本発明の実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰返さない。
[実施の形態1]
図1は、この発明の実施の形態1による電気素子の構成を示す斜視図である。図1を参照して、この発明の実施の形態1による電気素子100は、誘電体層1〜10と、導体板11〜14,21〜25と、陽極電極30,40と、陰極電極50,60とを備える。
誘電体層1〜10は、基板の面内方向である幅方向DR1に、順次、積層される。導体板11〜14は、それぞれ、誘電体層2,3間、誘電体層4,5間、誘電体層6,7間および誘電体層8,9間に配置され、導体板21〜25は、それぞれ、誘電体層1,2間、誘電体層3,4間、誘電体層5,6間、誘電体層7,8間および誘電体層9,10間に配置される。その結果、誘電体層1〜9は、それぞれ、導体板21,11,22,12,23,13,24,14,25を支持する。
陽極電極30,40および陰極電極50,60は、電気素子100の底面100Aと、側面100B,100Cの一部とに設けられる。そして、陽極電極30は、導体板11〜14の一方端に接続され、陽極電極40は、導体板11〜14の他方端に接続される。陰極電極50は、導体板21〜25の第1の部分で導体板21〜25に接続され、陰極電極60は、導体板21〜25の第2の部分で導体板21〜25に接続される。そして、2つの陰極電極50,60は、電気素子100の長さ方向DR2において2つの陽極電極30,40間に設けられる。
このように、電気素子100は、導体板11〜14,21〜25が誘電体層1〜10を挟んで交互に配置された構造からなり、2個の陽極電極30,40と、2個の陰極電極50,60とを有する。
誘電体層1〜10の各々は、たとえば、チタン酸バリウム(BaTiO3)からなり、陽極電極30,40、導体板11〜14,21〜25および陰極電極50,60の各々は、たとえば、ニッケル(Ni)からなる。
図2は、図1に示す誘電体層2および導体板11の寸法を説明するための図である。図2を参照して、誘電体層2は、略平板形状からなり、長さ方向DR2(=導体板11を電流が流れる方向)に長さL1を有し、長さ方向DR2に直交する幅方向DR1に幅W1を有する。長さL1は、たとえば、15mmに設定され、幅W1は、たとえば、13mmに設定される。なお、誘電体層2は、たとえば、25μmの厚みを有する。
導体板11は、略平板形状からなり、長さL1および幅W2を有する。そして、幅W2は、幅W1よりも狭く、たとえば、11mmに設定される。また、導体板11は、たとえば、10μm〜20μmの範囲の厚みを有する。
導体板11は、略長方形の形状からなり、長方形の同じ長辺側に引出部111,112を有する。引出部111は、長さ方向DR2において導体板11の一方端側に設けられ、引出部112は、長さ方向DR2において導体板11の他方端側に設けられる。そして、引出部111,112の各々は、幅方向DR1において幅W3を有し、長さ方向DR2において長さL2を有する。幅W3は、たとえば、0.5mmに設定され、長さL2は、たとえば、1mmに設定される。また、引出部111と引出部112との間隔は、L3に設定される。間隔L3は、たとえば、13mmに設定される。
なお、導体板12〜14の各々は、図2に示す導体板11と同じ形状および同じ寸法を有する。
図3は、図1に示す他の誘電体層1および他の導体板21の寸法を説明するための図である。図3を参照して、誘電体層1は、略平板形状からなり、誘電体層2と同じ長さL1および同じ幅W1を有する。そして、誘電体層1は、たとえば、25μmの厚みを有する。
導体板21は、略平板形状からなり、長さL1よりも短い長さL4と、幅W2とを有する。長さL4は、たとえば、13mmに設定される。そして、導体板21は、たとえば、10μm〜20μmの範囲の厚みを有する。
導体板21は、引出部211,212を有する。引出部211は、長さL2および幅W3を有し、導体板21の一方端21aから距離L5の位置に設けられる。また、引出部212は、長さL2および幅W3を有し、導体板21の他方端21bから距離L5の位置に設けられる。その結果、引出部211と引出部212との間隔は、L6に設定される。距離L5は、たとえば、2mmに設定される。その結果、間隔L6は、7mmになる。
なお、導体板22〜25の各々は、図3に示す導体板21と同じ形状および同じ寸法を有する。また、誘電体層3〜10の各々は、図2に示す誘電体層2および図3に示す誘電体層1と同じ形状および同じ寸法を有する。
図4は、隣接する2つの導体板の平面図である。図4を参照して、導体板11および導体板21を1つの平面へ投影すると、導体板11および21は、重複部分20を有する。そして、導体板11と導体板21との重複部分20は、長さL4および幅W2を有する。導体板11と導体板22との重複部分、導体板12と導体板22との重複部分、導体板12と導体板23との重複部分、導体板13と導体板23との重複部分、導体板13と導体板24との重複部分、導体板14と導体板24との重複部分、および導体板14と導体板25との重複部分も、重複部分20と同じ長さL4および同じ幅W2を有する。そして、実施の形態1においては、W2≦L4になるように、長さL4および幅W2が設定される。
図5は、電気素子100の一方の導体板11〜14と陽極電極30,40との接続方法を説明するための概念図である。図5を参照して、陽極電極30,40は、幅方向DR1に帯状に配置される。そして、4枚の導体板11〜14の4個の引出部111は、陽極電極30に接続され、4枚の導体板11〜14の4個の引出部112は、陽極電極40に接続される。その結果、4枚の導体板11〜14と陽極電極30との接続部分である4個の引出部111は、幅方向DR1に配置され、4枚の導体板11〜14と陽極電極40との接続部分である4個の引出部112は、幅方向DR1に配置される。
陽極電極30が電源に接続され、陽極電極40が電気負荷に接続された場合、直流電流は、各導体板11〜14を矢印のように流れる。
図6は、電気素子100の他方の導体板21〜25と陰極電極50,60との接続方法を説明するための概念図である。図6を参照して、陰極電極50,60は、幅方向DR1に帯状に配置される。そして、5枚の導体板21〜25の5個の引出部211は、陰極電極50に接続され、5枚の導体板21〜25の5個の引出部212は、陰極電極60に接続される。その結果、5枚の導体板21〜25と陰極電極50との接続部分である5個の引出部211は、幅方向DR1に配置され、5枚の導体板21〜25と陰極電極60との接続部分である5個の引出部212は、幅方向DR1に配置される。
陰極電極50が電源に接続され、陰極電極60が電気負荷に接続された場合、直流電流は、各導体板21〜25を矢印のように流れる。
導体板11〜14は、図5に示す態様で陽極電極30,40に接続され、導体板21〜25は、図6に示す態様で陰極電極50,60に接続される。その結果、導体板21/誘電体層2/導体板11、導体板11/誘電体層3/導体板22、導体板22/誘電体層4/導体板12、導体板12/誘電体層5/導体板23、導体板23/誘電体層6/導体板13、導体板13/誘電体層7/導体板24、導体板24/誘電体層8/導体板14、および導体板14/誘電体層9/導体板25は、陽極電極30,40と陰極電極50,60との間に並列に接続された8個のコンデンサを構成する。
この場合、各コンデンサの電極面積は、隣接する2つの導体板の重複部分20(図4参照)の面積に等しい。
図1に示す電気素子100は、次の方法によって製造される。長さL1および幅W1を有する誘電体層1(BaTiO3)となるグリーンシートの表面に、長さL4および幅W2を有する領域にNiペーストをスクリーン印刷により塗布し、誘電体層1の表面にNiからなる導体板21を形成する。
同じようにして、BaTiO3からなる誘電体層3,5,7,9を作製し、その作製した誘電体層3,5,7,9上にそれぞれNiからなる導体板22〜25を形成する。
引き続いて、長さL1および幅W1を有する誘電体層2(BaTiO3)となるグリーンシートの表面に、長さL1および幅W2を有する領域にNiペーストをスクリーン印刷により塗布し、誘電体層2の表面にNiからなる導体板11を形成する。
同じようにして、BaTiO3からなる誘電体層4,6,8を作製し、その作製した誘電体層4,6,8上にNiからなる導体板12〜14を形成する。
さらに、誘電体層10(BaTiO3)となるグリーンシートを作製する。
その後、導体板21,11,22,12,23,13,24,14,25がそれぞれ形成された誘電体層1〜9のグリーンシートおよび誘電体層10のグリーンシートを幅方向DR1に、順次、積層する。これによって、陽極電極30,40に接続される導体板11〜14および陰極電極50,60に接続される導体板21〜25は、交互に積層される。
さらに、Niペーストをスクリーン印刷によって塗布し、陽極電極30,40および陰極電極50,60を形成する。その後、1350℃の焼成温度で焼成して電気素子100が完成する。
なお、電気素子100の作製においては、グリーンシートを使用せず、誘電体のペーストを印刷して乾燥させ、その上に導体を印刷し、さらに、誘電体のペーストを印刷して同様な工程を行い、積層していく方法もある。
図7は、図1に示す電気素子100の機能を説明するための斜視図である。図7を参照して、電気素子100に電流を流す場合、陰極電極50,60を接地電位に接続し、導体板11〜14に流れる電流が導体板21〜25に流れる電流と逆向きになるように電流を電気素子100に流す。
たとえば、電流が陽極電極30から陽極電極40の方向へ流れるように電流を電気素子100に流す。そうすると、電流は、陽極電極30から引出部111を介して導体板11へ流れ、導体板11を矢印70の方向へ流れ、さらに、引出部112を介して陽極電極40へ流れる。
また、導体板11を流れる電流のリターン電流は、陰極電極60から引出部212を介して導体板21に流れ、導体板21を矢印70と反対方向である矢印80の方向へ流れ、さらに、引出部211を介して陰極電極50へ流れる。
電流は、導体板12〜14の各々についても、導体板11と同じように流れ、導体板22〜25の各々についても、導体板21と同じように流れる。
そうすると、導体板11〜14を流れる電流I1と、導体板21〜25を流れる電流I2とは、大きさが等しく、かつ、向きが逆方向の電流となる。
図8は、導線を流れる電流によって生成される磁束密度を説明するための図である。また、図9は、2つの導線間において磁気的干渉が生じた場合の実効インダクタンスを説明するための図である。
図8を参照して、無限に長い直線導線に電流Iが流れているとき、導線から距離aの位置に存在する点Pに生じる磁束密度Bは、
によって表される。ただし、μ0は、真空の透磁率である。
また、図8に示す導線が2本になり、お互いに磁気的な干渉が生じたときには、2本の導線の自己インダクタンスをそれぞれL11,L22とし、結合係数をk(0<k<1)とし、2本の導線の相互インダクタンスをL12とすると、相互インダクタンスL12は、次式によって表される。
ここで、L11=L22の場合、相互インダクタンスL12は、次式になる。
図9を参照して、導線Aと導線Bとがリード線Cによって接続され、大きさが等しく、かつ、向きが逆方向の電流が導線A,Bに流れる場合を想定すると、導線Aの実効インダクタンスL11effectiveは、次式によって表される。
このように、2本の導線A,B間に磁気的干渉が生じる場合、導線Aの実効インダクタンスL11effectiveは、導線Bとの間の相互インダクタンスL12によって導線Aの自己インダクタンスL11よりも小さくなる。これは、導線Aに流れる電流Iが生成する磁束φAの方向が導線Bに流れる電流−Iが生成する磁束φBの方向と逆向きになり、導線Aに流れる電流Iが生成する実効的な磁束密度が小さくなるからである。
電気素子100においては、上述したように、導体板11は、導体板21,22から25μmの位置に配置され、導体板12は、導体板22,23から25μmの位置に配置され、導体板13は、導体板23,24から25μmの位置に配置され、導体板14は、導体板24,25から25μmの位置に配置されるため、導体板11と導体板21,22との間、導体板12と導体板22,23との間、導体板13と導体板23,24との間および導体板14と導体板24,25との間に磁気的干渉が生じ、導体板11〜14を流れる電流I1は、導体板21〜25を流れる電流I2と大きさが等しく、かつ、向きが逆方向であるため、導体板11〜14の実効インダクタンスは、導体板11〜14と導体板21〜25との間の相互インダクタンスによって導体板11〜14の自己インダクタンスよりも小さくなる。
電気素子100全体の実効キャパシタンスをCとすると、電気素子100のインピーダンスZsは、次式によって表される。
電気素子100においては、上述したように、並列に接続された8個のコンデンサが形成されるので、1個のコンデンサが形成される場合に比べ、実効キャパシタンスCは大きくなる。
したがって、電気素子100においては、キャパシタンスが支配的な低周波数領域においては、実効キャパシタンスCが大きくなることによってインピーダンスZsが低下し、インダクタンスが支配的な高周波数領域においては、上述した実効インダクタンスLの低下によってインピーダンスZsが低下する。
その結果、電気素子100は、広い周波数領域において、相対的に低いインピーダンスZsを有する。
図10は、図1に示す電気素子100が配置される基板の斜視図である。図10を参照して、基板200は、誘電体201と、導体板202〜205と、ビアホール206,207とを含む。誘電体201は、略板状形状からなる。導体板202,203は、同じ厚みを有し、誘電体201の表面201Aに所定の間隔を隔てて配置される。そして、導体板202,203の各々は、電気素子100の幅と同じ幅を有する。導体板204,205は、同じ厚みを有し、誘電体201の裏面201Bに所定の間隔を隔てて配置される。
