JP5036091B1

JP5036091B1 - 油中水型乳化油脂組成物

Info

Publication number: JP5036091B1
Application number: JP2012513801A
Authority: JP
Inventors: 隆司山口; 美奈子平岡
Original assignee: 株式会社Ｊ−オイルミルズ
Priority date: 2011-02-18
Filing date: 2011-12-09
Publication date: 2012-09-26
Anticipated expiration: 2031-12-09
Also published as: JPWO2012111225A1; WO2012111225A1; TW201234974A

Abstract

【課題】本発明は、ビタミンＥを添加しているにもかかわらず、保存安定性や風味に優れた、栄養機能を有する油中水型乳化油脂組成物を提供することにある。
【解決手段】油中水型乳化油脂組成物は、水相中にビタミンＥを含有することを特徴とする。前記ビタミンＥをグリセリン脂肪酸エステルとともに乳化させて含有する。外相油脂の構成脂肪酸における「リノール酸含有率（重量％）＋リノレン酸含有率（重量％）×２」の値が２０以上であることが好ましい。
【選択図】なし

Description

本発明は、ビタミンＥを含む油中水型乳化油脂組成物に関し、より詳細にはマーガリンやファットスプレッドに好適な前記油脂組成物に関する。

消費者の健康に対する関心はますます高くなっており、重要な栄養素であるビタミン類、ミネラル類などについては栄養機能性食品などの表示制度が整備されている。また、飽和脂肪酸やトランス脂肪酸の含量を低減化することが強く望まれている。そのため、家庭用のマーガリン及びファットスプレッドにおいては、リノール酸、リノレン酸などの多価不飽和脂肪酸を豊富に含む植物性油脂を配合することが多い。更に、これらの多価不飽和脂肪酸は体内では合成されないため、食物から摂取しなければならない。また、これらの多価不飽和脂肪酸は、細胞を構成する生体膜の構成材料として不可欠であると共に血中コレステロール量を正常化させるという大切な働きもしている。

一方、多価不飽和脂肪酸は、体内で酸化して過酸化脂質に変化する危険性を有している。過酸化脂質が生じると、赤血球や細胞の寿命を縮め、脳や血管、臓器の中に沈着してその機能を衰えさせ老化させてしまう虞がある。

このような多価不飽和脂肪酸の酸化を防ぐ機能を発揮する物質がビタミンＥである。ビタミンＥとは、α−、β−、γ−、δ−トコフェロールなどであり、その中でもα−トコフェロールの生理活性が最も大きい。しかし、ビタミンＥは油溶性のため、通常、摂取する食事から吸収され難い。

そこで、ビタミンＥを多く含み吸収性の良い油脂食品の開発が要望されている。しかし、マーガリン、ファットスプレッドなどの油中水型エマルジョンの外相油中にビタミンＥを多く含む場合、マーガリンなどの油脂の酸化安定性が低下する。このことは、外相油脂中の多価不飽和脂肪酸が多い（例えば、脂肪酸組成における「リノール酸含有率（重量％）＋リノレン酸含有率（重量％）×２」の値が２０以上）場合により顕著となる。そのため、油脂の保存中に過酸化物価（以下、ＰＯＶという）が上昇し、充分な賞味期間を確保できないという問題があった。

この問題点を解決するために、例えば、油相にトコフェロールを、水相にアスコルビン酸、クエン酸などを配合する方法が開示されている（特許文献１）。しかし、この方法でも、油脂の酸化を充分に抑えることができず、さらに、アスコルビン酸やクエン酸の酸化により風味が劣化するという欠点は依然として残っている。

このように、ビタミンＥを配合しても酸化安定性や風味が低下しないマーガリン、ファットスプレッドなどの油脂組成物の開発が望まれている。

特許第３９４１０７３号公報

本発明は、このような事情のもとで、ビタミンＥを添加しても油脂の酸化安定性を劣化させることなく、風味を良好に保つことのできる油脂組成物を提供することにある。

本発明者らは、前記課題を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ビタミンＥを水相に含有させたのち、油相と混合することで、保存中の油脂の酸化安定性を低下させず、かつ、風味が良好な乳化油脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。

すなわち、本発明は、油中水型乳化油脂組成物において、水相中にビタミンＥを含有することを特徴とする、前記油中水型乳化油脂組成物である。

また、前記ビタミンＥを乳化させて含有することが好ましい。

さらに、前記ビタミンＥをグリセリン脂肪酸エステルとともに乳化させて含有することがより好ましい。

また、本発明は、ビタミンＥを含有する水相を油脂に添加することを含む、油中水型乳化油脂組成物の製造方法である。

また、本発明は、油中水型乳化油脂組成物の過酸化物価上昇抑制方法において、水相中にビタミンＥを含有させることを特徴とする、前記方法である。

本発明は、油中水型乳化油脂組成物であって、水相中にビタミンＥを含有することを特徴としている。従来、ビタミンＥを添加することで保存安定性が悪く、風味の劣化を伴っていた油脂組成物と異なり、ビタミンＥを添加しているにもかかわらず、保存安定性や風味に優れた、栄養機能を有する乳化油脂組成物である。

