JP5018369B2 - タイヤのシミュレーション方法およびシミュレーション装置 - Google Patents
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具体的には、引用文献1では、転動中のタイヤモデルの各要素が1周する間に受ける歪みの履歴を求めることにより変形履歴を抽出し、このときの変形履歴から粘弾性特性によるエネルギーロスを計算する。
一方、このような転動状態を再現するまでの多大な時間を短縮するために、タイヤモデルを路面モデルに所定の接地荷重で接地させ、静止状態のタイヤモデルにおけるタイヤモデル1周分の歪みを各要素毎に取り出し、このときの歪みと想定する粘弾性特性とを用いて、エネルギーロスを算出することもできる。しかし、この場合、粘弾性特性の違いによって異なるタイヤの転動中の変形形状が転がり抵抗に与える影響について考慮されない。このため、エネルギーロスを従来に比べて早く予測することはできるが、転がり抵抗の値自体を精度良く算出することができない、といった問題がある。
又、前記タイヤモデルに施す前記転動処理は、前記タイヤモデルに並進運動と回転運動を別々に与える処理であり、前記走行条件が内部変数に応じて変化するように前記内部変数と対応付けられるときには、前記コンピュータが、前記走行条件として、前記タイヤモデルの回転軸周りの角速度を設定し、前記転がり抵抗を算出し出力するステップでは、前記角速度を前記内部変数に応じて変えて前記回転トルクの値が略0のときの転がり抵抗を算出することが好ましい。
前記走行条件は、キャンバー角、トー角、タイヤ内圧、接地荷重、およびタイヤと路面間の摩擦係数のうち少なくとも一つを含むことが好ましい。
特に、タイヤモデルに施す転動処理が、タイヤモデルに並進運動と回転運動を別々に与える処理であるとき、走行条件として、タイモデルの回転軸周りの角速度を定め、転がり抵抗を算出するとき、角速度を内部変数に応じて変えて回転トルクの値が略0のときの転がり抵抗を算出する。これにより、自由転動状態のタイヤの転がり抵抗を精度高く算出することができる。
メモリ14に記憶されたプログラムを読み出すことにより、条件設定モジュール18、モデル生成モジュール20、シミュレーション演算モジュール22、および転がり抵抗算出モジュール24の各プログラムモジュール群が形成される。
CPU12は、各プログラムモジュールの動作を制御管理するとともに、各プログラムモジュールの処理内容を実質的に演算処理する部分でもある。
これらの設定内容は、入力操作系26からのオペレータの指示に従って予めメモリ14に記憶保持されている。オペレータによる指示は、オペレータがディスプレイ28に表示された入力設定画面を見ながら為される。この記憶された内容は、シミュレーションを行うときに呼び出されて設定される。なお、転がり抵抗の値は、タイヤモデルのトレッド部材に対応する部分の粘弾性特性の寄与が大きいため、材料パラメータには、タイヤモデルのトレッド部材の対応する部分には少なくとも粘弾性特性のパラメータが含まれることが好ましい。
算出された転がり抵抗の値は、転動状態のタイヤモデルのデータとともに、入出力ユニット16を介してディスプレイ28に送られ画面表示される。あるいは、図示されないプリンタに出力される。
以上の構成のシミュレーション装置10が実行するタイヤのシミュレーション方法についてより詳細に説明する。
まず、タイヤの有限要素モデルに用いる材料パラメータの値の組とタイヤの走行条件とを含むシミュレーション条件が内部変数の関数として設定される(ステップS10)。材料パラメータには、ゴム部材の材料特性を弾性特性又は粘弾性特性で表した材料定数等が含まれる。弾性特性の材料定数として、ヤング率、せん断剛性等の材料定数が挙げられ、粘弾性特性の材料定数として、粘弾性特性をProny級数展開した各定数が挙げられる。
例えばタイヤモデルの転動処理を開始してからの解析時間を内部変数とし、タイヤモデルに付与する角速度を走行条件とし、上記解析時間に応じて、タイヤモデルに付与する角速度を変更するように、角速度を解析時間の関数として設定する。このように角速度を解析時間の関数として変更するのは、後述するようにタイヤモデルに作用する回転トルクが略0となって自由転動状態となる角速度を探査するためである。さらに、走行条件としてタイヤのキャンバー角、トー角、接地荷重、あるいはタイヤと路面間の摩擦係数等の値を定め、これらの走行条件を解析時間に応じて変化するように、解析時間の関数として設定してもよい。
このような内部変数に応じてシミュレーション条件を変化させる設定を行うために、どのようなシミュレーション条件をどの内部変数の関数で定めるかの情報を、オペレータが予め入力し、メモリ14にシミュレーション条件の一部として記憶保持しておく。勿論、内部変数に依存しない、固定されたシミュレーション条件があればメモリ14に記憶保持しておく。
