以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、その説明を省略する。図1は、本発明の一実施形態に係る満充電容量補正方法を用いた満充電容量補正回路5を備えた、電池パック2及び充電システム1の構成の一例を示すブロック図である。図1に示す充電システム1は、電池パック2と、機器側回路3とが組み合わされて構成されている。
充電システム1は、例えば、携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ、携帯電話機等の電子機器、電気自動車やハイブリッドカー等の車両、等の電池搭載機器システムである。そして、機器側回路3は、例えばこれら電池搭載機器システムの本体部分であり、負荷回路34は、これら電池搭載機器システムにおいて、電池パック2からの電力供給により動作する負荷回路である。
電池パック2は、二次電池4、満充電容量補正回路5、電流検出抵抗6、温度センサ7、スイッチング素子Q1,Q2、及び接続端子11,12,13を備えている。また、満充電容量補正回路5は、制御部50、電圧検出部51、電流検出部52、温度検出部53、及び通信部54を備えている。
なお、充電システム1は、必ずしも電池パック2と機器側回路3とに分離可能に構成されるものに限られず、充電システム1全体で一つの満充電容量補正回路5が構成されていてもよい。また、満充電容量補正回路5の構成要素を、電池パック2と機器側回路3とで分担して備えるようにしてもよい。また、二次電池4は、電池パックにされている必要はなく、例えば満充電容量補正回路5が、車載用のECU(Electric Control Unit)として構成されていてもよい。
機器側回路3は、接続端子31,32,33、負荷回路34、充電部35、通信部36、制御部37、及び表示部38を備えている。充電部35は、給電用の接続端子31,32に接続され、通信部36は、接続端子33に接続されている。
また、電池パック2が、機器側回路3に取り付けられると、電池パック2の接続端子11,12,13と、機器側回路3の接続端子31,32,33とが、それぞれ接続されるようになっている。
通信部54,36は、接続端子13,33を介して互いにデータ送受信可能に構成された通信インターフェイス回路である。
充電部35は、制御部37からの制御信号に応じた電流、電圧を、接続端子31,32を介して電池パック2へ供給する電源回路である。充電部35は、例えば商用電源電圧から電池パック2の充電電流を生成する電源回路であってもよく、例えば太陽光、風力、あるいは水力といった自然エネルギーに基づき発電する発電装置や、内燃機関等の動力によって発電する発電装置等であってもよい。
表示部38は、例えば液晶表示器やLED(Light Emitting Diode)が用いられる。なお、例えば機器側回路3が、携帯型パーソナルコンピュータやデジタルカメラ等の電子機器である場合、当該電子機器が備える液晶表示器等の表示装置を表示部38として用いてもよい。
制御部37は、例えばマイクロコンピュータを用いて構成された制御回路である。そして、電池パック2における制御部50から通信部54によって送信された要求指示が、通信部36によって受信されると、制御部37は、通信部36によって受信された要求指示に応じて充電部35を制御することにより、電池パック2から送信された要求指示に応じた電流や電圧を、充電部35から接続端子11,12へ出力させる。
電池パック2では、接続端子11は、スイッチング素子Q2とスイッチング素子Q1とを介して二次電池4の正極に接続されている。スイッチング素子Q1及びスイッチング素子Q2としては、例えばpチャネルのFET(Field Effect Transistor)が用いられる。
スイッチング素子Q1は、寄生ダイオードのカソードが二次電池4の方向にされており、オフすると二次電池4の放電方向の電流のみを遮断するようになっている。また、スイッチング素子Q2は、寄生ダイオードのカソードが接続端子11の方向にされており、オフすると二次電池4の充電方向の電流のみを遮断するようになっている。スイッチング素子Q1,Q2は、通常、オンされており、異常時にオフされて二次電池を保護するようになっている。
また、接続端子12は、電流検出抵抗6を介して二次電池4の負極に接続されており、接続端子11からスイッチング素子Q2、スイッチング素子Q1、二次電池4、及び電流検出抵抗6を介して接続端子12に至る電流経路が構成されている。
なお、接続端子11,12,13,31,32,33は、電池パック2と機器側回路3とを電気的に接続するものであればよく、例えば電極やコネクタ、端子台等であってもよく、ランドやパッド等の配線パターンであってもよい。
電流検出抵抗6は、電流検出用の、いわゆるシャント抵抗であり、二次電池4の充電電流および放電電流を電圧値に変換する。なお、電流検出抵抗6の代わりに、例えば電流変成器やホール素子等の電流検出素子や、スイッチング素子Q1,Q2のオン抵抗を用いてもよい。
温度センサ7は、例えばサーミスタや熱電対等の感熱素子を用いて構成されており、例えば二次電池4に密着させて、あるいは二次電池4の近傍に配設されている。そして、温度センサ7は、二次電池4の温度tを示す電圧信号を、温度検出部53へ出力する。
二次電池4は、例えば単電池であってもよく、例えば複数の二次電池が直列接続された組電池であってもよく、例えば複数の二次電池が並列接続された組電池であってもよく、直列と並列とが組み合わされて接続された組電池であってもよい。二次電池4としては、例えばリチウムイオン二次電池が用いられる。なお、二次電池4は、リチウムイオン二次電池に限られず、例えばニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池等、種々の二次電池を用いることができる。
しかしながら、後述する開放比率推定部503や電圧換算比率取得部505は、二次電池4の端子電圧値Vbに基づき二次電池4のSOCを推定するので、ニッケル水素二次電池やニッケルカドミウム二次電池よりも、二次電池4の残量の変化に対する端子電圧の変化量が大きいリチウムイオン二次電池の方が、二次電池4としてより適している。
電圧検出部51は、例えばアナログデジタルコンバータを用いて構成されており、二次電池4の端子電圧(端子間電圧)を検出し、その端子電圧値Vbを示す信号を制御部50へ出力する。
電流検出部52は、例えばアナログデジタルコンバータを用いて構成されており、電流検出抵抗6の両端間の電圧Vrを検出し、その電圧Vrを示す信号を、二次電池4に流れる電流値Icを示す情報として制御部50へ出力する。また、電流検出部52は、電流値Icを示す情報(電圧Vr)について、例えば二次電池4を充電する方向をプラスの値で、二次電池4を放電する方向をマイナスの値で表すようになっている。
制御部50では、この電圧Vrを電流検出抵抗6の抵抗値Rで除算することにより、二次電池4に流れる電流値Icを取得する。電流値Icは、二次電池4の充電電流をプラスの値で示し、二次電池4の放電電流をマイナスの値で示すようになっている。
温度検出部53は、例えばアナログデジタルコンバータを用いて構成されており、温度センサ7から出力された電圧信号をデジタル値に変換し、温度tを示す信号として制御部50へ出力する。
図2は、図1に示す制御部50の一例を示すブロック図である。制御部50は、例えば所定の演算処理を実行するCPU(Central Processing Unit)と、所定の制御プログラムが記憶されたROM(Read Only Memory)と、データを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、例えばROMを用いて構成された容量記憶部509及びテーブル記憶部510と、これらの周辺回路等とを備えて構成されている。
そして、制御部50は、例えばROMに記憶された制御プログラムを実行することにより、充電制御部501(満充電検出部)、電流積算部502(積算部)、開放比率推定部503、満充電比率推定部504、電圧換算比率取得部505、基準比率推定部506、補正制御部507、及び満充電容量補正部508として機能する。
充電制御部501(満充電検出部)は、例えばユーザが図略のACアダプターを充電部35に接続するなどして充電を開始しようとすると、ユーザが充電開始しようとしている旨の通知を制御部37から受信する。
そして、充電制御部501は、通信部54を介して機器側回路3へ、所定の充電電流や充電電圧の供給を要求する指示信号を出力することで、充電部35の動作を制御する。そして、充電制御部501は、充電部35によって、例えばCCCV(Constant Current Constant Voltage)充電を実行させる。
そして、充電制御部501は、二次電池4の満充電電圧を充電部35から出力させることでCV充電(定電圧充電)を実行させ、CV充電の実行中に、電流検出部52によって検出された電流値Icが、充電の終了条件として予め設定された判定閾値Ieを下回ったとき、二次電池4が満充電になったと判定し、充電部35による充電動作を終了させる。このとき、充電制御部501は、二次電池4が満充電になったことを満充電比率推定部504及び補正制御部507へ通知する。
