JP4964470B2 - 高分子被膜の形成方法及びこの方法を用いたイオン交換体 - Google Patents

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本発明は、高分子被膜の形成方法、特に、特徴ある官能基を高密度に有する構造を備えた高分子被膜の形成方法及び担体−高分子被膜複合体の製造方法並びにこれらの方法により製造される高分子被膜及び担体−高分子被膜複合体に関する。本発明による担体−高分子被膜複合体は、分離カラムに充填するカラム充填剤、特に1価と2価の陽イオンを同時に測定することができるカチオンクロマトグラフィーに利用される弱酸性陽イオン交換体として特に有用である。
1価と2価の陽イオンを同時に測定することができるカチオンクロマトグラフィー用充填剤としては、多孔質シリカゲルにポリ(ブタジエン−マレイン酸)(以下、PBDMAと表す場合がある)の被膜を形成した後、180℃で4時間加熱して製造した弱酸性陽イオン交換体を使った弱酸性陽イオン交換体がある(非特許文献1参照)。
しかし、この方法で作られた弱酸性陽イオン交換体は、シリカゲル担体とPBDMA被膜から生成した樹脂との密着性が充分ではなく、分析結果の再現性に乏しいという問題を有している。
この問題点を解決する方法として、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物ジエンモノマー共重合体とビニル化合物との共重合架橋体からなる弱酸性陽イオン交換組成物を被覆していることを特徴とする弱酸性陽イオン交換体が提示されている(特許文献1参照)。これは、球状微粒子担体の表面に被膜を形成する際に、官能基としてビニル基を持つ化合物を共存させ、高温下でPBDMA共重合架橋体を生成させ、耐久性を向上させるというものである。
これら2つの報告による充填剤の製造法では、重合の際に有機物を含む微粒子を高温に熱する必要があり、工業的に適した製造法ではなかった。
特許文献2には、多孔質担体の表面に多官能カルボン酸化合物と多官能エポキシ化合物との硬化物を被覆してなるカチオンクロマトグラフィー用充填剤が提案されている。この報告では、耐久性が改善されたカラムが得られると報告があるが、官能基を含む構造にはエステル結合が含まれ、加水分解による劣化など不都合が考えられる。
また、これらの提案は、すべて、1価のカチオンの分離、特にナトリウムイオンとアンモニウムイオンの分離の改善を目指したものではなく、これらのカチオンの分離は充分とは言えなかった。
これとは別に、ナトリウムイオンとアンモニウムイオンの分離の改善を目指した例が、報告されている(特許文献3、4参照)。ここでは、多孔性有機重合体粒子に、クラウンエーテルやそれに類する構造を有する官能基を導入することにより、特にカリウムとアンモニウムの溶出を遅らせることによる、ナトリウムイオンとアンモニウムイオンの分離の改善が示されている。このカラムは、充分に目的を果たすものの、特にカリウムのピーク形状が悪化し、溶離液に有機溶媒を含む溶液を用いる必要があるなどの欠点があった。
さらに、これらの報告には、実施例にポリスチレン系の基材に、無水マレイン酸とエチルビニルエーテルからなる共重合体をグラフト重合させる例が示されている。一般に、グラフト重合を用いる方法は、確かに官能基を大量に導入できる可能性がある。しかし、この方法で導入される共重合体高分子の鎖は、ほとんどが基材表面と垂直の方向に広がる。これは、担体上の官能基を含む部位の膜厚を増加させることになる。このため官能基の導入量を増やす場合に、カラム充填圧の上昇を招いたり、カラムの分離効率の低下を引き起こしたりする原因となっていた。
サプレッサー方式に用いられるカラムとして、Dionex社からは、商品名Ionpac CS16が市販されている。これは、カルボキシル基/ホスホン酸基を持つカチオンクロマトグラフィー用充填剤を充填したもので、1価のカチオンの分離が改善され、特にナトリウムイオンとアンモニウムイオンの分離が改善されている。しかし、このカラムは、30mmol メタンスルホン酸という濃度の高い溶離液を用いるサプレッサー方式用のカラムであった。
こうした背景の中、適当な濃度の溶離液条件で1価のカチオンを高度に分離できる、1価2価カチオン同時分析に用いることのできる弱酸性陽イオン交換体が要望されている。
一般に、1価2価同時分析用カチオンクロマトグラフィー用充填剤には、カルボキシル基を持ったものが利用される。そのカルボキシル基は、500μeq/gから3000μeq/gが適当とされている。これは、500μeq/g以下だと充分な分離を与えないためであり、3000μeq/g以上では、イオンの溶出が遅くなり過ぎるためである。イオンの分離を良くするには、できる限り導入する置換基量を大きくすれば良い。しかし、これまでの置換基導入法は、担体の形状に影響を与える結果になることが多く、その結果、分離が悪化することにつながっていた。
