JP5028638B1 - 地熱利用構造および地熱熱交換器埋設構造 - Google Patents
地熱利用構造および地熱熱交換器埋設構造 Download PDFInfo
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Abstract
【解決手段】地盤に埋設される、内部に熱交換媒体が流通可能な2以上の地熱熱交換器と、上記熱交換媒体の熱エネルギーと直接または間接に熱交換可能な2以上の熱施設とを備え、上記熱施設として、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を低下させることが可能な吸熱施設と、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を上昇させることが可能な放熱施設とを備え、上記吸熱施設が一の地熱熱交換器と直接または間接に熱交換可能に連結されており、上記放熱施設が他の地熱熱交換器と直接または間接に熱交換可能に連結されており、上記吸熱施設に連結された地熱熱交換器が、地中において吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器となり、上記放熱施設に連結された地熱熱交換器が、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器となり、適切な位置関係で、上記放熱系統器および上記吸熱系統器を埋設する。
【選択図】図1
Description
特許文献3には、従来の地熱交換システムでは、地中と熱交換を行った水を直接利用する場合と、ヒートポンプを介して温度制御を行った水を利用する場合のそれぞれに専用の熱交換用埋設管を用意するのが一般であったため熱交換用埋設管の数が増大してコストがかかり熱交換用埋設管の埋設工事に要する日数も長くなるという問題があったところ、従来技術3により、熱交換用埋設管が複数系統設けられ、冷暖房機器が複数系統設けられ、それ等の間で熱伝達を行う熱伝達経路が複数系統設けられた地熱交換システムにおいて、複数系統設けられた熱交換用埋設管、冷暖房機器及び熱伝達経路を利用に応じて選択手段により適宜選択して効率的に運用することが出来るようになったとの記載がなされている。具体的には、従来技術3によれば、従来例のように、地中と熱交換を行った熱交換媒体を直接利用する場合と、ヒートポンプを介して温度制御を行った熱交換媒体を利用する場合のそれぞれに専用の熱交換用埋設管を用意する必要がなく、熱交換用埋設管の数を削減することが出来、コストを低減して熱交換用埋設管の埋設工事に要する日数も短縮することが出来ること、また、前記熱伝達経路選択手段は熱交換媒体の流通を制御する開閉弁または熱交換媒体を送り出すポンプで構成することが出来、前記熱伝達経路はヒートポンプを介在した流通経路と熱交換媒体を直接伝達する流通経路の少なくとも2種類の熱伝達方式で構成することが出来、前記冷暖房機器はファンコイルユニットと輻射熱パネルの少なくとも2種類の冷暖房方式で構成することが出来ることが記載されている。
例えば、複数系統の熱交換用埋設管を備える従来技術3においても、当該複数系統の熱交換用埋設管の1つに対し、冷暖房機器のファンコイルユニットが選択され、また、他の熱交換用埋設管に対し、冷暖房器の床冷暖房パネルが選択されていることから、一利用時において、上記温エネルギーか上記冷エネルギーのいずれか一方を利用するものであることは明らかである。
(1)地盤に埋設される、内部に熱交換媒体が流通可能な2以上の水平型の地熱熱交換器と、上記熱交換媒体の熱エネルギーと直接または間接に熱交換可能な2以上の熱施設とを備え、上記熱施設として、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を低下させることが可能な吸熱施設と、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を上昇させることが可能な放熱施設とを備え、上記吸熱施設が一の水平型の地熱熱交換器と直接または間接に熱交換可能に連結されており、上記放熱施設が他の水平型の地熱熱交換器と直接または間接に熱交換可能に連結されており、上記吸熱施設に連結された水平型の地熱熱交換器が、地中において吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器となり、上記放熱施設に連結された水平型の地熱熱交換器が、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器となり、下記(I)〜(III)の少なくともいずれかを可能とする位置関係で、上記放熱系統器および上記吸熱系統器が埋設されていることを特徴とする地熱利用構造、