判定閾値Ieは、例えば0.05It程度に設定されている。ここで、1It(電池容量(Ah)/1(h))は、二次電池の公称容量値を1Itの電流値で放電した場合に、1時間で二次電池の残容量がゼロとなるような電流値である。
この場合、充電制御部501は、満充電検出部の一例に相当している。なお、充電制御部501は、CCCV充電を行う例に限られず、他の充電方式を用いて充電を行うものであってもよい。充電制御部501は、どのような充電方式を採用した場合であっても、当該充電方式における充電の終了条件が満たされ、二次電池4が満充電になったときに、当該二次電池4が満充電になったことを満充電比率推定部504及び補正制御部507へ通知するものであればよい。
容量記憶部509には、初期値としての満充電容量値FCC(Full Charge Capacity)が、例えば電池パック2の出荷時に予め記憶されている。満充電容量値FCCの初期値は、例えば理論計算や実測によって測定された値が予め記憶されている。また、容量記憶部509に記憶される満充電容量値FCCは、満充電容量補正部508によって、適宜補正されるようになっている。
テーブル記憶部510には、二次電池4の実際の満充電容量に対する蓄電電気量の比率である蓄電比率を百分率で表した値であるRSOC(Relative State Of Charge)と、二次電池4を流れる電流値Icと、二次電池の温度tとを、二次電池4の端子電圧値Vbと対応付けるルックアップテーブルLTが、予め記憶されている。
図3は、図1に示すテーブル記憶部510に記憶されるルックアップテーブルLTの一例を示す説明図である。図3(a)は、RSOCが95%のときの、端子電圧値Vb(V11a〜V54a)と、電流値Icと、二次電池4の温度tとの対応関係を示している。図3(b)は、RSOCが50%のときの、端子電圧値Vb(V11b〜V54b)と、二次電池4の電流値Icと、二次電池4の温度tとの対応関係を示している。図3(c)は、RSOCが5.5%のときの、端子電圧値Vb(V11c〜V54c)と、電流値Icと、二次電池4の温度tとの対応関係を示している。
図3に示すルックアップテーブルLTは、例えば新品の二次電池4を用いて実験的に測定されたデータが、予めROMに記憶されて構成されている。図3においては、RSOCが95%、50%、5.5%に対応するルックアップテーブルLTを例示しているが、テーブル記憶部510には、RSOCが、0%〜100%の全範囲に対応するルックアップテーブルLTが記憶されている。
ここで、二次電池4の蓄電電気量が多いほど、すなわちRSOCが大きいほど、端子電圧値Vbは高くなるので、電流値Icと温度tとが等しい条件下では、図3(a),(b),(c)において、V**a>V**b>V**c(*は任意の一文字)の関係となる。
また、二次電池4に電流が流れると、二次電池4の内部抵抗で生じる電圧によって、電流値Icが大きくなるほど端子電圧値Vbは高くなる。すなわち、充電時は充電電流が増大し、電流値Icの値が大きくなるほど端子電圧値Vbは高くなる。一方、放電時は放電方向の電流が減少してマイナスの値である電流値Icの絶対値が小さくなり、すなわち電流値Icが大きくなるほど端子電圧値Vbは高くなる(端子電圧値Vbの低下量が少なくなる)。
従って、図3(a),(b),(c)において、RSOCと温度tとが等しい条件下では、V1**>V2**>V3**>V4**>V5**(*は任意の一文字)の関係となる。
また、二次電池4のRSOCと端子電圧値Vbとの対応関係は、温度tによって変化し、一般的には、温度tが高くなるほど、同一のRSOCに対応する端子電圧値Vbが低下する。そのため、図3(a),(b),(c)において、RSOCと電流値Icとが等しい条件下では、V*1*>V*2*>V*3*>V*4*(*は任意の一文字)の関係となる。
なお、電池の正極、負極を構成する材料によっては、温度tが高くなると、同一のRSOCに対応する端子電圧値Vbが上昇する場合もある。従って、図3(a),(b),(c)におけるV*1*、V*2*、V*3*、V*4*の関係は、二次電池4の特性に応じて適宜設定すればよい。
なお、図3に示すルックアップテーブルLTは、RSOCと、端子電圧値Vbと、電流値Icと、二次電池4の温度tとを対応付けているが、ルックアップテーブルLTは、二次電池4の温度tをパラメータとして含んでいなくてもよい。また、ルックアップテーブルLTは、温度t及び電流値Icをパラメータとして含んでいなくてもよい。
電流積算部502は、電流検出部52によって検出された電流値Icを単位時間毎に積算することによって、二次電池4に充電されている蓄電電気量を蓄電電気量Q(積算値)として算出する。この場合、電流値Icは、二次電池4を充電する方向の電流がプラス、二次電池4から放電される方向の電流がマイナスで表されているので、電流積算部502によって、二次電池4に充電される蓄電電気量が加算され、二次電池4から放電される放電電気量が減算されて、二次電池4に充電されている蓄電電気量Qが算出される。
制御部50は、容量記憶部509に記憶されている満充電容量値FCCに対する蓄電電気量Qの比率(百分率)を、RSOCとして算出する。
RSOCは、以下の式(A)によって与えられる。
RSOC=(Q/FCC)×100 (%)・・・(A)
そして、このようにして得られたRSOCが、二次電池4のRSOCとして、制御部50から制御部37へ送信されることで、二次電池4のRSOCが機器側回路3へ通知されるようになっている。
開放比率推定部503は、電流検出部52によって検出された電流値Icの絶対値が、予め設定された開放判定値Ithを下回るとき、電圧検出部51によって検出された端子電圧値Vbと温度検出部53によって検出された温度tとを取得する。そして、開放比率推定部503は、取得された端子電圧値Vbと温度tとの組み合わせが、ルックアップテーブルLTにおいて、電流値Icが0Aのときの値として対応付けられた端子電圧値Vbと温度tとの組み合わせと実質的に一致した場合、当該一致した組み合わせと対応付けられているRSOCを、二次電池4の蓄電比率RSOCoとして推定する。
開放比率推定部503は、電流値Icの絶対値が、開放判定値Ithを下回る条件を、開放電圧条件として用いる。この場合、二次電池4の開放電圧に基づき蓄電比率RSOCoが取得され、かつ温度tの影響が低減されるから、蓄電比率RSOCoの検出精度が向上する。
ここで、ルックアップテーブルLTには、端子電圧値Vbが上昇するほど二次電池4のSOCが増大するように端子電圧値VbとRSOCとが対応付けられているので、開放比率推定部503は、端子電圧値Vbが上昇するほど蓄電比率RSOCoを増大させることになる。
なお、開放比率推定部503は、端子電圧値Vbと温度tとを用いて蓄電比率RSOCoを推定する例に限られず、端子電圧値Vbのみを用いて推定してもよい。
開放判定値Ithは、二次電池4の端子電圧値Vbとして開放電圧が得られる状態であることを判定するため、すなわち実質的に電流値Icが0Aであることを判定するために予め設定された閾値で、例えば0Aに電流検出部52の検出誤差を加えた程度の値を用いることができる。あるいは、ユーザが機器側回路3を使用していないときに流れる漏れ電流や待機電流程度の微小な電流値であって、端子電圧値Vbに実質的な影響を与えない程度の電流値を、開放判定値Ithとして設定してもよい。
開放比率推定部503は、補正制御部507によって第1推定部として設定されたときは、蓄電比率RSOCoを第1蓄電比率RSOCaとする。また、開放比率推定部503は、補正制御部507によって第2推定部として設定されたときは、蓄電比率RSOCoを第2蓄電比率RSOCbとする。
開放比率推定部503は、二次電池4の開放電圧に基づき蓄電比率RSOCoを推定するので、二次電池4に電流が流れた状態の端子電圧値Vbから蓄電比率RSOCrを推定する基準比率推定部506よりも、第1蓄電比率RSOCa及び第2蓄電比率RSOCbの推定精度が向上する。
満充電比率推定部504は、充電制御部501から満充電になったことが通知されると、満充電条件が満たされたものとして、二次電池4の蓄電比率RSOCfは100%(比率:1)であると推定する。
満充電比率推定部504は、補正制御部507によって第1推定部として設定されたときは、蓄電比率RSOCfを第1蓄電比率RSOCaとする。また、満充電比率推定部504は、補正制御部507によって第2推定部として設定されたときは、蓄電比率RSOCfを第2蓄電比率RSOCbとする。
電圧換算比率取得部505は、電圧検出部51によって検出された端子電圧値Vbと電流検出部52によって検出された電流値Icと温度検出部53によって検出された温度tとを用いて、二次電池4の蓄電比率RSOCvを推定する。
具体的には、電圧換算比率取得部505は、端子電圧値Vbと電流値Icと温度tとの組み合わせが、ルックアップテーブルLTにおいて対応付けられた端子電圧値Vbと電流値Icと温度tとの組み合わせと実質的に一致した場合、当該一致した組み合わせと対応付けられているRSOCを、蓄電比率RSOCvとして推定する。
