JP5002880B2 - フレーム構造 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、所定厚さの板材により形成されたフレームの構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、自動車等の車両においては、燃費性能および車両衝突時の安全性のより一層の向上に対する要求の高まりに伴って、車両の軽量化と高強度化の両立が、従来にも増して強く要望されている。そして、かかる要望に対して種々の手法・対策が検討されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
その一つとして、いわゆる高張力鋼板の車体フレームへの適用があり、実車への採用が増加しつつある。この高張力鋼板を車体フレームに適用することにより、比較的薄肉構造で衝突時のエネルギ吸収性を高めることができるのであるが、その一方で、フレームの剛性を確保する必要があるので、余り板厚を薄くすることはできない。材料自体の高剛性化は、現状では実用化が難しく、やはりフレーム断面の拡大に依らざるをえないのが実情である。すなわち、車体の軽量化と高強度化及び高剛性化の3者をバランス良く実現することは、なかなかに難しいという問題がある。
【0004】
また、板厚の増加や補強部材の追加などによる大幅な重量増加を招くことなく、強度および剛性を高め得る方法として、溶射法あるいはメッキ法などにより材料を部分的に改質する方法も考えられているが、溶射層の厚さやメッキ厚の確保などについて安定した品質を確保することが実際には難しく、また、複雑形状の部品や大型の部品には適用し難いなど、適用範囲にも制限があり、実用性に欠けるという難点がある。
【0005】
尚、部材表面に他の材料層を形成するものとして、フレームの強度・剛性の向上に関するものではないが、例えば実開平6−65623号公報には、軸受の保持器付きころについて、ポケットの一部に凹部を形成してこれをオイル溝として作用させ、かかる凹部を設けたことによる肉抜き分相当の肉盛りを施して、剛性の確保を図るようにした構成が開示されている。また、特開平7−9135号公報には、パネル部材端部どうしの重合部分に肉盛り溶接を行う際におけるパネル材の変形の抑制を図る構成が開示されている。
【0006】
更に、高周波焼き入れ等の熱処理技術を適用して材料を部分的に高強度化する方法も検討されているが、部品の種類が異なる毎に焼き入れコイルを用意しなければならないなど、設備に汎用性がなく部品毎に新たな装置が必要とされる上、部品形状によってはこれに適合した焼き入れコイルを製作することが困難な場合もあり、やはり実用的ではない。尚、加熱源にレーザ光を用いることも提案されているが、加熱範囲が狭いので、加工時間が長く掛かる上、十分な効果を得ることも難しい。
また、このような熱処理技術を適用して材料の高強度化を図るものにあっては、剛性向上の効果は全く期待することはできないという問題もある。
【0007】
この発明は、上記従来の技術的課題に鑑みてなされたもので、フレームの強度及び/又は剛性の向上を図るに際して、大幅な重量増加を招くことなく安定した効果を得ることができ、また、汎用性のある手段を利用でき、適用範囲に過度な制限も受けることがない、フレーム構造を提供することを主要な目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このため、本願請求項1の発明(以下、第1の発明という)に係るフレーム構造は、所定厚さの板材により形成され、所定部位よりも荷重入力点から近い側は衝撃吸収性が高くて比較的変形し易く、上記所定部位よりも荷重入力点から遠い側は剛性が高く変形し難い、変形特性を備えたフレームの構造であって、上記フレームの内面及び/又は外面に、少なくとも全体として当該フレームへの荷重入力方向に沿い、且つ当該フレームの稜線部に沿って肉盛り溶接ビード部が形成され、上記肉盛り溶接ビード部は、上記フレームの所定部位よりも荷重入力点から遠い側上記所定部位よりも荷重入力点から近い側に比して、剛性が高い材料から形成されている、ことを特徴としたものである。
【0012】