(I)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合う。
(II)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度が、上記吸熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(III)上記吸熱系統器からの吸熱により下降する地盤温度が、上記放熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(2)建造物基礎構造下方の地盤を含む地盤領域に埋設される、内部に熱交換媒体が流通可能な2以上の水平型の地熱熱交換器と、上記熱交換媒体の熱エネルギーと直接または間接に熱交換可能な2以上の熱施設とを備え、上記熱施設として、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を低下させることが可能な吸熱施設と、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を上昇させることが可能な放熱施設とを備え、上記吸熱施設が一の水平型の地熱熱交換器と直接または間接に熱交換可能に連結されており、上記放熱施設が他の水平型の地熱熱交換器と直接または間接に地熱交換可能に連結されており、上記吸熱施設に連結された水平型の地熱熱交換器が、地中において吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器となり、上記放熱施設に連結された水平型の地熱熱交換器が、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器となり、下記(I)〜(III)の少なくともいずれかを可能とする位置関係で、上記放熱系統器および上記吸熱系統器が埋設されていることを特徴とする地熱利用構造、
(I)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合う。
(II)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度が、上記吸熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(III)上記吸熱系統器からの吸熱により下降する地盤温度が、上記放熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(3)上記建造物基礎構造が、地表面に対し略水平方向に連続的または断続的に延伸する面構造を有し、上記面構造下面と地盤とに接する位置に埋設される発泡樹脂板を備えることを特徴とする上記(2)に記載の地熱利用構造、
(4)内部に熱交換媒体が流通可能な水平型の地熱熱交換器が2以上埋設される地熱熱交換器埋設構造であって、上記水平型の地熱熱交換器として、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器と吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器とを備え、上記放熱系統器における放熱と上記吸熱系統器における吸熱は、同時に実施することが可能であり、且つ、下記(I)〜(III)の少なくともいずれかを可能とする位置関係で、上記放熱系統器および上記吸熱系統器が埋設されていることを特徴とする地熱熱交換器埋設構造、
(I)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、
上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合う。
(II)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度が、上記吸熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(III)上記吸熱系統器からの吸熱により下降する地盤温度が、上記放熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(5)建造物基礎構造下方の地盤を含む地盤領域において、内部に熱交換媒体が流通可能な水平型の地熱熱交換器が2以上埋設される地熱熱交換器埋設構造であって、上記水平型の地熱熱交換器として、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器と吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器とを備え、上記放熱系統器における放熱と上記吸熱系統器における吸熱は、同時に実施することが可能であり、且つ、下記(I)〜(III)の少なくともいずれかを可能とする位置関係で、上記放熱系統器および上記吸熱系統器が埋設されていることを特徴とする地熱熱交換器埋設構造、