ビアホール206は、導体板202の近傍に配置される。そして、ビアホール206は、誘電体201を貫通し、一方端が導体板204に接続されるとともに、他方端の端面が導体板202の表面202Aに略一致するように他方端が誘電体201の表面201Aから突出している。ビアホール207は、導体板203の近傍に配置される。そして、ビアホール207は、誘電体201を貫通し、一方端が導体板205に接続されるとともに、他方端の端面が導体板203の表面203Aに略一致するように他方端が誘電体201の表面201Aから突出している。
図11は、図1に示す電気素子100が基板200上に配置された状態を示す概念図である。電気素子100は、基板200上に配置される。この場合、陽極電極30は、導体板202に接続され、陽極電極40は、導体板203に接続され、陰極電極50は、ビアホール206を介して導体板204に接続され、陰極電極60は、ビアホール207を介して導体板205に接続される。
上述したように、導体板202は、電気素子100の幅に等しい幅を有するため、陽極電極30が導体板202に接続されることによって、電気素子100を構成する4枚の導体板11〜14の4個の引出部111と導体板202との距離は、等しい距離(=陽極電極30の厚み)に設定される。また、導体板203は、電気素子100の幅に等しい幅を有するため、陽極電極40が導体板203に接続されることによって、電気素子100を構成する4枚の導体板11〜14の4個の引出部112と導体板203との距離は、等しい距離(=陽極電極40の厚み)に設定される。
電気素子100が基板200上に実装される場合、導体板202は、電源(図示せず)に接続され、導体板203は、電気負荷(図示せず)に接続される。その結果、電源から電気素子100に供給された電流Iは、導体板202から陽極電極30を介して電気素子100の導体板11〜14に流れ、導体板11〜14を長さ方向DR2に流れる。そして、電流Iは、陽極電極40を介して導体板203に流れ、電気負荷に供給される。
また、電気負荷からのリターン電流Irは、導体板205に供給され、ビアホール207および陰極電極60を介して電気素子100の導体板21〜25を流れ、陰極電極50およびビアホール206を介して導体板204に流れ、電源へ戻る。
そうすると、4枚の導体板11〜14の4個の引出部111と導体板202との距離は、等しいので、電源から供給された電流Iは、同じ抵抗で導体板202から4枚の導体板11〜14へ供給される。そして、4枚の導体板11〜14は、陽極電極30,40間に並列に接続されているので、4枚の導体板11〜14には、等しい電流(=I/4)が流れる。したがって、1枚の導体板11に流れる電流を決めれば、4枚の導体板11〜14全体に流れる電流は、1枚の導体板11に流れる電流を積層数倍(=4倍)にした電流になり、電気素子100全体に流れる電流を容易に決定できる。
電気素子100が基板200上に実装される場合、導体板202,203は、信号線として機能するため、電気素子100において、4枚の導体板11〜14および5枚の導体板21〜25は、陽極電極30が接続される信号線(=導体板202)および陽極電極40が接続される信号線(=導体板203)の幅方向(=DR1)に積層されていることになる。
また、電気素子100において、4枚の導体板11〜14および5枚の導体板21〜25は、基板200の法線方向が導体板11〜14,21〜25の幅方向と略平行になるように積層されていることになる。
さらに、電気素子100において、4枚の導体板11〜14と陽極電極30との4個の接続部分(=4個の引出部111)は、基板200の面内方向に配列され、4枚の導体板11〜14と陽極電極40との4個の接続部分(=4個の引出部112)は、基板200の面内方向に配列されていることになる。
図12は、図1に示す電気素子100の使用状態を示す概念図である。図12を参照して、電気素子100は、電源120と、CPU(Central Processing Unit)130との間に接続される。電源120は、正極端子121および負極端子122を有する。CPU130は、正極端子131および負極端子132を有する。
導体板202(信号線)は、一方端が電源120の正極端子121に接続され、他方端が電気素子100の陽極電極30に接続される。導体板204は、一方端がビアホール208を介して電源120の負極端子122に接続され、他方端がビアホール206を介して電気素子100の陰極電極50に接続される。
導体板203(信号線)は、一方端が電気素子100の陽極電極40に接続され、他方端がCPU130の正極端子131に接続される。導体板205は、一方端がビアホール207を介して電気素子100の陰極電極60に接続され、他方端がビアホール209を介してCPU130の負極端子132に接続される。
そうすると、電源120の正極端子121から出力された電流Iは、導体板202(信号線)を介して電気素子100の陽極電極30に流れ、電気素子100内を、4個の引出部111、導体板11〜14、4個の引出部112および陽極電極40の順に流れる。そして、電流Iは、陽極電極40から導体板203(信号線)および正極端子131を介してCPU130へ流れ込む。
これによって、電流Iは、電源電流としてCPU130へ供給される。そして、CPU130は、電流Iによって駆動され、電流Iと同じ大きさのリターン電流Irを負極端子132から出力する。
そうすると、リターン電流Irは、ビアホール209を介して導体板205に流れ、導体板205からビアホール207および陰極電極60を介して電気素子100の導体板21〜25に流れる。そして、リターン電流Irは、陰極電極50からビアホール206を介して導体板204に流れ、導体板204からビアホール208および負極端子122を介して電源120に流れる。
その結果、電気素子100において、電流Iが導体板11〜14を電源120側からCPU130側へ流れ、リターン電流Irが導体板21〜25をCPU130側から電源120側へ流れるため、電気素子100の実効インダクタンスLは、上述したように相対的に大きく低下する。また、電気素子100は、並列に接続された8個のコンデンサを含むので、電気素子100の実効キャパシタンスCは、大きくなる。したがって、電気素子100のインピーダンスZsは小さくなる。
そして、CPU130は、電源120から電気素子100を介して供給された電流Iによって駆動され、不要な高周波電流を発生する。この不要な高周波電流は、ビアホール209、導体板205およびビアホール207を介して電気素子100へ漏れるが、電気素子100は、上述したように、低いインピーダンスZsを有するため、不要な高周波電流は、電気素子100およびCPU130からなる回路を流れ、電気素子100から電源120側への漏洩が抑制される。
CPU130の動作周波数は、高周波数側へシフトする傾向にあり、1GHz程度での動作も想定される。このような高い動作周波数の領域においては、電気素子100のインピーダンスZsは、主に実効インダクタンスLによって決定され、実効インダクタンスLは、上述したように相対的に大きく低下するので、電気素子100は、高い動作周波数で動作するCPU130が発生する不要な高周波電流をCPU130の近傍に閉じ込めるノイズフィルタとして機能する。
上述したように、電気素子100は、電源120とCPU130との間に接続され、CPU130が発生する不要な高周波電流をCPU130の近傍に閉じ込めるノイズフィルタとして機能する。そして、電気素子100が電源120とCPU130との間に接続される場合、導体板11〜14,21〜25は、伝送線路として接続される。すなわち、陽極電極30,40に接続された導体板11〜14と、陰極電極50,60に接続された導体板21〜25とを用いて構成されるコンデンサが端子を介して伝送線路に接続されるのではなく、導体板11〜14,21〜25が伝送線路の一部として接続される。したがって、導体板11〜14は、電源120から出力された電流Iが電源120側からCPU130側へ流れるための導体であり、導体板21〜25は、リターン電流IrがCPU130側から電源120側へ流れるための導体である。その結果、等価直列インダクタンスを極力排除できる。
また、電気素子100においては、陽極電極30,40に接続された導体板11〜14に流れる電流を、陰極電極50,60に接続された導体板21〜25に流れる電流と逆向きに設定することによって、導体板11〜14と導体板21〜25との間に磁気的干渉を生じさせ、導体板11〜14の自己インダクタンスを導体板11〜14と導体板21〜25との間の相互インダクタンスによって減少させる。そして、これによって、電気素子100の実効インダクタンスLを減少させ、電気素子100のインピーダンスZsを低下させる。
このように、この発明においては、コンデンサの電極を構成する導体板11〜14,21〜25を伝送線路の一部として接続することを第1の特徴とし、陽極電極30,40に接続された導体板11〜14と、陰極電極50,60に接続された導体板21〜25とに逆向きの電流を流して導体板11〜14と導体板21〜25との間に磁気的干渉を生じさせることによって導体板11〜14の実効インダクタンスを導体板11〜14の自己インダクタンスよりも小さくし、それによって電気素子100のインピーダンスZsを小さくすることを第2の特徴とし、電源電流を流す導体板11〜14の各々が接地電位に接続される2つの導体板(導体板21,22、導体板22,23、導体板23,24および導体板24,25)によって挟まれることを第3の特徴とする。
さらに、導体板11〜14,21〜25の積層方向を導体板202,203(信号線)の幅方向とすることを第4の特徴とする。
この第2の特徴は、CPU130からのリターン電流Irを電気素子100の内部に配置された導体板21〜25に流す構成を採用することによって実現される。
そして、第1の特徴によって等価直列インダクタンスを極力排除でき、第2の特徴によって不要な高周波電流をCPU130の近傍に閉じ込めることができる。また、第3の特徴によって電気素子100のノイズが外部へ出るのを抑制できるとともに、電気素子100が外部からのノイズに影響されるのを抑制できる。さらに、第4の特徴によって、1枚の導体板11に流れる電流を決めれば、4枚の導体板11〜14全体に流れる電流は、1枚の導体板11に流れる電流を積層数倍(=4倍)にした電流になり、電気素子100全体に流れる電流を容易に決定できる。
図13は、図1に示す電気素子100に用いられる一方の導体板の他の例を示す概略図である。実施の形態1による電気素子100は、導体板11〜14に代えて図13に示す導体板11Aを備えていてもよい。
図13を参照して、導体板11Aは、長さL1および幅W4の略板状形状からなり、導体板11と同じ引出部111,112を有する。そして、幅W4は、たとえば、12mmに設定される。この場合、幅W3と幅W4との和は、誘電体層2の幅W1に等しい。このように、導体板11Aは、図2に示す導体板11の幅W2を幅W4へ広くしたものであり、その他は、導体板11と同じである。
電気素子100は、導体板11〜14に代えて、各々が導体板11Aからなる4枚の導体板を備えていてもよい。
図14は、図1に示す電気素子100に用いられる一方の導体板のさらに他の例を示す概略図である。実施の形態1による電気素子100は、導体板11〜14に代えて図14に示す導体板11Bを備えていてもよい。
図14を参照して、導体板11Bは、長さL1および幅W5の略板状形状からなり、引出部111〜114を有する。そして、幅W5は、たとえば、11mmに設定される。引出部113,114の各々は、長さL2および幅W3を有する。すなわち、4個の引出部111〜114は、同じ寸法を有する。そして、導体板11Bにおいては、2×W3+W5=W1が成立する。このように、導体板11Bは、図2に示す導体板11の幅W2を幅W5に変え、引出部111,112に加え、2個の引出部113,114を追加したものであり、その他は、導体板11と同じである。
電気素子100は、導体板11〜14に代えて、各々が導体板11Bからなる4枚の導体板を備えていてもよい。
図15は、図1に示す電気素子100に用いられる一方の導体板のさらに他の例を示す概略図である。実施の形態1による電気素子100は、導体板11〜14に代えて図15に示す導体板11Cを備えていてもよい。
図15を参照して、導体板11Cは、長さL1および幅W5の略板状形状からなり、引出部112,113を有する。このように、導体板11Cは、図14に示す導体板11Bの2個の引出部111,114を削除したものであり、その他は、導体板11Bと同じである。その結果、導体板11Cは、長方形の対角線上に2個の引出部112,113を有する。
電気素子100は、導体板11〜14に代えて、各々が導体板11Cからなる4枚の導体板を備えていてもよい。
図16は、図1に示す電気素子100に用いられる一方の導体板のさらに他の例を示す概略図である。実施の形態1による電気素子100は、導体板11〜14に代えて図16に示す導体板11Dを備えていてもよい。
図16を参照して、導体板11Dは、長さL1および幅W5の略板状形状からなり、引出部111,114を有する。このように、導体板11Dは、図14に示す導体板11Bの2個の引出部112,113を削除したものであり、その他は、導体板11Bと同じである。その結果、導体板11Cは、長方形の対角線上に2個の引出部111,114を有する。
電気素子100は、導体板11〜14に代えて、各々が導体板11Dからなる4枚の導体板を備えていてもよい。
図17は、図15に示す導体板11Cが用いられたときの電気素子100の斜視図である。また、図18は、図15に示す導体板11Cが用いられたときの電気素子100の他の斜視図である。導体板11〜14の各々が図15に示す導体板11Cからなる場合、電気素子100は、陽極電極30に代えて陽極電極30Aを備える。陽極電極30Aは、電気素子100の側面100B,100Cの一部および上面100Dに帯状に形成される(図17参照)。
図17に示す電気素子100が基板200に実装される場合、基板200は、導体板202(信号線)に代えて導体板2020(信号線)を備える。そして、導体板2020は、電気素子100の幅と同じ幅を有し、第1から第3の部分2021〜2023からなる。第1の部分2021は、基板200の誘電体201の表面201Aに形成され、第2の部分2022は、第1の部分2021に略垂直に形成され、第3の部分2023は、第1の部分2021に略平行であり、かつ、第2の部分2022に略垂直に形成される。そして、導体板2020の第3の部分2023が電気素子100の陽極電極30Aに接続される(図18参照)。
