JP4999357B2 - 醤油粕入り発酵飼料の製造方法 - Google Patents
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Description
前記ノイロスポラ・シトフィラ(Neurospora sitophila)の好ましい例として、独立行政法人製品評価技術基盤機構微生物寄託センター(千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託されているノイロスポラ・シトフィラNA38株(NITE AP-229)及びノイロスポラ・シトフィラNA37株(NITE AP-230)が挙げられ、前記リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)の好ましい例として、リゾプス・オリゴスポラスKT28株(NITE AP-232)及びリゾプス・オリゴスポラスKT27株(NITE AP-231)が挙げられる。
本発明の1態様においては、更に、油脂類、醤油油が添加される。
本発明は更に、上記のようにして製造した醤油粕入り発酵飼料を、飼料全重量に対して10重量%以下の量で飼料に添加することを特徴とする、醤油粕入り混合飼料の製造方法を提供する。
本発明においては、フィターゼ生産能を有し、且つ安全性が確認されている微生物として、ノイロスポラ・シトフィラ(Neurospora sitophila)種又はリゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)種に属する微生物を使用する。これらの微生物は、フィターゼ生産能の程度に関係なく醤油粕の臭いを脱臭する能力を有する。従って、微生物の選択は、主としてフィターゼの生産能を考慮して行なわれる。
しかしながら、前記の如く、本発明の微生物としては、できるだけフィターゼ生産能の高いものが好ましく、このためにはフィターゼ高生産性変異株を得るのが好ましい。変異株は目的とする変異株を得るための常法に従って得ることができる。
本発明に使用できる醤油粕は、特別なものに限定されない。すなわち、本醸造方式、新式醸造方式、アミノ酸液混合方式、酵素処理液混合方式など各種方式により副製する醤油粕を原料として使用できる。これらの醤油粕は乾燥処理を施したものであっても施してないものであってもよい。また、通常の醤油粕の他に、食塩存在で麹を加水分解して得られる水不溶画分、醤油様調味液を製造する際に得られる水不溶画分、しょっつるなどの魚醤油を製造する際に得られる水不溶画分などの各種含塩調味液製造時に得られる水不溶画分も本発明方法の原料として使用することができる。したがって、本明細書中の「醤油粕」は、上記のものを全て包含する。
混合する飼料原料としては、本発明の微生物の固体培地として使用できるものであれば特に限定されない。例えば、小麦フスマ、米糠、豆腐粕、油粕、大豆粕、節粕、トウモロコシ澱粉の製造の再に副生するコーングルテンミール、醤油製造時に副生する生オリや火入オリなど、食品工場で排出される未利用資源など、広範囲のものが使用可能である。これらの2種類以上を混合して使用することもできる。
培地の調製に当っては、所定量の醤油粕と所定量の上記の飼料原料とを混合し、これに、前記醤油粕と飼料原料との合計重量(100%)に対して80〜150重量%の水を加えて全体を混合する。ここで、水の量80〜150%とは、例えば醤油粕と飼料原料との合計重量100kgに水を80〜150kg添加することを意味する。水分量が少なすぎると微生物の増殖が不十分となり、水分が多すぎると固体培地中の通気が悪くなり、やはり微生物の増殖が不良となる。次に殺菌を行なう。殺菌は例えば、121℃(ゲージ圧:1気圧)にて15〜30分間蒸気殺菌(オートクレーブ殺菌)すればよい。
培養
培養のための種菌としてわざわざ麹を調製する必要がなく、胞子を醤油粕含有固体培地に混合するだけで微生物の接種を完了させることができる。胞子の接種量は1×103個/g固体培地以上、好ましくは1×105〜106個/g固体培地、程度であればよい。接種量が上記の範囲よりも少ない場合には、培養時間が長期化したり、他の微生物の汚染を受けたりして好ましくない。培養温度は麹菌の通常の生育範囲でよく、特に温度管理は必要とするものではないが、胞子が発芽、麹菌の生育のための好条件としては25〜40℃の範囲が適当である。
