上記のような移動台車に多関節アームを取付け、この先端部にアスベストが飛散することを防止するためのフードを設け、そのフード内にアスベストを除去する電動除去装置を取付けたアスベスト自動除去装置を用いて、壁面に吹付けられたアスベストを除去する場合には、フード及び電動除去装置をアスベスト面に正確に押し当て、電動除去装置によりアスベストを除去し、壁面に電動除去装置が達すると壁面に沿って移動させながらアスベストを除去する必要がある。アスベスト面に対してフードが傾くとアスベストが飛散し、壁面に対して電動除去装置が傾くとアスベストの取り残しが生じる。そのため、アスベスト自動除去装置を用いてアスベストを自動的に除去する場合、フード及び電動除去装置をアスベスト面に押し当て、予め除去するアスベスト面の位置、傾きを多関節アームなどの動きを制御する制御装置に認識させる操作、いわゆるティーチング操作が必要となる。
実際のアスベスト除去作業においては、移動台車の移動、停止を繰り返しながら移動台車を停止させた状態で多関節アームなどを動かしアスベストを除去する。アスベストが吹付けられた壁面は、場所場所によって傾き、凹凸などが微妙に異なるので、正確なアスベスト面の位置を知るためには、移動台車を移動させる度にティーチング操作が必要となり、アスベスト除去に多くの時間を要する。また、ティーチング操作において、フード及び電動除去装置を正確にアスベスト面に押し当てる必要があるため、アスベスト除去を迅速に行うには、フード及び電動除去装置を正確にアスベスト面に押し当てる操作を短時間内に行うことが可能な装置とする必要がある。また手作業によるアスベスト除去作業においては、ケレンなどを用いてアスベストを荒取りした後、ワイヤーブラシで取り残しのアスベストを除去しており、アスベスト自動除去装置においても、アスベストの取り残しがないことが好ましい。
本発明の目的は、迅速で効率的にアスベストを除去することが可能なアスベスト自動除去装置及びその使用方法を提供することである。さらにアスベストの取り残しのないアスベスト自動除去装置の提供を目的とする。
本発明は、壁面に吹付けられたアスベストを除去するアスベスト自動除去装置であって、遠隔操作により移動する台車と、該台車に設けられ遠隔操作により上下動可能なリフターと、該リフターに設けられ遠隔操作により自在に動作する多関節アーム型のロボット本体、該ロボット本体の動作を制御するロボット制御装置、及び動作信号を入力可能なデータ入力装置を含み構成されるロボットと、アスベストを除去する除去手段、該除去手段を覆うように収納し支持するフード、及び該フードを前記ロボットのアーム先端部に取付ける取付治具を含み構成されるアスベスト除去装置と、前記除去手段が除去するアスベストを吸引し回収する回収装置と、前記台車及び前記リフターの動作を制御する駆動制御装置と、を含み、前記取付治具は、前記フードをアスベスト面又は壁面に向かって押付ける押圧手段、前記フードの開口面をアスベスト面又は壁面に押付けるだけで、フードの開口面とアスベスト面又は壁面とを平行とする、アーム先端部に対する前記フードの取付角度を自在に可変する角度可変手段を含むことを特徴とするアスベスト自動除去装置である。
また本発明のアスベスト自動除去装置において、前記角度可変手段は、前記フードの外側側壁近傍に設けられた第一支持体と、該第一支持体のさらに外側に設けられた第二支持体と、前記フードの横断面の中心点を通る直線上であって、フードの側壁面に固定された第一ピンと、前記第一ピンに直交し、前記フードの横断面の中心点を通る直線上であって、前記第一支持体に固定された第二ピンと、を含み、前記フードは、前記第一ピンで前記第一支持体に回動可能に支持され、前記第一支持体は、前記第二ピンで前記第二支持体に回動可能に支持され、前記第二支持体は、前記押圧手段を介して前記ロボットのアーム先端部に取付けられていることを特徴とする。
また本発明のアスベスト自動除去装置において、前記角度可変装置は、凹球面状の外輪及び該外輪に保持される凸球面状の内輪を有する球面滑り軸受と、該球面滑り軸受を支持する支持体と、を含み、前記フードは、下部を前記内輪と接続し、前記支持体は、前記押圧手段を介して前記ロボットのアーム先端部に取付けられていることを特徴とする。
また本発明のアスベスト自動除去装置において、前記押圧手段は、第一ばねと、該第一ばねと直列に配設された第二ばねと、を含み、前記取付治具は、前記ロボットのアーム先端部に取付けられたベース板を備え、前記第二支持体と前記ベース板との間に又は前記支持体と前記ベース板との間に、これらに直交するように前記第一ばね及び前記第二ばねを取付け、前記第二支持体と前記ベース板又は前記支持体と前記ベース板との平行を維持したままこれらの間隔を可変することを特徴とする。
また本発明のアスベスト自動除去装置において、前記角度可変手段及び前記押圧手段は、第一ばね及び第二ばねからなる2種類のばねと、前記フードに接することなく前記フードの下部に配設された連結体と、前記フードの上部側壁面に取付けられた複数個の上球面滑り軸受と、前記連結体に前記上球面滑り軸受と同数配設された下球面滑り軸受又は前記フードの中心方向に回動可能なヒンジと、を含み、前記取付治具は、前記ロボットのアーム先端部に取付けられたベース板を備え、前記第一ばねを前記上球面滑り軸受及び前記下球面滑り軸受又は前記ヒンジと接続し、前記連結体と前記ベース板との間にこれらに直交するように前記第二ばねを取付け、前記連結体と前記ベース板との平行を維持したままこれらの間隔を可変することを特徴とする。
また本発明のアスベスト自動除去装置において、前記第一ばね及び第二ばねは、ガススプリング又は圧縮コイルばねであることを特徴とする。
また本発明のアスベスト自動除去装置において、さらに前記第一ばね及び第二ばねの変位量を検知する変位量検知手段を備え、前記ロボット制御装置は、前記多関節アームを動かし前記フードをアスベスト面に押付けるとき、前記変位量検知手段からの信号により、前記第一ばね又は第二ばねの変位量が所定の値となったことを検知すると、前記多関節アームの押付け動作を停止するように制御することを特徴とする。
また本発明のアスベスト自動除去装置において、前記除去手段は、除去工具を回転させアスベストを除去する回転型除去装置、又はドライアイス及び/又は氷を高圧でブラストしアスベストを除去するブラスト装置であることを特徴とする。
また本発明のアスベスト自動除去装置において、前記除去工具は、アスベストを切削除去する刃、及び該刃と一体的に回転しアスベストを除去するワイヤーブラシを備え、前記ワイヤーブラシは、先端が前記刃の先端よりも突出するように取付けられていることを特徴とする。
