,000である。この場合粘度平均分子量が上記範囲外であるポリカーボネートとを混合することも当然に可能である。
【0033】
本発明でいう粘度平均分子量はまず次式にて算出される比粘度を20℃で塩化メチレン100mlに芳香族ポリカーボネート0.7gを溶解した溶液からオストワルド粘度計を用いて求め、
比粘度(ηSP)=(t−t0)/t0
[t0は塩化メチレンの落下秒数、tは試料溶液の落下秒数]
求められた比粘度を次式にて挿入して粘度平均分子量Mを求める。
ηSP/c=[η]+0.45×[η]2c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10-40.83
c=0.7
【0034】
尚、本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物における粘度平均分子量を測定する場合は次の要領で行う。すなわち、該組成物を、その20〜30倍重量の塩化メチレンに溶解し、かかる可溶分をセライト濾過により採取した後、溶液を除去して十分に乾燥し、塩化メチレン可溶分の固体を得る。かかる固体0.7gを塩化メチレン100mlに溶解した溶液から、上式により算出される20℃における比粘度を、オストワルド粘度計を用いて求めることにより測定する。
【0035】
本発明に用いられるB成分の液晶ポリエステルとは、サーモトロピック液晶ポリエステルであり、溶融状態でポリマー分子鎖が一定方向に配列する性質を有している。かかる配列状態の形態はネマチック型、スメチック型、コレステリック型、およびディスコチック型のいずれの形態であってもよく、また2種以上の形態を呈するものであってもよい。更に液晶ポリエステルの構造としては主鎖型、側鎖型、および剛直主鎖屈曲側鎖型などのいずれの構造であってもよいが、好ましいのは主鎖型液晶ポリエステルである。
【0036】
上記配列状態の形態、すなわち異方性溶融相の性質は、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査法により確認することができる。より具体的には、異方性溶融相の確認は、Leitz偏光顕微鏡を使用し、Leitzホットステージにのせた溶融試料を窒素雰囲気下で40倍の倍率で観察することにより実施できる。本発明のポリマーは直交偏光子の間で検査したときにたとえ溶融静止状態であっても偏光は透過し、光学的に異方性を示す。
【0037】
また液晶ポリエステルの耐熱性はいかなる範囲であってもよいが、ポリカーボネート樹脂の加工温度に近い部分で溶融し液晶相を形成するものが適切である。この点で液晶ポリエステルの荷重たわみ温度が150〜280℃、好ましくは180〜250℃であるものがより好適である。かかる液晶ポリエステルはいわゆる耐熱性区分のII型に属するものである。かかる耐熱性を有する場合には耐熱性のより高いI型に比較して成形加工性に優れ、および耐熱性のより低いIII型に比較して良好な難燃性が達成される。
【0038】
本発明で用いられる液晶ポリエステルは、ポリエステルおよびポリエステルアミドを含むものであり、芳香族ポリエステル及び芳香族ポリエステルアミドが好ましく、芳香族ポリエステル及び芳香族ポリエステルアミドを同一分子鎖中に部分的に含むポリエステルも好ましい例である。
【0039】
特に好ましくは、芳香族ヒドロキシカルボン酸、芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミンの群から選ばれた1種または2種以上の化合物を構成成分として有する全芳香族ポリエステル、全芳香族ポリエステルアミドである。より具体的には、
1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステル、
2)主として
a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上とb)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上とc)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上とからなるポリエステル、
3)主として
a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上と、
c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上とからなるポリエステルアミド、
4)主として
a)芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
b)芳香族ヒドロキシアミン、芳香族ジアミン及びその誘導体の1種又は2種以上と、
c)芳香族ジカルボン酸、脂環族ジカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上と、
d)芳香族ジオール、脂環族ジオール、脂肪族ジオール及びその誘導体の少なくとも1種又は2種以上とからなるポリエステルアミド、
が挙げられるが、1)主として芳香族ヒドロキシカルボン酸及びその誘導体の1種又は2種以上からなるポリエステルが好ましい。
【0040】
更に上記の構成成分に必要に応じ分子量調整剤を併用しても良い。
【0041】
