以下、本発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
<第1実施形態>
図1は、第1実施形態に係る空気調和装置10の配管系統を示している。この空気調和装置10は、冷房運転と暖房運転とが可能なヒートポンプ式の空気調和装置10である。図1に示すように、空気調和装置10は、室外に設置される室外機11と、室内に設置される室内機12とを備えている。室外機11と室内機12とは、第1接続配管13及び第2接続配管14を介して接続されている。空気調和装置10には、これら接続配管13,14を含む配管が閉回路状に接続された冷媒回路18が設けられている。冷媒回路18には、主として、室内熱交換器20、圧縮機23、油分離器24、室外熱交換器25、膨張機構である膨張弁26、アキュムレータ27、四方切換弁28が設けられている。冷媒回路18では、冷媒が循環することにより、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。
室内熱交換器20は、冷媒を室内空気と熱交換させるための熱交換器であり、室内機12に設けられている。室内熱交換器20として、例えばクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器等を採用することできる。室内熱交換器20の近傍には、室内空気を室内熱交換器20へ送風するための室内ファン(図示省略)が設けられている。
圧縮機23、油分離器24、室外熱交換器25、膨張弁26、アキュムレータ27、四方切換弁28は、室外機11に設けられている。これらは、何れもケーシング30(図2〜図4参照)内に収容されている。
圧縮機23は、吸入ポート、圧縮機構及び吐出ポートを有し、吸入ポートから吸入した冷媒を圧縮機構で圧縮して、吐出ポートから吐出する。圧縮機23としては、例えば、スクロール圧縮機等の種々の圧縮機を採用することができる。
油分離器24は、圧縮機23から吐出された潤滑油及び冷媒の混合流体から潤滑油を分離するためのものである。分離された冷媒は四方切換弁28へ送られ、潤滑油は圧縮機23に戻される。
室外熱交換器25は、冷媒を室外空気と熱交換させるためのものであり、例えばクロスフィン型のフィン・アンド・チューブ熱交換器等を採用できる。室外熱交換器25の近傍には、室外空気を室外熱交換器25へ送風するための室外ファン31が設けられている。
膨張弁26は、冷媒回路18において室外熱交換器25と室内熱交換器20との間に配設され、流入した冷媒を膨張させて、所定の圧力に減圧させる。膨張弁26として、例えば開度可変の電子膨張弁26を採用することができる。
アキュムレータ27は、流入した冷媒を気液分離するものであり、冷媒回路18において圧縮機23の吸入ポートと四方切換弁28との間に配設されている。アキュムレータ27で分離されたガス冷媒は、圧縮機23に吸入される。
四方切換弁28には、第1〜第4の4つのポートが設けられている。四方切換弁28は、第1ポートと第3ポートとを連通すると同時に第2ポートと第4ポートとを連通する第1状態(図1において実線で示す状態)と、第1ポートと第4ポートとを連通すると同時に第2ポートと第3ポートとを連通する第2状態(図1において破線で示す状態)とに切換可能となっている。第1ポートは、油分離器24を介して圧縮機23の吐出ポートに接続され、また第2ポートは、アキュムレータ27を介して圧縮機23の吸入ポートに接続され、また第3ポートは、室外熱交換器25に接続され、また第4ポートは、第1接続配管13を介して室内熱交換器20に接続されている。空気調和装置10が冷房運転を行うときには、四方切換弁28は第1状態に切り換えられ、暖房運転を行うときには、四方切換弁28は第2状態に切り換えられる。
冷媒回路18の液側配管には、電装品モジュール35の発熱部を冷却するための冷却部である冷媒ジャケット37が接合されている。図例では、冷媒ジャケット37が接合される液側配管は、冷媒回路18における室外熱交換器25と膨張弁26との間の液側配管となっているが、冷媒ジャケット37が接合される冷媒配管は、これに限られない。ただし、冷却能力を考慮すれば、冷媒ジャケット37は、液側配管に接合されるのが好ましい。
冷媒ジャケット37に接合された配管には、冷房運転時には、室外熱交換器25で凝縮した冷媒が流れ、暖房運転時には、室内熱交換器20で凝縮し、膨張弁26で減圧された冷媒が流れる。これらの冷媒の温度は、運転条件等によって異なるが、例えば冷房運転時で40〜45℃程度である。
冷媒ジャケット37は、扁平状に形成されていて、電装品モジュール35の所定位置に面接合可能に構成されている。電装品モジュール35は、冷媒回路18の動作制御を行うための電装品組立体であり、室外機11に設けられている。電装品モジュール35及び冷媒ジャケット37の詳細な構成については後述する。
図2〜図4に示すように、室外機11は、基台としての底板30aと、この底板30aの周縁部に立設された側板30bと、側板30bの上端部間に架設される天板30cとを有するケーシング30を有し、全体として略直方体形状の外観を呈している。
室外機11には、ケーシング30内の空間を2つの空間に区切る仕切り板39が設けられている。仕切り板39は、ケーシング内空間の下端部から上端部に亘る大きさを有していて、ケーシング30の底板30aに立設されるように設けられている。この仕切り板39により、ケーシング内空間は、室外熱交換器25及び室外ファン31が収容される熱交換室40と、圧縮機23、電装品モジュール35等が収容される機械室41とに仕切られている。熱交換室40は、前面から見たときの左側に位置し、機械室41は、前面から見たときの右側に位置している。なお、ケーシング30の前面には、熱交換室40の空気をケーシング外に吹き出すための吹出し口が開口している。
室外熱交換器25は、ケーシング30の底板30a上に設置されており、熱交換室40の下端部から上端部に亘る大きさを有する。そして、室外熱交換器25は、平面視でL字形に形成されており、背面側の側板30b及び左側の側板30bに沿うように配設されている。室外熱交換器25の端部には、仕切り板39の後端部が結合されており、仕切り板39の前端部は、前面側のケーシング側板30bに結合されている。