醤油の製造においては、醤油粕のみならず醤油油も副生し、醤油油も醤油臭を有するので、そのままでは利用できない。しかしながら、脱臭すれば飼料の栄養成分として有用である。従って、本発明の一つの態様として、醤油油を固体培地に最初から添加して微生物の培養を行なうか、または培養開始後培養終了前に、培養物に醤油油を添加することができる。この方法により脱臭された醤油油を含み脂肪分が強化された、醤油粕入り発酵飼料添加物を得ることができる。更には醤油油に限らず油脂類を添加しても良い。油脂類とは例えば、食用油、米油、ヤシ油、魚油、アマン油脂である。
本発明の飼料原料は醤油粕に由来する食塩を通常3%程度含むので、飼料への添加量はおよそ10%未満に制限される。従って、本発明の醤油粕入り混合飼料の製造方法は、本発明の醤油粕入り発酵飼料を飼料に対して10%未満の量で添加することを特徴とする。
実施例1. 各種の麹菌での醤油粕の発酵試験
醤油粕:小麦フスマ:水を1:1:2の重量比で混合した培地25gを500ml容メリクロンフラスコにいれてオートクレーブ殺菌(121℃、15分)し、あらかじめPDA斜面寒天培地に培養しておいた各種麹菌(表1に記載)を1白金耳接種し、30℃、3日間培養した。得られた培養物を50℃、6時間通風乾燥を行った後、培養物3gに生理食塩水27mlを加え、ホモジナイズ(12,000rpm、2分)し、ホモジネートをNo.6濾紙で濾過して濾液を得た。この濾液について下記の方法に従ってフィターゼ活性を測定した。
その結果、表1に示したように、ノイロスポラ属及びリゾプス属のカビで発酵させることで、培地中にフィターゼが生産されることが分かった。また、飼料添加物として添加されているキシラナーゼ、CMCase、β-ラクタマーゼ、リパーゼの生産も認められた。脱臭効果はいずれもわずかにカビ臭がするものの、醤油粕臭は残っておらず、室温で1ヶ月放置したあと、戻り香を評価したが、戻り香もなかった。
ノイロスポラ・シトフィラNBRC31635及びリゾプス・オリゴスポラスNBRC 8631の胞子懸濁液を調製し、常法に従ってUV照射を行い、変異を誘発させた。UV処理した胞子懸濁液をPDA平板培地に塗沫し、生育した候補株をPDA斜面培地に釣菌して30℃、3日間培養した。微生物培養用プレート内で1mLの液体培地(0.3%ポリペプトン、0.3%酵母エキス、0.3%麦芽エキス、1%ぶどう糖、pH5.5)に候補株を1白金耳接種し、30℃、1週間培養した。菌体を除去した培養上清0.01mLを用いて、5mMフィチン酸ナトリウム溶液を含む100mM酢酸緩衝液(pH5.7) 0.1mLを加えて、37℃にて20分間反応させた。反応終了後、フィスケ・スバロー法に従って遊離リン酸の分析を行い、目視により高フィターゼ活性変異株を選択した。
醤油粕と小麦フスマを1:3で混合し、等量の水を加えた培地(1)と、醤油粕と小麦フスマを1:1で混合し等量の水を加えた培地(2)をそれぞれ10gとり、100ml容三角フラスコに入れてオートクレーブ殺菌し、上記実施例2で作成した高フィターゼ活性変異株を1白金耳接種し、30℃にて3日間培養した。得られた発酵物を通風乾燥を行った後、実施例1に記載した方法に従ってフィターゼ活性(単位/g)を測定した結果を下記表に示した。なお、醤油粕臭はいずれも全く感じなかった。得られた高フィターゼ活性変異株の中からノイロスポラ・シトフィラNA38株(NITE AP-229)、NA37株(NITE AP-230)とリゾプス・オリゴスポラスKT28株(NITE AP-232)、KT27株(NITE AP-231)を寄託した。
醤油粕と豆腐粕を下記表の割合で混合し、等量の水を加えた培地(3)〜(7)をそれぞれ10gとり100ml容三角フラスコに入れてオートクレーブし、ノイロスポラ・シトフィラNA38株を1白金耳接種し、30℃、3日間培養した。得られた発酵物を通風乾燥を行った後、実施例1に記載した方法に従ってフィターゼ活性(単位/g)と醤油粕臭を評価した結果、表3に示したように醤油粕の配合割合によってフィターゼ活性は低下するが、醤油粕90%の培地でもノイロスポラ・シトフィラNA38株は生育し、フィターゼ活性と脱臭効果を発揮することが分かった。