これによって、電気素子100の4枚の導体板11〜14(各々が導体板11Cからなる)の4個の引出部113と陽極電極30Aとの距離は、等しくなり、導体板2020(信号線)に供給された電流Iは、等しい抵抗を介して4枚の導体板11〜14(各々が導体板11Cからなる)に供給される。
したがって、図15に示す導体板11Cを用いた場合にも、1枚の導体板11(=11C)に流れる電流を決めれば、4枚の導体板11(=11C)〜14(=11C)全体に流れる電流は、1枚の導体板11(=11C)に流れる電流を積層数倍(=4倍)にした電流になり、電気素子100全体に流れる電流を容易に決定できる。
図19は、図16に示す導体板11Dが用いられたときの電気素子100の斜視図である。また、図20は、図16に示す導体板11Dが用いられたときの電気素子100の他の斜視図である。導体板11〜14の各々が図16に示す導体板11Dからなる場合、電気素子100は、陽極電極40に代えて陽極電極40Aを備える。陽極電極40Aは、電気素子100の側面100B,100Cの一部および上面100Dに帯状に形成される(図19参照)。
図19に示す電気素子100が基板200に実装される場合、基板200は、導体板203(信号線)に代えて導体板2030(信号線)を備える。そして、導体板2030は、電気素子100の幅と同じ幅を有し、第1から第3の部分2031〜2033からなる。第1の部分2031は、基板200の誘電体201の表面201Aに形成され、第2の部分2032は、第1の部分2031に略垂直に形成され、第3の部分2033は、第1の部分2031に略平行であり、かつ、第2の部分2032に略垂直に形成される。そして、導体板2030の第3の部分2033が電気素子100の陽極電極40Aに接続される(図20参照)。
これによって、電気素子100の4枚の導体板11〜14(各々が導体板11Dからなる)の4個の引出部114と陽極電極40Aとの距離は、等しくなり、4枚の導体板11〜14(各々が導体板11Dからなる)に供給された電流Iは、等しい抵抗を介して導体板2030(信号線)に供給される。
したがって、図16に示す導体板11Dを用いた場合にも、1枚の導体板11(=11D)に流れる電流を決めれば、4枚の導体板11(=11D)〜14(=11D)全体に流れる電流は、1枚の導体板11(=11D)に流れる電流を積層数倍(=4倍)にした電流になり、電気素子100全体に流れる電流を容易に決定できる。
なお、導体板11〜14の各々が図14に示す導体板11Bからなる場合、電気素子100は、陽極電極30に代えて図17に示す陽極電極30Aを備えていてもよく、陽極電極40に代えて図19に示す陽極電極40Aを備えていてもよい。この場合、電気素子100は、ぞれぞれ、図18および図20に示す実装方法によって基板200へ実装される。
上記においては、誘電体層1〜10は、全て同じ誘電体材料(BaTiO3)により構成されると説明したが、この発明においては、これに限らず、誘電体層1〜10は、相互に異なる誘電体材料により構成されていてもよく、2種類の誘電体材料により構成されていてもよく、一般的には、1種類以上の誘電体材料により構成されていればよい。この場合、誘電体層1〜10を構成する各誘電体材料は、好ましくは、3000以上の比誘電率を有する。
そして、BaTiO3以外の誘電体材料としては、Ba(Ti,Sn)O3,Bi4Ti3O12,(Ba,Sr,Ca)TiO3,(Ba,Ca)(Zr,Ti)O3,(Ba,Sr,Ca)(Zr,Ti)O3,SrTiO3,CaTiO3,PbTiO3,Pb(Zn,Nb)O3,Pb(Fe,W)O3,Pb(Fe,Nb)O3,Pb(Mg,Nb)O3,Pb(Ni,W)O3,Pb(Mg,W)O3,Pb(Zr,Ti)O3,Pb(Li,Fe,W)O3,Pb5Ge3O11およびCaZrO3等を用いることができる。
また、上記においては、陽極電極30,40,30A,40A、導体板11〜14,11A,11B,11C,11D,21〜25および陰極電極50,60は、ニッケル(Ni)からなると説明したが、この発明においては、これに限らず、陽極電極30,40,30A,40A、導体板11〜14,11A,11B,11C,11D,21〜25および陰極電極50,60は、銀(Ag)、パラジウム(Pd)、銀パラジウム合金(Ag−Pd)、白金(Pt)、金(Au)、銅(Cu)、ルビジウム(Ru)およびタングステン(W)のいずれかにより構成されてもよい。
さらに、上記においては、陽極電極30,40に接続される導体板の枚数は、4枚(導体板11〜14)であり、陰極電極50,60に接続される導体板の枚数は、5枚(導体板21〜25)であると説明したが、この発明においては、これに限らず、電気素子100は、陽極電極30,40に接続されるn(nは正の整数)個の導体板と、陰極電極50,60に接続されるm(mは正の整数)個の導体板とを備えていればよい。この場合、電気素子100は、j(j=m+n)個の誘電体層を備える。陽極電極30,40に接続される導体板と、陰極電極50,60に接続される導体板とを少なくとも1枚備えていれば、磁気的干渉を生じさせることができ、実効インダクタンスを小さくできるからである。
そして、この発明においては、電気素子100に流れる電流が増加するに従って、陽極電極30,40に接続される導体板の枚数と、陰極電極50,60に接続される導体板の枚数とを増加させる。陽極電極30,40に接続される導体板および陰極電極50,60に接続される導体板が複数の導体板からなるとき、複数の導体板は、2個の陽極電極(30,40)間、または2個の陰極電極(50,60)間に並列に接続されるので、陽極電極30,40に接続される導体板の枚数と、陰極電極50,60に接続される導体板の枚数とを増加させれば、電気素子100に流れる電流を増加できるからである。
また、この発明においては、電気素子100のインピーダンスを相対的に低下させる場合、陽極電極30,40に接続される導体板の枚数と、陰極電極50,60に接続される導体板の枚数とを増加させる。陽極電極30,40に接続される導体板の枚数と、陰極電極50,60に接続される導体板の枚数とを増加させれば、並列接続されるコンデンサの個数が増加し、電気素子100の実効キャパシタンスが大きくなってインピーダンスが低下するからである。
さらに、上記においては、電気素子100は、CPU130が発生する不要な高周波電流をCPU130の近傍に閉じ込めるノイズフィルタとして用いられると説明したが、この発明においては、これに限らず、電気素子100は、コンデンサとしても使用される。電気素子100は、上述したように、並列に接続された8個のコンデンサを含むので、コンデンサとしても使用可能である。
そして、より具体的には、電気素子100は、ノートパソコン、CD−RW/DVD装置、ゲーム機、情報家電、デジタルカメラ、自動車電装用、自動車用デジタル機器、MPU周辺回路およびDC/DCコンバータ等に用いられる。
したがって、ノートパソコンおよびCD−RW/DVD装置等にコンデンサとして用いられているが、電源120とCPU130との間で使用されてCPU130が発生する不要な高周波電流をCPU130の近傍に閉じ込めるノイズフィルタの機能を有する電気素子は、この発明による電気素子100に含まれる。
[実施の形態2]
図21は、実施の形態2による電気素子の構成を示す斜視図である。図21を参照して、実施の形態2による電気素子300は、図1に示す電気素子100の導体板21〜25を導体板31〜35に代え、陰極電極50,60を陰極電極90に代えたものであり、その他は、電気素子100と同じである。
導体板31〜35は、それぞれ、誘電体層1,2間、誘電体層3,4間、誘電体層5,6間、誘電体層7,8間、および誘電体層9,10間に配置される。その結果、導体板11〜14,31〜35は、電気素子300の幅方向DR1に交互に積層される。
陰極電極90は、電気素子300の底面300Aと側面300B,300Cの一部とに帯状に形成される。そして、陰極電極90は、導体板31〜35に接続される。導体板31〜35および陰極電極90の各々は、たとえば、Niからなる。
図22は、図21に示す誘電体層1および導体板31の寸法を説明するための図である。図22を参照して、導体板31は、略平板形状からなり、長さL4および幅W2を有する。そして、導体板31は、たとえば、10μm〜20μmの範囲の厚みを有する。
導体板31は、引出部311を有する。引出部311は、長さL2および幅W3を有し、導体板31の両端31a,31bから距離L7の位置に設けられる。距離L7は、たとえば、5mmに設定される。
なお、導体板32〜35の各々は、図22に示す導体板31と同じ形状および同じ寸法を有する。
図23は、図21に示す電気素子300の他方の導体板31〜35と陰極電極90との接続方法を説明するための概念図である。図23を参照して、陰極電極90は、幅方向DR1に帯状に配置される。そして、5枚の導体板31〜35の5個の引出部311は、陰極電極90に接続される。
導体板11〜14は、図5に示す態様で陽極電極30,40に接続され、導体板31〜35は、図23に示す態様で陰極電極90に接続される。その結果、導体板31/誘電体層2/導体板11、導体板11/誘電体層3/導体板32、導体板32/誘電体層4/導体板12、導体板12/誘電体層5/導体板33、導体板33/誘電体層6/導体板13、導体板13/誘電体層7/導体板34、導体板34/誘電体層8/導体板14、および導体板14/誘電体層9/導体板35は、陽極電極30,40と陰極電極90との間に並列に接続された8個のコンデンサを構成する。
この場合、各コンデンサの電極面積は、隣接する2つの導体板の重複部分の面積に等しい。
なお、電気素子300は、図1に示す電気素子100と同じ方法によって製造される。
図24は、図21に示す電気素子300が配置される基板の斜視図である。図24を参照して、基板400は、誘電体401と、導体板402〜404と、ビアホール405とを含む。誘電体401は、略板状形状からなる。導体板402,403は、同じ厚みを有し、誘電体401の表面401Aに所定の間隔を隔てて配置される。そして、導体板402,403の各々は、電気素子300の幅と同じ幅を有する。導体板404は、誘電体401の裏面401Bに配置される。
ビアホール405は、導体板402と導体板403との略中間部に配置される。そして、ビアホール405は、誘電体401を貫通し、一方端が導体板404に接続されるとともに、他方端の端面が導体板402,403の表面402A,403Aに略一致するように他方端が誘電体401の表面401Aから突出している。
図25は、図21に示す電気素子300が基板400上に配置された状態を示す概念図である。電気素子300は、基板400上に配置される。この場合、陽極電極30は、導体板402に接続され、陽極電極40は、導体板403に接続され、陰極電極90は、ビアホール405を介して導体板404に接続される。
上述したように、導体板402は、電気素子300の幅に等しい幅を有するため、陽極電極30が導体板402に接続されることによって、電気素子300を構成する4枚の導体板11〜14の4個の引出部111と導体板402との距離は、等しい距離(=陽極電極30の厚み)に設定される。また、導体板403は、電気素子300の幅に等しい幅を有するため、陽極電極40が導体板403に接続されることによって、電気素子300を構成する4枚の導体板11〜14の4個の引出部112と導体板403との距離は、等しい距離(=陽極電極40の厚み)に設定される。
電気素子300が基板400上に実装される場合、導体板402は、電源(図示せず)に接続され、導体板403は、電気負荷(図示せず)に接続される。その結果、電源から電気素子300に供給された電流Iは、導体板402から陽極電極30を介して電気素子300の導体板11〜14に流れ、導体板11〜14を長さ方向DR2に流れる。そして、電流Iは、陽極電極40を介して導体板403に流れ、電気負荷に供給される。
そうすると、4枚の導体板11〜14の4個の引出部111と導体板402との距離は、等しいので、電源から供給された電流Iは、同じ抵抗で導体板402から4枚の導体板11〜14へ供給される。そして、4枚の導体板11〜14は、陽極電極30,40間に並列に接続されているので、4枚の導体板11〜14には、等しい電流(=I/4)が流れる。したがって、1枚の導体板11に流れる電流を決めれば、4枚の導体板11〜14全体に流れる電流は、1枚の導体板11に流れる電流を積層数倍(=4倍)にした電流になり、電気素子300全体に流れる電流を容易に決定できる。
電気素子300が基板400上に実装される場合、導体板402,403は、信号線として機能するため、電気素子300において、4枚の導体板11〜14および5枚の導体板31〜35は、陽極電極30が接続される信号線(=導体板402)および陽極電極40が接続される信号線(=導体板403)の幅方向(=DR1)に積層されていることになる。
また、電気素子300において、4枚の導体板11〜14および5枚の導体板31〜35は、基板400の法線方向が導体板11〜14,31〜35の幅方向と略平行になるように積層されていることになる。
さらに、電気素子300において、4枚の導体板11〜14と陽極電極30との4個の接続部分(=4個の引出部111)は、基板400の面内方向に配列され、4枚の導体板11〜14と陽極電極40との4個の接続部分(=4個の引出部112)は、基板400の面内方向に配列されていることになる。
図26は、実施の形態2による他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態2による電気素子は、図26に示す電気素子350であってもよい。図26を参照して、電気素子350は、図21に示す電気素子300の導体板31〜35を導体板41〜45に代え、陰極電極90を陰極電極360に代えたものであり、その他は、電気素子300と同じである。
導体板41は、誘電体層1,2間に配置され、導体板42は、誘電体層3,4間に配置され、導体板43は、誘電体層5,6間に配置される。また、導体板44は、誘電体層7,8間に配置され、導体板45は、誘電体層9,10間に配置される。その結果、導体板11〜14,41〜45は、電気素子350の幅方向DR1において交互に積層される。