(I)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、
上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合う。
(II)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度が、上記吸熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(III)上記吸熱系統器からの吸熱により下降する地盤温度が、上記放熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(6)上記建造物基礎構造が、地表面に対し略水平方向に連続的または断続的に延伸する面構造を有し、上記面構造下面と地盤とに接する位置に埋設される発泡樹脂板を備えることを特徴とする上記(5)に記載の地熱熱交換器埋設構造、
を要旨とするものである。
即ち、本願発明は、地熱熱交換器として、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器と吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器とを備え、これらによる放熱と吸熱とを、同時に実施することが可能である上、少なくとも(I)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合うか、(II)上記放熱系統からの放熱により上昇する地盤温度が、上記吸熱系統器の周囲の地盤温度に干渉するか、(III)上記吸熱系統からの放熱により下降する地盤温度が、上記放熱系統器の周囲の地盤温度に干渉するよう構成されている。したがって、放熱系統器の周囲の地盤の温度が、該放熱系統器の放熱作用により上昇する傾向にある場合であっても、吸熱系統器による吸熱作用により、周囲の地盤温度が下げられるので、地中熱の過度の上昇を防止することが可能である。また逆に、吸熱系統器の周囲の地盤温度が、該吸熱系統器の吸熱作用により下降する傾向にある場合であっても、放熱系統器による放熱作用により、周囲の地盤温度が上げられるので、地盤の温度の過度の低下を防止することが可能である。したがって、効率よく持続的に地中熱との交換を実施することができる。
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。図1は、本発明の地熱熱交換器埋設構造および地熱利用構造の一実施態様を示す説明図である。尚、以下において、本発明の地熱熱交換器埋設構造および地熱利用構造をまとめて本発明という場合がある。
本発明の地熱熱交換器埋設構造3は、2つの地熱熱交換器1、地熱熱交換器2を備える。地熱熱交換器1および地熱熱交換器2は、いずれか一方が地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器であり、他方が地中において吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器である。地熱熱交換器1、地熱熱交換器2とは、上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合う位置関係において埋設されている。地熱熱交換器1、地熱熱交換器2の内部には、熱交換媒体が流通可能である。
切り替え弁10は、熱交換媒体の流通方向を熱施設9または9’に切り替えることができる限りにおいて、三方弁以外の切り替え手段を適宜選択してよい。また、切り替え弁の設置位置は、地熱熱交換器とこれに接続される熱施設との接続を、他の熱施設との接続に切り替えが可能な範囲において任意に決定してよい。
そして、熱施設8を冷房の態様で使用する場合(即ち、熱施設8が放熱施設であるとき)には、これに連結される地熱熱交換器1は、放熱系統器となるため、地熱熱交換器2は、熱施設9(即ち、吸熱施設)との連結を選択することによって、吸熱系統器として作用させることができる。季節が転じて、熱施設8を暖房の態様で使用する場合(即ち、熱施設8が吸熱施設であるとき)には、これに連結される地熱熱交換器1は、吸熱系統器となるため、地熱熱交換器2は、熱施設9’(即ち、放熱施設)との連結に切り替えることによって、吸熱系統器として作用させることができる。
