JP5002777B2 - アクリル系粘着テープの製法およびアクリル系粘着テープ - Google Patents
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Description
【発明の技術分野】
本発明は、実質的に溶剤を含有していないアクリル系粘着剤組成物を用いて粘着テープを製造する方法およびこうして得られた粘着テープに関する。
【0002】
【従来技術】
従来から感圧接着剤としては、ゴム系接着剤および合成ゴムが使用されているが、これらの成分だけでは充分な接着強度が得られない。こうした感圧接着剤に有効な特性を付与するために、従来の感圧接着剤には、ロジン酸誘導体に代表されるような粘着付与剤が添加されている。
【0003】
例えばアクリル系感圧接着剤の場合、(メタ)アクリルポリマーはそれ自身に粘着感があり、粘着付与剤を添加しなくとも耐熱性および耐候性の良好な感圧接着剤となりうるが、粘着付与剤を添加したものに比べ、常温での接着性、および、ポリオレフィン、自動車塗料面など低エネルギー表面への接着性に劣っている。このようなアクリル系感圧接着剤においても、粘着付与剤を添加することにより、有効な接着特性が付与されている。
【0004】
しかしながら、このような粘着付与剤の添加によってもたらされる接着特性の改善は、必ずしも満足できるものとはいえない。また、アクリル系感圧接着剤にこのような粘着付与剤を添加することによる問題もある。アクリル系感圧接着剤にロジン酸誘導体に代表されるような一般的な市販の粘着付与剤を添加すると、透明性や耐候性が低下することが多い。さらに、このような粘着付与剤がバルク重合反応時に存在する場合には、その構造により連鎖移動剤や反応停止剤として作用し、重合反応の阻害もしくは遅延を招来する虞がある。
【0005】
また、感圧接着剤に 粘着付与剤としてアクリル系ポリマーを配合することが知られている。例えば特開昭54−3136号公報には、アクリル系ポリマーおよび粘着付与剤を含む感圧接着剤が開示されている。ここで使用されている粘着付与剤はビニル芳香族化合物と(メタ)アクリル酸エステルとを溶液重合させることにより得られるものであり、数平均分子量が500〜3000であり、軟化点が40℃以下である。これに対して特開平1−139665号公報には、炭素数1〜20のアルキル基およびシクロアルキル基を有する(メタ)アクリレート、遊離基適合性オレフィン酸(具体的にはアクリル酸など)、および、所望により他のエチレン性不飽和モノマーを重合させることにより得られた数平均分子量が35000以下であり、軟化点が40℃以上のポリマー型添加剤を含有する接着剤組成物の発明が開示されている。この公報には、ポリマー型添加剤は、乳化重合、濁懸重合、溶液重合、塊状重合のいずれによっても製造できると記載されている。また、この公報には、「このポリマー型添加剤は既知の方法、例えば混合またはブレンド法により接着剤組成物に添加して、添加物を接着剤組成物に均一に含有させる。添加物は好ましくはエマルジョン、または水性/有機溶剤組み合わせ溶質中の乳化液の形で粘着剤組成物に添加される。」と記載されている。
【0006】
しかしながら、この公報では、ポリマー型添加剤は、乳化重合あるいは溶液重合により製造されており、このように溶媒又は分散媒に乳化分散あるいは溶解した状態で乳化重合あるいは溶液重合により調製された粘着剤に配合されている。
このように上記公報において、いずれも乳化重合あるいは溶液重合により得られた粘着剤およびポリマー型添加剤を使用しているのは、従来から溶媒又は分散媒を用いずにアクリル系単量体を重合できることは知られていたが(塊状重合)、こうした溶媒又は分散媒を用いずに行われるアクリル系単量体の重合は、反応制御が極めて困難であり、一定の特性を有する重合体を選択的に製造することができなかったからである。また、溶液重合あるいは乳化重合により製造された粘着剤およびポリマー型添加剤は、溶媒又は分散媒と共に混合することにより、容易に均質な組成物を製造することができるからに他ならない。
【0007】
ところが、こうした溶剤型粘着剤組成物やエマルジョン型粘着剤組成物を使用して接着する際には、溶剤又は水を除去する工程が必要になり、例えば蒸発潜熱の大きい水を使用した場合などにおいては、乾燥工程が非常に長くなる。また、有機溶媒を用いた場合には、気散する有機溶媒を捕捉するための装置も必要になり、また環境への影響も懸念されるという問題がある。
【0008】
一方、溶媒又は分散媒を使用せずに感圧接着剤を製造する方法として、特開昭50−87129号公報および特開昭50−102635号公報があり、これらの公報には、(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、特定の極性基を有するビニル単量体との混合物に、これらの(共)重合体および重合開始剤を添加して得られた混合物を支持体シートに塗布し、加熱重合する感圧性接着テープの製造方法が開示されている。そして、特開昭50−87129号公報では、酸素の重合禁止作用により通常の重合開始剤では、重合が円滑に進まないために、レドックス型重合開始剤が使用されており、また特開昭50−102635号公報では、塗設された原料粘着剤組成物の上に離型性シートもしくはベルトを重ねて酸素との接触を断って熱重合反応させている。
【0009】
このようにして(メタ)アクリル酸アルキルエステルを溶媒として用い、ここにアクリル(共)重合体を配合することより、有機溶剤を使用せずに感圧接着性を有するテープを製造することができる。
しかしながら、上記公報に開示されている方法では、加熱重合により溶媒として使用したモノマーを重合していることから、空気中の酸素と接触する可能性の高い塗布層の表面部では、常に酸素との接触による反応停止の虞があり、層の厚さ方向において、均一に重合が進行しにくいという問題がある。また、ここで使用されるモノマーは、(共)重合体を溶解する必要があることから、溶質である(共)重合体と同一あるいは近似した組成を有している。従って、上記公報に記載されている方法で得られた粘着テープの粘着剤層は、ほぼ同一の組成を有する(共)重合体から形成されている。
【0010】
このようなほぼ単一の組成を有する(共)重合体からなる粘着剤層では、ポリオレフィンのような接着しにくいとされている被着体に対して充分な接着強度が発現しない。
また、特開平2−60981号公報には、アクリル酸アルキルエステルを主成分とするビニル系モノマーに光重合開始剤を添加した液状物を、基材に塗布又は含浸し、強度1〜300W/m2の紫外線を照射して少なくとも90重量%を重合反応させ、次にその強度以上の紫外線を照射して重合反応を完結させるアクリル系粘着テープの製造方法が開示されている。そして、この方法では、酸素による重合阻害及び重合遅延を防止するために、イナートガスパージを行う方法やポリエステルフィルムで表面をカバーして酸素との接触を防止する方法、または、脱酸素効果のある化合物を添加する方法などが開示されている。しかし、こうした方法では、溶存する酸素を完全に除去することはできない。さらに、この公報に記載されている高分子量ポリマーを得る条件では、重合初期の段階において溶存する酸素の影響により重合が遅延される。そのために、重合反応時間(UV照射時間)が長くなり、生産性が低下するという問題がある。
