以下、本発明の実施の形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は本発明の実施形態の半透過型液晶表示装置の基本構成を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態の半透過型液晶表示装置3は、素子基板1と、対向基板2と、それらの間に挟持された強誘電性液晶38と、素子基板1の下側に配置されたバックライト50とより基本構成される。図1では、半透過型液晶表示装置3の1つの画素部が示されており、素子基板1の各画素部には反射部A1と透過部A2とが画定されている。
素子基板1の強誘電性液晶38と接する面側では、透過部A2に対応する基板部1aに凹部Cが設けられており、反射部A1が透過部A2から突出する凸部Pとなっている。つまり、反射部A1は、その高さが透過部A2の高さより高く設定されて強誘電性液晶38側に突出した状態となっている。これによって、反射部A1のセルギャップ(強誘電性液晶38の厚み)は、透過部A2のセルギャップの1/2に設定されている。基板部1aには、不図示のTFT、画素電極及びカラーフィルタなどが設けられている。
また、反射部A1に対応する基板部1aの上には、下から順に、反射パターン層30とリタデーションパターン層22(λ/4位相差層)とが設けられている。さらに、基板部1aの下には第1偏光層36が設けられている。
一方、対向基板2では、コモン電極(不図示)などが設けられた基板部2aの上に第2偏光層36aが設けられて基本構成されている。
強誘電性液晶38は、素子基板1及び対向基板2に設けられた配向膜(不図示)によって、液晶分子の長軸が基板部1a,2aの水平面と平行になって水平配向している。図1の第1平面イメージに示すように、素子基板1の第1偏光層36の光透過軸PA1は、強誘電性液晶38の配向方向と直交する方向に設定されている。また、図1の第2平面イメージに示すように、対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸PA2は強誘電性液晶38の配向方向と同じ方向(平行)に配置されている。
リタデーションパターン層22の位相差はλ/4であり、かつその遅相軸は第1偏光層36の光透過軸PA1及び第2偏光層36aの光透過軸PA2に対して45°ずれている。
次に、本実施形態の半透過液晶表示装置3の光伝播について説明する。
まず、強誘電性液晶38に電界をかけない電界OFF時(黒表示)について説明する。
図1に図3を加えて参照すると、透過部A2では、まず、バックライト50からの光が素子基板1の第1偏光層36を透過して偏光LAとして強誘電性液晶38に入射する。このとき、第1偏光層36の光透過軸PA1は強誘電性液晶38の配向方向と直交するので、偏光LAは強誘電性液晶38の配向方向(液晶分子の長軸方向)に直交して強誘電性液晶38に入射する(図3の平面イメージ)。この偏光LAは強誘電性液晶38の配向方向に直交することから、強誘電性液晶38を通過する際に複屈折効果を受けないためそのまま透過する。このため、偏光LAは対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸PA2と直交することになり、黒表示となる。
一方、反射部A1においては、図1に図4を加えて参照すると、外光LXが対向基板2の第2偏光層36aを通過して第1偏光LB1となって強誘電性液晶38に入射する。このとき、第2偏光層36aの光透過軸PA2は強誘電性液晶38の配向方向と同じ向きに設定されているので、第1偏光LB1は強誘電性液晶38の液晶分子の配向方向と同じ方向に偏光軸をもって入射される(図4の左側の平面イメージ)。このため、第1偏光LB1は偏光軸が変化することなく強誘電性液晶38を通過する。
さらに、第1偏光LB1は、第2偏光層36aの光透過軸PA2に対して45°ずれた遅相軸DAをもったリタデーションパターン層22(λ/4位相差層)を透過して第2偏光LB2となる。このとき、直交する2つの振動成分にλ/4分の位相のずれが生じるため、第2偏光LB2は円偏光となる。
