従来、電子写真複写機、レーザービームプリンタ、静電記録装置等においては、電子写真感光体や静電記録体などの静電荷像担持体上に種々の手段で静電荷像が形成され、この静電荷像担持体上に形成された静電荷像を、結着樹脂中に着色剤、磁性粉体等が分散された粉体トナーを必要に応じキャリア粒子と共に用いて乾式現像した後、トナー像を転写紙などの転写体に転写し、次いで転写されたトナー像を加熱加圧定着あるいはフラッシュ定着を行い、所望の複写物或いはデータ打ち出し等が一般に行われている。静電荷像を現像する方法としては、近年、粉体トナーを用いる乾式現像法が主として採用されている。
ところで、電子写真複写機、レーザービームプリンタなどは、最近では小型化、パーソナル化が進む一方で、オンデマンド印刷の要求により高速化も要求されるようになっており、更に低エネルギー化が要求されている。したがって、これら装置については出来得る限りシンプルな機構により、信頼性高く且つ高品質の画像を高速且つ低エネルギーで長期間にわたり形成するための改良が種々試みられている。また、このような装置の改良とともに、現像の際に用いられるトナーの改善も種々試みられている。
例えば、トナー像を紙などの転写シートに定着するための定着方法についてみると、加熱ローラを用いた加熱加圧定着方法や、ロール状または長尺状の耐熱性フィルム(以下、定着ベルトという)を用い、この定着ベルトを介して加熱体と転写シート現像面を対峙させ、加圧ローラにより転写シートを裏から加圧しつつ搬送して加熱定着する方法が広く採用されている。これらの方法では、トナー像の定着時に熱ローラ或いは定着ベルトがトナー像と直接接触するためトナーへの熱の伝播が効率良く行われ、このためトナーの溶融を低エネルギーで、迅速かつスムースに行うことができる。しかし、このような方法においては、定着時、溶融したトナーと熱ローラ或いは定着ベルトとが直接接触することになるため、溶融したトナーの一部が熱ローラ或いは定着ベルト表面に転移付着し、熱ローラ或いは定着ベルトが再度転写シートと接触した際に、転写シートにこの転移付着したトナーが再転移するとか、転写シートが存在しない場合には転移付着したトナーが加圧ロールに転移し、次の転写シートが定着装置を通過する際に転写シートの裏面に付着するなどの、所謂オフセット現象を引き起こし、転写シートを汚すという問題がある。
このようなトナーのオフセット現象を防止するため、従来熱ロール表面をシリコンゴムやフッ素樹脂などの離型性材料で形成し、その表面にシリコーンオイルのような離型性の良い液を塗布し、熱ロール表面を離型性の液膜層で被覆することが一般に行われている。この方法によればオフセット現象の発生をほぼ防止することができるが、離型性液の塗布装置が必要となるとともに、シリコーンオイルが熱により蒸発し、機内を汚染するという問題が発生する。また、このような離型性液の塗布装置を設けることは、装置の小型化と相容れないものである。このため、離型性の液を塗布装置により塗布するのではなく、トナー自体に離型性物質を含有させ、定着時の加熱により離型性物質を融解し、トナーから離型性液体を供給してオフセット現象を防止することが提案され、このような離型性物質(離型剤)として低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、炭化水素系ワックス、天然ワックス、これらを変性した変性ワックス、カルナウバワックス、フィッシャートロプシュワックスなど多数のワックス類が提案されていることは周知のとおりである。
従来乾式現像法に用いられる静電荷像現像用トナーは、結着樹脂としてスチレン系樹脂あるいは熱可塑性ポリエステル樹脂などが用いられ、これら結着樹脂に染料、顔料などの着色剤、荷電制御剤、ワックスなどの離型剤等が溶融混練され、冷却された後、粉砕、分級工程を経て1〜15μm程度の平均粒径を有する粒子とされる。このとき、必要に応じマグネタイト等の磁性粉体をトナー中に添加、含有させ、磁性トナーとすることもよく知られている。磁性粉体をトナー中に含有させる場合には、磁性粉体が着色剤としても機能するため、着色剤を用いる必要はないが、必要であれば更に着色剤を添加してもよい。通常静電荷像現像用トナーはこのような工程を経て製造されるが、トナーに離型性を付与するために添加されるワックス類は、そもそも結着樹脂と相溶性が悪く、トナー中において均一分散しづらいものである。また、トナーのオフセット現象を防止すべく多量のワックスをトナー中に添加含有させると、ワックスが偏在し、トナーを微粉砕する際にワックスが遊離し、遊離したワックスによる感光体、現像スリーブ、キャリアへのフィルミングが発生し、現像画像の劣化が発生するとともに、トナーの流動性の低下、ブロッキング等の問題が発生する。
これまでにもトナーの結着樹脂と離型剤との相溶性を改善し、上記のごとき問題のないトナーを得るべく検討がなされている。例えば極性基を分子構造中に有する脂肪酸系のワックス或いは極性基を分子中に導入した変成ワックスを用いるなど、特定の物性或いは分子構造を有するワックスを用いることが提案されている。また、結着樹脂とワックス類を溶剤に溶解した後脱溶剤する、或いは結着樹脂を重合する際に重合をワックスの存在下に行うなどの方法により、予め結着樹脂中にワックスを分散したものを製造し、これとトナーの他の成分とを溶融混練する方法も提案されている(例えば、特許文献1参照)。前者については、ワックスの偏在或いは遊離の問題が十分に改善されたとまで言えるものではないし、後者については、スチレン系樹脂を製造する際には採用可能な方法といえるが、ポリエステル樹脂を結着樹脂として用いる場合、良好な特性を有するトナーを製造することは困難であるのが現状である。
更には、ワックスの結着樹脂への相溶性を改善するために、相溶化剤を用いることも提案されている。このような相溶化剤を用いる方法としては、カルボキシル基を有するポリマーからなる結着樹脂に対し、相溶化剤としてエチレン−グリシジルメタクリレートコポリマーにビニルポリマーをグラフト化したグラフトポリマーを用いる方法(特許文献2参照)、熱可塑性ポリエステル樹脂のような水酸基または酸基を含む樹脂粒子に対し、相溶化剤としてアルキレン−グリシジルメタクリレートコポリマーを用いる方法(特許文献3参照)などが挙げられる。
またロジンを用いたトナーも従来知られている。例えば、トナーの低温定着性を改善するために、ロジンのカルボン酸を1価または2価のアルコールによりエステル化して得られたロジンエステルを用いることが提案されており、このトナーに用いられるロジンエステルの軟化点は70〜120℃が好ましく、ロジンエステルの使用によりトナーの透明性が発現でき、また上記ロジンエステルは、離型剤との相溶性もあることの開示もなされている(特許文献4参照)。しかしながら、この特許文献4に記載されている、カルボン酸を1価または2価のアルコールによりエステル化したロジンエステルについて検討したところ、離型剤の均一な分散、配合において期待される程の効果を得ることができなかった。また、低温定着性のトナーを得るため、軟化温度130℃以下のロジン系樹脂(ロジンエステル、ロジンマレイン酸樹脂、ロジン変性フェノール樹脂等)をトナーの結着樹脂として用いることも提案されている(特許文献5参照)。さらに、結着樹脂、着色剤、帯電制御剤および酸価が2以下のロジンエステルを含有する着色粒子と外添剤とからなる静電荷像現像用トナーも提案されている(特許文献6参照)。しかし、これら特許文献5、6には、ロジン系樹脂あるいはロジンエステルを結着樹脂と離型剤との相溶化剤として利用することに関する開示はない。
特開平6−95433号公報
特開平7−64323号公報
特開平7−199542号公報
特開平10−307419号公報
WO00/18840号公報
特開2003−322997号公報
これらの方法において、特に結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いる場合、トナーの低温定着性、耐オフセット性が十分とはいえず、また離型剤のトナー中での偏在の問題、微粉砕時における離型剤の遊離の問題も十分に解決されているといえるものではない。また、一般的には、離型剤の相溶性の改善は、スチレン系樹脂に対してはある程度の効果が得られるものであっても、結着樹脂がポリエステル樹脂である場合、スチレン系樹脂と同様の特性の改善を得ることは難しいのが現状である。さらに、上記の重合体を相溶化剤として用いる方法においては、結着樹脂として熱可塑性ポリエステル樹脂を用いる場合に相溶性が改善されたとしても、相溶化剤の添加により帯電量、抵抗値の変動、定着性能の低下等トナーの性能が悪化してしまい、実用性の点で問題を有するし、これらの材料は通常の方法により微細化することが困難で、凍結粉砕による手段で粉砕する必要があり、使用される相溶化剤も高価であることから、製造方法の煩雑さおよびコストの面から低価格の汎用トナーに用いるには問題がある。
