<撮像装置の外観構成>
図1および図2は、本発明の実施形態に係る撮像装置1の外観構成を示す図である。ここで、図1および図2は、それぞれ正面図および背面図を示している。また、図3は、撮像装置1の縦断面図である。
撮像装置1は、例えば一眼レフレックスタイプのデジタルスチルカメラとして構成されており、カメラボディ10と、カメラボディ10に着脱自在な交換レンズとしての撮影レンズ2とを備えている。
図1において、カメラボディ10の正面側には、正面略中央に撮影レンズ2が装着されるマウント部301と、マウント部301の右横に配置されたレンズ交換ボタン302と、正面左端部(X方向左側)において突設され、ユーザが片手(又は両手)により確実に把持可能とするためのグリップ部303と、正面左上部(Y方向左上側)に配置されたモード設定ダイアル305と、正面右上部に配置された制御値設定ダイアル306と、グリップ部303の上面に配置されたシャッターボタン307とが設けられている。
また、図2において、カメラボディ10の背面側には、LCD(Liquid Crystal Display)311と、LCD311の左方に配置された設定ボタン群312と、LCD311の右方に配置された十字キー314と、十字キー314の中央に配置されたプッシュボタン315とが備えられている。また、カメラボディ10の背面側には、LCD311の上方に配設されたEVF(Electronic View Finder)316と、EVF316の周囲を囲むアイカップ321と、EVF316の左方に配設されたメインスイッチ317と、EVF316の右方に配設された露出補正ボタン323およびAEロックボタン324と、EVF316の上方に配設されたフラッシュ部318および接続端子部319とが備えられている。
マウント部301には、装着された撮影レンズ2との電気的接続を行うための複数個の電気的接点や、機械的接続を行うためのカプラ等が設けられている。
レンズ交換ボタン302は、マウント部301に装着された撮影レンズ2を取り外す際に押下されるボタンである。
グリップ部303は、ユーザが撮影時に撮像装置1を把持する部分であり、フィッティング性を高めるために指形状に合わせた表面凹凸が設けられている。なお、グリップ部303の内部には電池収納室およびカード収納室(不図示)が設けられている。電池収納室にはカメラの電源として電池69B(図4参照)が収納されており、カード収納室には撮影画像の画像データを記録するための記録媒体(例えばメモリカード)が着脱可能に収納されるようになっている。なお、グリップ部303には、当該グリップ部303をユーザが把持したか否かを検出するためのグリップセンサを設けるようにしても良い。
モード設定ダイアル305及び制御値設定ダイアル306は、カメラボディ10の上面と略平行な面内で回転可能な略円盤状の部材からなる。モード設定ダイアル305は、自動露出(AE)制御モードや自動焦点(AF;オートフォーカス)制御モード、或いは1枚の静止画を撮影する静止画撮影モードや連続撮影を行う連続撮影モード等の各種撮影モード、記録済みの画像を再生する再生モード等、撮像装置1に搭載されたモードや機能を択一的に選択するためのものである。一方、制御値設定ダイアル306は、撮像装置1に搭載された各種の機能に対する制御値を設定するためのものである。
シャッターボタン307は、途中まで押し込んだ「半押し状態」の操作と、さらに押し込んだ「全押し状態」の操作とが可能とされた押下スイッチである。静止画撮影モードにおいてシャッターボタン307が半押し(S1)されると、被写体の静止画を撮影するための準備動作(露出制御値の設定や焦点調節等の準備動作)が実行され、シャッターボタン307が全押し(S2)されると、撮影動作(撮像センサを露光し、その露光によって得られた画像信号に所定の画像処理を施してメモリカード等に記録する一連の動作)が実行される。
LCD311は、画像表示が可能なカラー液晶パネルを備えており、撮像素子101(図3)により撮像された画像の表示や記録済みの画像の再生表示等を行うとともに、撮像装置1に搭載される機能やモードの設定画面を表示するものである。なお、LCD311に代えて、有機ELやプラズマ表示装置を用いるようにしても良い。
設定ボタン群312は、撮像装置1に搭載された各種の機能に対する操作を行うボタンである。この設定ボタン群312には、例えばLCD311に表示されるメニュー画面で選択された内容を確定するための選択確定スイッチ、選択取り消しスイッチ、メニュー画面の内容を切り替えるメニュー表示スイッチ、表示オン/オフスイッチ、表示拡大スイッチなどが含まれる。
十字キー314は、円周方向に一定間隔で配置された複数の押圧部(図中の三角印の部分)を備える環状の部材を有し、各押圧部に対応して備えられた図示省略の接点(スイッチ)により押圧部の押圧操作が検出されるように構成されている。また、プッシュボタン315は、十字キー314の中央に配置されている。十字キー314及びプッシュボタン315は、撮影倍率の変更(ズームレンズのワイド方向やテレ方向への移動)、LCD311等に再生する記録画像のコマ送り、及び撮影条件(絞り値、シャッタスピード、フラッシュ発光の有無等)の設定等の指示を入力するためのものである。
EVF316は、例えば画像表示が可能なカラー液晶パネルを備えており、撮像素子101(図3)により撮像された画像の表示や記録済みの画像の再生表示等を行う。ここで、EVF316やLCD311において本撮影(画像記録用の撮影)前に撮像素子101で順次に生成される画像信号に基づき動画的態様で被写体を表示するライブビュー(プレビュー)表示が行われることにより、ユーザは、実際に撮像素子101にて撮影される被写体を視認することが可能となる。
メインスイッチ317は、左右にスライドする2接点のスライドスイッチからなり、左にセットすると撮像装置1の電源がオンされ、右にセットすると電源がオフされる。
フラッシュ部318は、ポップアップ式の内蔵フラッシュとして構成されている。一方、外部フラッシュ等をカメラボディ10に取り付ける場合には、接続端子部319を使用して接続する。
アイカップ321は、遮光性を有してEVF316への外光の侵入を抑制する「コ」字状の遮光部材である。
露出補正ボタン323は、露出値(絞り値やシャッタースピード)を手動で調整するためのボタンであり、AEロックボタン324は、露出を固定するためのボタンである。