本発明の液晶ポリエステルを構成する具体的化合物の好ましい例は、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン及び6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸等のナフタレン化合物、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル等のビフェニル化合物、p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、ハイドロキノン、p−アミノフェノール及びp−フェニレンジアミン等のパラ位置換のベンゼン化合物及びそれらの核置換ベンゼン化合物(置換基は塩素、臭素、メチル、フェニル、1−フェニルエチルより選ばれる)、イソフタル酸、レゾルシン等のメタ位置換のベンゼン化合物、並びに下記一般式(I)、(II)又は(III)で表される化合物である。中でも、p−ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸が特に好ましく、両者を混合してなる液晶ポリエステルが好適である。両者の割合は前者が80〜50モル%の範囲が好ましく、75〜60モル%の範囲がより好ましく、後者が20〜50モル%の範囲が好ましく、25〜40モル%の範囲がより好ましい。
【0042】
【化1】
Figure 0005054265
【0043】
【化2】
Figure 0005054265
【0044】
【化3】
Figure 0005054265
【0045】
(但し、XはC1〜C4のアルキレン基およびアルキリデン基、−O−、−SO−、−SO2−、−S−、並びに−CO−より選ばれる基であり、Yは−(CH2n−(n=1〜4)、および−O(CH2nO−(n=1〜4)より選ばれる基である。)
又、本発明に使用される液晶ポリエステルは、上述の構成成分の他に同一分子鎖中に部分的に異方性溶融相を示さないポリアルキレンテレフタレートであってもよい。この場合のアルキル基の炭素数は2乃至4である。
【0046】
本発明において使用する上記液晶ポリエステルの基本的な製造方法は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。上記の液晶ポリエステルはまた、60℃でペンタフルオロフェノールに0.1重量%濃度で溶解したときに、少なくとも約2.0dl/g、たとえば約2.0〜10.0dl/gの対数粘度値(IV値)を一般に示す。
【0047】
本発明に使用される(A)芳香族ポリカーボネートと、(B)液晶ポリエステルの配合割合は、重量比率が(A)/(B)=98/2〜40/60、好ましくは98/2〜60/40、更に好ましくは98/2〜80/20の範囲である。液晶ポリエステルの配合割合が、この範囲より大きいと良好な難燃性が達成されず、また配合割合がこの範囲より小さいときには、液晶ポリエステル配合による流動性改良効果などを得ることができない。
【0048】
本発明のC成分として用いられる硫黄含有有機金属塩化合物としては、有機スルホン酸の金属塩が好ましく、金属としてはアルカリ金属またはアルカリ土類金属が好ましい。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウムが挙げられ、アルカリ土類金属としては、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウムが挙げられ、特に好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムである。またこれらは単独の使用だけでなく、2種以上を混合して使用することも可能である。
【0049】
本発明の有機スルホン酸の金属塩としては、脂肪族スルホン酸のアルカリ金属塩、脂肪族スルホン酸のアルカリ土類金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ金属塩、芳香族スルホン酸のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。
【0050】
かかる脂肪族スルホン酸金属塩の好ましい例としては、アルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、かかるアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩のアルキル基の一部がフッ素原子で置換したスルホン酸アルカリ(土類)金属塩、およびパーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる(ここで、アルカリ(土類)金属塩の表記は、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩のいずれも含む意味で使用する)。
【0051】
アルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用するアルカンスルホン酸の好ましい例としては、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、プロパンスルホン酸、ブタンスルホン酸、メチルブタンスルホン酸、ヘキサンスルホン酸、へプタンスルホン酸、オクタンスルホン酸等があげられ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。またかかるアルキル基の一部がフッ素原子で置換した金属塩も挙げることができる。