ここで、ルックアップテーブルLTには、端子電圧値Vbが上昇するほど二次電池4のSOCが増大するように端子電圧値VbとSOCとが対応付けられているので、電圧換算比率取得部505は、端子電圧値Vbが上昇するほど蓄電比率RSOCvを増大させることになる。
また、ルックアップテーブルLTには、同一のRSOCに対して電流値Icが大きくなり、すなわち充電方向において電流値Icが増大し、放電方向において電流値Icの絶対値が小さくなるほど端子電圧値Vbが上昇するように、電流値Icと端子電圧値Vbとが対応付けられている。そのため、電圧換算比率取得部505は、電流検出部52によって検出された電流値Icと電圧検出部51によって検出された端子電圧値Vbとを、ルックアップテーブルLTと照合すると、電流値Icが大きくなるほど蓄電比率RSOCvを減少させるように、蓄電比率RSOCvを推定することになる。
また、ルックアップテーブルLTには、同一のSOCに対して温度tが高くなるほど端子電圧値Vbが低下するように、温度tと端子電圧値Vbとが対応付けられている。従って、電圧換算比率取得部505は、温度検出部53によって検出された温度tと電圧検出部51によって検出された端子電圧値Vbとを、ルックアップテーブルLTと照合すると、温度tが高くなるほど蓄電比率RSOCvを増大させるように、蓄電比率RSOCvを推定することになる。
このように、ルックアップテーブルLTには、二次電池4のRSOCと相関関係のある複数のパラメータ、端子電圧値Vb、電流値Ic、及び温度tと二次電池4のRSOCとが対応付けられているので、蓄電比率RSOCvからは、電流値Icや温度tの影響が低減される結果、電圧換算比率取得部505は、精度よく蓄電比率RSOCvを推定することができる。
ところで、ルックアップテーブルLTに設定されている値は、離散的な値になるのに対し、電圧検出部51によって検出される端子電圧値Vb、電流検出部52によって検出される電流値Ic、及び温度検出部53によって検出される温度tは、連続的に変化する。そのため、開放比率推定部503及び電圧換算比率取得部505は、端子電圧値Vb、電流値Ic、及び温度tを、例えば四捨五入したり端数を丸めたりする近似処理を施した上で、ルックアップテーブルLTと照合するようになっている。「実質的に一致」とは、このように、端子電圧値Vb、電流値Ic、及び温度tを、例えば四捨五入したり端数を丸めたりする等の近似処理を施した結果、一致する場合を含む意味である。
なお、電圧換算比率取得部505は、端子電圧値Vb、電流値Ic、及び温度tを用いて蓄電比率RSOCvを推定する例に限られず、端子電圧値Vbのみを用いて推定してもよく、端子電圧値Vbと電流値Icを用いて推定してもよく、あるいは端子電圧値Vbと温度tを用いて、蓄電比率RSOCvを推定するようにしてもよい。
基準比率推定部506は、電圧換算比率取得部505によって推定された蓄電比率RSOCvが、予め設定された基準値Refになることを基準条件としている。そして、基準比率推定部506は、蓄電比率RSOCvが基準値Refと等しくなったとき、二次電池4の蓄電比率RSOCrを、蓄電比率RSOCvすなわち基準値Refと等しいと推定する。
ここで、二次電池は、蓄電比率RSOCの変化に対する端子電圧値Vbの変化量が、大きな領域である第1範囲と、小さな領域である第2範囲とが存在する。そうすると、第2範囲において、電圧換算比率取得部505によって端子電圧値Vbに基づき推定された蓄電比率RSOCvは、第1範囲において電圧換算比率取得部505によって端子電圧値Vbに基づき推定された蓄電比率RSOCvより精度が低下する。
そこで、基準値Refを、第1範囲に属する蓄電比率のうちから選択された値を設定すれば、電圧換算比率取得部505による蓄電比率RSOCvの推定精度が向上するので望ましい。
例えば、リチウムイオン二次電池の場合、RSOCが10%以下の領域が、蓄電比率RSOCの変化に対する端子電圧値Vbの変化量が大きな領域である第1範囲となる。従って、基準値Refとして、第1範囲の値、例えば5.5%を用いることが望ましい。
基準比率推定部506は、補正制御部507によって第1推定部として設定されたときは、蓄電比率RSOCrを第1蓄電比率RSOCaとする。また、基準比率推定部506は、補正制御部507によって第2推定部として設定されたときは、蓄電比率RSOCrを第2蓄電比率RSOCbとする。
補正制御部507は、開放比率推定部503の開放電圧条件、満充電比率推定部504の満充電条件、基準比率推定部506の基準条件のうちいずれかが満たされたとき、当該満たされた条件を用いる推定部を第1推定部として設定する。そして、補正制御部507は、第1推定部として開放比率推定部503を設定したときは、第2推定部として満充電比率推定部504及び基準比率推定部506のうちいずれかを設定し、第1推定部として満充電比率推定部504及び基準比率推定部506のうちいずれかを設定したときは、第2推定部として開放比率推定部503を設定する。
また、補正制御部507は、第2推定部によって第2蓄電比率RSOCbが推定され、満充電容量補正部508によって新たな満充電容量値FCCが容量記憶部509に記憶されたとき、当該第2推定部として用いられていた推定部を第1推定部として設定し、当該推定されていた第2蓄電比率RSOCbを第1蓄電比率RSOCaとして設定することにより、新たな第1蓄電比率RSOCaが推定されたものとして、再び新たな満充電容量値FCCの推定を開始させる。これにより、補正制御部507は、連続的に満充電容量値FCCの補正を繰り返す。
満充電容量補正部508は、第1推定部によって第1蓄電比率RSOCaが推定されてから、第2推定部によって第2蓄電比率RSOCbが推定されるまでの間において電流積算部502により積算された積算値を、差分積算値Qdとして取得する。満充電容量補正部508は、例えば第2推定部によって第2蓄電比率RSOCbが推定されたときの電流積算部502により積算された積算値から、第1推定部によって第1蓄電比率RSOCaが推定されたときの積算値を減算することによって、差分積算値Qdを算出する。
なお、第1推定部によって第1蓄電比率RSOCaが推定されてから、第2推定部によって第2蓄電比率RSOCbが推定されるまでの間に、電流積算部502により積算された積算値が差分積算値Qdとして積算されていればよい。従って、この間に、充電されたり放電されたりしてもよく、必ずしも連続して放電されたり、連続して充電されたりする必要はない。
また、二次電池4のRSOC検出のために用いられている電流積算部502とは別に、満充電容量補正用にもう一つの電流積算部を備え、この電流積算部を用いて、第1推定部によって第1蓄電比率RSOCaが推定されてから、第2推定部によって第2蓄電比率RSOCbが推定されるまでの間における電流値Icの積算を行わせることで差分積算値Qdを取得してもよい。
満充電容量補正部508は、第1推定部により得られた第1蓄電比率RSOCaが表す比率を第1蓄電比率Ra、第2推定部により得られた第2蓄電比率RSOCbが表す比率を第2蓄電比率Rbとして、下記の式(1)に基づき、新たな満充電容量値FCCNを算出する。
満充電容量値FCCN=Qd×1/(Rb−Ra) ・・・(1)
そして、満充電容量補正部508は、このようにして得られた満充電容量値FCCNを、新たな満充電容量値FCCとして容量記憶部509に記憶させることで、満充電容量値FCCを補正する。
なお、満充電容量補正部508は、上記式(1)に基づき満充電容量値FCCを補正する代わりに、下記の差分補正方式によって、満充電容量値FCCを補正するようにしてもよい。
すなわち、満充電容量補正部508は、差分補正方式として、容量記憶部509に記憶されている補正前の満充電容量値FCCOと第1蓄電比率Raとを乗算して得られる乗算値と差分積算値Qdとの加算値である第1電気量QFを、下記の式(2)を用いて算出する。
QF=FCCO×Ra+Qd ・・・(2)
また、満充電容量補正部508は、満充電容量値FCCOと第2蓄電比率との乗算値である第2電気量QSを、下記の式(3)を用いて算出する。
QS=FCCO×Rb ・・・(3)
そして、満充電容量補正部508は、Ra<RbかつQF<QSとなるとき、下記の式(4)に基づき前記新たな満充電容量値FCCNを算出し、Ra<RbかつQF>QSとなるとき、下記の式(5)に基づき前記新たな満充電容量値FCCNを算出し、Ra>RbかつQF<QSとなるとき、下記の式(5)に基づき前記新たな満充電容量値FCCNを算出し、Ra>RbかつQF>QSとなるとき、下記の式(4)に基づき前記新たな満充電容量値FCCNを算出する。
満充電容量値FCCN=FCCO−{|QS−QF|×(1/|Rb−Ra|)}・・・ (4)
満充電容量値FCCN=FCCO+{|QS−QF|×(1/|Rb−Ra|)}・・・ (5)
ここで、第1推定部によって第1蓄電比率Raが推定されたとき、満充電容量補正部508が、FCCO×Raを電流積算部502の蓄電電気量Qとして設定し、電流積算部502によって、引き続きその蓄電電気量Qに対する電流値Icの積算を行わせるようにすると、第2推定部によって第2蓄電比率Rbが推定されたときの蓄電電気量Qを、そのまま第1電気量QFとして用いることができるので、処理を簡素化することができる。