撮影レンズ2は、被写体からの光(光像)を取り込むレンズ窓として機能するとともに、当該被写体光をカメラボディ10の内部に配置されている撮像素子101に導くための撮影光学系として機能するものである。この撮影レンズ2は、上述のレンズ交換ボタン302を押下操作することで、カメラボディ10から取り外すことが可能となっている。
撮影レンズ2は、光軸LTに沿って直列的に配置された複数のレンズからなるレンズ群21を備えている(図3)。このレンズ群21には、焦点の調節を行うためのフォーカスレンズ211(図4参照)と、変倍を行うためのズームレンズ212(図4参照)とが含まれており、それぞれ光軸LT方向に駆動されることで、変倍や焦点調節が行われる。また、撮影レンズ2には、その鏡胴の外周適所に該鏡胴の外周面に沿って回転可能な操作環が備えられており、上記のズームレンズ212は、マニュアル操作或いはオート操作により、上記操作環の回転方向及び回転量に応じて光軸方向に移動し、その移動先の位置に応じたズーム倍率(撮影倍率)に設定されるようになっている。
撮像素子101は、カメラボディ10に撮影レンズ2が装着された場合の当該撮影レンズ2が備えているレンズ群21の光軸LT上において、光軸LTに対して垂直となる方向に配置されている。撮像素子101としては、例えばフォトダイオードを有して構成される複数の画素がマトリクス状に2次元配置され、それぞれ分光特性の異なる例えばR(赤)、G(緑)、B(青)のカラーフィルタが配設された色画素を有するCMOSカラーエリアセンサ(CMOS型の撮像素子)が用いられる。撮像素子(撮像センサ)101は、撮影レンズ(撮影光学系)2によって結像された被写体光像をR(赤)、G(緑)、B(青)各色成分のアナログの電気信号(画像信号)に変換し、R、G、B各色の画像信号を生成して出力する。この撮像素子101の構成については、後で詳述する。
撮像装置1の前方には、シャッタユニット40が配置されている。このシャッタユニット40は、上下方向に移動する幕体を備え、光軸LTに沿って撮像素子101に導かれる被写体光の光路開口動作及び光路遮断動作を行うメカニカルフォーカルプレーンシャッタとして構成されている。なお、シャッタユニット40は、撮像素子101が完全電子シャッター可能な撮像素子である場合には省略可能である。
<撮像装置1の電気的構成>
図4は、撮像装置1全体の電気的な構成を示すブロック図である。ここで、図1〜図3と同一の部材等については、同一の符号を付している。なお、説明の便宜上、撮影レンズ2の電気的構成について先ず説明する。
撮影レンズ2は、上述した撮影光学系を構成するレンズ群21に加え、レンズ駆動機構24と、レンズ位置検出部25と、レンズ制御部26と、絞り駆動機構27とを備えている。
レンズ群21では、フォーカスレンズ211及びズームレンズ212と、カメラボディ10に備えられた撮像素子101へ入射される光量を調節するための絞り23とが、鏡胴内において光軸LT(図3)方向に保持されており、被写体の光像を取り込んで撮像素子101に結像させる。焦点調節動作は、レンズ群21がカメラボディ10内のAFアクチュエータ71Mにより光軸LT方向に駆動されることで行われる。
レンズ駆動機構24は、例えばヘリコイド及び該ヘリコイドを回転させる図示省略のギア等で構成され、カプラ74を介してAFアクチュエータ71Mからの駆動力を受けて、フォーカスレンズ211等を光軸LTと平行な方向に移動させるものである。なお、フォーカスレンズ211の移動方向及び移動量は、それぞれAFアクチュエータ71Mの回転方向及び回転数に従う。
レンズ位置検出部25は、レンズ群21の移動範囲内において光軸LT方向に複数個のコードパターンが所定ピッチで形成されたエンコード板と、このエンコード板に摺接しながら鏡胴22と一体的に移動するエンコーダブラシとを備えており、レンズ群21の焦点調節時の移動量を検出する。なお、レンズ位置検出部24で検出されたレンズ位置は、例えばパルス数として出力される。
レンズ制御部26は、例えば制御プログラムを記憶するROMや状態情報に関するデータを記憶するフラッシュメモリ等からなるメモリ部261が内蔵されたマイクロコンピュータからなっている。また、レンズ制御部26は、カメラボディ10のメイン制御部62との間で通信を行う通信部262を備え、この通信部262は、例えばレンズ群21の焦点距離、射出瞳位置、絞り値、合焦距離及び周辺光量状態等の状態情報データをメイン制御部62に送信する一方、メイン制御部62から例えばフォーカスレンズ211の駆動量のデータを受信する。また撮影時には、撮影レンズ2に関する焦点距離情報、フォーカスレンズ211の位置、絞り値等のデータが通信部262からメイン制御部62へ送信される。なお、メモリ部261には、上記のレンズ群21の状態情報データや、撮影レンズ2のFナンバー(Fno)、メイン制御部62から送信された例えばフォーカスレンズ211の駆動量のデータ等が記憶される。
絞り駆動機構27は、カプラ75を介して絞り駆動アクチュエータ73Mからの駆動力を受けて、絞り23の絞り径を変更するものである。
続いて、カメラボディ10の電気的構成について説明する。カメラボディ10には、先に説明した撮像素子101、シャッタユニット40等の他に、AFE(アナログフロントエンド)5、画像処理部61、画像メモリ614、メイン制御部62、フラッシュ回路63、操作部64、VRAM65(65a、65b)、カードI/F66、メモリカード67、通信用I/F68、電源回路69、電池69B、フォーカス駆動制御部71A及びAFアクチュエータ71M、シャッタ駆動制御部72A及びシャッタ駆動アクチュエータ72M、絞り駆動制御部73A及び絞り駆動アクチュエータ73Mを備えて構成されている。
撮像素子101は、先に説明した通りCMOSセンサからなり、後述のタイミング制御回路51により、当該撮像素子101の露光動作の開始(及び終了)や、撮像素子101が備える各画素の出力選択、画素信号の読出し等の撮像動作が制御される。
AFE5は、撮像素子101に対して所定の動作を行わせるタイミングパルスを与えると共に、撮像素子101から出力される画像信号(CMOSエリアセンサの各画素で受光されたアナログ信号群)に所定の信号処理を施し、デジタル信号に変換して画像処理部61に出力するものである。このAFE5は、タイミング制御回路51、信号処理部52及びA/D変換部53などを備えて構成されている。
