JP5039291B2 - 油脂組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、ω3系不飽和脂肪酸を主成分としたグリセリンジ脂肪酸エステル含有量の高い油脂組成物に関する。
構成脂肪酸としてω3系不飽和脂肪酸を含有する油脂は、有用な健康機能を有することが知られているが(非特許文献1等)、1分子中に不飽和二重結合を多数有することから、この油脂を製品に応用すると、保存中に戻り臭が発生し、商品価値を著しく低下させてしまう。そこで、戻り臭を改善するために、茶抽出物を用いる技術(特許文献1)、L−アスコルビン酸エステルを使用する方法(特許文献2)、ローズマリーやセージの抽出物を添加する方法(特許文献3)、ホスファチジルエタノールアミンやホスファチジルセリンを配合する技術(特許文献4)等が提案されているが、十分な効果が得られていないのが現状である。
一方、ω3系不飽和脂肪酸を有するグリセリンジ脂肪酸エステルの含量の高い油脂組成物が、開示されている(特許文献5、6等)。
このほか、グリセリンジ脂肪酸エステルとホスファチジン酸とを組合せることで、炒め調理時のスパッタリングを抑制する技術や、乳化を安定化する技術が知られている(特許文献7、8等)。
更に、グリセリンジ脂肪酸エステルは冷蔵庫等の低温保存にて結晶が生じ易いため、特定の結晶抑制剤を含有させるという技術もある(特許文献9)。
特開平2−55785号公報 特開平5−140584号公報 特開2000−144168号公報 特開平2−208390号公報 特開2001−40386号公報 特開2001−262180号公報 特開平2−291228号公報 特開平3−89936号公報 特開2002−176952号公報 日本油化学会誌、48巻、10号、1017−1024ページ、1999年
このように、ω3系不飽和脂肪酸含有油脂には優れた健康機能があるものの、保存時の戻り臭により商品価値が著しく低下することが知られている。また、グリセリンジ脂肪酸エステルは、低温において油脂の結晶が生じ易く、食品に配合した場合に外観や加工特性に不都合が生じる場合がある。
従って本発明の目的は、ω3系不飽和脂肪酸の戻り臭が顕著に改善されて風味良好であり、商品特性及び加工特性に優れたグリセリンジ脂肪酸エステル含有量の高い油脂組成物を提供することにある。
本発明者は、上記課題について検討したところ、ホスファチジン酸添加により、従来の油脂(グリセリントリ脂肪酸エステル)よりも、グリセリンジ脂肪酸エステルの方が、ω3系不飽和脂肪酸の戻り臭が改善されることを見出した。また、グリセリンジ脂肪酸エステル高含有油脂は、肥満防止作用、体重増加抑制作用等の健康機能に優れており、ω3系不飽和脂肪酸を主成分とすることにより、健康機能の効果向上が期待されるが、上記のように結晶が生じる場合があった。この場合、ホスファチジン酸と組合せることで、戻り臭が著しく改善されて風味が良好になると共に、低温耐性が向上し、両者の問題点を同時に解決されることを見出した。更に、成分(A)の油脂に有機カルボン酸及び/又はその塩を添加した後、脱臭処理を行うことにより、更に戻り臭が著しく改善されて風味が良好になると共に、酸化安定性も向上することを見出した。このようにして得られた油脂組成物を各種製品に応用すると、素材に対する油脂の馴染み、食感、外観、作業性、乳化性等の加工特性、及び酸化安定性が顕著に優れることを見出した。
すなわち、本発明は、次の成分(A)及び(B):
(A)グリセリンモノ脂肪酸エステル0.1〜10質量%、グリセリンジ脂肪酸エステル20〜95質量%、グリセリントリ脂肪酸エステル4.9〜79.9質量%を含有する油脂であって、かつグリセリンジ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中のω3系不飽和脂肪酸含量が15〜90質量%である油脂:100質量部
(B)ホスファチジン酸及び/又はその塩:0.003〜10質量部
を含有する油脂組成物を提供するものである。
また、本発明は、成分(A)の油脂が、油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応又は油脂とグリセリンとのエステル交換反応により得られた油脂組成物に、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を添加後、脱臭処理を行うことにより製造したものである上記の油脂組成物を提供するものである。
更に、本発明は油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応又は油脂とグリセリンとのエステル交換反応により得られた油脂組成物に、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を添加後、脱臭処理を行うことにより得られた成分(A)100質量部に対し、(B)ホスファチジン酸及び/又はその塩0.003〜10質量部を添加する上記の油脂組成物の製造方法を提供するものである。
本発明によれば、健康機能に優れるω3系不飽和脂肪酸を特定量含有するグリセリンジ脂肪酸エステル高含有油脂において、ω3系不飽和脂肪酸特有の戻り臭が顕著に改善され、風味良好で、低温耐性が良く外観に優れ、素材への馴染み、良好な食感、作業性、乳化性等に優れた油脂組成物とすることができる。また、様々な食品への応用が可能であり、加工特性に優れた油脂組成物とすることができる。