機械室41は、ケーシング内空間の右側部において、図3及び図4に示すように、前後方向の全体を占めるように形成されている。そして、機械室41内における前面側に電装品モジュール35が配設されている。すなわち、電装品モジュール35は、その前面がケーシング30の前面側の側板30bにおよそ平行になる姿勢で、側板30bの近傍に設置されている。したがって、ケーシング30の前面側板30bを取り外すと、電装品モジュール35の前面が最も手前側で露出する。電装品モジュール35の背面側(後ろ側)には、冷媒配管、アキュムレータ27等の冷媒回路構成要素が配設されている。
電装品モジュール35は、機械室41において高さ方向の中間部に配置されていて、電装品モジュール35の上方及び下方は空間となっている。そして、電装品モジュール35は、幅方向の一端部(左端部)において仕切り板39に結合される一方、他端部(右端部)においてケーシング30の側板30bに結合されている。
電装品モジュール35は、図5に示すように、保持部材44と、回路基板45と、端子台46と、を有している。保持部材44は、ケーシング30の側板30b及び仕切り板39に結合可能に構成された主部材51と、この主部材51に結合される樹脂製の介装部材52とを備えている。主部材51は、板金からなる部材の適所に穴あけ加工を施すとともに、所定の形状になるように折り曲げ加工したものである。主部材51は、矩形状の主面部51aと、この主面部51aの側端部から折り曲げられた側面部51bと、主面部51aの上端部から折り曲げられた天面部51cとを有する。介装部材52は、主部材51の主面部51aに結合されるものであり、回路基板45の熱が主部材51に伝わるのを抑制する。
回路基板45は、主部材51の主面部51aにおける背面側に配設される背面側基板54(図5参照)と、主部材51の主面部51aにおける前面側に配設される前面側基板55(図2参照)とを備えている。
背面側基板54は、パワー素子56a,56b(図6及び図7参照)及びパワー素子56a,56b以外のコンデンサ等の素子56cを含む電装品56が複数実装される回路基板である第1基板部54aと、パワー素子56a,56b以外の素子56cからなる電装品56が複数実装される回路基板である第2基板部54bとを備えている。第2基板部54bに実装される電装品56としては、例えばノイズフィルタ等が挙げられる。第2基板部54bは、電装品56が背面側になるように主部材51に固定されている。
第2基板部54bは、主部材51の主面部51aにおける上側部に結合されており、第1基板部54aは、第2基板部54bの下側に配設されている。第1基板部54aは、主部材51の主面部51aに結合された介装部材52に結合されている。すなわち、第1基板部54aは、主部材51に間接的に結合される一方、第2基板部54bは、主部材51に直接的に結合されている。
第1基板部54aに設けられるパワー素子56a,56bには、第1パワー素子56aとこの第1パワー素子56aよりも発熱の少ない第2パワー素子56bとが含まれる。すなわち、第1基板部54aには、複数のパワー素子56a,56bが実装されている。これらパワー素子56a,56bは第1基板部54aの前面に実装されている。第1パワー素子56aとしては、例えば圧縮機制御用インバータが挙げられる。第2パワー素子56bとしては、例えばファンモータ制御用モジュールが挙げられる。一方、第1基板部54aの背面には、パワー素子56a,56b以外の電装品56が実装されている。なお、第1基板部54aは、パワー素子56a,56bのみが実装され、これ以外の電装品56が実装されていない構成であってもよい。
前面側基板55の前面には、パワー素子56a,56b以外の電装品(図示省略)が多数実装されている。前面側基板55に実装される電装品には、試運転時やメンテナンス時等に作業者が操作するための電装品、制御動作状況を表示可能な電装品等が含まれている。前面側基板55は、主部材51の主面部51aにおいて、主として上側寄りに配設されている。すなわち、前面側基板55は、主面部51aにおいて、後述する伝熱板60が配設された場所とは異なるところに配設されている。
第1基板部54aに実装された複数のパワー素子56a,56bの前面には、図6に示すように、伝熱板60が面接合されている。伝熱板60は、これら複数のパワー素子56a,56bの配設位置を包含する大きさの平板状の部材であり、図7に示すように、第1パワー素子56aに接合されるとともに冷媒ジャケット37が接合される主受け部60aと、この主受け部60aから延出されて第2パワー素子56b,56bが接合される伝熱部60bと、を備えている。第1パワー素子56a及び第2パワー素子56bはともに伝熱板60の背面(裏面)に接合されている。本実施形態では、第1パワー素子56aが1つ設けられるとともに、第2パワー素子56bが上下に並ぶように2つ設けられていて、第1パワー素子56aの側方に下側の第2パワー素子56bが位置するように配置されている。そして、伝熱板60の主受け部60aが、第1パワー素子56aを包含する大きさで横長矩形状に形成される一方、伝熱部60bは、主受け部60aの側端部に連続するとともに、主受け部60aよりも上下方向に長い矩形状に形成されている。伝熱部60bが主受け部60aよりも上方に延びていることにより、伝熱板60は、正面視でL字状となっている。なお、伝熱板60は、例えばアルミニウム等の熱伝導性の高い材質で構成されている。
第1基板部54aは、主部材51の主面部51aにおける背面に結合された介装部材52の背面に結合されているが、主部材51の主面部51a及び介装部材52には、伝熱板60を挿通可能な大きさの開口部61(図5参照)が形成されている。そして、伝熱板60は、この開口部61を通して主部材51の前面側に露出している。なお、開口部61は、図5に破線で示すようにL字形となっている。
図6に示すように、伝熱板60の主受け部60aにおける前面(表面)60cには、冷媒ジャケット37が面接合されている。言い換えると、伝熱板60の前面(表面)60cは、冷媒ジャケット37が接合される接合面を構成し、冷媒ジャケット37の背面(裏面)37aは、電装品モジュール35の接合面60cが接合される接合面を構成している。冷媒ジャケット37は、例えばボルトによるねじ締結により伝熱板60に固定されている。