タイミング制御回路51は、メイン制御部62から出力される基準クロックに基づいて所定のタイミングパルス(垂直走査パルスφVn、水平走査パルスφVm、リセット信号φVr等を発生させるパルス)を生成して撮像素子101に出力し、撮像素子101の撮像動作を制御する。また、所定のタイミングパルスを信号処理部52やA/D変換部53にそれぞれ出力することにより、信号処理部52及びA/D変換部53の動作を制御する。
信号処理部52は、撮像素子101から出力されるアナログの画像信号に所定のアナログ信号処理を施すものである。この信号処理部52には、CDS(相関二重サンプリング)回路、撮像素子101から出力される電荷信号を増幅するAGC(オートゲインコントロール)回路及びクランプ回路等が備えられている。
信号処理部52のAGC回路では、後述する位相差AF用の画素列Lpにおける各画素からの電荷信号がゲイン(増幅率)αで増幅されるとともに、後述の撮影用の画素列Lnにおける各画素(G画素11gb、R画素11rおよびB画素11b)からの電荷信号が、上記のゲインαと異なるゲインβで増幅されることとなる。これは、撮影レンズ2の射出瞳の一部を通過した光束を受光する位相差AF用の画素においては、撮影用の画素に比べて感度が低下するため、撮影用の画素より高ゲインで増幅して適正な出力レベルを確保する必要があるためである。
A/D変換部53は、信号処理部52から出力されたアナログのR、G、Bの画像信号を、上記タイミング制御回路51から出力されるタイミングパルスに基づいて、複数のビット(例えば12ビット)からなるデジタルの画像信号に変換するものである。
画像処理部61は、AFE5から出力される画像データに所定の信号処理を行って画像ファイルを作成するもので、黒レベル補正回路611、ホワイトバランス制御回路612及びガンマ補正回路613等を備えて構成されている。なお、画像処理部61へ取り込まれた画像データは、撮像素子101の読み出しに同期して画像メモリ614に一旦書き込まれ、以後この画像メモリ614に書き込まれた画像データにアクセスして、画像処理部61の各ブロックにおいて処理が行われる。
黒レベル補正回路611は、A/D変換部53によりA/D変換されたR、G、Bの各デジタル画像信号の黒レベルを、基準の黒レベルに補正するものである。
ホワイトバランス補正回路612は、光源に応じた白の基準に基づいて、R(赤)、G(緑)、B(青)の各色成分のデジタル信号のレベル変換(ホワイトバランス(WB)調整)を行うものである。すなわちホワイトバランス制御回路612は、メイン制御部62から与えられるWB調整データに基づき、撮影被写体において輝度や彩度データ等から本来白色であると推定される部分を特定し、その部分のR、G、Bそれぞれを色成分の平均と、G/R比及びG/B比とを求め、これをR、Bの補正ゲインとしてレベル補正する。
ガンマ補正回路613は、WB調整された画像データの階調特性を補正するものである。具体的にはガンマ補正回路613は、画像データのレベルを色成分毎に予め設定されたガンマ補正用テーブルを用いて非線形変換するとともにオフセット調整を行う。
画像メモリ614は、撮影モード時には、画像処理部61から出力される画像データを一時的に記憶するとともに、この画像データに対しメイン制御部62により所定の処理を行うための作業領域として用いられるメモリである。また、再生モード時には、メモリカード67から読み出した画像データを一時的に記憶する。
メイン制御部62は、例えば制御プログラムを記憶するROMや一時的にデータを記憶するフラッシュメモリ等の記憶部が内蔵されたマイクロコンピュータからなり、撮像装置1各部の動作を制御するものである。
フラッシュ回路63は、フラッシュ撮影モードにおいて、フラッシュ部318または接続端子部319に接続される外部フラッシュの発光量を、メイン制御部62により設定された発光量に制御するものである。
操作部64は、上述のモード設定ダイアル305、制御値設定ダイアル306、シャッターボタン307、設定ボタン群312、十字キー314、プッシュボタン315、メインスイッチ317等を含み、操作情報をメイン制御部62に入力するためのものである。
VRAM65a、65bは、LCD311およびEVF316の画素数に対応した画像信号の記憶容量を有し、メイン制御部62とLCD311およびEVF316との間のバッファメモリである。カードI/F66は、メモリカード67とメイン制御部62との間で信号の送受信を可能とするためのインターフェースである。メモリカード67は、メイン制御部62で生成された画像データを保存する記録媒体である。通信用I/F68は、パーソナルコンピュータやその他の外部機器に対する画像データ等の伝送を可能とするためのインターフェースである。
電源回路69は、例えば定電圧回路等からなり、メイン制御部62等の制御部、撮像素子101、その他の各種駆動部等、撮像装置1全体を駆動させるための電圧(例えば5V)を生成する。なお、撮像素子101への通電制御は、メイン制御部62から電源回路69に与えられる制御信号により行われる。電池69Bは、アルカリ乾電池等の一次電池や、ニッケル水素充電池等の二次電池からなり、撮像装置1全体に電力を供給する電源である。
フォーカス駆動制御部71Aは、メイン制御部62から与えられるAF制御信号に基づき、フォーカスレンズ211を合焦位置に移動させるために必要な、AFアクチュエータ71Mに対する駆動制御信号を生成するものである。AFアクチュエータ71Mは、ステッピングモータ等からなり、カプラ74を介して撮影レンズ2のレンズ駆動機構24にレンズ駆動力を与える。
シャッタ駆動制御部72Aは、メイン制御部62から与えられる制御信号に基づき、シャッタ駆動アクチュエータ72Mに対する駆動制御信号を生成するものである。シャッタ駆動アクチュエータ72Mは、シャッタユニット40の開閉駆動を行うアクチュエータである。
絞り駆動制御部73Aは、メイン制御部62から与えられる制御信号に基づき、絞り駆動アクチュエータ73Mに対する駆動制御信号を生成するものである。絞り駆動アクチュエータ73Mは、カプラ75を介して絞り駆動機構27に駆動力を与える。
また、カメラボディ10は、黒レベル補正回路611から出力される黒レベル補正済みの画像データに基づき、オートフォーカス(AF)制御時に必要な演算を行う位相差AF演算回路76およびコントラストAF演算回路77を備えている。
これらの位相差AF演算回路76およびコントラストAF演算回路77を利用した撮像装置1のAF動作と撮像素子101の構成とについて、以下で詳しく説明する。
<撮像素子101の構成および撮像装置1のAF動作について>