陰極電極360は、陽極電極30と陽極電極40との間において、電気素子350の底面350A、側面350B,350Cおよび上面350Dに配置され、導体板41〜45に接続される。
図27は、図26に示す導体板41の斜視図である。図27を参照して、導体板41は、略平板形状からなり、長さL4および幅W2を有する。そして、導体板41は、たとえば、10μm〜20μmの範囲の厚みを有し、Niからなる。
導体板41は、引出部411,412を有する。引出部411は、導体板41の幅方向DR1における一方端側において、長さ方向DR2の両端41a,41bから距離L7の位置に配置され、引出部412は、導体板41の幅方向DR1における他方端側において、長さ方向DR2の両端41a,41bから距離L7の位置に配置される。そして、引出部411,412の各々は、長さL2および幅W3を有する。この場合、距離L7は、たとえば、5mmに設定される。
なお、導体板42〜45の各々は、図27に示す導体板41と同じ形状および同じ寸法を有し、導体板41と同じ材料からなる。
図28は、図26に示す線XXVIII−XXVIII間における電気素子350の断面図である。図28を参照して、陰極電極360は、電極361〜364からなる。電極361は、電気素子350の底面350Aに配置され、電極362は、電気素子350の側面350Bに配置され、電極363は、電気素子350の側面350Cに配置され、電極364は、電気素子350の上面350Dに配置される。
そして、電極361は、電気素子350の幅方向DR1に垂直な垂直方向DR3における導体板41〜45の一方端に接続され、電極364は、垂直方向DR3における導体板41〜45の他方端に接続される。また、電極361〜364は、導体板11〜14とは接続されない。
このように、陰極電極360は、電気素子350の底面350Aおよび上面350Dにおいて導体板41〜45に接続される。
電気素子350の他の部分は、電気素子300と同じである。
図29は、インピーダンスと周波数との関係を示す図である。また、図30は、インピーダンスと周波数との他の関係を示す図である。図29および図30において、縦軸は、インピーダンスを表し、横軸は、周波数を表す。曲線k1は、従来の電気素子におけるインピーダンスと周波数との関係を示す。曲線k2は、図21に示す電気素子300におけるインピーダンスと周波数との関係を示す。曲線k3は、図26に示す電気素子350におけるインピーダンスと周波数との関係を示す。
なお、従来の電気素子とは、2つの陽極電極に接続された導体板と、1つの陰極電極に接続された導体板とが基板の法線方向に積層された構造からなる電気素子である。
3×106[Hz]以上の周波数領域において、電気素子300のインピーダンスは、従来の電気素子のインピーダンスよりも低い(曲線k1,k2参照)。上述したように、電気素子300においては、導体板402と4枚の導体板11〜14との距離は、略等しく、導体板403と4枚の導体板11〜14との距離も、略等しい。また、ビアホール405と5枚の導体板31〜35との距離も、略等しい。
一方、従来の電気素子においては、陽極電極に接続された導体板と陰極電極に接続された導体板とが基板の法線方向に積層されているため、従来の電気素子を基板400上に配置した場合、導体板402,403と陽極電極に接続された複数の導体板との距離は、等しくなく、ビアホール405と陰極電極に接続された複数の導体板との距離も、等しくない。その結果、電流は、基板から遠ざかる方向へ流れた後に基板400から遠い側に配置された導体板に供給されるので、基板400から遠い側に配置された導体板に電流を供給するときのインピーダンスは、基板400に近い側に配置された導体板に電流を供給する場合のインピーダンスよりも大きくなる。
したがって、電気素子300のインピーダンスは、従来の電気素子のインピーダンスよりも低くなる。
また、約1×107[Hz]以上の周波数領域において、電気素子350のインピーダンスは、電気素子300のインピーダンスよりも低い(曲線k2,k3参照)。電気素子300においては、導体板31〜35は、電気素子300の底面300Aにおいてのみ陰極電極90に接続されるが、電気素子350においては、導体板41〜45は、電気素子350の底面350Aおよび上面350Dにおいて陰極電極360に接続される。したがって、導体板41〜45と陰極電極360との間のインピーダンスは、導体板31〜35と陰極電極90との間のインピーダンスよりも小さい。その結果、電気素子350のインピーダンスは、電気素子300のインピーダンスよりも小さくなる。
このように、導体板11〜14,31〜35を電気素子300の幅方向DR1に積層することによって、高周波領域における電気素子300のインピーダンスが従来の電気素子のインピーダンスよりも低下する。また、電気素子350の底面350Aおよび上面350Dにおいて導体板41〜45と陰極電極360とを接続することによって、電気素子350のインピーダンスは、電気素子300のインピーダンスよりも低下する。
したがって、実施の形態2による電気素子300,350は、高周波領域においてインピーダンスを低減させる電気素子として有効である。
なお、電気素子350は、電極361,363,364からなる陰極電極、または電極361,362,364からなる陰極電極を備えていてもよい。つまり、電気素子350の陰極電極は、電気素子350の周囲に配置されていなくてもよく、導体板41〜45の2つの引出部411,412に接続される2つの電極と、その2つの電極を相互に接続する電極とを備えていればよい。
その他は、実施の形態1と同じである。
[実施の形態3]
図31は、実施の形態3による電気素子の構成を示す斜視図である。図31を参照して、実施の形態3による電気素子500は、積層体510と、陽極電極520,530と、陰極電極540,550とを備える。
陽極電極520は、立体形状を有し、積層体510の一方の端面に設けられる。陽極電極530は、立体形状を有し、陽極電極520に対向するように積層体510の他方の端面に設けられる。陰極電極540は、陽極電極520側で積層体510の底面510Aと側面510B,510Cの一部とに設けられる。陰極電極550は、陽極電極530側で積層体510の底面510Aと側面510B,510Cの一部とに設けられる。
図32は、図31に示す積層体510の斜視図である。図32を参照して、積層体510は、誘電体層551〜560と、導体板561〜564,571〜575とを含む。誘電体層551〜560は、電気素子500の幅方向DR1および長さ方向DR2に垂直な垂直方向DR3に積層される。
導体板561〜564,571〜575の各々は、平板形状からなる。そして、導体板561〜564は、それぞれ、誘電体層552,553間、誘電体層554,555間、誘電体層556,557間および誘電体層558,559間に配置される。導体板571〜575は、それぞれ、誘電体層551,552間、誘電体層553,554間、誘電体層555,556間、誘電体層557,558間および誘電体層559,560間に配置される。その結果、誘電体層551〜559は、それぞれ、導体板571,561,572,562,573,563,574,564,575を支持する。
導体板561〜564は、長さ方向DR2において、その一方端が陽極電極520に接続され、他方端が陽極電極530に接続される。導体板571〜575は、長さ方向DR2における陽極電極520側で陰極電極540に接続され、長さ方向DR2における陽極電極530側で陰極電極550に接続される。
誘電体層551〜560の各々は、たとえば、BaTiO3からなり、陽極電極520,530、導体板561〜564,571〜575および陰極電極540,550の各々は、たとえば、Niからなる。
図33は、図32に示す誘電体層551,552および導体板571,561の寸法を説明するための図である。図33を参照して、誘電体層551,552の各々は、導体板561,571を電流が流れる長さ方向DR2に長さL1を有し、方向DR2に直交する幅方向DR1に幅W1を有し、厚さD1を有する。厚さD1は、たとえば、25μmに設定される。
導体板561は、長さL1および幅W6を有する。そして、幅W6は、たとえば、11mmに設定される。また、導体板571は、長さL8および幅W1を有する。そして、長さL8は、たとえば、13mmに設定される。さらに、導体板561,571の各々は、たとえば、10μm〜20μmの範囲の膜厚を有する。
誘電体層553〜560の各々は、図33に示す誘電体層551,552と同じ長さL1、同じ幅W1および同じ厚さD1を有する。また、導体板562〜564の各々は、図33に示す導体板561と同じ長さL1、同じ幅W6および同じ膜厚を有し、導体板572〜575の各々は、図33に示す導体板571と同じ長さL8、同じ幅W1および同じ膜厚を有する。
このように、導体板561〜564は、導体板571〜575と異なる長さおよび異なる幅を有する。これは、導体板561〜564に接続される陽極電極520,530が導体板571〜575に接続される陰極電極540,550と短絡するのを防止するためである。
図34は、隣接する2つの導体板の平面図である。図34を参照して、導体板561および導体板571を1つの平面へ投影すると、導体板561および571は、重複部分570を有する。そして、導体板561と導体板571との重複部分570は、長さL8および幅W6を有する。導体板561と導体板572との重複部分、導体板562と導体板572との重複部分、導体板562と導体板573との重複部分、導体板563と導体板573との重複部分、導体板564と導体板574との重複部分および導体板564と導体板575との重複部分も、重複部分570と同じ長さL8および同じ幅W6を有する。
図35および図36は、それぞれ、図31に示す電気素子500の第1および第2の断面図である。図35は、図31に示す線XXXV−XXXV間における電気素子500の断面図を示し、図36は、図31に示す線XXXVI−XXXVI間における電気素子500の断面図を示す。
図35を参照して、導体板571は、誘電体層551,552の両方に接し、導体板561は、誘電体層552,553の両方に接する。また、導体板572は、誘電体層553,554の両方に接し、以下、同様にして、導体板575は、誘電体層559,560の両方に接する。
陰極電極540は、導体板561〜564には接続されず、導体板571〜575に接続される(図35参照)。
陽極電極520,530は、導体板571〜575に接続されず、導体板561〜564に接続される(図36参照)。
その結果、導体板571/誘電体層552/導体板561、導体板561/誘電体層553/導体板572、導体板572/誘電体層554/導体板562、導体板562/誘電体層555/導体板573、導体板573/誘電体層556/導体板563、導体板563/誘電体層557/導体板574、導体板574/誘電体層558/導体板564、および導体板564/誘電体層559/導体板575は、陽極電極520,530と陰極電極540,550との間に並列に接続された8個のコンデンサを構成する。
この場合、各コンデンサの電極面積は、隣接する2つの導体板の重複部分570(図34参照)の面積に等しい。
電気素子500は、基板200に実装される。この場合、陽極電極520は、基板200の導体板202に接続され、陽極電極530は、基板200の導体板203に接続され、陰極電極540は、ビアホール206を介して導体板204に接続され、陰極電極550は、ビアホール207を介して導体板205に接続される。
上述したように、陽極電極520は、立体形状からなるため、陽極電極520が導体板202に接続されたときの各導体板561〜564と導体板202との間の抵抗は、4枚の導体板561〜564間で略等しい。また、導体板203は、立体形状からなるため、陽極電極520が導体板203に接続されたときの各導体板561〜564と導体板203との間の抵抗は、4枚の導体板561〜564間で略等しい。
すなわち、導体板202と導体板561〜564との距離は、4枚の導体板561〜564間で異なり、導体板203と導体板561〜564との距離は、4枚の導体板561〜564間で異なるが、陽極電極520,530が立体形状からなるため、導体板502,503と4枚の導体板561〜564との距離の相違が抵抗に反映されることがない。
電気素子500が基板200上に実装される場合、導体板202は、電源(図示せず)に接続され、導体板203は、電気負荷(図示せず)に接続される。その結果、電源から電気素子500に供給された電流Iは、導体板202から陽極電極520を介して電気素子500の導体板561〜564に流れ、導体板561〜564を長さ方向DR2に流れる。そして、電流Iは、陽極電極530を介して導体板203に流れ、電気負荷に供給される。
また、電気負荷からのリターン電流Irは、導体板205に供給され、ビアホール207および陰極電極550を介して電気素子500の導体板571〜575を流れ、陰極電極540およびビアホール206を介して導体板204に流れ、電源へ戻る。
そうすると、4枚の導体板561〜564の4個の一方端と導体板202との間の抵抗は、相互に等しいので、電源から供給された電流Iは、同じ抵抗で導体板202から4枚の導体板561〜564へ供給される。そして、4枚の導体板561〜564は、陽極電極520,530間に並列に接続されているので、4枚の導体板561〜564には、等しい電流(=I/4)が流れる。したがって、1枚の導体板561に流れる電流を決めれば、4枚の導体板561〜564全体に流れる電流は、1枚の導体板561に流れる電流を積層数倍(=4倍)にした電流になり、電気素子500全体に流れる電流を容易に決定できる。
このように、誘電体層551〜560、導体板561〜564,571〜575が基板200の法線方向(=垂直方向DR3)に積層された電気素子500においても、立体形状からなる陽極電極520,530を用いることによって、1枚の導体板561に流れる電流を決めれば、4枚の導体板561〜564全体に流れる電流は、1枚の導体板561に流れる電流を積層数倍(=4倍)にした電流になり、電気素子500全体に流れる電流を容易に決定できる。