また本発明は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のアスベスト自動除去装置を使用し、広範な壁面に吹付けられたアスベストを前記台車を移動させながら除去する方法において、台車を停止させた状態で前記フードの届く範囲を一のエリアとし、台車を停止させた状態で前記多関節アームの先端に取付けられたフードを、第一のエリアの少なくとも3隅に押当て、この第一エリアのアスベスト面の位置情報を前記ロボット制御装置に記憶させ、前記第一エリアの位置情報を基に、第二エリア以降の各エリアの位置情報を、前記データ入力装置から入力し、前記ロボット制御装置に記憶させ、一のエリアに対して、予め一定の距離間隔で連続して前記アスベスト除去装置を移動させるプログラムを作成し、前記ロボット制御装置に記憶させ、前記プログラムに従い、前記アスベスト除去装置を移動させ第一エリアのアスベストを自動的に除去し、前記第一エリアのアスベストの除去が終了すると前記台車を移動させ、ティーチングすることなく第二エリア以降のアスベストを前記プログラムに従って除去することを特徴とするアスベスト自動除去装置の使用方法である。
また本発明は、請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のアスベスト自動除去装置の使用方法であって、アスベスト除去前に湿潤剤をアスベストに散布すると共に、又はアスベスト除去前に湿潤剤をアスベストに散布することなく、固化剤又は無害化剤を散布しながら請求項1から請求項9のいずれか1項に記載のアスベスト自動除去装置を用いてアスベストを除去することを特徴とするアスベスト自動除去装置の使用方法である。
本発明のアスベスト自動除去装置は、遠隔操作が可能な多関節アーム型ロボットのアームの先端部分にアスベスト除去装置を有し、これらが遠隔操作可能なリフター及び移動台車に取付けられているので、安全な場所から装置を操作し広範囲に吹付けられたアスベストを除去することができる。またアスベスト除去装置は、アスベストを除去する除去手段、除去手段を覆うように収納し支持するフード、及びフードをロボットのアーム先端部に取付ける取付治具を含み、取付治具は、フードをアスベスト面又は壁面に向かって押付ける押圧手段、フードの開口面をアスベスト面又は壁面に押付けるだけで、フード開口面とアスベスト面又は壁面とを平行とする、アーム先端部に対する前記フードの取付角度を自在に可変する角度可変手段を有するので、フードをアスベスト面に押付けるだけで簡単にフードをアスベスト面に対して平行に密着させることができる。その結果、ティーチング時間を短縮することができる。さらにアスベスト面に多少の傾斜又は凹凸がある場合であっても、常にフードをアスベスト面に対して平行に維持することができると共に、フードをアスベスト面に対して密着させることができるので、移動台車を移動させ次のエリアのアスベストを除去するとき、アスベスト面の位置及び傾きがティーチングを行ったアスベスト面の位置及び傾きと多少違っていても、誤差を吸収することができる。よってエリアを変更するときであっても、改めてティーチング操作を行う必要がなく、アスベストの除去を迅速に又効率的に行うことができる。
また本発明によれば、角度可変手段は、第一ピンと、第一ピンに直交する第二ピンとで、フードを回動可能に支持するので、フードを任意の角度にすることができる。この結果、アスベストが吹付けられた天井面又は側壁面などが傾斜していても、フードをアスベスト面に押し当てるだけで自動的にフードをアスベスト面に密着させることができる。これにより、フードをアスベスト面に正確に密着させる操作が不要となり、作業効率を高めることができる。
また本発明によれば、角度可変装置は、凹球面状の外輪及び外輪に保持される凸球面状の内輪を有する球面滑り軸受と、球面滑り軸受を支持する支持体と、を含み、フード下部を内輪と接続するので、球面滑り軸受を中心にフードを任意の角度にすることができる。この結果、アスベストが吹付けられた天井面又は側壁面などが傾斜していても、フードをアスベスト面に押し当てるだけで自動的にフードをアスベスト面に密着させることができる。これにより、フードをアスベスト面に正確に密着させる操作が不要となり、作業効率を高めることができる。
また本発明によれば、押圧手段は、第一ばねと直列に配設された第二ばねとを含み、これらばねは、前記第二支持体又は支持体とベース板との間に直交するように取付けられている。アスベストを除去する場合、フードのアスベスト面に対する押付圧力が弱いとフードのアスベスト面に対する密着性が低下し幅広い隙間が生じ、一方、押付圧力が強すぎるとアスベスト面を移動するときのフードの移動抵抗が大きくなる。本発明では、フードのアスベスト面に対する押付圧力を一定にすることができるので、安定的にアスベストを除去することができる。また、ばねを2段に配置することで、押付圧力を一定とするときのばねの変位量を小さくすることができる。また、第二支持体又は支持体とベース板との平行を維持したままこれらの間隔を可変することができるので、フードを平行移動させることが可能となり、アスベスト除去中であっても、フードを簡単にアスベスト面に密着させることができる。
また本発明によれば、角度可変手段及び押圧手段は、第一ばね及び第二ばねからなる2種類のばねと、フードの下部に配設された連結体と、を含み、第一ばねはフードの上部側壁面に取付けられた上球面滑り軸受、及び連結体に配設された下球面滑り軸受又はヒンジと接続し、ロボットのアーム先端部に固定されるベース板と連結体との間にこれらに直交するように第二ばねが取付けられている。これにより、アスベストが吹付けられた壁面が傾いていても、フードをアスベスト面に押し当てるだけで自動的にフードをアスベスト面に密着させることができる。さらにアスベスト面に凹凸があっても、フードを確実にアスベスト面に密着させることができるので、アスベストを飛散させることなく除去作業を行うことができる。また、フードのアスベスト面に対する押付圧力を一定とするための操作が簡便化され、アスベスト除去操作を効率化することができる。
また本発明によれば、第一ばね及び第二ばねは、ガススプリング又は圧縮コイルばねであるので、アスベスト面に対して安定した押付け圧を確保することができる。
また本発明のアスベスト自動除去装置は、さらに第一ばね及び第二ばねの変位量を検知する変位量検知手段を備え、ロボット制御装置は、多関節アームを動かしフードをアスベスト面に押付けるとき、変位量検知手段からの信号により、第一ばね及び第二ばねの変位量が所定の値となったことを検知すると、多関節アームの押付け動作を停止するように制御するので、ティーチング操作の際、同じ押付圧力でティーチングを行うことが可能となり、多関節アームとアスベスト面との位置を正確に認識することができる。また、第一ばね及び第二ばねの変位量を吹付けられたアスベストの厚さ以上とすることで、除去手段によりアスベストを除去している最中、多関節アームを動かし除去手段を壁面方向に移動させる操作が不要となる。このため多関節アームの動作制御が容易となり、さらに不必要に大きな力でフードをアスベスト面に押付けることがなくなり、ロボット本体への過大な負荷及びフードの破損を抑制することができる。