冷媒ジャケット37は、例えばアルミニウム等の熱伝導性の高い材質で構成された厚みのある板材からなり、冷媒回路18の冷媒配管18aが接合されている。すなわち、冷媒回路18の冷媒を流通させる冷媒配管18aに接合される冷媒ジャケット37が、伝熱板60を介してパワー素子56a,56bに熱的に接続されている。したがって、冷媒ジャケット37は、冷媒回路18の冷媒と熱的に接触して電装品モジュール35のパワー素子56a,56bを冷却可能な冷却部材として機能する。そして、伝熱板60は、冷媒ジャケット37と熱的に接続可能な受け部として機能する。
図8に示すように、冷媒ジャケット37は、横長の長方形状に形成されるとともに、長手方向に延びる溝(図6参照)が形成されている。この溝は上下に2つ設けられており、互いに平行となっている。この2つの溝にU字状に折り曲げられた冷媒配管18aが圧入されることにより、冷媒ジャケット37に冷媒配管18aが接合されている。冷媒ジャケット37に固定された冷媒配管18aは、冷媒回路18の冷媒を流通させる冷却用通路として機能する。
冷媒ジャケット37に接合される冷媒配管18aは、冷媒回路18において室外熱交換器25と膨張弁26との間に設けられる配管(液側配管)の一部であるが、この冷媒配管18aは、上下方向に延びる一対の配管18bの上端部につながっている。すなわち、このU字状に形成された冷媒配管18aの一端部は、上下方向に延びる一方の配管18bを介して室外熱交換器25の下端部に接続され、他端部は、上下方向に延びる他方の配管18bを介して膨張弁26に接続されている。なお、本実施形態では、冷媒ジャケット37の溝に冷媒配管18aを固定する構成としているが、これに限られるものではない。例えば、冷媒ジャケット37を貫通する貫通孔を2つ形成し、これらの一方にそれぞれ配管を接続するとともに、他方にU字管を接続する構成としてもよい。
図8に示すように、電装品モジュール35には、伝熱板60及び冷媒ジャケット37を覆うように端子台46が設けられている。端子台46は、伝熱板60の主受け部60aと伝熱部60bの一部とを覆っている。端子台46は、主部材51の主面部51aにおける前面において前面側基板55の下方に設けられている。言い換えると、冷媒ジャケット37は、前面側基板55よりも下方に配設されている。
端子台46は、前面部46aと側面部46bと天面部46c(図6参照)と底面部46dとを有する基部と、この基部に固定された端子接続部46eとを有する。前面部46aは、横長矩形状に形成されており、少なくとも、主受け部60aに接合された冷媒ジャケット37及び冷媒配管18aを覆う大きさとなっている。前面部46aの前面(表面)には、端子接続部46eが取り付けられている。端子接続部46eには、外部から引き込まれた図外の電源線や信号線等が接続される。
側面部46bは、前面部46aの長手方向両端部に接合され、前面部46aとは垂直になるように設けられている。側面部46bは、保持部材44の主部材51にピン結合されており、端子台46は、このピンを中心として回動可能となっている。端子台46は、基部の前面部46aが垂直となって前面(外面)が前を向く垂下姿勢と、この垂下姿勢からピンを中心として前側に回動し、前面(外面)が上を向くように前面部46aが水平となる横姿勢と、を取り得る。端子台46は、基部が垂下姿勢にあるときには、主部材51の主面部51a及び伝熱板60との間に冷媒ジャケット37を収容できるように主部材51との間に所定の空間を形成する。そして、端子台46は、回動することにより、冷媒ジャケット37を収容する空間を開閉可能となっている。言い換えると、端子台46は、伝熱板60の主受け部60aを覆う空間を開閉する。端子台46が回動可能となっていることにより、冷媒ジャケット37の取り付け作業等の作業時の手間を軽減できる。
天面部46cは、前面部46aの上端部の一部に接続されているものであり、基部が垂下姿勢にあるときに水平向きとなっている。そして、基部が垂下姿勢から横姿勢に向けて回動するのに伴い、天面部46cは下向きに回動する。
底面部46dは、基部が垂下姿勢にあるときに、冷媒ジャケット37よりも下方の位置で水平向きとなっている。底面部46dは、上下配管18bの通過スペースを残して設けられており、垂下姿勢のときに保持部材44と当接する。
端子台46の上側には、伝熱部60bのうち主受け部60aよりも上方に位置する部位を覆う覆い部48が設けられている。
電装品モジュール35の左側の側面部51bには、第1係合部材71が上下2箇所に取り付けられている。また、仕切り板39には、各第1係合部材71とそれぞれ係合する第2係合部材81が上下2箇所に取り付けられている。第1係合部材71および第2係合部材81は、電装品モジュール35を所定の配設位置まで安全にかつ正確に案内するための部材である。第2係合部材81は、垂直方向に延びる案内部81aを有しており、電装品モジュール35は、ケーシング30内に設置される際に第2係合部材81の案内部81aに沿って上から下に向かって案内される。また、第2係合部材81の案内部81aの下端部は、電装品モジュール35が所定の配設位置で保持されるように第1係合部材71を保持可能に構成されている。すなわち、第1係合部材71が案内部81aの下端部までくると、第1係合部材71は、それ以上降下することなく、その位置に維持される。
図9及び図10に示すように、保持部材44の主部材51には、カバー85(図11、図12参照)を取り外す際に利用されるスライド用レール87が設けられている。このカバー85は、伝熱板60と冷媒ジャケット37との面接触を確保するために用いられる塗り剤95(図13参照)を保護するためのものであり、室外機11の組み立て時に取り除かれる。図9は、カバー85が取り外された後の状態を示すものであり、スライド用レール87が露出した状態を示している。
スライド用レール87は、伝熱板60に固定された樹脂製の枠部材88に一体的に形成されている。枠部材88は、上下方向に延びる一対の縦方向部89と、両縦方向部89の端部同士を接続するように左右方向に延びる一対の横方向部90とを備え、矩形枠状に構成されている。塗り剤95は枠部材88の内側の前面60cに塗布されている。枠部材88は、冷媒ジャケット37を囲むような大きさに形成されており、一対の横方向部90は、冷媒ジャケット37の上面及び下面に接するように配置され、一対の縦方向部89は、冷媒ジャケット37の左右側面に接するように配置されている。