また、蓄電電気量Qの値は、二次電池4の蓄電電気量の推定値(検出値)として用いられるから、第1推定部によって第1蓄電比率Raが推定されたときに、FCCO×Raを蓄電電気量Qとして設定することで、二次電池4の蓄電電気量の推定精度を向上させることができる。
なお、第1蓄電比率Raと第1蓄電比率RSOCa、第2蓄電比率Rbと第2蓄電比率RSOCbは、それそれ、比率の表現方法が異なるだけで同じ比率を表しているのであるから、第1蓄電比率同士、第2蓄電比率同士で互いに等価である。従って、式(1)における”1/(Rb−Ra)”の代わりに”100/(RSOCb−RSOCa)”としてもよく、式(4)、式(5)における”1/|Rb−Ra|)”の代わりに”100/|RSOCb−RSOCa|)”としてもむろんよい。この場合、式(1)における”1/(Rb−Ra)” 、”100/(RSOCb−RSOCa)”、式(4)、式(5)における”1/|Rb−Ra|)”、”100/|RSOCb−RSOCa|)”が、「差分積算値と、第1蓄電比率及び第2蓄電比率の差と1との比率」の一例に相当している。
次に、図1に示す満充電容量補正回路5の動作について説明する。図4〜図8は、図1に示す満充電容量補正回路5の動作の一例を示すフローチャートである。
まず、電流検出部52によって、二次電池4に流れる電流値Icが検出され、電圧検出部51によって端子電圧値Vbが検出され、温度検出部53によって温度tが検出される(ステップS1)。次に、電流積算部502によって、電流値Icが単位時間毎に積算されて、二次電池4に充電されている蓄電電気量Qが算出される(ステップS2)。次に、電圧換算比率取得部505によって、電流値Ic、端子電圧値Vb、及び温度tから、蓄電比率RSOCvが推定され、取得される(ステップS3)。
ステップS1〜S3は、以下の処理と並行して常時実行され、電流値Ic、端子電圧値Vb、温度t、蓄電電気量Q、及び蓄電比率RSOCvは、常時最新の値に更新されるようになっている。
次に、補正制御部507によって、電流値Icの絶対値と開放判定値Ithとが比較され(ステップS4)、開放電圧条件が確認される。そして、電流値Icの絶対値が開放判定値Ith以上で開放電圧条件が満たされないと(ステップS4でNO)、補正制御部507によって、充電制御部501からの満充電の通知の有無が確認され、満充電条件が確認される(ステップS5)。
そして、充電制御部501からの満充電の通知がなく、満充電条件が満たされないと(ステップS5でNO)、補正制御部507によって、蓄電比率RSOCvと基準値Refとが比較され、基準条件が確認される(ステップS6)。そして、蓄電比率RSOCvと基準値Refとが一致せず、基準条件が満たされないと、ステップS4へ移行する。
以上、開放電圧条件、満充電条件、及び基準条件のいずれかが満たされるまで、ステップS4〜S6が繰り返される。そして、電流値Icの絶対値が開放判定値Ithより小さくなり、開放電圧条件が満たされると(ステップS4でYES)、補正制御部507によって、開放比率推定部503が第1推定部に設定されて、ステップS7へ移行する。
次に、補正制御部507によって、開放電圧条件が満たされたときの蓄電電気量Qが、積算値Q(1)として、例えばRAMに記憶される(ステップS7)。
そして、開放比率推定部503によって、二次電池4の開放電圧(OCV:(Open circuit voltage))である端子電圧値Vbと、温度tとから、蓄電比率RSOCoが推定される(ステップS8)。さらに、開放比率推定部503によって、蓄電比率RSOCoが第1蓄電比率RSOCaとして設定される。蓄電比率RSOCoは、百分率で比率を表しているので、これを比率に直したものが、第1蓄電比率Raとして設定される(ステップS9)。
この場合、開放比率推定部503によって、二次電池4の開放電圧に基づき、開放電圧条件が満たされたときの二次電池4の第1蓄電比率Raが推定されるので、第1蓄電比率Raは、精度の高い蓄電比率の推定値となっている。
次に、補正制御部507によって、ステップS4〜S6と同様の処理が、ステップS21〜S23において実行されて、開放電圧条件、満充電条件、及び基準条件のいずれかが再び満たされるまで、ステップS21〜S23が繰り返される。
そして、電流値Icの絶対値が開放判定値Ithより小さくなり、開放電圧条件が満たされると(ステップS21でYES)、補正制御部507によって、開放比率推定部503が第2推定部に設定されて、ステップS24へ移行する。
次に、補正制御部507によって、ステップS21において開放電圧条件が満たされたときの蓄電電気量Qが、積算値Q(2)として、例えばRAMに記憶される(ステップS24)。
そして、開放比率推定部503によって、二次電池4の開放電圧である端子電圧値Vbと、温度tとから、蓄電比率RSOCoが推定される(ステップS25)。さらに、開放比率推定部503によって、蓄電比率RSOCoが第2蓄電比率RSOCbとして設定される。蓄電比率RSOCoは、百分率で比率を表しているので、これを比率に直したものが、第2蓄電比率Rbとして設定される(ステップS26)。
この場合、開放比率推定部503によって、二次電池4の開放電圧に基づき、開放電圧条件が満たされたときの二次電池4の第2蓄電比率Rbが推定されるので、第2蓄電比率Rbは、精度の高い蓄電比率の推定値となっている。
次に、補正制御部507によって、後述する満充電容量値FCCの補正後に、引き続き満充電容量値FCCの補正を繰り返すための準備として、第2推定部として用いられた開放比率推定部503が、新たな第1推定部として設定され(ステップS27)、ステップS41へ移行する。
なお、新たな第1推定部として設定する、とは、具体的な処理を伴うものではなく、既に推定された第2蓄電比率Rbを次の補正処理における第1蓄電比率Raとして用いることで、概念的に、既に第2推定部として用いられた推定部が、次の補正処理においては第1推定部の位置付けに相当することを示している。
ステップS41において、補正制御部507によって、積算値Q(2)から積算値Q(1)が減算されて、差分積算値Qdが算出される(ステップS41)。そうすると、差分積算値Qdは、ステップS4において二次電池4が開放電圧条件を満たした後、充放電を経て再びステップS21において開放電圧条件が満たされるまでの期間における、二次電池4の蓄電電気量Qの変化量となる。
次に、満充電容量補正部508は、このようにして得られた第1蓄電比率Ra、第2蓄電比率Rb、及び差分積算値Qdに基づき、式(1)を用いて満充電容量値FCCNを算出する(ステップS42)。そして、満充電容量補正部508は、満充電容量値FCCNを新たな満充電容量値FCCとして容量記憶部509に記憶させることで、満充電容量値FCCを補正する(ステップS43)。
ここで、特許文献1に記載の方法では、補正前の満充電容量に基づき充電開始時の蓄電電気量を算出する必要があるため、この充電開始時の蓄電電気量に基づき満充電容量の補正を行うと、補正前の満充電容量に含まれていた誤差の一部が、補正後の満充電容量にも残ってしまうという不都合があった。
しかしながら、式(1)は、補正前の満充電容量とは無関係に得られた差分積算量Qd、第1蓄電比率Ra、及び第2蓄電比率Rbに基づき新たな満充電容量値FCCNを算出することができるので、新たな補正値に補正前の満充電容量の誤差が含まれることがない。その結果、満充電容量補正部508は、特許文献1に記載の方法よりも、満充電容量値FCCの補正精度を向上させることができる。
また、上述したように、開放比率推定部503は、基準比率推定部506よりも蓄電比率の推定精度が高いので、このように、第1及び第2推定部として開放比率推定部503が用いられた場合には、第1蓄電比率Ra及び第2蓄電比率Rbのうちいずれかが基準比率推定部506によって推定される場合よりも満充電容量値FCCの補正精度が向上する。
そして、補正制御部507によって、引き続き満充電容量値FCCの補正を繰り返すための準備として、第2蓄電比率Rbが第1蓄電比率Raとして設定され、積算値Q(1)が積算値Q(2)として設定されて(ステップS44)、再びステップS21へ移行する。
次に、補正制御部507によって、開放電圧条件、満充電条件、及び基準条件のいずれかが再び満たされるまで、ステップS21〜S23が繰り返される。
そして、充電制御部501から満充電の通知が有り、満充電条件が満たされると(ステップS22でYES)、補正制御部507によって、満充電比率推定部504が第2推定部に設定され、満充電条件が満たされたときの蓄電電気量Qが、積算値Q(2)として取得される(ステップS28)。
そうすると、二次電池4は満充電になっているのであるから、満充電比率推定部504によって、第2蓄電比率Rbが”1”、第2蓄電比率RSOCbが100%と推定される(ステップS29)。そして、補正制御部507によって、後述する満充電容量値FCCの補正後に、引き続き満充電容量値FCCの補正を繰り返すための準備として、第2推定部として用いられた満充電比率推定部504が、新たな第1推定部として設定され(ステップS30)、ステップS61へ移行する。