更に、本願請求項に係る発明(以下、第の発明という)は、上記第1の発明において、上記フレームは車両の車体の構造部材であることを特徴としたものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を、添付図面に基づいて詳細に説明する。
図1及び図2は、本発明を自動車等の車両のフロントフレームに適用した例を示している。
このフロントフレームSは、車体を構成するフレーム部材の中でも、車両の衝突安全性及び操安性確保の観点から重要なフレーム部材であり、一定以上の強度,剛性が求められる。すなわち、フロントフレームSには、衝突安全性については、車両正面からの衝突による衝撃エネルギを効果的に吸収しつつ、乗員空間を確保することが求められる。このエネルギ吸収は、一般に、フロントフレームSの先端(図1における左端)からフロントサスタワー取付部Ctまでのフロントフレームの圧縮変形によってもたらされる。また、フロントフレームSのサスタワー以降の部分については、乗員空間確保のために高い強度及び剛性が要求される。
【0015】
図1から良く分かるように、上記フロントフレームSは、所定厚さの鋼板素材を断面ハット状にプレス加工して得られたフレームインナSmと、所定厚さのフラットな鋼板部材でなるフレームアウタSpとを基本的な構成要素とし、具体的には図示しなかったが、実際には、これらの間に必要なレインフォースメントを組み付けた上で、フレームインナSmのフランジ部SfをフレームアウタSpに当接させて組み合わせ、このフランジ部Sfをスポット溶接で接合することにより組み立てられる。
【0016】
このフロントフレームSの強度及び/又は剛性の向上を図るために、本発明を適用する場合、フレーム組立前に、フレームインナSm単体の状態で肉盛り溶接が施される。
すなわち、図2に示すように、フレームインナSmをその内側が上方を向く姿勢で溶接冶具(不図示)に固定し、付与すべき強度及び/又は剛性に応じて選定された所定の溶接材を用いて、例えばロボットハンド(不図示)の先端に保持された溶接トーチТwにより所定の溶接条件で肉盛り溶接を施す。図2の例では、フレームインナSmの稜線E(図1参照)に沿ってその内面部分に(つまり、内側隅部に沿って)溶接ビード部Dwが形成されている。
【0017】
このフロントフレームSの場合、衝突時には主としてその長手方向に荷重が入力されるので、その荷重入力方向に沿った肉盛り溶接ビード部Dwが形成されることにより、想定される荷重入力に対してフレームSの強度及び/又は剛性を向上させることができる。
特に、上記肉盛り溶接ビード部DwはフレームSの稜線部Eに沿って形成されているので、より効果的で効率良く、フレームSの強度及び/又は剛性の向上を図ることができる。
【0018】
この場合において、当該フレームSに求められる強度特性及び/又は剛性特性、更には変形特性に応じて、肉盛り溶接ビードを形成すべき部位を設定し(従って、部分的な補強も容易であり)、また、好適な溶接材料を選定することにより、大幅なフレーム重量増加を招くことなく、当該フレームSに対して所要の強度特性及び/又は剛性特性、更には変形特性を付与することが可能になる。
しかも、一般的な溶接設備によって施工できるので汎用性が高く、また、適用範囲に過度な制限を受けることもない。
【0019】
また、フレームSの荷重入力による変形が想定される所定部位には、変形により加工硬化を生じ得る溶接材料からなる肉盛り溶接ビード部を形成することが好ましい。これにより、荷重に対する負荷能力をより有効に高めることができ、また、同荷重による衝撃に対してより高い衝撃吸収性を付与することが可能になる。
【0020】
更に、フレームSの荷重入力による変形が想定される所定部位よりも荷重入力点から遠い側(例えば、フロントサスタワー取付部Ctよりも後側)には、所定部位よりも荷重入力点から近い側(例えば、フロントサスタワー取付部Ctよりも前側)に比して、剛性が高い材料からなる肉盛り溶接ビード部を形成することが好ましい。これにより、上記所定部位よりも荷重入力点から遠い側(フロントサスタワー取付部Ctよりも後側)のフレーム部分に対して、より高い剛性を有効に付与することができる。
また、これにより当該フレームSに所要の変形特性、つまり、フロントサスタワー取付部Ctよりも前側は衝撃吸収性が高くて比較的変形し易く、後側は剛性が高く変形し難い変形特性を、比較的容易に付与することができる。