【0052】
一方、パーフルオロアルカンスルホン酸の好ましい例としては、パーフルオロメタンスルホン酸、パーフルオロエタンスルホン酸、パーフルオロプロパンスルホン酸、パーフルオロブタンスルホン酸、パーフルオロメチルブタンスルホン酸、パーフルオロヘキサンスルホン酸、パーフルオロヘプタンスルホン酸、パーフルオロオクタンスルホン酸等があげられ、特に炭素数が1〜8のものが好ましい。これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
【0053】
かかるアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、エタンスルホン酸ナトリウム塩を、パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、パーフルオロブタンスルホン酸カリウム塩を好ましく挙げることができる。
【0054】
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩に使用する芳香族スルホン酸としては、モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸、芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸、芳香族スルホネートのスルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸、モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸、芳香族ケトンのスルホン酸、複素環式スルホン酸、芳香族スルホキサイドのスルホン酸、芳香族スルホン酸のメチレン型結合による縮合体からなる群から選ばれた少なくとも1種の酸を挙げることができ、これらは1種もしくは2種以上を併用して使用することができる。
【0055】
モノマー状またはポリマー状の芳香族サルファイドのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98539号公報に記載されており、例えば、ジフェニルサルファイド−4,4'−ジスルホン酸ジナトリウム、ジフェニルサルファイド−4,4'−ジスルホン酸ジカリウムなどを挙げることができる。
【0056】
芳香族カルボン酸およびエステルのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98540号公報に記載されており、例えば5−スルホイソフタル酸カリウム、5−スルホイソフタル酸ナトリウム、ポリエチレンテレフタル酸ポリスルホン酸ポリナトリウムなどを挙げることができる。
【0057】
モノマー状またはポリマー状の芳香族エーテルのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98542号公報に記載されており、例えば1−メトキシナフタレン−4−スルホン酸カルシウム、4−ドデシルフェニルエーテルジスルホン酸ジナトリウム、ポリ(2,6−ジメチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,3−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(1,4−フェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリナトリウム、ポリ(2,6−ジフェニルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸ポリカリウム、ポリ(2−フルオロ−6−ブチルフェニレンオキシド)ポリスルホン酸リチウムなどを挙げることができる。
【0058】
芳香族スルホネートのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98544号公報に記載されており、例えばベンゼンスルホネートのスルホン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0059】
モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98546号公報に記載されており、例えばベンゼンスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ストロンチウム、ベンゼンスルホン酸マグネシウム、p−ベンゼンジスルホン酸ジカリウム、ナフタレン−2,6−ジスルホン酸ジカリウム、ビフェニル−3,3'−ジスルホン酸カルシウムなどを挙げることができる。
【0060】
モノマー状またはポリマー状の芳香族スルホンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭52−54746号公報に記載されており、例えばジフェニルスルホン−3−スルホン酸ナトリウム、ジフェニルスルホン−3−スルホン酸カリウム、ジフェニルスルホン−3,3'−ジスルホン酸ジカリウム、ジフェニルスルホン−3,4'−ジスルホン酸ジカリウムなどを挙げることができる。