また、ステップS21〜S23が繰り返されているときに、蓄電比率RSOCvと基準値Refとが一致して、基準条件が満たされると(ステップS23でYES)、補正制御部507によって、基準比率推定部506が第2推定部に設定され、基準条件が満たされたときの蓄電電気量Qが、積算値Q(2)として取得される(ステップS31)。
そうすると、二次電池4の蓄電比率RSOCvが基準値Ref(%)と等しくなっているのであるから、基準比率推定部506によって、第2蓄電比率RSOCbが、基準値Ref(%)にされる。基準値Ref(%)は、百分率で比率を表しているので、これを比率に直したものが、第2蓄電比率Rbとして設定される(ステップS32)。
そして、補正制御部507によって、満充電容量値FCCの補正後に、引き続き満充電容量値FCCの補正を繰り返すための準備として、第2推定部として用いられた基準比率推定部506が、新たな第1推定部として設定され(ステップS33)、ステップS51へ移行する。
次に、ステップS51〜S54において、ステップS41〜S44と同様の処理が実行されて、満充電容量値FCCが補正されると共に、引き続き満充電容量値FCCの補正を連続的に繰り返すための準備として、第2蓄電比率Rbが第1蓄電比率Raとして設定され、積算値Q(1)が積算値Q(2)として設定されて、ステップS54からステップS61へ移行する。
この場合、ステップS52において、ステップS42と同様、満充電容量補正部508は、特許文献1に記載の方法よりも、満充電容量値FCCの補正精度を向上させることができる。
次に、ステップS61以降の動作について説明する。ステップS61に移行してきたときは、第1推定部、あるいは第2推定部から新たに第1推定部として設定し直された第1推定部として満充電比率推定部504と基準比率推定部506とのうちいずれかが用いられ、満充電条件が満たされたとき、あるいは基準条件が満たされたときに、第1蓄電比率Ra(第2蓄電比率Rbから設定し直された第1蓄電比率Raを含む)が推定されたことになる。
そこで、ステップS61では、次に必ず開放比率推定部503を第2推定部として設定するために、開放電圧条件が満たされるまで、ステップS61が繰り返される。これにより、第1推定部として満充電比率推定部504と基準比率推定部506とのうちいずれかが用いられたときは、必ず第2推定部として、開放比率推定部503が用いられるようになっている。従って、第1推定部及び第2推定部のうち、少なくとも一方として、必ず開放比率推定部503が用いられるようにされている。
ここで、満充電比率推定部504は、二次電池4が満充電にされないと第1蓄電比率Raや第2蓄電比率Rbを推定することができないため、第1蓄電比率Raや第2蓄電比率Rbを推定できる機会が少なく、従って満充電容量値FCCを補正できる機会が少ない。
また、基準比率推定部506は、上述したように開放比率推定部503よりも第1蓄電比率Raや第2蓄電比率Rbの推定精度が低く、従って基準比率推定部506を用いた場合、満充電容量値FCCの補正精度が低下する。また、基準比率推定部506は、二次電池4の蓄電比率RSOCvが、例えば10%以下に設定された基準値Refになるまでユーザが二次電池4を放電させなければ第1蓄電比率Raや第2蓄電比率Rbを推定することができないため、第1蓄電比率Raや第2蓄電比率Rbを推定できる機会が少なく、従って満充電容量値FCCを補正できる機会が少ない。
これに対し、開放比率推定部503は、例えばユーザが機器の電源スイッチをオフするなどして、二次電池4の充放電電流が実質的に0になれば、第1蓄電比率Raや第2蓄電比率Rbを推定することができる。従って、開放比率推定部503は、満充電比率推定部504や基準比率推定部506よりも第1蓄電比率Raや第2蓄電比率Rbの推定機会が多い。また、開放比率推定部503は、基準比率推定部506より第1蓄電比率Raや第2蓄電比率Rbの推定精度が高い。
従って、ステップS61によって、第1推定部及び第2推定部のうち、少なくとも一方として、開放比率推定部503を用いることで、満充電容量値FCCの補正機会を増大しつつ、基準比率推定部506によって第1蓄電比率Ra及び第2蓄電比率Rbを推定する場合よりも満充電容量値FCCの補正精度を向上させることができる。
そして、電流値Icの絶対値が開放判定値Ithより小さくなり、開放電圧条件が満たされると(ステップS61でYES)、補正制御部507によって、開放比率推定部503が第2推定部に設定されて、ステップS62へ移行する。以下、ステップS62〜S65においてステップS24〜S27と同様の処理が実行され、ステップS66〜S69においてステップS41〜S44と同様の処理が実行される。
これにより、満充電容量値FCCが補正されると共に、引き続き満充電容量値FCCの補正を連続的に繰り返すための準備として、第2蓄電比率Rbが第1蓄電比率Raとして設定され、積算値Q(1)が積算値Q(2)として設定されて、ステップS69から再びステップS21へ移行する。
この場合、ステップS67において、ステップS42と同様、満充電容量補正部508は、特許文献1に記載の方法よりも、満充電容量値FCCの補正精度を向上させることができる。
なお、必ずしも満充電容量値FCCの補正を連続的に繰り返す必要はない。例えば、ステップS27、S44を実行せず、ステップS43からステップS1へ移行するようにしてもよい。また、ステップS30,S33,S54を実行せず、ステップS53からステップS1へ移行するようにしてもよい。また、ステップS65,S69を実行せず、ステップS68からステップS1へ移行するようにしてもよい。
一方、開放電圧条件、満充電条件、及び基準条件を監視すべく、ステップS4〜S6が繰り返されているときに、充電制御部501から満充電の通知が有り、満充電条件が満たされると(ステップS5でYES)、補正制御部507によって、満充電比率推定部504が第1推定部に設定され、満充電条件が満たされたときの蓄電電気量Qが、積算値Q(1)として取得される(ステップS10)。
そうすると、二次電池4は満充電になっているのであるから、満充電比率推定部504によって、第1蓄電比率Raが”1”、第1蓄電比率RSOCaが100%と推定され(ステップS11)、ステップS61へ移行する。
また、ステップS4〜S6が繰り返されているときに、蓄電比率RSOCvと基準値Refとが一致して、基準条件が満たされると(ステップS6でYES)、補正制御部507によって、基準比率推定部506が第1推定部に設定され、基準条件が満たされたときの蓄電電気量Qが、積算値Q(1)として取得される(ステップS12)。
そうすると、二次電池4の蓄電比率RSOCvが基準値Ref(%)と等しくなっているのであるから、基準比率推定部506によって、第1蓄電比率RSOCaが、基準値Ref(%)とされる。基準値Ref(%)は、百分率で比率を表しているので、これを比率に直したものが、第1蓄電比率Raとして設定され(ステップS13)、ステップS61へ移行する。
ステップS61以降の動作は上述した通りであるのでその説明を省略する。
図9、図10は、第1推定部として開放比率推定部503が用いられ、第2推定部として満充電比率推定部504が用いられた場合の満充電容量値FCCの補正方法を説明するための説明図である。図9、図10の縦軸は二次電池4のRSOCを示し、横軸は時間の経過を示している。図9は、満充電容量値FCCがマイナス方向に補正される場合、図10は、満充電容量値FCCがプラス方向に補正される場合の例を示している。
まず、図9のタイミングT1のA点において、開放電圧条件が満たされて、開放比率推定部503によって、第1蓄電比率Raが0.2(第1蓄電比率RSOCaが20%)と推定される。このとき、満充電容量値FCCOは、4000mAhであるとする。
次に、タイミングT2において、満充電条件が満たされて、満充電比率推定部504によって、第2蓄電比率Rbが1(第2蓄電比率RSOCbが100%)と推定される(B1点)。このとき、差分積算値Qdが3000mAhであったとする。
そうすると、補正後の満充電容量値FCCNは、式(1)から、
FCCN=3000×1/(1−0.2)=3750mAhとなる。
一方、式(2)〜式(5)の差分補正方式を用いて満充電容量値FCCNを算出すると、
QF=4000×0.2+3000=3800mAh
QS=4000×1=4000mAh
Ra<RbかつQF<QSなので、式(4)を用いて、
FCCN=4000−{|4000−3800|×(1/|1−0.2|)}=3750mAh
となる。
図9においては、タイミングT2において、満充電容量値FCCが補正されることにより、制御部50が式(A)を用いて算出するRSOC(機器側回路3へ通知されるRSOC)が、B2点からB1点へ移動することになる。このように、満充電容量値FCCの補正に応じてRSOCを変化させる処理を、JUMP処理と称する。
次に、図10を参照し、まず、タイミングT1のA点においては、図9におけるA点と同様である。次に、タイミングT2において、満充電条件が満たされて、満充電比率推定部504によって、第2蓄電比率Rbが1(第2蓄電比率RSOCbが100%)と推定される(B1点)。このとき、差分積算値Qdが3400mAhであったとする。