撮像装置1では、撮像素子101において撮影レンズ2の射出瞳の異なった部分(一対の部分領域)を透過(通過)した透過光を受光することにより焦点検出を行う位相差検出方式のAF(位相差AF)が可能な構成となっている。この撮像素子101の構成と、この撮像素子101を利用した位相差AFの原理とを、以下で説明する。
図5は、撮像素子101の構成を説明するための図である。
撮像素子101は、図5(a)に示すように水平方向に沿って配置された撮影用の画素列Lnと位相差AF用の画素列Lpとを備えている。
撮影用の画素列Lnは、フォトダイオード上にR(赤)、G(緑)およびB(青)の各カラーフィルタが設けられたR画素11r、G画素11gおよびB画素11bを有しており、これらのR画素11r、G画素11gおよびB画素11bの画素配置はベイヤー配列となっている。
位相差AF用の画素列Lpは、位相差AFで利用するための画素(特定画素)として、実絞り値がF2に相当する場合における射出瞳の左右一対の部分領域を通過する被写体光束のみを受光する一対の画素(以下では「第1画素」ともいう)111(111a、111b)と、実絞り値がF6に相当する場合における射出瞳の左右一対の部分領域を通過する被写体光束のみを受光する一対の画素(以下では「第2画素」ともいう)112(112a、112b)とを有している。すなわち、位相差AF用の画素列Lpに配列される特定画素は、後述の遮光板BDのスリットによって制限された被写体光束の一部に相当する各光束(後述する図6〜7の各光束Ja〜Jd)が通過する射出瞳面の一対の部分領域が実絞り値の違いにより互いに異なっている2つの画素グループ、つまり第1画素111のグループ(以下では「第1画素グループ」ともいう)および第2画素112のグループ(以下では「第2画素グループ」ともいう)に分けられるとともに、第1画素グループおよび第2画素グループそれぞれは、射出瞳の一対の部分領域を通過した被写体光束を受光する一対の画素群(一対の第1画素111a、111bの群、一対の第2画素112a、112bの群)で構成されることとなる。また、位相差AF用の画素列Lpでは、一対の第1画素111と一対の第2画素112とが交互に配置されている。
一対の第1画素111は、隣接して配置される左側の第1画素111aと右側の第1画素111bとからなり、位相差AF用の画素列Lpの配列方向(水平方向)に沿って配置されている。そして、左側の第1画素111aと右側の第1画素111bとは、選択透過部として機能する遮光板BDに設けられたスリット(開口部)Sa、Sb(図5(b))により撮影レンズ2の射出瞳を通過した被写体光束の一部を選択的に透過させることで、実絞り値がF2相当の射出瞳における左右一対の部分領域を通過する被写体光束を受光領域Pa、Pbで受光できるようになっている。ここで、左側の第1画素111aと右側の第1画素111bとは、スリットSa、Sbの位置が鏡面対象の関係となっている。
また、一対の第2画素112は、隣接して配置される左側の第2画素112aと右側の第2画素112bとからなり、位相差AF用の画素列Lpの配列方向(水平方向)に沿って配置されている。そして、左側の第2画素112aと右側の第2画素112bとは、選択透過部として機能する遮光板BDに設けられたスリット(開口部)Ta、Tb(図5(b))により撮影レンズ2の射出瞳を通過した被写体光束の一部を選択的に透過させることで、実絞り値がF6相当の射出瞳における左右一対の部分領域を通過する被写体光束を受光領域Qa、Qbで受光できるようになっている。ここで、左側の第2画素112aと右側の第2画素112bとは、スリットTa、Tbの位置が、上記一対の第1画素111と同様に鏡面対象の関係となっている。
以上のように位相差AF用の画素列Lpでは、スリットSa、Sb、Ta、Tbの位置が4画素毎に異なる遮光板BDが設けられている(図5(b))。よって、位相差AF用の画素列Lpに配置される第1画素111および第2画素112においては、撮影用の画素列Lnに配置される各画素11r、11g、11bより受光量が少なくなるので、感度を向上させるためにカラーフィルタを設けないこととしている。このため、位相差AF用の画素列Lpでは水平1ライン分の撮影用の画素データが欠落することとなるが、このデータ欠損については、公知の一般的なライン欠損に対する画素補間で対応することとする。なお、撮像素子101の電荷読出しでは、撮影用の画素列LnにおけるRGB各画素11r、11g、11bと、位相差AF用の画素列Lpにおける第1画素111および第2画素112とで読み出し方法を異ならせて同時に電荷読出しを行えるようになっている。
次に、上記の位相差AF用の画素列Lpを利用した位相差AFの原理を、詳しく説明する。
図6および図7は、撮像素子101における位相差AF用の画素列Lpを利用した位相差AFの原理を説明するための図である。ここで、図6には、撮影レンズ(撮影光学系)2の実絞り値がF2.0に相当する場合の射出瞳を部分的に通過する光束Ja、Jbが表されており、図7には、撮影レンズ2の実絞り値がF5.6に相当する場合の射出瞳を部分的に通過する光束Jc、Jdが表されている。
実絞り値がF2.0の場合、一対の第1画素111a、111bでは、図6に示すように射出瞳の右側領域Epaを通過した光束JaがマイクロレンズMLおよび遮光板BDのスリットSaを通って光電変換部110の左端付近の受光領域Paで結像するとともに、射出瞳の左側領域Epbを通過した光束JbがマイクロレンズMLおよび遮光板BDのスリットSbを通って光電変換部110の右端付近の受光領域Pbで結像するようになっている。以下では、一対の第1画素111a、111bにおいて、左側の第1画素111aから得られる受光データを「A系列のデータ」と呼び、右側の第1画素111bから得られる受光データを「B系列のデータ」と呼ぶこととし、例えば、ある1つの位相差AF用の画素列Lp(図5)に配置された一対の第1画素111a、111bから得られるA系列のデータとB系列のデータとを表した図8〜図12を参照して実絞り値がF2.0の場合における位相差AFの原理を説明する。