縦方向部89及び横方向部90は、伝熱板60から所定の高さだけ突出している。この突出高さは、後述するカバー85の被ガイド部85bに対応する高さである。また、縦方向部89には、冷媒配管18aとの干渉を防止するための切欠き部89aが形成されている。この切欠き部89aは、上下に2箇所形成されており、各切欠き部89aは、冷媒配管18aの外周面に応じた円弧状に窪む形状となっている。
スライド用レール87は、両縦方向部89の外側でそれぞれ縦方向部89に沿うように上下方向に延びている。そして、スライド用レール87の外側面87aは、カバー85の被ガイド部が摺接する摺接面となっている。また、スライド用レール87の前側面には、縦方向部89の切欠き部89aに対応する位置に凹部87bが形成されている。この凹部87bも冷媒配管18aとの干渉を防止するためのものである。
スライド用レール87には、長さ方向の中間位置に係合凹部87cが形成されている。係合凹部87cは、カバー85の被ガイド部85bが摺動するスライド用レール87の外側面87aから左右方向の内側に凹んだ形状に形成されている。
カバー85は、図11に示すように、略矩形状のカバー本体85aと、このカバー本体85aの側端部からカバー本体85aと垂直な方向に延出される被ガイド部85bとを有する。カバー本体85aは、枠部材88を覆うことができるように、枠部材88よりも若干大きな矩形状に形成されている。カバー85が枠部材88に組み付けられた状態では、カバー本体85aの内面は、縦方向部89及び横方向部90の先端面に当接する。このとき、カバー本体85aと伝熱板60との間には間隙が形成されている。そして、カバー本体85aの左右両端に形成される被ガイド部85bは、スライド用レール87の外側面87aに摺接可能となっている。
各被ガイド部85bには、スライド用レール87の係合凹部87cに係止可能な爪部85cがそれぞれ設けられている。爪部85cは、被ガイド部85bの先端部からもう一方の被ガイド部85bに向かって突出している。そして、カバー85がスライド用レール87に取り付けられると、各爪部85cは、それぞれ対応する係合凹部87cに入り込むようになっている。
カバー85には、カバー本体85aの下端部につながるように傾斜部85dが設けられている。傾斜部85dは、カバー本体85aを含む仮想平面に対して被ガイド部85bが突出する側に傾いている。そして、傾斜部85dは、図12に示すように、枠部材88の下側の横方向部90をほぼ覆うことができる大きさに形成されていて、伝熱板60に近接する位置まで延出されている。なお、図12は、電装品モジュール35が室外機11にセットされた後で、かつカバー85を取り外す前の段階の状態を示している。
傾斜部85dには、引っ掛け部85eが設けられている。この引っ掛け部85eには、指を挿入可能な大きさの貫通孔が形成されている。引っ掛け部85eは、カバー85を取り外す際に作業者が指を引っ掛けて引っ張るのに利用される。
ここで、本実施形態の空気調和装置10の室外機11の製造工程において、電装品モジュール35と冷媒ジャケット37とを結合する方法について説明する。
電装品モジュール35を室外機11に組み付ける工程を説明する前に、まず電装品モジュール35自体の製造工程の主要点について説明する。電装品モジュール35の製造工程では、保持部材44の前面に前面側基板55を取り付け、また保持部材44の背面に背面側基板54(第1基板部54a,第2基板部54b)を取り付ける。このとき、パワー素子56a,56bに接合された伝熱板60を主部材51及び介装部材52の開口部61に背面側から挿入して、伝熱板60が保持部材44の前面に突出するようにする。
そして、伝熱板60の前面60cにおける枠部材88の内側の領域に塗り剤95(図13参照)を塗布する。塗り剤95とは、グリス等の半固体状の粘り気のあるものであり、伝熱板60の前面60cが冷媒ジャケット37に面接合される際の密着を確保するためのものである。そして、塗り剤95が塗られた領域が隠れるようにカバー85を取り付ける。カバー85は、被ガイド部85bの爪部85cがスライド用レール87の係合凹部87cに嵌まり込むようにしてスライド用レール87に取り付けられる。このとき、カバー85の被ガイド部85bがスライド用レール87の外側面87aを摺動し、カバー本体85aと塗り剤95の塗布面との間に所定の間隙が形成されているので、カバー85によって塗り剤95が削り取られる心配はない。
続いて、電装品モジュール35を室外機11に組み付ける際には、まず、基台としての底板30a上に、仕切り板39、冷媒回路の構成要素などを配設して所定位置に保持する。冷媒回路18の構成要素としては、例えば室外熱交換器25、圧縮機23、油分離器24、膨張弁26、アキュムレータ27、四方切換弁28、配管18aなどが含まれる。もちろん、この配管18aには冷媒ジャケット37が取り付けられている。この時点では、電装品モジュール35は底板30a上にまだ配設されていない。
底板30a上に電装品モジュール35が配設される前の状態では、電装品モジュール35の配設予定位置には所定の大きさの空間が設けられており、この空間よりも前面側に冷媒ジャケット37および冷媒配管18aが配置されている。電装品モジュール35が配設される前の冷媒ジャケット37の配設位置は、電装品モジュール35が所定の配設位置に配設されたときに冷媒ジャケット37の背面37aが電装品モジュール35の伝熱板60の塗り剤95塗布面に面接触する位置またはその近傍に調整されている。
そして、第1係合部材71を第2係合部材81の案内部81aに沿って上から下に向かってスライドさせることにより、電装品モジュール35を所定の配設予定位置まで移動させる。このとき、カバー85の傾斜部85dが先頭になるように電装品モジュール35が上方から下方に向けてスライド移動する。このため、カバー85が冷媒ジャケット37に当接することがあるとしても、カバー85の傾斜部85dによって、冷媒ジャケット37は手前側(伝熱板60から離れる側)に案内されるので、冷媒ジャケット37が障害になることなく電装品モジュール35を所定の配設位置までスムーズにスライドさせることができる。なお、冷媒ジャケット37が結合された冷媒配管18aは、上下配管18bによって前後方向に変位可能に支持されている。このため、カバー85と冷媒ジャケット37とが衝突することがあったとしても、冷媒ジャケット37を容易に退避させることができる。