なお、上記においては、陽極電極520,530に接続される導体板の枚数は、4枚(導体板561〜564)であり、陰極電極540,550に接続される導体板の枚数は、5枚(導体板571〜575)であると説明したが、この発明においては、これに限らず、電気素子500は、陽極電極520,530に接続されるn(nは正の整数)個の導体板と、陰極電極540,550に接続されるm(mは正の整数)個の導体板とを備えていればよい。この場合、電気素子500は、j(j=m+n)個の誘電体層を備える。陽極電極520,530に接続される導体板と、陰極電極540,550に接続される導体板とを少なくとも1枚備えていれば、磁気的干渉を生じさせることができ、実効インダクタンスを小さくできるからである。
[実施の形態4]
図37は、実施の形態4による電気素子の構成を示す斜視図である。図37を参照して、実施の形態4による電気素子600は、図1に示す電気素子100の導体板21〜25を導体板61〜65に代え、陰極電極50,60を陰極電極610に代えたものであり、その他は、電気素子100と同じである。
導体板61〜65は、それぞれ、誘電体層1,2間、誘電体層3,4間、誘電体層5,6間、誘電体層7,8間、および誘電体層9,10間に配置される。その結果、導体板11〜14,61〜65は、電気素子600の幅方向DR1に交互に積層される。
陰極電極610は、電気素子600の長さ方向DR2における陽極電極30と陽極電極40との間において電気素子600の底面600Aと側面600B,600Cの一部とに帯状に形成され、導体板61〜65に接続される。導体板61〜65および陰極電極610の各々は、たとえば、Niからなる。
図38は、図37に示す誘電体層1および導体板61の寸法を説明するための図である。図38を参照して、導体板61は、略平板形状からなり、長さL4および幅W2を有する。そして、導体板61は、たとえば、10μm〜20μmの範囲の厚みを有する。
導体板61は、引出部611を有する。引出部611は、電気素子600の幅方向DR1における導体板61の一方端側において導体板61の長さ方向DR2における両端61a,61bから距離L9の位置に配置され、長さL10および幅W3を有する。距離L9は、たとえば、1.0mmに設定される。その結果、長さL10は、11.0mmになる。
このように、導体板61は、幅方向DR1において、導体板61の一方端側に配置された引出部611を含む。
なお、導体板62〜65の各々は、図38に示す導体板61と同じ形状および同じ寸法を有する。
図39は、図37に示す2つの導体板11,61の平面図である。図39を参照して、導体板11は、長さL1を有し、引出部111,112の各々は、長さL2を有し、導体板61は、長さL4を有し、引出部611は、導体板61の両端から距離L9の位置に配置される結果、導体板11の引出部111と導体板61の引出部611との距離および導体板11の引出部112と導体板61の引出部611との距離は、L11に設定される。そして、距離L11は、(2×L11)/L1<0.18を満たすように決定され、たとえば、1.0mmに設定される。
なお、陰極電極610は、図23に示す陰極電極90と5個の導体板31〜35の5個の引出部311との接続態様と同じ接続態様で5個の導体板61〜65の5個の引出部611に接続される。また、導体板11〜14は、図5に示す態様で陽極電極30,40に接続されている。したがって、導体板61/誘電体層2/導体板11、導体板11/誘電体層3/導体板62、導体板62/誘電体層4/導体板12、導体板12/誘電体層5/導体板63、導体板63/誘電体層6/導体板13、導体板13/誘電体層7/導体板64、導体板64/誘電体層8/導体板14、および導体板14/誘電体層9/導体板65は、陽極電極30,40と陰極電極610との間に並列に接続された8個のコンデンサを構成する。この場合、各コンデンサの電極面積は、隣接する2つの導体板の重複部分の面積に等しい。
図40は、図37に示す電気素子600における1個のコンデンサの構成を示す斜視図である。図40を参照して、電気素子600においては、誘電体層2および導体板11,61は、1個のコンデンサを構成する。
陽極電極30は、導体板11の引出部111に接続され、陽極電極40は、導体板11の引出部112(図40では図示せず)に接続される。また、陰極電極610は、導体板61の引出部611に接続される。
そして、陽極電極30は、導体板11の引出部111の長さL2と同じ幅を有し、陽極電極40は、導体板11の引出部112(図40では図示せず)の長さL2と同じ幅を有する。また、陰極電極610は、導体板61の引出部611の長さL10と同じ幅を有する。その結果、陽極電極30と陰極電極610との距離および陽極電極40と陰極電極610との距離は、引出部111,112と引出部611との距離L11に等しい。
図41は、従来の電気素子の構成を示す斜視図である。図41を参照して、従来の電気素子700は、積層体710と、陽極電極720,730と、陰極電極740とを備える。
積層体710は、略直方体形状からなる。陽極電極720は、電気素子700の長さ方向DR2において積層体710の一方端に配置される。陽極電極730は、電気素子700の長さ方向DR2において積層体710の他方端に配置される。より具体的には、陽極電極720は、積層体710の底面710A、側面710B,710Cおよび上面710Dの一部と、側面710Eの全面とに配置される。また、陽極電極730は、積層体710の底面710A、側面710B,710Cおよび上面710Dの一部と、側面710Fの全面とに配置される。その結果、陽極電極720,730は、長さ方向DR2において対向して積層体710に配置される。
陰極電極740は、長さ方向DR2において陽極電極720と陽極電極730との間に配置され、電極741,742からなる。電極741は、幅方向DR1における積層体710の一方端側において、積層体710の底面710A、側面710Cおよび上面710Dの一部に帯状に形成される。また、電極742は、幅方向DR1における積層体710の他方端側において、積層体710の底面710A、側面710Bおよび上面710Dの一部に帯状に形成される。その結果、電極741,742は、幅方向DR1において対向して積層体710に配置される。
図42は、図41に示す積層体710の構成を示す斜視図である。図42を参照して、積層体710は、誘電体層751〜760と、導体板761〜764,771〜775とを含む。
誘電体層751〜760および導体板761〜764,771〜775は、幅方向DR1および長さ方向DR2に垂直な垂直方向DR3に積層される。
誘電体層751〜760は、図1に示す誘電体層1〜10と同じ材料からなり、誘電体層1〜10と同じ形状および同じ寸法を有する。導体板761〜764,771〜775は、導体板11〜14,21〜25と同じ材料からなり、導体板11〜14,21〜25と同じ厚みを有する。
導体板761〜764は、それぞれ、誘電体層752,753間、誘電体層754,755間、誘電体層756,757間および誘電体層758,759間に配置される。導体板771〜775は、それぞれ、誘電体層751,752間、誘電体層753,754間、誘電体層755,756間、誘電体層757,758間および誘電体層759,760間に配置される。その結果、誘電体層751〜759は、それぞれ、導体板771,761,772,762,773,763,774,764,775を支持する。また、導体板761〜764および導体板771〜775は、垂直方向DR3に交互に積層される。
図43は、図42に示す隣接する2つの導体板761,771の平面図である。図43を参照して、導体板761は、略長方形状からなり、長さL1および幅W2を有する。つまり、導体板761は、長さ方向DR2の全領域において幅が一定である形状からなる。
陽極電極720は、電極721〜723からなり、陽極電極730は、電極731〜733からなる。そして、陽極電極720のうち、電極721のみが導体板761の長さ方向DR2における一方の端面761Aに接続され、電極722,723は、導体板761に接続されない。同様に、陽極電極730のうち、電極731のみが導体板761の長さ方向DR2における他方の端面761Bに接続され、電極732,733は、導体板761に接続されない。
このように、陽極電極720,730は、導体板761の長さ方向DR2における端面761A,761Bのみに接続される。
導体板771は、平板形状からなり、長さL4および幅W2を有する。そして、導体板771は、引出部771A,771Bを含む。引出部771Aは、幅方向DR1における導体板771の一方端側において、長さ方向の両端771a,771bから距離L12の位置に配置される。また、引出部771Bは、幅方向DR1における導体板771の他方端側において、長さ方向の両端771a,771bから距離L12の位置に配置される。そして、引出部771A,771Bの各々は、長さL2を有する。この場合、長さL12は、1.0mmに設定される。
陰極電極740の電極741は、導体板771の引出部771Aに接続され、陰極電極740の電極742は、導体板771の引出部771Bに接続される。
導体板761,771が上述した寸法を有する結果、導体板761と陽極電極720との接続部(=端面761A)と導体板771の引出部771A,771Bとの距離および導体板761と陽極電極730との接続部(=端面761B)と導体板771の引出部771A,771Bとの距離は、相互に等しく、L13に設定される。また、陽極電極720,730と陰極電極740との距離は、距離L13よりも短い距離L14に設定される。この場合、距離L14は、距離L13から長さ方向DR2における陽極電極720,730の長さを減算した値になる。
なお、図42に示す導体板762〜764の各々は、図43に示す導体板761と同じ形状からなり、導体板761と同じ寸法を有する。また、図42に示す導体板772〜775の各々は、図43に示す導体板771と同じ形状からなり、導体板771と同じ寸法を有する。
表1は、従来の電気素子700の長さL、陽極電極720,730の長さL−Anode、陰極電極740の長さL−Cathode、電気素子700の幅W、クリアランス、幅Wに対する長さLの比L/W、全長Lに対する陰極電極740の長さの割合および全長Lに対するクリアランスの割合を示す。
なお、クリアランスとは、図43に示す距離L14、すなわち、陽極電極720,730と陰極電極740との距離L14である。また、全長Lに対するクリアランスの割合とは、全長Lから陽極電極720の長さL−Anode、陽極電極730の長さL−Anodeおよび陰極電極740の長さL−Cathodeを減算した減算結果(=L14×2)を全長Lで除算したものである。
表1に示す結果から、従来の電気素子700においては、全長Lに対するクリアランスの割合は、0.18以上である。
表2は、この発明による電気素子600の長さL、陽極電極30,40の長さL−Anode、陰極電極610の長さL−Cathode、電気素子600の幅W、クリアランス、幅Wに対する長さLの比L/W、全長Lに対する陰極電極610の長さの割合および全長Lに対するクリアランスの割合を示す。
なお、表2において、全長に対するクリアランスとは、全長L1から陽極電極30の長さL2、陽極電極40の長さL2および陰極電極610の長さL10を減算した減算結果(=L11×2)を全長L1で除算したものである。
表2に示す結果から、この発明による電気素子600においては、全長に対するクリアランスの割合は、0.18よりも小さい。
したがって、従来の電気素子700における全長に対するクリアランスの割合である0.18を基準値とした場合、この発明による電気素子600における全長に対するクリアランスの割合は、基準値よりも小さい。
図44は、電気素子のインピーダンスと周波数との関係を示す図である。図44において、縦軸は、インピーダンスを表し、横軸は、周波数を表す。また、曲線k4は、この発明による電気素子600のインピーダンスと周波数との関係を示し、曲線k5は、従来の電気素子700のインピーダンスと周波数との関係を示す。なお、周波数は、電気素子のインダクタンスがインピーダンスに対して支配的になる107〜109Hzの範囲からなる。
曲線k4,k5によって示されるインピーダンスと周波数との関係を有する電気素子をそれぞれ電気素子A,Bとすると、電気素子Aにおける全長に対するクリアランスの割合は、0.17であり、電気素子Bにおける全長に対するクリアランスの割合は、0.43である。また、電気素子A,Bは、全て、同じ長さおよび幅を有する。さらに、電気素子A,Bにおける陰極電極の長さは、それぞれ、2.8mm,1.6mmであり、電気素子A,Bにおける陽極電極の長さは、全て、0.5mmである。
図44において、1×107[Hz]以上の周波数領域におけるインピーダンスは、主に電気素子のインダクタンスによって決定される。
図44を参照して、この発明による電気素子600における1×107[Hz]以上の周波数領域のインピーダンス(曲線k4)は、従来の電気素子700における1×107[Hz]以上の周波数領域のインピーダンス(曲線k5)よりも低い。すなわち、この発明による電気素子600のインダクタンスは、従来の電気素子700のインダクタンスよりも小さい。
上述したように、この発明による電気素子600の全長に対するクリアランスの割合は、従来の電気素子700の全長に対するクリアランスの割合よりも小さいので、全長に対するクリアランスの割合を基準値(=0.18)よりも小さくすることによって、1×107[Hz]以上の周波数領域のインピーダンス(インダクタンス)を従来の電気素子700のインピーダンス(インダクタンス)よりも小さくできる。
全長に対するクリアランスの割合を小さくすることによって電気素子600のインダクタンスが電気素子700のインダクタンスよりも小さくなる理由を説明する。