【0011】
【発明の目的】
本発明は、光重合により、粘着力及び凝集力等の粘着性能に優れたアクリル系粘着テープを製造する方法を提供することを目的としている。
さらに本発明は、粘着力及び凝集力などの粘着性能に優れたアクリル系粘着テープを提供することを目的としている。
【0012】
また、本発明は、特に光学部材の貼着に適したアクリル系粘着テープおよびその製造方法を提供することを目的としている。
【0013】
【発明の概要】
本発明のアクリル系粘着テープの製造法は、(a)(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系モノマーと、該アクリル系モノマー100重量部に対して、
(b)(メタ)アクリル酸エステル成分単位を主構成単位とし、重量平均分子量が50000以上である高分子量ポリマーを5〜200重量部と、
必要により、(c-1)(メタ)アクリル酸エステル成分単位を主構成単位とし、重量平均分子量が20000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が25〜200℃の範囲内にある高Tg低分子量ポリマー、または、(c-2)(メタ)アクリル酸エステル成分単位を主構成単位とし、重量平均分子量が20000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が−85〜20℃の範囲内にある低Tg低分子量ポリマーを5〜300重量部と、
(d)光重合開始剤を0.01〜5重量部と、
(e)架橋剤を含有し、実質的に溶媒を含有しない組成物を支持体上に流涎し、
該組成物の温度を0〜10℃の範囲内に維持して該組成物を反応させることを特徴としている。
【0014】
また、本発明のアクリル系粘着テープは、支持体と、該支持体上に流涎された上記(a)〜(e)成分を含有し、実質的に溶媒を含有しない組成物の温度を0〜10℃の範囲内に維持して該組成物を反応させた粘着剤層を有することを特徴としている。
本発明において、支持体上に流涎された上記組成物の温度を0〜10℃の範囲内に維持して重合反応を進行させることにより、反応が急激に進行することがなく、また、ラジカル連鎖移動反応も抑制される。さらに支持体上に塗布された組成物の表面の反応活性も低いので、この組成物が反応する際に空気中の酸素などから受ける影響が少なく、所望の促成の粘着剤層を形成することができる。
【0015】
【発明の具体的説明】
次に本発明のアクリル系粘着テープについて、その製造方法に沿って具体的に説明する。
本発明のアクリル系粘着テープは
(a)アクリル系モノマーと、
(b)高分子量ポリマーと、
必要により、(c-1)高Tg低分子量ポリマー、または、(c-2)低Tg低分子量ポリマーと、
(d)光重合開始剤と、
(e)架橋剤とを含有し、実質的に溶媒を含有しない組成物を用いて支持体上で特定温度条件下に重合反応させることにより製造される。
【0016】
本発明で使用される(a)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするモノマーである。
この(a)(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系モノマーは、後述する特定の高分子量ポリマーおよび低分子量ポリマーを溶解もしくは分散すると共に、この(a)アクリル系モノマー自体が共重合して粘着剤を形成する。
【0017】
このような(a)(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系モノマーの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸の脂環族アルコールとのエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0018】
本発明で使用される(a)(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系モノマーは上記(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするものであるが、さらに他のモノマーを含有していてもよい。本発明で使用することができる他のモノマーの例としては、
(メタ)アクリル酸、
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、
(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、
(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などの塩;
エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;
(メタ)アクリル酸-2-クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;
(メタ)アクリル酸シクロヘキシルのような脂環式アルコールの(メタ)アクリル酸エステル;
2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸-2-アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;
アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;
(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;
フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;
イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸(ただし(メタ)アクリル酸を除く)、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;
2-クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;
メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシエチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;
ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2-メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等を挙げることができる。このような単量体は単独であるいは組み合わせて、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合させることができる。
【0019】
ただし、本発明において(a)アクリル系モノマーは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするものであり、従って(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上の量で含有している。
本発明で使用される (b) 高分子量ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル成分単位を主構成単位とし、重量平均分子量が50000以上、好ましくは100000〜2000000の範囲内にあるアクリル系ポリマーである。なお、本発明において重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により求めた値である。
【0020】
この(b)高分子量粘着性ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させることにより形成される。
本発明では、こうした(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルを用いることができる。
【0021】
このような(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸の脂環族アルコールとのエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは組み合わせて使用することができる。
【0022】
本発明で使用される(b)高分子量ポリマーは、重合性不飽和結合を有するモノマーとして、上記(メタ)アクリル酸エステルを主成分として用いて調製される。従って、本発明で使用される(b)高分子量ポリマーは、上記のような(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位((メタ)アクリル酸エステル成分単位)を、単量体換算で50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上の量で有している。
【0023】
本発明で使用される(b)高分子量ポリマーは、上記の(メタ)アクリル酸エステル成分単位のほかに、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体から誘導される繰り返し単位を有していてもよい。
このような単量体の例としては、
(メタ)アクリル酸、
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、
(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、
(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などの塩;
エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;
(メタ)アクリル酸-2-クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;
2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸-2-アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;
アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;
(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;
フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;
イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸(ただし(メタ)アクリル酸を除く)、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;
2-クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;
メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシエチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;
ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2-メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等を挙げることができる。このような単量体は単独であるいは組み合わせて、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合させることができる。
【0024】
本発明で使用される(b)高分子量ポリマーの例としては、ブチルアクリレート/2-エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸/2-ヒドロキシエチルアクリレートの共重合体、2-エチルヘキシルアクリレート/アクリル酸/2-ヒドロキシエチルアクリレートなどの共重合体を挙げることができる。
この(b)高分子量ポリマーは、通常はガラス転移温度(Tg)を有しており、この(b)高分子量ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、後述する高Tg低分子量ポリマーよりも低いガラス転移温度(Tg)を有している。すなわち、この(b)高分子量ポリマーのガラス転移温度(Tg)は、通常は0〜−85℃、好ましくは−5〜−85℃である。
【0025】
この(b)高分子量ポリマーは、上記(a)アクリル系モノマー100重量部に対して、5〜200重量部、好ましくは5〜150重量部の量で配合される。このような量で(b)高分子量ポリマーを使用することにより(a)アクリル系モノマーにこの(b)高分子量ポリマーが良好に溶解もしくは分散する。
本発明で使用される組成物には(c-1) 高Tg低分子量ポリマー、または、(c-2) 低Tg低分子量ポリマーのいずれかを必要により配合する。
【0026】