そうすると、補正後の満充電容量値FCCNは、式(1)から、
FCCN=3400×1/(1−0.2)=4250mAhとなる。
一方、式(2)〜式(5)の差分補正方式を用いて満充電容量値FCCNを算出すると、
QF=4000×0.2+3400=4200mAh
QS=4000×1=4000mAh
Ra<RbかつQF>QSなので、式(5)を用いて
FCCN=4000+{|4000−4200|×(1/|1−0.2|)}=4250mAh
となる。
図10においては、タイミングT3において、制御部50が式(A)を用いて算出するRSOCは、100%を超えてしまう。しかしながら、本来、RSOCが100%を超えることはないので、タイミングT3からタイミングT2までの期間については、制御部50は、RSOCを100%に固定して機器側回路3へ通知する。このように、機器側回路3へ通知するRSOCの値を、100%に固定する処理を、KEEP処理と称する。
このように、差分補正方式を用いた場合、満充電容量値FCCNの算出には補正前の満充電容量値FCCOが用いられているものの、結果的に満充電容量値FCCOに含まれる誤差がキャンセルされて、式(1)を用いた場合と同じ満充電容量値FCCNが得られる。従って、差分補正方式を用いた場合であっても、式(1)を用いた場合と同様の補正値が得られるから、満充電容量補正部508は、特許文献1に記載の方法よりも、満充電容量値FCCの補正精度を向上させることができる。
図11、図12は、第1推定部として開放比率推定部503が用いられ、第2推定部として基準比率推定部506が用いられた場合の満充電容量値FCCの補正方法を説明するための説明図である。図11、図12の縦軸は二次電池4のRSOCを示し、横軸は時間の経過を示している。図11は、満充電容量値FCCがマイナス方向に補正される場合、図12は、満充電容量値FCCがプラス方向に補正される場合の例を示している。
まず、図11を参照し、タイミングT4のC点において、開放電圧条件が満たされて、開放比率推定部503によって、第1蓄電比率Raが0.6(第1蓄電比率RSOCaが60%)と推定される。満充電容量値FCCOは、4000mAhであるとする。
次に、タイミングT5において、基準条件が満たされて、基準比率推定部506によって、第2蓄電比率RSOCbが基準値Ref(=5.5%)、第2蓄電比率RbがRef/100(=0.055)と推定される(D1点)。このとき、差分積算値Qdが−2000mAhであったとする。
そうすると、補正後の満充電容量値FCCNは、式(1)から、
FCCN=−2000×1/(0.055−0.6)=3670mAhとなる。
一方、式(2)〜式(5)の差分補正方式を用いて満充電容量値FCCNを算出すると、
QF=4000×0.6−2000=400mAh
QS=4000×0.055=220mAh
Ra>RbかつQF>QSなので、式(4)が用いられ、
FCCN=4000−{|220−400|×(1/|0.055−0.6|)}=3670mAh
となる。図11においては、タイミングT5において、JUMP処理が実行される。
次に、図12を参照し、まず、タイミングT4のC点においては、図11におけるC点と同様である。次に、タイミングT5において、基準条件が満たされて、基準比率推定部506によって、第2蓄電比率RSOCbが基準値Ref(=5.5%)、第2蓄電比率RbがRef/100(=0.055)と推定される(D1点)。このとき、差分積算値Qdが−2360mAhであったとする。
そうすると、補正後の満充電容量値FCCNは、式(1)から、
FCCN=−2360×1/(0.055−0.6)=4330mAhとなる。
一方、式(2)〜式(5)の差分補正方式を用いて満充電容量値FCCNを算出すると、
QF=4000×0.6−2360=40mAh
QS=4000×0.055=220mAh
Ra>RbかつQF<QSなので、式(5)が用いられ、
FCCN=4000+{|220−40|×(1/|0.055−0.6|)}=4330mAh
となる。図12においては、タイミングT6〜T5において、KEEP処理が実行される。
このように、第1推定部として開放比率推定部503が用いられ、第2推定部として基準比率推定部506が用いられたときに差分補正方式を用いた場合であっても、式(1)を用いた場合と同様の補正値が得られるから、満充電容量補正部508は、特許文献1に記載の方法よりも、満充電容量値FCCの補正精度を向上させることができる。
図13、図14は、第1及び第2推定部として開放比率推定部503が用いられた場合の満充電容量値FCCの補正方法を説明するための説明図である。図13、図14の縦軸は二次電池4のRSOCを示し、横軸は時間の経過を示している。図13は、満充電容量値FCCがマイナス方向に補正される場合、図14は、満充電容量値FCCがプラス方向に補正される場合の例を示している。
まず、タイミングT7のE点において、開放電圧条件が満たされて、開放比率推定部503によって、第1蓄電比率Raが0.6(第1蓄電比率RSOCaが60%)と推定される。満充電容量値FCCOは、4000mAhであるとする。
次に、タイミングT8において、開放電圧条件が満たされて、開放比率推定部503によって、第2蓄電比率Rbが0.1(第2蓄電比率RSOCbが10%)と推定される(F1点)。このとき、差分積算値Qdが−1800mAhであったとする。
そうすると、補正後の満充電容量値FCCNは、式(1)から、
FCCN=−1800×1/(0.1−0.6)=3600mAhとなる。
一方、式(2)〜式(5)の差分補正方式を用いて満充電容量値FCCNを算出すると、
QF=4000×0.6−1800=600mAh
QS=4000×0.1=400mAh
Ra>RbかつQF>QSなので、式(4)が用いられ、
FCCN=4000−{|400−600|×(1/|0.1−0.6|)}=3600mAh
となる。図13においては、タイミングT8において、JUMP処理が実行される。
次に、図14を参照し、まず、タイミングT7のE点においては、図13におけるE点と同様である。次に、タイミングT8において、開放電圧条件が満たされて、開放比率推定部503によって、第2蓄電比率Rbが0.1(第2蓄電比率RSOCbが10%)と推定される(F1点)。このとき、差分積算値Qdが−2200mAhであったとする。
そうすると、補正後の満充電容量値FCCNは、式(1)から、
FCCN=−2200×1/(0.1−0.6)=4400mAhとなる。
一方、式(2)〜式(5)の差分補正方式を用いて満充電容量値FCCNを算出すると、
QF=4000×0.6−2200=200mAh
QS=4000×0.1=400mAh
Ra>RbかつQF<QSなので、式(5)が用いられ、
FCCN=4000+{|400−200|×(1/|0.1−0.6|)}=4400mAh
となる。図14においては、タイミングT8において、JUMP処理が実行される。
このように、第1及び第2推定部として開放比率推定部503が用いられたときに差分補正方式を用いた場合であっても、式(1)を用いた場合と同様の補正値が得られるから、満充電容量補正部508は、特許文献1に記載の方法よりも、満充電容量値FCCの補正精度を向上させることができる。
なお、推定部として、開放比率推定部503、満充電比率推定部504、及び基準比率推定部506を備える例を示したが、基準比率推定部506を備えず、開放比率推定部503と満充電比率推定部504とを備え、第1推定部及び第2推定部のうち一方として開放比率推定部503を用い、他方の推定部として満充電比率推定部504を用いるようにしてもよい。
また、満充電比率推定部504を備えず、開放比率推定部503と基準比率推定部506とを備え、第1推定部及び第2推定部のうち一方として開放比率推定部503を用い、他方の推定部として基準比率推定部506を用いるようにしてもよい。
また、満充電比率推定部504及び基準比率推定部506を備えなくてもよい。
また、開放比率推定部503と組み合わせて用いられる推定部は、満充電比率推定部504及び基準比率推定部506に限られず、他の方法で二次電池4の蓄電比率を推定するものであってもよい。
即ち、本発明の一局面に従う満充電容量補正回路は、二次電池に流れる電流の電流値を積算することで、積算値を算出する積算部と、前記二次電池の満充電容量を示す満充電容量値を記憶する容量記憶部と、前記二次電池の実際の満充電容量に対するこの二次電池に蓄えられている蓄電電気量の比率である蓄電比率を推定可能な条件である推定可能条件が、満たされたとき、前記二次電池の蓄電比率を第1蓄電比率として推定する第1推定部と、前記第1推定部によって前記第1蓄電比率が推定された後、前記蓄電比率を推定可能な条件である推定可能条件が満たされるか否かを監視し、当該推定可能条件が満たされたとき、このときの前記二次電池の蓄電比率を第2蓄電比率として推定する第2推定部と、前記第1推定部によって前記第1蓄電比率が推定されてから、前記第2推定部によって前記第2蓄電比率が推定されるまでの間において前記積算部により積算された積算値である差分積算値と、前記第1蓄電比率及び前記第2蓄電比率の差と1との比率と、に基づいて前記二次電池の満充電容量値を推定し、当該推定された満充電容量値を新たな満充電容量値として前記容量記憶部に記憶させることにより満充電容量値を補正する満充電容量補正部と、前記二次電池に流れる電流が、当該二次電池の端子電圧として開放電圧が得られる状態であることを判定するために予め設定された開放判定値を、下回ることを条件とする開放電圧条件を前記推定可能条件として用い、当該開放電圧条件が満たされたとき、前記二次電池の端子電圧に基づき前記二次電池の蓄電比率を推定する開放比率推定部と、前記第1推定部及び前記第2推定部のうち少なくとも一つとして、前記開放比率推定部を設定する補正制御部とを備える。