図45は、電気素子600,700の等価回路である。図45を参照して、電気回路600,700の等価回路は、インダクタンスLd1,Ld2と、キャパシタンスCと、インダクタンスLd3とからなる。インダクタンスLd1,Ld2は、端子TM1,TM2間に直列に接続される。キャパシタンスCは、一方が、直接、接地電位GNDに接続され、他方がインダクタンスLd3を介して接地電位GNDに接続される。そして、端子TM1,TM2は、それぞれ、陽極電極30(720),40(730)に相当する。
図40に示したように、電気素子600においては、誘電体層2および導体板11,61が1つのコンデンサを構成する。そして、導体板11は、引出部111,112によってそれぞれ陽極電極30,40に接続される。また、導体板61は、引出部611によって陰極電極610に接続される。さらに、陽極電極30,40の長さは、それぞれ、引出部111,112の長さL2に等しく、陰極電極610の長さは、引出部611の長さL10に等しい。
その結果、電気素子600においては、陽極電極30,40と陰極電極610との距離は、導体板11の引出部111,112と導体板61の引出部611との距離L11に等しくなる。
一方、電気素子700においては、導体板761,771および誘電体層752が1つのコンデンサを構成する。そして、導体板761は、電気素子700の長さ方向DR2における1つの端面761Aによって陽極電極720に接続され、電気素子700の長さ方向DR2における1つの端面761Bによって陽極電極730に接続される。つまり、電気素子700においては、導体板761は、陽極電極720の電極722,723および陽極電極730の電極732,733には接続されない。
また、導体板771の引出部771Aは、陰極電極740(741)に接続され、導体板771の引出部771Bは、陰極電極740(742)に接続される。そして、引出部771A,771Bの各々は、陰極電極740の長さに等しい長さを有する。
その結果、電気素子700においては、陽極電極720,730と陰極電極740との距離L14は、導体板761の引出部(導体板761の長さ方向DR1の端面761A)と導体板771の引出部771A,771Bとの距離L13と異なる。そして、距離L13は、距離L14よりも長い。
再び、図45を参照して、インダクタンスLd3は、電気素子600においては導体板11と導体板61との間で交流電流が流れる距離L11に比例した値になり、電気素子700においては導体板761と導体板771との間で交流電流が流れる距離L13に比例した値になる。
上述したように、電気素子600(電気素子A)の全長は、電気素子700(電気素子B,C)の全長と同じであり、電気素子600(電気素子A)の陰極電極610の長さは、電気素子700(電気素子B,C)の陰極電極740の長さよりも長いので、距離L11は、距離L13よりも短くなる。
インダクタンスLd1,Ld2は、導体板11,761の長さに比例する。導体板11,761の長さは、等しいので、インダクタンスLd1,Ld2は、電気素子600,700間で等しい。
一方、上述したように、距離L11は、距離L13よりも短いので、電気素子600におけるインダクタンスLd3は、電気素子700におけるインダクタンスLd3よりも小さい。その結果、電気素子600の全体のインダクタンスは、電気素子700の全体のインダクタンスよりも小さくなる。
このように、全長に対するクリアランスの割合を基準値よりも小さくすることによって電気素子600のインダクタンスを従来の電気素子700のインダクタンスよりも小さくできる。
図46は、実施の形態4による他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態4による電気素子は、図46に示す電気素子800であってもよい。図46を参照して、電気素子800は、図37に示す電気素子600の導体板61〜65を導体板81〜85に代え、陰極電極610を陰極電極810に代えたものであり、その他は、電気素子600と同じである。
導体板81〜85は、導体板21〜25と同じ材料からなり、導体板21〜25と同じ厚みを有する。そして、導体板81〜85は、それぞれ、誘電体層1,2間、誘電体層3,4間、誘電体層5,6間、誘電体層7,8間および誘電体層9,10間に配置される。その結果、導体板11〜14,81〜85は、幅方向DR1に交互に積層される。
陰極電極810は、陽極電極30と陽極電極40との間において、電気素子800の底面800A、側面800B,800Cおよび上面800Dに形成される。つまり、陰極電極810は、電気素子800の周囲を囲むように形成される。
図47は、図46に示す誘電体層1および導体板81の寸法を示す図である。図47を参照して、導体板81は、略平板形状からなり、長さL4および幅W2を有する。そして、導体板81は、引出部811,812を含む。
引出部811は、幅方向DR1の導体板81の一方端側において、長さ方向DR2の導体板81の両端81a,81bから距離L9の位置に配置される。また、引出部812は、幅方向DR1の導体板81の他方端側において、長さ方向DR2の導体板81の両端81a,81bから距離L9の位置に配置される。そして、引出部811,812の各々は、長さL10および幅W3を有する。
図48は、図46に示す隣接する2つの導体板11,81の平面図である。図48を参照して、導体板11は、長さL1を有するとともに幅方向DR1に突出した引出部111,112を含み、導体板11の引出部111,112は、長さL2を有し、導体板81は、長さL4を有し、導体板81の引出部811,812は、導体板81の両端81a,81bから距離L9の位置に配置されるので、導体板11の引出部111,112と導体板81の引出部811,812との距離は、距離L11に設定される。そして、電気素子800においても、距離L11は、クリアランスを構成し、全長に対するクリアランスの割合(=(2×L11)/L1)は、基準値(=0.18)よりも小さい値に設定される。
なお、図46に示す導体板82〜85の各々も、図48に示す導体板81と同じ形状からなり、導体板81と同じ寸法を有する。
図49は、図46に示す電気素子800において1個のコンデンサを構成する2個の導体板11,81と陽極電極30,40および陰極電極810との接続状態を示す斜視図である。
図49を参照して、導体板11,81は、1個のコンデンサを構成する。電気素子800において、導体板11は、電気素子100における陽極電極30,40との接続状態(図5参照)と同じ接続状態で陽極電極30,40と接続される。陰極電極810は、導体板81の引出部811,812に接続される。このように、電気素子800においては、陰極電極810は、垂直方向DR3における導体板81の両端で導体板81に接続される。
その結果、交流電流が垂直方向DR3(=導体板81の幅方向)における導体板81の両端を介して陰極電極810との間で流れ、導体板81と陰極電極810との間のインピーダンスが電気素子600に比べ低減される。したがって、電気素子800のインピーダンスを電気素子600のインピーダンスよりも小さくできる。
その他は、電気素子600と同じである。
図50は、実施の形態4によるさらに他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態4による電気素子は、図50に示す電気素子900であってもよい。図50を参照して、電気素子900は、図46に示す電気素子800の陰極電極810を陰極電極910,920,930に代えたものであり、その他は、電気素子800と同じである。
陰極電極910は、陽極電極30と陽極電極40との間において、電気素子900の底面900Aおよび側面900B,900Cの一部に帯状に形成される。陰極電極920は、陽極電極30と陽極電極40との間において、電気素子900の上面900Dおよび側面900B,900Cの一部に帯状に形成される。陰極電極930は、陰極電極910を陰極電極920に接続する。
このように、電気素子900は、垂直方向DR3から電気素子900を挟み込む陰極電極910,920と、陰極電極910,920を相互に接続する陰極電極930とを備えるので、電気素子900においても、交流電流は、垂直方向DR3(=導体板81〜85の幅方向)における導体板81〜85の両端を介して導体板81〜85と陰極電極910,920,930との間を流れ、導体板81〜85と陰極電極910,920,930との間のインピーダンスが電気素子600に比べ低減される。したがって、電気素子900のインピーダンスを電気素子600のインピーダンスよりも小さくできる。
なお、従来の電気素子700を導体板761〜764,771〜775が幅方向DR1に積層されるように横に倒し、陰極電極740の2つの電極741,742を相互に接続すれば、電気素子900になるので、従来の電気素子700の全長に対するクリアランスの割合を基準値よりも小さく設定するように2つの電極741,742を形成し直し、その2つの電極741,742を相互に接続し、導体板761,772の幅方向が垂直方向DR3になるように配置して使用される電気素子は、実施の形態4による電気素子900に含まれる。つまり、直流電源120とCPU130との間で使用されていた電気素子700を取り外し、その取り外した電気素子700の2つの電極741,742を全長に対するクリアランスの割合が基準値よりも小さくなるように形成し直し、その2つの電極741,742を相互に接続したものは、電気素子900に含まれる。
その他は、電気素子800と同じである。
図51は、実施の形態4によるさらに他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態4による電気素子は、図51に示す電気素子1000であってもよい。図51を参照して、電気素子1000は、図1に示す電気素子100の導体板21〜25を導体板101〜105に代え、陰極電極50,60を陰極電極1010,1020に代えたものであり、その他は、電気素子100と同じである。
導体板101〜105は、導体板21〜25と同じ材料からなり、導体板21〜25と同じ厚みを有する。そして、導体板101〜105は、それぞれ、誘電体層1,2間、誘電体層3,4間、誘電体層5,6間、誘電体層7,8間、および誘電体層9,10間に配置される。その結果、導体板11〜14,101〜105は、幅方向DR1に交互に配置される。
陰極電極1010,1020は、陰極電極50,60と同じように配置され、導体板101〜105に接続される。
図52は、図51に示す誘電体層1および導体板101の寸法を説明するための斜視図である。図52を参照して、導体板101は、略平板形状からなり、長さL4および幅W2を有する。そして、導体板101は、引出部1011,1012を含む。引出部1011は、幅方向DR1における導体板101の一方端側において、長さ方向DR2の導体板101の一方端101aから距離L9の位置に配置される。引出部1012は、幅方向DR1において引出部1011と同じ側に、長さ方向DR2の導体板101の他方端101bから距離L9の位置に配置される。そして、引出部1011,1012の各々は、長さL2および幅W3を有する。その結果、引出部1011と引出部1012との間隔は、L15に設定される。
なお、導体板102〜105の各々も、図52に示す導体板101と同じ形状からなり、導体板101と同じ寸法を有する。
図53は、図51に示す隣接する2つの導体板11,101の平面図である。図53を参照して、導体板11,101が上述した形状および寸法を有する結果、導体板11の引出部111と導体板101の引出部1011との距離および導体板11の引出部112と導体板101の引出部1012との距離は、L11に設定される。そして、電気素子1000においても、全長に対するクリアランスの割合(=(2×L11)/L1)は、基準値(=0.18)よりも小さい値に設定される。したがって、電気素子1000のインピーダンスを従来の電気素子700のインピーダンスよりも小さくできる。
その他は、電気素子100と同じである。
図54は、実施の形態4によるさらに他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態4による電気素子は、図54に示す電気素子1100であってもよい。図54を参照して、電気素子1100は、図51に示す電気素子1000の導体板101〜105を導体板1101〜1105に代え、陰極電極1010,1020を陰極電極1110,1120に代えたものであり、その他は、電気素子1000と同じである。
導体板1101〜1105は、導体板21〜25と同じ材料からなり、導体板21〜25と同じ厚みを有する。そして、導体板1101〜1105は、それぞれ、誘電体層1,2間、誘電体層3,4間、誘電体層5,6間、誘電体層7,8間、および誘電体層9,10間に配置される。その結果、導体板11〜14,1101〜1105は、幅方向DR1に交互に配置される。
陰極電極1110は、長さ方向DR2において陽極電極30側に配置され、電気素子1100の底面1100A、側面1100B,1100Cおよび上面1100Dに帯状に形成される。また、陰極電極1120は、長さ方向DR2において陽極電極40側に配置され、電気素子1100の底面1100A、側面1100B,1100Cおよび上面1100Dに帯状に形成される。
図55は、図54に示す誘電体層1および導体板1101の寸法を説明するための図である。図55を参照して、導体板1101は、略平板形状からなり、長さL4および幅W2を有する。そして、導体板1101は、引出部1111〜1114を含む。
引出部1111,1112は、幅方向DR1において導体板1101の一方端側に導体板101の引出部1011,1012(図52参照)と同じように配置される。引出部1113,1114は、幅方向DR1において導体板1101の他方端側にそれぞれ引出部1111,1112に対向して配置される。そして、引出部1111〜1114の各々は、長さL2および幅W3を有する、その結果、引出部1111と引出部1112との間隔および引出部1113と引出部1114との間隔は、L15に設定される。
なお、導体板1102〜1105の各々も、図55に示す導体板1101と同じ形状からなり、導体板1101と同じ寸法を有する。