また本発明によれば、除去手段は、除去工具を回転させアスベストを除去する回転型除去装置、又はドライアイス及び/又は氷を高圧でブラストしアスベストを除去するブラスト装置であるので、平坦なアスベスト面には回転型除去装置、複雑な構造又はコーナー部等ではドライアイス及び/又は氷を高圧でブラストするブラスト装置を適用するなど、アスベストの施工状況に合わせたアスベストの除去を行うことができる。
また本発明によれば、除去工具は、アスベストを切削除去する刃、及び刃と一体的に回転しアスベストを除去するワイヤーブラシを備え、ワイヤーブラシは、先端が刃の先端よりも突出するように取付けられているので、刃による粗除去とワイヤーブラシによる仕上げ除去を同時に行うことができ、アスベスト除去作業の迅速化が図られる。また、刃の先端に対して、ワイヤーブラシを突出させることで、アスベスト除去後の壁面にはワイヤーブラシのみ接触し、直接刃が接触することを防止することができる。これにより刃の損傷を防止できると同時に、壁面の粗さに追従しアスベストの仕上げ除去を確実に実施することができる。
また本発明のアスベスト自動除去装置を用いて、広範な壁面に吹付けられたアスベストを、台車を移動させながら除去する場合、ティーチングを行い第一エリアのアスベスト面の位置情報をロボット制御装置に記憶させた後、第一エリアの位置情報を基に、第二エリア以降の各エリアの位置情報を、データ入力装置から入力し、ロボット制御装置に記憶させ、予め作成したプログラムに従い第一エリアのアスベストを自動的に除去し、その後台車を移動させ、ティーチングすることなく第二エリア以降のアスベストをプログラムに従って除去するので、台車を移動させる毎にティーチングを行う必要がなく、迅速的かつ効率的にアスベストを除去することができる。
また本発明によれば、アスベスト自動除去装置を用いてアスベストを除去するとき、アスベスト除去前に湿潤剤をアスベストに散布すると共に、又はアスベスト除去前に湿潤剤をアスベストに散布することなく、固化剤又は無害化剤を散布しながら前記アスベスト自動除去装置を用いてアスベストを除去するので、アスベストを飛散させることなくアスベストを除去、回収することができる。
図1は本発明の実施の一形態としてのアスベスト自動除去装置1の概略的構成を示す図であり、図2は、アスベスト自動除去装置1の多関節アーム型のロボット本体12の側面図である。本発明のアスベスト自動除去装置1は、壁面2に吹付けられたアスベスト4を除去する装置であって、遠隔操作可能な台車5、台車5に取付けられたリフター6、リフター6に取付けられた多関節アーム型のロボット本体12、ロボット本体12のアーム先端部15に取付けられたアスベスト4を除去するアスベスト除去装置30を備え、除去したアスベストを回収するための回収装置85、ロボット本体12の動作を制御するロボット制御装置17、主にリフター6、及び台車5の動作を制御する機器制御装置18などを含み構成される。
多関節アーム型のロボットは、遠隔操作により自在に動作する多関節アーム型のロボットであって、多関節アーム型のロボット本体12、ロボット本体12の動作を制御するロボット制御装置17、及び動作信号を入力するデータ入力装置19を含み構成される。ロボット本体12は、リフター6を介して台車5に、またロボット制御装置17は直接台車5に取付けられ、データ入力装置であるティーチング用のペンダント19は、ケーブル20を介してロボット制御装置17と接続する。多関節アーム型のロボット本体12は、多数の関節21及び軸22を有し、制御信号によりXYZ方向への移動、旋回、回転を自由に行うことができる。また、任意に設定可能な原点を基点として、各関節21の旋回角度及び軸22の傾斜角度から演算しアーム先端部15の位置を決める。
ロボット制御装置17は、ロボット本体12の動作信号を入力するペンダント19と接続すると共に、リフター6の動きなどを制御する機器制御装置18と接続し、ロボット本体12の動きを制御する。ロボット制御装置17は、入力部を介してペンダント19などから入力されるデータをデータ記憶部に記憶させる。また記憶部に記憶したプログラムに従いアーム14の動作を制御するための演算処理を行い、出力部を介して、軸22、関節21等を駆動させる駆動装置(図示を省略)に制御信号を送る。ロボット本体12は、ロボット制御装置17に記憶させたプログラムに従い所定の動作を行わせることができるほか、ペンダント19を通じて動作を制御することもできる。ペンダント19は、ロボット本体12の動作指令を入力できるほか、プログラム作成機能を備え、ここで作成したプログラムをロボット制御装置17に送り、記憶部に記憶させることができる。また、ケーブル20を介してロボット制御装置17と接続するため、アスベスト除去エリアから離れた場所でロボット本体12の動作を制御することができる。
リフター6は、遠隔操作で昇降させることができるリフターであって、台車5の上に取付けられている。ロボット本体12は、リフター6の上に取付けられているので、リフター6を上下動させることで、ロボット本体12を一体的に上下動させることができる。リフター6は、機器制御装置18と接続すると共に、変位計(図示を省略)を備え、リフター6の位置情報は、変位計を介して機器制御装置18へ入力される。ペンダント19からリフター6の昇降信号を送信すると、ロボット制御装置17を介して機器制御装置18に信号が出力され、ロボット制御装置17と接続する機器制御装置18がリフター6の駆動装置(図示を省略)に制御信号を発し、リフター6が昇降する。ペンダント19は、ケーブル20を介してロボット制御装置17と接続するので、アスベスト除去エリアから離れた場所でリフター6を昇降させることができる。また機器制御装置18は、ロボット制御装置17と接続するので、予め作成しロボット制御装置17に記憶させたプログラムによってリフター6を昇降させることも可能である。
台車5は、キャタビラ8を備え、遠隔操作で移動させることが可能な台車5であって、ケーブル26を介して台車操作ペンダント27と接続する。台車5は、キャタビラ8を駆動する駆動装置(図示を省略)を備え、台車操作ペンダント27を介してこの駆動装置を制御することで、前進、後退、左折、右折をさせることができる。台車操作ペンダント27は、ケーブル26を介して台車5と接続するので、アスベスト除去エリアから離れた場所で台車5を任意の位置に移動させることができる。また、台車5は、台車の両側側面に非接触で距離を測定可能な台車側面距離センサ28(28a、28b)及び移動距離を検出可能なロータリエンコーダ(図示を省略)を備え、リフター6と同様、ロボット制御装置17と接続するので、予め作成しロボット制御装置17に記憶させたプログラムによって台車5を移動させることも可能である。また台車5の移動距離などは、操作エリアの表示盤9に表示される。台車5は、前後に衝突防止用の接触センサ29(29a、29b)を備える。