続いて、第2偏光LB2は、反射パターン層30で反射されてリタデーションパターン層22を再度透過し、第2偏光LB2は位相がさらにλ/4ずれた第3偏光LB3となって強誘電性液晶38に再度入射する。このとき、第3偏光LB3は、第1偏光LB1から90°回転した直線偏光となる。また、第3偏光LB3の偏光軸は、強誘電性液晶38の配向方向と直交しているので(図4の右側の平面イメージ)、第3偏光LB3は強誘電性液晶38を通過する際に偏光軸を維持したまま透過する。このため、第3偏光LB3は対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸PA2と直交することになり、黒表示となる。
本実施形態の半透過型液晶表示装置3では、対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸PA2を強誘電性液晶38の配向方向と同じ方向に設定し、素子基板1の第1偏光層36の光透過軸PA1を強誘電性液晶38の配向方向と直交する方向に設定している。
これにより、透過部A2では、強誘電性液晶38を透過する直線偏光LAは強誘電性液晶38の配向方向に直交するため、位相のずれが発生せず偏光軸を維持したまま透過する。また、反射部A1では、リタデーションパターン層22に入射する第1偏光LBの偏光軸は強誘電性液晶38の配向方向と平行になり、リタデーションパターン層22から出射する第3偏光LB3の偏光軸は強誘電性液晶38の配向方向と直交する。
強誘電性液晶38の分子の長軸方向に対して平行又は直交する偏光は、位相差が生じることなく、偏光軸を維持したまま強誘電性液晶38を透過する特性を有する。このため、本実施形態の半透過型液晶表示装置3では、電界OFF時には、透過部A2及び反射部A1の両者において、強誘電性液晶38の複屈折による偏光の位相のずれを考慮する必要がなく、反射部A1では、リタデーションパターン層22のみで偏光の位相変調が行われる。
このように、本実施形態の半透過型液晶表示装置3では、電界OFF時には、強誘電性液晶38の複屈折特性を考慮する必要がないので、強誘電性液晶38の厚みや屈折率異方性(Δn)に依存せずに安定して黒表示を行うことができる(ノーマリブラックモード)。
本実施形態と違って、対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸PA2を強誘電性液晶38の配向方向に対して45°ずらして設定し、素子基板1の第1偏向層36の光透過軸PA1を第2偏光層36aの光透過軸PA2と直交させた場合を想定してみる。
この場合は、透過部A2を例にすると、バックライト50の光が素子基板1の第1偏向層36を透過して得られる偏光を強誘電性液晶38の複屈折特性によって90°回転させて対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸に直交するように設計する必要がある。この方法では、偏光方向を90°回転させるため、強誘電性液晶38の屈折率異方性(Δn)に応じて厚みを厳密に制御する必要がある。このため、強誘電性液晶38の厚みにわずかな不均一性が生じると、楕円偏光成分が生じて光漏れが発生してコントラストが大幅に劣化してしまう。
しかしながら、本実施形態では、電界OFF時には、偏光が強誘電性液晶38を透過する際に偏光軸が維持されるため、強誘電性液晶38のΔnや厚みに依存せず、光漏れの少ない良好な黒表示が得られる。
このような光学設計を採用することにより、特にプラスチックフィルムを基板に使用するフレキシブルタイプの半透過型液晶装置では、作製時に生じ得る強誘電性液晶38の厚みの不均一性や曲げなどによって生じるわずかなセルギャップの変動に対して極めて有効であり、電界OFFの画素部では光漏れが発生しない黒表示を行うことができる。これによって、液晶画像のコントラスト比を向上させることができる。
また、後述するように、強誘電性液晶38にポリマーを分散させて対向する基板同士を接着する場合、ポリマーの分散状態によって強誘電性液晶38のΔnが変化してしまう。しかしながら、本実施形態では、黒表示する際に強誘電性液晶38のΔnを考慮する必要がないので、ポリマーの含有率が制限されることなく自由に設定することができる。
本実施形態では、このような原理を利用するので、上下の第1、第2偏光層36,36aの光透過軸PA1,PA2が相互に直交するように設定し、強誘電性液晶38の配向方向が対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸PA2と平行又は直交するように設定すればよい。