本発明に用いられる原料油脂としては、菜種油、大豆油、コーン油、ひまわり油、紅花油、オリーブ油、パーム油、パーム核油、ヤシ油などの植物油、牛脂、ラード、魚油などの動物油、並びにこれらから得られる硬化油、分別油、エステル交換油など、食用として使用し得る油脂の中から任意なものを挙げることができる。通常、常温で液体の液状油と常温で固体の固形脂との混合物が使用される。

本発明の油脂組成物における外相の油相には、必要に応じて乳化剤としてレシチン、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、蔗糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリソルベートなど、本発明の機能を損ねない範囲で使用することができる。

本発明の油相の脂肪酸組成には、多価不飽和脂肪酸を含むことが好ましい。本発明によれば、多価不飽和脂肪酸の栄養機能を油脂組成物の保存安定性や風味を低下させずに享受できる。多価不飽和脂肪酸の例には、リノール酸、アラキドン酸のようなω−６酸や、リノレン酸、エイコサペンタエン酸（ＥＰＡ）、及びドコサヘキサエン酸（ＤＨＡ）のようなω−３酸が挙げられる。多価不飽和脂肪酸の導入は、これを多く含有する天然由来の油脂、培養微生物から抽出される油脂、又は化学合成物の少なくとも一種の使用によって達せられる。特に、本発明の油相の脂肪酸組成における「リノール酸含有率（重量％）＋リノレン酸含有率（重量％）×２」の値は２０以上が望ましい。このような油脂としては、例えば、大豆油、菜種油などの液油を所定量以上配合したものが挙げられる。前記値が２０以上であると、本発明の効果がより顕著となる。

水相に配合するビタミンＥは、食品に使用可能なものであれば良い。ビタミンＥの有用な原料としては、大豆油、米ぬか油、綿実油、トウモロコシ油などの植物油を精製する際に副生する油さいや、小麦胚芽油などのようにビタミンＥを多く含むものが挙げられる。形態としては、ペースト状ビタミンＥ、粉末化ビタミンＥなどが挙げられる。

ビタミンＥを水相に乳化分散させるために、グリセリン、糖アルコール、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、庶糖脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、ポリソルベートなどの乳化剤などを用いても良い。好ましくは乳化剤を用いることがよく、より好ましくはグリセリン脂肪酸エステルを用いることがよい。また、市販の乳化ビタミンＥ製剤（例えば、太陽化学株式会社製サンアクティブ−ＶＥ７２０）を用いても良い。

水相中のビタミンＥ含量の油脂組成物１０ｇあたりの下限は、好ましくは１ｍｇ、より好ましくは２ｍｇ、更に好ましくは３ｍｇである。また、上限は好ましくは２０ｍｇ、より好ましくは１５ｍｇ、更に好ましくは１２ｍｇ、最も好ましくは１０ｍｇである。含量が少なすぎると、ビタミンＥの生理機能が充分に発揮できず、また、多すぎると、風味の劣化を生じてしまう場合がある。

水相中にビタミンＥを含有することで、油相中にビタミンＥを含有する場合に比して、過酸化物価の上昇を著しく抑制することができる。従って、本発明は、油中水型乳化油脂組成物の過酸化物価上昇抑制方法において、水相中にビタミンＥを含有させることを特徴とする、前記方法を提供する。その過酸化物価の上昇抑制の程度は、油相中に含有した場合に比べ、好ましくは５０％以上であり、より好ましくは６０％以上であり、更に好ましくは６５％以上である。

本発明の油中水型乳化油脂組成物は、家庭用や業務用のマーガリン、及びファットスプレッド用として好適である。マーガリン及びファットスプレッドに用いるために本発明の組成物に含める副原料は、食塩、糖類，乳製品、着色料、フレーバー、増粘剤・安定剤、酸化防止剤、ビタミンＥ以外のビタミン類、乳化剤等がある。マーガリンなどの油中水型乳化油脂組成物は、既に知られた通常の方法で製造することができる。具体的には、油相成分と水相成分とを一緒に撹拌乳化してエマルションを作り、これを冷却してエマルションを安定化させることにより得られる。本発明の場合、予め、ビタミンＥ含有の水相を調製した後、油相に添加することが望ましい。油相と水相の重量比は、通常、３０：７０〜９５：５であり、好ましくは４０：６０〜９０：１０である。また、水相を添加する際の油相温度は４０℃〜８０℃が好ましい。上記温度の油相に水相を撹拌しながら投入して予備乳化した後、ボテーター、パーフェクターなどに通して冷却練りあわせを行うことにより乳化油脂組成物を得る。油相と水相との予備乳化物を窒素、空気等のガスを吹き込みながら冷却混練することにより、気泡含有油中水型乳化油脂組成物とすることも可能である。