したがって本発明の建造物基礎構造は、ベタ基礎に限定されず、例えば、基礎スラブと杭体とを備える杭基礎など種々の基礎構造であってよく、例えば上記基礎スラブが面構造と理解されるため、杭体部分を除いた領域であって上記基礎スラブの下面に接して発泡樹脂板を埋設してよい。また、それ以外の場合であって、上述する面構造と理解される構造の下面に接して発泡樹脂盤を埋設してよい。
即ち、上記態様によれば、放熱系統器における放熱作用によって採熱された冷エネルギーと、吸熱系統器における吸熱作用によって採熱された温エネルギーとが、いずれも熱施設によって利用可能であり、幅広い地熱利用を可能とするとともに、放熱系統器と吸熱系統器との周囲の地盤温度が干渉しあって、熱交換により地熱利用の持続性かつ効率を向上させることができる。
上記態様によれば、吸熱系統器周囲の地盤の温度が低下して熱交換の効率を低下させることを防止するために、一般的には廃棄物である温排水、あるいは温排気を、有効に利用することができる。たとえば寒冷地などにおいては、特に冬場の暖房施設における熱エネルギー獲得が重要なところ、上述のとおり温排水や温排気を使用して、吸熱系統器における吸熱作用を持続的かつ高効率に行うことが可能となり、熱エネルギーの有効利用、環境への配慮のいずれにおいても優れる。もちろん、上記態様において、放熱施設として温排水路および/または温排気路ではなく、例えば、冷凍庫などのような冷エネルギーを必要とする他の熱施設が選択されてもよい。
つまり、第一の態様は、例えば夏に、一方の地熱熱交換器Aが放熱系統器として作用し、他方の地熱熱交換器Bが吸熱系統器として作用し、冬においても、一方の地熱熱交換器Aが放熱系統器として作用し、他方の地熱熱交換器Bが吸熱系統器として作用する態様である。
また第二の態様は、地熱熱交換器と連結される熱施設の切り替えあるいは熱施設の吸熱作用と放熱作用との変更(例えば熱施設の利用が、冷房から暖房に変更されるなど)によって、一方の地熱熱交換器Aが吸熱系統器として作用し、他方の地熱熱交換器Bが放熱系統器として作用するよう、季節によって放熱と吸熱とが切り替えられる態様である。
図2に、杭基礎構造が採用される参考例の一態様の説明図を示す。参考例である地熱熱交換器埋設構造13は、2つの地熱熱交換器11、地熱熱交換器12を備える。地熱熱交換器11、地熱熱交換器12は、杭基礎構造17における杭体16に螺旋状に巻きつけられて設置されていること以外は、上述する地熱熱交換器1および地熱熱交換器2と同様に、いずれか一方が地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器であり、他方が地中において吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器である。杭基礎構造17は、基礎スラブ14、基礎スラブ14の下面において所望の領域に設けられた杭頭15および、杭頭15と上端が結合され垂直方向に伸長する杭体16から構成されている。基礎スラブ14が、面構造となり、該面構造である基礎スラブ14の下面に接して発泡樹脂板18が埋設されている。
次に図3を用いて、本発明の異なる態様を説明する。本発明は、2以上の地熱熱交換器を備え、例えば図3に示す本発明の地熱熱交換器埋設構造34のごとく、3つの地熱熱交換器を備えていてもよい。
地熱熱交換器埋設構造34は、地熱熱交換器31、32、33を備え、地熱熱交換器31は、ヒートポンプ40を介して、建造物35内の温熱施設(即ち吸熱施設)である給湯設備41、41’、43に間接的に連結されている。したがって、地熱熱交換器31は、吸熱系統器である。
また、地熱熱交換器32は、建造物からの温排気が流通する温排気路53と直接に連結されており、温排気が熱交換媒体として直接流通する地熱熱交換器であって、放熱系統器である。建造物35は給気口51から外気が取り入れられ、室内で暖められた温排気は換気口52から排気される代わりに、温排気路53に流通し、そのまま地熱熱交換器32を流通しながら地中において放熱し、その後、排気される。
また地熱熱交換器33は、温排水路45を流通する温排水が、温排水槽46にためられ、温排水槽46に引き込まれた地熱熱交換器33と熱交換をして温度が低下した後、排水路49を通って排水溝50に排水される。温排水が地熱熱交換器33内で放熱することにより、地熱熱交換器33内を流通する熱交換媒体は温排水槽46内において採熱することができ、採熱された温熱エネルギーを地中において放熱可能であるため、放熱系統器である。以上のとおり、給湯施設を吸熱施設とし、これに直接または間接に連結される地熱熱交換器を吸熱系統器とし、一方、温排水路および/または温排気路を放熱施設とし、これに直接または間接に連結される地熱熱交換器を放熱系統器とする本発明の地熱利用構造54が構成される。図3を用いて説明する本発明の実施態様3は、建造物内外のエネルギー利用の循環が非常に効率的であり、無駄のない地熱利用構造を提供することができる。ただし上記説明は、上述する実施態様3の変形として、地熱熱交換器31が、ヒートポンプ40を介して、他の熱施設に連結されることを除外するものではない。