すなわち、図2に示すように、図1において第1偏光層36の光透過軸PA1と第2偏光層36aの光透過軸PA2の方向を入れ替えて、対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸PA2が強誘電性液晶38の配向方向と直交し、素子基板1の第1偏光層36の光透過軸PA1が強誘電性液晶38の配向方向と平行になるようにしてもよい。図2においてその他の要素は図1と同一である。
この形態の場合は、透過部A2では、前述した図3において、第1、第2偏光層36,36aの光透過軸PA1,PA2の向きが入れ替わり、偏光LAが強誘電性液晶38の配向方向と同じ方向の偏光となり、それが偏光軸を維持したまま強誘電性液晶38を透過し、その偏光は第2偏光層36aの光透過軸PA2と直交することになり、黒表示となる。
また、反射部A1では、前述した図4において、第2偏光層36aの光透過軸PA2が90°反転し、第1偏光LB1の偏光軸は強誘電性液晶38の配向方向と直交し、第3偏光LB3の偏光軸が強誘電性液晶38の配向方向と同一方向となる。これによって、第3偏光LB3が第2偏光層36aの光透過軸PA2と直交することになり、黒表示となる。
次に、強誘電性液晶38に電界をかけた電界ON時(白表示)の光伝播について説明する。本実施形態で使用される強誘電性液晶38は、電界ONにすると電界OFF時の水平配向の状態で水平方向に傾く特性を有する。強誘電性液晶38の回転角は、液晶材料やポリマーの分散状態により制御することができる。本実施形態では、最も大きな光変調効果が得られる45°傾く強誘電性液晶を例に挙げて説明する。
透過部A2では、図1に図5を加えて参照すると、電界ON時には、バックライト50の光が素子基板1の第1偏光層36を透過して得られる第1偏光LA1は、電界OFF時の配向方向から45°傾いた強誘電性液晶38に入射することになる(図5の平面イメージ)。このため、第1偏光LA1は強誘電性液晶38から複屈折を受けて直交する2つの振動成分に位相差が生じることになる。これは、長軸状の液晶分子が配向方向とそれの垂直方向とにおいて異なる屈折率を有するため、波(光)の伝播速度がおのおののベクトル方向で変位することに起因する。
そして、強誘電性液晶38は、第1偏光LA1が強誘電性液晶38を透過した後に90°回転するようにその厚みが調整されている。これにより、第1偏光LA1は、強誘電性液晶38を透過した後に90°回転した第2偏光LA2となって対向基板2の第2偏光層36aに入射する。第1偏光層36の光透過軸PA1と第2偏光層36aの光透過軸PA2は直交していることから、第1偏光LA1が90°回転した第2偏光LA2の偏光軸は、第2偏光層36aの光透過軸PA2と同じ方向を向いていることになる。これにより、第2偏光LA2が第2偏光層36aの光透過軸PA2を透過して外部に放出されて、白表示となる。
一方、反射部A1では、図1に図6を加えて参照すると、電界ON時には、外光LXが対向基板2の第2偏光層36aを透過して得られる第1偏光LB1は、電界OFF時の配向方向から45°傾いた強誘電性液晶38を透過することになる(図6の平面イメージ)。従って、第1偏光LB1は、透過部A2と同様に、強誘電性液晶38から複屈折を受けて位相差が生じることになる。
このとき、反射部A1の強誘電性液晶38の厚みが透過部A2の半分に設定されているので、位相差も透過部A2の半分になって第1偏光LB1にλ/4の位相差が生じる。従って、第1偏光LB1が強誘電性液晶38を透過すると、第1偏光LB1は第2偏光LB2(円偏光)となる。さらに、第2偏光LB2がリタデーションパターン層22を透過することにより、λ/4の位相差が生じ、第2偏光LB2は第3偏光LB3となる。この時点で、第3偏光LB3は、第1偏光LB1の偏光軸から90°回転した直線偏光となる。
続いて、第3偏光LB3が反射パターン層30で反射されて再度リタデーションパターン層22を透過することにより、さらにλ/4の位相差が生じ、第3偏光LB3は第4偏光LB4(円偏光)となる。さらに、第4偏光LB4が強誘電性液晶38を再度透過する。このとき、第4偏光LB4は強誘電性液晶38から複屈折を受け、さらにλ/4の位相差が生じて第5偏光LB5となり、白表示となる。
なお、前述した図2に示すように、対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸PA2を強誘電性液晶38の配向方向と直交させ、素子基板1の第1偏光層36の光透過軸PA1が強誘電性液晶38の配向方向と平行になるように設定しても、電界ON時には同様に反射部A1及び透過部A2の両者で白表示となる。つまり、最初に入射する偏光の偏光軸が90°反転するだけで、同じ原理によって透過部A2及び反射部A1から光が放出されて白表示となる。