醤油粕と豆腐粕と米糠を下記表の割合で混合し、等量の水を加えた培地(8)〜(10)をそれぞれ50gとり500ml容メリクロンフラスコに入れてオートクレーブし、ノイロスポラ・シトフィラNBRC31635を1白金耳接種し、30℃、3日間培養した。培地(11)及び(12)については、培地(8)で培養した後、培養終了1時間前に醤油油を添加した。培養終了後、50℃、6時間通風乾燥を行い、得られた発酵物を上記1に記載した方法に従ってフィターゼ活性(単位/g)と醤油粕臭を評価した。
醤油粕と豆腐粕と菜種粕と小麦フスマを5:10:3:2の割合で混合し、等量の水を加えた培地(13)と醤油粕と豆腐粕と小麦フスマを2:1:1の割合で混合し等量の水を加えた培地(14)をそれぞれ10gとり100ml容三角フラスコに入れてオートクレーブし、リゾプス・オリゴスポラスKT28株を1白金耳接種し、30℃にて3日間培養した。得られた発酵物を上記1に記載した方法に従ってフィターゼ活性と醤油粕臭を評価した結果、培地(13)で6.2単位/g、培地(14)で4.1単位/gのフィターゼ活性が得られた。いずれも醤油粕臭はほとんど感じなかった。
醤油粕25%、豆腐粕25%、米糠25%、菜種粕15%、コーングルテンミール10%の割合で混合した培地100kgに等量の水を加え、100℃、30分間殺菌したものを製麹機に移し、30℃まで冷却した後、種麹としてノイロスポラ・シトフィラNBRC31635胞子を接種して混合し、30℃にて3日間培養した。製麹中は1日目、2日目にそれぞれ手入れ(混合・攪拌)をして均一にした。発酵終了後、発酵物を通風乾燥(50℃、6時間)させ、粉砕機にて粉砕した。得られた発酵物のフィターゼ活性は9.8単位/gであった。醤油粕臭は全く感じなかった。以下、本方法で製造された醤油粕入り発酵飼料を「S25」と略称する。
醤油粕50%、豆腐粕25%、米糠25%の割合で混合した培地100kgに等量の水を加え、121℃、15分の加圧殺菌したものを製麹機に移し、30℃まで冷却した後、種麹としてノイロスポラ・シトフィラNBRC31635胞子を加えて混合し30℃にて3日間培養した。製麹中は1日目、2日目にそれぞれ手入れ(混合・攪拌)をして均一にした。発酵処理終了後、発酵物を通風乾燥(50℃、6時間)させた後、粉砕機にて粉砕した。得られた発酵物のフィターゼ活性は3.0単位/gであった。醤油粕臭は全く感じなかった。以下、本方法で製造された醤油粕入り発酵飼料を「S50」と略称する。
醤油粕50%、豆腐粕25%、米糠25%の割合で混合した培地100kgに等量の水を加え、121℃、15分の加圧殺菌したものを製麹機に移し、30℃まで冷却した後、種麹としてノイロスポラ・シトフィラNBRC31635胞子を加えて混合し30℃にて3日間培養した。製麹中は1日目、2日目にそれぞれ手入れ(混合・攪拌)をして均一にした。フィターゼ活性を確認した後、醤油油25kgを添加した。1時間後に発酵物を通風乾燥(50℃、6時間)し、粉砕機で粉砕した。得られた発酵物のフィターゼ活性は3.0単位/gであった。醤油粕及び醤油油臭は全く感じなかった。以下、本方法で製造された醤油粕入り発酵飼料をS50F25と略称する。
上記6に記載のS25を用いて、現在使用している酵素剤にかわり、ノイロスポラ・シトフィラの生産するフィターゼが養豚用飼料として実際に応用できるかどうかについて以下の方法で検証した。すなわち、フィターゼを含まない対照区飼料(リン含量0.55%)に対し、S25を5%含んだ試験飼料(リン含量0.45%、フィターゼ活性約500単位)を作成し、リンの消化率と出納について調査した。その結果、子豚のリンの消化率は対照区飼料よりも有意に増加し(対照区57.6% vs 試験区73.1%)、リンの蓄積率は同等であった(対照区5.41g/day vs 試験区5.19g/day)。これにより、豚に対するS25のフィターゼ効果は証明された。
市販産卵鶏飼料には,フィターゼが飼料添加物として認可され広く普及している。従って、S25を飼料に配合すれば、飼料添加物としてのフィターゼの代替として期待できることになる。本試験では、S25が市販飼料添加物フィターゼ代替として使用し得るかを調査した。試験区は、採卵鶏用に推奨されるフィターゼ300単位/kg飼料となるように調整した市販フィターゼ区、および、フィターゼ294単位/kg飼料となるように調整したS25区(S25を3%配合)の2区とし、各試験飼料の栄養成分は等しくなるように調整した。