図8は、焦点面が撮像素子101の撮像面から200μm近側にデフォーカスしている場合のシミュレーション結果を示す図であり、図9は、焦点面が撮像面から100μm近側にデフォーカスしている場合のシミュレーション結果を示す図である。また、図10は、焦点面が撮像面に一致している合焦状態のシミュレーション結果を示す図である。さらに、図11は、焦点面が撮像面から100μm遠側にデフォーカスしている場合のシミュレーション結果を示す図であり、図12は、焦点面が撮像面から200μm遠側にデフォーカスしている場合のシミュレーション結果を示す図である。ここで、図8〜図12においては、横軸が位相差AF用の画素列Lpにおける第1画素111a、111bの位置を示し、縦軸が各第1画素111a、111bからの出力を示している。また、図8〜図12では、グラフGa1〜Ga5(実線で図示)がA系列のデータを表し、グラフGb1〜Gb5(破線で図示)がB系列のデータを表している。
図8〜図12においてA系列のグラフGa1〜Ga5で示される各A系列の像列とB系列のグラフGb1〜Gb5で示される各B系列の像列とを比較すると、デフォーカス量が大きいほど、A系列の像列とB系列の像列との間に生じる撮像素子101の水平方向のシフト量(ずれ量)が増大していることが分かる。
このような一対の像列(A系列およびB系列の像列)におけるシフト量と、デフォーカス量との関係をグラフ化すると、図13に示すグラフGcのように表される。この図13においては、横軸がデフォーカス量(mm)を示し、縦軸がA系列の像列の重心位置に対するB系列の像列の重心位置の差(画素数)を示している。なお、各像列の重心位置Xgは、例えば次のような演算式(1)により求められる。
ただし、上式(1)において、X1〜Xnは、例えば位相差AF用の画素列Lpにおける左端からの第1画素111の位置を表し、Y1〜Ynは、各位置X1〜Xnの第1画素111からの出力値を表している。
図13に示すグラフGcのようにデフォーカス量と一対の像列における重心位置の差との関係は、比例関係となっている。この関係について、デフォーカス量をDF(μm)とし重心位置の差をC(μm)として数式で表現すると、次の式(2)のようになる。
ここで、上式(2)の係数k1は、図13のグラフGcに関する傾きGk(破線で図示)を表しており、工場試験等によって事前に取得できるものである。
次に、実絞り値がF5.6の場合、一対の第2画素112a、112bでは、図7に示すように射出瞳の右側部分Eqaを通過した光束JcがマイクロレンズMLおよび遮光板BDのスリットTaを通って光電変換部110の中央左側の受光領域Qaで結像するとともに、射出瞳の左側部分Eqbを通過した光束JdがマイクロレンズMLおよび遮光板BDのスリットTbを通って光電変換部110の中央右端の受光領域Qbで結像するようになっている。以下では、一対の第2画素112a、112bにおいて、左側の第2画素112aから得られる受光データを「A系列のデータ」と呼び、右側の第2画素112bから得られる受光データを「B系列のデータ」と呼ぶこととし、例えば、ある1つの位相差AF用の画素列Lp(図5)に配置された一対の第2画素112a、112bから得られるA系列のデータとB系列のデータとを表した図14〜図18を参照して実絞り値がF5.6の場合における位相差AFの原理を説明する。
図14は、焦点面が撮像素子101の撮像面から200μm近側にデフォーカスしている場合のシミュレーション結果を示す図であり、図15は、焦点面が撮像面から100μm近側にデフォーカスしている場合のシミュレーション結果を示す図である。また、図16は、焦点面が撮像面に一致している合焦状態のシミュレーション結果を示す図である。さらに、図17は、焦点面が撮像面から100μm遠側にデフォーカスしている場合のシミュレーション結果を示す図であり、図18は、焦点面が撮像面から200μm遠側にデフォーカスしている場合のシミュレーション結果を示す図である。ここで、図14〜図18においては、横軸が位相差AF用の画素列Lpにおける第2画素112a、112bの位置を示し、縦軸が各第2画素112a、112bからの出力を示している。また、図14〜図18では、グラフHa1〜Ha5(実線で図示)がA系列のデータを表し、グラフHb1〜Hb5(破線で図示)がB系列のデータを表している。
図14〜図18においてA系列のグラフHa1〜Ha5で示される各A系列の像列とB系列のグラフHb1〜Hb5で示される各B系列の像列とを比較すると、デフォーカス量が大きいほど、A系列の像列とB系列の像列との間に生じる撮像素子101の水平方向のシフト量(ずれ量)が増大していることが分かる。
このような一対の像列(A系列およびB系列の像列)におけるシフト量と、デフォーカス量との関係をグラフ化すると、図19に示すグラフHcのように表される。この図19においては、横軸がデフォーカス量(mm)を示し、縦軸がA系列の像列の重心位置に対するB系列の像列の重心位置の差(画素数)を示している。なお、各像列の重心位置Xgは、例えば上述した演算式(1)によって求められる。
図19に示すグラフHcのようにデフォーカス量と一対の像列における重心位置の差との関係は、比例関係となっている。この関係について、デフォーカス量をDF(μm)とし重心位置の差をC(μm)として数式で表現すると、次の式(3)のようになる。
ここで、上式(3)の係数k2は、図19のグラフHcに関する傾きHk(破線で図示)を表しており、工場試験等によって事前に取得できるものである。
以上より、実絞り値がF2.0の場合には一対の第1画素111a、111bから、実絞り値がF5.6の場合には一対の第2画素112a、112bから得られるA系列のデータとB系列のデータとに関する重心位置の差(位相差)を位相差AF演算回路76で求めた後に、上式(2)や上式(3)を利用してデフォーカス量を算出し、算出されたデフォーカス量に相当する駆動量をフォーカスレンズ211に与えることで、検出された焦点位置(検出焦点位置)にフォーカスレンズ211を迅速に移動させるオートフォーカス(AF)制御が可能となる。すなわち、撮像装置1では、図6(図7)に示す射出瞳における一対の部分領域Epa、Epb(Eqa、Eqb)を通過した被写体光束Ja、Jb(Jc、Jd)を受光する一対の第1画素111a、111b(一対の第2画素112a、112b)の群からの電荷信号に基づき一対の像列を生成し、この一対の像列に関する位相差AF用の画素列Lpの配列方向(水平方向)に沿ったずれ量(シフト量)を検出することにより、位相差AFが行われることとなる。なお、上記のデフォーカス量とフォーカスレンズ211の駆動量との関係は、カメラボディ10に装着されている撮影レンズ2の設計値より一意に定まるものである。
また、図13のグラフGcと図19のグラフHcとを比較すると、グラフGcの傾きGkはグラフHcの傾きHkより大きいため、グラフGcの方がデフォーカス量に対する一対の像列のシフト量(重心位置の差)の変化量が大きくなる。すなわち、実絞り値がF5.6の場合よりF2.0の場合の方が、位相差AFのAF精度を高められることとなる。