二重結合を有する高分子化合物と無水マレイン酸を反応させる例としては、ブタジエンコポリマーと無水マレイン酸を反応させてなる生成物をさらに誘導体化した化合物を電気泳動塗装に用いるという報告、ブタジエンと無水マレイン酸を反応させて得られる化合物をさらに反応させて得られる写真塗布液用水性分散液についての報告がある(例えば、特許文献5、6参照)。しかし、弱酸性陽イオン交換体としての製造例は、特許文献2に記載された例のみである。
また、特許文献7には、弱酸性陽イオン交換体の製造方法が記載されている。この方法による弱酸性陽イオン交換体を充填したカラムは、1価のカチオンを高度に分離することができるが、微細な担体粒子を用いて製造を行った場合、担体粒子の凝集が起こることがある。このため、理論段数をさらに改善するためには、微細な担体上に高濃度で官能基を有し得る、凝集が起こらないか顕著に抑制された、より高性能のイオン交換体を得る方法が求められていた。
クロマトグラフィア(Chromatographia),1987年,第23巻,第7号,p.465−472 特開平5−96184号公報 特開平8−257419号公報 米国特許第5,968,363号明細書 米国特許第5,875、994号明細書 特公昭49−4059号公報 特公昭60−21372号公報 特許公開2004−97985
本発明は、粒子状担体に適用した場合、凝集が起こらないか顕著に抑制された担体−高分子被膜複合体を形成し得る高分子被膜の形成方法の提供を課題の一つとする。特に、微細な担体上に高濃度で官能基を有し得る、クロマトグラフィー用カラムに充填した際に高い理論段数を実現し得る高性能なカラム充填剤(特にイオン交換体)の製造方法の提供を課題の一つとする。更には、温和な条件で弱酸性陽イオン交換体を製造すること、より強固な弱酸性陽イオン交換膜を製造すること、1価のカチオンを高度に分離でき、1価及び2価のカチオンを同時に分析できる弱酸性陽イオン交換体を製造すること、並びに該イオン交換体を用いたクロマトグラフィー用カラムの提供を課題の一つとする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく検討した結果、(a)分子内に不飽和基を有する水溶性高分子またはその水溶液と(b)水と共沸する有機溶媒とを含む混合物を担体表面に存在させ、溶媒の留去を行なって含水量の低減された高分子で担体表面を被覆する工程を含む高分子被膜の形成方法を採ることにより、微粒子担体を用いても凝集がないか顕著に抑えられ、特に該高分子が溶解しない溶媒中、官能基(例えば、カルボン酸基)及び不飽和を含む分子の共存下に架橋することにより、官能基を高濃度でかつ、比較的温和な条件で導入することができ、種々のカラム充填剤(例えば、弱酸性陽イオン交換体)を製造できることを見出した。さらに、この溶媒中に、前記官能基及び不飽和を含む分子としてエチレン-α,β-不飽和二塩基酸を用いると、エチレン-α,β-不飽和二塩基酸が反応し、より強固な膜を形成することができることを見出した。また、この方法で得られた弱酸性陽イオン交換体はカラムに充填した時に、1価のカチオンを高度に分離することを見出し、この発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の高分子被膜の形成方法、この方法により製造された高分子被膜、高分子被膜を表面に有する担体−高分子被膜複合体、その担体−高分子被膜複合体からなるカラム充填剤、特にイオン交換体(特に弱酸性陽イオン交換体)、並びにこのカラム充填剤を使用することを特徴とする分離用カラム、特にイオン交換体を使用することを特徴とするイオンクロマトグラフィー用カラム(特に弱酸性陽イオンクロマトグラフィー用カラム)を提供する。
1.(a)分子内に不飽和基を有する水溶性高分子またはその水溶液と(b)水と共沸する有機溶媒とを含む混合物を担体表面に存在させ、溶媒の留去を行なって含水量の低減された高分子で担体表面を被覆する工程を含む高分子被膜の形成方法。
2.前記高分子の架橋反応を行なう工程をさらに含む前記1に記載の高分子被膜の形成方法。
3.前記高分子が溶解しない溶媒中で架橋反応を行なう前記2に記載の高分子被膜の形成方法。
4.架橋反応を行なう際に、少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子を共存させ、前記官能基を高分子被膜に導入する前記2または3に記載の高分子被膜の形成方法。