本発明の油脂組成物で使用される成分(A)の油脂は、グリセリンジ脂肪酸エステル(DG)を20〜95質量%(以下「質量%」は、単に「%」と記載する)含有するが、更に22〜80%、特に25〜50%、殊更30〜40%未満含有するのが、戻り臭改善、生理効果、工業的生産性、加工特性の点で好ましい。
本発明におけるグリセリンジ脂肪酸エステルは、その構成脂肪酸の15〜90%がω3系不飽和脂肪酸であるが、更に30〜80%、特に40〜70%、殊更50〜60%であるのが、戻り臭改善、生理効果、工業的生産性、加工特性の点で好ましい。ω3系不飽和脂肪酸としては、例えば、α−リノレン酸(ALA、C18:3)、エイコサペンタエン酸(EPA、C20:5)、ドコサヘキサエン酸(DHA、C22:6)が挙げられる。ω3系不飽和脂肪酸中のドコサヘキサエン酸含量は50質量%以上であるのが好ましく、更に60〜98%、特に70〜95%であるのが生理効果、戻り臭改善の点で好ましい。
グリセリンジ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸の含有量は30%以下であるのが好ましく、更に0〜20%、特に1〜15%、殊更2〜12%であるのが、戻り臭改善、生理効果、加工特性、工業的生産性の点で好ましい。飽和脂肪酸としては、炭素数14〜24、特に16〜22のものが好ましく、パルミチン酸、ステアリン酸が最も好ましい。炭素数13以下の短・中鎖飽和脂肪酸は、2%以下であるのが好ましく、更に0〜1%、実質的に0%とするのが、風味の点で好ましい。
特に、グリセリンジ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、オレイン酸(C18:1)の含有量は0.1〜50%であるのが好ましく、更に3〜30%、特に5〜20%、殊更8〜15%であるのが戻り臭改善、生理効果、脂肪酸の摂取バランスの点で好ましい。
グリセリンジ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうちリノール酸(C18:2)の含有量は0.01〜20%であるのが好ましく、更に0.1〜10%、特に0.3〜5%、殊更0.5〜2%であるのが外観、脂肪酸の摂取バランスの点で好ましい。
グリセリンジ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸のうち、トランス型不飽和脂肪酸の含有量は0〜10%であるのが好ましく、更に0.1〜5%、特に0.5〜3.5%であるのが生理効果、戻り臭改善、加工特性、工業的生産性の点で好ましい。残余の構成脂肪酸は炭素数14〜24、特に16〜22であるのが好ましい。
本発明に使用される成分(A)の油脂中の、グリセリントリ脂肪酸エステル(TG)の含有量は、生理効果、工業的生産性、加工特性の点で4.9〜79.9%であるが、更に30〜75%、特に50〜70%、殊更60〜65%であるのが好ましい。
グリセリントリ脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、好ましくは70〜100%、更に80〜99%、特に85〜98%、殊更90〜97%が、炭素数10〜24、更に16〜22の不飽和脂肪酸であるのが好ましい。
また、構成脂肪酸のうち、リノール酸の含有量は5質量%未満、更に3質量%未満、特に2質量%未満であることが、外観、脂肪酸の摂取バランスの点で好ましい。
本発明に使用される成分(A)の油脂中の、グリセリンモノ脂肪酸エステル(MG)の含有量は、戻り臭改善、加工特性、工業的生産性等の点で0.1〜10%であるが、好ましくは0.5〜8%、更に1〜7%、特に1.5〜5%であるのが好ましい。グリセリンモノ脂肪酸エステルの構成脂肪酸は、グリセリンジ脂肪酸エステルと同じ構成脂肪酸であることが、工業的生産性の点で好ましい。
また、本発明に使用される成分(A)の油脂に含まれる遊離脂肪酸(塩)(FFA)は、10%以下に低減されるのがよく、好ましくは0.01〜5%、更に0.02〜2%、特に0.05〜1%、殊更0.1〜0.5%とするのが戻り臭改善、加工特性、工業的生産性の点で好ましい。
本発明に使用される成分(A)の油脂の起源としては、植物性、動物性油脂のいずれでもよい。具体的な原料としては、カツオ油、イワシ油、マグロ油等の魚油、アマニ油、シソ油、大豆油、ナタネ油等の植物油等を挙げることができる。またこれらの油脂を分別、混合したもの、水素添加や、エステル交換反応などにより脂肪酸組成を調整したものも原料として利用できる。
本発明に使用される成分(A)の油脂は、上述した油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応、油脂とグリセリンとのエステル交換反応等により得ることができる。反応により生成した過剰のモノアシルグリセリンは分子蒸留法又はクロマトグラフィー法により除去することができる。これらの反応はアルカリ触媒等を用いた化学反応でも行うことができるが、1,3−位選択性及び/又は位置選択性のないリパーゼ等を用いて酵素的に温和な条件で反応を行うのが風味等の点で優れており好ましい。