図56は、図54に示す隣接する2つの導体板11,1101の平面図である。図56を参照して、導体板11,1101が上述した形状および寸法を有する結果、導体板11の引出部111と導体板1101の引出部1111との距離および導体板11の引出部112と導体板1101の引出部1112との距離は、距離L11に設定される。そして、電気素子1100においても、全長に対するクリアランスの割合(=(2×L11)/L1)は、基準値(=0.18)よりも小さい値に設定される。
図57は、図54に示す電気素子1100において1つのコンデンサを構成する導体板11,1101と陽極電極30,40および陰極電極1110,1120との接続状態を示す図である。
図57を参照して、導体板11は、上述した態様で陽極電極30,40と接続される。導体板1101は、垂直方向DR3における導体板1101の一方端側で引出部1111,1112によってそれぞれ陰極電極1110,1120に接続されるとともに、垂直方向DR3における導体板1101の他方端側で引出部1113,1114によってそれぞれ陰極電極1110,1120に接続される。つまり、導体板1101は、垂直方向DR3(=導体板1101の幅方向)の両端で陰極電極1110,1120に接続される。
その結果、交流電流が導体板1101を流れるときのインピーダンスを交流電流が導体板101を流れるときのインピーダンスよりも小さくできる。したがって、電気素子1100のインピーダンスを電気素子1000のインピーダンスよりも小さくできる。
その他は、電気素子1000と同じである。
上記においては、実施の形態4による電気素子は、全長に対するクリアランスの割合が基準値(=0.18)よりも小さい電気素子であると説明したが、この発明においては、これに限らず、実施の形態4による電気素子は、垂直方向DR3(=導体板11〜14の幅方向)に突出した引出部111,112(または引出部111〜114)を有する導体板11〜14(導体板11B)と、垂直方向DR3(=導体板61〜65,81〜85,101〜105,1101〜1105の幅方向)に突出した引出部611(または引出部811,812;1011,1012;1111〜1114)を有する導体板61〜65(導体板81〜85,101〜105,1101〜1105)とを備える電気素子であればよい。
垂直方向DR3に突出した引出部111,112(または引出部111〜114)および引出部611(または引出部811,812;1011,1012;1111〜1114)が存在すれば、交流電流が1個のコンデンサにおいて2つの導体板間を流れる距離は、引出部111,112(または引出部111〜114)の長さ分だけ従来の電気素子700よりも短くなるので、インダクタンスLd3が従来の電気素子700よりも小さくなり、全体のインピーダンスを従来の電気素子700よりも小さくできるからである。
なお、実施の形態4においては、陽極電極30,40に接続される導体板11〜14の引出部111,112および陰極電極610;810;910,920;1010,1020;1110,1120に接続される導体板61〜65,81〜85,101〜105,1101〜1105の引出部611;811,812;1011,1012;1111〜1114の長さは、任意であり、引出部111,112と引出部611;811,812;1011,1012;1111〜1114との距離が上述した距離L11に設定されていればよい。
その他は、実施の形態1,2と同じである。
[実施の形態5]
図58は、実施の形態5による電気素子の構成を示す斜視図である。図58を参照して、実施の形態5による電気素子1200は、図1に示す電気素子100に導体板1210を追加したものであり、その他は、電気素子100と同じである。
導体板1210は、電気素子100の上面100Dの全面、電気素子100の長さ方向DR2における一方端側の側面100Eの全面および電気素子100の長さ方向DR2における他方端側の側面100Fの全面に配置される。その結果、導体板1210は、電気素子100の導体板11〜14の両端に接続され、導体板21〜25とは電気的に絶縁される。つまり、導体板1210は、陽極電極30,40間で導体板11〜14に並列に接続される。
そして、導体板1210は、たとえば、Niからなり、2mm〜3mmの範囲の厚みを有する。すなわち、導体板1210は、電気素子100の内部に配置された導体板11〜14,21〜25の厚みよりも厚い厚みを有する。
したがって、電気素子1200においては、陽極電極30を介して導体板11〜14に流れ込んだ直流電流は、導体板11〜14と導体板11〜14に並列に接続された導体板1210とを長さ方向DR2に流れ、陽極電極40から流れ出る。この場合、導体板1210は、導体板11〜14よりも厚い厚みを有するため、直流電流は、主に導体板1210を流れる。
その結果、電気素子1200は、電気素子100よりも多くの直流電流をCPU130に供給できる。また、電気素子1200は、電気素子100の表面(上面100Dおよび側面100E,100F)に配置された導体板1210を備えるので、導体板1210は、電気素子100で発熱した熱を放熱する機能を果たし、電気素子1200の温度上昇を電気素子100の温度上昇よりも抑制できる。
なお、電気素子1200は、電気素子100の上面100Dの全面および電気素子100の側面100E,100Fの垂直方向DR3の一部に配置された導体板を備えていてもよい。つまり、電気素子1200は、電気素子100の側面100E,100Fの一部で導体板11〜14に接続される導体板を備えていればよい。
また、電気素子1200は、実施の形態1において説明した作製方法に従って電気素子100を作製した後、導体板1210を電気素子100の上面100Dおよび側面100E,100Fに配置することによって作製される。
その他は、電気素子100と同じである。
図59は、実施の形態5による他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態5による電気素子は、図59に示す電気素子1300であってもよい。図59を参照して、電気素子1300は、図58に示す電気素子1200の導体板1210を導体板1310に代えたものであり、その他は、電気素子1200と同じである。
導体板1310は、電気素子100の上面100Dおよび側面100E,100Fの全面に配置されるとともに、電気素子100の底面100Aの一部に配置される。そして、導体板1310は、電気素子100の側面100E,100Fで導体板11〜14の長さ方向DR2の両端に接続されるとともに、底面100Aで導体板11〜14の引出部111,112および陽極電極30,40に接続される。その結果、導体板1310は、陽極電極30,40間に導体板11〜14と並列に接続される。また、導体板1310は、導体板1210と同じ材料からなり、導体板1210と同じ厚みを有する。
導体板1310は、陽極電極30,40に直接接続されるので、陽極電極30,40との間の抵抗が電気素子1200における陽極電極30,40と導体板1201との抵抗よりも低くなる。また、導体板1310と電気素子100との接触面積は、導体板1210と電気素子100との接触面積よりも大きい。
したがって、電気素子1300は、電気素子1200よりも多くの直流電流をCPU130に供給できるとともに、電気素子100における温度上昇を電気素子1200における温度上昇よりも抑制できる。
その他は、電気素子1200と同じである。
図60は、実施の形態5によるさらに他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態5による電気素子は、図60に示す電気素子1400であってもよい。図60を参照して、電気素子1400は、図59に示す電気素子1300の導体板1310を導体板1410に代えたものであり、その他は、電気素子1300と同じである。
導体板1410は、電気素子100の上面100Dおよび側面100E,100Fの全面に配置されるとともに、電気素子100の側面100B,100Cおよび底面100Aの一部に配置される。そして、導体板1410は、電気素子100の側面100E,100Fで導体板11〜14の両端に接続されるとともに、電気素子100の底面100Aにおいて導体板11〜14の引出部111,112および陽極電極30,40に接続される。その結果、導体板1410は、陽極電極30,40間に導体板11〜14と並列に接続される。また、導体板1410と電気素子100との接触面積は、導体板1410が側面100B,100Cで電気素子100と接触する分だけ導体板1310と電気素子100との接触面積よりも大きい。
また、導体板1410は、導体板1310と同じ材料からなり、導体板1310と同じ厚みを有する。
導体板1410は、導体板1310よりも大きい面積で電気素子100に接触するので、電気素子1400における温度上昇は、電気素子1300における温度上昇よりも抑制される。その結果、電気素子1400は、電気素子1300の温度と同じ温度において電気素子1300よりも大きい直流電流をCPU130に供給できる。
その他は、電気素子1300と同じである。
図61は、実施の形態5によるさらに他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態5による電気素子は、図61に示す電気素子1500であってもよい。図61を参照して、電気素子1500は、図60に示す電気素子1400の導体板1410を導体板1510に代えたものであり、その他は、電気素子1400と同じである。
導体板1510は、導体板1410において電気素子100の側面100B,100Cとの接触面積を増やしたものであり、その他は、導体板1410と同じである。
これによって、導体板1510を陽極電極30側から陽極電極40側へ流れる直流電流が導体板1410よりも増加し、電気素子1500は、電気素子1400よりも多くの直流電流をCPU130に供給できる。
また、電気素子100で発生した熱は、導体板1510を介して放熱され、電気素子1500における温度上昇を電気素子1400における温度上昇よりも抑制できる。
その他は、電気素子1400と同じである。
図62は、実施の形態5によるさらに他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態5による電気素子は、図62に示す電気素子1600であってもよい。図62を参照して、電気素子1600は、図61に示す電気素子1500の導体板1510を導体板1610に代えたものであり、その他は、電気素子1500と同じである。
導体板1610は、陰極電極50,60間における電気素子100との接触部分を導体板1510に追加したものであり、その他は、導体板1510と同じである。
図63は、図62に示すA方向から見た電気素子1600の斜視図である。図63を参照して、導体板1610は、電気素子100の底面100Aにおいて、陰極電極50,60を除く領域を覆うように形成される。
これによって、導体板1610と電気素子100との接触面積を導体板1510と電気素子100との接触面積よりも大きくできる。その結果、電気素子1600における温度上昇を電気素子1500における温度上昇よりも抑制できる。
その他は、電気素子1500と同じである。
図64は、実施の形態5によるさらに他の電気素子の構成を示す斜視図である。実施の形態5による電気素子は、図64に示す電気素子1700であってもよい。図64を参照して、電気素子1700は、図1に示す電気素子100に導体板1710を追加したものであり、その他は、電気素子100と同じである。
電気素子1700においては、導体板11〜14の各々は、図14に示す導体板11Bからなる。また、陽極電極30,40は、電気素子100の底面100A、側面100B,100Cおよび上面100Dに帯状に形成される。
導体板1710は、平板形状からなり、電気素子100の上面100Dに配置される。そして、導体板1710は、長さ方向DR2において、一方端が陽極電極30に接続され、他方端が陽極電極40に接続される。また、導体板1710は、導体板1210と同じ材料からなり、導体板1210と同じ厚みを有する。
これによって、電気素子1700は、陽極電極30,40間に並列に接続された導体板11〜14,1710によって直流電流を陽極電極30側から陽極電極40側へ流すことができ、電気素子100よりも多くの直流電流をCPU130に供給できる。
また、導体板1710は、放熱板としても機能するので、電気素子1700における温度上昇を電気素子100における温度上昇よりも抑制できる。
そして、電気素子1700は、実施の形態1において説明した作製方法に従って電気素子100を作製した後に、導体板1710を電気素子100の上面100Dに配置することによって作製される。
その他は、電気素子100と同じである。
なお、実施の形態5による電気素子は、電気素子300,350,600,800,900,1000,1100に導体板1210,1310,1410,1510,1610,1710のいずれかを追加した電気素子であってもよい。そして、導体板1210,1310,1410,1510,1610,1710のいずれかを電気素子350,800,900,1100に追加する場合、導体板1210,1310,1410,1510,1610,1710のいずれかと陰極電極360;810;910,920,930;1110,1120との間には、絶縁物が配置される。
上述したように、この発明による電気素子は、陽極電極に接続された導体板と陰極電極に接続された導体板とを幅方向DR1に積層した構造からなり、陽極電極は、積層される複数の導体板の各々と等しい抵抗で接続されるので、幅方向DR1に積層される導体板の数を増やしても、2つの陽極電極間に接続された導体板と、2つの陽極電極とを介して直流電流を流すときのインピーダンスは、大きくならない。
つまり、従来の電気素子のように、複数の導体板をプリント基板に垂直な方向に積層する場合、導体板の配置位置がプリント基板から遠ざかるに従って陽極電極から導体板までの抵抗が大きくなるので、直流電流を流すときのインピーダンスは、導体板の積層枚数が増加するに従って大きくなる。
一方、この発明による電気素子においては、複数の導体板は、幅方向に積層され、複数の導体板と陽極電極との距離は、等しいので、導体板の積層枚数を増やしても陽極電極から導体板までの抵抗は、大きくならない。したがって、導体板の積層枚数を増やしても、直流電流を流すときのインピーダンスは、大きくならない。