また、本発明の地熱熱交換器埋設構造の異なる実施態様としては、本発明における2以上の地熱熱交換器を備える地熱熱交換器埋設構造において、第一の地熱熱交換器を熱施設である冷暖房機等のように吸熱・放熱のいずれも作用可能な熱施設に直接または間接に接続し、第二の地熱熱交換器を給湯機等の吸熱施設に直接または間接に接続し、第三の地熱熱交換器を冷凍庫等の放熱施設に直接または間接に接続して、本発明の地熱利用構造を構成してもよい。
そして第一の地熱熱交換器に接続される熱施設を放熱施設(即ち冷房等)として使用し、第一の地熱熱交換器を放熱系統器として熱交換する場合には、第二の地熱熱交換器を吸熱系統器として、これに接続される吸熱施設(即ち給湯機等)と熱交換を実施する。このとき、第三の地熱熱交換器とこれに接続される放熱施設(即ち冷蔵庫等)とによる熱交換は、休止してもよいし、第一の地熱熱交換器および第二の地熱熱交換器それぞれによる熱交換の妨げにならない程度に熱交換を実施していてもよい。
一方、第一の地熱熱交換器に接続される熱施設を吸熱施設(即ち暖房等)として使用し、第一の地熱熱交換器を吸熱系統器として熱交換する場合には、第三の地熱熱交換器を放熱系統器として、これに接続される放熱施設(即ち冷蔵庫等)と熱交換を実施する。このとき、第二の地熱熱交換器とこれに接続される吸熱施設(即ち給湯機等)とによる熱交換は、休止してもよいし、第一の地熱熱交換器および第三の地熱熱交換器それぞれによる熱交換の妨げにならない程度に熱交換を実施していてもよい。
本発明において用いられる地熱熱交換器は、従来公知の水平型の地熱熱交換器を適宜選択して用いることができる。本発明における水平型の地熱熱交換器は、内部に熱交換媒体が流通可能であり、地熱熱交換器内に流通する熱交換媒体と、地中に埋設された該地熱熱交換器の周囲の地熱と、が熱交換可能なものであり、また、外部の熱施設と上記熱交換媒体とにおいての熱交換が可能である。
本発明において「水平型の地熱熱交換器」とは、地盤面に対して垂直に埋設される杭などを利用した垂直型の地熱熱交換器と区別される地熱熱交換器である。
水平型の地熱熱交換器の代表的な例としては、熱交換媒体が内部において流通可能な管状のパイプによって構成されるものが挙げられる。上記パイプは、樹脂性であってもよいし、ステンレス、アルミ、鋼、または銅などの金属材料により形成されたものであってもよい。ただし、金属性のパイプには、腐食の問題、継ぎ目からの熱交換媒体の漏れの問題、あるいは地盤形状が変形したときに破断しやすいなどの問題があるため、この観点からは、樹脂性のパイプが望ましい。
一方、上記パイプの全体の長さは、所望の地盤との熱交換量などから決定される。パイプの全体とは、パイプが一本で構成されている場合には、当該パイプの全長をいい、パイプがヘッダーより複数に分岐している場合には、分岐したパイプの長さの総和をいう。もし、建造物の基礎構造の面積内に、所望のパイプの長さが収まらないなどの場合には、2以上の水平型の地熱熱交換器を地盤面に対して平行方向に重ねて埋設してもよい。あるいは基礎構造に連続する地盤被覆用コンクリートを設け、基礎構造からはみ出して、上記地盤被覆用コンクリートの下に水平型の地熱熱交換器、あるいはその一部を埋設することによって、必要なパイプの長さを確保してもよい。
本発明の参考例において「垂直型の地熱熱交換器」とは、地盤面に対し、略垂直方向に伸長するタイプの地熱熱交換器を含み、上記水平型の地熱熱交換器と区別される。例えば、地盤面に対してそれ自体が垂直に埋設されるタイプ、杭内部垂直方向に内蔵されるタイプ、杭外面に沿って垂直方向に設置または螺旋状に撒きつけられて垂直方向に伸長するよう設置されたタイプなどが挙げられるがこれに限定されない。
垂直型の地熱熱交換器の代表的な例としては、熱交換媒体が内部において流通可能な管状のパイプによって構成されるものが挙げられる。上記パイプは、上述する水平型の地熱熱交換器と同様のものを用いることができるため、ここでは説明を割愛する。