ここで(c-1) 高Tg低分子量ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル成分単位を主構成単位とするポリマーであり、その重量平均分子量が20000以下、好ましくは10000以下であり、特に10000〜2000の範囲内にあり、このアクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は25〜200℃、好ましくは40〜180℃の範囲内にある。
【0027】
また、本発明で使用される(c-2) 低Tg低分子量ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステル成分単位を主構成単位とするポリマーであり、その重量平均分子量が20000以下、好ましくは10000以下であり、特に10000〜2000の範囲内にあり、このアクリル系ポリマーのガラス転移温度(Tg)は−85〜20℃の範囲内にある。この(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーの重量平均分子量が20000を超えると本発明の組成物を用いて得られる粘着テープにおける粘着性能の向上効果が充分には発現しない。
【0028】
上記のような(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーは、(メタ)アクリル酸エステルは、(メタ)アクリル酸エステルを主成分とする重合性不飽和結合を有するモノマーを重合させることにより形成される。
本発明では、こうした(メタ)アクリル酸エステルとして、(メタ)アクリル酸と炭素数1〜20のアルキル基を有するアルコールとの(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数3〜14の脂環族アルコールとのエステル、(メタ)アクリル酸と炭素数6〜14の芳香族アルコールとのエステルを用いることができる。
【0029】
このような(メタ)アクリル酸エステルの例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸-2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルのような(メタ)アクリル酸アルキルエステル;
シクロヘキシル(メタ)アクリレートのような(メタ)アクリル酸の脂環族アルコールとのエステル;
(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジルのような(メタ)アクリル酸アリールエステルを挙げることができる。このような(メタ)アクリル酸エステルは単独であるいは組み合わせて使用することができる。本発明で使用される(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーは、重合性不飽和結合を有するモノマーとして、上記(メタ)アクリル酸エステルを主成分として用いて調製される。従って、本発明で使用される(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーは、上記のような(メタ)アクリル酸エステルから誘導される繰り返し単位((メタ)アクリル酸エステル成分単位)を、単量体換算で50重量%以上、好ましくは70重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上の量で有している。
【0030】
本発明で使用される(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーは、上記の(メタ)アクリル酸エステル成分単位のほかに、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能な単量体から誘導される繰り返し単位を有していてもよい。
このような単量体の例としては、
(メタ)アクリル酸、
(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、
(メタ)アクリル酸プロポキシエチル、(メタ)アクリル酸ブトキシエチル、
(メタ)アクリル酸エトキシプロピルのような(メタ)アクリル酸アルコキシアルキル;
(メタ)アクリル酸アルカリ金属塩などの塩;
エチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエチレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、プロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、ジプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル、トリプロピレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステルのような(ポリ)アルキレングリコールのジ(メタ)アクリル酸エステル;
トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリル酸エステルのような多価(メタ)アクリル酸エステル;
(メタ)アクリロニトリル;酢酸ビニル;塩化ビニリデン;
(メタ)アクリル酸-2-クロロエチルのようなハロゲン化ビニル化合物;
2-ビニル-2-オキサゾリン、2-ビニル-5-メチル-2-オキサゾリン、2-イソプロペニル-2-オキサゾリンのようなオキサゾリン基含有重合性化合物;
(メタ)アクリロイルアジリジン、(メタ)アクリル酸-2-アジリジニルエチルのようなアジリジン基含有重合性化合物;
アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸-2-エチルグリシジルエーテルのようなエポキシ基含有ビニル単量体;
(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチル、アクリル酸-2-ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸とポリプロピレングリコールまたはポリエチレングリコールとのモノエステル、ラクトン類と(メタ)アクリル酸-2-ヒドロキシエチルとの付加物のようなヒドロキシル基含有ビニル化合物;
フッ素置換メタクリル酸アルキルエステル、フッ素置換アクリル酸アルキルエステル等の含フッ素ビニル単量体;
イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸のような不飽和カルボン酸(ただし(メタ)アクリル酸を除く)、これらの塩並びにこれらの(部分)エステル化合物および酸無水物;
2-クロルエチルビニルエーテル、モノクロロ酢酸ビニルのような反応性ハロゲン含有ビニル単量体;
メタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、N-メトキシエチルメタクリルアミド、N-ブトキシメチルメタクリルアミドのようなアミド基含有ビニル単量体;
ビニルトリメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、トリメトキシシリルプロピルアリルアミン、2-メトキシエトキシトリメトキシシランのような有機ケイ素基含有ビニル化合物単量体;
その他、ビニル基を重合したモノマー末端にラジカル重合性ビニル基を有するマクロモノマー類等を挙げることができる。このような単量体は単独であるいは組み合わせて、上記(メタ)アクリル酸エステルと共重合させることができる。
【0031】
さらにこの(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーには、エポキシ基またはイソシアネート基と反応性を有する官能基が導入されていることが好ましい。このような官能基の例としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、メルカプト基を挙げることができ、(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーを製造する際にこうした官能基を有するモノマーを使用することが好ましい。通常の場合、この(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーは、上記(a)アクリル系モノマー100重量部に対して、5〜300重量部の量で使用され、好ましくは10〜200重量部の量で使用される。このような(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーを使用することにより、得られるアクリル系粘着テープが優れた応力緩和性を有するようになり、貼着面積が大きくなっても貼着面外周部における貼着性能の低下が少ない。特にガラス転移温度(Tg)の低い低Tg低分子量ポリマー(c-2)を用いた場合にこの傾向が高くなる。このような貼着面積が大きい場合において、貼着面の外周部における貼着性能に変化がないという特性は、液晶素子のような光学素子用の粘着テープとして特に重要性が高い。すなわち、例えば液晶素子では、透明基板の表面に偏光板が貼着されているが、液晶素子が大きくなるに従って透明基板と偏光板とが接着された終縁部における応力が大きくなるにつれて、この周縁部から光が漏れ出す光抜けという現象が発生しやすくなる。このような内部応力は、ガラス転移温度(Tg)の高い高Tg低分子量ポリマー(c-1)を使用した場合よりも(c-2) 低Tg低分子量ポリマーを使用することにより効率よく緩和することができる。従って、本発明において、低分子量ポリマーとして(c-2) 低Tg低分子量ポリマーを使用した粘着テープは、光学用の用途に特に適している。他方、ガラス転移温度(Tg)の高い低分子量ポリマー(c-1)を使用した粘着テープは、(c-2) 低Tg低分子量ポリマーを使用した粘着テープと比較すると、より高い耐熱性を示すとともに耐湿熱安定性が非常に良好になる。
【0032】
さらに、本発明では、上記の(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーを使用せずにアクリル系粘着テープの製造に使用される組成物を調製することもできる。この(c-1) 高Tg低分子量ポリマーあるいは(c-2) 低Tg低分子量ポリマーを使用することなく調製された粘着テープは熱によって特性が変化することがなく、非常に優れた耐熱性および耐湿熱安定性を示す。
【0033】
本発明で使用される組成物は、上記の(a)成分と、(b)成分と、さらに必要により配合される(c-1)成分あるいは(c-2)成分と、(d)光重合開始剤および(e)架橋剤とを含有する。
本発明で使用される(d)光重合開始剤は、光ラジカル重合開始剤および/または光カチオン重合開始剤であり、これらの例としては、4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル(2-ヒドロキシ-2-プロピル)ケトン[例えばチバガイギー社製、商品名:ダロキュアー2959]、α-ヒドロキシ-α,α'-ジメチルアセトフェノン[例えばチバガイギー社製、商品名:ダロキュアー1173]、メトキシアセトフェノン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトン[例えばチバガイギー社製、商品名:イルガキュアー651]、2-ヒドロキシ-2-シクロヘキシルアセトフェノン[チバガイギー社製、商品名:イルガキュアー184]などのアセトフェノン系光重合開始剤;ベンジルジメチルケタールなどのケタール系光重合開始剤;その他のハロゲン化ケトン、アシルフォスフィノキシド、アシルフォスファナートなどの光重合開始剤を挙げることができる。
【0034】
この(d)光重合開始剤は、上記(a)アクリル系モノマー100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.01〜3重量部、特に好ましくは0.05〜2重量部の範囲内の量で配合される。
また、本発明で使用される組成物には、さらに(e)架橋剤を配合する。
本発明で使用される架橋剤は、(a)成分、(b)成分、さらに(c-1)成分あるいは(c-2)が重合することにより形成される成分の間で架橋構造を形成し得る化合物である。
【0035】
このような架橋剤の例としては、エポキシ基を有する化合物(多官能エポキシ化合物)、イソシアネート基を有する化合物(多官能イソシアネート化合物)を挙げることができる。具体的には、エポキシ基を有する化合物としては、ビスフェノールA、エピクロルヒドリン型のエポキシ系樹脂、エチレングリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジアミングリシジルアミン、N,N,N',N'-テトラグリシジル-m-キシリレンジアミンおよび1,3-ビス(N,N'-ジアミングリシジルアミノメチル)シクロヘキサンなどを挙げることができ、イソシアネート系化合物の例としては、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタリンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートおよびこれらのトリメチロールプロパンなどのポリオールとのアダクト体を挙げることができる。
【0036】
この架橋剤は、上記(a) 成分(b)成分(c-1) 成分(c-2)成分の合計100重量部に対して、0.01〜5重量部、好ましくは0.01〜3重量部の範囲内の量で配合される。
なお、上記重合開始剤、架橋剤を使用する場合、これらも実質的に溶媒を含有していないものであることが好ましい。
【0037】