【0021】
尚、図2の例では、フレームインナSmに対して肉盛り溶接ビード部Dwを形成するようにしているが、要求される強度・剛性及び変形特性に応じてフレームアウタSp側に、或いは、インナ及びアウタの両方に溶接ビード部Dwを設けるようにしても良い。
また、図2の例では、フレームインナSm単体について肉盛り溶接が行われているが、本発明方法は、その施工方法に極めて高い柔軟性があり、設計自由度も高いので、適切な冶具を用意することにより、フレーム組立状態あるいは車体に組み付けた後においても、比較的容易に施工することが可能である。
【0022】
本発明に係るフレーム構造を採用することによる効果を確かめるために、真直した一定断面のフレーム供試材を用意し、強度,剛性,エネルギ吸収性等の種々の特性を調べる試験を行った。以下、これらの試験について説明する。
図2及び図3は、本発明に係る肉盛り溶接を施す前のベースとなるフレーム体A(ベースフレーム)の基本形状を示している。
【0023】
この図に示すように、このベースフレームAは、所定厚さの鋼板素材を断面ハット状にプレス加工して得られたフレームインナAmと、所定厚さのフラットな鋼板部材でなるフレームアウタApとを備え、上記フレームインナAmのフランジ部AfをフレームアウタApに当接させて組み合わせ、このフランジ部Afをスポット溶接で接合することにより組み立てられる。
【0024】
本実施の形態では、上記鋼板としてJISに規定されたSPCC鋼板を用い、フレームインナAmおよびフレームアウタApともに、その板厚を1.0mmとした。尚、フレームアウタApのみについて、板厚を1.4mmとしたものも用意した。
【0025】
以下に説明する本発明の実施例1〜実施例6に係るフレーム体(供試材)は、何れも、インナ及びアウタの両部材について、板厚が1.0mmのベースフレームAに対して肉盛り溶接ビードを設けたものである。
これら本発明実施例1〜7に対して、上記ベースフレームAを比較例1とし、また、フレームアウタApのみについて、その板厚を1.4mmとしたものを比較例2とした。
【0026】
図5及び図6は本発明実施例1に係るフレーム供試材A1を示している。この実施例1のフレーム体A1は、フレームインナA1mとフレームアウタA1pとで構成され、フレームインナA1mの外面において稜線部Eに沿って(つまり、外側角部に沿って)連続した肉盛り溶接ビード部Dwが形成されている。
【0027】
また、図7は本発明実施例2に係るフレーム供試材A2を示している。この実施例2のフレーム体A2は、フレームインナA2mとフレームアウタA2pとで構成され、フレームインナA2mの内面において稜線部Eに沿って(つまり、内側隅部に沿って)連続した肉盛り溶接ビード部Dwが形成されている。
【0028】
更に、図8〜図11はそれぞれ本発明実施例3〜6に係るフレーム供試材A3〜A6を示している。これら実施例のフレーム体A3〜A6は、各々フレームインナA3m〜A6mとフレームアウタA3p〜A6pとで構成され、フレームインナA3m〜A6mの外面において稜線部Eに沿って(つまり、外側角部に沿って)不連続に施工したステッチ状の肉盛り溶接ビード部Dwが形成されている。
このように、ステッチ状の肉盛り溶接ビードDwを形成することにより、その長手方向から圧縮荷重を受けた場合には、フレーム部材を規則的に折り畳まれるように変形させることができる。
【0029】
上記本発明実施例1〜6においては、溶接材として銅(Cu)系の溶接ワイヤ(日本ウエルディングロッド株式会社製:WEL MIG EP35)を用いた。このCu系の金属は変形により加工硬化を生じるので、フレームの衝撃吸収性を高めることができ、しかも、融点が比較的低いので、肉盛り溶接時のフレームへの熱影響を抑制することができる。
尚、フレームにより高い衝撃吸収性を付与することが求められる場合には、加工硬化性のより高い例えばオーステナイト系ステンレスをベースとした溶接材を用いることが好ましい。
【0030】
まず、本発明実施例に係るフレーム供試材の圧縮特性を調べるために、図12に示すような装置を用いて圧縮試験を行った。この圧縮試験には、本発明実施例として上述の実施例1のフレーム体A1を用い、比較例としては、上述のベースフレームAで、フレームアウタの板厚が1.0mmのもの(比較例1)と1.4mmのもの(比較例2)を用いた。