一方、上記パイプの全体の長さは、所望の地盤との熱交換量などから決定される。パイプの長さは、パイプが一本で構成されているか、ヘッダーにより分岐しているか、あるいは、略直線的に垂直方向に伸長するか、杭などに沿って螺旋状に撒きつけられながら垂直方向に伸長するかによってさまざまであり、特段限定されるものではない。一般的には、地盤表面より10m以上の深さまで上記パイプが到達していることによって、安定した熱交換が得られやすく望ましい。ただし、面構造下面に接して発泡樹脂盤を埋設する態様の本発明においては、地盤表面が10m未満の深さであっても地盤温度が安定しやすいため、垂直型の地熱熱交換器の先端を、地盤表面から10m以上の深さまで到達させなくても、良好な熱交換を得ることが可能である。上記発泡樹脂盤の埋設する効果をさらに充分に得るために、建造物の基礎構造に連続する地盤被覆用コンクリートを設け、該建造物基礎構造下に埋設される垂直型の地熱熱交換器に加え、該建造物基礎構造からはみ出して、上記地盤被覆用コンクリートの下にも垂直型の地熱熱交換器を確保してもよい。
本発明における地熱熱交換器を流通する熱交換媒体は特に制限されず、地熱熱交換器内を流通し、周囲の地盤に対し放熱または吸熱作用を発揮して、温エネルギーまたは冷エネルギーを採熱することが可能な熱交換媒体であればよく、例えば空気などの気体、あるいは水、不凍液、オイルなどの液体のいずれであってもよい。また、本発明は、地熱熱交換器として吸熱系統器と放熱系統器とを備えるが、用いられる全ての地熱熱交換器において同一の熱交換媒体が使用されてもよいし、地熱熱交換器ごとに、あるいは、吸熱系統器と放熱系統器とによって、異なる熱交換媒体を流通させてもよい。
本発明における建造物基礎構造は、建造物の基礎として実施されるものであれば、特に限定されず、適宜選択することができる。建造物構造下方の地盤を含む地盤領域に埋設される、内部に熱交換媒体が流通する2以上の地熱熱交換器を備える本発明は、地熱熱交換器を埋設するための専用の土地を確保する必要がなく、土地の有効活用を図ることができる。例えば、本発明における熱施設として、該建造物内に設けられる熱施設を選択することによって、建造物と、該建造物の基礎構造と、該基礎構造下方に埋設される地熱熱交換器とによって1つの有効な熱交換システムが構築される。もちろん、本発明の地熱利用構造は、建造物、あるいは建造物基礎構造とは関係せず、建造物外における融雪施設と冷凍施設とをそれぞれ熱施設として選択し、これらち2系統の地熱熱交換器それぞれとを直接または間接に熱交換可能に連結して地熱利用構造を構築してもよい。
上記ベタ基礎は、建造物の基礎構造として知られるベタ基礎として理解される基礎構造であれば、適宜選択して実施することができる。より詳細に述べれば、建造物の下面略全面に相当する面積を含む地盤を必要量だけ掘り、そこに鉄筋を配筋しコンクリートを流し込んで作られる基礎構造であって、鉄筋コンクリート面全面で建造物の荷重を分散し支持する構造を主体とする基礎構造が一般的である。ベタ基礎は、ベタ基礎の主体自体が面構造と理解することができる。
上記杭基礎は、建造物の基礎構造として知られる杭基礎として理解される基礎構造であって、少なくとも杭体と、基礎スラブを備える杭基礎であれば、適宜選択して実施することができる。杭基礎においては、基礎スラブが本発明における面構造と理解される。より詳細に述べれば、建造物の下面に位置する地盤において、適宜決定された位置に、杭体を埋設し、且つ、地盤の表層を必要だけ掘り下げ、上記杭体と直接または間接に結合される基礎スラブが構築される杭基礎構造であればよい。
尚、図2では、杭基礎が採用される本発明の態様において、杭体に2つの地熱熱交換器が螺旋状に巻きつけられた態様を示したが、本発明はこれに限定されず、杭基礎が採用された本発明において、地熱熱交換器として水平型の地熱熱交換器を選択してもよい。
より具体的には、上記基礎スラブとは、建造物下面略全面において杭基礎構造の一部として形成されるスラブ構造を意味し、所謂、コンクリートスラブ、あるいは土間コンクリートを含む。また基礎スラブには、任意で地中梁を設けることもできる。また本発明において、杭体とは、公知の杭基礎構造において採用される杭体であればいずれのものであってもよい。より具体的には、上記杭体は、支持杭体および摩擦杭体のいずれかであってもよいし、あるいはこれらの組合せであってもよい。すなわち、本発明において、上記基礎スラブとこれに接する発泡樹脂板とを構成することによって、その下方に位置する地盤温度が安定させることが重要であり、これを可能とする態様であれば、適宜選択して実施することができる。