図3、図4は、ロボット本体12のアーム先端部15に取付けられたアスベストを除去するアスベスト除去装置30の側面図及び平面図である。また図5は、図3の切断面線V−Vから見た図である。また図6は、ロボット本体12のアーム先端部15に取付けられたアスベスト除去装置30の斜視図である。図7は、除去工具52の平面図、図8は、除去工具52の刃55及びワイヤーブラシ58の取付け要領を説明するための図である。アスベスト除去装置30は、壁面2に吹付けられたアスベスト4を除去する除去手段50、除去手段50を覆うように収納し支持固定するフード40、及びフード40をロボット本体12のアーム先端部15に取付ける取付治具60を含み構成され、フード40の開口面45をアスベスト4が吹付けられた壁に密着させ、フード40内に配設された除去手段50によりアスベスト4を周囲に飛散させることなく除去する。以降、フード40の開口面45をフードの先端45と記す場合もある。
フード40は、円筒体41の一端に円錐体42を連結した形状であり、円筒体41の一面が大きく開口し、円錐体42の底部にパイプ43が接続され、円筒体41の先端部には、アスベスト面3との密着性を高めるための短冊状の複数の可撓性部材44が全周に取付けられている。可撓性部材44としては、ゴム板が例示される。可撓性部材44を取付ける場合、除去中のアスベスト4が周囲に飛散しないように隣り合う可撓性部材44との間に隙間が生じないように取付けることが重要である。さらに可撓性部材44を2重、3重に取付け、前後の可撓性部材44の切れ目47が重ならないようにすることが望ましい。この可撓性部材44は、フード40の開口面45をアスベスト面3又は壁面2に密着させ、除去中のアスベスト4が周囲に飛散しないようにするためのものであるから、可撓性部材44に換え、全周にブラシを取付けてもよい。円筒体41の側面には、除去手段である回転型除去装置50を取付けるための支持部材46が設けられている。回転型除去装置50は、この支持部材46を介してフード40に固定され、アスベスト4を除去するための除去工具52が、フード40内に収納される。
除去手段に回転型除去装置50を使用する場合、可撓性部材44が完全に内側に折れ曲がったときにも可撓性部材44が除去工具52に接触しないようにすることが重要である。回転型除去装置50を用いてアスベスト4を除去する場合、フード40及び回転型除去装置50をアスベスト面3に正確に押し当て、回転型除去装置50でアスベスト4を除去し、壁面2に回転型除去装置50が達すると壁面2に沿って移動させながらアスベストを除去する。このとき進行方向前面の可撓性部材44は、反進行方向側、つまりフード40の内側に押される。このとき、可撓性部材44の長さが長過ぎる、除去工具52の回転直径が大き過ぎると、可撓性部材44が除去工具52に接触し、破損してしまう。また除去手段にドライアイス及び/又は氷を高圧でブラストしアスベストを除去するブラスト装置を使用する場合も、可撓性部材44が完全に内側に折れ曲がったときドライアイス及び/又は氷に接触しないようにすることが重要である。円筒体41、可撓性部材44の高さh、及び除去工具52の回転直径を例示すれば、円筒体41の内径200mm、可撓性部材44の高さhは40mm、除去工具52の回転直径は100mmである。この数値は、一例であり、これに限定されないことは言うまでもない。
回転型除去装置50が取付けられたフード40は、取付治具60を介してアーム先端部15に取付けられ、パイプ43の先端には、除去したアスベスト4を回収する回収装置85と接続する蛇腹ホース48が取付けられる。またフード40には、アスベスト面3に湿潤剤、固化剤、無害化剤などを散布するためのノズル(図示を省略)が設けられている。このノズルの数は1本であっても、数本であってもよく、さらに湿潤剤等を広範囲に噴霧可能なようにリング形状のノズルとしてもよい。このノズルと湿潤剤、固化剤、無害化剤を供給する装置とをホースを介して接続することで、アスベスト面3に湿潤剤、固化剤、無害化剤を散布することができる。湿潤剤は、アスベスト4を湿らせアスベスト4の飛散を抑制するものであって、従来から一般的に使用されているものを使用することができる。これをアスベスト除去操作前又はアスベスト除去操作中にアスベスト面3に散布することでアスベスト4の飛散を防止することができる。
固化剤は、アスベスト4を固化させることでアスベスト4の飛散を抑制する。除去操作前のアスベスト面3又はアスベスト除去中に固化剤を吹付けることで、アスベスト除去中のアスベスト4の飛散が抑制される。また除去されフード40内に回収されたアスベスト4も固化することでアスベスト4の飛散を抑制することができる。さらにアスベスト4を除去した後の壁面2に固化剤を吹付けることで、壁面2に僅かに残ったアスベスト4の飛散を防止することができる。アスベスト4を除去した後の壁面2への固化剤を吹付けは、除去手段でアスベスト4を除去しながら行うことも、除去手段でアスベストを除去した後、再度壁面2に沿ってフード40を移動させながら行うこともできる。固化剤は、特殊な固化剤ではなく従来から一般的に使用されている固化剤を使用することができる。これらにより、アスベストを飛散させることなく、またアスベスト4の除去とアスベスト除去後の壁面2の養生とを同時に行うこともできる。また、無害化剤を散布しながらアスベスト除去操作を行い、アスベストを無害化してもよい。さらにアスベストを除去するとき、アスベスト除去前に湿潤剤をアスベストに散布すると共に、固化剤又は無害化剤を散布しながらアスベストを除去することで、アスベストをより飛散させることなく除去、回収することができる。湿潤剤、固化剤、無害化剤の散布は、回転型除去装置50によるアスベスト除去のみならず、ブラスト装置によるアスベスト除去操作時にも使用可能なことは言うまでもない。
除去手段50は、フード40内に取付けられ、除去工具52をフード40の開口面45に対し平行に回転させ、壁面2に吹付けられたアスベスト4を除去する回転型除去装置50であって、除去工具52、除去工具52を駆動するための駆動装置54を含む。除去工具52は、板状の円盤53の上に、周縁部近傍に4つ円周方向に均等に配設された刃55(55a、55b、55c、55d)と、円盤53の中央部に配設されたZ型の中央刃56を有する。各々の刃55、中央刃56は、円盤53に直交し、着脱可能に取付けられている。さらにこの円盤53は、駆動装置54の回転軸(図示を省略)に着脱可能に取付けられている。上記にように、刃55と中央刃56を分離し、中央刃56を円盤53に着脱可能に取付けることで、除去工具52を駆動装置54の回転軸(図示を省略)に着脱可能に取付けることができる。なお、除去工具52の刃の構成は、必ずしも上記刃の構成に限定されるものではない。