この圧縮試験では、装置ベースJbと圧子Jaの間に供試材(例えばフレームA1)を配設し、圧子Jaを静的に10mm/分の速度で下降させ、120mm圧縮するまでの圧縮変形量(mm)と圧縮荷重Fa(kN)とを、荷重−変形カーブとしてデータ採取した。各供試材についての荷重−変形カーブを図19に示す。
【0031】
この図19のグラフから良く分かるように、本発明実施例1の場合には、板厚条件が同じである比較例1と比べた場合、同一の変形量に対する圧縮荷重が高く、耐圧縮特性に優れており、フレームアウタの板厚が大きい比較例2と比べた場合、耐圧縮特性は大略同レベルとみなせるが、初期荷重がより低い。従って、圧縮変形時には、変形の進行に伴って平均的にエネルギ吸収を行うことができ、エネルギ吸収特性に優れているといえる。
【0032】
また、この荷重−変形カーブに基づいて、つまり、両縦軸と横軸と当該カーブとで囲まれた領域の面積を算出することにより、各供試材のエネルギ吸収量を求めた。各供試材のエネルギ吸収量をフレーム重量と併せて図20に示す。
この図20のグラフから良く分かるように、本発明実施例1の場合には、板厚条件が同じである比較例1と比べた場合、30gの重量増加で極めて高いエネルギ吸収性を得ることができた。また、フレームアウタの板厚が大きい比較例2と比べた場合、重量は60g軽量になり、でエネルギ吸収性は同等であった。しかしながら、図19のグラフで説明したように、本発明実施例1の場合には、比較例2に比べて、初期荷重がより低く、圧縮変形の進行に伴って平均的にエネルギ吸収を行うことができ、エネルギ吸収特性に優れているといえる。
【0033】
次に、上記圧縮試験と同様のフレーム供試材の組み合わせで、各フレームの曲げ剛性を調べる試験を行った。この曲げ剛性試験の試験結果を図21に示す。
この図21のグラフから良く分かるように、本発明実施例1の場合には、板厚条件が同じである比較例1と比べた場合、大幅に曲げ剛性が向上しており、フレームアウタの板厚が大きい比較例2と比べても、60g軽量であるにも拘わらず若干高い曲げ剛性が得られた。
【0034】
尚、フレームにより高い曲げ剛性を付与することが求められる場合には、剛性向上に有効な溶接材料として、タングステン合金や炭化物を含有した硬化肉盛り用の溶接材料(例えば、特殊電極株式会社製:MT−CA−11,MT−CA−21,MT−CA−40等)が有効である。
【0035】
次に、本発明をフレーム内に配設されるレインフォースメントに適用した場合について、供試材フレームを作製し、三点曲げ試験を行った。
図14及び図15に示すように、この三点曲げ試験では、上記比較例1のベースフレームAと同様の(従って、本発明実施例1のフレームA1と同様の)フレームインナA7mとフレームアウタA7p(共に板厚:1.0mm)の間に、断面ハット状のレインフォースメントArを挟み込んで、その重合したフランジ部をスポット接合することにより組み立てられる。
【0036】
そして、レンフォースメントArに肉盛り溶接を施さないでフレームインナA7mとフレームアウタA7pとを組み立てたものを比較例3とした。また、レンフォースメントArの稜線部の内側に沿って肉盛り溶接を施して連続ビームDwを形成し、これをフレームインナA7mとフレームアウタA7pの間に挟み込んで組み立てたフレームA7を本発明実施例7(図15参照)とした。
尚、肉盛り溶接材料としては、軟鋼用ワイヤ(日鉄溶接工業株式会社製:YТ−28)を用いた。
【0037】
この三点曲げ試験では、支点Mb及び圧子Maは、その先端形状が各々半径が15mm及び25mmの半円形状のものを用いた。そして、曲げ荷重Fbの負荷速度を10mm/分とし、最大荷重及び50mm変位までの吸収エネルギを求めた。
このように、本発明をレインフォースメントに適用した場合について行った三点曲げ試験の試験結果を図22に示す。
【0038】
この図22のグラフから良く分かるように、本発明実施例7の場合には、板厚条件が同じである比較例3と比べた場合、最大曲げ荷重で約33%、平均荷重(吸収エネルギ)で約10%の向上が認められ、両方の特性について効果があることが確認された。
【0039】