よって、本実施形態の撮像装置1では、撮影レンズ2において実絞りがF2.0以下となる場合には、例えば図6に示す射出瞳からの各光束Ja、Jbを受光して高精度な焦点検出を行うために一対の第1画素111a、111bを使用した位相差AFを実施するとともに、実絞りがF2.0より大きくなる場合には、例えば図7に示す射出瞳からの各光束Jc、Jdを受光して焦点検出を行うために一対の第2画素112a、112bを使用した位相差AFを実施することとする。
さて、一般にデジタルカメラの被写界深度を考慮すると、位相差AFより合焦精度が高いコントラスト検出方式の焦点検出(コントラストAF)で最終的な合焦を行うのが好ましい。そこで、本実施形態の撮像装置1においても、精度の高い合焦を図るためにコントラストAFを採用するが、このコントラスAFの原理について、以下で説明する。
撮像装置1におけるコントラストAFでは、撮影範囲の一部(例えば中央部分)に設定されるAFエリア内においてG画素11gの画素群を読み出し、AF評価値が算出される。このAF評価値については、例えばAFエリア内におけるG画素11gの隣接差分の絶対値の総和として算出される。
ここで、このAF評価値を、フォーカスレンズ211を一定方向に移動させつつ順次に算出すれば、図20のようにAF評価値が単調に増加してからピークQkを境に単調に減少するようなファーカスレンズ211の各位置とAF評価値との関係が得られることとなる。なお、フォーカスレンズ211は、ピントの山、つまりAF評価値のピークQkを超えるまで移動するようにする。
そして、図20に示すようにピークQk近傍のAF評価値Dn-1、Dn、Dn+1と、そのフォーカスレンズ211の位置Pn-1、Pn、Pn+1とが取得されると、次の式(4)に示す2次補間近似式を用いて、フォーカスレンズ211の合焦位置Pfが算出できることとなる。
以上で説明したコントラストAFでは、AF評価値をコントラストAF演算回路77で求めて、フォーカス駆動制御部71Aによりフォーカスレンズ211を上記の式(4)で求めた合焦位置に移動させることで、合焦精度が高いオートフォーカス制御が可能となる。
本実施形態の撮像装置1では、位相差AF用の画素列Lpを用いた位相差AFと撮影用の画素列Lnを用いたコントラストAFとを併用したハイブリッドAFを行うようになっているが、このハイブリッドAFに関する撮像装置1の具体的な動作を以下で説明する。
なお、上記説明では、一般的なコントラスト方式による山登りAFについて述べたが、本実施形態では以下に説明するハイブリッドAFによりピークQkを超えない場合でも合焦位置に移動させることができる。
<撮像装置1の動作>
図21は、撮像装置1の基本的な動作を示すフローチャートである。本動作は、メイン制御部62によって実行される。
まず、メインスイッチ317で撮像装置1の電源をオンにし、撮像素子101を起動する(ステップST1)。
ステップST2では、カメラボディ10のマウント部301に装着されている撮影レンズ2のFnoをメイン制御部62で取得する。ここでは、撮影レンズ2におけるレンズ制御部26のメモリ部261に記憶されているFnoの情報が、メイン制御部62に取り込まれることとなる。
ステップST3では、撮像素子101からの出力に基づき自動露出制御(AE)を行う。このAE動作により、撮像素子101の電子シャッタースピード(露光時間)や、撮影レンズ2の絞り23、信号処理部52のAGC回路のゲインが変更されることとなる。
ステップST4では、現在の実絞り値(Fno)を取得する。すなわち、ステップST3で設定された絞り23の開度と、(現在の)撮影レンズ2の焦点距離とに基づき、実絞り値(Fno)が取得される。
ステップST5では、シャッターボタン307がユーザによって半押し(S1)されたかを判定する。ここで、半押しされた場合には、ステップST6に進むとともに、半押しされていない場合には、ステップST3に戻る。
ステップST6では、撮像素子101におけるAFエリア内のG画素11gからの出力に基づき、コントラストAF演算回路77でAF評価値を算出して取得する。ここでは、撮像素子101のおける画素読出しの周期(フレームレート)を240fpsに設定して、AF評価値の算出が行われる。
ステップST7では、フォーカスレンズ211の位置を、撮影レンズ2のレンズ位置検出部25から出力されるパルス数に基づき検出する。ここでは、上記ステップST6のAF評価値の算出に用いるG画素11gの露光中心時間(露光時間の中間時点)にフォーカスレンズ211の位置検出を行うのが好ましい。
ステップST8では、現在の実絞り値(Fno)を取得する。具体的には、ステップST4で取得された実絞り値に、ステップST7で検出したフォーカスレンズ211の位置を考慮した現在の実絞り値を取得する。これは、後述のステップST10やステップST11で行う位相差AFによってフォーカスレンズ211の位置が変更されるので、その最新の位置を反映した正確な実絞り値を求めるためである。
すなわち、ステップST8においては、撮影レンズ(撮影光学系)2に関する焦点距離およびフォーカスレンズ211の位置と絞り23の開度とに基づき、実絞り値が取得されることとなる。
ステップST9では、ステップST8で取得した実絞り値(Fno)が2.0より大きいかを判定する。ここで、Fnoが2.0より大きい場合には、第2画素112からなる第2画素グループを位相差AFで選択するステップST10に進むとともに、Fnoが2.0以下である場合には、第1画素111からなる第1画素グループを位相差AFで選択するステップST11に進む。
ステップST10では、位相差AF用の画素列Lpにおける一対の第2画素112a、112bからの出力信号を用いて位相差AFを行う。具体的には、一対の第2画素において左側の第2画素112aから得られるA系列のデータと、右側の第2画素112bから得られるB系列のデータとに関する重心位置の差を位相差AF演算回路76で求め、この重心位置の差がなくなるように上記の式(3)を利用してフォーカスレンズ211を駆動する。
ステップST11では、位相差AF用の画素列Lpにおける一対の第1画素111a、111bからの出力信号を用いて位相差AFを行う。具体的には、一対の第1画素において左側の第1画素111aから得られるA系列のデータと、右側の第1画素111bから得られるB系列のデータとに関する重心位置の差を位相差AF演算回路76で求め、この重心位置の差がなくなるように上記の式(2)を利用してフォーカスレンズ211を駆動する。