以上のように、電界ON時には、透過部A2では強誘電性液晶38の厚みによって、また反射部A1ではリタデーションパターン層22と強誘電性液晶38の厚みによって偏光の位相が変調されて光が外部に放出される。従って、フレキシブルディスプレイに適用した場合、強誘電性液晶38の厚み(セルギャップ)の不均一性により楕円偏光成分が生じた場合でも、白レベルの若干の低下が生じるものの、黒レベルは十分低いため高いコントラストの表示が得られる。
なお、透過部A2の強誘電性液晶38の厚み(セルギャップ)が反射部A1の2倍に設定された形態を例示したが、透過部A2と反射部A1の高さを同等にしてセルギャップを変えないで光設計することも可能である。
また、強誘電性液晶38としては、黒表示の配向方向から電圧印加によって片側に45°傾く特性のものと、両側に±45°傾く特性のもののうちいずれかを適用することができる。特にポリマー繊維で安定化する場合、傾き角度を電圧に応じてアナログ的に変化させて階調機能をもたせることができる。
なお、強誘電性液晶38の最大傾き角度は45°が理想的であるが、それに限定されるものではない。
次に、本実施の半透過型液晶表示装置の詳細な構成について説明する。本実施形態では、プラスチックフィルムを基板に使用するフレキシブルタイプの半透過型液晶表示装置を例に挙げて説明する。
本実施形態の半透過型液晶表示装置の製造方法では、図7(a)に示すように、まず、仮基板として青板ガラスなどのガラス基板10を用意し、そのガラス基板10の上にポリイミドなどからなる剥離層12を形成する。
その後に、図7(b)に示すように、剥離層12の上にポリイミド前駆体ワニスを均一の厚みで塗布した後に、プレベークを行うことにより未硬化のポリイミド塗布層14aを形成する。続いて、ポリイミド塗布層14aの上にポジレジスト15を形成した後に、所定の露光パターンを備えたフォトマスクを介してポジレジスト15を露光する。その後に、ポジレジスト15の露光部を現像液によって除去して開口部15aを形成する。
さらに、現像液によってポジレジスト15の開口部15aを通してその下のポリイミド塗布層14aを除去する。その後に、剥離液によってポジレジスト15がポリイミド塗布層14aに対して選択的に除去される。さらに、ポリイミド塗布層14aを熱処理することによって完全に硬化させる。
これにより、図7(c)に示すように、剥離層12の上にポリイミド層がパターン化されて得られる剥離性パターン部14(凸部)が得られる。剥離性パターン部14の高さは、例えば1〜4μmに設定され、剥離層12の上に凹凸が設けられた状態となる。
ガラス基板10の上には赤色画素部R、緑色画素部G及び青色画素部Bが画定されており、剥離性パターン部14は各画素部R,G,Bの領域内に開口部14aがそれぞれ設けられた状態で形成される。図7(c)の部分平面図を加えて参照すると、各画素部R,G,Bにおいて、剥離性パターン部14の開口部14a(凹部)が反射部A1に対応し、中央部に配置された剥離性パターン部14が透過部A2に対応するように配置される。
なお、後述するように、剥離性パターン部14は、液晶表示装置を組み立てる際に、透過部A2の液晶の厚み(セルギャップ)を反射部A1の液晶の厚みより厚くするためのものである。従って、透過部A2と反射部A1の間で液晶の厚みを変える必要がない場合は、剥離性パターン部14を省略してもよい。
次いで、図8(a)に示すように、剥離層12及び剥離性パターン部14の上に膜厚が150nm程度の透明導電層16aをスパッタ法により形成する。透明導電層16aは、ITO(Indium Tin Oxide)やIZO(Indium Zinc Oxide)などから形成される。続いて、図8(b)に示すように、透明導電層16aの上にレジストパターン(不図示)を形成し、それをマスクにして透明導電層16aをエッチングすることにより画素電極16を得る。その後に、レジストパターンが除去される。画素電極16は各画素部R,G,Bの領域に相互に分離されてそれぞれ配置される。
本実施形態では、ガラス基板10上に画素電極16を形成するので、プラスチックフィルム上に形成する場合と違って成膜温度などのプロセス条件が限定されることがない。例えば、画素電極16としてITO層を使用する場合は、成膜温度が200℃程度のスパッタ法などを採用することができる。これにより、画素電極16(ITO)は低抵抗(シート抵抗値:15Ω/□)な電気特性をもって形成される。