本発明における発泡樹脂板は、上述する面構造の下面の少なくとも一部に接して地盤中に埋設される部材である。従来は、表層地盤の温度は、一年を通じ、外気温度に左右されて温度の高低差が大きく、またその地盤温度がベタ基礎を通じて、室内温度にも影響を及ぼしていた。これに対し、本発明の発泡樹脂板を採用する態様においては、建造物基礎構造における面構造の下面に接して発泡樹脂板を積層することにより、外気の温度(室内温度)が地盤に伝達されるのを遮ることができ、地盤温度を、通年を通して安定に維持する効果を発揮することができる。上記効果を望ましく得るためには、上記面構造の下面が直接地盤に接する量を減らし、上記面構造と地盤との間において、より広い面積で発泡樹脂板が敷設されていることが望ましく、具体的には、上記面構造下面面積の70%以上に接して発泡樹脂板が設けられていることが望ましく、80%以上であることがさらに望ましく、90%以上であることがより望ましく、実質的に上記面構造の下面略全面に発泡樹脂板上面が接して敷設されていることが最も望ましい。尚、上記面構造の下面全面に発泡樹脂板の上面が接して敷設されない場合には、建造物支持や耐震性能において不十分な場合があるので、その点に留意する必要がある。
尚、上記面構造にさらに支持杭体が併用されている場合などには、基礎構造に必要な構造部分は除いて発泡樹脂板が上記面構造下面と接して埋設されていればよい。
また上記発泡樹脂板は、上記観点から、熱伝導率λは、0.02〜0.05(W/m・K)の範囲にあることが好ましい。ただしこれに限定されるものではない。また、本発明においてさらなる付加的な効果である、耐震性能をも発揮させるためには、建造物の荷重を勘案して適切な圧縮強度の発泡樹脂板を使用することがさらに望ましい。上記圧縮強度の望ましい値は、建造物の荷重によって著しくことなるために一概には言えないが、一般的には、10kNから70kNであることが好ましい。上記圧縮強度は、JIS K7220に示される短期圧縮強度の計測方法を用いて計測することができる。
3 地熱熱交換器埋設構造
4 ベタ基礎
5 発泡樹脂板
6 ヒートポンプ
7 熱循環路
8、9 熱施設
10 切り替え弁
11、12 地熱熱交換器
13 地熱熱交換器埋設構造
14 基礎スラブ
15 杭頭
16 杭体
17 杭基礎構造
18 発泡樹脂板
19 地熱利用構造
21、24 ヒートポンプ
22、25 熱循環路
23、26 熱施設
27 地熱利用構造
31、32、33 地熱熱交換器
34 地熱熱交換器埋設構造
35 建造物
36 ベタ基礎
37 発泡樹脂板
40 ヒートポンプ
41、41’、43 給湯設備
45 温排水路
46 温排水槽
50 排水溝
51 給気口
52 換気口
53 温排気路
54 地熱利用構造
55 地中梁
Claims (6)
- 地盤に埋設される、内部に熱交換媒体が流通可能な2以上の水平型の地熱熱交換器と、
上記熱交換媒体の熱エネルギーと直接または間接に熱交換可能な2以上の熱施設とを備え、
上記熱施設として、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を低下させることが可能な吸熱施設と、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を上昇させることが可能な放熱施設とを備え、
上記吸熱施設が一の水平型の地熱熱交換器と直接または間接に熱交換可能に連結されており、上記放熱施設が他の水平型の地熱熱交換器と直接または間接に熱交換可能に連結されており、
上記吸熱施設に連結された水平型の地熱熱交換器が、地中において吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器となり、
上記放熱施設に連結された水平型の地熱熱交換器が、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器となり、
下記(I)〜(III)の少なくともいずれかを可能とする位置関係で、上記放熱系統器および上記吸熱系統器が埋設されていることを特徴とする地熱利用構造。
(I)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合う。
(II)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度が、上記吸熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(III)上記吸熱系統器からの吸熱により下降する地盤温度が、上記放熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。 - 建造物基礎構造下方の地盤を含む地盤領域に埋設される、内部に熱交換媒体が流通可能な2以上の水平型の地熱熱交換器と、
上記熱交換媒体の熱エネルギーと直接または間接に熱交換可能な2以上の熱施設とを備え、