5.前記官能基が、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基である前記4に記載の高分子被膜の形成方法。
6.官能基導入のための前記分子が、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸である前記5に記載の高分子被膜の形成方法。
7.エチレン−α、β−不飽和二塩基酸が、無水マレイン酸である前記6に記載の高分子被膜の形成方法。
8.分子内に不飽和基を有する水溶性高分子が、不飽和カルボン酸−ジエンモノマー共重合体である前記1〜7のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
9.不飽和カルボン酸−ジエンモノマー共重合体が、ポリ(ブタジエン−マレイン酸)である前記1〜8のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
10.水と共沸する有機溶媒が、芳香族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類からなる群から選択される少なくとも1種類である前記1〜9のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
11.水と共沸する有機溶媒が、ベンゼン、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、酢酸エチル、ジオキサンからなる群から選択される少なくとも1種類である前記10に記載の高分子被膜の形成方法。
12.水と共沸する有機溶媒が、トルエンである前記11に記載の高分子被膜の形成方法。
13.前記(a)分子内に不飽和基を有する水溶性高分子またはその水溶液と(b)水と共沸する有機溶媒とを含む混合物が、さらに(c)水と混和する有機溶媒を含有する前記1〜12のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
14.水と混和する有機溶媒が、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ニトリル類から選ばれる少なくとも1種類であることを特徴とする前記13に記載の高分子被膜の形成方法。
15.水と混和する有機溶媒が、メタノール、エタノール、アセトン、酢酸エチル、ジオキサン、アセトニトリルからなる群から選択される少なくとも1種類である前記14に記載の高分子被膜の形成方法。
16.水と混和する有機溶媒がアセトンである前記15に記載の高分子被膜の形成方法。
17.担体が無機多孔質担体またはポリマーゲルである前記1〜16のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
18.無機多孔質担体がシリカゲルである前記17に記載の高分子被膜の形成方法。
19.ポリマーゲルがポリビニルアルコールゲルである前記17に記載の高分子被膜の形成方法。
20.担体が重量平均粒径1〜100μmの球状多孔性粒子である前記17〜19のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
21.前記1〜20のいずれかの方法により製造された高分子被膜。
22.前記1〜20のいずれかの方法により製造された高分子被膜を表面に有する担体−高分子被膜複合体。
23.カラム充填剤である前記22に記載の担体−高分子被膜複合体。
24.カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基が導入された高分子被膜を表面に有し、弱酸性陽イオン交換体、強酸性陽イオン交換体または陰イオン交換体である前記22または23に記載の担体−高分子被膜複合体。
25.導入された官能基がカルボン酸基である前記24に記載の弱酸性陽イオン交換体。
26.前記24に記載のイオン交換体を使用することを特徴とするイオンクロマトグラフィー用カラム。
27.前記25に記載の弱酸性陽イオン交換体を使用することを特徴とする弱酸性陽イオンクロマトグラフィー用カラム。
本発明の方法によれば、微粒子担体を用いても凝集がないか凝集を顕著に抑えつつ高分子被膜を形成できる。また、溶媒の沸点以下の比較的温和な条件で高性能なカラム充填剤、特にイオン交換体(特に弱酸性陽イオン交換体)を製造することが可能である。さらに、エチレン-α,β-不飽和二塩基酸を溶解させておくと、エチレン-α,β-不飽和二塩基酸が反応し、より強固な膜を形成することができる。この方法で得られた弱イオン交換体はカラムに充填した時に、1価のカチオンを高度に分離することができる。