剥離性パターン部14の高さが数μmであるため、画素電極16は、反射部A1と透過部A2の境界部で断線することなく形成される。
なお、剥離層12及び剥離性パターン部14の上に、SiOXやSiNXなどのバリア層を形成し、その上に画素電極16を形成してもよい。バリア層は、基板温度が220℃のスパッタ法によって膜厚が15nm程度で形成される。
また、本実施形態では、アクティブマトリクスタイプの素子基板を製造する形態を例示しており、各画素電極16は各画素部R,G,Bごとに設けられたTFT(不図示)にそれぞれ接続されて形成される。あるいは、画素電極16をストライプ状のパターンで形成することにより、単純マトリクス駆動用の素子基板を製造してもよい。
このようにして、各画素部R,G,Bの領域に画素電極16がそれぞれ位置合わせされて配置される。
次いで、図8(c)に示すように、画素電極16の上にアクリル樹脂などからなる膜厚が2μm程度の第1保護層18を形成する。次いで、図9(a)に示すように、第1保護層18の上にポリイミドからなる膜厚が1μm程度の配向膜20を形成し、配向膜20を熱処理した後に、液晶分子が水平方向に配向するように一定方向に配向処理を施す。次いで、図9(b)に示すように、配向膜20の上に光硬化性液晶モノマー22aを形成する。このとき、光硬化性液晶モノマー22aは、その液晶分子の長軸がガラス基板10に対して水平方向に配向されて形成される。
次いで、光硬化性液晶モノマー22aにパルスキセノン光を照射することにより、液晶分子が水平方向に配向した状態で光硬化性液晶ポリマー22aを硬化させてポリマー22bを得る。その後に、ポリマー22bを温度:150℃、処理時間:1時間の条件でベークする。これにより、硬化したポリマー22bはリタデーション層(λ/4位相差層)として機能するようになる。
次いで、硬化したポリマー22bの上にポジレジスト(不図示)を形成し、各画素部R,G,Bの反射部A2上にパターンを残すためのフォトマスクを介してポジレジストを露光・現像する。さらに、パターン化されたポジレジストをマスクにしてポリマー22bをエッチングした後に、ポジレジストを除去する。
これにより、図9(c)に示すように、各画素部R,G,Bの反射部A1に対応する配向膜20の上に、ポリマー22bから形成されたリタデーションパターン層22(λ/4位相差層)がそれぞれパターン化されて形成される。リタデーションパターン層22(λ/4位相差層)として機能する好適なポリマー22bとしては、その屈折率異方性Δnが0.17、その膜厚が810nmに設定される。
なお、ポリマーをパターン化せずに、反射部の配向膜の上に液晶分子が水平方向に配向される光硬化性液晶モノマーを部分的に硬化させてリタデーションパターン層を形成し、透過部の配向膜の上に液晶分子がランダム又は垂直に配向される光硬化性液晶モノマーを部分的に硬化させて透明層を形成してもよい。
次いで、図10(a)に示すように、配向膜20及びリタデーションパターン層22の上にアクリル樹脂などからなる第2保護層24を形成する。さらに、図10(b)に示すように、第2保護層24の上にカラーフィルタ26を形成する。カラーフィルタ26は赤色画素部Rに配置される赤色カラーフィルタ26Rと、緑色画素部Gに配置される緑色カラーフィルタ26Gと、青色画素部Bに配置される青色カラーフィルタ26Bと、各画素部の間に配置される遮光層26Xとによって構成される。そして、3原色の画素部R,G,B(サブピクセル)が表示単位であるピクセルを構成する。カラーフィルタ26は、例えば顔料分散タイプの感光性塗布膜がフォトリソグラフィによって順次パターニングされて形成される。
次いで、図10(c)に示すように、カラーフィルタ26の上にアクリル樹脂などかならなる第3保護層28を形成した後に、その表面を粗面化処理して微細な凹凸を形成する。
続いて、図11(a)に示すように、真空蒸着法により第3保護層28の上にアルミニウムなどの金属層30aを形成する。さらに、金属層30aの上にポジレジスト(不図示)を形成し、各画素部R,G,Bの反射部A1上にパターンを残すための露光パターンを備えたフォトマスクを介してポジレジストを露光・現像する。さらに、パターン化されたポジレジストをマスクにして金属層30aをエッチングした後に、ポジレジストを除去する。
これにより、図11(b)に示すように、各画素部R,G,Bの反射部A1に対応する第3保護層28の上に反射パターン層30がそれぞれ形成される。