アスベスト面の除去方法は、最初に除去工具52を回転させてアスベスト面3に押付けアスベスト面3に穴を開け、除去工具52が壁面2に到達した時点で、多関節アーム14の操作により除去工具52を壁面2に対し平行移動させアスベスト4を除去する。そのため、アスベスト面3に穴を開ける場合は、除去工具に取付けられた刃55だけでは、除去工具52の中央部が除去できないため、中央刃56で除去工具52の中央部を除去する。除去工具52を壁面2に対し平行移動しアスベスト4を除去する場合は、除去工具52の刃55、中央刃56でアスベスト4を粗除去し、刃55に付設された後述のワイヤーブラシ58で仕上げ除去をすることとなる。
さらに除去工具52は、4つの刃55の後方、つまり回転方向に対して刃55の裏側に各々ワイヤーブラシ58(58a、58b、58c、58d)を有する。このワイヤーブラシ58は、刃55と一体的に回転し、前に位置する刃55が取り残したアスベスト4をさらに剥離、除去する。このワイヤーブラシ58は、刃55に着脱可能に取付けられているので、刃55又はワイヤーブラシ58のいずれか1方のみ破損した場合であっても、刃55又はワイヤーブラシ58を取替えることができる。ワイヤーブラシ58の先端59は、フード40の可撓性部材44の先端45と同じ高さか又は若干低い位置とする。若干低い位置とは、例示すれば1〜5mm程度である。
また、ワイヤーブラシ58の先端59は、刃55の先端57より突出するように取付ける。この突出量Lは、この除去工具52を回転させながら、壁面2に押当てたとき、刃の先端57がワイヤーブラシ58の先端59から飛び出さない量とする。除去工具52を回転させながら、壁面2に押当てたとき、ワイヤーブラシ58の先端部59が刃55の先端57よりも1〜3mm程度突出していることが好ましい。ワイヤーブラシ58が柔らかい場合、アスベスト面3又は壁面2に押し当てときワイヤーブラシ58が大きく曲がるので、突出量Lを大きく取り、ワイヤーブラシ58が比較的硬い場合は、アスベスト面3又は壁面2に押し当てときのワイヤーブラシ58の変形量が少ないので、突出量Lを小さくする。突出量Lの調整は、長穴51を利用することで簡単に行うことができる。
この除去工具52を回転させながら、アスベスト面3に押当てると、ワイヤーブラシ58は弾力性を有するので先端が少し曲がった状態となり、刃55及び中央刃56によりアスベストが除去される。この除去工具52を壁面2方向に押し込んで行くと、ワイヤーブラシ58の先端59は壁面2に接触するものの、刃55、中央刃56の先端部57は壁面2に接触することができない。刃55、中央刃56で除去することができない最後に残ったアスベスト4は、ワイヤーブラシ58が除去する。このように刃55、中央刃56は、壁面2に接触することがないので、刃55、中央刃56が破損したり、刃55、中央刃56が壁面2に引っ掛かることがなく、スムーズにアスベスト4の除去を行うことができる。また、ワイヤーブラシ58は弾力性を有するので、壁面2に凹凸があっても壁面2全体をきれいにすることができる。
除去工具52を回転駆動させる駆動装置54は、フード40の円筒体41に設けられた支持部材46に支持固定され、電動モータ(図示を省略)を有し、回転軸(図示を省略)がフード40の中心軸に一致するように取付けられている。この駆動装置54は、前記の機器制御装置18と接続させ、プログラムにより起動、停止させてもよい。なお駆動装置54は、電動モータを利用したものに限定されないので、圧縮空気を利用するエアーモータを使用した駆動装置であってもよい。また、アスベスト4を除去する手段として、上記の回転型除去装置50に換え、ブラスト装置(図示を省略)を使用することもできる。研磨剤として3mm程度の大きさの氷及び/又はドライアイスを使用し、圧力5〜15kg/cm2の高圧空気を用いてアスベスト4に噴射し、アスベスト4を除去させることができる。平坦な壁には回転型除去装置50が、複雑な構造又はコーナー部等ではブラスト装置が適していることから、アスベスト4の施工状況に合わせて適宜選択し使用することが好ましい。
取付治具60は、回転型除去装置50が取付けられたフード40をロボットのアーム先端部15に取付けるための治具であって、アーム先端部15に対するフード40の取付角度を自在に可変させることが可能な角度可変手段61、及びフード40をアスベスト面3又は壁面2に向かって押付ける押圧手段71、及びフード40などを支持し、アーム先端部15と連結するベース板80などを備える。また取付治具60には、ばねの変位量を検知するセンサ32、33、34が取付けられている。
角度可変手段61は、フード40を回動自在に支持する第一ピン64及び第一支持体62、第一支持体62を回動自在に支持する第二ピン65及び第二支持体63を含み構成され、押圧手段71は、フード40をアスベスト面3又は壁面2に向かって押付けるように作用する2段のばね72、73と、このばねを連結する連結体74を含み構成される。
第一支持体62は、フード40の円筒体41よりも大きな内径を有する高さの低い円筒体であって、フード40の円筒体41の下端近傍にフード40の同心円上に位置する。円筒体41には、フード40の開口面45を水平としたきフード40の横断面の中心点を通り、円筒体41を貫通するように一本のピン64が取付けられ、円筒体41の側壁面から外側に一部を突出させている。このピン64の突出部は、第一支持体62に設けられた貫通孔(図示を省略)に回動自在に挿入されている。これにより、フード40はピン64を支点に回動することができる。フード40と第一支持体62とを結ぶピン64を第一ピンとする。ここで第一ピン64は、一本のピン64がフード40を貫通するように取付けられているけれども、フード40内の部分は、なくても同じ機能を発揮させることができる。つまり実質的にピンとして機能するのは、円筒体41の側壁面から外側に突出している部分であるから、2本のピンを円筒体41の側壁面に直接取付けてもよい。
第二支持体63は、第一支持体62の外径よりも大きな内径を有し、第一支持体62と同じ高さの円筒体であって、第一支持体62と同じ高さでフード40の同心円上に位置する。第一支持体62と第二支持体63とは、2本のピン65(65a、65b)で連結されている。このピン65を第二ピンと言う。第二ピン65は、第一支持体62の外壁に、第一ピン64と同じ高さに、第一ピン64に直交するように取付けられ、二つの第二ピン65a、65bを結ぶ線は、フード40の開口面45を水平としたきフード40の横断面の中心点を通る。この第二ピン65は、第二支持体63に設けられた貫通孔(図示を省略)に回動自在に挿入されている。これにより、フード40は第一支持体62と共に第二ピン65を支点に回動することができる。第一ピン64と第二ピン65とが直交するように取付けられているので、フード40は、フード40の中心軸に対し360度あらゆる方向に傾斜することができる。なお第一ピン64、第二ピン65を回動自在に支持する貫通孔に換え、ベヤリングなどの軸受を使用することが可能なことは言うまでもない。