上記熱施設として、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を低下させることが可能な吸熱施設と、熱交換媒体と熱交換して該熱交換媒体の温度を上昇させることが可能な放熱施設とを備え、
上記吸熱施設が一の水平型の地熱熱交換器と直接または間接に熱交換可能に連結されており、上記放熱施設が他の水平型の地熱熱交換器と直接または間接に地熱交換可能に連結されており、
上記吸熱施設に連結された水平型の地熱熱交換器が、地中において吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器となり、
上記放熱施設に連結された水平型の地熱熱交換器が、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器となり、
下記(I)〜(III)の少なくともいずれかを可能とする位置関係で、上記放熱系統器および上記吸熱系統器が埋設されていることを特徴とする地熱利用構造。
(I)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合う。
(II)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度が、上記吸熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(III)上記吸熱系統器からの吸熱により下降する地盤温度が、上記放熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。 - 上記建造物基礎構造が、地表面に対し略水平方向に連続的または断続的に延伸する面構造を有し、
上記面構造下面と地盤とに接する位置に埋設される発泡樹脂板を備えることを特徴とする請求項2に記載の地熱利用構造。 - 内部に熱交換媒体が流通可能な水平型の地熱熱交換器が2以上埋設される地熱熱交換器埋設構造であって、
上記水平型の地熱熱交換器として、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器と吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器とを備え、
上記放熱系統器における放熱と上記吸熱系統器における吸熱は、同時に実施することが可能であり、且つ、
下記(I)〜(III)の少なくともいずれかを可能とする位置関係で、上記放熱系統器および上記吸熱系統器が埋設されていることを特徴とする地熱熱交換器埋設構造。
(I)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、
上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合う。
(II)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度が、上記吸熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(III)上記吸熱系統器からの吸熱により下降する地盤温度が、上記放熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。 - 建造物基礎構造下方の地盤を含む地盤領域において、内部に熱交換媒体が流通可能な水平型の地熱熱交換器が2以上埋設される地熱熱交換器埋設構造であって、
上記水平型の地熱熱交換器として、地中において放熱作用を発揮可能な放熱系統器と吸熱作用を発揮可能な吸熱系統器とを備え、
上記放熱系統器における放熱と上記吸熱系統器における吸熱は、同時に実施することが可能であり、且つ、
下記(I)〜(III)の少なくともいずれかを可能とする位置関係で、上記放熱系統器および上記吸熱系統器が埋設されていることを特徴とする地熱熱交換器埋設構造。
(I)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度と、
上記吸熱系統器による吸熱により下降する地盤温度と、が互いに干渉し合う。
(II)上記放熱系統器からの放熱により上昇する地盤温度が、上記吸熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。
(III)上記吸熱系統器からの吸熱により下降する地盤温度が、上記放熱系統器の周囲の地盤温度に干渉する。 - 上記建造物基礎構造が、地表面に対し略水平方向に連続的または断続的に延伸する面構造を有し、
上記面構造下面と地盤とに接する位置に埋設される発泡樹脂板を備えることを特徴とする請求項5に記載の地熱熱交換器埋設構造。
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