このようにして、各画素部R,G,Bの反射部A1に対応する領域にリタデーションパターン層22と反射パターン層30とがそれぞれ位置合わせされて配置される。
続いて、図12(a)に示すように、図11(b)の構造体の反射パターン層30及び第3保護層28の上にスプレーコートにより、膜厚が10μm程度の紫外線硬化型の接着層32を形成する。このとき、接着層32の中に予めスペーサ粒子を混入しておくことによってその膜厚を均一に保つことができる。
さらに、接着層32の上に光学的に等方性のプラスチックフィルム40を貼り合せる。プラスチックフィルム40としては、厚みが100〜200μm(好適には120μm)のポリエーテルスルホンフィルムやポリカーボネートフィルムなどが使用される。
その後に、プラスチップフィルム40側から紫外線を照射することにより接着層32を硬化させた後に、クリーンオーブンで温度:120℃、処理時間:30分の条件で熱処理する。
次いで、図12(b)に示すように、プラスチックフィルム40の一端にロール(不図示)を固定し、そのロールを回転させながらガラス基板10を剥離する。このとき、ガラス基板10と剥離層12との界面に沿って剥離され、ガラス基板10が廃棄される。
図13(a)には、図12(b)の構造体を上下反転させた状態が示されている。図13(a)に示すように、プラスチックフィルム40の上に、反射A1では、下から順に、接着層32、反射パターン層30、第3保護層28、カラーフィルタ26、第2保護層24、リタデーションパターン層22、配向膜20、第1保護層18、画素電極16、剥離性パターン部14、及び剥離層12から構成される転写層Tが転写・形成される。
本実施形態と違ってプラスチックフィルムの上に直接、各種素子を位置合わせして形成する場合は、各種素子の形成造工程でのプラスチックフィルムの熱変形などによって各画素部R,G,Bの反射部A1にリタデーションパターン層22及び反射パターン層30を高精度に位置合わせして形成することは困難である。
しかしながら、本実施形態では、耐熱性で剛性のガラス基板10の上に画定された各画素部R,G,Bの反射部A1にリタデーションパターン層22及び反射パターン層30が高精度に位置合わせして形成される。その後に、ガラス基板10の上に形成された転写層Tがプラスチックフィルム40の上に上下反転した状態で転写・形成される。
このような転写技術を採用することにより、各種素子の形成工程でのプラスチックフィルム40の熱変形を考慮する必要がないので、プラスチックフィルム40の上の各画素部R,G,Bの反射部A1にリタデーションパターン層22及び反射パターン層30が高精度に位置合わせして形成される。
次いで、図13(b)に示すように、図13(a)の構造体の上面側の剥離層12及び剥離性パターン部14を、酸素を含むガスのプラズマ又はアルカリ溶液などを使用するウェットエッチングにより除去することにより、画素電極16を露出させる。剥離層12及び剥離性パターン部14は剥離が容易なポリイミドからなるので、上記処理によって下地の画素電極16や第1保護層18に対して選択的に除去される。
これにより、各画素部R,G,Bにおいて、露出した画素電極16の上面側では、剥離性パターン部14が除去されて透過部A2に凹部Cが設けられ、反射部A1が透過部A2から突出する凸部Pとなる。このようにして、反射部A1の高さが透過部A2の高さより高く設定される。
続いて、図14に示すように、図13(b)の構造体の上面側の画素電極16及び第1保護層18の上に液晶を配向させるための配向膜34を形成した後に、配向処理を行う。さらに、プラスチックフィルム40の下面に第1偏光層36を形成する。以上により、本実施形態の半透過型液晶表示装置を構成するための素子基板1が得られる。
次に、本実施形態の素子基板1を利用して構成される半透過型液晶表示装置について説明する。図15に示すように、まず、上記した素子基板1と、それに対向して配置される対向基板2とを用意する。対向基板2は、プラスチックフィルム40aと、その一方の面に形成された保護層18aと、保護層18aの上に形成されたITOなどからなるコモン電極17と、コモン電極17の上に形成された配向膜34aと、プラスチックフィルム40aの他方の面に形成された第2偏光層36aとによって基本構成される。
そして、素子基板1の配向膜34側の面に対向基板2の配向膜34a側の面が所定間隔を空けた状態で対向して配置され、素子基板1と対向基板2との間に強誘電性液晶38が挟持されて、本実施形態の半透過型液晶表示装置3が得られる。