本発明のアクリル系粘着剤組成物には、さらに、充填剤として、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、シリカ、クレー、タルク、酸化チタンなどの無機物、ガラスバルーン、シラスバルーン、セラミックバルーンなどの無機中空体、ナイロンビーズ、アクリルビーズ、シリコンビーズなどの有機物、塩化ビニリデンバルーン、アクリルバルーンなどの有機中空体、発泡剤、染料、顔料、シランカップリング剤、重合禁止剤、安定剤など通常粘着剤に配合される添加剤が配合されていてもよい。
【0038】
さらに、本発明で使用する組成物は、水、水性溶媒あるいは有機溶媒を実質的に含有しておらず、上記(b)成分、(c-1)成分あるいは(c-2)成分、(d)成分、(e)成分、さらに他の成分は、(a)アクリル系モノマー中に溶解もしくは分散している。
本発明で使用する組成物は、上記の(a)アクリル系モノマーと、(b)高分子量ポリマーと、必要により(c-1)高Tg低分子量ポリマーまたは(c-2)低Tg低分子量ポリマーを5〜300重量部と、(d)光重合開始剤と、 (e)架橋剤と、さらに所望により他の成分とを混合することにより調製することができるが、上記ポリマーを調製する際に残存する未反応モノマーを(a)アクリル系モノマーとして使用することができる。すなわち、例えば上記(b)高分子量ポリマーを溶剤を使用せずに部分重合させて、この部分重合の際に未反応のモノマーを(a)成分として使用することができる。こうして部分重合により得られた反応物(アクリル系シロップ)は、所定量の高分子量ポリマーを含有するアクリル系モノマー溶液もしくは分散液である。次いで、得られたアクリル系モノマーの溶液もしくは分散液に、必要により所定量の(c-1)高Tg低分子量ポリマーまたは(c-2)低Tg低分子量ポリマーと、(d)光重合開始剤と、 (e)架橋剤と、さらに所望により他の成分とを加えて混合することにより本発明で使用する組成物を得ることができる。
【0039】
上記のような組成を有する組成物は、上記(a)成分であるモノマー中に(b)成分、(c-1)成分あるいは(c-2)成分、(d)成分および(e)成分が溶解もしくは分散しており、所謂溶剤を実質的に含有していない。そして、上記組成を有する組成物について25℃における粘度を測定すると、通常は100〜100000cps、好ましくは500〜50000cpsの範囲内の粘度を示し、この組成物は粘稠な液体である。こうした粘度の液体は、通常の塗布装置を用いて支持体上に塗布可能である。
【0040】
次いで、上記のようにして調整した組成物を支持体上に塗布する。
ここで使用される支持体としては、ポリオレフィンフィルム、ポリエステルフィルム、紙、金属箔、布、不織布、シリコーン処理したポリエステルフィルム、シリコーン処理した紙を挙げることができる。
このような支持体表面に本発明のアクリル系粘着剤組成物を塗布する。この組成物の塗布厚は、通常0.01〜10.0mm、好ましくは0.01〜5.0mmである。
【0041】
こうして支持体表面に塗布された組成物をこの支持体上で重合させる。
本発明においては、支持体表面に塗布された組成物を、0〜10℃の範囲内の温度で反応させる。本発明で支持体表面に塗布される組成物は実質的に溶媒を含有していないので、この塗布された組成物が反応し始めると、塊状重合であるため一気に反応が進行する。また、反応温度が高くなるにつれて、支持体表面に塗布した組成物の表面の活性が高くなり、空気中の酸素と接触する組成物の表面において、所望の反応が進行せず、粘着剤の表面に形成される成分が他の部分の成分と異なり、粘着剤層の特性が粘着剤層の厚さ方向において異なることがある。こうした理由から、本発明では、この支持体表面に塗布された組成物の反応温度を上記のように非常に低温に制御して穏和な条件で重合反応を行うのである。なお、この支持体表面に塗布された組成物の重合反応温度を0℃よりも低くするためには高価な設備が必要となり、また、0℃を下回るような温度では反応に要する時間が長くなり効率的ではなく実用的ではない。また、温度が10℃を超えると、連鎖移動速度が増大するため、効率的に高分子量ポリマーを得ることができない。さらに支持体上に塗布した組成物の反応活性も高くなることから、塗布された表面の組成物が酸素と接触することにより、予定している重合反応以外の反応が組成物の表面で進行する可能性が高くなり、得られる粘着テープにおける粘着剤層の均一性が損なわれる虞がある。
【0042】
本発明において、上記のような支持体上に塗布された組成物の反応には、光重合反応が採用される。本発明では、この組成物の重合反応に可視光線あるいは紫外線を使用することができる。すなわち、本発明で使用する組成物中には光重合開始剤が配合されており、この光重合開始剤の種類により照射光線の種類を特定することができる。特に本発明では、組成物を調製する際に厳重な遮光設備などを必要としない紫外線を使用して、支持体表面に塗布した組成物の重合反応を行うことが好ましい。ここで好適に使用される紫外線としては、通常の紫外線照射装置あるいは所謂ブラックライトなどを使用することができる。このような紫外線を使用する場合、その照射時間は、通常は10〜600秒間、好ましくは10〜480秒間である。なお、このような紫外線の照射は連続的であっても間歇的であってもよい。間歇的な紫外線の照射の場合に、上記照射時間は、間歇的紫外線照射時間の合計である。
【0043】
このように本発明の方法で製造されたアクリル系粘着テープは重合反応が進行する際の支持体上の組成物の温度が0〜10℃と非常に低く制御されているので、非常に均質なアクリル系粘着テープを製造することができる。しかも、低分子量ポリマーとして低Tg低分子量ポリマー(c-2)を使用することにより、アクリル系粘着シート内部に生ずる内部応力を緩和する効果に優れ、大面積の液晶素子などにこのアクリル系粘着シートを使用した場合であっても、内部応力が本発明のアクリル系粘着シート内で解消されるので、液晶素子の該主部における光抜け現象を有効に防止することができる。
【0044】
また、高Tg低分子量ポリマー(c-1)を使用した場合、本発明のアクリル系粘着テープは、優れた耐熱性およびプラスチック接着性を示す。また、この低分子量ポリマーを配合しない場合には、熱によって特性が変動する物質が少ないので、特に耐熱性に優れたアクリル系粘着テープを得ることができる。
【0045】
【発明の効果】
本発明のアクリル系粘着テープの製造法では、(a)(メタ)アクリル酸エステルを主成分とするアクリル系モノマーと、所定量の (b)(高分子量ポリマーと、必要により、所定量の(c-1)高Tg低分子量ポリマー、または、(c-2)低Tg低分子量ポリマーと、所定量の(d)光重合開始剤と、所定量の(e)架橋剤とを含有し、実質的に溶媒を含有しない組成物を調製し、この組成物を支持体上に流涎し、この組成物の温度を0〜10℃の範囲内に維持してこの組成物を反応させることにより、優れた接着強度を発現し、保持力が高く、しかも曲面貼着性に優れたアクリル系粘着テープを製造することができる。殊に、光重合反応を低温で行うことにより、支持体表面に塗布された組成物が酸素などの反応の進行を阻害する要因の影響を受けにくくなり、所望の特性の粘着テープを製造することができる。