本発明に使用される成分(A)の油脂は、前記エステル化反応又はエステル交換反応により得られた油脂(以下、油脂(A1)という)に有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を添加し、混合、撹拌等により接触させる処理を行い、水洗、脱色、脱臭等の精製操作を行うことが、戻り臭を改善し、風味を良好にすると共に、酸化安定性を向上させる点から好ましい。有機カルボン酸及び/又はその塩としては、具体的にはクエン酸、コハク酸、マレイン酸、シュウ酸、アコニット酸、イタコン酸、シトラコン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸、及び/又はその塩等が挙げられるが、中でもクエン酸、酒石酸、リンゴ酸及び/又はその塩が好ましい。また、これらの誘導体としては、クエン酸モノ・ジグリセライド、コハク酸モノ・ジグリセライド、乳酸モノ・ジグリセライド、及び/又はその塩等が挙げられる。
有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩の含有量は、油脂(A1)100質量部に対して0.001〜10質量部、更に0.01〜5質量部、特に0.1〜1質量部、殊更0.05〜0.5質量部とすることが、戻り臭を改善し、風味を良好にすると共に、酸化安定性を向上させる点から好ましい。油脂(A1)と有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩との接触時間は、好ましくは10〜120分、更に20〜60分とすることが好ましい。接触温度は、好ましくは50〜80℃、更に60〜70℃とすることが好ましい。
油脂(A1)と有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩との接触方法は、単に油脂(A1)に有機カルボン酸及び/又はそれらの塩を添加し、混合、撹拌することでも良いが、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩の水溶液を、前記添加量の範囲となるように添加することが、撹拌効率、作業の容易性等の点から好ましい。この場合の、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩の水溶液中の濃度は、0.1〜40質量%、更に1〜20質量%、特に5〜12質量%であることが、撹拌効率、作業の容易性等の点から好ましい。
有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩の水溶液と混合された油脂は、その後連続して水洗することが好ましい。なお、脱水操作や吸着操作は行わなくても良い。水洗は、油脂を水とよく混合し、その後水を分離することにより行うのが好ましい。なお、この水洗に用いる水には0.01〜10質量%程度のエタノール、イソプロパノール等の低級アルコールを含んでいてもよい。ここで1回の水洗に用いる水の量は、油脂に対し5〜200質量%、更に10〜50質量%が好ましい。水洗の温度は25〜95℃が好ましい。水洗は1〜5回行われる。
有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を水溶液として接触させる場合には、ラインミキサーを用い、連続して0.1〜10分間、好ましくは0.2〜5分間混合しても良い。ここでラインミキサーとは、管路中に設けた邪魔板、機械的攪拌機によって流体を流しながら混合する装置をいう。また、混合時間とは、ラインミキサー中の油脂の平均滞留時間をいう。ラインミキサーを使用することにより、ミキサー中を通過させることにより連続して混合され、油脂をタンクに滞留させる必要がなく、工業的に有利である。なお、混合は機械的撹拌混合により行うことが好ましく、混合機の撹拌翼の先端周速度を1〜20m/s、特に2〜10m/sとすることが、撹拌効率、作業の容易性等の点から好ましい。
前記有機カルボン酸処理により、脱臭処理前における油脂(A1)中の遷移金属量を5ppm以下、更に2ppm以下、特に1ppm以下とすることが、戻り臭を改善し、風味を良好にすると共に、酸化安定性を向上させる点から好ましい。
なお、油脂(A1)中の遷移金属量を5ppm以下とする観点からすれば、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を用いる他に、例えば吸着法、クロマトグラフィー、キレート剤処理等を採用することもできる。吸着法としては、活性白土、酸性白土、シリカゲル、ゼオライト、活性炭、イオン交換樹脂等を用いた吸着法が挙げられる。具体的には、例えば、油脂を吸着剤と混合後、吸着剤と油脂をろ別する、また吸着剤を充填した吸着塔に油脂を流通する等すればよい。クロマトグラフィーとしては、溶離液として有機溶剤、固定層としてゼオライトを用いた方法が挙げられる。具体的には、例えば、擬似移動層型操作をすることにより行われる。
油脂(A1)と有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩と接触させた油脂は、脱臭処理するのが好ましい。脱臭処理としては水蒸気蒸留が好ましい。水蒸気蒸留は、ジグリセリドの純度低下抑制、風味改善の点から、180℃以下の条件で行うのが好ましい。用いる水蒸気量は、油脂に対して0.5〜20質量%、特に1〜10質量%が好ましい。
脱臭を行う方法としては、トレー脱臭、薄膜脱臭等が挙げられるが、戻り臭を改善し、風味を良好にすると共に、酸化安定性を向上させる点、トランス型不飽和脂肪酸を低減させる点から薄膜脱臭が好ましい。薄膜脱臭とは、前記油脂を薄膜状態で水蒸気と接触させる方法である。当該接触手段としては、構造体充填物の充填された蒸留塔中を流下させ、水蒸気をこの油脂に対して向流接触させるように流通させることが、戻り臭を改善し、風味を良好にすると共に、酸化安定性を向上させる点、トランス型不飽和脂肪酸を低減させる点から好ましい。油脂は、構造体充填物の充填された蒸留塔を流下する際、充填物の表面を流下するため薄膜を形成する。