このような温度場の設定と、材料パラメータの値の組と走行条件を含むシミュレーション条件の選択については、オペレータが、温度場の勾配を予め入力し、又どの温度で、どの材料パラメータの値の組とどの走行条件に変更するかについての情報を予め入力し、メモリ14にシミュレーション条件の一部として予め記憶保持しておくとよい。
このように、タイヤのシミュレーション開始前に、条件設定モジュール18はシミュレーション条件の情報をメモリ14から呼び出して、シミュレーション条件を設定する。
タイヤモデル及び路面モデルは、例えば、図2に示すような有限要素モデルからなるタイヤモデルTと剛体モデルである路面モデルGが用いられる。タイヤモデルTの生成とは、具体的に、タイヤモデルTの各要素における番号付けられた節点の座標位置のデータと、各要素を構成する節点の番号のデータと、シミュレーション条件のデータと、がタイヤモデルのファイルとしてまとめられ、メモリ14に記憶される。シミュレーション条件には、上述した内部変数に応じて変化する条件を含む。
シミュレーション条件は、例えば図4の例では、最初に設定されたシミュレーション条件に基づいて、材料パラメータの値の組A1及び走行条件B1が設定されて行われる。
インフレート処理は、タイヤをリム組して内圧を充填する工程を再現したもので、タイヤモデルの内側の表面に、タイヤ内圧に相当する圧力を負荷する処理をいう。具体的には、タイヤモデルのファイルがメモリ14から呼び出され、このファイル内のデータから、インフレート処理のために表した行列を用いた式が作成され、この式に対して、上記所定の圧力を外力として付与して節点の変位、歪み等を算出することによって、インフレート処理後のタイヤモデルのデータを算出する。算出されたタイヤモデルのデータは、メモリ14に記憶される。
このような接地処理では、インフレート処理を施したタイヤモデルのデータをメモリ14から呼び出して、このデータから接地処理のために表した行列を用いて接地処理の演算が行われる。演算されて得られた接地処理後のタイヤモデルのデータはメモリ14に記憶される。
したがって、シミュレーション演算モジュール22は、転動処理において、図4に示す関数に従って一定の解析時間が経過して内部変数によって角速度を変更する直前に、回転トルクを算出する(ステップS40)。次に、シミュレーション演算モジュール22は、算出された回転トルクの値が略0であるか否かを判別する(ステップS50)。略0とは、回転トルクの値がオペレータによって設定された誤差範囲内に含まれるか否かで判別される。
算出された回転トルクの値が略0でないと判別された場合、角速度は図4に示す階段状の関数に従って変更され、転動処理が続行される(ステップS60)。こうして、解析時間に応じて角速度を変更し、回転トルクが略0となる転動状態を探す。ステップS50の判別で肯定された場合、転動処理は、解析時間0〜t1の間で角速度を順次変化させるシーケンスから強制的に抜け出して、シミュレーション演算モジュール22は、回転トルクが略0の転動状態(自由転動状態)におけるタイヤモデルの演算結果のデータをメモリ14に記憶する。
次に、角速度以外のシミュレーション条件、例えば、材料パラメータの値の組A1及び走行条件B1が材料パラメータの値の組A2及び走行条件B2に変更され(ステップS80)、ステップS40に戻る。例えば、図4に示す位置X1にて回転トルクが略0であることが判別された場合、位置X1において転がり抵抗の値が算出された後、位置X2にジャンプし、材料パラメータの値の組A2及び走行条件B2に変更されたシミュレーション条件で転動処理が続行される。
位置X1から位置X2に転動処理がジャンプする場合、解析時間も位置X2における解析時間もt1に強制的に変更され、解析時間t1〜2・t1で設定された転動処理が行われる。
このとき、ステップS40では、タイヤモデルの転動状態が上述したように安定状態になるように一定の解析時間が確保されて繰り返し演算されているので、角速度が解析時間によって変更する直前のタイヤモデルは安定状態となっている。このときのタイヤモデルに作用する回転トルクをステップS40では算出する。
こうして演算処理されて得られた転がり抵抗の値は、タイヤモデルのシミュレーション結果のデータ、例えばタイヤモデルの変形形状のデータとともにディスプレイ28に送られ、画面表示される(ステップS90)。あるいは、図示されないプリンタに出力される。
材料パラメータは、例えば、タイヤの各部材の弾性特性及び粘弾性特性のうち少なくとも1つを含むことが好ましい。タイヤ部材の弾性特性及び粘弾性特性を変化させることで、転動中のタイヤの変形形状は変化し接地形状も変化する。このため、弾性特性又は粘弾性特性をシミュレーション条件の変更の対象とすることで、弾性特性又は粘弾性特性が転がり抵抗に及ぼす影響を転がり抵抗の数値にて表すことができる。
又、上述の実施形態では、転動処理は、並進運動と回転運動を別々に付与して、タイヤモデルの自由転動の状態を生成したが、本発明では、タイヤモデルの回転軸を、回転自由度の拘束されない回転フリー状態とし、タイヤモデルが所定の走行速度で移動するように変位を与えることによって、タイヤモデルが自由転動する転動処理を行うこともできる。この場合、回転トルクは常に略0となっているので、自由転動状態が再現できる。