S50及びS50F25のもつ効果について検証するため、S50及びS50F25の消化率について調査した。粗蛋白質15.8%、可消化養分総量77.3%の基礎飼料およびこの基礎飼料にS50及びS50F25をそれぞれ20%配合した飼料を摂取させ、基礎飼料、S50混合飼料、S50F25混合飼料の消化率を測定した。その結果、S50のTDNは63.3%、S50F25のTDNは85.6%であり、中でも粗脂肪の消化率が顕著に向上し(基礎飼料58.5% vs S50混合飼料63.7%)、S50自体の粗脂肪消化率は65〜83.7%を示した。また、同様の傾向はS25にも認められた(基礎飼料58.7% vs S25混合飼料72.7%)。従って、醤油粕とその他飼料原料を配合したものを本発明の方法で処理したものには、飼料中粗脂肪の消化率を向上させる効果があることが確認された。
S50およびS50F25のいずれにおいても鶏用飼料に使用するためには、それらの代謝エネルギー値(ME, kcal/kg)が飼料設計において不可欠となる。そこで、S50およびS50F25のME測定を実施した。供試鶏は,試験用ウインドウレス鶏舎のケージ群飼(8から9羽/ケージ)で1ケージ1単位とし,各区16または17羽の計50羽使用した。試験開始日齢は56とした。試験飼料順化期間を5日とし、その後2日間をME測定期間とした。MEは,飼料の全エネルギー摂取量から糞尿の全***エネルギーの差に窒素補正を加えた結果とした。
Claims (12)
- 固形物全重量に対して90重量%以下の醤油粕と固形物全重量に対して10重量%以上の固体飼料原料との混合物及び当該混合物重量に対して80〜150重量%の水からなる固体培地で、フィターゼ生産能を有するノイロスポラ・シトフィラ(Neurospora sitophila)NA38株(NITE AP-229)若しくはノイロスポラ・シトフィラ(Neurospora sitophila)NA37株(NITE AP-230)又はリゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)種に属する微生物を培養し、2単位/g以上のフィターゼを蓄積させることを特徴とする醤油粕入り発酵飼料の製造方法。
- 固形物全重量に対する醤油粕の量が70重量%以下であり、固形物全重量に対する固体飼料原料の量が30%以上である、請求項1に記載の方法。
- 固形物全重量に対する醤油粕の量が60重量%以下であり、固形物全重量に対する固体飼料原料の量が40%以上である、請求項1に記載の方法。
- 固形物全重量に対する醤油粕の量が50重量%以下であり、固形物全重量に対する固体飼料原料の量が50%以上である、請求項1に記載の方法。
- フィターゼの蓄積量が4単位/g以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
- フィターゼの蓄積量が9単位/g以上である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
- フィターゼの蓄積量が15単位/g以上である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
- 前記リゾプス・オリゴスポラス(Rhizopus oligosporus)が、リゾプス・オリゴスポラスKT28株(NITE AP-232)又はリゾプス・オリゴスポラスKT27株(NITE AP-231)である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
- 前記固体飼料原料が、小麦フスマ、米糠、豆腐粕、油粕、大豆粕、節粕、コーングルテンミール、醤油製造時に副生する生オリ、又は醤油製造時に副生する火入れオリ、あるいはこれらの2種類以上混合物である、請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法。
- 更に、油脂類を添加する、請求項1〜9のいずれか1項に記載の方法。
- 前記油脂類が醤油油である、請求項10に記載の方法。
- 請求項1〜11のいずれか1項に記載の方法により醤油粕入り発酵飼料を製造し、当該発酵試料を、飼料全重量に対して10重量%以下の量で飼料に添加することを特徴とする、醤油粕入り混合飼料の製造方法。
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