以上のステップST9〜ST11の動作により、実絞り値に応じて、第1画素グループおよび第2画素グループの2つの画素グループから、位相差AFに用いる一対の像列(A系列の像列およびB系列の像列)に関する電荷信号を生成する1つの画素グループが選択されることととなる。これにより、適切な画素グループの選択が可能となる。
ステップST12では、位相差AFによる焦点調整が完了したかを判定する。ここで、位相差AFによる焦点調整が完了した場合には、ステップST13に進むとともに、完了していない場合には、ステップST6に戻る。
以上のステップST6〜ST12を位相差AFによる焦点調整が完了するまで繰り返すことにより、位相差AFによってフォーカスレンズ211を駆動する際に、フォーカスレンズ211の各位置についてのAF評価値(焦点検出情報)が焦点検出の履歴情報として取得されることとなる。なお、このAF評価値の履歴情報は、例えばメイン制御部62のメモリに格納される。
ステップST13では、位相差AF中に算出されたAF評価値の履歴情報のうち最後に算出された最終のAF評価値Dmと、最終のAF評価値Dmの1つ前(最終前)のAF評価値Dm-1とを取得する。
ステップST14では、最終前のAF評価値Dm-1に対する最終のAF評価値Dmの比率が、0.99以上で1.01以下となるかを判定する。これは、最終前のAF評価値Dm-1に対する最終のAF評価値Dmの比率が100%±1%以内となる場合には、傾きがなだらかなAF評価値のピークQk(図20)近傍にフォーカスレンズ211が駆動されているため、このフォーカスレンズ211の位置を合焦位置とみなして合焦位置を特定するようにするためである。
このステップST14において、0.99≦Dm/Dm-1≦1.01の場合、つまり上記のAF評価値の履歴情報(最終前のAF評価値Dm-1および最終のAF評価値Dm)に基づきフォーカスレンズ211の合焦位置が特定される場合には、本フローチャートを抜け、そうでない場合には、ステップST15に進む。
ステップST15では、最終前のAF評価値Dm-1に対する最終のAF評価値Dmの比率が1より大きいかを判定する。ここで、Dm/Dm-1>1の場合には、AF評価値が単調に増加している状態と判断してステップST16に進み、Dm/Dm-1≦1の場合には、AF評価値が単調に減少している状態と判断してステップST21に進む。
ステップST16では、ステップST6と同様に、撮像素子101におけるAFエリア内のG画素11gからの出力に基づきAF評価値D1を取得する。なお、位相差AFによる焦点調整の完了直後においては、AF評価値D1として上記最終のAF評価値DmがAF評価値の履歴情報から取得される。
ステップST17では、フォーカスレンズ211について、位相差AFによる駆動方向と同方向に焦点深度(被写界深度)に相当する1Fδ分の追い駆動を行う。ここで、Fは撮影レンズ(撮影光学系)2に関する実絞りを表すFナンバーであり、δは撮像素子101の画素ピッチの2倍(例えば6μmの画素ピッチではδ=12μm)である。
ステップST18では、ステップST6と同様に、撮像素子101におけるAFエリア内のG画素11gからの出力に基づきAF評価値D2を取得する。
ステップST19では、ステップST16で取得したAF評価値D1に対する、ステップST18で取得したAF評価値D2の比率が、0.99以上で1.01以下であるかを判定する。これは、AF評価値がピークQk(図20)を超えず単調に増加している状態において、例えば図22に示すようにフォーカスレンズ211の駆動量Wの追い駆動を行うことによりAF評価値D2が得られたとすると、AF評価値D2に対するAF評価値D1の比率が100%±1%以内となる場合、換言すればAF評価値D2とAF評価値D1との差EfがAF評価値D1の1%以下となる場合には、AF評価値のピークQk(図22)付近の緩い傾斜部分にフォーカスレンズ211が駆動されているので、この追い駆動されたフォーカスレンズ211の位置を合焦位置とみなして合焦位置を特定するようにするためである。
このステップST19において、0.99≦D1/D2≦1.01の場合には、本フローチャートを抜け、そうでない場合には、未だにAF評価値のピークQk(図20)付近にフォーカスレンズ211が到達していないと判断してステップST20に進む。
ステップST20では、ステップST17で行われるフォーカスレンズ211の追い駆動がn(例えばn=3)回実施されたかを判定する。これは、フォーカスレンズ211の追い駆動が幾度も実施される場合には合焦が困難と見なして、AF動作を打ち切るためである。ここで、追い駆動がn回実施された場合には、本フローチャートを抜け、n回未満の場合には、ステップST16に戻る。
ステップST21では、AF評価値のピーク位置までフォーカスレンズ211の戻り駆動を行う。すなわち、ステップST15において最終前のAF評価値Dm-1に対する最終のAF評価値Dmの比率が1以下と判定される場合には、現在のフォーカスレンズ211の位置はAF評価値のピーク位置を超えているものと判断し、上述した式(4)を利用してフォーカスレンズ211の合焦位置を特定する。そして、位相差AFによってAF評価値のピーク位置(合焦位置)を通過したフォーカスレンズ211を、特定された合焦位置に戻らせるように駆動する。
以上で説明した撮像装置1においては、遮光板BDでのスリットの位置が異なっている一対の第1画素111a、111bと一対の第2画素112a、112bとを有する撮像素子101が設けられているため、この一対の第1画素と一対の第2画素とを撮影レンズ(撮影光学系)2の実絞り値に応じて切り替えてやれば、位相差AFにおいて焦点検出精度を向上できることとなる。すなわち、比較的小さい実絞り値の場合において一対の第1画素111a、111bを使用できるため、従来と比べて高精度な位相差AFが可能となる。
また、撮像装置1の撮像素子101では、遮光板BDのスリットSa、Sb、Ta、Tb(図6〜7)により撮影レンズ2の射出瞳を通過した被写体光束の一部が選択的に透過されるため、第1画素111および第2画素112おいて位相差AFに必要な光束を簡易に受光できる。
<変形例>