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の高分子被膜の形成方法は、(a)分子内に不飽和基を有する水溶性高分子またはその水溶液と(b)水と共沸する有機溶媒とを含む混合物を担体表面に存在させ、溶媒の留去を行なって含水量の低減された高分子で担体表面を被覆する工程を含むことを特徴とする。
従来提案されていた方法では、高分子被膜の形成について、このような工程を用いることは開示されていなかった。本発明者らは、この工程を用いることにより高分子による被覆状態が改善され、この工程を含まない従来法では頻繁に起こることがあった担体の凝縮を防ぎ得ることを見出した。
担体の凝集はその担体の粒度分布の増大につながる。粒度分布が広い担体を分析カラムに充填した場合、粒度分布が狭い担体を分析カラムに充填した場合に比べ、理論段数が低くなることが、一般に知られている。このため、この工程を用いることにより、最終の分析カラムに用いた場合に、理論段数が向上し、高い性能のカラムを得ることができる。
さらに、次工程の架橋工程において無水マレイン酸を用いる場合、残存する水分によって無水マレイン酸が反応し変化することにより、後工程での反応が阻害されることがあったが、このような現象を防ぐこともできる。
本発明で用いられる分子内に不飽和基を有する水溶性高分子は、その不飽和基がラジカル等と反応可能で、担体上に被膜を形成し得るもので、水溶性のものであれば特に制限されない。水溶性高分子は、合成して用いても市販品を用いてもよい。一般に市販品は水溶液として販売されている。合成して用いる場合も、必要に応じて水溶液としてその粘度を調節してもよい。いずれにせよ、水溶性高分子は、大気中の水分を吸収しやすいため、使用時にはある程度、含水している。水溶液とする場合の濃度は、水溶性高分子によって担体表面を十分に被覆し得る程度に調整すればよいが、通常、水溶性高分子は比較的粘度が高いため、例えば、20〜80質量%程度の水溶液が好ましい。
不飽和基は典型的にはエチレン性炭素−炭素二重結合である。後述のように、本発明では、架橋反応による均一な膜を製造することが好ましいので、二重結合を数多く有しているものが好ましい。その点で、ジビニル化合物やジエンのポリマーあるいはコポリマー、ポリマーに反応により二重結合を導入したものなどが好ましい。
例えば、不飽和カルボン酸ジエンモノマー共重合体が用いられる。好ましくは、ポリ(ブタジエン-マレイン酸)(以下、PBDMAと表す場合がある)である。これらは、単独あるいは複数の混合物として使用できる。PBDMAは、一般に市販されている(例えばポリサイエンス社等より)。
本発明で用いられる水と共沸する有機溶媒(以下、単に「共沸溶媒」ともいう。)は、前記水溶性高分子またはその水溶液から水分を除去するために用いられる。また、場合によっては溶媒として機能する。
共沸溶媒としては、後述する架橋反応を行なう場合にはその架橋反応に悪影響を与えず、所望の目的に応じた溶媒を選択すればよく、例えば化学便覧基礎編II(日本化学会編(改訂5版(2004))、丸善)に記載されている水との共沸有機溶媒が挙げられる、芳香族炭化水素類、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類等が含まれる。芳香族炭化水素類の例としてはベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等が挙げられる。アルコール類の例としてはエタノール、1−プロパノール、イソプロピルアルコール、1−ブタノール、2-ブタノール、1−ペンタノール、1−オクタノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。ケトン類の例としてはメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等が挙げられる。エステル類の例としては酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、ギ酸ブチル、安息香酸エチル、プロピオン酸エチル等が挙げられる。エーテル類の例としては1,4−ジオキサン、1,2−ジエトキシエタン、ジイソプロピルエーテル等が挙げられるが、いずれのタイプの化合物もここでの例示に限定されるものではない。なかでも、トルエン、キシレンが経済性を考慮した場合に好ましい。
上述のように水溶性高分子は、使用当初にはある程度の含水量を有するが、本発明の高分子被膜の形成方法では、この水溶性高分子またはその水溶液と水と共沸する有機溶媒とを含む混合物を担体表面に存在させ、溶媒の留去を行なって含水量の低減された高分子で担体表面を被覆する。