そして、第1係合部材71が案内部81aの下端部までくると、この状態で、電装品モジュール35はそれ以上降下しないようになる。したがって、電装品モジュール35は、ケーシング30又はケーシング30に固定された部材である仕切り板39によって保持された仮止め状態となる。このとき電装品モジュール35は所定の配設予定位置となり、図13に示すように、塗り剤95の塗布領域すなわちカバー85の前面(外面)が冷媒ジャケット37の背面37aと対向する。
続いて、カバー85を電装品モジュール35から取り外す。すなわち、カバー85の引っ掛け部85eに指等を引っ掛けてカバー85を下方に引っ張る。こうすることにより、カバー85の爪部85cが係合凹部87cから外れるので、被ガイド部85bをスライド用レール87の外側面87aに沿ってスライドさせることができる。このときカバー85は冷媒ジャケット37と伝熱板60との間の間隙をスライドする。これにより、カバー85を電装品モジュール35から取り外すことができる。このとき、伝熱板60の前面60cとカバー85との間に間隙が形成され、また、塗り剤95が塗布された領域が枠部材88によって囲まれており、しかも、塗り剤95が塗布された領域とカバー85との間の間隙が確保された状態でカバー85をスライド用レール87に沿ってスライド移動させるので、カバー85を取り外す際にもカバー85が塗り剤95を削り取る心配はない。
そして、冷媒ジャケット37を背面側に変位させて、図14に示すように、冷媒ジャケット37と伝熱板60とを密着させ、この状態でボルト等の締結具を用いて伝熱板60に冷媒ジャケット37を固定する。このとき、冷媒ジャケット37と伝熱板60とは、塗り剤95を介して密着する。そして、端子台46を横姿勢から垂下姿勢へと回動させた後、端子台46の端子接続部46eに信号線等の所定の配線を接続する。このようにして、室外機ケーシング30内への電装品モジュール35の設置を行うことができる。
ここで、本実施形態の空気調和装置10の運転動作について説明する。
この空気調和装置10では、冷房運転を行うときは、四方切換弁28は第1状態に切り換えられる。圧縮機23で圧縮された冷媒は、油分離器24で油分が分離された後、四方切換弁28を経由して室外熱交換器25に流入する。この冷媒は、室外熱交換器25において室外空気と熱交換されて凝縮し、液冷媒となる。この液冷媒は、上下方向に延びる一方の配管18bを上方に向かって流れた後、冷媒ジャケット37に固定された冷媒配管18aを流れる。このとき、圧縮機23、ファンモータの駆動によってパワー素子56a,56bが発熱していれば、パワー素子56a,56bの発熱によって伝熱板60が加熱されているが、冷媒配管18aを流れる冷媒によって、この加熱された伝熱板60が冷却される。
冷媒配管18aを流れた冷媒は、上下方向に延びるもう一方の配管18bを下方に向かって流れた後、膨張弁26で減圧されて、室内熱交換器20に流入する。この冷媒は、室内熱交換器20において室内空気と熱交換されて気化する。この熱交換によって室内空気は、冷却されて室内に吹き出される。室内空気によって加熱されて蒸発した冷媒は、四方切換弁28を経由してアキュムレータ27に流入する。アキュムレータ27では、冷媒が気液分離され、ここで気液分離されたガス冷媒は圧縮機23に吸入される。冷房運転時には、この冷媒循環が継続して行われる。
一方、暖房運転時には、四方切換弁28は第2状態に切り換えられる。圧縮機23から吐出された冷媒は、油分離器24及び四方切換弁28を経由して室内熱交換器20に導入される。室内熱交換器20において、冷媒は室内空気と熱交換されて凝縮する。この熱交換により、室内空気は加熱されて室内に吹き出される。室内空気によって冷却されて凝縮した冷媒は、膨張弁26で膨張され、その後、上下方向に延びる一方の配管18bを上方に向かって流れた後、冷媒ジャケット37に固定された冷媒配管18aを流れる。このとき、パワー素子56a,56bの発熱によって加熱された伝熱板60を冷却する。
冷媒配管18aを流れた冷媒は、上下方向に延びるもう一方の配管18bを下方に向かって流れた後、室外熱交換器25に導入されて蒸発し、四方切換弁28を経由してアキュムレータ27に流入する。ここで気液分離されたガス冷媒は圧縮機23に吸入される。暖房運転時には、この冷媒循環が継続して行われる。
以上説明したように、本実施形態では、伝熱板60の前面60cに塗り剤95が塗布された電装品モジュール35に、当該塗り剤95との間に間隙が形成されるようにカバー85を設け、このカバー85を間に挟むようにして、電装品モジュール35の伝熱板60の前面60cと冷媒ジャケット37の背面37aとを対向させ、この状態でカバー85を取り外して電装品モジュール35と冷媒ジャケット37とを接合する。このため、電装品モジュール35と冷媒ジャケット37とが対向配置されるまでは、カバー85が存在することにより、製造工程中において意図しないところに塗り剤95が付着したり、塗り剤95に埃が付着したりすることを防止することができる。しかも、カバー85と塗り剤95との間に間隙が形成されていて、カバー85が塗り剤95から離隔した状態となっているので、カバー85を取り外すときにカバー85によって塗り剤95が削り取られることを回避することもできる。さらに、カバー85を取り外す際には、電装品モジュール35の前面60cと冷媒ジャケット37の背面37aとが対向した状態になっているので、カバー85が取り外された後は、両接合面を面接合させるだけでいい。この点でも、塗り剤95が削り取られることを回避することができる。
しかも本実施形態では、カバー85の取り外し時においてカバー85をスライド用レール87に沿ってスライドさせるので、カバー85が予め決められた経路を移動する。このため、カバー85の取り外し時に塗り剤95が塗布されたところを誤って通ることを回避することができ、これにより、カバー85の取り外し時に塗り剤95が削り取られることを確実に防止することができる。
また本実施形態では、冷媒回路18の構成要素をケーシング30の底板30a上にセットして冷媒ジャケット37を所定位置に保持し、この冷媒ジャケット37の背面37aに伝熱板60の前面60cが対向するまで、電装品モジュール35をレール87に沿ってスライドさせる。このため、冷媒配管18aが接合された冷媒ジャケット37を電装品モジュール35と熱的に接合することができるようになり、電装品モジュール35の発熱を冷媒配管18aの冷媒に伝熱させることが可能となる。