油脂と水蒸気を接触させる条件は、経済性、脱臭効率、品質の点から以下の条件が好ましい。油脂温度は140〜250℃、更に150〜220℃、特に160〜190℃が好ましく、接触時間は1〜15分、更に1〜10分、特に2〜10分が好ましく、圧力は0.02〜2kPa、更に0.05〜1kPa、特に0.1〜0.8kPaが好ましく、水蒸気の量は油脂に対して0.1〜10質量%、更に0.2〜5質量%、特に0.2〜2質量%であることが好ましい。
油脂の流量は、充填物の単位断面積(m2)あたり1〜20ton/h、更に2〜10ton/hであることが脱臭操作の安定性、脱臭効率、生産性の点から好ましい。
前記構造体充填物が、比表面積200〜700m2/m3の規則充填物であることが好ましい。
本発明の油脂組成物には、成分(B)のホスファチジン酸及び/又はその塩を、戻り臭改善、低温耐性、加工特性、風味の点で成分(A)100質量部に対して0.003〜10質量部含有することが必要で、好ましくは0.005〜5質量部、より好ましくは0.01〜3質量部、更に0.015〜1質量部、特に0.018〜0.1質量部、殊更0.02〜0.05質量部含有するのが好ましい。
本発明に使用される成分(B)のホスファチジン酸及び/又はその塩は、他のリン脂質と併用されても良いが、戻り臭改善、低温耐性、風味、加工特性の点で、リン脂質中、ホスファチジン酸及び/又はその塩が30%以上、更に60以上、特に80%以上含有されるのが好ましい。また、上限は100%であるが、工業的生産性の点からは95%以下、更に93%以下、特に90%以下であることが好ましい。リン脂質中の成分(B)のホスファチジン酸及び/又はその塩の含量を30%以上とすることにより、戻り臭改善だけでなく、爽快感のある良好な風味が付与される。
成分(B)のホスファチジン酸及び/又はその塩以外に、本発明に使用されるリン脂質としては、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)、ホスファチジルイノシトール(PI)等が挙げられ、更に、大豆油、ナタネ油、コーン油等の食品素材を含有しても良い。リン脂質中のリゾ体及びPIの含有量は、それぞれ10%以下が好ましい。
ホスファチジン酸及び/又はその塩を含有する素材としては、ベネコートBMI−40L(花王(株))、サンレシチンW−1(太陽化学(株))等がある。
本発明に使用される成分(B)は、天然大豆レシチン、卵黄レシチン等を酵素処理し、改質反応を行ったものである。改質後、エタノール、ヘキサン等の溶剤を使用して、洗浄、抽出操作を行い、精製することにより製造する。
また、本発明の油脂組成物には、成分(C)の抗酸化剤を含有するのが好ましい。成分(B)の存在により成分(C)の油溶性が高まるだけでなく、成分(B)との相乗効果を発揮し、顕著な戻り臭改善効果、低温耐性を呈する。
抗酸化剤の含有量は、戻り臭改善、着色防止、低温耐性等の点で成分(A)100質量部に対して、0.01〜2質量部であるのが好ましく、更に0.012〜1質量部、特に0.013〜0.1質量部、殊更0.015〜0.03質量部であるのが好ましい。
日本油化学協会「基準油脂分析試験法」記載のCDM試験法(2.5.1.2−1996)において、誘導時間が0.5時間以上となるように抗酸化剤を添加するのが好ましく、更に1〜20時間、特に2〜10時間、殊更3〜4時間とするのが好ましい。ここでいう誘導時間とは、該試験法の装置で、油脂サンプルを120℃で加熱しながら清浄空気を送り込み、酸化により生成した揮発性物質を水中に補集し、水の導電率が急激に変化する屈曲点までの時間(hr)のことである。
抗酸化剤としては、通常、食品に使用されるものであれば何れでもよい。例えば、カテキン、トコフェロール、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)、ターシャルブチルヒドロキノン(TBHQ)、アスコルビン酸又はその誘導体、ローズマリー抽出物等の天然抗酸化剤が挙げられるが、カテキン、トコフェロール、アスコルビン酸又はその誘導体、ローズマリー抽出物が好ましく、これらを併用するのが更に好ましい。
トコフェロールとしては、α、β、γ、δ−トコフェロール又はこれらの混合物を使用することができる。特に、酸化安定性の観点から、δ−トコフェロールが好ましい。トコフェロールは、ビタミンEの市販品として配合することが好ましいが、例えば、イーミックスD、イーミックス80(エーザイ(株))、MDE−6000((株)八代)、Eオイル−400(理研ビタミン(株))、ET−840R((株)ホーネンコーポレーション)等が挙げられる。
本発明において、ビタミンEの含有量は、成分(A)100質量部に対して、トコフェロールとして0.0001〜1質量部が好ましく、更に0.0005〜0.01質量部、特に0.0008〜0.005質量部、殊更0.001〜0.002質量部が好ましい。
アスコルビン酸又はその誘導体としては、高級脂肪酸エステル、例えばアシル基の炭素数が12〜22のものがより好ましく、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステル、L−アスコルビン酸ステアリン酸エステルが特に好ましく、L−アスコルビン酸パルミチン酸エステルが最も好ましい。