この構成によれば、二次電池の蓄電比率が推定可能となる条件である推定可能条件が満たされたとき、第1推定部によって、当該二次電池の蓄電比率が第1蓄電比率として推定される。また、第1推定部によって第1蓄電比率が推定された後、第2推定部によって、前記推定条件と同一あるいは異なる推定可能条件が満たされるか否かを監視され、この推定可能条件が満たされたとき、このときの二次電池の蓄電比率が第2蓄電比率として推定される。
ここで、第1蓄電比率及び第2蓄電比率の差は、差分積算値に相当する電気量によって生じたものである。そして、満充電容量値は、比率”1”、すなわち100%に対応している。従って、満充電容量補正部は、第1蓄電比率及び前記第2蓄電比率の差と満充電容量値に対応する比率である1との比率と、差分積算値と、に基づいて二次電池の満充電容量値を推定することができる。満充電容量補正部は、このようにして補正後の満充電容量値を推定することで、補正前の満充電容量値に含まれる誤差の影響を受けずに満充電容量値を補正することができる結果、特許文献1に記載の方法よりも満充電容量の補正精度を向上させることができる。
さらに、開放比率推定部は、前記開放電圧条件が満たされたときの二次電池の端子電圧、すなわち当該二次電池の開放電圧に基づき前記二次電池の蓄電比率を推定する。二次電池の開放電圧は、二次電池の起電力そのものであって、二次電池の起電力は、二次電池の蓄電比率に応じて決まるから、開放電圧に基づき蓄電比率を推定する開放比率推定部は、精度よく二次電池の蓄電比率を推定できる。また、二次電池に流れる電流が開放判定値を下回る開放電圧条件は、例えばこの二次電池を用いる機器のスイッチをユーザがオフする等した場合に満たされる可能性が高い。そのため、二次電池が満充電されたり、完全放電されたりする機会よりも、開放電圧条件が満たされる機会の方が多いと考えられる。
そこで、補正制御部が、第1推定部及び第2推定部のうち少なくとも一つとして、開放電圧条件が満たされることを条件とする開放比率推定部を用いるように設定することで、蓄電比率の推定機会を増大させることができる。そして、蓄電比率の推定機会が増大すれば、満充電容量の補正機会を増大させることができる。これにより、満充電容量の補正機会を増大させつつ、特許文献1に記載の方法よりも満充電容量の補正精度を向上させることが可能となる。
また、前記二次電池が満充電になったことを検出する満充電検出部と、前記満充電検出部によって前記二次電池の満充電が検出されることを条件とする満充電条件を前記推定可能条件として用い、当該満充電条件が満たされたとき、前記二次電池の蓄電比率は1であると推定する満充電比率推定部とを備え、前記補正制御部は、前記第1推定部及び前記第2推定部のうち一方として前記開放比率推定部を設定し、他方の推定部として前記満充電比率推定部を設定することが好ましい。
この構成によれば、満充電検出部によって、二次電池が満充電になったことが検出される。そうすると、上記満充電条件が満たされたときは、ほぼ確実に二次電池の蓄電比率は1(100%)になっていることを意味する。従って、満充電比率推定部は、満充電条件が満たされたとき、二次電池の蓄電比率は1(100%)であると推定することで、極めて高精度で蓄電比率を推定することができる。
そこで、補正制御部が、第1推定部及び第2推定部のうち一方として開放比率推定部を設定し、他方の推定部として満充電比率推定部を設定することで、蓄電比率の推定精度が極めて高い満充電比率推定部と、蓄電比率の推定機会が満充電比率推定部より多い開放比率推定部とを組み合わせて満充電容量の補正に用いることで、補正精度の向上と補正機会の増大とをバランスよく両立させることが容易となる。
また、前記二次電池の端子電圧に基づき、前記二次電池の蓄電比率を取得する電圧換算比率取得部と、前記電圧換算比率取得部によって取得された蓄電比率が予め設定された基準値になる基準条件を前記推定可能条件として用い、当該基準条件が満たされたとき、前記二次電池の蓄電比率は前記基準値であると推定する基準比率推定部とを備え、前記補正制御部は、前記第1推定部及び前記第2推定部のうち一方として前記開放比率推定部を設定し、他方の推定部として前記基準比率推定部を設定することが好ましい。
二次電池の端子電圧は、蓄電比率に応じて変化する。この性質を利用して、電圧換算比率取得部は、二次電池の端子電圧に基づき蓄電比率を取得する。そして、電圧換算比率取得部によって取得された蓄電比率が基準値と一致したときは、すなわち当該二次電池の蓄電比率はその基準値を等しいのであるから、基準比率推定部は、基準値を、そのまま二次電池の蓄電比率とすることで、二次電池の蓄電比率を推定できる。そうすると、基準値を、満充電や完全放電とは異なる蓄電比率に適宜設定しておくことにより、満充電や完全放電しなくても、二次電池の蓄電比率を推定できるから、蓄電比率の推定機会が増大する。
そこで、補正制御部が、第1推定部及び第2推定部のうち一方として開放比率推定部を設定し、他方の推定部として基準比率推定部を設定することで、蓄電比率の推定機会が多い基準比率推定部と、基準比率推定部より蓄電比率の推定精度が高く、かつ蓄電比率の推定機会が満充電比率推定部より多い開放比率推定部とを組み合わせて満充電容量の補正に用いることで、補正精度の向上と補正機会の増大とをバランスよく両立させることが容易となる。
また、前記二次電池が満充電になったことを検出する満充電検出部と、前記満充電検出部によって前記二次電池の満充電が検出されることを条件とする満充電条件を前記推定可能条件として用い、当該満充電条件が満たされたとき、前記二次電池の蓄電比率は1であると推定する満充電比率推定部と、前記二次電池の端子電圧に基づき、前記二次電池の蓄電比率を取得する電圧換算比率取得部と、前記電圧換算比率取得部によって取得された蓄電比率が、予め設定された基準値になる基準条件を前記推定可能条件として用い、当該基準条件が満たされたとき、前記二次電池の蓄電比率は前記基準値であると推定する基準比率推定部とを備え、前記補正制御部は、前記開放電圧条件、前記満充電条件、及び前記基準条件のうちいずれかが満たされたとき、当該満たされた条件を前記推定可能条件として用いる推定部を前記第1推定部として設定し、当該第1推定部として前記開放比率推定部を設定したときは、前記第2推定部として、当該開放比率推定部、前記満充電比率推定部、及び前記基準比率推定部のうちいずれかの推定部を設定し、当該第1推定部として前記満充電比率推定部及び前記基準比率推定部のうちいずれかの推定部を設定したときは、前記第2推定部として前記開放比率推定部を設定することが好ましい。
この構成によれば、補正制御部によって、開放電圧条件、満充電条件、及び基準条件のうちいずれかが満たされたとき、当該満たされた条件を推定可能条件として用いる推定部が第1推定部として設定されるので、蓄電比率の推定機会が増大する。また、補正制御部によって、第1推定部として開放比率推定部が設定されたときは、第2推定部として、開放比率推定部、満充電比率推定部、及び基準比率推定部のうちいずれかの推定部が設定され、当該第1推定部として満充電比率推定部及び基準比率推定部のうちいずれかの推定部が設定されたときは、第2推定部として開放比率推定部が設定される。その結果、第1及び第2推定部のうち少なくとも一方は、基準比率推定部より蓄電比率の推定精度が高く、かつ蓄電比率の推定機会が満充電比率推定部より多い開放比率推定部が用いられる結果、補正精度の向上と補正機会の増大とをバランスよく両立させることが容易となる。
また、前記補正制御部は、前記第2推定部によって前記第2蓄電比率が推定され、前記満充電容量補正部によって新たな満充電容量値が前記容量記憶部に記憶されたとき、当該第2推定部として設定されていた推定部を新たに前記第1推定部として設定し、当該推定されていた第2蓄電比率を前記第1蓄電比率として設定することにより新たな第1蓄電比率が推定されたものとして、新たな前記第2推定部の設定を行うことが好ましい。
この構成によれば、満充電容量値が補正された後、補正制御部によって、当該満充電容量値の補正に用いられた第2蓄電比率が、次の補正のための第1蓄電比率として設定される。そうすると、次に推定可能条件が満たされたときに改めて第1蓄電比率を推定し直す必要がなく、次に所定の推定可能条件が満たされたときに第2蓄電比率を推定して再び満充電容量値を補正することで、連続的に満充電容量値の補正を繰り返すことが可能となる。その結果、満充電容量値の補正機会を増大させることができる。