・上記の実施形態における撮像素子では、図5に示すように一対の第1画素と一対の第2画素とが交互に配置された位相差AF用の画素列Lpを有するのは必須でなく、図23に示すように一対の第1画素111a、111bのみが配列された位相差AF用の画素列Lpaと、一対の第2画素112a、112bのみが配列された位相差AF用の画素列Lpbとを有しても良い。
また、図24に示すように一対の第2画素112a、112bと、一対の第1画素111a、111bと、色画素(G画素11gおよびR画素11r)とが順に繰り返される画素配列となる位相差AF用の画素列Lqを有しても良い。このように水平ライン方向に沿って配置される位相差AF用の画素列(画素配列)Lqにおいて、第1画素および第2画素とともに、撮影用の画素データが取得できる色画素が含まれることで、水平1ライン全ての撮影用の画素データが欠落する上述の位相差AF用の画素列Lp、Lpa、Lpbと比べて画素補間が少なくてすみ、画像の品質が向上することとなる。
・上記の実施形態においては、スリットが形成された遮光板BDを有する一対の第1画素111a、111bおよび一対の第2画素112a、112bを用いて位相差AFを行うのは必須でなく、図25および図26に示すような一対の第1画素111c、111dおよび一対の第2画素112c、112dを用いて位相差AFを行うようにしても良い。
図25は、本発明の変形例に係る一対の第1画素111c、111dの構成を説明するための図である。
一対の第1画素111c、111dは、図6のスリットSa、Sbに対応する光透過領域Sc、Sdを除いて顔料または塗料で黒塗りされた遮光層B1、B2が表面に形成されたマイクロレンズMLを備えており、この光透過領域Sc、Sdにより撮影レンズ2の射出瞳を通過した被写体光束の一部が選択的に透過されることとなる。
このような構成を有する一対の第1画素111c、111dでは、実絞り値がF2.0の場合において、射出瞳の右側領域Epaを通過した光束Jaが、マイクロレンズMLにおける光透過領域Scを通って光電変換部110の左端付近の受光領域Paで結像するとともに、射出瞳の左側領域Epbを通過した光束Jbが、マイクロレンズMLにおける光透過領域Sdを通って光電変換部110の右端付近の受光領域Pbで結像するようになっている。
図26は、本発明の変形例に係る一対の第2画素112c、112dの構成を説明するための図である。
一対の第2画素112c、112dは、図7のスリットTa、Tbに対応する光透過領域Tc、Tdを除いて顔料または塗料で黒塗りされた遮光層B3、B4が表面に形成されたマイクロレンズMLを備えており、この光透過領域Tc、Tdにより撮影レンズ2の射出瞳を通過した被写体光束の一部が選択的に透過されることとなる。
このような構成を有する一対の第2画素112c、112dでは、実絞り値がF5.6の場合において、射出瞳の右側領域Eqaを通過した光束Jcが、マイクロレンズMLにおける光透過領域Tcを通って光電変換部110の中央左側の受光領域Qaで結像するとともに、射出瞳の左側領域Eqbを通過した光束Jdが、マイクロレンズMLにおける光透過領域Tdを通って光電変換部110の中央右側の受光領域Qbで結像するようになっている。
以上のような一対の第1画素111c、111dおよび一対の第2画素112c、112dについても、図6〜7に示す第1画素111a、111bおよび一対の第2画素112a、112bと同様に位相差AFにおいて撮影レンズ2の実絞り値に応じて切り替えるようにすれば、従来と比べて焦点検出精度を向上できることとなる。
また、第1画素111c、111dおよび第2画素112c、112dでは、光透過領域Sc、Sd、Tc、Tdを有する遮光層B1〜B4が表面に形成された選択透過部としてのマイクロレンズMLにより撮影レンズ2の射出瞳を通過した被写体光束の一部が選択的に透過されるため、第1画素111c、111dおよび第2画素112c、112dおいて位相差AFに必要な光束を簡易に受光できる。
・上記の実施形態おける撮像素子については、図5に示すように位相差AF用の画素列Lpの間に2つの撮影用の画素列Lnが挟まれるのは必須でなく、位相差AF用の画素列Lpの間に1つ、または3以上の撮影用の画素列Lnが挟まれるような配置であっても良い。
・上記の実施形態における第1画素111および第2画素112については、カラーフィルタを設けるようにしても良い。このカラーフィルタにより、感度が低下するものの、撮影用のカラーの画素データが取得できることとなる。
・上記の実施形態における位相差AF用の画素列については、実絞り値F2に対応する第1画素111からなる第1画素グループ、および実絞り値F6に対応する第2画素112からなる第2画素グループのみを有するのは必須でなく、これらの中間の実絞り値(例えばF3)に対応する第3画素からなる第3画素グループを追加するようにしても良い。
このような位相差AF用の画素列では、撮影レンズ2に関する実絞り値に応じて第1画素グループ、第2画素グループまたは第3画素グループが選択されることとなる。具体的には、実絞りのFnoが2.0以下の場合には、第1画素グループを選択するとともに、実絞りのFnoが3.0より大きい場合には、第2画素グループを選択する。一方、実絞りのFnoが2.0より大きく3.0以下の場合には、第3画素グループを選択するようにする。
このように実絞り値に応じて第1〜第3画素グループから1つの画素グループを選択することにより、上述した第1画素および第2画素のみの場合より高精度な位相差AFが可能となる。なお、位相差AF用の画素列においては、さらに異なる画素グループを追加するようにしても良い。
・上記の実施形態における撮像装置については、撮影レンズ2がカメラボディ10に着脱自在であるのは必須でなく、撮影レンズ2がカメラボディ10に固定されているものでも良い。
・上記の実施形態におけるAF評価値については、AFエリア内のG画素11gにおいて隣接差分の絶対値総和を算出するのは必須でなく、隣接差分の2乗の絶対値総和を算出するようにしても良い。
・上記の実施形態における撮像装置の動作については、図21のステップST14におて最終前のAF評価値Dm-1に対する最終のAF評価値Dmの比率が100%±1%以内であるかを判定するのは必須でなく、例えば100%±3%以内であるか否かを判定するようにしても良い。
・上記の実施形態における撮像装置の動作については、図21のステップST17においてフォーカスレンズ211を1Fδ分追い駆動するのは必須でなく、2Fδ分の追い駆動を行うようにしても良い。すなわち、撮影レンズ2に係る焦点深度に基づく駆動量の追い駆動を行えば良い。