本発明において、アスコルビン酸又はその誘導体の含有量は、成分(A)100質量部に対して、アスコルビン酸として0.0001〜1質量部が好ましく、更に0.001〜0.5質量部、特に0.003〜0.1質量部、殊更0.005〜0.01質量部が好ましい。
カテキンとしては、茶から水又はエタノール等の溶剤で抽出したものが好ましく、更に、脱カフェイン等の精製を行ったものがより好ましい。
本発明において、カテキンの含有量は、成分(A)100質量部に対して、カテキンとして0.0001〜1質量部が好ましく、更に0.0005〜0.1質量部、特に0.001〜0.05質量部、殊更0.002〜0.01質量部が好ましい。
ローズマリー抽出物としては、粉末原料を水蒸気蒸留により採油後の残留物、あるいはアセトン、エタノール、メタノール、エチルエーテル、ヘキサン等により抽出したものが好ましい。本発明において、ローズマリー抽出物の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.0001〜5質量部が好ましく、更に0.001〜1質量部、特に0.01〜0.5質量部、殊更0.02〜0.1質量部が好ましい。
本発明で用いる油脂組成物において、更に成分(D)の植物ステロール類を含有するのが好ましい。植物ステロール類はコレステロール低下効果を有する成分であり、本発明において、成分(D)は、成分(A)に対して、(D):(A)=0.0005:1〜5:1の質量比で含有するのが好ましく、更に0.003:1〜1:1、特に0.012:1〜0.2:1、殊更0.02:1〜0.047:1の質量比で含有するのが、生理効果、外観、加工特性等の点で望ましい。ここで植物ステロール類としては、例えばα−シトステロール、β−シトステロール、スチグマステロール、カンペステロール、α−シトスタノール、β−シトスタノール、スチグマスタノール、カンペスタノール、シクロアルテノール等のフリー体、及びこれらの脂肪酸エステル、フェルラ酸エステル、桂皮酸エステル等のエステル体が挙げられる。本発明においては、植物ステロール類として、植物ステロール及び/又は植物ステロール脂肪酸エステルを用いるのが好ましい。
本発明の油脂組成物には、更に有機酸及び/又はその塩を含有させるのが好ましい。該有機酸の塩としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属塩が挙げられ、ナトリウム塩、カルシウム塩が好ましい。有機酸及び/又はその塩の含有量は、成分(A)100質量部に対して、0.0001〜1質量部が好ましいが、0.0002〜0.5質量部、更に0.0003〜0.1質量部、特に0.0004〜0.01質量部であるのが戻り臭改善、風味の点で好ましい。該有機酸及び/又はその塩の炭素数は2〜8であることが必要であるが、好ましくは2〜6、更に好ましくは4〜6である。これらのうち炭素数2〜8のヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、その塩、それらの誘導体が好ましい。これらのヒドロキシカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸としては、具体的にはクエン酸、コハク酸、マレイン酸、シュウ酸、アコニット酸、イタコン酸、シトラコン酸、酒石酸、フマル酸、リンゴ酸が好ましく、更に好ましくは、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸である。また、これらの誘導体としては、クエン酸モノ・ジグリセライド、コハク酸モノ・ジグリセライド、乳酸モノ・ジグリセライド等が挙げられる。
上記有機酸として、有機酸を含有するエキス、生薬を用いることもできる。エキス、生薬としては、レモン、ゆず、梅等の実から抽出して製造された粉末、濃縮物等の形態で市販されている製品を用いることができる。エキス、生薬を用いる場合は、そのエキス、生薬に含有される有機酸が上記範囲となるよう添加すればよい。
本発明において、油脂組成物中の有機酸の含有量は、HPLC法、オルトニトロフェニルヒドラジンを用いた比色法等により測定することができる。例えば、クエン酸の比色法による測定は、次法に従って行われる。
60℃に加熱した油脂20gを100mLの分液ロートに入れ、60℃の温水5mLを加えて、2分間激しく振とうする。次いで、静置して分層させ、下層を試料溶液とする。この試料溶液2mL、ONPH溶液(*1)1mL及び、ETC溶液(*2)1mLを10mLメスフラスコに入れ、密栓して40℃で30分間加熱する。次いで、1.5mol/L水酸化ナトリウム溶液を1mL加え、60℃で15分間加熱する。室温に冷却後、540nmの吸光度を測定する。濃度既知のクエン酸水溶液を用いて作成した検量線から、次式によりクエン酸含量を求める。
油脂中のクエン酸含有量=検量線から求めたクエン酸量÷4
*1 ONPH溶液:オルトニトロフェニルヒドラジン塩酸塩(ONPH)53.6mgを0.2mol/Lの塩酸10mLに溶解させた溶液。
*2 ETC溶液:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド塩酸塩(ETC)287.6mgを6%ピリジン水溶液10mLに溶解させた溶液。
本発明の油脂組成物は、前記組成の油脂に、ホスファチジン酸及び/又はその塩、更に抗酸化剤、必要により植物ステロール類、シリコーン、有機酸(塩)等を添加し、適宜加熱、撹拌することにより得ることができる。また、アスコルビン酸誘導体、トコフェロール等の抗酸化剤は予めエタノール等の溶剤に溶解してから添加してもよい。
