JP5039291B2 - 油脂組成物 - Google Patents
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Description
このほか、グリセリンジ脂肪酸エステルとホスファチジン酸とを組合せることで、炒め調理時のスパッタリングを抑制する技術や、乳化を安定化する技術が知られている(特許文献7、8等)。
更に、グリセリンジ脂肪酸エステルは冷蔵庫等の低温保存にて結晶が生じ易いため、特定の結晶抑制剤を含有させるという技術もある(特許文献9)。
従って本発明の目的は、ω3系不飽和脂肪酸の戻り臭が顕著に改善されて風味良好であり、商品特性及び加工特性に優れたグリセリンジ脂肪酸エステル含有量の高い油脂組成物を提供することにある。
(A)グリセリンモノ脂肪酸エステル0.1〜10質量%、グリセリンジ脂肪酸エステル20〜95質量%、グリセリントリ脂肪酸エステル4.9〜79.9質量%を含有する油脂であって、かつグリセリンジ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中のω3系不飽和脂肪酸含量が15〜90質量%である油脂:100質量部
(B)ホスファチジン酸及び/又はその塩:0.003〜10質量部
を含有する油脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、成分(A)の油脂が、油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応又は油脂とグリセリンとのエステル交換反応により得られた油脂組成物に、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を添加後、脱臭処理を行うことにより製造したものである上記の油脂組成物を提供するものである。
更に、本発明は油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応又は油脂とグリセリンとのエステル交換反応により得られた油脂組成物に、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を添加後、脱臭処理を行うことにより得られた成分(A)100質量部に対し、(B)ホスファチジン酸及び/又はその塩0.003〜10質量部を添加する上記の油脂組成物の製造方法を提供するものである。
グリセリントリ脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、好ましくは70〜100%、更に80〜99%、特に85〜98%、殊更90〜97%が、炭素数10〜24、更に16〜22の不飽和脂肪酸であるのが好ましい。
また、構成脂肪酸のうち、リノール酸の含有量は5質量%未満、更に3質量%未満、特に2質量%未満であることが、外観、脂肪酸の摂取バランスの点で好ましい。
油脂の流量は、充填物の単位断面積(m2)あたり1〜20ton/h、更に2〜10ton/hであることが脱臭操作の安定性、脱臭効率、生産性の点から好ましい。
前記構造体充填物が、比表面積200〜700m2/m3の規則充填物であることが好ましい。
日本油化学協会「基準油脂分析試験法」記載のCDM試験法(2.5.1.2−1996)において、誘導時間が0.5時間以上となるように抗酸化剤を添加するのが好ましく、更に1〜20時間、特に2〜10時間、殊更3〜4時間とするのが好ましい。ここでいう誘導時間とは、該試験法の装置で、油脂サンプルを120℃で加熱しながら清浄空気を送り込み、酸化により生成した揮発性物質を水中に補集し、水の導電率が急激に変化する屈曲点までの時間(hr)のことである。
本発明において、ビタミンEの含有量は、成分(A)100質量部に対して、トコフェロールとして0.0001〜1質量部が好ましく、更に0.0005〜0.01質量部、特に0.0008〜0.005質量部、殊更0.001〜0.002質量部が好ましい。
本発明において、アスコルビン酸又はその誘導体の含有量は、成分(A)100質量部に対して、アスコルビン酸として0.0001〜1質量部が好ましく、更に0.001〜0.5質量部、特に0.003〜0.1質量部、殊更0.005〜0.01質量部が好ましい。
本発明において、カテキンの含有量は、成分(A)100質量部に対して、カテキンとして0.0001〜1質量部が好ましく、更に0.0005〜0.1質量部、特に0.001〜0.05質量部、殊更0.002〜0.01質量部が好ましい。
60℃に加熱した油脂20gを100mLの分液ロートに入れ、60℃の温水5mLを加えて、2分間激しく振とうする。次いで、静置して分層させ、下層を試料溶液とする。この試料溶液2mL、ONPH溶液(*1)1mL及び、ETC溶液(*2)1mLを10mLメスフラスコに入れ、密栓して40℃で30分間加熱する。次いで、1.5mol/L水酸化ナトリウム溶液を1mL加え、60℃で15分間加熱する。室温に冷却後、540nmの吸光度を測定する。濃度既知のクエン酸水溶液を用いて作成した検量線から、次式によりクエン酸含量を求める。
*2 ETC溶液:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(ETC)287.6mgを6%ピリジン水溶液10mLに溶解させた溶液。