以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。しかし、以下の実施例は、本発明を限定するものではない。

以下において、使用油脂などは次の物を使用した。

〔使用油脂〕
パームステアリン（ヨウ素価３２）、パーム核油、大豆油、菜種油、コーン油、及びハイオレイック紅花油は、いずれも株式会社Ｊ−オイルミルズ社製のものを使用した。

〔その他〕
ビタミンＥ製剤（株式会社Ｊ−オイルミルズ社製トコフェロールＥＴ−８４０Ｒ）（ビタミンＥ４０％以上）
乳化ビタミンＥ製剤（太陽化学株式会社製サンアクティブＶＥ−７２０）（ビタミンＥ２０％、グリセリン脂肪酸エステル４．５％）
レシチン（株式会社Ｊ−オイルミルズ社製レシチンＦＡ）

〔リノール酸及びリノレン酸含有率の測定〕
油脂基準分析法（２．４．１．１−１９９６）に従い分析した。

〔エステル交換油の調製〕
パームステアリン７０重量部とパーム核油３０重量部を配合した油脂に、触媒としてナトリウムメチラート０．５重量部添加して、８０℃、３０分間のランダムエステル交換を行った。通常の方法で精製をし、エステル交換油を得た。

〔油中水型乳化油脂組成物の調製〕
表１、表２に示す組成の油相と水相を調製した。約６０℃に保温した油相に水相を撹拌しながら投入して予備乳化を行った。その後、ボテーターに通して冷却練りあわせを行い、油脂組成物を調製した。

〔保存試験評価〕
調製した油脂組成物を１５℃にて９０日保管後に、過酸化物価（ＰＯＶ）、風味を評価した。風味は、複数の専門パネラーによる官能検査により下記の基準で評価した。ＰＯＶは基準油脂分析法（２．２．２．１−２００３）に従って測定した。その結果を表１、表２に示す。
＜風味の評価＞
◎ 非常に良好
○ 良好
△ やや良好
× 不良

表１及び表２に示したとおり、ＰＯＶについては、実施例１〜５は比較例１〜５に比して、２１％（実施例１と比較例１との比較）〜３３％（実施例４と比較例４との比較、および、実施例５と比較例５との比較）に顕著に上昇が抑えられていた。風味については、比較例６はやや劣り、比較例１〜５は風味が不良であったのに対し、実施例１〜５は総じて良好であった。また、外観、塗りやすさなどについては今回調製した油脂組成物はいずれも良好であった。よって、本発明はビタミンＥを配合しているにもかかわらず、酸化安定性及び風味に優れていることが判った。

Claims

油中水型乳化油脂組成物において、外相油脂中に多価不飽和脂肪酸を含有し、水相中にビタミンＥを乳化剤とともに乳化させて含有し、そして前記ビタミンＥを油脂組成物１０ｇあたり１ｍｇ以上１２ｍｇ以下含有することを特徴とする、前記油中水型乳化油脂組成物。
前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、請求項１に記載の油中水型乳化油脂組成物。
前記外相油脂の構成脂肪酸における「リノール酸含有率（重量％）＋リノレン酸含有率（重量％）×２」の値が２０以上であることを特徴とする、請求項１に記載の油中水型乳化油脂組成物。
ビタミンＥを乳化剤とともに乳化させて含有する水相を、多価不飽和脂肪酸を含有する油脂に添加することを含み、前記ビタミンＥを油脂組成物１０ｇあたり１ｍｇ以上１２ｍｇ以下含有する、油中水型乳化油脂組成物の製造方法。
前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、請求項４に記載の油中水型乳化油脂組成物の製造方法。
油中水型乳化油脂組成物の過酸化物価上昇抑制方法において、外相油脂中に多価不飽和脂肪酸を含有させ、および水相中にビタミンＥを乳化剤とともに乳化させて含有させ、前記ビタミンＥを油脂組成物１０ｇあたり１ｍｇ以上１２ｍｇ以下含有することを特徴とする、前記方法。
前記乳化剤が、グリセリン脂肪酸エステルであることを特徴とする、請求項６に記載の油中水型乳化油脂組成物の過酸化物価上昇抑制方法。