かくして得られた油脂組成物は、風味、食感、外観、作業性、乳化性、素材への馴染み等の点で良好であるため、各種食品に応用することができる。
食品としては、該油脂組成物を食品の一部として含む油脂加工食品に用いることができる。かかる油脂加工食品としては、例えば特定の機能を発揮して健康増進を図る健康食品、機能性食品、特定保健用食品等が挙げられる。具体的な製品としては、パン、ケーキ、ビスケット、パイ、ピザクラスト、ベーカリーミックス等のベーカリー食品類、スープ、ソース、ドレッシング、マヨネーズ、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、ホイップクリーム等の水中油型乳化物、マーガリン、スプレッド、バタークリーム等の油中水型乳化物、ポテトチップス等のスナック菓子、チョコレート、キャラメル、キャンデー、デザート等の菓子、ハム、ソーセージ、ハンバーグ等の肉加工食品、牛乳、チーズ、ヨーグルト等の乳製品、ドウ、エンローバー油脂、フィリング油脂、麺、冷凍食品、レトルト食品、飲料、ルー等が挙げられる。上記油脂組成物の他に、油脂加工食品の種類に応じて一般に用いられる食品原料を添加し製造することができる。本発明の油脂組成物の食品への配合量は、食品の種類によっても異なるが、一般に0.1〜100%、特に1〜80%が好ましい。
なお、製剤調製の関係から、食品原料由来の油脂が含まれている場合は、食品原料由来の油脂と本発明の油脂組成物との質量比は、95:5〜1:99が好ましく、95:5〜5:95がより好ましく、更に85:15〜5:95が、特に40:60〜5:95が好ましい。
本発明の油脂組成物は、水中油型乳化物に用いることができる。油相と水相の質量比は、油相/水相=1/99〜90/10、好ましくは10/90〜80/20、特に30/70〜75/25が好ましい。乳化剤を0.01〜5%、特に0.05〜3%含むことが好ましい。乳化剤としては、卵蛋白質、大豆蛋白質、乳蛋白質、これらの蛋白質より分離される蛋白質、これら蛋白質の(部分)分解物等の各種蛋白質類、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンあるいはその酵素分解物が挙げられる。安定化剤は0〜5%、特に0.01〜2%含有することが好ましい。安定化剤としては、キサンタンガム、ジェランガム、グアーガム、カラギーナン、ペクチン、トラガントガム、コンニャクマンナン、等の増粘多糖類や澱粉等が挙げられる。また、食塩、糖、食酢、果汁、調味料等の呈味料、スパイス、フレーバー等の香料、着色料、保存料、抗酸化剤等を使用することができる。これらの原料を用いて、常法によりマヨネーズ、ドレッシング、コーヒーホワイトナー、アイスクリーム、ホイップクリーム、飲料等の水中油型油脂含有食品を調製することができる。
本発明の油脂組成物は、油中水型乳化物に用いることができる。水相と油相の質量比は、水相/油相=85/15〜1/99、好ましくは80/20〜10/90、特に70/30〜35/65が好ましい。乳化剤を0.01〜5%、特に0.05〜3%含むことが好ましい。乳化剤としては、卵蛋白質、大豆蛋白質、乳蛋白質、これらの蛋白質より分離される蛋白質、これら蛋白質の(部分)分解物等の各種蛋白質類、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸モノエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、グリセリン有機酸脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、レシチンあるいはその酵素分解物が挙げられる。また、食塩、糖、食酢、果汁、調味料等の呈味料、スパイス、フレーバー等の香料、増粘多糖類や澱粉等の安定化剤、着色料、保存料、抗酸化剤等を使用することができる。これらの原料を用いて、常法によりマーガリン、スプレッド、バタークリーム等の油中水型油脂含有食品を調製することができる。
本発明の油脂組成物は、DHA等のω3系不飽和脂肪酸を含有するグリセリンジ脂肪酸エステルを主成分とすることにより、抗肥満作用、抗血小板凝集抑制作用、脳機能改善等の優れた生理活性を有する。かかる優れた特性を有するため、本発明の油脂組成物は、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、粉末剤、液剤、ゲル剤等の形態で、医薬品に利用することができる。医薬品としては、上記油脂組成物の他、形態に応じて一般に用いられる賦形剤、崩壊剤、結合剤、潤沢剤、界面活性剤、アルコール類、水、水溶性高分子、甘味料、矯味剤、酸味料等を添加し製造することができる。本発明の油脂組成物の医薬品への配合量は、医薬品の用途及び形態によっても異なるが、一般に0.1〜80%、更に0.2〜50%、特に0.5〜30%であるのが好ましい。また、投与量は、油脂組成物として、1日当たり0.2〜50gを、1〜数回に分けて投与することが好ましい。投与期間は、1ヶ月以上、2ヶ月以上、3ヶ月〜12ヶ月が好ましい。
本発明の油脂組成物は、飼料に利用することができる。飼料としては、例えば牛、豚、鶏、羊、馬、山羊等に用いる家畜用飼料、ウサギ、ラット、マウス等に用いる小動物用飼料、ウナギ、タイ、ハマチ、エビ等に用いる魚介類用飼料、犬、猫、小鳥、リス等に用いるペットフード等が挙げられる。本発明の油脂組成物の飼料への配合量は、飼料の用途等によっても異なるが、一般に1〜30%、特に1〜20%が好ましい。本発明の油脂組成物は、飼料中の全部又は一部の油脂を置き換えることにより使用できる。