第一支持体62及び第二支持体63に回動自在に支持されたフード40は、2段のばね72、73を介してアーム先端部15に取付けられたベース板80に取付けられる。第二支持体63には、円周方向を4等分した対向する位置に2本のガススピンリグ72(72a、72b)が取付けられ、残りの2つの位置に案内装置75(75a、75b)が取付けられている。このガススプリング72、案内装置75をそれぞれ第一ばね72、第一案内装置75と言う。ガススプリング72は、ピストンロッド77(77a、77b)とシリンダ78(78a、78b)と有し、シリンダ78の端部近傍が第二支持体63に固定され、ロッド77の一端が連結体74が固定されている。第一案内装置75も一端が第二支持体63に、他端が連結体74が固定されている。第一ばね72及び第一案内装置75とも、第二支持体63及び連結体74に直交するように取付けられ、第二支持体63と連結体74とは平行となっている。
連結体74は、上下2段のばね72、73を直列に連結させるための部材であって、連結体74のフード40側に位置する面には第一ばね72が、連結体74の反フード40側に位置する面には、他のばね73が連結している。この他のばね73を第二ばね73と言う。連結体74とベース板80とは、2本の第二ばね73(73a、73b)及び2本の第二案内装置76(76a、76b)で平行な状態で連結されている。2本の第二ばね73はガススプリング、2本の第二案内装置76は案内装置であり、第二ばね73のシリンダ79(79a、79b)の固定位置が第一ばね72と異なるものの、他の取付け要領は、第一ばね72及び第一案内装置75と同じである。第一案内装置75、及び第二案内装置76は、フード40に荷重が加えられたときであっても、第二支持体63と連結体74、及び連結体74とベース板80との平行状態を保持するためのものである。第一ばね72、第二ばね73は、ガススプリングに換え、圧縮コイルばねを使用してもよい。また第一ばね72及び第二ばね73とも、本数は2本に限定されるものでない。また同様に第一案内装置75、及び第二案内装置76の本数も2本に限定されるものでない。
ガススプリング72は、圧縮空気を封入したシリンダ78とピストンロッド77から構成され、ピストンロッド77の一端がシリンダ78とシールされた状態で圧縮空気が挿入されており、圧縮空気がピストンロッド77を押し出すことでピストンロッド77に押付圧を与える機構である。ガススプリング72の特徴は、小型で、小さなばね乗数が取れることである。すなわち、ピストンロッド77をシリンダ78内に挿入した場合、挿入長さの変化に対し押付力の変化が少ない特徴を持っている。ガススプリング72を取付冶具60に取付けフード40をアスベスト面3に押付けた場合、ガススプリング72が伸縮しフード40とアーム先端部15の距離が変化するが、この距離の変化にかかわらず、フード40のアスベスト面3に対する押付圧を一定の範囲内に維持することができる。圧縮コイルばねの場合、ばね乗数を小さくするためには、線径の縮小、巻数の増加、コイル径の増大等を行うことで同じ機能を達成できる。アスベスト4の吹き付け状況により、フード40の押付圧の変化が厳しく制限される場合は、ばねが大型化するため、ガススプリングを採用することが望ましい。
上記の構成からなる取付治具60に取付けられたフード40及び除去手段50は、アスベスト4が吹付けられた天井、又は垂直な側壁面にフード40を押付けたとき、天井面又は側壁面が傾斜しても、取付治具60の角度可変手段61により、自動的にフード開口面45をアスベスト面3に平行にすることができる。さらに取付治具60の押圧手段71により、フード40が壁面2側に押付けられるので、フード40及び除去手段50の密着性を高めることができる。フード40及び除去手段50を壁に平行に密着させるための特別の操作が不要なことは、本発明の特徴の一つである。一般的にアスベスト面3と壁面2とはほぼ平行である。よって、本実施形態に示す、フード40内に取付けられ、除去工具52をフード40の開口面45に対し平行に回転させ、壁面2に吹付けられたアスベスト4を除去する回転型除去装置50を使用する場合、フード開口面45をアスベスト面3に平行に密着させると、除去工具52も壁面2と自然に平行となる。これよりアスベスト4の取残しがなくなる。なお、アスベスト面3と壁面2とが平行ではなく、多少傾斜している場合であっても、ワイヤーブラシ58が弾力性を有するので、これよりアスベスト4の取残しを防止することができる。
フード40の開口面45をアスベスト面3に平行に密着させる方法としては、特開平11−193643号公報に記載されているように、フードを前後に動かすモータ、及びフードを左右に動かすモータを設けることで対処することもできる。2つのモータを使用してフード開口面45の角度を換え、アスベスト面3に密着させるには、アスベスト面3の位置、傾斜などの情報が必要である。さらに、これらアスベスト面3の位置情報に基づき、モータの駆動を制御する制御装置が必要となる。これに対して本願発明の取付治具60は、機械的な方法、メカニズムを利用してフード40の開口面45をアスベスト面3に平行に密着させる。よって、モータを使用した方法に比較して次ぎのような利点がある。(1)フード40の開口面45をアスベスト面3に単に押付けるだけでよく、応答性が早い。(2)構成が簡単であり、信頼性が高い。(3)構成が簡単であり安価に製造することができる。(4)構成が簡単であり、アスベスト除去装置をコンパクト化することができる。
本実施形態では、第一ばね72と第二ばね73とを連結体74を介して連結しているけれども、連結体74を介在させることなく、直接連結させてもよい。但し、第二支持体63とベース板80とを平行に移動させる点からは、連結体74を介在させた方が容易であろう。第一案内装置75と第二案内装置76についても、これを使用することで第二支持体63とベース板80との平行移動が容易となろう。またばねを2段直列に接続する代わりに一のばねとすることも可能である。しかしながら、以下にようにばねを2段設置することが好ましい。
図9は、アスベストが吹付けられた側壁面にフード40を押付けた状態を示す図であり、図10は、アスベストが吹付けられた天井面にフード40を押付けた状態を示す図である。第一ばね72の反力を第二ばね73の反力に比較して小さくすると、側壁面のアスベストを除去するときは、フード40及び除去手段50(図示省略)の自重が第一ばね72及び第二ばね73に加わらないので、フード40を第一ばね72の反力で壁面に押付けることができる。一方、天井面のアスベスト4を除去するときは、フード40と除去手段50(図示省略)と自重により第一ばね72が縮み、第二ばね73の反力でフード40を天井面に押付けることとなる。このとき、フード40と除去手段50(図示省略)の自重により押された状態での反力を第一ばね72の反力と同等とすることで、フード40の側壁面と天井面に対する押付圧力を一定とすることができる。なお、第二ばね73の反力を第一ばね72の反力に比較して小さくしても、同じ作用効果を得ることができる。
