JP6687178B1 - 自動車骨格部材 - Google Patents
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Abstract
Description
上記特許文献1に記載の技術においては、本体部材とレインフォース部材とのHAZにおける強度低下は考慮されておらず、強度向上の観点から改善の余地があるという問題があった。また、骨格部材に求められる衝撃吸収特性についても改善の余地があるという問題があった。
また、上記特許文献2に記載の技術においては、熱間プレス成型により、HAZにおける強度の改善は期待できるが、部材同士の接合強度において、さらなる改善の余地がある。
第一の鋼板と第二の鋼板と、前記第一の鋼板と前記第二の鋼板との界面を接合する第一の溶接金属部とを備え、
前記第一の鋼板の引張強さは1.0GPa以上1.6GPa以下であり、
前記第二の鋼板の引張強さは1.8GPa以上2.5GPa以下であり、
前記第一の鋼板は溝部を備え、
前記第二の鋼板は前記溝部に重ね合わされ、
前記第二の鋼板の前記第一の溶接金属部の周囲4mm以内の領域の最低ビッカース硬度は、前記第二の鋼板の前記領域の外側の硬度の80%以上である、
自動車骨格部材が提供される。
第三の鋼板と、前記第三の鋼板と前記フランジ部との界面を接合する第二の溶接金属部とを備え、
前記第三の鋼板の引張強さは0.45GPa以上、1.6GPa以下であっても良い。
[骨格部材の外観例]
まず、図1を参照して、本開示の第一の実施形態に係る自動車骨格部材1の概略構成について説明する。なお、以下では、「自動車骨格部材」を省略して「骨格部材」と呼ぶことがある。
図1は、本実施形態に係る骨格部材1の一例を示す斜視図である。図1に示すように、骨格部材1は、一例として、図1に示すY方向を長手方向として延在され、短手方向に沿った断面(X−Z平面)視で、Z方向が開口された矩形状となっている部材である。特に、骨格部材1は、短手方向に沿った断面(X−Z平面)視で略ハット形状を有している。骨格部材1は、第一の鋼板10と第二の鋼板20とが、重ね合わされている。第一の鋼板10と第二の鋼板20とは、複数の第一の溶接金属部40を介して溶接されて一体化されている。
なお、フランジ部17が板状部材(図示せず、後述する第三の鋼板としての板状部材30に相当)と溶接されることによって、骨格部材1は、閉断面形状とすることができる。ここで、図1におけるX−Z平面断面とは、第一の屈曲部13の稜線に垂直な面である。第一の屈曲部13の稜線は、第一の天壁部11の外表面を延在させた仮想面と、第一の縦壁部15の外表面を延在させた仮想面との交線を稜線とする。
第二の鋼板20は溝部18において第一の鋼板10に重ね合わされていればよく、次のいずれの場合でも良い。第二の鋼板20が、第一の鋼板10の第一の天壁部11と両側の第一の縦壁部15の内側または外側に配置される場合。第二の鋼板20が、第一の鋼板10の第一の天壁部11と片方のみの第一の縦壁部15の内側または外側に配置される場合。第二の鋼板20が、第一の鋼板10の第一の天壁部11、第一の縦壁部15の何れかの内側または外側に配置される場合。
図2を参照して、第二の鋼板20による骨格部材1の強度向上効果について具体的に説明する。図2は、本実施形態に係る骨格部材1の曲げ強度比と、第二の鋼板20の引張強さとの関係を示すグラフである。図2において、第二の鋼板20の鋼板を、第一の鋼板10に用いられる鋼板の強度クラスの上限である、引張強さが1.6GPaの鋼板とした場合の、骨格部材1の曲げ強度を1として比較対象としている(図2中の白丸)。このとき、第二の鋼板20として、引張強さが1.8GPaの鋼板を用いた場合、骨格部材1の曲げ強度比は、1.15程度の値を示す。すなわち、第二の鋼板20の鋼板を、引張強さが1.8GPa以上とすることで、骨格部材1全体としての強度が向上する。また、第二の鋼板20として、引張強さが2.0GPaの鋼板を用いた場合、骨格部材1の曲げ強度比は、1.23程度の値を示す。さらに、第二の鋼板20として、引張強さが2.5GPaの鋼板を用いた場合、骨格部材1の曲げ強度比は、1.45程度の値を示す。