飼料には、上記油脂組成物の他に、肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類、糖類、野菜、ビタミン類、ミネラル類等一般に用いられる飼料原料とともに混合して製造される。
肉類としては、牛、豚、羊(マトン又はラム)、ウサギ、カンガルー等の畜肉、獣肉及びその副生物、加工品(ミートボール、ミートボーンミール、チキンミール等の上記原料のレンダリング物)、マグロ、カツオ、アジ、イワシ、ホタテ、サザエ、魚粉(フィッシュミール)等の魚介類等が例示される。蛋白質としては、カゼイン、ホエー等の乳蛋白質や卵蛋白質等の動物蛋白質、大豆蛋白質等の植物蛋白質が例示される。穀物類としては、小麦、大麦、ライ麦、マイロ、トウモロコシ等が挙げられる。ぬか類としては、米ぬか、ふすま等が挙げられる。粕類としては大豆粕等が例示される。飼料中の肉類、蛋白質、穀物類、ぬか類、粕類の合計量は5〜93.9%であるのが好ましい。
糖類としては、ぶどう糖、オリゴ糖、砂糖、糖蜜、澱粉、液糖等が挙げられ、飼料中5〜80%含有するのが好ましい。野菜類としては、野菜エキス等が例示され、飼料中1〜30%含有するのが好ましい。ビタミン類としては、A、B1、B2、D、E、ナイアシン、パントテン酸、カロチン等が挙げられ、飼料中0.05〜10%含有するのが好ましい。ミネラル類としては、カルシウム、リン、ナトリウム、カリウム、鉄、マグネシウム、亜鉛等が挙げられ、飼料中0.05〜10%含有するのが好ましい。この他、一般的に飼料に使用されるゲル化剤、保型剤、pH調整剤、調味料、防腐剤、栄養補強剤等も必要に応じて含有することができる。
次の油脂を製造した。
〔油脂の製造1〕
マグロ油(三畿飼料工業(株))をリパーゼ-AY(天野エンザイム(株))で加水分解した後、遠心分離を行い、油相を分取し原料油脂組成物(AV値、123.3)とした。これを蒸留操作することにより、遊離脂肪酸を除去し、脱色、脱臭工程を経て、油脂Aを調製した。油脂Aの酸価は0.2であった。表1に油脂Aの脂肪酸組成、及びグリセリド組成を示す。なお、酸価は、基準油脂分析法(2.3.1-1996)に基づき測定した。脂肪酸組成はガスクロマトグラフィーにより、グリセリド組成は液クロマトグラフィーにより分析を行った。なお、表中、FAは遊離脂肪酸、MGはグリセリンモノ脂肪酸エステル、DGはグリセリンジ脂肪酸エステル、TGはグリセリントリ脂肪酸エステルを表す。
〔リン脂質の調製〕
大豆レシチンを酵素処理することにより改質反応を行い、ホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、ホスファチジルエタノールアミン(PE)を含むリン脂質X〜Zを調製した。リン脂質Xは、PAを40%、コーン油を60%含有するベネコートBMI 40L(花王(株))100質量部に対し、PCとしてL-αホスファチジルコリン、大豆由来試薬(和光純薬(株))を73質量部、PEとしてL-αホスファチジルエタノールアミンジステアロイル試薬(和光純薬(株))を60質量部、コーン油を100質量部配合したものを使用した。リン脂質Yは、ベネコートBMI 40L(花王(株))100質量部に対し、PCとしてL−αホスファチジルコリン、大豆由来試薬(和光純薬(株))を5300質量部、PEとしてL−αホスファチジルエタノールアミンジステアロイル試薬(和光純薬(株))を1100質量部、コーン油を3350質量部配合したものを使用した。リン脂質ZはPAを40%、コーン油を60%含有するベネコートBMI 40L(花王(株))を使用した。
〔分析方法〕
(1)油脂のグリセリド組成
サンプル油脂0.1gにテトラヒドロフラン(THF)2mLを加え溶解する。溶解後、四フッ化エチレン樹脂膜(PTFE膜、アドバンテック東洋(株))で濾過処理し、液体クロマトグラフィー(HPLC)に供して、グリセリド組成を測定した。
HPLC条件
装置;日立製作所製
カラム;G−2500、G−2000(東ソー(株))
カラム温度;30℃
検出器;L−3350 RI Monitor ((株)日立製作所)
流量;THF、0.4mL/分
(2)グリセリドの脂肪酸組成
日本油化学協会「基準油脂分析試験法」(2.4.2.2.−1996)に従って分析した。
(3)リン脂質の組成
代表的なリン脂質であるホスファチジン酸(PA)、ホスファチジルコリン(PC)、及びホスファチジルエタノールアミン(PE)の含有量は、油化学、35(12)、P1018〜1024、(1986)に記載方法で行った。分子量はPA、PC、PEそれぞれ704、790、748として求めた。
〔戻り臭試験〕
油脂Aに対し、リン脂質X〜Z、茶抽出物(カテキン)、ローズマリー抽出物(RM)、ビタミンCパルミテート(VCP)、トコフェロール(VE)の抗酸化剤を加え、又は加えず、表3に示す本発明品1〜12、及び比較品1〜5を調製した。これらの配合組成、加熱時の匂いの官能評価の結果を表3に示す。戻り臭の評価法は、ステンレスシャーレにサンプルを3g計り取り、塗布した後にシャーレーをホットプレートで加熱し、匂い立ちを評価した。温度は100℃で行い、それぞれ60秒後、240秒後のサンプルを評価した。
〔戻り臭の評価基準〕
戻り臭
○:匂いがしない
△:わずかに魚臭がする
×:魚臭がする
〔低温耐性試験〕