食品としては、該油脂組成物を食品の一部として含む油脂加工食品に用いることができる。かかる油脂加工食品としては、例えば特定の機能を発揮して健康増進を図る健康食品、機能性食品、特定保健用食品等が挙げられる。具体的な製品としては、パン、ケーキ、ビスケット、パイ、ピザクラスト、ベーカリーミックス等のベーカリー食品類、スープ、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、ホイップクリーム等の水中油型乳化物、マーガリン、スプレッド、バタークリーム等の油中水型乳化物、ポテトチップス等のスナック菓子、チョコレート、キャラメル、キャンデー、デザート等の菓子、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の肉加工食品、牛乳、チーズ、ヨーグルト等の乳製品、ドウ、エンローバー油脂、フィリング油脂、麺、冷凍食品、レトルト食品、飲料、ルー等が挙げられる。上記油脂組成物の他に、油脂加工食品の種類に応じて一般に用いられる食品原料を添加し製造することができる。本発明の油脂組成物の食品への配合量は、食品の種類によっても異なるが、一般に0.1〜100%、特に1〜80%が好ましい。
肉類としては、牛、豚、羊(マトン又はラム)、ウサギ、カンガルー等の畜肉、獣肉及びその副生物、加工品(ミートボール、ミートボーンミール、チキンミール等の上記原料のレンダリング物)、マグロ、カツオ、アジ、イワシ、ホタテ、サザエ、魚粉(フィッシュミール)等の魚介類等が例示される。蛋白質としては、カゼイン、ホエー等の乳蛋白質や卵蛋白質等の動物蛋白質、大豆蛋白質等の植物蛋白質が例示される。穀物類としては、小麦、大麦、ライ麦、マイロ、トウモロコシ等が挙げられる。ぬか類としては、米ぬか、ふすま等が挙げられる。粕類としては大豆粕等が例示される。飼料中の肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類の合計量は5〜93.9%であるのが好ましい。
〔油脂の製造1〕
マグロ油(三畿飼料工業(株))をリパーゼ-AY(天野エンザイム(株))で加水分解した後、遠心分離を行い、油相を分取し原料油脂組成物(AV値、123.3)とした。これを蒸留操作することにより、遊離脂肪酸を除去し、脱色、脱臭工程を経て、油脂Aを調製した。油脂Aの酸価は0.2であった。表1に油脂Aの脂肪酸組成、及びグリセリド組成を示す。なお、酸価は、基準油脂分析法(2.3.1-1996)に基づき測定した。脂肪酸組成はガスクロマトグラフィーにより、グリセリド組成は液クロマトグラフィーにより分析を行った。なお、表中、FAは遊離脂肪酸、MGはグリセリンモノ脂肪酸エステル、DGはグリセリンジ脂肪酸エステル、TGはグリセリントリ脂肪酸エステルを表す。
大豆レシチンを酵素処理することにより改質反応を行い、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリン脂質X〜Zを調製した。リン脂質Xは、PAを40%、コーン油を60%含有するベネコートBMI 40L(花王(株))100質量部に対し、PCとしてL-αホスファチジルコリン、大豆由来試薬(和光純薬(株))を73質量部、PEとしてL-αホスファチジルエタノールアミンジステアロイル試薬(和光純薬(株))を60質量部、コーン油を100質量部配合したものを使用した。リン脂質Yは、ベネコートBMI 40L(花王(株))100質量部に対し、PCとしてL−αホスファチジルコリン、大豆由来試薬(和光純薬(株))を5300質量部、PEとしてL−αホスファチジルエタノールアミンジステアロイル試薬(和光純薬(株))を1100質量部、コーン油を3350質量部配合したものを使用した。リン脂質ZはPAを40%、コーン油を60%含有するベネコートBMI 40L(花王(株))を使用した。
(1)油脂のグリセリド組成
サンプル油脂0.1gにテトラヒドロフラン(THF)2mLを加え溶解する。溶解後、四フッ化エチレン樹脂膜(PTFE膜、アドバンテック東洋(株))で濾過処理し、液体クロマトグラフィー(HPLC)に供して、グリセリド組成を測定した。
HPLC条件
装置;日立製作所製
カラム;G−2500、G−2000(東ソー(株))
カラム温度;30℃
検出器;L−3350 RI Monitor ((株)日立製作所)
流量;THF、0.4mL/分
(2)グリセリドの脂肪酸組成
日本油化学協会「基準油脂分析試験法」(2.4.2.2.−1996)に従って分析した。
(3)リン脂質の組成
代表的なリン脂質であるホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、及びホスファチジルエタノールアミン(PE)の含有量は、油化学、35(12)、P1018〜1024、(1986)に記載方法で行った。分子量はPA、PC、PEそれぞれ704、790、748として求めた。
油脂Aに対し、リン脂質X〜Z、茶抽出物(カテキン)、ローズマリー抽出物(RM)、ビタミンCパルミテート(VCP)、トコフェロール(VE)の抗酸化剤を加え、又は加えず、表3に示す本発明品1〜12、及び比較品1〜5を調製した。これらの配合組成、加熱時の匂いの官能評価の結果を表3に示す。戻り臭の評価法は、ステンレスシャーレにサンプルを3g計り取り、塗布した後にシャーレーをホットプレートで加熱し、匂い立ちを評価した。温度は100℃で行い、それぞれ60秒後、240秒後のサンプルを評価した。