一方、第二の鋼板20の引張強さが高くなりすぎると、後述するように、第一の溶接金属部40の硬度が高くなりすぎ、第一の鋼板10と第二の鋼板20との接合強度が低下してしまう恐れがある。そのため、第二の鋼板20の引張強さは、2.5GPa以下とする。
なお、骨格部材1を閉断面に形成する場合、第二の溶接金属部41は、フランジ部17と板状部材30との界面の任意の位置とすることができ、点状、C字状、コの字状、楕円状、所定の長さを有する線状、ジグザグ状などとすることができる。
また、第二の鋼板20の周辺領域62における硬度の下限値(最低ビッカース硬度)を制御することに加えて、第一の溶接金属部40のビッカース硬度が所定の範囲内とされることも重要である。すなわち、第一の溶接金属部40では、第一の鋼板10と第二の鋼板20が溶融して凝固するため、第一の溶接金属部40の硬度は、第一の鋼板10の硬度と第二の鋼板20の硬度とのほぼ平均値と推定できる。
上述したように、骨格部材1の全体の強度を向上させるためには、補強部材として用いる第二の鋼板20の引張強さが高ければ高いほど有効である。しかしながら、第一の溶接金属部40の硬度は、第一の鋼板10の硬度と第二の鋼板20の硬度とのほぼ平均値となるため、第二の鋼板20の引張強さが高くなると、比例して第一の溶接金属部40の硬度も高くなる関係にある。その結果、第一の溶接金属部40の硬度が高くなりすぎて靭性が劣化し、骨格部材1に外力が加わった際に、第一の溶接金属部40が破断してしまう心配がある。
図6に示すように、いずれも平板状の第一の鋼板10と第二の鋼板20とを第一の溶接金属部40で接合した。第一の溶接金属部40の直径(ナゲット径)は6.3mmである。そして、第一の鋼板10と第二の鋼板20とを互いに引っ張り、引張せん断強さ(kN)を測定した。結果を表2、図7に示す。
本実施形態によれば、比較的強度の低い鋼板からなる第一の鋼板10と、比較的強度の高い鋼板からなる第二の鋼板20とを溶接し、骨格部材1として強度を向上しつつ、さらに第一の溶接金属部40において硬度低下を回避したので、強度の高い鋼板による補強効果を十分に発揮することができる。さらに、本実施形態において、従来の熱影響部に代わり、第一の溶接金属部40の端部より4mm外側までの領域における硬度の変化を制御した。この結果、第一の溶接金属部40の周辺に熱影響部の強度低下域が生じないため、衝突時に強度低下域を起点に部材が破断することなく、第一の鋼板10と第二の鋼板20との溶接による強度向上効果を最大限に発揮させることができる。
次に、本実施形態に係る骨格部材1の変形例について、図8を用いて説明する。図8は、本実施形態に係る骨格部材1のその他の例を示す斜視図である。本変形例は、上述した実施形態と、第二の鋼板20の第二の縦壁部25の端縁の形状で相違する。なお、本変形例のその他の構成は、上述の実施形態と共通するので説明は省略する。
次に、図9を参照しながら、本実施形態に係る骨格部材1の製造方法の一例について説明する。図9は、本実施形態に係る骨格部材の製造方法の一例を示す図である。図9に示すように、まず、第一の鋼板10と、第二の鋼板20とが、ブランク材(平板部材)として用意される。続いて、第一の鋼板10と第二の鋼板20とが、第一の溶接金属部40を介して、互いに溶接される。第一の溶接金属部40を介して一体化された第一の鋼板10と第二の鋼板20とから成るブランク材は、加熱炉において、約900℃のオーステナイト領域まで加熱される。その後、ブランク材は、ホットスタンプ工法により、所定の形状に成形されるとともに、焼き入れされて、骨格部材1が形成される。この時、加熱・焼き入れ工程により第一の溶接金属部40の熱影響部の硬度が所定の範囲内に制御される。続いて、ショットブラストが施され、鋼板表面のスケールが除去される。なお、鋼板において、アルミ系めっき、亜鉛系めっきなど、めっき処理が施されている場合は、ショットブラスト工程は不要である。
自動車等の骨格部材の剛性を部分的に高めるために、剛性を高める箇所に、第一の鋼板に第二の鋼板を重ね合わせることが行われている。このとき、焼き入れされた(熱間プレスされた)鋼板同士を重ね合わせて溶接すると、溶接金属部の周囲が軟化する。すなわち、溶接金属部の周囲にHAZ軟化部が出現する。HAZ軟化部があると、自動車等の骨格部材に荷重が付与されたとき、HAZ軟化部から骨格部材が壊れやすくなる。これを避けるために、本開示では、あらかじめ第一の鋼板10と第二の鋼板20を重ね合わせて溶接することで作成した熱間プレス用鋼板を予め用意しておき、熱間プレス(ホットスタンプ)する。これにより、溶接したときに生じたHAZ軟化部を、熱間プレス(ホットスタンプ)時の焼入れで消失させることができる。