G(t) = G0×[1−g(1−e−t/τ)] (1)
但し、G0=2.86(Gpa)、g=0.3、τ=0.1(秒)
このときの内圧充填処理の開始から転動処理により上記8水準のシミュレーション条件の転がり抵抗の結果を算出するまでの処理時間は8.9時間であった。これに対して、8水準のシミュレーション条件それぞれについて、内圧充填処理、接地処理及び転動処理を行って、8水準のシミュレーション条件の転がり抵抗の結果をすべて算出するまでの処理時間は24.9時間であった。これより、本発明の方法による処理時間は、従来の処理時間の0.36倍となり、極めて処理時間を短縮することができる。
このように、本発明では、転がり抵抗の値を直接算出することができる他、従来に比べて短時間に値を算出でき、しかも、色々なシミュレーション条件で効率よく転がり抵抗を解析することができる。
12 CPU
14 メモリ
16 入出力ユニット
18 条件設定モジュール
20 モデル生成モジュール
22 シミュレーション演算モジュール
24 転がり抵抗算出モジュール
26 入力操作系
28 ディスプレイ
Claims (6)
- 転動中のタイヤの転がり抵抗を、コンピュータを用いて再現するタイヤのシミュレーション方法であって、
前記コンピュータの記憶手段が、タイヤの部材の材料パラメータの値の組及び転動中のタイヤの走行条件の少なくとも一方が内部変数に応じて変化するように前記内部変数と対応付けられたシミュレーション条件を記憶するステップと、
前記コンピュータが、記憶された前記シミュレーション条件を用いて、前記タイヤを再現したタイヤモデル及び路面モデルを生成するステップと、
前記コンピュータが、タイヤが路面に接地し転動する状態を再現するように、記憶された前記シミュレーション条件を用いて、前記タイヤモデルが前記路面モデルへ接地する接地処理を施し、前記タイヤモデルに転動処理を施して、転動中のタイヤモデルを作成するステップと、
前記コンピュータが、前記転動中のタイヤモデルに対して、前記内部変数を変化させることにより、前記材料パラメータの値の組及び前記走行条件の少なくとも一方を変えてタイヤモデルの回転軸に作用する前後力を転がり抵抗として算出し出力するステップと、を有することを特徴とするタイヤのシミュレーション方法。 - 前記転がり抵抗を算出し出力するステップでは、前記タイヤモデルの回転軸周りに作用する回転トルクの値が略0のときの転がり抵抗を算出する請求項1に記載のタイヤのシミュレーション方法。
- 前記タイヤモデルに施す前記転動処理は、前記タイヤモデルに並進運動と回転運動を別々に与える処理であり、
前記走行条件が内部変数に応じて変化するように前記内部変数と対応付けられるときには、前記コンピュータが、前記走行条件として、前記タイヤモデルの回転軸周りの角速度を設定し、
前記転がり抵抗を算出し出力するステップでは、前記角速度を前記内部変数に応じて変えて前記回転トルクの値が略0のときの転がり抵抗を算出する請求項2に記載のタイヤのシミュレーション方法。 - 前記材料パラメータの値の組が内部変数に応じて変化するように前記内部変数と対応付けられるときには、前記コンピュータが、前記材料パラメータとして、前記タイヤの部材の弾性特性又は粘弾性特性に関する材料物性値を設定する請求項1〜3のいずれか1項に記載のタイヤのシミュレーション方法。
- 前記走行条件は、キャンバー角、トー角、タイヤ内圧、接地荷重、およびタイヤと路面間の摩擦係数のうち少なくとも一つを含む請求項1〜4のいずれか1項に記載のタイヤのシミュレーション方法。
- 転動中のタイヤの転がり抵抗を再現する、コンピュータを用いたタイヤのシミュレーション装置であって、
タイヤの部材の材料パラメータの値の組、および、転動中のタイヤの走行条件の少なくとも一方が、内部変数に応じて変化するように前記内部変数と対応付けたシミュレーション条件を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段から呼び出されたシミュレーション条件を用いて、前記タイヤを再現したタイヤモデル及び路面モデルを生成する手段と、
前記記憶手段から呼び出されたシミュレーション条件を用いて、タイヤが路面に接地し転動する状態を再現するように、前記タイヤモデルが前記路面モデルへ接地する接地処理を施し、前記タイヤモデルに転動処理を施して、転動中のタイヤモデルを作成する演算手段と、
前記転動中のタイヤモデルに対して、前記内部変数を変化させることにより、前記材料パラメータの値の組及び前記走行条件の少なくとも一方を変えて転がり抵抗を算出し出力する算出手段と、を有することを特徴とするタイヤのシミュレーション装置。
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