戻り臭
○:匂いがしない
△:わずかに魚臭がする
×:魚臭がする
表3に示した本発明品1〜12、及び比較品1〜5を調製し、曇点を測定することにより低温耐性を評価した。評価法は、曇点測定装置であるFP90/81HT(メトラー・トレド(株))を使用し、本発明品1〜12、及び比較品1〜5を30℃恒温槽で1時間保存した後、30℃から-13℃まで0.5℃/分の速度で冷却し、経時的に光透過率を測定し、変曲点をもって曇点とした。
また、油脂Aに対しPA添加量を増すことにより、どのリン脂質由来でも曇点が低減でき、低温耐性が向上することが分かった。この特性により、実際に本発明品の油脂組成物を使用した食品を冷蔵庫等にて冷蔵保存した場合でも結晶が生じず、食品の外観が良好に保たれ、また乳化食品の場合には保存性が良好となるという効果が期待できる。また、カテキンに代表される茶抽出物、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、トコフェロールを更に添加、併用することでも低温耐性向上効果が増強されることが分かった。
マグロ油(三畿飼料工業(株)製)をリパーゼ-AY(天野エンザイム(株))で加水分解した後、遠心分離を行い、油相を分取し原料油脂組成物(AV値、123.3)とした。これを蒸留操作することにより、遊離脂肪酸を除去し、脱酸油を調製した。酸価は0.8であった。脱酸油100質量部に対してクエン酸0.2質量部含有する水溶液を調製し、油中に添加した。70℃下で30分間撹拌した後、水洗、脱色、脱臭を行い、油脂A’を製造した。表4に油脂A’の脂肪酸組成、及びグリセリド組成を示す。
油脂A、又はA’に対し、リン脂質Z、茶抽出物(カテキン)、ローズマリー抽出物(RM)、ビタミンCパルミテート(VCP)、トコフェロール(VE)の抗酸化剤を加え、又は加えず、表5に示す本発明品13、14、及び比較品6を調製した。これらの配合組成、加熱時の匂いの官能評価の結果を表5に示す。戻り臭の評価法は、キャップ付きの内径24mm、高さ55mmのガラス瓶(日電理化硝子(株))に、試験品を15g計り取り添加した。各試験品につき4サンプル作成した。60℃の恒温槽内で大気開放下にて遮光し保存した。保存前、保存1、3、及び5時間後に、サンプル瓶を1本づつ取り出し、デシケーター内で20〜30℃まで冷却した。冷却後、過酸化物価、戻り臭を評価し、各試験品の4サンプルの平均値を算出した。
日本油化学協会「基準油脂分析試験法」(2.4−1996)に従って分析した。はじめに溶剤として、クロロホルムと酢酸が2:3の混合液を調製した(A液)。また、飽和ヨウ化カリウム水溶液、滴定液として0.01mol/lチオ硫酸ナトリウム標準液、でんぷん水溶液を使用した。三角フラスコに油脂試料を正しく計り取り、A液で溶解後、飽和ヨウ化カリウム水溶液を滴下し、振り混ぜ反応させた。更に水を加え、1分間振り混ぜた後で放置した。でんぷん溶液を指示薬として加え、チオ硫酸ナトリウム標準液で滴定して測定した。
Claims (6)
- 次の成分(A)100質量部に対して、成分(B)を0.003〜10質量部含有する油脂組成物。
(A)グリセリンモノ脂肪酸エステル0.1〜10質量%、グリセリンジ脂肪酸エステル20〜95質量%、グリセリントリ脂肪酸エステル4.9〜79.9質量%を含有する油脂であって、かつグリセリンジ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中のω3系不飽和脂肪酸含量が30〜90質量%である油脂
(B)ホスファチジン酸及び/又はその塩 - 更に成分(C)抗酸化剤を、成分(A)100質量部に対して0.01〜2質量部含有する請求項1記載の油脂組成物。
- 更に成分(D)植物ステロール類を、成分(A)に対して、(D):(A)=0.0005:1〜5:1の質量比で含有する請求項1又は2記載の油脂組成物。
- ω3系不飽和脂肪酸中のドコサヘキサエン酸含量が50質量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の油脂組成物。
- 成分(A)の油脂が、油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応又は油脂とグリセリンとのエステル交換反応により得られた油脂組成物に、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を添加後、脱臭処理を行うことにより製造したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の油脂組成物。
- 油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応又は油脂とグリセリンとのエステル交換反応により得られた油脂組成物に、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を添加後、脱臭処理を行うことにより得られた成分(A)100質量部に対し、(B)ホスファチジン酸及び/又はその塩0.003〜10質量部を添加する請求項1記載の油脂組成物の製造方法。
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