また、前記満充電容量補正部は、前記第1蓄電比率から前記第2蓄電比率を減算した減算値の逆数を、前記差分積算値に乗算することにより、前記新たな満充電容量値を算出することが好ましい。
この構成によれば、満充電容量補正部は、補正前の満充電容量値を用いることなく新たな満充電容量値を算出することができるので、補正前の満充電容量値に含まれている誤差の影響を受けることなく満充電容量値を補正することができる。従って、満充電容量値の補正精度を向上させることができる。
また、前記満充電容量補正部は、前記第1蓄電比率をRa、前記第2蓄電比率をRb、前記差分積算値をQdとすると、下記の式(1)に基づき、前記新たな満充電容量値FCCNを算出することが好ましい。
満充電容量値FCCN=Qd×1/(Rb−Ra) ・・・(1)
この構成によれば、満充電容量補正部は、補正前の満充電容量値を含まない式(1)を用いて新たな満充電容量値を算出することができるので、補正前の満充電容量値に含まれている誤差の影響を受けることなく満充電容量値を補正することができる。従って、満充電容量値の補正精度を向上させることができる。
また、前記満充電容量補正部は、前記容量記憶部に記憶されている補正前の満充電容量値をFCCO、前記第1蓄電比率をRa、前記第2蓄電比率をRb、前記差分積算値をQdとすると、下記の式(2)を満たす第1電気量QFを取得し、下記の式(3)を満たす第2電気量QSを取得すると共に、Ra<RbかつQF<QSとなるとき、下記の式(4)に基づき前記新たな満充電容量値FCCNを算出し、Ra<RbかつQF>QSとなるとき、下記の式(5)に基づき前記新たな満充電容量値FCCNを算出し、Ra>RbかつQF<QSとなるとき、下記の式(5)に基づき前記新たな満充電容量値FCCNを算出し、Ra>RbかつQF>QSとなるとき、下記の式(4)に基づき前記新たな満充電容量値FCCNを算出するようにしてもよい。
QF=FCCO×Ra+Qd ・・・(2)
QS=FCCO×Rb ・・・(3)
FCCN=FCCO−{|QS−QF|×(1/|Rb−Ra|)}・・・ (4)
FCCN=FCCO+{|QS−QF|×(1/|Rb−Ra|)}・・・ (5)。
この構成によれば、満充電容量値FCCNの算出過程で補正前の満充電容量値FCCOを用いるものの、結果的に満充電容量値FCCOの影響がキャンセルされて、式(1)を用いて満充電容量値FCCNを算出した場合と同様の結果が得られる。
また、前記満充電容量補正部は、前記第1推定部によって前記第1蓄電比率Raが推定されたとき、前記積算部による積算値を前記満充電容量値FCCOと前記第1蓄電比率Raとの乗算値に更新し、当該積算部による以後の積算を、当該更新された後の乗算値に対して引き続き行わせることにより、前記第2推定部によって前記第2蓄電比率Rbが推定されたときにおける前記積算部の積算値を、前記第1電気量QFとして取得することが好ましい。
第1推定部によって第1蓄電比率Raが推定されたとき、満充電容量補正部が、積算部による積算値を、満充電容量値FCCOと第1蓄電比率Raとの乗算値に更新し、当該積算部による以後の積算を、当該更新された後の乗算値に対して引き続き行わせる。このことにより、積算部による積算値が、そのまま式(2)を満たす第1電気量QFとなる。従って、式(2)の演算処理を行うことなく第1電気量QFが得られる結果、演算処理を簡素化することができる。
また、前記蓄電比率には、前記蓄電比率の変化に対して前記二次電池の端子電圧が変化する第1範囲と、前記蓄電比率の変化に対する前記二次電池の端子電圧の変化が前記第1範囲より小さい第2範囲とが存在し、前記基準値として、前記第1範囲に属する蓄電比率のうちから選択された値が設定されていることが好ましい。
この構成によれば、蓄電比率の変化に対する端子電圧の変化が、第2範囲より大きい第1範囲に属する蓄電比率のうちから選択された値が、基準比率推定部によって用いられる基準値として設定される。そうすると、蓄電比率の変化に対して大きく端子電圧が変化する領域において、端子電圧に基づき取得された蓄電比率が基準値と一致することになるから、基準条件の判定精度が向上する。そして、基準比率推定部は、基準条件が満たされたとき、二次電池の蓄電比率は基準値であると推定するのであるから、基準条件の判定精度が向上すれば、基準比率推定部による蓄電比率の推定精度が向上し、ひいては満充電容量値の補正精度が向上する。
また、前記二次電池は、リチウムイオン二次電池であり、前記基準値は、10%以下の値に設定されていることが好ましい。
リチウムイオン二次電池における、SOCが10%以下の領域は、第1範囲に該当する。従って、基準値を10%以下の値に設定すれば、満充電容量値の補正精度を向上させることが可能である。
また、前記二次電池に流れる電流の電流値を検出する電流検出部と、前記二次電池の端子電圧を検出する電圧検出部と、前記二次電池の温度を検出する温度検出部と、前記二次電池の蓄電比率と前記二次電池を流れる電流値と前記二次電池の温度とを、当該二次電池の端子電圧と対応付けるルックアップテーブルを記憶するテーブル記憶部とを備え、前記電圧換算比率取得部は、前記テーブル記憶部に記憶されるルックアップテーブルによって、前記電圧検出部によって検出された端子電圧、前記電流検出部によって検出された電流値、及び前記温度検出部によって検出された温度と対応付けられている蓄電比率を取得することが好ましい。
この構成によれば、二次電池の蓄電比率と、当該蓄電比率と相関関係のある端子電圧値、電流値、及び温度とがルックアップテーブルによって、対応付けられているので、電圧換算比率取得部は、電圧検出部により検出される端子電圧、電流検出部により検出される電流値、及び温度検出部により検出される温度を用いて、二次電池に流れる電流値や温度の影響を低減しつつ二次電池の蓄電比率を容易に取得することができる。
また、本発明の一局面に従う充電システムは、上述の満充電容量補正回路と、前記二次電池の満充電電圧を当該二次電池に印加することにより充電する充電部とを備え、前記満充電検出部は、前記充電部による充電中に当該二次電池に流れる電流が予め設定された判定閾値を下回るとき、当該二次電池が満充電になったと判定する。
この構成によれば、充電部による充電中に当該二次電池に流れる電流が予め設定された判定閾値を下回るとき、すなわち二次電池の充電終了条件が満たされたときに、当該二次電池が満充電になったと判定する。従って、満充電検出部は、二次電池が満充電になったことを、高精度で検出することができる。
また、本発明の一局面に従う電池パックは、上述の満充電容量補正回路と、前記二次電池とを備える。
この構成によれば、二次電池を備えた電池パックにおいて、満充電容量の補正機会を増大させつつ、特許文献1に記載の方法よりも満充電容量の補正精度を向上させることができる。
また、本発明の一局面に従う満充電容量補正方法は、二次電池に流れる電流の電流値を積算することで、積算値を算出する積算工程と、前記二次電池の実際の満充電容量に対するこの二次電池に蓄えられている蓄電電気量の比率である蓄電比率を推定可能な条件である推定可能条件が、満たされたとき、前記二次電池の蓄電比率を第1蓄電比率として推定する第1推定工程と、前記第1推定工程において前記第1蓄電比率が推定された後、前記蓄電比率を推定可能な条件である推定可能条件が満たされるか否かを監視し、当該推定可能条件が満たされたとき、このときの前記二次電池の蓄電比率を第2蓄電比率として推定する第2推定工程と、前記第1推定工程において前記第1蓄電比率が推定されてから、前記第2推定工程において前記第2蓄電比率が推定されるまでの間において前記積算工程により積算された積算値である差分積算値と、前記第1蓄電比率及び前記第2蓄電比率の差と1との比率と、に基づいて、前記二次電池の満充電容量値を推定し、当該推定された満充電容量値を新たな満充電容量値として当該満充電容量値を補正する満充電容量補正工程と、前記二次電池に流れる電流が、当該二次電池の端子電圧として開放電圧が得られる状態であることを判定するために予め設定された開放判定値を、下回ることを条件とする開放電圧条件を前記推定可能条件として用い、当該開放電圧条件が満たされたとき、前記二次電池の端子電圧に基づき前記二次電池の蓄電比率を推定する開放比率推定工程と、前記第1推定工程及び前記第2推定工程のうち少なくとも一つとして、前記開放比率推定工程を用いる。
この構成によれば、上述の満充電補正回路と同様、満充電容量の補正機会を増大させつつ、特許文献1に記載の方法よりも満充電容量の補正精度を向上させることができる。
このような構成の満充電容量補正回路、充電システム、電池パック、及び満充電容量補正方法は、満充電容量の補正機会を増大させつつ、特許文献1に記載の方法よりも満充電容量の算出精度を向上させることができる。
なお、発明を実施するための形態においてなされた具体的な実施態様又は実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、本発明の精神と次に記載する特許請求事項との範囲内で、種々変更して実施することができるものである。