さらに、近年、環境安全性の観点から、ビスフェノールA誘導体を使用しないポリエステルを用いることが推奨されているが、結着樹脂として、ビスフェノールA誘導体に代えて、特にネオペンチルグリコール、エチレングリコール等をアルコール成分として用いる場合、このようなポリエステル樹脂と離型剤との相溶性が非常に悪く、その結果、トナー製造工程における粉砕時に離型剤成分が遊離してしまう量が多いのが現状である。また結着樹脂と離型剤との相溶性が十分でないと、トナー粉砕時に分離される分級微粉と分級品(トナー母粒子)との組成、特に離型剤の含有量が異なることから、分級微粉をトナー材料として再利用することが難しくなるという問題もある。
一方、離型剤についてみると、カルナウバワックス等の極性基を有する離型剤は、比較的相溶性が良好なものの、低分子量ポリプロピレンの場合は、相溶性が悪く、特に非酸化型の低分子量ポリプロピレンは、さらに相溶性が悪いものであった。また、低温定着性、耐オフセット性の改善効果の高い、極性基の無い低粘度・高融点のフィッシャートロプシュワックスの場合は、相溶性が極めて悪く、ポリエステル樹脂との相溶性の改善は、大きな課題であった。
さらに、結着樹脂としてスチレンアクリル系樹脂を用いる場合、結着樹脂製造時に離型剤を添加して用いることで、離型剤の相溶性・分散性の改善効果は得られるが、現像画像特性の改善を得ることは難しいのが現状であった。具体的には、感光体、現像スリーブ、キャリアへの離型剤成分のフィルミングの発生や、現像スリーブ上のトナー層に波模様(ウェーブパターン)が発生してしまう問題がある。この問題は、低分子量ポリプロピレンの場合顕著であり、特に非酸化型の低分子量ポリプロピレンを使用する場合の改善するべき課題であった。また、離型剤内添のスチレンアクリル系樹脂は、製造工程が煩雑になり、コストアップにもつながっている。
本発明は、上記のとおり、少なくとも結着樹脂、着色剤、および離型剤としての低分子量ポリプロピレンまたはフィッシャートロプシュワックスを含有する静電荷現像用トナーにおいて、該トナーが、酸価が40mgKOH/g以下であるロジン変性マレイン酸樹脂を含有することを特徴とする。以下、本発明の静電荷現像用トナーに用いられる材料について、本発明の特徴をなすロジン変性マレイン酸樹脂から、順次詳細に説明する。
本発明で用いられるロジン変性マレイン酸樹脂とは、ロジンとマレイン酸(本発明においては、マレイン酸には無水マレイン酸とフマル酸も包含する)のディールス−アルダー反応による付加物に、グリセリン、ペンタエリスリトール、エチレングリコール等の多価アルコールを反応させたアルキッド樹脂のことであり、ロジンとマレイン酸の付加物に対し反応させる多価アルコールの配合割合、およびエステル化の程度で酸価が決定されるが、酸価を40mgKOH/g以下とすることで、本発明に用いられるロジン変性マレイン酸樹脂を得ることができる。また、多価アルコール以外に多塩基酸も併用して、長鎖のアルキッド樹脂をロジン骨格に結合した構造としても良い。ここでは、マレイン酸は、無水マレイン酸、フマル酸も同様に用いることができるものであり、本発明ではロジン変性フマル酸樹脂もロジン変性マレイン酸樹脂に包含されるものである。
ロジン変性マレイン酸樹脂のロジン成分としては、アビエチン酸、デヒドロアビエチン酸、ネオアビエチン酸、パラストリン酸、ピマル酸、イソピマル酸を主成分とするトール油ロジン、ガムロジン、ウッドロジンなどが挙げられる。
ロジンとマレイン酸の付加物に対し反応させる多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等が挙げられる。また、これらの多価アルコールと共にアルキッド樹脂の原料として使用する多塩基酸が用いられる場合、該多塩基酸として、無水フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、マレイン酸、イタコン酸、コハク酸、セバシン酸等が挙げられる。
本発明で使用することができる酸価40mgKOH/g以下のロジン変性マレイン酸樹脂の市販品としては、マルキードNo1、マルキードNo2、マルキードNo5、マルキードNo6、マルキードNo8(以上、荒川化学工業(株)製)等がある。
ロジン変性マレイン酸樹脂の酸価としては、40mgKOH/g以下であることが好ましく、10〜40mgKOH/g以下であることがより好ましい。酸価がこの範囲であるならば、結着樹脂中に低分子量ポリプロピレンおよびフィッシャートロプシュワックスが均一に分散され、トナー中の低分子量ポリプロピレンおよびフィッシャートロプシュワックスの配合量を均一にすることができる。酸価が40mgKOH/gよりも大きくなってしまうと、低分子量ポリプロピレンおよびフィッシャートロプシュワックスが結着樹脂中に均一に分散、分配される効果が低減してしまう。特にトナーを微粉砕する際に低分子量ポリプロピレンおよびフィッシャートロプシュワックスが遊離し、感光体、現像スリーブ、キャリアへ付着することによるフィルミングが発生し、現像画像の劣化が発生してしまう。また、トナー中に遊離した低分子量ポリプロピレンまたはフィッシャートロプシュワックスが存在し、トナーの流動性の低下、ブロッキング等の問題が発生する。
また、本発明においては、ロジン変性マレイン酸樹脂の含有量は、低分子量ポリプロピレンの含有量に対して0.3〜3.5倍(重量基準)の範囲であることが好ましく、0.4〜1.6倍の範囲であることがより好ましい。0.3倍よりも小さいと、分散性、相溶性改善の効果が得られなくなってしまい、低分子量ポリプロピレンが遊離するケースも生じてしまう。一方、3.5倍を超えてしまうと、ロジン変性マレイン酸樹脂が過剰になり、トナー処方の制御ができなくなり、画像特性の悪化、定着性能の低下(ホットオフセットの発生)等の問題が生じる。
さらに、本発明のロジン変性マレイン酸樹脂の含有量は、フィッシャートロプシュワックスの含有量に対して0.2〜4.0倍の範囲であることが好ましく、0.3〜3.5倍の範囲であることがより好ましい。0.2倍よりも小さいと、分散性、相溶性改善の効果が得られなくなってしまい、フィッシャートロプシュワックスが遊離するケースも生じてしまう。一方、4.0倍を超えてしまうと、ロジン変性マレイン酸樹脂が過剰になり、トナー処方の制御ができなくなり、画像特性の悪化、定着性能の低下(ホットオフセットの発生)等の問題が生じる。
またトナーとしての定着性、貯蔵安定性を考慮した場合、本発明のロジン変性マレイン酸樹脂の環球法(JIS K 5903)による軟化温度は、120〜150℃の範囲であることが好ましい。120℃よりも低くなると、貯蔵安定性の悪化およびホットオフセットを引き起こし、また150℃を超えてしまうと、溶融し難く、相溶化剤としての役割を果たせず、定着性の不良を引き起こす。
本発明において用いられるロジン変性マレイン酸樹脂の真密度は、1.08〜1.25(g/cc)の範囲であることが好ましい。この数値は、低分子量ポリプロピレンおよびフィッシャートロプシュワックスの真密度が0.9(g/cc)程度であること、ポリエステル樹脂の真密度が1.1〜1.3(g/cc)程度であることからも、両者の中間の数値であり相溶化を果たす上で有効な数値範囲である。
なお、本発明において、酸価が40mgKOH/g以下のロジン変性マレイン酸樹脂の添加により、低分子量ポリプロピレンまたはフィッシャートロプシュワックスの分散性、分配性が大幅に改善される理由については、完全には解明されていない。本発明者らは次のように推測するが、以下の説明により本発明は何ら限定されるものではない。すなわち、低分子量ポリプロピレンまたはフィッシャートロプシュワックスの分散性、分配性の改善は、ロジン変性マレイン酸樹脂の構造にあると考えられる。ロジン変性マレイン酸樹脂は、ロジン(主成分はアビエチン酸)とマレイン酸から三塩基酸の付加物をつくり、多価アルコールでエステル化したものであるが、酸を有する極性基の部分と無極性のロジン骨格の部分とを有する。この酸を有する極性基の部分が、未反応のアビエチン酸由来のカルボキシル基およびマレイン酸のカルボキシル基の部分であり、結着樹脂の極性基と相溶し、特にポリエステル樹脂の場合は、アルコール由来の部分と反応、相溶する。また、共役二重結合を有する無極性のロジン骨格の部分が、低分子量ポリプロピレンまたはフィッシャートロプシュワックスと相溶する。その結果、結着樹脂中に低分子量ポリプロピレンまたはフィッシャートロプシュワックスが均一に分散、分配される効果が得られるのである。このため、特に低分子量ポリプロピレンとして、極性を有しない、酸価が2mgKOH/g以下の非酸化型低分子量ポリプロピレンの使用において有効である。