【0061】
芳香族ケトンのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−98547号公報に記載されており、例えばα,α,α−トリフルオロアセトフェノン−4−スルホン酸ナトリウム、ベンゾフェノン−3,3'−ジスルホン酸ジカリウムなどを挙げることができる。
【0062】
複素環式スルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭50−116542号公報に記載されており、例えばチオフェン−2,5−ジスルホン酸ジナトリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸ジカリウム、チオフェン−2,5−ジスルホン酸カルシウム、ベンゾチオフェンスルホン酸ナトリウムなどを挙げることができる。
【0063】
芳香族スルホキサイドのスルホン酸アルカリ(土類)金属塩としては、特開昭52−54745号公報に記載されており、例えばジフェニルスルホキサイド−4−スルホン酸カリウムなどを挙げることができる。
【0064】
芳香族スルホン酸アルカリ(土類)金属塩のメチレン型結合による縮合体としては、ナフタレンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物、アントラセンスルホン酸ナトリウムのホルマリン縮合物などを挙げることができる。
【0065】
またC成分としては、硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩も挙げることができ、特に一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。かかる一価および/または多価アルコール類の硫酸エステルとしては、メチル硫酸エステル、エチル硫酸エステル、ラウリル硫酸エステル、ヘキサデシル硫酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルの硫酸エステル、ペンタエリスリトールのモノ、ジ、トリ、テトラ硫酸エステル、ラウリン酸モノグリセライドの硫酸エステル、パルミチン酸モノグリセライドの硫酸エステル、ステアリン酸モノグリセライドの硫酸エステルなどを挙げることができる。これらの硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩として好ましくはラウリル硫酸エステルのアルカリ(土類)金属塩を挙げることができる。
【0066】
上記に挙げたスルホン酸または硫酸エステルの金属塩化合物のうち、より好ましい成分として芳香族スルホン酸のアルカリ(土類)金属塩およびパーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩を挙げることができ、パーフルオロアルカンスルホン酸のアルカリ(土類)金属塩が特に好ましい。
【0067】
本発明に用いられる上記C成分の配合量は、全樹脂組成物100重量%中0.001〜0.8重量%である。好ましくは0.005〜0.15重量%、より好ましくは0.005〜0.1重量%、更に好ましくは0.01〜0.08重量%である。添加量がこの範囲より大きいときには、芳香族ポリカーボネートの分解を促進するなどの問題が生じ、またこの範囲より小さいときには、難燃性の向上効果を得ることができなくなる。
【0068】
本発明においては、樹脂組成物の剛性と難燃性を更に向上するため、D成分として繊維状無機強化材を配合することがより好ましい。
【0069】
D成分の繊維状無機強化材としては、ガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、アスベスト、ロックウール、セラミック繊維、スラグ繊維、チタン酸カリウムウィスカー、ボロンウィスカー、硼酸アルミニウムウィスカー、炭酸カルシウムウィスカー、酸化チタンウィスカー、並びにこれらの強化剤に対して金属等の異種材料を表面被覆した繊維等が挙げられ、またこれらの二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0070】
これらの繊維状無機強化材の中ではガラス繊維、炭素繊維が好ましく、特に炭素繊維(金属被覆繊維などを含む)が好ましい。炭素繊維は熱伝導率が良好なため薄肉における難燃化が比較的困難である。本発明は少量の有機金属塩によりかかる炭素繊維を含む組成物においても良好な難燃性を達成したものである。更に炭素繊維等の繊維状無機強化剤を含むことでより難燃性が向上するとの効果も奏するものである。
【0071】
ガラス繊維や炭素繊維は、例えば長繊維タイプ(ロービング)や短繊維状のチョップドストランド、ミルドファイバーなどから選択して用いることができる。尚、ミルドファイバーにおいてはその数平均アスペクト比は5以上であることが好ましい。
【0072】
D成分の繊維状無機強化材は、集束剤(例えばポリ酢酸ビニル、ウレタン、アクリル、ポリエステル集束剤等)、カップリング剤(例えばシラン化合物、ボロン化合物、チタン化合物等)、その他の表面処理剤で処理されていてもよい。
【0073】