また、導体板の積層枚数を増やしても、直流電流を流すときのインピーダンスが大きくならない結果、従来の電気素子よりも多くの直流電流を直流電源からCPUへ供給できる。
図65から図69は、それぞれ、従来の電気素子700(図41および図42参照)において誘電体層751〜760および導体板761〜764,771〜775の積層数(即ち、電気素子700の高さ)を変えたときの第1から第5の斜視図である。
図65から図69を参照して、電気素子700A〜700Eは、3.3mmの幅、および4.6mmの長さを有する。そして、電気素子700A〜700Eにおいては、陽極電極720A,730A;720B,730B;720C,730C;720D,730D;720E,730Eと陰極電極740A〜740Eとの間隔は、0.5mmである。その結果、電気素子700A〜700Eにおいては、全長に対するクリアランスの割合は、(0.5×2)mm/4.6mm=0.217となる。
また、電気素子700A〜700Eは、それぞれ、1.1mm、1.7mm、3.3mm、5.0mmおよび8.0mmの高さを有する。そして、電気素子700A〜700Eにおいては、高さは、誘電体層751〜760および導体板761〜764,771〜775の積層数を変えることによって変えられた。
したがって、電気素子700A〜700Eは、幅および長さを一定に保持したまま、高さを変えた電気素子である。
図70から図74は、それぞれ、実施の形態2による電気素子300(図21参照)において誘電体層1〜10および導体板11〜14,31〜35の積層数(即ち、電気素子300の幅)を変えたときの第1から第5の斜視図である。
図70から図74を参照して、電気素子300A〜300Eは、3.3mmの高さおよび4.6mmの長さを有する。そして、電気素子300A〜300Eにおいては、陽極電極30A,40A;30B,40B;30C,40C;30D,40D;30E,40Eと陰極電極90A〜90Eとの間隔は、0.5mmである。その結果、電気素子300A〜300Eにおいても、全長に対するクリアランスの割合は、(0.5×2)mm/4.6mm=0.217となる。
電気素子300A〜300Eは、それぞれ、1.1mm、1.7mm、3.3mm、5.0mmおよび8.0mmの幅を有する。そして、電気素子300A〜300Eにおいては、幅は、誘電体層1〜10および導体板11〜14,31〜35の積層数を変えることによって変えられた。
したがって、電気素子300A〜300Eは、高さおよび長さを一定に保持したまま、幅を変えた電気素子である。
図75は、図65〜図69にそれぞれ示す電気素子700A〜700Eにおけるインピーダンスと周波数との関係を示す図である。また、図76は、図70〜図74にそれぞれ示す電気素子300A〜300Eにおけるインピーダンスと周波数との関係を示す図である。
図75および図76において、縦軸は、インピーダンスを表し、横軸は、周波数を表す。なお、周波数は、電気素子300A〜300E,700A〜700Eのインダクタンスがインピーダンスに対して支配的になる107〜109(Hz)の領域からなる。
また、図75において、曲線k6〜k10は、それぞれ、電気素子700A〜700Eにおけるインピーダンスと周波数との関係を示し、図76において、曲線k11〜k15は、それぞれ、電気素子300A〜300Eにおけるインピーダンスと周波数との関係を示す。
従来の電気素子700においては、インピーダンスは、誘電体層751〜760および導体板761〜764,771〜775の積層数を増やすに従って増加する(曲線k6〜k10参照)。
一方、実施の形態2による電気素子300においては、インピーダンスは、誘電体層1〜10および導体板11〜14,31〜35の積層数を増やすに従って低下する(曲線k11〜k15参照)。
従来の電気素子700は、誘電体層751〜760および導体板761〜764,771〜775の積層数が増加することによって、プリント基板に実装された場合のプリント基板上の信号線から相対的に上側に配置された導体板までの距離が長くなり、信号線から相対的に上側に配置された導体板までの抵抗が相対的に大きくなる。その結果、従来の電気素子700のインピーダンスは、誘電体層751〜760および導体板761〜764,771〜775の積層数が増加するに従って高くなる。
一方、実施の形態2による電気素子300においては、信号線と導体板11〜14,31〜35との距離が等しいため、誘電体層1〜10および導体板11〜14,31〜35の積層数が増加しても、信号線から導体板11〜14,31〜35までの抵抗は、ほぼ一定である。また、誘電体層1〜10および導体板11〜14,31〜35の積層数が増加すると、電気素子300の容量が低下し、インピーダンスが低下する。したがって、電気素子300においては、インピーダンスは、誘電体層1〜10および導体板11〜14,31〜35の積層数が増加することによって低下する。
図77は、インピーダンスと外形寸法との関係を示す図である。図77において、縦軸は、インピーダンスを表し、横軸は、外形寸法を表す。また、曲線k16は、従来の電気素子700におけるインピーダンスと外形寸法(電気素子700の高さ)との関係を示し、曲線k17は、実施の形態2による電気素子300のインピーダンスと外形寸法(電気素子300の幅)との関係を示す。なお、図77におけるインピーダンスは、108Hzの周波数におけるインピーダンスである。
従来の電気素子700においては、インピーダンスは、電気素子700の高さ(=外形寸法)が高くなるに従って増加する(曲線k16参照)。一方、実施の形態2による電気素子300においては、インピーダンスは、電気素子300の幅(=外形寸法)が広くなるに従って低下する(曲線k17参照)。
そして、曲線k16は、約2.5mmの外形寸法で曲線k17と交差し、外形寸法が2.5mmよりも小さい領域では、電気素子700のインピーダンスは、電気素子300のインピーダンスよりも低く、外形寸法が2.5mm以上である領域では、電気素子300のインピーダンスは、電気素子700のインピーダンスよりも低い。
このことは、誘電体層および導体板の積層数が相対的に少なく、電気素子の高さが幅よりも低い場合、インピーダンスは、導体板を水平方向(=プリント基板に略平行な方向)に配置した電気素子700A,700Bの方が導体板を垂直方向(=プリント基板に略垂直な方向)に配置した電気素子300A,300Bよりも低くなり、誘電体層および導体板の積層数が相対的に多くなり、電気素子の高さが2.5mm以上である場合、インピーダンスは、導体板を垂直方向(=プリント基板に略垂直な方向)に配置した電気素子300C〜300Eの方が導体板を水平方向(=プリント基板に略平行な方向)に配置した電気素子700C〜700Eよりも低くなることを意味する。
図78は、図65〜69にそれぞれ示す電気素子700A〜700Eにおいて陽極電極720A,730A;720B,730B;720C,730C;720D,730D;720E,730Eと陰極電極740A,740B,740C,740D,740Eとの間隔を0.4mmに設定した場合のインピーダンスと周波数との関係を示す図である。また、図79は、図70〜図74にそれぞれ示す電気素子300A〜300Eにおいて陽極電極30A,40A;30B,40B;30C,40C;30D,40D;30E,40Eと陰極電極90A,90B,90C,90D,90Eとの関係を0.4mmに設定した場合のインピーダンスと周波数との関係を示す図である。
図78および図79において、縦軸は、インピーダンスを表し、横軸は、周波数を表す。なお、周波数は、電気素子300A〜300E,700A〜700Eのインダクタンスがインピーダンスに対して支配的になる107〜109(Hz)の領域からなる。
また、図78において、曲線k18〜k22は、それぞれ、電気素子700A〜700Eにおけるインピーダンスと周波数との関係を示し、図79において、曲線k23〜k27は、それぞれ、電気素子300A〜300Eにおけるインピーダンスと周波数との関係を示す。
陽極電極と陰極電極との間隔が0.4mmに減少することにより、全長に対するクリアランスとの比は、0.174になる。
したがって、全長に対するクリアランスの比が基準値(=0.18)よりも小さい0.174になっても、従来の電気素子700のインピーダンスは、誘電体層751〜760および導体板761〜764,771〜775の積層数が増加するに従って高くなり(曲線k18〜k22参照)、実施の形態2による電気素子300のインピーダンスは、誘電体層1〜10および導体板11〜14,31〜35の積層数が増加するに従って低下する(曲線k23〜k27参照)。
図80は、インピーダンスと外形寸法との他の関係を示す図である。図80において、縦軸は、インピーダンスを表し、横軸は、外形寸法を表す。また、曲線k28は、全長に対するクリアランスとの比が0.174である場合の従来の電気素子700におけるインピーダンスと外形寸法(電気素子700の高さ)との関係を示し、曲線k29は、全長に対するクリアランスとの比が0.174である場合の実施の形態2による電気素子300のインピーダンスと外形寸法(電気素子300の幅)との関係を示す。なお、図80におけるインピーダンスも、108Hzの周波数におけるインピーダンスである。
従来の電気素子700においては、インピーダンスは、電気素子700の高さ(=外形寸法)が高くなるに従って増加する(曲線k28参照)。一方、実施の形態2による電気素子300においては、インピーダンスは、電気素子300の幅(=外形寸法)が広くなるに従って低下する(曲線k29参照)。
そして、曲線k28は、約2.5mmの外形寸法で曲線k29と交差し、外形寸法が2.5mmよりも小さい領域では、電気素子700のインピーダンスは、電気素子300のインピーダンスよりも低く、外形寸法が2.5mm以上である領域では、電気素子300のインピーダンスは、電気素子700のインピーダンスよりも低い。
このことは、全長に対するクリアランスの比が0.174と基準値(=0.18)よりも小さい場合においても、誘電体層および導体板の積層数が相対的に少なく、電気素子の高さが幅よりも低い場合、インピーダンスは、導体板を水平方向(=プリント基板に略平行な方向)に配置した電気素子700A,700Bの方が導体板を垂直方向(=プリント基板に略垂直な方向)に配置した電気素子300A,300Bよりも低くなり、誘電体層および導体板の積層数が相対的に多くなり、電気素子の高さが2.5mm以上である場合、インピーダンスは、導体板を垂直方向(=プリント基板に略垂直な方向)に配置した電気素子300C〜300Eの方が導体板を水平方向(=プリント基板に略平行な方向)に配置した電気素子700C〜700Eよりも低くなることを意味する。
上述したように、全長に対するクリアランスの比と基準値(=0.18)との大小関係に拘わらず、誘電体層および導体板の積層数が相対的に多くなり、電気素子の高さが一定値(2.5mm)以上になると、電気素子のインピーダンスは、誘電体層および導体板をプリント基板に垂直に配置した方が低くなる。
したがって、この発明による電気素子(=誘電体層および導体板をプリント基板に垂直に配置した電気素子)は、一般的には、誘電体層および導体板をプリント基板に垂直に配置したときのインピーダンス(インダクタンスが支配的な周波数領域におけるインピーダンス)が誘電体層および導体板をプリント基板に水平に配置したときのインピーダンス(インダクタンスが支配的な周波数領域におけるインピーダンス)よりも低くなる断面形状(電気素子の長さ方向に垂直な断面の形状)を有していればよい。
従来の電気素子700は、導体板761〜764,771〜775がプリント基板に略平行になるようにプリント基板に実装されるが、導体板761〜764,771〜775をプリント基板に略垂直に配置した方がインピーダンスが低下する程度に導体板761〜764,771〜775の積層数が多くなった従来の電気素子700を90度回転してプリント基板に実装された電気素子700は、この発明による電気素子に含まれる。
なお、上述した実施の形態1〜実施の形態5においては、2個の陰極電極50,60または1個の陰極電極90を備える電気素子について説明したが、この発明においては、これに限らず、陰極電極は、1個以上であればよい。したがって、この発明による電気素子は、2個の陽極電極と、j(jは正の整数)個の陰極電極とを備えるものであればよい。
この発明においては、導体板11〜14,561〜564は、「n個の第1の導体板」を構成し、導体板21〜25,31〜35,41〜45,61〜65,81〜85,101〜105,571〜575,1101〜1105は、「m個の第2の導体板」を構成する。
また、陽極電極30および陽極電極520は、「第1の電極」を構成し、陽極電極40および陽極電極530は、「第2の電極」を構成し、陰極電極50,60、陰極電極90、陰極電極360、陰極電極540,550、陰極電極610、陰極電極810、陰極電極910,920,930、陰極電極1010,1020および陰極電極1110,1120は、「j個の第3の電極」を構成する。
さらに、陰極電極50、陰極電極540、陰極電極1010および陰極電極1110は、「第1の陰極電極」を構成し、陰極電極60、陰極電極550、陰極電極1020および陰極電極1120は、「第2の陰極電極」を構成する。
さらに、引出部111は、「第1の引出部」を構成し、引出部112は、「第2の引出部」を構成する。
さらに、引出部111は、「第1の接続部分」を構成し、引出部112は、「第2の接続部分」を構成する。
さらに、引出部211は、「第3の引出部」を構成し、引出部212は、「第4の引出部」を構成する。
さらに、引出部211は、「第1の部分」を構成し、引出部212は、「第2の部分」を構成する。
さらに、電気素子700は、「基準電気素子」を構成する。
さらに、導体板1210,1310,1410,1510,1610,1710は、「第3の導体板」を構成する。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施の形態の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。