次に、本発明のトナーにおいて用いられる離型剤について説明する。本発明においては、離型剤として、低分子量ポリプロピレン、フィッシャートロプシュワックスが用いられる。まず、低分子量ポリプロピレンであるが、低分子量ポリプロピレンには、非酸化型と酸化型の2つのタイプがあり、本発明においては、非酸化型の低分子量ポリプロピレンを用いることが好ましい。非酸化型とは、本明細書では酸価が2mgKOH/g以下の数値を有するものを意味する。また、低分子量ポリプロピレンの分子量は、蒸気浸透圧法(VPO法)による分子量の測定で、2,000〜10,000の範囲であることが好ましい。また、軟化温度は、130〜150℃の数値であることが好ましい。このような非酸化型の低分子量ポリプロピレンとしては、例えば、三洋化成工業社製ハイマーTP−32、ビスコール550P、660P、330P、三井化学社製NP055、NP056、NP105、NP505等を好ましく用いることができる。ロジン変性マレイン酸樹脂として、軟化温度が120〜150℃の範囲のものを用いることで、低分子量ポリプロピレンの軟化温度と近い数値となり、ロジン変性マレイン酸樹脂と低分子量ポリプロピレンの相溶性が良好になるのである。
本発明の静電荷像現像用トナーに用いる低分子量ポリプロピレンは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜8重量部であることが好ましい。低分子量ポリプロピレンの含有量が8重量部を超えると、ロジン変性マレイン酸樹脂の働きで結着樹脂中へ離型剤を均一に配合、分散をせしめることはできるものの、低分子量ポリプロピレンの含有量が過剰になり、現像スリーブや感光体ドラムへの低分子量ポリプロピレン成分の付着、キャリアへのスペント等を引き起こしてしまい、トナーの機内飛散、かぶりの増加、画像の劣化が生じ、品質が悪化してしまう。また0.5重量部未満となると、低分子量ポリプロピレンを添加する効果が見られず、すなわち、定着性能が低下してしまい、オフセットが発生しやすくなってしまう。また前記したように、ロジン変性マレイン酸樹脂の添加量も低分子量ポリプロピレンの添加量とのバランスを考慮して決定される。
一方、本発明において用いられるフィッシャートロプシュワックスは、従来は石炭を原料にしてフィッシャートロプシュ法により製造されたものであったが、資源の枯渇や製造工程の複雑さの問題から、代替原料を世界規模で検討した結果、現在は石炭から環境に優しい天然ガスへ原料が移行され、製造工程も容易なものに変更されている。メタン、エタン、プロパン、ブタンなどからなる天然ガスを原料として、これらが一酸化炭素と水素からなる合成ガスへオートサーマルリフォーミングにより転換される。フィッシャートロプシュワックスは、この合成ガスを原料として用い、フィッシャートロプシュ合成法により製造される。このようにフィッシャートロプシュワックスは、一酸化炭素の触媒水素化により合成されたワックス状炭化水素であり、構造的にはメチル分岐の少ない直鎖状のパラフィン系ワックスである。パラフィンワックスの中で特に硬質、高分子量、結晶性が高く、高凝固点、溶融時の低粘性に特徴があり、他の離型剤と比べ低温定着性、耐オフセット性に優れる。具体的には、サゾール社製パラフリントH1−N4、HI−N6、A3、シェル・MDS社製FT−100、MDP−7000、MDP−7010等が使用できるが、中でもH1−N4、FT−100が低温定着性、保存安定性に優れ好ましい。また、示差走査熱量分析計(以下、DSCと略す)による融点が80〜120℃であるものが好ましい。融点が80℃より低いものは、トナーの保存安定性に問題が生じやすく、また流動性が悪くなりやすい。一方、120℃より高いとトナーの溶融粘度を下げる効果が少ないため、トナーの低温定着性が得られにくくなる。また、JIS K−2235で測定した25℃における針入度が3以下であることが好ましく、更には2以下であることが好ましい。針入度が3より大きいとトナー化した際に流動性が悪くなり易く、保存安定性およびキャリア粒子等との摩擦帯電性に問題が生じ易い。
なお、本発明でいうDSCによる融点は、吸収熱量のピーク温度のことであり、島津製作所社製 DSC−60を用い20〜150℃の間を10℃/分の割合で昇温させ、次に150℃から20℃に急冷させる過程を2回繰り返し2回目の吸収熱量のピーク温度を測定したものである。
また、本発明の静電荷像現像用トナーに用いるフィッシャートロプシュワックスは、結着樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部であることが好ましい。フィッシャートロプシュワックスの含有量が10重量部よりも多くなると、ロジン変性マレイン酸樹脂の働きで結着樹脂中へ均一に配合、分散をせしめることはできるものの、フィッシャートロプシュワックスの含有量が過剰になり、現像スリーブへや感光体ドラムへのフィッシャートロプシュワックス成分の付着、キャリアへのスペント等を引き起こしてしまい、トナーの機内飛散、かぶりの増加、画像の劣化が生じ、品質が悪化してしまう。また0.5重量部よりも少なくなると、フィッシャートロプシュワックスを添加する効果が見られず、すなわち、定着性能が低下してしまい、オフセットが発生し易くなってしまう。また前記したように、ロジン変性マレイン酸樹脂の添加量もフィッシャートロプシュワックスの添加量とのバランスを考慮して決定される。
本発明において、ロジン変性マレイン酸樹脂とフィッシャートロプシュワックスの酸価の測定は、JIS K−0070の方法に準じて行うことができる。酸価は試料1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数で表す。
本発明の静電荷像現像用トナーに用いられる結着樹脂としては、従来から、トナーの結着樹脂として公知のもののいずれもが使用可能である。使用することのできる結着樹脂としては、ポリスチレン、ポリ−p−クロルスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレンおよびその置換体の単重合体;スチレン−p−クロルスチレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタレン共重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−α−クロルメタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−アクリロニトリル−インデン共重合体などのスチレン系共重合体または架橋されたスチレン系共重合体;ポリ塩化ビニル、フェノール樹脂、天然変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン酸樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂などが挙げられる。中でもポリエステル樹脂、スチレン系共重合体が好ましく用いられる。また、スチレン系共重合体の場合はスチレンアクリル樹脂が好ましい。
本発明のトナーにおいて好ましく用いることのできるポリエステル樹脂を構成するアルコール成分としては、例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン、下記一般式(1)で示されるビスフェノール誘導体等のジオール類、グリセロール、ジグリセロール、ソルビット、ソルビタン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、等の多価アルコール類が挙げられる。これらは単独で或いは2種以上の組み合わせで使用される。
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x、yはそれぞれ1以上の整数であり、かつx+yの平均値は2〜10である。)
本発明の静電荷像現像用トナーに用いられるポリエステル樹脂は、アルコール成分として少なくともネオペンチルグリコールおよびエチレングリコールを含有していることが、特に好ましい。アルコール成分として少なくともネオペンチルグリコールおよびエチレングリコールを有するポリエステル樹脂を前記酸価が40mgKOH/g以下であるロジン変性マレイン酸樹脂とともに用いることで、トナー中に離型剤を均一に分配、配合できる。また架橋成分を有しない線状ポリエステル樹脂の場合に特に、離型剤を均一に分配することにおいて、酸価が40mgKOH/g以下であるロジン変性マレイン酸樹脂の働きが有効である。
アルコール成分として少なくともネオペンチルグリコールおよびエチレングリコールを含有するポリエステル樹脂のアルコール成分としては、必須の成分であるネオペンチルグリコールおよびエチレングリコールの他に、さらに任意成分として、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,4−ブテンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、グリセロール、ジグリセロール、ソルビット、ソルビタン、ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、等の多価アルコール類を使用することが可能である。中でも任意成分として、ジエチレングリコールを用いることが好ましい。これに対し、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘキサン等のビスフェノールA誘導体は、環境の問題、比重が大きいことでトナー化した場合の消費量が多くなってしまう短所を有しており、使用しないことが好ましい。