なお、焼き入れ後(ホットスタンプされた後)の第一の溶接金属部40の硬さがビッカース硬度で400〜540Hvであれば望ましい。
本開示の骨格部材1は、先に図3で説明したように、閉断面に形成されていても良い。閉断面とする場合、第三の鋼板としての板状部材30が、第一の鋼板10のフランジ部17に溶接される。このため、第一の鋼板10のフランジ部17と板状部材30との界面に、第二の溶接金属部41が存在する。
しかしながら、先に図5Aにも示したように、第一の鋼板10の引張強さは1.0GPa〜1.6GPaと比較的低い値であるため、第一の鋼板10においては、HAZによる強度低下の影響は少なくできる。また同様に、第三の鋼板としての板状部材30の引張強さを0.45〜1.6GPaと比較的低い値とすることにより、板状部材30においても、HAZによる強度低下の影響は少なくできる。より好適には板状部材30の引張強さは、0.6〜1.35GPaであり、最適には0.6〜1.25GPaである。
なお、板状部材30は一般にクロージングプレートとも呼ばれる。板状部材30(クロージングプレート)は引張強さが低くても骨格部材1全体の性能(初期荷重,衝撃エネルギー吸収性能)は下がりにくい。また、第一の鋼板10と板状部材30に、比較的引張強さの低い、炭素含有量の低い鋼板を用いることで、第一の鋼板10のフランジ部17と板状部材30との溶接も良好となり、両者間の接合強度が向上する。
以上、本開示の好適な実施の形態について詳細に説明した。ここから、図10〜図15Cを参照して本開示の実施形態に係る骨格部材の適用例について説明する。図10は、本開示実施形態に係る骨格部材1が適用される一例としての自動車骨格100を示す図である。骨格部材1は、キャビン骨格または衝撃吸収骨格として自動車骨格100を構成し得る。キャビン骨格としての骨格部材1の適用例は、ルーフセンタリンフォース201、ルーフレール203、Bピラー207、サイドシル209、トンネル211、Aピラーロア213、Aピラーアッパー215、キックリーンフォース227、フロアクロスメンバ229、アンダーリーンフォース231、フロントヘッダ233等が挙げられる。
その他の構成は、図11Aおよび図11Bに示したBピラー207aと同様であるので、説明は省略する。なお、図11Aに示したBピラー207aについても、第一の鋼板10の下部は図12Aと同様に、第一の鋼板10より引張強さの低い第四の鋼板と溶接されていてもよい。
10 第一の鋼板
11 第一の天壁部
13 第一の屈曲部
15 第一の縦壁部
17 フランジ部
18 溝部
20 第二の鋼板
21 第二の天壁部
23 第二の屈曲部
25 第二の縦壁部
30 板状部材(第三の鋼板)
40 第一の溶接金属部
41 第二の溶接金属部
62 周辺領域(領域)
70 相手部材(第三の鋼板)
Claims (3)
- 第一の鋼板と第二の鋼板と、前記第一の鋼板と前記第二の鋼板との界面を接合する第一の溶接金属部とを備え、
前記第一の鋼板の引張強さは1.0GPa以上1.6GPa以下であり、
前記第二の鋼板の引張強さは1.8GPa以上2.5GPa以下であり、
前記第一の鋼板は溝部を備え、
前記第二の鋼板は前記溝部に重ね合わされ、
前記第二の鋼板の前記第一の溶接金属部の周囲4mm以内の領域の最低ビッカース硬度は、前記第二の鋼板の前記領域の外側の硬度の80%以上である、
自動車骨格部材。 - 前記第一の溶接金属部のビッカース硬度は400以上540以下である請求項1の自動車骨格部材。
- 前記第一の鋼板は前記溝部の外側にフランジ部を備え、
第三の鋼板と、前記第三の鋼板と前記フランジ部との界面を接合する第二の溶接金属部とを備え、
前記第三の鋼板の引張強さは0.45GPa以上、1.6GPa以下である、
請求項1又は2の自動車骨格部材。
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