また本実施形態では、カバー85に傾斜部85dが設けられていて、この傾斜部85dが設けられた一端部が冷媒ジャケット37に近い側となるように電装品モジュール35を移動させる。このため、電装品モジュール35をスライドさせる際に、カバー85が冷媒ジャケット37と当接することがあったとしても、傾斜部85dの存在により、カバー85が取り付けられていない冷媒ジャケット37が案内されることになる。したがって、電装品モジュール35のスライド時の作業を容易化することができる。
また本実施形態では、電装品モジュール35の伝熱板60の前面60cと冷媒ジャケット37の背面37aとを対向させた状態で電装品モジュール35を保持し、この状態でカバー85を取り外すので、カバー85の取り外し時に電装品モジュール35が冷媒ジャケット37に対して仮止めされた状態にとなる。このため、カバー85を取り外す作業の手間を軽減することができる。
<第2実施形態>
図15は、本発明の第2実施形態に係る空気調和装置10の室外機11の正面図であり、図16は、その電装品モジュール35及びその周辺の構造を示す斜視図である。図17は、カバー85、冷媒ジャケット37及び電装品モジュール35の配置を説明するための断面図であり、図18は、これらの配置を説明するための分解斜視図である。図19(a)は第2実施形態における冷媒ジャケットを示す正面図であり、図19(b)はそのA−A線断面図である。
図15〜19に示すように、この第2実施形態では、冷媒ジャケット37をその前面37b側から覆うようにカバー85が電装品モジュール37に取り付けられている点が第1実施形態と異なっている。すなわち、この第2実施形態では、カバー85は、第1実施形態と同様にして電装品モジュール35の伝熱板60の前面60cから一旦取り外され、前面60cと冷媒ジャケット37の背面37aとが面接合された後、後述のようにして再び電装品モジュール37に取り付けられる。その他の部位については第1実施形態と同じ符号を付して説明を省略する。
第2実施形態では、カバー85は、室外機11のケーシング30の内部に電装品モジュール35を組み付けるときに、塗り剤95が塗布された電装品モジュール35の前面60cを保護するという第1実施形態と同様の機能の他、さらに次の2つの機能を有している。すなわち、カバー85は、後述するように、空気調和装置10の冷房運転、暖房運転などの通常の運転時に、冷媒ジャケット37の前面37b側における熱交換を抑制して冷媒ジャケット37の背面37aと伝熱板60の前面60cとの熱交換の効率を向上させる機能を有している。また、カバー85は、点検、修理などのサービス時に、所定の配設位置から取り外された電装品モジュール35に取り付けて電装品モジュール35の伝熱板60の前面60cを保護する機能を有している。
冷媒ジャケット37は横長の長方形状を有し、その前面37bには、第1実施形態と同様に、冷媒ジャケット37の長手方向(幅方向)に延びる2本の溝37cが上下に並設されている。これらの溝37cに冷媒配管18aの一部(背面側の部分)がそれぞれ圧入されている。すなわち、冷媒配管18aの背面側の部分は溝37c内に配置されており、冷媒配管18aの前面側の部分は溝37cの外部に露出している。
冷媒ジャケット37の前面37bには、冷媒ジャケット37の背面37a側に凹み長手方向に延びる凹部37dが2本の溝37cの間に形成されている。この凹部37dにおける長手方向の両サイドには、冷媒ジャケット37を厚み方向に貫通する貫通孔37eがそれぞれ形成されている。また、伝熱板60には、これらの貫通孔37eに対応する位置に図略のねじ穴がそれぞれ設けられている。冷媒ジャケット37は、各ボルト91が貫通孔37eに挿通されるとともに前記ねじ穴に螺合されることにより、電装品モジュール35に固定されている。
カバー85は、冷媒ジャケット37の前面37bを覆うように配置されている。カバー85は、略矩形状のカバー本体85aと、このカバー本体85aの側端部からカバー本体85aと垂直な方向に延出される一対の被ガイド部85bと、カバー本体85aの上端部から前記垂直な方向に延出される延設部85fと、カバー本体85aの下端部から斜め下方に向かって延出される傾斜部(延設部)85dとを有する。被ガイド部85b、延設部85fおよび傾斜部85dは、カバー本体85aから電装品モジュール37側にそれぞれ延出されている。
カバー本体85aは、冷媒ジャケット37を覆うことができるように、冷媒ジャケット37よりも若干大きな矩形状に形成されている。また、各被ガイド部85bの前記延出方向の長さは、冷媒ジャケット37の側面を覆うことができるように、第1実施形態のカバー85の被ガイド部85bよりも大きい。
各被ガイド部85bには、冷媒配管18aが配置される円弧状の切り欠き部85gが上下に2つずつ設けられている。これらの切り欠き部85gは、その内部に冷媒配管18aを配置できるように冷媒配管18aの外径よりも若干大きな内径を有している。
各被ガイド部85bには、スライド用レール87の係合凹部87cに係止可能な爪部85cがそれぞれ設けられている。爪部85cは、被ガイド部85bの先端部からもう一方の被ガイド部85bに向かって突出している。そして、カバー85がスライド用レール87に取り付けられると、各爪部85cは、それぞれ対応する係合凹部87cに入り込むようになっている。
カバー85が枠部材88に組み付けられた状態では、カバー本体85aの内面は、冷媒ジャケット37及び冷媒配管18aと隙間をあけて配置されている。冷媒配管18aは、その一部分が冷媒ジャケット37とともにカバー85に覆われており、他の部分が切り欠き部85gを通じてカバー85の外に延設されている。
傾斜部85dは、カバー本体85aを含む仮想平面に対して被ガイド部85bが突出する側に傾いている。すなわち、傾斜部85dは、斜め下方に向かって電装品モジュール35側に延びている。そして、傾斜部85dは、図17に示すように、冷媒ジャケット37の下端部をほぼ覆うことができる大きさに形成されている。
傾斜部85dには、引っ掛け部85eが設けられている。この引っ掛け部85eには、指を挿入可能な大きさの貫通孔が形成されている。引っ掛け部85eは、カバー85を取り外す際に作業者が指を引っ掛けて引っ張るのに利用される。