【0046】
このようにして得られたアクリル系粘着テープは、特に光学用途、例えば液晶素子における透明基板に偏光板を貼着するためのアクリル系粘着テープなどとして好適に使用することができる。
また、本発明のアクリル系粘着テープは、粘着剤層が実質的に溶剤を含有しておらず、粘着剤を製造する際に溶剤除去工程が不要であると共に、溶剤による環境の汚染もない。また、本発明のアクリル系粘着テープは、上述のように溶剤を含有しておらず、この組成物から得られる粘着剤にも溶剤は含有されておらず、また、この粘着剤は実質的に低沸点物質も含有していない。このため従来の粘着剤に特有の残存有機溶剤臭などの異臭が少ない。
【0047】
【実施例】
次に本発明のアクリル系粘着テープおよびその製造方法について実施例を示して具体的に説明するが、本発明はこれらにより具体的に限定されるものではない。
【0048】
【製造例1】
アクリル系シロップA−1の調製
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの四つ口フラスコに、アクリル酸2-エチルヘキシル(以下2-EHAとする):959g、アクリル酸(以下AAとする):40g、アクリル酸2-ヒドロキシエチル:1g、n-ドデシルメルカプタン:0.1gを投入し、フラスコ内の空気を窒素に置換しながら、50℃まで加熱した。
【0049】
次いで、重合開始剤として2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル):0.025gを撹拌下に投入して均一に混合した。重合開始剤投入後、反応系の温度は上昇したが、冷却を行わずに重合反応を続けたところ、反応系の温度が119℃に達し、その後徐々に下がり始めた。2-EHA:192g及びAA:8gを投入して、反応系の温度を110℃まで冷却した。さらに、水浴による強制冷却を行いアクリル系シロップA−1を得た。このシロップは、モノマーを71%の濃度で、ポリマーを29%の濃度で含有しており、得られたアクリル系シロップA−1中のポリマー分についてGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は72万であった。
【0050】
【製造例2】
アクリル系シロップA−2の調製
アクリル酸ブチル(以下BAとする):1900g、AA:50g、2-HEA:50g及び、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパノン-1(チバガイギー(株)製、商品名:イルガキュアー907):0.03gを、光重合装置に仕込み、強度56W/m2の紫外線を間歇的に照射して、アクリル系シロップA−2を得た。このアクリル系シロップA-2はモノマーを85重量%濃度で、ポリマーを15重量%の濃度で含有しており、得られたアクリル系シロップA-2中のポリマー分についてGPCにより測定した重量平均分子量(Mw)は95万であった。
【0051】
【製造例3】
低 Tg 低分子量ポリマーL−1の調製
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの4つ口フラスコに、2-EHA:980g、AA:20g及び分子量調整剤としてn-ドデシルメルカプタン:100gを投入し、フラスコ内の空気を窒素ガスに置換しながら60℃まで加熱した。
【0052】
次いで、重合開始剤として、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル):0.05gを撹拌下に投入して均一に混合した。重合開始剤投入後、反応系の温度は上昇したが、冷却を行わずに重合反応を続けたところ、反応系の温度が110℃に達し、その後徐々に下がり始めた。水浴により系内の温度が60℃まで強制冷却した。強制冷却後、さらに、2,2'-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル):0.05gを撹拌下に投入して均一に混合した。2回目の開始剤投入後、反応系の温度は上昇したが冷却を行わずに重合反応を続けたところ、反応系の温度が105℃に達した。その後、水浴により反応系の温度を75℃まで強制冷却した。
【0053】
さらに、ジメチル2,2'-アゾビス(2-メチルプロピオネート):0.1gを投入した。反応系の温度は上昇したが冷却を行わずに重合反応を続けたところ、反応系の温度は120℃に達した。水浴により反応系の温度を110℃まで冷却した。つづけて、重合開始剤1,1'-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル):1.5gを撹拌下に投入して2時間重合反応させた後、反応系を水浴により室温まで冷却し、低Tg低分子量ポリマーL−1を得た。
【0054】
得られた低Tg低分子量ポリマーL−1の重量平均分子量(Mw)は3100であり、ガラス転移温度(Tg)は−68℃であった。
【0055】
【製造例4】
低 Tg 低分子量ポリマーL−2の調製
製造例3において、2-EHA:980g、AA:20g及び分子量調整剤としてn-ドデシルメルカプタン:100gの代わりに、BA:900g、アクリル酸メトキシエチル:100g及び分子量調整剤としてα-メチルスチレンダイマー:100gを使用した以外は同様にして、低Tg低分子量ポリマーL−2を得た。
【0056】
得られた低Tg低分子量ポリマーL−2の重量平均分子量(Mw)は7000であり、ガラス転移温度(Tg)は−50℃であった。
【0057】
【製造例5】
高 Tg 低分子量ポリマーL - 3の調製
撹拌機、温度計、窒素ガス導入管及び冷却管を備えた容量2リットルの4つ口フラスコに、メタクリル酸イソブチル(以下i-BMAとする):1200g及び分子量調整剤としてn-ドデシルメルカプタン:96gを投入し、フラスコ内の空気を窒素に置換しながら70℃まで加熱した。
【0058】
次いで、重合開始剤としてクミルペルオキシネオデカノエート:3.6gを撹拌下に投入して均一に混合した。重合開始剤投入後、反応系の温度は上昇したが、冷却を行わずに重合反応を続けたところ、反応系の温度が110℃に達し、その後徐々に下がり始めた。水浴により系内の温度を70℃まで強制冷却した。強制冷却後、さらに、クミルペルオキシネオデカノエート:3.6gを撹拌下に投入して均一に混合した。2回目の開始剤投入後、反応系の温度は上昇したが冷却を行わずに重合反応を続けたところ、反応系の温度が105℃に達した。その後、水浴により反応系の温度を室温まで強制冷却した。
【0059】