そして、ポリエステル全体を100mol%(うち酸成分50mol%、アルコール成分50mol%)とした場合、アルコール成分であるネオペンチルグリコール、エチレングリコールの2種が35〜50mol%であることが好ましく、より好ましくは40〜48mol%である。残りのアルコール成分としては、ジエチレングリコールを用いることが好ましい。
本発明の静電荷像現像用トナーに用いられるポリエステル樹脂の酸成分としては、二価のカルボン酸として、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、無水フタル酸などのベンゼンジカルボン酸類またはその無水物;コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸などのアルキルジカルボン酸類またはその無水物;またさらに炭素数16〜18のアルキル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸などの不飽和ジカルボン酸またはその無水物;シクロヘキサンジカルボン酸;ナフタレンジカルボン酸;ジフェノキシエタン−2,6−ジカルボン酸等が挙げられ、架橋成分として働く三価以上のカルボン酸としては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ナフタレントリカルボン酸、ブタントリカルボン酸、ヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、オクタンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等が挙げられる。これらは単独で或いは2種以上の組み合わせで使用される。
好ましい酸成分は、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸またはその無水物、コハク酸、n−ドデセニルコハク酸またはその無水物、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のジカルボン酸類、トリメリット酸またはその無水物等のトリカルボン酸類である。
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、ポリエステル樹脂は、酸価が5〜20mgKOH/gの範囲であることが好ましい。ポリエステル樹脂の酸価が5mgKOH/gより小さい場合には、ロジン変性マレイン酸樹脂(相溶化剤)との反応性が低下し、低分子量ポリプロピレン遊離の問題が生じる場合がある。またポリエステル樹脂の酸価が20mgKOH/gを超える場合には、得られたトナーの高温・高湿時の保存性および現像特性が悪くなる場合がある。
なお、本発明において、結着樹脂の酸価の測定はJIS K−0070の方法に準じて行うことができる。酸価はトナー1gを中和するために必要な水酸化カリウムのmg数で表す。ただし、トナーが磁性体を含有する場合は、磁性体を酸で溶出させた残分をトナー1gとする。
ポリエステル樹脂は、ホモポリエステル或いはコポリエステルの単独でも、或いはこれらの2種以上からなるブレンド物であってもよい。また、ポリエステル樹脂は、耐オフセット性および低温定着性の点から、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)で測定される分子量において、重量平均分子量(Mw)が5,000以上のものが好ましく、10,000〜1,000,000のものがより好ましい。ポリエステル樹脂の重量平均分子量が小さくなると、トナーの耐オフセット性が低下する傾向にあり、また、重量平均分子量が大きくなると定着性が低下する傾向を示す。また、用いられるポリエステル樹脂は、特定の低分子量の縮重合体成分と特定の高分子量の縮重合体成分とからなる2山の分子量分布曲線を有するタイプ、或いは1山の単分子量分布曲線を有するタイプのいずれのものであってもよい。
本発明のトナーにおいて、好ましく用いることのできるスチレン系共重合体において、スチレンモノマーに対するコモノマーとしては、アクリル酸、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸オクチル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドなどの二重結合を有するモノカルボン酸もしくはその置換体;マレイン酸、マレイン酸メチル、マレイン酸ブチル、マレイン酸ジメチルなどの二重結合を有するジカルボン酸およびその置換体;塩化ビニル、酢酸ビニル、安息香酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、ブチレンなどのエチレン系オレフィン類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトンなどのビニルケトン類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル類等のビニル単量体が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし、2種以上併用されてもよい。中でも本発明においては、スチレンとアクリル酸ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチルあるいはメタクリル酸ブチルとの共重合体であるスチレンアクリル系樹脂を用いることが好ましい。
架橋されたスチレン系共重合体を製造する際に用いられる架橋剤としては、主として2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられ、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンなどの芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートなどの二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;および3個以上のビニル基を有する化合物が単独でもしくは混合物として用いられる。
スチレン系共重合体としては、GPCにより測定される分子量分布で3×103〜5×104の領域に少なくともひとつのピークを有し、105以上の領域に少なくとも他の一つのピークあるいはショルダーを有するスチレンアクリル系共重合体が定着性の点から好ましい。分子量で3×103よりも小さい領域にピークが存在すると、低温定着性は良好なものの、ホットオフセットが生じたり、トナーの融着が生じ易く、現像スリーブ、感光体上にトナー成分が付着してしまい、画像汚染が生じてしまう。また、3×103〜5×104の領域にピークを有さず、5×104を超えてピークが存在すると、定着性能が悪くなってしまう。本発明に用いるスチレンアクリル系樹脂の分子量は、Mwが10×104〜30×104、Mnが0.2×104〜1.0×104であることが好ましい。
なお、ビニル系重合体の製造に当たっては、重合開始剤が用いられる。重合開始剤としては、従来公知のものの何れをも用いることができる。重合開始剤としては、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ターシャリーブチルハイドロパーオキサイド、ターシャリーブチルパーオキシベンゾエ−ト、ジターシャリーブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、アゾイソブチロニトリル、アゾビスバレロニトリルなどが従来好ましく用いられている。重合開始剤のビニルモノマーに対する使用割合は、0.2〜5質量%が一般的である。重合温度は、使用するモノマーおよび開始剤の種類に応じ適宜選定される。
本発明においては、結着樹脂は、トナー100重量部当り40〜95重量部であることが好ましい。
結着樹脂のガラス転移温度(Tg)は、50〜70℃の範囲であることが好ましい。ガラス転移温度(Tg)は、本発明においては示差走査熱量計(島津製作所社製 DSC−60)を用いて、昇温速度10℃/minで測定した時のTg以下のベースラインの延長線と、Tg近傍の吸熱カーブの接線との交点の値を求め測定した。
本発明の静電荷像現像用トナーにおいて用いられる着色剤としては、従来トナーに使用される、以下に示すイエロー、マゼンタ、シアン、黒の各有機顔料、カーボンブラック、磁性体が好適に用いられる。これらは単独で或いは2種以上を混合して使用することができる。
イエローの有機顔料としては、ベンズイミダゾロン化合物、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯化合物、メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、139、147、150、168、174、176、180、181、191等が好適に用いられる。中でもベンズイミダゾロン化合物を用いることが好ましい。