D成分の繊維状無機強化材の配合量は、全樹脂組成物中に1〜50重量%であることが好ましく、5〜30重量%であることが更に好ましい。この配合量が50重量%を超えると組成物の成型加工性が劣る。またD成分の割合はB成分の液晶ポリエステルとの関係において次のような割合が好適である。すなわち、B成分とD成分との重量比率が(B)/(D)=30/70〜80/20であることが好ましく、(B)/(D)=35/65〜70/30であることがより好ましく、(B)/(D)=40/60〜65/35であることが更に好ましい。かかる範囲では成形加工性とウエルド特性などの機械特性の両立に優れる。更に、B成分とD成分は、その合計の重量割合が全組成物100重量%中、35重量%以下、好ましくは25重量%であることも、成形加工性と衝撃強度などの機械特性とを両立できる点でより好ましい態様である。
【0074】
本発明の場合、射出成形時にB成分の液晶ポリエステルの繊維化による機械特性向上効果をより有効に発揮させるためには、予めマトリックス相中で液晶性ポリエステルがミクロ分散していると効率的である。そのため、液晶性ポリエステルがマトリックス相中でミクロ分散するための分散助剤として、E成分として燐酸、亜燐酸、並びにそれらのエステルまたは金属塩から選ばれた少なくとも1種の化合物を配合することが好ましい。
【0075】
本発明の燐酸もしくは亜燐酸のエステルとしては、トリメチルホスフェート、テトラキス(2,4ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンフォスフォナイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジフォスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジフォスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等が例示されるが、亜燐酸エステルが好ましく、特にペンタエリスリトール型の亜燐酸エステルが好ましい。
【0076】
また、本発明の燐酸もしくは亜燐酸の金属塩としては、メタリン酸塩、オルトリン酸塩、オルトリン酸水素塩等が挙げられ、金属塩を構成する金属としては、周期律表IaまたはIIa族元素であることが配合効果の点で好ましく、例えばメタ燐酸ナトリウム、亜燐酸ナトリウム、燐酸一ナトリウム、燐酸二ナトリウム、燐酸三ナトリウム、第一燐酸カルシウム、第二燐酸カルシウム、第三燐酸カルシウム、燐酸一カリウム、燐酸二カリウム、燐酸三カリウム等が例示できる。
【0077】
E成分の燐酸、亜燐酸、及びそれらのエステルまたは金属塩から選ばれた少なくとも1種の化合物の配合量としては、全組成物中に0.01〜3重量%であることが好ましく、0.01〜0.8重量%であることが更に好ましい。この配合量が3重量%を超えると組成物の耐熱性、機械特性などが劣る場合がある。また0.01重量%以上において有効な繊維化促進効果が発揮される。
【0078】
本発明の樹脂組成物には、更に本発明の目的を損なわない範囲で、他の熱可塑性樹脂(例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリアセタール、変性ポリフェニレンエーテル、ABS等のスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリフェニレンサルファイド等)、他の難燃剤(例えば、臭素化エポキシ、臭素化ポリスチレン、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリアクリレート、トリフェニルホスフェート、ホスフェートオリゴマー、ホスホン酸アミド等)、難燃助剤(例えば、アンチモン酸ナトリウム、三酸化アンチモン等)、滴下防止剤(フィブリル形成能を有するポリテトラフルオロエチレン等)、核剤(例えば、ステアリン酸ナトリウム、エチレン−アクリル酸ナトリウム等)、酸化防止剤(例えば、ヒンダ−ドフェノ−ル系化合物等)、衝撃改良剤、紫外線吸収剤、光安定剤、離型剤、滑剤、着色剤等を配合することができる。更に本発明は、使用目的に応じて、繊維状無機強化材以外のガラスフレーク、ワラストナイト、カオリンクレー、マイカ、およびタルクといった一般に知られている各種フィラーを併用することができる。
【0079】
本発明の樹脂組成物を製造するには、任意の方法が採用される。例えば各成分、並びに任意に他の成分を予備混合し、その後溶融混練し、ペレット化する方法を挙げることができる。予備混合の手段としては、ナウターミキサー、V型ブレンダー、ヘンシェルミキサー、メカノケミカル装置、押出混合機などを挙げることができる。予備混合においては場合により押出造粒器やブリケッティングマシーンなどにより造粒を行うこともできる。予備混合後、ベント式二軸押出機に代表される溶融混練機で溶融混練、およびペレタイザー等の機器によりペレット化する。溶融混練機としては他にバンバリーミキサー、混練ロール、恒熱撹拌容器などを挙げることができるが、ベント式ニ軸押出機が好ましい。他に、各成分、並びに任意に他の成分を予備混合することなく、それぞれ独立に二軸押出機に代表される溶融混練機に供給する方法も取ることもできる。
【0080】
【実施例】