次に、オーステナイト系ステンレス溶接材を肉盛り溶接材料に用いた例について説明する。図16及び図17は、本発明実施例8のフレーム構造を示している。この実施例8では、共に断面ハット状に形成された鋼板部材A8mどうしを、そのフランジ部でスポット溶接することによりフレーム体A8が構成されている。
尚、この場合には、断面ハット状の鋼板部材の板材としては、板厚1.2mmのSPFC440鋼板を用いた。
【0040】
そして、肉盛り溶接を施さないベースフレームを比較例4とし、このべーフレーム4の各鋼板部材A8mに対して、その稜線部Eの内側に図16に示されるようにステッチ状の肉盛り溶接ビードDwを形成し、その後に組み立ててフレーム体A8としたものを、本発明実施例8とした。
尚、この肉盛り溶接には、溶接材料として線径1.2mmのオーステナイト系ステンレス溶接ワイヤY−308を用いた。このオーステナイト系ステンレスの場合、マルテンサイト変態が生じるので非常に加工硬化性が高いことが知られている。
【0041】
この本発明実施例8のフレームA8と比較例4のフレームとを供試材として、以下に示すような種々の試験を実施した。その結果を、図23〜図26に示す。
尚、各試験の試験装置及び方法は、前述の本発明実施例1又は実施例7で用いた装置及び方法或いは公知の装置及び方法と同様である。
【0042】
図23〜図26のグラフから良く分かるように、フレーム剛性(面内曲げ,面外曲げ及び捩り剛性:図23参照)、三点曲げ試験における曲げモーメント及び吸収エネルギ(図24参照)、軸圧縮最大荷重(図25参照)及び軸圧縮吸収エネルギ(図26参照)の何れについても、本発明実施例8の方が比較例4に比して優れた特性を示しており、本発明の効果が確認された。
【0043】
以上の本発明実施例1〜8では、何れもフレーム(若しくはフレームの一部としてのレインフォースメント)の稜線部に沿って肉盛り溶接ビード部を形成していたが、本発明実施例の参考例としては、例えば図18に示すフレーム体A9のように、稜線部ではなく、フレームA9を構成する板材A9m,A9nの平面部に、荷重入力が想定される方向(図18の場合には、フレーム長手方向)に沿った肉盛り溶接ビード部Dを形成するようにしても良い。
【0044】
尚、以上の実施の形態では、肉盛り溶接として主にMIG溶接が適用されていたが、選定された溶接材料の材質やタイプに応じて最適な溶接装置を採用することにより、より安定的な溶接ビードを得ることができる。すなわち、上記MIG溶接以外に、例えば、ТIG溶接やレーザ溶接などの他の公知の溶接法の何れをも適用することが可能である。更には、例えばバーナ加熱など溶接材料を溶融させる種々の手段の応用も可能である。
【0045】
また、以上の実施の形態は、主として自動車等の車両の車体構造を構成する鋼板製フレームについてのものであったが、本発明は、かかる場合に限定されるものではなく、他の種々の用途、或いは異なる材料のフレームに対しても有効に適用することができる。また、フレームが受ける荷重についても、その長手方向からの荷重に限定されるものではなく、例えば曲げ荷重や捩り荷重あるいはせん断荷重、更にはその組み合わせなど、他の種々の荷重入力が想定されるフレームについても、有効に適用することが可能である。
【0046】
このように、本発明は、以上の実施態様に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良あるいは設計上の変更が可能であることは言うまでもない。
【0047】
【発明の効果】
本願第1の発明に係るフレーム構造によれば、所定厚さの板材により形成され、所定部位よりも荷重入力点から近い側は衝撃吸収性が高くて比較的変形し易く、上記所定部位よりも荷重入力点から遠い側は剛性が高く変形し難い、変形特性を備えたフレームについて、その内面及び/又は外面に、少なくとも全体として当該フレームへの荷重入力方向に沿った肉盛り溶接ビード部が形成されているので、想定される荷重入力に対してフレームの強度及び/又は剛性を向上させることができる。この場合において、当該フレームに求められる強度特性及び/又は剛性特性、更には変形特性に応じて、肉盛り溶接ビードを形成すべき部位を設定し(従って、部分補強も容易にでき)、また、好適な溶接材料を選定することにより、大幅なフレーム重量増加を招くことなく、当該フレームに対して所要の強度特性及び/又は剛性特性、更には変形特性を付与することが可能になる。しかも、一般的な溶接設備によって施工できるので汎用性が高く、また、適用範囲に過度な制限を受けることもない。