マゼンタの有機顔料としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、254、255等が好適に用いられる。中でもキナクリドン化合物を用いることが好ましい。
シアンの有機顔料としては、銅フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物等が利用できる。具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66等が好適に用いられる。中でも銅フタロシアニン化合物を用いることが好ましい。
カーボンブラックとしては、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラックのなどの各種いずれも使用できるが、ファーネスブラックカーボンの方が、画像特性においてカブリ(白地部の地汚れ)が低減される効果があり好ましいものである。
また、本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、必要に応じ磁性粉体が内添され、磁性トナーとされる。これら磁性粉体の例としては、マグネタイト、マグヘマイト、フェライト等の磁性酸化鉄または二価金属と酸化鉄との化合物、鉄、コバルト、ニッケルのような金属或いはこれらの金属のアルミニウム、コバルト、銅、鉛、マグネシウム、スズ、亜鉛、アンチモン、ベリリウム、ビスマス、カドミウム、カルシウム、マンガン、セレン、チタン、タングステン、バナジウムのような金属の合金の粉体、およびこれら粉体の混合物が挙げられる。これらの磁性粉体は、平均粒径が0.1〜2μm、更には0.1〜0.5μm程度のものが好ましい。また、磁性粉体のトナー中の含有量は、熱可塑性樹脂100重量部に対して、約20〜200重量部、好ましくは40〜150重量部である。また、トナーの飽和磁化としては、15〜35emu/g(測定磁場 1キロエルステッド)が好ましい。本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、磁性粉体は、着色剤としても機能するものである。
上記の如き静電荷像現像用トナーは、現像される静電潜像の極性に応じて、正または負の電荷を保持することが必要とされる。静電荷像現像用トナーに望ましい極性の電荷を付与するため、必要に応じ荷電制御剤がトナーに添加、含有される。
正帯電性トナーに用いる荷電制御剤としては、ニグロシン染料、脂肪酸金属誘導体、トリフェニルメタン系染料、四級アンモニウム塩化合物、ジオルガノスズオキサイド、ジオルガノスズボレート等を単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。中でもニグロシン染料を用いることが好ましい。また上記荷電制御剤は結着樹脂100部に対して、0.5〜10重量部で用いられ、0.7〜8重量部が優れた帯電性を保持、安定させることができる点で好ましい。
ニグロシン染料としては、ニグロシンベース、或いはニグロシンベースをマレイン酸樹脂、キシレン樹脂等で変性したものが好ましく、具体的にはオリエント化学工業社製N−01,N−04,N−07、ニグロシンベースEX、中央合成化学社製CCA−1,CCA−3等が挙げられる。また四級アンモニウム塩化合物としては、具体的にはオリエント化学工業社製P−51,P−53、保土谷化学工業社製TP−302,TP−415等が挙げられる。
負帯電性トナーに用いる荷電制御剤としては、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩化合物、同金属錯体、モノアゾ染料の金属錯体、カリックスアレン等のフェノール系縮合物、等が挙げられる。中でも芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩化合物、モノアゾ染料の金属錯体を用いることが好ましい。芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩化合物における、芳香族ヒドロキシカルボン酸としてはサリチル酸、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、3−フェニルサリチル酸が好ましく、中心金属としては、Cr、Zn、Ca、Al、Fe、Zr等が挙げられる。
また上記荷電制御剤は、ポリエステル樹脂100重量部に対して0.5〜10重量部で用いられ、0.7〜8重量部が優れた帯電性を保持、安定させることができる点で好ましい。
負帯電性トナーに用いる荷電制御剤の具体的なものとしては、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩化合物、同金属錯体として、オリエント化学工業社製ボントロンE−81、E−82、E−84、保土谷化学工業社製TN−105、また特許第2885238号、3785975号に記載される化合物が挙げられる。またモノアゾ染料の金属錯体としては、オリエント化学工業社製ボントロンS−34、S−44、保土谷化学工業社製スピロンブラックTRH、T−77、T−95等が挙げられる。またその他の負帯電荷電制御剤としては、クラリアント社製コピーチャージN4Pが挙げられる。
これらの中でも酸価が40mgKOH/g以下であるロジン変性マレイン酸樹脂と組み合わせて好ましく用いられる荷電制御剤は、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩化合物である。その理由は、芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩化合物のアルコール基(−OH基)とロジン変性マレイン酸樹脂の酸成分とが反応することで、ポリエステル樹脂中に芳香族ヒドロキシカルボン酸の金属塩化合物が好ましく分散されるからである。結果としてトナー中には、低分子量ポリプロピレンまたはフィッシャートロプシュワックス、荷電制御剤とも均一に分散されるのである。
本発明に用いる荷電制御剤においては、荷電制御剤の体積平均粒径(D50:メディアン径)が3〜10μmの範囲であることが好ましい。(粒度分布についてはベックマンコールター社マルチサイザーにて測定される値)この範囲を満足することで、荷電制御剤の結着樹脂中への分散が均一になされ、トナーとして安定した帯電量を保つことが可能となる。荷電制御剤の粒子径D50が10μmを超えてしまうと、結着樹脂中に荷電制御剤を均一に分散することが困難になってしまい、結果として荷電制御剤の含有量の偏りが生じてしまい、画像のかぶり、機内飛散の原因になってしまう。また荷電制御剤の粒子径D50が1μmよりも小さくなると、単位重量あたりの荷電制御剤の比表面積が増大してしまい、トナーの帯電量の過度な上昇(チャージアップ)を引き起こしてしまうこととなり、低温低湿の環境下で現像スリーブ上の波模様が生じ画像欠陥に繋がり好ましくない。
本発明の静電荷像現像用トナーには、さらに必要に応じて滑剤、流動性改良剤、研磨剤、導電性付与剤、画像剥離防止剤等、トナーの製造にあたり使用されている公知の添加剤を内添、あるいは外添することができる。これら添加剤の例としては、滑剤としては、ポリフッ化ビニリデン、ステアリン酸亜鉛などが、流動性改良剤としては、乾式法あるいは湿式法で製造したシリカ、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物およびこれらを疎水性化処理したものなどが、研磨剤としては窒化珪素、酸化セリウム、炭化ケイ素、チタン酸ストロンチウム、タングステンカーバイド、炭酸カルシウムおよびこれらを疎水化処理したものなどが、導電性付与剤としてはカーボンブラック、酸化スズなどが挙げられる。また、ポリビニリデンフルオライドなどのフッ素含有重合体の微粉末は、流動性、研磨性、帯電安定性などの点から好ましいものである。
流動性改良剤としては、疎水化処理されたシリカ、珪素アルミニウム共酸化物、珪素チタン共酸化物微粉体を外添剤として含有することが好ましい。これら微粉体の疎水化処理は、シリコーンオイル、テトラメチルジシラザンなどのシランカップリング剤による処理等が挙げられる。また、ブローオフ法により測定したときに、鉄粉キャリアに対してプラスのトリボ電荷を有する正帯電性のシリカを用いることもできる。この正帯電性のシリカを得るためには、側鎖に窒素原子を少なくとも1つ有するオルガノ基を有するシリコーンオイル、あるいは窒素含有のシランカップリング剤で処理すればよい。疎水化処理されたシリカなど疎水化微粉体の使用量は、現像剤重量当り、0.01〜20%、好ましくは0.03〜5%である。