カバー85の熱伝導率は、伝熱板60の前面60cを構成する部材の熱伝導率よりも低い。伝熱板60は、例えばアルミニウム等の熱伝導性の高い材料で構成されており、カバー85は、伝熱板60よりも熱伝導性の低い材料で構成されている。カバー85を構成する材料としては、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート等の合成樹脂等が例示できる。
図15に示すように、冷媒ジャケット37の下方、すなわちカバー85の傾斜部85dの下方には、運転時に発熱を伴う機器である圧縮機23が配設されている。
図19に示すように、冷媒ジャケット37は、その凹部37dに、冷媒ジャケット37の厚み方向に貫通する複数の穴37fを有している。これらの穴37fは凹部37dの長手方向に沿って配列されている。穴37fはプレス加工により形成することができるので、穴形成時の加工コストを低く抑えることができる。
ところで、冷媒ジャケット37が上記のような複数の穴37fを有していない場合には、伝熱板60の前面60cと冷媒ジャケット37の背面37aとを面接合するときに、これらの間に空気が残留することがある。このように空気だまりができると、この空気だまりによって塗り剤95が空気だまりの周囲に押し退けられて、図20(b)のように伝熱板60の前面60cにおいて塗り剤95が付着していないかまたは塗り剤95の付着量が少ない部位95aができることがある。
一方、この第2実施形態では、冷媒ジャケット37に複数の穴37fを設けているので、伝熱板60の前面60cと冷媒ジャケット37の背面37aとの間に空気が残留しにくくなる。すなわち、複数の穴37fは、伝熱板60の前面60cと冷媒ジャケット37の背面37aとを面接合するときに、これらの間にある空気を逃がすための通路として機能する。これにより、図20(a)に示すように伝熱板60の前面60cにおいて塗り剤95の付着状態が良好に保つことができる。
次に、第2実施形態における電装品モジュール35と冷媒ジャケット37とを結合する方法について説明する。まず、第1実施形態と同様にして、電装品モジュール35自体を製造する。この電装品モジュール35にはカバー85が取り付けられ、このカバー85により伝熱板60の前面60cが覆われている。
続いて、第1実施形態と同様にして、電装品モジュール35を室外機11の所定の配設位置に組み付ける。この配設位置においては、電装品モジュール35の伝熱板60の前面60cは、冷媒ジャケット37の背面37aと対向している。
続いて、第1実施形態と同様にしてカバー85を電装品モジュール35から取り外した後、冷媒ジャケット37を背面側に変位させて、冷媒ジャケット37と伝熱板60とを密着させ、この状態でボルト91を用いて伝熱板60に冷媒ジャケット37を固定する。
第2実施形態では、これに続いて、一旦取り外されたカバー85を、冷媒ジャケット37の前面37b側から冷媒ジャケット37が隠れるように電装品モジュール35に再び取り付ける。この取り付け時には、冷媒ジャケット37の前面37bを覆うようにカバー85を被せて、被ガイド部85bの爪部85cをスライド用レール87の係合凹部87cに嵌め込む。これにより、カバー85が電装品モジュール35に固定される。
続いて、カバー85は、その前面が端子台46により覆われる。端子台46と冷媒ジャケット37が例えば金属製であり、カバー85が例えば合成樹脂製である場合には、端子台46と冷媒ジャケット37との間に熱伝導性の低いカバー85を介在させることにより、冷媒ジャケット37が端子台46と熱交換するのを抑制することができる。
次に、点検、修理などのサービス時に電装品モジュール35を室外機11の配設位置から取り外す方法について説明する。このサービス時には、まず、カバー85を電装品モジュール35から取り外す。ついで、冷媒ジャケット37を電装品モジュール35に固定しているボルト91を取り外し、冷媒ジャケット37を前面側に変位させて伝熱板60の前面60cから冷媒ジャケット37の背面37aを引き離す。ついで、上記した電装品モジュール35の組み付け時とは逆の手順で電装品モジュール35を室外機11の所定の配設位置から取り外す。
続いて、上記のようにして電装品モジュール35から取り外されたカバー85を、再び電装品モジュール35に取り付ける。カバー85は、被ガイド部85bの爪部85cがスライド用レール87の係合凹部87cに嵌まり込むようにしてスライド用レール87に取り付けられる。これにより、伝熱板60の前面60cの塗り剤95が塗られた領域がカバー85により覆われる。
このようにカバー85により塗り剤95が塗られた領域が保護されているので、サービス時に電装品モジュール35を運搬したり、電装品モジュール35を一時的に保管したり、電装品モジュール35の一部を修理したりする際に、塗り剤95が意図しないところに付着したり、塗り剤95に埃が付着したりするのを抑制できる。
以上説明したように、第2実施形態では、電装品モジュール35及び冷媒ジャケット37の一方からカバー85を取り外し、伝熱板60の前面60cと冷媒ジャケット37の背面37aとを面接合した後、取り外されたカバー85を電装品モジュール35に再び取り付けておく。したがって、装置の通常使用時には、カバー85は電装品モジュール35に取り付けられた状態とされる。一方で、点検、修理などのサービス時には、面接合されている前面60cと背面37aとを離した後、電装品モジュール35にカバー85を再び取り付けることができる。これにより、サービス時などに電装品モジュール35を所定の配設位置から取り外す場合であっても、塗り剤95が意図しないところに付着したり、塗り剤95に埃が付着したりするのを抑制できる。
また、第2実施形態では、冷媒ジャケット37の前面37bを覆うようにカバー85が設けられている。したがって、装置の通常使用時には、冷媒ジャケット37の背面37aは電装品モジュール35の前面60cとの間で熱交換する一方で、前面37bにおいては空気や他の部材との熱交換が抑制される。すなわち、冷媒ジャケット37の前面37bをカバー85により覆うことにより、前面37b近傍における空気の対流を抑制することができる。これにより、前面37bにおける熱交換が抑制されるので、冷媒ジャケット37は、その背面37aと電装品モジュール35の接合面60cとの間において主に熱交換されることになり、電装品モジュール35をより効率的に冷却することができる。