図16(a)〜(c)には、図15の半透過型液晶表示装置3の組み立て方法が模式的に示されている。図16(a)に示すように、まず、本実施形態では、強誘電性液晶38として、光硬化性液晶モノマー38aが混合された液晶/モノマー混合液38xが使用される。液晶/モノマー混合液38xは、強誘電性液晶38と光硬化性液晶モノマー38aとをかくはんすることによって得られる。光硬化性液晶モノマー38aとしては、紫外線照射によって重合する液晶性のアクリルモノマーが使用される。そのような光硬化性液晶モノマー38aは、強誘電性液晶38と相溶性をもち、かつ強誘電性液晶と共に分子配向性を示す。
そして、この液晶/モノマー混合液38xを素子基板1の配向処理が施された配向膜34(図15)の上に均一に塗布する。さらに、対向基板2の配向膜34a(図15)の面を液晶/モノマー混合液38xに当接させて配置し、対向基板2及び素子基板1をプレスすることにより、液晶/モノマー混合液38xを挟み込む。このとき、液晶/モノマー混合液38xにはスペーサ粒子(不図示)が分散されているため、対向基板2及び素子基板1がスペーサのサイズまで押し込まれてそれらの間隔(液晶/モノマー混合液38xの厚み)が一定となる。またこのとき、光硬化性液晶モノマー38aは、強誘電性液晶38と共に配向膜34,34a(図15)によって分子配向する。
なお、スペーサ粒子を分散する代わりに、基板上にフォトリソグラフィなどによりスペーサ柱を形成してもよい。
次いで、図16(b)に示すように、格子状のフォトマスク42を介して液晶/モノマー混合液38xに紫外線をパターン露光する。このとき、液晶/モノマー混合液38x内で拡散・浮遊するモノマーの分子は露光部に達した時点で重合・硬化して、対向基板2及び素子基板1に接着するポリマー壁44を構築する。
さらに、図16(c)に示すように、液晶/モノマー混合液38xの全体にわたって紫外線を露光することにより、未露光部に残された液晶/モノマー混合液38x中のモノマー成分が液晶中で凝集・析出してポリマー繊維46がネットワーク状に形成される。このようにして、素子基板1と対向基板2との間に強誘電性液晶38が挟持され、それらの基板がポリマー壁及びポリマー繊維46によって所定間隔を保った状態で接着される。
なお、形成されるポリマーの分子配向をラビング方向に分子配向させるためには、露光時に液晶/モノマー混合液38xを加熱してネマティック相に制御することが望ましいが、ネマティック相には限定されるものではない。また、図16では、紫外線を2段階に分けて照射しているが、ポリマー壁44は必ずしも形成する必要はない。つまり、フォトマスク42を介した部分露光を省略し、紫外線で液晶/モノマー混合液38xの全体を露光することにより、ポリマー繊維46のみが設けられるようにしてもよい。
以上により、上記した本実施形態のフレキシブルタイプの半透過型液晶表示装置3が得られる。
図15に示すように、本実施形態の半透過型液晶表示装置3は、素子基板1と、対向基板2と、それらの間に挟持された強誘電性液晶38とによって基本構成される。素子基板1では、プラスチックフィルム40の上に赤色画素部R、緑色画素部G、及び青色画素部Bが画定されている。各画素部R,G,Bの領域は、中央部に配置された透過部A2と周縁側に配置された反射部A1とによって構成される。反射部A1と透過部A2のレイアウトは、各種の形態を採用することができる。本実施形態と逆に、中央部に反射部A1が配置され、周縁側に透過部A2が配置されるようにしてもよい。さらには、各画素部R,G,Bの領域内で反射部A1と透過部A2が複数に分割されていてもよい。
また、反射部A1と透過部A2との分割比は任意に設定することができる。反射部A1の面積を透過部A2より大きくすれば、反射重視型の表示特性が得られる。また逆に、透過部A2の面積を反射部A1より大きくすれば、透過重視型の表示特性が得られる。
プラスチックフィルム40の上には接着層32が形成されており、接着層32の上にはそれに埋設された状態で反射パターン層30が形成されている。反射パターン層30は各画素部R,G,Bの反射部A1に対応する部分にそれぞれ配置されている。
さらに、反射パターン層30の上に第3保護層28及びカラーフィルタ26が順に形成されている。カラーフィルタ26は、赤色画素部Rに配置された赤色カラーフィルタ26Rと、緑色画素部Gに配置された緑色カラーフィルタ26Gと、青色画素部Bに配置された青色カラーフィルタ26Bと、画素部の間の領域に配置された遮光層26Xとにより構成される。