具体的に本発明において用いられる流動性改良剤の表面処理剤としては、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のオルガノアルコキシシラン類、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、オクタデシルトリクロロシラン、t−ブチルジメチルクロロシラン等のオルガノクロロシラン類、ヘキサメチルジシラザン等のシラザン類、ビス(ジメチルアミノ)ジメチルシラン等のオルガノアミノシラン類、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイルなどのストレートシリコーンオイル、変性シリコーンオイル等が使用できる。変性シリコーンオイルに用いられる変性基としては、メチルスチレン基、長鎖アルキル基、ポリエーテル基、カルビノール基、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、高級脂肪酸基、メルカプト基、メタクリル基等が挙げられる。
本発明の静電荷像現像用トナーは、前記の材料を、乾式ブレンダー、ヘンシェルミキサー、ボールミル等により予備混合し、しかる後この混合物を熱ロール、ニーダー、一軸または二軸のエクストルーダー等の熱混練機によって溶融混練し、得られた混練物を冷却後粉砕し、必要に応じ所望の粒径に分級する方法により製造するのが好ましい。例えば、低分子量ポリプロピレンをポリエステル樹脂などの結着樹脂中に分散せしめ、かつロジン変性マレイン酸樹脂の効果を得るためには、混練温度が120〜180℃(吐出時の温度を測定)であることが好ましい。これらの範囲外であると、ロジン変性マレイン酸樹脂の相溶化剤としての機能を引き出すことができない。180℃を超えると混練のシェアをかけることができなくなり、低分子量ポリプロピレン、荷電制御剤の分散が悪くなり、120℃未満では低分子量ポリプロピレンが溶融せず、分散ができなくなる。
分級により得られたトナー母粒子(分級品)は、最終的に後処理工程において外添剤が添加され、トナーとされる。しかし、本発明の静電荷像現像用トナーの製造方法については、トナー母粒子の製造は、この混練・粉砕法に限られるものではなく、例えば結着樹脂溶液中にトナー構成材料を分散した後、噴霧乾燥する方法、あるいは、結着樹脂を構成すべき単量体に所定材料を混合して乳化懸濁液とした後に重合させてトナーを得る方法等、従来公知の方法のいずれの方法によってもよいことは勿論である。本発明の静電荷像現像用トナーは、体積平均粒径が3〜15μmであることが好ましく、5〜12μmが更に好ましい。
前記後処理工程では、通常ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどが用いられる。後処理工程は、前記外添剤のトナー表面上の付着状態を制御する上で重要な工程である。後処理工程条件の違いによりこれら外添剤の付着状態は大きく変わる。通常は、ミキサーの周速で10〜40m/sec.の条件で混合することが好ましい。40m/sec.を超える条件で混合すると、外添剤がトナー母粒子中に埋め込まれて機能しなくなってしまい、一方、10m/sec.よりも低くなると外添剤が遊離してしまい、外添剤効果が働かなくなってしまう。
外添剤を添加、混合した後の最終工程として、トナー中の異物除去の目的で篩い工程を経てトナーは製造される。篩の種類としては振動篩い機、超音波振動篩い機、ジャイロシフター等を用いることができる。その際に篩いに使用するメッシュの目開きがトナーの品質に影響を与える。本発明においては篩いのメッシュの目開きが40〜300μmのものを用いることが好ましい。更には45〜180μmの範囲が好ましい。300μmよりも目開きの大きなメッシュを使用してトナーの製造を行うと、トナー母粒子に含まれる粗粒子がトナー中に混入したり、また外添剤の凝集体がトナー中に含まれてしまう。
本発明の静電荷像現像用トナーにおいては、重量平均粒径であると、3〜15μmのトナー(トナー母粒子)が好ましく、特に、5μm以下の粒径を有するトナー粒子が12〜60個数%含有され、8〜12.7μmの粒径を有するトナー粒子が1〜33個数%含有され、16μm以上の粒径を有するトナー粒子が2.0重量%以下含有され、トナーの重量平均粒径が4〜10μmであることが、現像特性の観点からはより好ましい。なお、トナーの粒度分布測定は、例えばコールターカウンター(マルチサイザー3)を用いて測定することができる。
本発明の静電荷像現像用トナーが二成分系乾式現像剤として用いられる場合には、キャリアが含まれる。本発明の静電荷像現像用トナーとともに用いられるキャリアは、従来二成分系乾式現像剤において用いられるキャリアのいずれであってもよく、例えば、鉄粉等の強磁性金属あるいは強磁性金属の合金粉、ニッケル、銅、亜鉛、マグネシウム、バリウム等の元素から構成されるフェライト粉、マグネタイト粉等が好ましいものとして挙げられる。これらキャリアは、スチレン・メタクリレート共重合体、スチレン重合体、シリコーン樹脂等の樹脂で被覆されたものでよい。キャリアを樹脂により被覆する方法としては、被覆用樹脂を溶剤に溶解し、これを浸漬法、スプレー法、流動床法等によりコア粒子上に塗布し、乾燥させた後必要に応じ加熱して塗膜を硬化する方法等公知の任意の方法によることができる。またキャリアの平均粒径は、通常15〜200μm、好ましくは20〜100μmのものを用いることができる。
以下実施例および比較例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明の態様がこれらの例に限定されるものではない。なお以下においては、部数は全て重量部を表す。また下記の実施例、比較例の詳細な条件、結果を以下の表1〜15に示す。
以下の実施例および比較例中で用いられる結着樹脂、離型剤、ロジン変性マレイン酸樹脂は下記のものである。
<結着樹脂>
(ポリエステル樹脂)
熱可塑性ポリエステル樹脂1
テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA、エチレングリコールから構成されるポリエステル樹脂。
酸価:10mgKOH/g
OH価:43mgKOH/g
Tg:58℃
分子量 Mw:28200 Mn:2500
熱可塑性ポリエステル樹脂2
テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA、エチレングリコールから構成されるポリエステル樹脂。
酸価:18mgKOH/g
OH価:36mgKOH/g
Tg:59℃
分子量 Mw:32000 Mn:2600
ポリエステル樹脂3
テレフタル酸(50mol%)、ネオペンチルグリコール(25mol%)、エチレングリコール(20mol%)、ジエチレングリコール(5mol%)から構成される線状ポリエステル樹脂。
酸価:11mgKOH/g
Tg:57℃
重量平均分子量Mw:700,000
ポリエステル樹脂4
テレフタル酸(45mol%)、イソフタル酸(5mol%)、ネオペンチルグリコール(30mol%)、エチレングリコール(20mol%)から構成される線状ポリエステル樹脂。
酸価:14mgKOH/g
Tg:60℃
重量平均分子量Mw:850,000
(スチレンアクリル系樹脂)
スチレンアクリル系樹脂1
スチレン・ブチルアクリレート共重合体 CPR−100(三井化学社製)
Tg:60℃
分子量 Mw:172,000、 Mn:2,300、 Mw/Mn 75
低分子量ピーク:4200、 高分子量ピーク:327,000
スチレンアクリル系樹脂2
スチレン・ブチルアクリレート・ブチルメタクリレート共重合体 CPR−200(三井化学社製)
Tg:58℃
分子量 Mw:126,000、 Mn:3,100、 Mw/Mn 41
低分子量ピーク:5,200、 高分子量ピーク:226,000
<離型剤>
(低分子量ポリプロピレン)
ビスコール550−P(非酸化型低分子量ポリプロピレン;三洋化成工業社製)
酸価:nil 有しない
平均分子量(蒸気圧浸透圧法):4,000
ハイマーTP−32(非酸化型低分子量ポリプロピレン;三洋化成工業社製)
酸価:nil 有しない
平均分子量(蒸気圧浸透圧法):8,200
ビスコール660−P(非酸化型低分子量ポリプロピレン;三洋化成工業社製)
酸価:nil 有しない
平均分子量(蒸気圧浸透圧法):3000
(フィッシャートロプシュワックス)
パラフリントH1−N4(サゾール社製)
融点:95.8℃と111.8℃の2ピーク
25℃針入度:1.8
溶融粘度:10.6(mPa/S・120℃)
パラフリントH1−N6(サゾール社製)
融点:82.7℃と105.2℃の2ピーク
25℃針入度:1.0
溶融粘度:10.9(mPa/S・120℃)
FT−100(シェル・MDS社製)
融点:98.0℃
25℃針入度;1.0
溶融粘度:10.2(mPa/S・120℃)
カルナウバワックス(セラリカNODA製、精製カルナウバワックスNo.1(P))
融点:85℃
針入度:1.0以下
粘度:21.6(cp)(100℃)
<ロジン変性マレイン酸樹脂>
マルキード No.1(荒川化学工業社製)
酸価:12(mgKOH/g)
軟化点:126(℃)
真密度:1.12(g/cc)
マルキード No.5(荒川化学工業社製)
酸価:20(mgKOH/g)
軟化点:144(℃)
真密度:1.12(g/cc)
マルキード No.6(荒川化学工業社製)
酸価:35(mgKOH/g)
軟化点:149(℃)
真密度:1.15(g/cc)