また、第2実施形態では、カバー85の熱伝導率は、電装品モジュール35の伝熱板60を構成する部材の熱伝導率よりも低いので、カバー85を通じた熱伝導を抑制することができる。これにより、冷媒ジャケット37の前面37bにおける熱交換がさらに抑制されるので、冷媒ジャケット37の背面37aと電装品モジュール35の接合面60cとの間における熱交換の効率をさらに向上させることができる。
また、第2実施形態では、カバー85の下端部に、冷媒ジャケット37の下端部を覆うように電装品モジュール35側に延びる傾斜部85dが設けられている。したがって、例えば圧縮機23などのように運転時に発熱を伴う機器が冷媒ジャケット37の下方に配設されている場合であっても、運転時に圧縮機23からの熱気が冷媒ジャケット37に直接あたるのを抑制できる。これにより、冷媒ジャケット37が電装品モジュール35を冷却する効率が低下するのを抑制できる。また、この傾斜部85dは、斜め下方に向かって電装品モジュール35側に延びているので、圧縮機23からの熱気が傾斜部85dに沿って流れやすくなる。これにより、熱気が傾斜部85dの下方に滞留するのを抑制することができるので、冷却効率の低下をさらに抑制することができる。
また、第2実施形態では、カバー85は、その一端部に冷媒配管18aが嵌る切り欠き部85gを有しており、冷媒配管18aは、その一部分が冷媒ジャケット37とともにカバー85に覆われており、他の部分が前記切り欠き部85gを通じてカバー85の外に延設されている。したがって、カバー85と冷媒配管18aとの隙間を小さくすることができる。これにより、圧縮機23からの熱気が前記隙間を通じてカバー85と冷媒ジャケット37との間の空間に入り込むのを抑制することができるので、冷却効率の低下をさらに抑制することができる。
<他の実施形態>
なお、本発明は、前記実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変更、改良等が可能である。
例えば、図22に示すように、冷媒ジャケット37の背面37aと伝熱板60の前面60cとが面接合された領域の周縁部に沿って塗り剤95を溜めるための空間Sが設けられていてもよい。この形態では、前記空間Sは冷媒ジャケット37と伝熱板60と枠部材88とに囲まれている。
伝熱板60の前面60cと冷媒ジャケット37の背面37aとを面接合するときには、この面接合時の圧力により塗り剤95が面接合領域の周縁部側に押されて移動し、場合によっては塗り剤95が周縁部からはみ出すことがある。このように塗り剤95が周縁部からはみ出すと、製造時などに他の部品に塗り剤95が付着するなどの不具合が生じることがある。
一方、図22に示す形態では、周縁部に沿って前記空間Sが設けられているので、仮に塗り剤95が面接合領域の周縁部からはみ出したとしても、はみ出した塗り剤95は前記空間Sに溜められる。前記空間Sは、例えば冷媒ジャケット37と伝熱板60と枠部材88とに囲まれているので、製造時などにおいて他の部品にはみ出した塗り剤95が付着するのを抑制することができる。なお、前記空間Sは、面接合された領域の周縁部全周にわたって形成されていてもよく、また、面接合された領域の上縁部と下縁部のみに形成したり、面接合された領域の側縁部のみに形成したりすることもできる。
また、前記実施形態では、電装品モジュール35に接合される冷却部材として、冷媒ジャケット37が使用される例について説明したが、これに代え、冷却部材は多数のフィンを有するヒートシンクによって構成されていてもよい。
また、前記実施形態では、伝熱板60に塗り剤95を塗布する例を説明したが、これに変え、冷媒ジャケット37の背面37aに塗り剤95を塗布するとともに、冷媒ジャケット37にカバー85を取り付けておくようにしてもよい。
また、前記実施形態では、電装品モジュール35を所定の配設位置に設置する際に上から下に向けてスライドさせる方法について説明したが、これに限られるものではない。例えば、電装品モジュール35を側方(左右方向)にスライドさせて所定の配設位置にセットするようにしてよい。また、スペース的に余裕があれば電装品モジュール35を背面側から前方に向けてスライドさせるようにしてもよい。
また、スライド用レール87を枠部材88と別体に構成してもよい。
また、スライド用レール87に爪部を設けるとともに、カバー85に係合凹部を設けるようにしてもよい。
また、スライド用レール87を上下方向に延びる形状に形成して、カバー85を下方に引っ張って取り外す方法について説明したが、レール87を左右方向に延びる形状に形成して、側方にスライドさせて取り外すようにしてもよい。
また、前記第2実施形態では、点検、修理などのサービス時などに電装品モジュール35を所定の配設位置から取り外した後、カバー85を電装品モジュール35に取り付けて接合面(前面)60cを保護する場合を例に挙げて説明したが、カバー85を冷媒ジャケット37に取り付けて接合面(背面)37aを保護するようにしてもよい。
さらに、本発明では、電装品モジュール35を所定の配設位置から取り外した後、電装品モジュール35及び冷媒ジャケット37のどちらにもカバー85を取り付け可能な構成であるのがより好ましい。この場合、電装品モジュール35及び冷媒ジャケット37には、ともにカバー85を取り付け可能な取付部(例えば、前記した係合凹部87cのような構成)が設けられる。これにより、例えば、電装品モジュール35の接合面60cと冷媒ジャケット37の接合面37aのうち、サービスの内容に応じて保護すべき優先度の高い方を選択して、カバー85を電装品モジュール35又は冷媒ジャケット37に取り付けることができる。
また、端子台46が回動する構成としたが、端子台46が固定された構成としてもよい。
また、前記実施形態では、室外ファン31が上下に2つ配設された構成を示しているが、これに限られるものではなく、例えば室外ファン31を1つ備える構成としてもよい。
また、前記実施形態では、冷房運転と暖房運転の双方が可能な空気調和装置としたが、これに限られるものではなく、例えば冷房運転のみを行う空気調和装置であってもよく、あるいは暖房運転のみを行う空気調和装置であってもよい。