アスベストを除去する場合、フード40のアスベスト面3に対する押付圧力が弱いとフード40のアスベスト面3に対する密着性が低下し幅広い隙間が生じ、一方、押付圧力が強すぎるとアスベスト面3を移動するときのフードの移動抵抗が大きくなる。本発明では、壁面の位置よらず、フード40及び除去手段50を一定の荷重でアスベスト面3に押付けることができるので、安定的にアスベストを除去することができる。さらに、除去手段50に不必要な荷重を加えることがないので、除去工具52及びワイヤーブラシ58の破損、磨耗を防ぐことができる。またばねを直列に2段設置することで、壁に対するフード40及び除去手段50の押付圧力を一定するときのばねの変位量を小さくすることができる。
第一ばね72、第二ばね73の変位量を検知するセンサ32、33、34は、非接触式のセンサであって、第一ばね72の変位量を検知する第一センサ32、第二ばね73の変位量を検知する第二センサ33、ばね72、73の変位量の最大値を検知する非常用センサ34からなる。第一センサ32は、連結体74に直交するように取付けられたセンサ取付座35に取付けられ、第二センサ33、非常用センサ34は、ベース板80に直交するように取付けられたセンサ取付座36に、上下2段に取付けられている。非常用センサ34は、第二センサ33の位置に比べ、ベース板80寄りである。
第一センサ32は、第二支持体63を検知することで、第一ばね72の変位量を検知し、第二センサ33は、連結体74を検知することで、第二ばね73の変位量を検知する。側壁面のアスベスト面を除去する場合、第一ばね72が縮み第一センサ32が第一ばね72の変位量を検知し、天井壁のアスベスト面を除去する場合、フード40及び除去手段50の自重により第一ばね72はすでに縮んでおり、第二センサ33が第二ばね73の変位量を検知する。第一センサ32及び第二センサ33の信号をロボット制御装置17に入力することで、これらの信号を検知すると、多関節アーム14を壁面方向に押付ける操作を停止するように制御させることができる。これによりティーチング操作の際、同じ押付圧力でティーチングを行うことが可能となり、アスベスト面3の位置を正確に認識することができる。
また、第一ばね72及び第二ばね73の変位量を吹付けられたアスベスト4の厚さ以上とすることで、除去手段50によりアスベストを除去している最中、多関節アーム14を動かし除去手段50を壁面方向に移動させる操作が不要となる。このため多関節アーム14の動作制御が容易となり、さらに不必要に大きな力でフード40及び除去手段50を壁面2に押付けることがなくなり、フード40及び除去手段50の破損を抑制することができる。第一センサ32及び第二センサ33が検知するばねの変位量に比べ、アスベストの厚さが厚い場合は、その差分を多関節アーム14を壁面方向に動かす操作を併用することで対処することができる。また、アスベストの厚さに対応して第一センサ32及び第二センサ33の位置を変更させてもよい。
回収装置85は、回転型除去装置50が除去したアスベスト4を周囲に飛散させることなく、回収する装置であって、アスベスト4を吸引するための吸引装置86、吸引されたアスベスト4を吸引される空気と分離する集じん装置であるバグフィルタ87を含み構成される。フード40のパイプ43に接続された蛇腹ホース48と吸引装置86とを接続し、蛇腹ホース48と吸引装置86とを接続するラインの途中にバグフィルタ87を装着する。これによりフード先端部45から吸引される空気と共に、フード40内のアスベスト4が蛇腹ホース48を通じてバグフィルタ87に運ばれ、除去されたアスベストは、バグフィルタ87で回収され、バグフィルタ87を通過した吸引空気は、HEPAフィルタ(図示を省略)で精密除じんされ、きれいなった空気は大気に放散される。
その他、本アスベスト自動除去装置1は、アスベスト4の除去状態を観察するカメラ90がロボットのアーム先端部15近傍に取付けられている。このカメラ90は、操作エリア内に設置された監視用モニタ91と接続し、これによりアスベスト4の除去状態を常時観察することができる。カメラ90は、図示を省略した操作盤により角度、焦点距離を変更することができるので、カメラ90からの映像情報に基づき、アスベスト自動除去装置1の運転要領を変更することもできる。さらにカメラ90の先端部には、仮にアスベストの粉じんが発生した場合であっても、状況を視認することができるようするための空気が、空気圧縮機92、エアーチューブ93を介して供給される。
次ぎに、本アスベスト自動除去装置1を用いて壁面に吹付けられたアスベスト4を除去する要領の一例を説明する。図11は、本アスベスト自動除去装置1を用いて壁面に吹付けられたアスベスト4を除去する要領を説明するための図である。対象とする壁面は、垂直な壁面7とし、アスベスト4が吹付けられた壁面7の広さは、台車5を停止した状態でアーム先端部15が届く範囲よりも広い面積を有する壁面とする。ここではアスベスト面3は、複数エリアから構成されている。まず対象とするアスベスト面3の一端部近傍に、台車5を移動させる。このとき台車5の進行方向とアスベスト面3の長手方向(Y方向)とが平行となるようにする。
台車5を停止させた状態で、アスベスト面3の位置情報を記憶させるティーチング操作を行う。このときに取得する位置情報は、(1)リフター6の位置情報。(2)第一エリアの少なくとも3隅の各ポイントの位置情報。このとき第一ばね72の変位量が所定の値となるまで、アーム先端部15を壁面7側に押付ける。ばねの変位量は、吹付けられたアスベストの厚さ+αとする。この+αは余裕代であり、1〜10mm程度とする。(3)多関節アーム14を退避位置としたときの位置情報である。これら位置情報は、XYZ座標の値としてロボット制御装置17に記憶される。ばねの変位量は第一センサ32で検知する。吹付けられたアスベストの厚さは、吹付けられたアスベストの一部を除去し、厚さを実測するか、施工図面により求めることができる。
次ぎに第一エリアの位置情報を元に、この第一エリアを複数のパスに細分化する。細分間の幅L1は、回転式除去装置50の回転直径よりも若干小さく設定する。これによりアスベスト4の取残しをなくする。続いて第一エリアの情報を元に、第二エリア以降の位置情報をペンダント19を介してロボット制御装置17に記憶させる。以上のデータの取得、操作が終了すると、多関節アーム14を退避位置とした状態で、吸引装置86、カメラ90など各機器を起動させ、以降、位置情報に基づき予め作成したプログラムに従って多関節アーム14を移動させ、第一エリアのアスベスト除去を行う。第一エリアのアスベスト除去が終了すると、第二エリアを除去するため台車5を所定距離移動させる。第二エリア以降は、第一エリアで実施した壁面の位置を検知しロボット制御装置17に記憶させるティーチング操作を省略し、第一エリアの位置情報及び除去操作の手順を元に除去操作を実施する。