マルキード No.32(荒川化学工業社製)
酸価:71(mgKOH/g)
軟化点:136(℃)
真密度:1.17(g/cc)
マルキード No.34(荒川化学工業社製)
酸価:265(mgKOH/g)
軟化点:144(℃)
真密度:1.11(g/cc)
マルキード No.3002(荒川化学工業社製)
酸価:90(mgKOH/g)
軟化点:175(℃)
真密度:1.17(g/cc)
実施例1
熱可塑性ポリエステル樹脂1 56.5部
荷電制御剤(3,5−ジ−tert−
ブチルサリチル酸の3価クロム塩化合物) 0.5部
磁性体(磁性粉)(戸田工業社製EPT−1000) 38.0部
低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業社製ビスコール550−P) 2.5部
ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学工業社製マルキードNo.5) 2.5部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練押出機(池貝製 PCM30)で溶融混練後押出し、冷却固化した後ハンマーミルで粗粉砕し、次いでI式ジェットミル(日本ニューマチック工業社製 IDS−2型)で微粉砕し、分級機(日本ニューマチック工業社製 DS−2型)を用いて分級して、重量平均粒径約8.5μmの分級品(トナー母粒子)を得た。この分級品と分級微粉の低分子量ポリプロピレンの熱量を測定して、(分級微粉の低分子量ポリプロピレン熱量)/(分級品の低分子量ポリプロピレン熱量)の値から低分子量ポリプロピレンの配合状態を表す分配性を評価した。結果を表2に示す。
なお、表2中、低分子量ポリプロピレンの分配性の値が1.5以下である場合、分配性は良好と評価できる。また、表2中、低分子量ポリプロピレンの熱量は、島津製作所製 示差走査熱量計DSC−60を使用して測定し、1回200℃まで昇温後、室温まで降温して熱履歴を取った後、10℃/minで昇温したときのDSC曲線を用い、低分子量ポリプロピレンの溶融ピークに相当する熱量値を低分子量ポリプロピレンの熱量とした。
次いで、上記で得られた分級品100部と疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RY200S)0.4部、チタン酸カルシウム(富士チタン社製 CT)0.8部、とをヘンシェルミキサーで混合し、篩工程を経た後トナーとした。このトナーを用いて、定着装置として熱圧ロールの構造を有する市販の複写機(キヤノン社製 NP−6550)を用いて実写テストを行い、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性(初期および100,000枚後の現像画像濃度の値とカブリ)、および現像スリーブ上での波模様(ウェーブパターン発生の有無)およびその他画像特性について評価を行った。結果を表3に示す。
なお、定着性については、定着画像を消しゴム(トンボ鉛筆 MONO)で摺擦し、〔摺擦後の画像濃度/摺擦前の画像濃度〕×100で計算した値を定着強度として表した。
また、耐オフセット性については、定着試験用画像を200枚連続複写後、5分間停止した後、白紙20枚を通紙し、白紙の紙汚れの状態により評価を行った。評価結果は、紙汚れが発生しなかったものを○、最初の数枚のみ、やや紙汚れが発生したものを△、20枚全てに紙汚れが発生したものを×とした。
なお、画像濃度はマクベス光度計を用いて行った。画像濃度は1.35以上の濃度であればよい。また、カブリはフォトボルトにて、反射率を測定することにより行った。1.5%以下が良好な値である。更に、画像試験中の感光体へのトナー付着による画像不良の評価について、画像不良の発生しなかったものを○、画像不良の発生したものを×とした。定着強度、耐オフセット性、画像濃度およびカブリの測定、感光体へのトナー付着による画像不良の評価、現像スリーブ上での波模様の有無、その他画像特性についての評価は、以下の実施例および比較例においてもすべて同様な方法で行った。
実施例2〜8および比較例1〜4
表1の実施例2〜8および比較例1〜4に記載の材料及び量を用いること以外は実施例1と同様にして、分級品およびトナーを得た。これら分級品、トナーについて実施例1と同様にして、低分子量ポリプロピレンの分配性(配合性)、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性の評価を行った。結果を表2および表3に示す。
なお、比較例については離型剤の分配性が悪いこと、スリーブ上の波模様の発生があることから、画像試験は30,000枚の印字にて中止した。
実施例9
ポリエステル樹脂3 56.5部
荷電制御剤(3,5−ジ−tert−
ブチルサリチル酸の3価クロム塩化合物) 0.5部
磁性体(磁性粉)(戸田工業社製EPT−1000) 38.0部
低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業社製ビスコール550−P) 2.5部
ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学工業社製マルキードNo.5) 2.5部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練押出機(池貝製 PCM30)で溶融混練後押出し、冷却固化した後ハンマーミルで粗粉砕し、次いでI式ジェットミル(日本ニューマチック工業社製 IDS−2型)で微粉砕し、分級機(日本ニューマチック工業社製 DS−2型)を用いて分級して、重量平均粒径約8.5μmの分級品(トナー母粒子)を得た。この分級品と分級微粉の低分子量ポリプロピレンの熱量を測定して、(分級微粉の低分子量ポリプロピレン熱量)/(分級品の低分子量ポリプロピレン熱量)の値から低分子量ポリプロピレンの配合状態を表す分配性を評価した。結果を表5に示す。
なお、表5中、低分子量ポリプロピレンの分配性の値が1.5以下である場合、分配性は良好と評価できる。また、表5中、低分子量ポリプロピレンの熱量は、島津製作所製 示差走査熱量計DSC−60を使用して測定し、1回200℃まで昇温後、室温まで降温して熱履歴を取った後、10℃/minで昇温したときのDSC曲線を用い、低分子量ポリプロピレンの溶融ピークに相当する熱量値を低分子量ポリプロピレンの熱量とした。
次いで、上記で得られた分級品100部と疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RY200S)0.4部、チタン酸カルシウム(富士チタン社製 CT)0.8部、とをヘンシェルミキサーで混合し、篩工程を経た後トナーとした。このトナーを用いて、定着装置として熱圧ロールの構造を有する市販の複写機(キヤノン社製 NP−6550)を用いて実写テストを行い、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性(初期および100,000枚後の現像画像濃度の値とカブリ)、および現像スリーブ上での波模様(ウェーブパターン発生の有無)およびその他画像特性について評価を行った。結果を表6に示す。
実施例10〜16および比較例5〜8
表4の実施例10〜16および比較例5〜8に記載の材料及び量を用いること以外は実施例9と同様にして、分級品およびトナーを得た。これら分級品、トナーについて実施例9と同様にして、低分子量ポリプロピレンの分配性(配合性)、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性の評価を行った。結果を表5および表6に示す。
なお、比較例については離型剤の分配性が悪いこと、スリーブ上の波模様の発生があることから、画像試験は30,000枚の印字にて中止した。
実施例17
スチレンアクリル系樹脂1(三井化学社製CPR−100) 53.0部
荷電制御剤(ニグロシン) 2.0部
低分子量ポリプロピレン(三洋化成工業社製ビスコール550−P) 2.0部
ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学工業社製マルキードNo.5) 2.0部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練押出機(池貝製 PCM30)で溶融混練後押出し、冷却固化した後ハンマーミルで粗粉砕し、次いでI式ジェットミル(日本ニューマチック工業社製 IDS−2型)で微粉砕し、分級機(日本ニューマチック工業社製 DS−2型)を用いて分級して、重量平均粒径約8.5μmの分級品(トナー母粒子)を得た。この分級品と分級微粉の低分子量ポリプロピレンの熱量を測定して、(分級微粉の低分子量ポリプロピレン熱量)/(分級品の低分子量ポリプロピレン熱量)の値から低分子量ポリプロピレンの配合状態を表す分配性を評価した。結果を表8に示す。