特に、上記肉盛り溶接ビードはフレームの稜線部に沿って形成されているので、より効果的で効率良く、フレームの強度及び/又は剛性の向上を図ることができる。
また、特に、上記フレームの所定部位よりも荷重入力点から遠い側、所定部位よりも荷重入力点から近い側に比して、剛性が高い材料からなる肉盛り溶接ビード部が形成されているので、上記所定部位よりも荷重入力点から遠い側のフレーム部分に対して、より高い剛性を有効に付与することができる。しかも、当該フレームに所要の変形特性を容易に付与することができる。
【0051】
更に、本願の第の発明によれば、車両の車体の構造部材であるフレームについて、上記第1の発明と同様の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るフロントフレームの斜視図である。
【図2】 上記フロントフレームのフレームインナへの肉盛り溶接施工例を示す斜視図である。
【図3】 本発明の効果を確認する試験に用いたベースフレームの平面図である。
【図4】 図3のY4−Y4線に沿ったベースフレームの断面図である。
【図5】 本発明実施例1に係るフレームの斜視図である。
【図6】 上記実施例1に係るフレームの端面図である。
【図7】 本発明実施例2に係るフレームの端面図である。
【図8】 本発明実施例3に係るフレームの斜視図である。
【図9】 本発明実施例4に係るフレームの斜視図である。
【図10】 本発明実施例5に係るフレームの斜視図である。
【図11】 本発明実施例6に係るフレームの斜視図である。
【図12】 本発明実施例1についての圧縮試験の試験装置の概略を示す説明図である。
【図13】 図12のY13−Y13線に沿った供試フレームの断面図である。
【図14】 本発明実施例7についての三点曲げ試験の試験装置の概略を示す説明図である。
【図15】 図14のY15−Y15線に沿った供試フレームの断面図である。
【図16】 本発明実施例8に係るフレームの平面図である。
【図17】 図16のY17‐Y17線に沿った上記実施例8に係るフレームの断面図である。
【図18】 本発明実施例の参考例に係るフレームの斜視図である。
【図19】 本発明実施例1についての圧縮試験での荷重−変形特性を示すグラフである。
【図20】 本発明実施例1についての圧縮試験でのエネルギ吸収特性を示すグラフである。
【図21】 本発明実施例1についての曲げ剛性試験の試験結果を示すグラフである。
【図22】 本発明実施例7についての三点曲げ試験の試験結果を示すグラフである。
【図23】 本発明実施例8についてのフレーム剛性(面内曲げ,面外曲げ及び捩り剛性)試験の試験結果を示すグラフである。
【図24】 本発明実施例8についての三点曲げ試験の試験結果を示すグラフである。
【図25】 本発明実施例8についての圧縮試験における軸圧縮最大荷重を示すグラフである。
【図26】 本発明実施例8についての圧縮試験における軸圧縮吸収エネルギを示すグラフである。
【符号の説明】
A1〜A…フレーム
Dw…肉盛り溶接ビード部
E…稜線部
S…フロントサイドフレーム

Claims (2)

  1. 所定厚さの板材により形成され、所定部位よりも荷重入力点から近い側は衝撃吸収性が高くて比較的変形し易く、上記所定部位よりも荷重入力点から遠い側は剛性が高く変形し難い、変形特性を備えたフレームの構造であって、
    上記フレームの内面及び/又は外面に、少なくとも全体として当該フレームへの荷重入力方向に沿い、且つ当該フレームの稜線部に沿って肉盛り溶接ビード部が形成され、
    上記肉盛り溶接ビード部は、上記フレームの所定部位よりも荷重入力点から遠い側上記所定部位よりも荷重入力点から近い側に比して、剛性が高い材料から形成されている、
    ことを特徴とするフレーム構造。
  2. 上記フレームは、車両の車体の構造部材であることを特徴とする請求項1に記載のフレーム構造。
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