また、カラーフィルタ26の上に第2保護層24が形成されている。各画素部R,G,Bの反射部A1に対応する第2保護層24の上(反射パターン層30に対応する部分)にリタデーションパターン層22(λ/4位相差層)がそれぞれ形成されている。
リタデーションパターン層22の上にはそれを形成する際にその液晶分子を配向させるために使用された配向膜20が形成されている。配向膜20の上には第1保護層18が形成されている。さらに、各画素部R,G,Bの全体に対応する第1保護層18の上に画素電極16がそれぞれ形成されている。また、画素電極の16の上に強誘電性液晶38を配向させるための配向膜34が形成されている。さらに、プラスチックフィルム40の下面に第1偏光層36が設けられている。
一方、対向基板2では、プラスチックフィルム40aの上(図15では下)に保護層18a、コモン電極17及び配向膜34aが順に形成され、プラスチックフィルム40aのコモン電極17が配置された面と反対面に第2偏光層36aが形成されて構成されている。
そして、前述したような光伝播を達成するため、素子基板1の第1偏光層36と対向基板2の第2偏光層36aとはそれらの光透過軸が直交するように配置されている。
本実施形態に係る素子基板1では、前述したように、強誘電性液晶38と接する面側において、各画素部R,G,Bの透過部A2に対応する部分に凹部Cが設けられており、反射部A1が透過部A2から突出する凸部Pとなっている。これによって、透過部A2の強誘電性液晶38の厚み(セルギャップ)が反射部A1の強誘電性液晶38の厚みよりも厚く(2倍程度)なるように設定されている。そして、前述したような光伝播を達成するため、強誘電性液晶38は、対向基板2の第2偏光層36aの光透過軸PA2と平行又は直交する配向方向に配向されている。
このようにセルギャップを設定することにより、反射部A1と透過部A2と間で強誘電性液晶38を通過する光の経路を等しくできることから、反射部A1と透過部A2とで光学的ロスの少ない画像表示を実現することができる。
本実施形態の半透過型液晶表示装置3では、ポリマー壁44及びポリマー繊維46によって、素子基板1と対向基板2とが緻密に接着されて両基板と液晶が一体化されることから、プラスチックフィルム40,40aが曲げられた場合であっても全体にわたって一定のセルギャップが確保される。従って、フレキシブル液晶ディスプレイにおいて安定した表示特性が得られるようになる。しかも、前述したように、電界OFFのときは、液晶による光の位相差を考慮する必要がないので、光設計への影響を考慮することなく、ポリマー壁44やポリマー繊維46の分散率を自由に最適化することができる。
なお、本実施形態では、好適な形態として、転写技術を使用することによりプラスチックフィルムの上に反射パターン層30、リタデーションパターン層22及び画素電極116などを位置合わせ精度よく形成して素子基板1を製造したが、位置合わせ精度が問題にならない場合は、プラスチックフィルムの上に素子を直接形成するようにしてもよい。あるいは、基板としてプラスチックフィルムの代わりにガラス基板などを使用して剛性を有する半透過型液晶表示装置としてもよい。
1…素子基板、1a,2a…基板部、2…対向基板、3…半透過型液晶表示装置、10…ガラス基板、12…剥離層、14…剥離性パターン部、14a,15a…開口部、15…ポジレジスト、16a…透明導電層、16…画素電極、17…コモン電極、18…第1保護層、18a…保護層、20,34,34a…配向膜、22a…光硬化性液晶モノマー、22b…ポリマー、22…リタデーションパターン層、23…フォトマスク、24…第2保護層、26…カラーフィルタ、26R…赤色カラーフィルタ、26G…緑色カラーフィルタ、26B…青色カラーフィルタ、26X…遮光層、28…第3保護層、30a…金属層、30…反射パターン層、32…接着層、36…第1偏光層、36a…第2偏光層、38…強誘電性液晶、38a…光硬化性モノマー、38x…液晶/モノマー混合液、40,40a…プラスチックフィルム、42…フォトマスク、44…ポリマー壁、46…ポリマー繊維、50…バックライト、A1…反射部、A2…透過部、R…赤色画素部、G…緑色画素部、B…青色画素部、C…凹部、P…凸部、PA1,PA2…光透過軸、LA,LA1,LA2,LB1〜LB5…偏光、LX…外光、DA…遅相軸。