本アスベスト自動除去装置1を用いて壁面に吹付けられたアスベスト4を除去する場合、上記の通り壁面の面積が広く、複数のエリアからなる場合であっても、ティーチングは第一エリアしか行わない。比較的平坦な壁面の場合、台車5をアスベスト面3に対して平行移動させれば、台車5の中心点とアスベスト面3との距離は一定に保たれる。このとき、壁面が傾斜することなく、又は全く同じ角度で傾斜し、かつアスベストの厚さが全ての場所で全く同じである理想的な壁面であれば、従来から一般的に使用されている多関節アーム型ロボットタイプの除去装置であっても、第一エリアの位置情報だけで第二エリア以降のアスベストの除去も可能ではないかと推察される。しかしながら、実際には、場所によってアスベスト面3の傾斜が微妙に異なり、また場所によってアスベスト面3に凹凸もある。このようなアスベスト面3に対して、アーム先端部に対してフード及び除去手段の角度及び位置を自在に可変することができない多関節アーム型ロボットタイプの除去装置を使用すると、アーム先端の軌道が予め決められているで、フード先端部がアスベストに届かない事態や、逆にフード及び除去手段が大きな荷重でアスベスト面3に押付けられる事態が発生する。アスベスト面3の位置情報を基づき、フード及び除去工具の角度及び位置を制御する従来型の多関節アーム型ロボットタイプの除去装置を使用したとしても、同じ状況が生じる。このため従来の多関節アーム型ロボットを使用したアスベスト除去装置にあっては、エリアを変更する度毎にティーチングを行う必要があった。
これに対して本アスベスト自動除去装置1は、アーム先端部15に対して、フード40の角度を自在に変えることができると共に、第一ばね72及び第二ばね73によりフード40の先端位置45を自在に変化させることができるので、エリアを変更した場合であっても、新たなティーチング操作は不要である。特にエリアのティーチングを行うとき、第一ばね72及び第二ばね73の変位量をアスベスト4の厚さ+αとすることで、壁面7又はアスベスト面3に凹凸がってもフード40及び除去手段50を密着させるができる。また、ティーチング操作においても、フード先端部45を簡単にアスベスト面3に密着させることができるので、ティーチング時間も大幅に短縮することができる。これらにより、迅速かつ効率的にアスベストを除去することができる。なお、アスベスト面が途中で大きく傾斜している場合や、極端に大きな凹凸があるような場合は、ティーチング箇所を増やす必要があることは言うまでもない。また比較的平坦な壁面であっても、第一エリア以外の他のエリアのティーチングを行ってもよいことも当然である。また上記の例では、台車5の移動も予めプログラミング化し、プログラムにより台車5を自動的に移動させる例を示したけれども、台車5の移動をプログラミング化することなく、台車操作ペンダント27で行ってもよいことは言うまでもない。
図12は、本発明の他の実施形態としての取付治具110の構成の一部を示す断面図である。図3から図6と同一の部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。またここでは、押圧手段71は記載を省略した。図12に示す取付治具110は、角度可変手段に球面滑り軸受112を使用する点が、図3から図6に示す取付治具60と異なる。球面滑り軸受112は、凹球面状の外輪114と、外輪114に保持される凸球面状の内輪116とを有し、フード40の下部のパイプ43は内輪116と接続し、外輪114は、リング状の支持体118に固定支持されている。支持体118の下方には、図3から図6に示す取付治具60と同様、第一ばね72、第二ばね73、べース板80などが、取付治具60と同じ要領で取付けられる。フード円筒体41の外側壁面には、円周方向に均等に4等分された位置に球面滑り軸受115が取付けられ、この球面滑り軸受115と支持体118との間に4本の傾斜制限ばね117が接続されている。この傾斜制限ばね117は、フード40の先端部45を傾けたとき、一定の制限を加える働きをする。本取付治具110は、球面滑り軸受112を中心にフード40が自在に回動し、図示を省略した支持体118の下方に取付けられた押圧手段によりフード40の位置を自在に変更することができ、作用効果は、図3から図6に示す取付治具60と同じである。
図13は、本発明のさらに他の実施形態としての取付治具120の構成の一部を示す図であり、図13(a)が平面図、図13(b)が側面図である。図3から図6と同一の部材には、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。なおここでは、第一センサ32、第二センサ33、非常用センサ34、及びこれらを取付けるセンサ取付座35、36は図示を省略した。図13に示す取付治具120は、フード円筒体41の外側側面に取付けられた3本の第一ばね122が、角度可変手段及び押圧手段として働く。この第一ばね122は、図3から図6に示す第一ばね72と同様、ガススプリングである。ガススプリングに換え、圧縮コイルばねを使用することもできる。フード40の下方には、連結体74が配設され、連結体74の上面には、フード40の中心方向に回動可能なヒンジ126が円周方向に均等に3等分された位置に取付けられている。フード円筒体41の外側側面には、円周方向に均等に3等分された位置に球面滑り軸受124が取付けられている。第一ばね122の一端は、球面滑り軸受124に、他端はヒンジ126に取付けられている。球面滑り軸受124及びヒンジ126は、フード40の開口面45を水平としたとき第一ばね122の長手方向が鉛直となるように取付けられている。またフード円筒体41の中央部外側には、フード40の傾斜を制限する傾斜制限体130が取付けられている。傾斜制限体130には、第一ばね122が貫通するための貫通孔が設けられ、その貫通孔132は、フード40の中心方向が長い長穴となっている。
本取付治具120は、第一ばね122が角度可変手段及び押圧手段として作用し、第二ばね73も押圧手段として作用する。これらにより、フード40の開口面45を壁面に押付けるだけで、図3から図6に示す取付治具60、図10に示す取付治具110同様、壁面にフード開口面45を密着させることができる。本実施形態では、第一ばね122の一端をヒンジ126に接続する例を示したけれども、ヒンジ126に換え、球面滑り軸受を使用してもよい。さらに第一ばね122の数も3本に限定されるものではく、2本又は4本であってもよい。また必要に応じて第一案内装置75、第二案内装置76を装着可能なことは、図3から図6に示す取付治具60、図10に示す取付治具110と同様である。
上記のアスベスト除去装置30は、簡単な構成で、フード開口面45をアスベスト面3に押付けるだけでフード開口面45をアスベスト面3に平行に密着させることができる。よって、このアスベスト除去装置30を従来から使用されているアーム型のアスベスト除去装置に取付けても、アスベストを迅速かつ効率的に除去することができる。