以下、実施例により本発明を詳述する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の各種特性の測定は、以下の方法によった。原料は以下の原料を用いた。
(1)機械特性:曲げ試験はASTM D790に準拠し、試験片形状として長さ127mm×幅12.7mm×厚み3.2mmのものを使用し行った。また衝撃強度はASTM D256に準拠して、試験片厚み3.2mmにおいてノッチ付きアイゾット衝撃強度を測定することで評価した。
(2)燃焼性:米国アンダーライターラボラトリー社の定める方法(UL94規格)により評価した。試験片厚さ0.8mmにおいて、V−2ランクに合格する場合を○、不合格の場合を×とした。
(3)流動性:流路厚1mm、流路幅8mmのアルキメデス型スパイラルフロー長を射出成形機(住友重機械工業(株)SG−150U)によりシリンダー温度310℃、金型温度80℃、射出圧力118MPaで測定した。
(4)原料
原料としては、以下のものを用いた。
(A)ポリカーボネート樹脂:パンライト L−1250WQ(帝人化成(株)製、粘度平均分子量24,900)
(B)液晶ポリエステル:ベクトラ A−950(ポリプラスチックス(株)製)
(C)パーフルオロアルカンスルホン酸カリウム塩:メガファック F−114P(大日本インキ化学(株)製)
(D−1)ガラス繊維:ECS−03T−511、13μm径、3mmチョップドストランド(日本電気硝子(株)製)
(D−2)炭素繊維:べスファイト HTA−C6−U、7.5μm径、6mmチョップドストランド(東邦テナックス(株)製)
(E)ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト:アデカスタブ PEP−8(旭電化工業(株)製)
【0081】
[実施例1〜6、比較例1〜5]
表1に記載の各成分を、表1に示す割合にてドライブレンドした後、径30mmφ、L/D=33.2、混練ゾーン2箇所のスクリューを装備したベント付きニ軸押出機(神戸製鋼所(株)製:KTX30)を用い、シリンダー温度300℃にて溶融混練し、押出し、ストランドカットしてペレットを得、得られたペレットを100℃で5時間熱風循環式乾燥機により乾燥した。乾燥後、射出成形機(東芝機械(株)製:IS−150EN)によりシリンダー温度300℃、金型温度80℃、成形サイクル40秒で各特性成形の用成形品を成形した。これらの成形品を用いて各特性を測定した。スパイラルフロー長については上記の方法で測定した。それらの結果を表1に示す。
【0082】
【表1】
Figure 0005054265
【0083】
表1の結果から明らかな通り、芳香族ポリカーボネートに液晶ポリエステルを配合することにより、機械特性や流動性は改良されるものの、その難燃性は不十分であるが(比較例1〜4)、更にスルホン酸金属塩化合物を少量添加することにより、その特性を損なうことなく難燃性を付与することができる(実施例1〜6)。尚、衝撃強度の評価において、繊維状無機強化材を含有しない場合と比較して(実施例1、比較例1および2)、繊維状無機強化材を含有した場合には、液晶ポリエステルを配合することにより特性低下が小さく、よりバランスの取れた特性を備えた組成物となることがわかる(実施例2〜6、比較例3〜5)。
【0084】
【発明の効果】
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、高い剛性、良好な成型加工性を有し、かつ環境負荷の小さい方法で難燃化されているため、電気電子部品分野、ハウジング、機構部品などのOA機器部品分野、自動車部品分野などといった幅広い用途に有用であり、その奏する工業的効果は格別である。

Claims (6)

  1. (A)芳香族ポリカーボネート(A成分)、(B)液晶ポリエステル(B成分)、及び(C)パーフルオロアルカンスルホン酸アルカリ(土類)金属塩(C成分)からなり、A成分とB成分との重量比率が(A)/(B)=98/2〜40/60であり、C成分の割合が全組成物100重量%当たり0.001〜0.8重量%であり、かつ主鎖が分岐構造でかつ含有する有機官能基が芳香族基からなるか、または芳香族基と炭化水素基(芳香族基を除く)とからなるシリコーン化合物を含有しない樹脂組成物。
  2. 更に(D)繊維状無機強化材(D成分)を、全組成物100重量%当たり1〜50重量%含有する請求項1に記載の樹脂組成物。
  3. 更に(E)燐酸、亜燐酸、及びそれらのエステルまたは金属塩から選ばれた少なくとも1種の化合物(E成分)を、全組成物100重量%当たり0.01〜3重量%含有する請求項1または2のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  4. B成分が、芳香族ヒドロキシカルボン酸、及びその誘導体の1種または2種以上からなる芳香族ポリエステルである請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  5. D成分が、ガラス繊維である請求項2〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
  6. D成分が、炭素繊維である請求項2〜のいずれか1項に記載の樹脂組成物。
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