表3に示した本発明品1〜12、及び比較品1〜5を調製し、曇点を測定することにより低温耐性を評価した。評価法は、曇点測定装置であるFP90/81HT(メトラー・トレド(株))を使用し、本発明品1〜12、及び比較品1〜5を30℃恒温槽で1時間保存した後、30℃から-13℃まで0.5℃/分の速度で冷却し、経時的に光透過率を測定し、変曲点をもって曇点とした。
表3より、油脂Aに対しPA添加量を増すことにより、100℃時における魚臭の戻り臭が低減できることが分かった。また、カテキンに代表される茶抽出物、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、トコフェロールを更に添加、併用することで魚臭の戻り臭の低減効果が増強されることが分かった。
また、油脂Aに対しPA添加量を増すことにより、どのリン脂質由来でも曇点が低減でき、低温耐性が向上することが分かった。この特性により、実際に本発明品の油脂組成物を使用した食品を冷蔵庫等にて冷蔵保存した場合でも結晶が生じず、食品の外観が良好に保たれ、また乳化食品の場合には保存性が良好となるという効果が期待できる。また、カテキンに代表される茶抽出物、ローズマリー抽出物、ビタミンCパルミテート、トコフェロールを更に添加、併用することでも低温耐性向上効果が増強されることが分かった。
〔油脂の製造2〕
マグロ油(三畿飼料工業(株)製)をリパーゼ-AY(天野エンザイム(株))で加水分解した後、遠心分離を行い、油相を分取し原料油脂組成物(AV値、123.3)とした。これを蒸留操作することにより、遊離脂肪酸を除去し、脱酸油を調製した。酸価は0.8であった。脱酸油100質量部に対してクエン酸0.2質量部含有する水溶液を調製し、油中に添加した。70℃下で30分間撹拌した後、水洗、脱色、脱臭を行い、油脂A’を製造した。表4に油脂A’の脂肪酸組成、及びグリセリド組成を示す。
〔戻り臭及び酸化安定性試験〕
油脂A、又はA’に対し、リン脂質Z、茶抽出物(カテキン)、ローズマリー抽出物(RM)、ビタミンCパルミテート(VCP)、トコフェロール(VE)の抗酸化剤を加え、又は加えず、表5に示す本発明品13、14、及び比較品6を調製した。これらの配合組成、加熱時の匂いの官能評価の結果を表5に示す。戻り臭の評価法は、キャップ付きの内径24mm、高さ55mmのガラス瓶(日電理化硝子(株))に、試験品を15g計り取り添加した。各試験品につき4サンプル作成した。60℃の恒温槽内で大気開放下にて遮光し保存した。保存前、保存1、3、及び5時間後に、サンプル瓶を1本づつ取り出し、デシケーター内で20〜30℃まで冷却した。冷却後、過酸化物価、戻り臭を評価し、各試験品の4サンプルの平均値を算出した。
〔過酸化物価の測定法〕
日本油化学協会「基準油脂分析試験法」(2.4−1996)に従って分析した。はじめに溶剤として、クロロホルムと酢酸が2:3の混合液を調製した(A液)。また、飽和ヨウ化カリウム水溶液、滴定液として0.01mol/lチオ硫酸ナトリウム標準液、でんぷん水溶液を使用した。三角フラスコに油脂試料を正しく計り取り、A液で溶解後、飽和ヨウ化カリウム水溶液を滴下し、振り混ぜ反応させた。更に水を加え、1分間振り混ぜた後で放置した。でんぷん溶液を指示薬として加え、チオ硫酸ナトリウム標準液で滴定して測定した。
表5より、比較品である酸処理なし、PA無配合品(比較品6)は、保存により過酸化物価が上昇し易く、戻り臭が強くなる傾向にあった。また、PA配合のみを行ったもの(本発明品13)は、過酸化物価が上昇し難く、戻り臭が低減した。更に、酸処理を行った油脂を用い、PA配合も行ったもの(本発明品14)は、過酸化物価の上昇はより抑制され、戻り臭もより低減した。

Claims (6)

  1. 次の成分(A)100質量部に対して、成分(B)を0.003〜10質量部含有する油脂組成物
    (A)グリセリンモノ脂肪酸エステル0.1〜10質量%、グリセリンジ脂肪酸エステル20〜95質量%、グリセリントリ脂肪酸エステル4.9〜79.9質量%を含有する油脂であって、かつグリセリンジ脂肪酸エステルを構成する脂肪酸中のω3系不飽和脂肪酸含量が30〜90質量%である油
    (B)ホスファチジン酸及び/又はその
  2. 更に成分(C)抗酸化剤を、成分(A)100質量部に対して0.01〜2質量部含有する請求項1記載の油脂組成物。
  3. 更に成分(D)植物ステロール類を、成分(A)に対して、(D):(A)=0.0005:1〜5:1の質量比で含有する請求項1又は2記載の油脂組成物。
  4. ω3系不飽和脂肪酸中のドコサヘキサエン酸含量が50質量%以上である請求項1〜3のいずれか1項に記載の油脂組成物。
  5. 成分(A)の油脂が、油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応又は油脂とグリセリンとのエステル交換反応により得られた油脂組成物に、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を添加後、脱臭処理を行うことにより製造したものである請求項1〜4のいずれか1項に記載の油脂組成物。
  6. 油脂由来の脂肪酸とグリセリンとのエステル化反応又は油脂とグリセリンとのエステル交換反応により得られた油脂組成物に、有機カルボン酸、その誘導体及び/又はそれらの塩を添加後、脱臭処理を行うことにより得られた成分(A)100質量部に対し、(B)ホスファチジン酸及び/又はその塩0.003〜10質量部を添加する請求項1記載の油脂組成物の製造方法。
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