さらに、得られた部分重合物1000gをステンレス製の容器にとり、クミルペルオキシネオデカノエート:20g及びt-ヘキシルペルオキシ2-エチルヘキサノエート:20gを加えよく混合した後、120℃の加熱乾燥機で1時間重合反応させることにより、高Tg低分子量ポリマーL-3を得た。得られた高Tg低分子量ポリマーL-3の重量平均分子量(Mw)は4900であり、ガラス転移温度(Tg)は48℃であった。
【0060】
【比較例11】
前記製造例1で得たアクリル系シロップA−1を100g、光重合開始剤として、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン(商品名:ダロキュア1173;チバガイギー(株)製):0.15g、架橋剤として、N,N,N',N'-テトラグリジル-m-キシリレンジアミン(商品名:テトラッドX;三菱ガス化学(株)製):0.05gを混合して、アクリル系粘着剤組成物E−1を調製した。この組成を表1に示す。
【0061】
この粘着剤組成物E−1を、厚さが25μmの剥離処理をしたポリエステルフィルム上に塗布した。これを、窒素ガス雰囲気下で、最大強度40W/m2となるように調節した高圧水銀ランプより光を照射し、温度が5℃に保つようにして光重合した。このときの重合率は、99.8重量%であった。こうして、アクリル系粘着シートを得た。得られた粘着シートの評価試験結果を表2に示す。
【0062】
なお、得られた粘着シートの評価試験方法は次の通りである。
《粘着シートの光学特性評価試験》
試験片の作成
トリアセチルセルロース/ポリビニルアルコール/トリアセチルセルロースからなる3層積層の偏光板に、前記粘着シートを転写し、150mm×200mmに裁断して試験片とした。
耐久性試験
試験片をガラス板の片面に貼り付け、90℃、DRYで1000時間、及び、60℃、90%RH(相対湿度)で100時間の各条件下で、試験片の外観変化を観察した。評価は、以下の3段階で行った。
○・・・浮き、剥がれ、発泡等の変化が見られない。
△・・・浮き、剥がれ、発泡のいずれかの変化がわずかに見られる。
×・・・浮き、剥がれ、発泡等の変化が見られる。
耐光漏れ試験
試験片をガラス板の両面に、直交ニコルになるように貼り付け、90℃、DRYで1000時間、及び、60℃、90%RH(相対湿度)で100時間の各条件下で、試験片の外観変化を観察した。評価は、以下の3段階で行った。
○・・・光漏れが見られない。
△・・・試験片の外周部に僅かに光漏れが見られる。
×・・・光漏れが見られる。
【0063】
【実施例4〜8、比較例12、13】
比較例11において、各成分の配合量を表1に記載したようにして粘着剤組成物E-2〜E-8を調製した。なお、E−3には、シランカップリング剤(商品名:KBM-403、信越ポリマー(株)製)が0.2重量部配合されている。
【0064】
この粘着剤組成物E−1〜E-8を用いて、表2、3および4に示すように条件を設定して光学部材用アクリル系粘着シートを得た。得られた粘着シートの評価試験結果を表2、表3および表4に示す。
【0065】
【比較例1〜10】
上記のようにして調製したE-1,E-3,E-4,E-7,E-8を用いて、表2、3および4に示すように条件を設定して光学部材用アクリル系粘着シートを得た。得られた粘着シートの評価試験結果を表2、表3および表4に示す。
【0066】
【表1】
【0067】
【表2】
【0068】
【表3】
【0069】
【表4】
Claims (6)
- (a)(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上含有するアクリル系モノマーと、該アクリル系モノマー100重量部に対して、
(b)(メタ)アクリル酸エステル成分単位を単量体換算で50重量%以上含有し、かつ重量平均分子量が50000以上である高分子量ポリマーを5〜200重量部と、
(c-1)(メタ)アクリル酸エステル成分単位を単量体換算で50重量%以上含有し、かつ重量平均分子量が20000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が25〜200℃の範囲内にある高Tg低分子量ポリマー、または、(c-2)(メタ)アクリル酸エステル成分単位を単量体換算で50重量%以上含有し、かつ重量平均分子量が20000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が−85〜20℃の範囲内にある低Tg低分子量ポリマーを5〜300重量部と、
(d)光重合開始剤を0.01〜5重量部と、
(e)架橋剤とを含有する組成物を支持体上に流延し、0〜10℃の範囲内の温度で該組
成物を反応させて、耐光漏れ性を向上させた光学部材用アクリル系粘着テープを製造する方法。 - 上記(b) 高分子量ポリマーのガラス転移温度が−85〜0℃の範囲内にあることを特徴とする請求項第1項記載のアクリル系粘着テープの製法。
- 上記(e)架橋剤が、多官能性エポキシ化合物および多官能性イソシアネート化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の化合物であることを特徴とする請求項第1項記載のアクリル系粘着テープの製法。
- 支持体と、該支持体上に流涎された下記組成物の温度を0〜10℃の範囲内に維持して反応させることにより形成された粘着剤層とを有し、耐光漏れ性が高い光学部材用アクリル系粘着テープ;
(a)(メタ)アクリル酸エステルを50重量%以上含有するアクリル系モノマーと、該アクリル系モノマー100重量部に対して、
(b)(メタ)アクリル酸エステル成分単位を単量体換算で50重量%以上含有し、かつ重量平均分子量が50000以上である高分子量ポリマーを5〜200重量部と、
(c-1)(メタ)アクリル酸エステル成分単位を単量体換算で50重量%以上含有し、かつ重量平均分子量が20000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が25〜200℃の範囲内にある高Tg低分子量ポリマー、または、(c-2)(メタ)アクリル酸エステル成分単位を単量体換算で50重量%以上含有し、かつ重量平均分子量が20000以下であり、ガラス転移温度(Tg)が−85〜20℃の範囲内にある低Tg低分子量ポリマーを5〜300重量部と、
(d)光重合開始剤を0.01〜5重量部と、
(e)架橋剤を含有し、溶媒を含有しない組成物。 - 上記(b) 高分子量ポリマーのガラス転移温度が0〜−85℃の範囲内にあることを特徴とする請求項第4項記載のアクリル系粘着テープ。
- 上記(e)架橋剤が、多官能性エポキシ化合物および多官能性イソシアネート化合物よりなる群から選ばれる少なくとも一種類の化合物であることを特徴とする請求項第4項記載
のアクリル系粘着テープ。
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