なお、表8中、低分子量ポリプロピレンの分配性の値が1.5以下である場合、分配性は良好と評価できる。また、表8中、低分子量ポリプロピレンの熱量は、島津製作所製 示差走査熱量計DSC−60を使用して測定し、1回200℃まで昇温後、室温まで降温して熱履歴を取った後、10℃/minで昇温したときのDSC曲線を用い、低分子量ポリプロピレンの溶融ピークに相当する熱量値を低分子量ポリプロピレンの熱量とした。
次いで、上記で得られた分級品100部と疎水性シリカ(日本アエロジル社製 R−972)0.4部、チタン酸カルシウム(富士チタン社製 CT)1.0部、とをヘンシェルミキサーで混合し、篩工程を経た後トナーとした。このトナーを用いて、定着装置として熱圧ロールの構造を有する市販の複写機(キヤノン社製 イメージランナーIR−600)を用いて実写テストを行い、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性(初期および50,000枚後の現像画像濃度の値とカブリ)、および現像スリーブ上での波模様(ウェーブパターン発生の有無)およびその他画像特性について評価を行った。結果を表9に示す。
実施例18〜24および比較例9〜12
表4の実施例18〜24および比較例9〜12に記載の材料及び量を用いること以外は実施例17と同様にして、分級品およびトナーを得た。これら分級品、トナーについて実施例17と同様にして、低分子量ポリプロピレンの分配性(配合性)、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性の評価を行った。結果を表8および表9に示す。
なお、比較例については離型剤の分配性が悪いこと、スリーブ上の波模様の発生があることから、画像試験は30,000枚の印字にて中止した。
実施例25
熱可塑性ポリエステル樹脂1 56.5部
荷電制御剤(3,5−ジ−tert−
ブチルサリチル酸の3価クロム塩化合物) 0.5部
磁性体(磁性粉)(戸田工業社製EPT−1000) 38.0部
パラフリントH1−N4(サゾール社製) 2.5部
ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学工業社製マルキードNo.5) 2.5部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練押出機(池貝製 PCM30)で溶融混練後押出し、冷却固化した後ハンマーミルで粗粉砕し、次いでI式ジェットミル(日本ニューマチック工業社製 IDS−2型)で微粉砕し、分級機(日本ニューマチック工業社製 DS−2型)を用いて分級して、重量平均粒径約8.5μmの分級品(トナー母粒子)を得た。この分級品と分級微粉のフィッシャートロプシュワックスの熱量を測定して、(分級微粉のフィッシャートロプシュワックス熱量)/(分級品のフィッシャートロプシュワックス熱量)の値からフィッシャートロプシュワックスの配合状態を表す分配性を評価した。結果を表11に示す。
なお、表11中、フィッシャートロプシュワックスの分配性の値が1.5以下である場合、分配性は良好と評価できる。また、表11中、フィッシャートロプシュワックスの熱量は、島津製作所製 示差走査熱量計DSC−60を使用して測定し、1回200℃まで昇温後、室温まで降温して熱履歴を取った後、10℃/minで昇温したときのDSC曲線を用い、フィッシャートロプシュワックスの溶融ピークに相当する熱量値をフィッシャートロプシュワックスの熱量とした。
次いで、上記で得られた分級品100部と疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RY200S)0.4部、チタン酸カルシウム(富士チタン社製 CT)0.8部、とをヘンシェルミキサーで混合し、篩工程を経た後トナーとした。このトナーを用いて、定着装置として熱圧ロールの構造を有する市販の複写機(キヤノン社製 NP−6080)を用いて実写テストを行い、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性(初期および100,000枚後の現像画像濃度の値とカブリ)、および現像スリーブ上での波模様(ウェーブパターン発生の有無)およびその他画像特性について評価を行った。結果を表12に示す。
実施例26〜33および比較例13〜16
表10の実施例26〜33および比較例13〜16に記載の材料及び量を用いること以外は実施例25と同様にして、分級品およびトナーを得た。これら分級品、トナーについて実施例25と同様にして、フィッシャートロプシュワックスの分配性(配合性)、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性の評価を行った。結果を表11および表12に示す。
なお、比較例については離型剤の分配性が悪いこと、スリーブ上の波模様の発生があることから、画像試験は30,000枚の印字にて中止した。
実施例34
ポリエステル樹脂3 56.5部
荷電制御剤(3,5−ジ−tert−
ブチルサリチル酸の3価クロム塩化合物) 0.5部
磁性体(磁性粉)(戸田工業社製EPT−1000) 38.0部
パラフリントH1−N4(サゾール社製) 2.5部
ロジン変性マレイン酸樹脂(荒川化学工業社製マルキードNo.5) 2.5部
上記材料をヘンシェルミキサーで混合した後、二軸混練押出機(池貝製 PCM30)で溶融混練後押出し、冷却固化した後ハンマーミルで粗粉砕し、次いでI式ジェットミル(日本ニューマチック工業社製 IDS−2型)で微粉砕し、分級機(日本ニューマチック工業社製 DS−2型)を用いて分級して、重量平均粒径約8.5μmの分級品(トナー母粒子)を得た。この分級品と分級微粉のフィッシャートロプシュワックスの熱量を測定して、(分級微粉のフィッシャートロプシュワックス熱量)/(分級品のフィッシャートロプシュワックス熱量)の値からフィッシャートロプシュワックスの配合状態を表す分配性を評価した。結果を表14に示す。
なお、表14中、フィッシャートロプシュワックスの分配性の値が1.5以下である場合、分配性は良好と評価できる。また、表14中、フィッシャートロプシュワックスの熱量は、島津製作所製 示差走査熱量計DSC−60を使用して測定し、1回200℃まで昇温後、室温まで降温して熱履歴を取った後、10℃/minで昇温したときのDSC曲線を用い、フィッシャートロプシュワックスの溶融ピークに相当する熱量値をフィッシャートロプシュワックスの熱量とした。
次いで、上記で得られた分級品100部と疎水性シリカ(日本アエロジル社製 RY200S)0.4部、チタン酸カルシウム(富士チタン社製 CT)0.8部、とをヘンシェルミキサーで混合し、篩工程を経た後トナーとした。このトナーを用いて、定着装置として熱圧ロールの構造を有する市販の複写機(キヤノン社製 NP−6080)を用いて実写テストを行い、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性(初期および100,000枚後の現像画像濃度の値とカブリ)、および現像スリーブ上での波模様(ウェーブパターン発生の有無)およびその他画像特性について評価を行った。結果を表15に示す。
実施例35〜41および比較例17〜20
表13の実施例35〜41および比較例17〜20に記載の材料及び量を用いること以外は実施例34と同様にして、分級品およびトナーを得た。これら分級品、トナーについて実施例34と同様にして、フィッシャートロプシュワックスの分配性(配合性)、トナーの定着性、耐オフセット性、現像性の評価を行った。結果を表14および表15に示す。
なお、比較例については離型剤の分配性が悪いこと、スリーブ上の波模様の発生があることから、画像試験は30,000枚の印字にて中止した。
表1〜15から、静電荷像現像用トナーに、酸価が40mgKOH/g以下であるロジン変性マレイン酸樹脂を添加、含有させることにより、ポリスチレン系樹脂のみならず従来低分子量ポリプロピレン成分およびフィッシャートロプシュワックス成分との相溶性が悪く、これら成分のトナー中における均一分散が難しかった、アルコール成分としてビスフェノールA誘導体を使用せず、ネオペンチルグリコール、エチレングリコール等を用いるポリエステル樹脂を初めとするポリエステル樹脂などにおいても、等しく低分子量ポリプロピレン成分またはフィッシャートロプシュワックス成分のトナー中での均一分配、配合が可能となることが分かる。低分子量ポリプロピレン成分およびフィッシャートロプシュワックス成分がトナー中に均一に分配、配合されていることから、分級微粉の組成とトナー母粒子の組成とに差が少なく、このためトナーの分級の際に回収された分級微粉のリサイクルも容易にできる。さらに、トナー中の低分子量ポリプロピレンまたはフィッシャートロプシュワックスの存在状態が均一であることによると考えられるが、離型剤として低分子量ポリピロピレンまたはフィッシャートロプシュワックスを含有するトナーに酸価が40mgKOH/g以下であるロジン変性マレイン酸樹脂を添加、含有させることにより得られた本発明のトナーは、耐久性、耐刷性に優れ、かつ画像特性も十分満足の行く品質の優れたトナーとなることも分かる。