含水量の低減度は、目的によって変わり得るが、典型的には、3質量%以下、好ましくは1000ppm(wt)以下である。含水量が3質量%を超えると担体として粒子を用いた場合、その凝集を回避することが困難である。含水量の下限値は、最終的には、共沸に使用した溶媒に対する水の飽和溶解度となる。例えば、トルエンの場合は300ppm程度であるが、現実的には、ここまで水分量を低減しなくてもよく、飽和溶解度によって定まる値と前記上限値との間であればよい。
なお、担体は特に限定されず、水溶性高分子で被覆し得るものであれば、材質及び形状を問わない。もっとも、本発明は、微粒子状の担体に適用したときに、微粒子の凝集を防ぎつつその表面を水溶性高分子で被覆することが可能であり、このような担体に好適に適用できる。微粒子状担体の好ましい例及びその具体的な応用については後述する。
水溶性高分子と共沸溶媒(上述のように、ここでは「水と共沸する有機溶媒」の意味で用いる。以下、同じ。)との量比は、調整しようとする含水量及び用いる共沸溶媒の共沸組成によって変わり得る。上に挙げたような溶媒の水との共沸組成は一般に知られており(例えば、上記「化学便覧 基礎編II」参照)、水溶性高分子に対し必要な共沸溶媒の量は当業者であれば容易に求めることができる。例えば、共沸溶媒がトルエンの場合、共沸組成は水:トルエン=19.91:80.09(85℃,wt%)となる。ここから算出すると、40質量%の水溶性高分子水溶液100g(すなわち、水分量60g)に対し共沸溶媒としてトルエンを使用する場合は、トルエン242g(理論値)以上となる。一般に共沸組成が水:共沸溶媒=1:p(質量比)である場合、x質量%の水溶性高分子水溶液a質量部に対し、{(100-x)/100}a×p質量部が理論値となり、理論値以上の共沸溶媒を用いる。実際の使用量は飽和溶解度を考慮した含水量が上記の範囲内となるように定められる。例えば、トルエンでは水溶性高分子水溶液(40%,100g使用時の場合)に対して、242g(理論値)〜483g(2倍量)程度を用いればよい。2倍量以上のトルエンを使用することも可能であるが、極端な過剰量を用いても効果に変わりはなく経済的に有利ではない。
水溶性高分子またはその水溶液と共沸溶媒とを含む混合物は、用いる共沸溶媒が水と非混和性の場合は、さらに水と混和する有機溶媒を含有することが好ましい。水と混和する有機溶媒の例としては、アルコール類、ケトン類、エステル類、エーテル類、ニトリル類等が挙げられる。アルコール類としてはメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等が挙げられる。ケトン類としてはアセトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。エステル類としては酢酸メチル、酢酸エチル等が挙げられる。エーテル類としては1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジオキソラン等が挙げられる。以上の他にも、ニトリル類としてアセトニトリル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。水と混和する有機溶媒の量は、使用する有機溶媒に対する水の溶解度以上であればよいが、極端な過剰量を用いても効果に変わりなく、経済的にも好ましくない。
(a)分子内に不飽和基を有する水溶性高分子またはその水溶液と(b)水と共沸する有機溶媒とを含む混合物を担体表面に存在させる操作は、例えば、担体が板状等である場合には、慣用の塗布操作でもよいが、担体が粒子状である場合には、(a)と(b)との混合物に粒子状担体を投入して分散させることによって行なうことが好ましい。この場合、(a)と(b)との混合物がさらに(c)水と混和する有機溶媒を含む場合、(a)、(b)、(c)及び担体は、任意の順序で混合し得るが、水と共沸する有機溶媒が水に対し非混和性の場合は、好ましくは、(a)、(c)及び担体を混合し、次いで(b)を添加混合することが好ましい。いずれの場合にせよ、混合後、超音波振動等により担体粒子を液中に分散させることが好ましい。
次いで、溶媒の除去を行なう。溶媒の除去は常圧下でも、また、減圧下でも行うことができる。具体的な条件は、担体や共沸溶媒の種類、また、水と混和する有機溶媒も用いる場合はその種類や量にもよるが、通常は60℃以下での留去が好ましく、上述したような溶媒であれば、10〜500mmHg程度の減圧度で60℃以下での留去が可能である。
共沸溶媒の留去により、水溶性高分子またはその水溶液から共沸溶媒とともに水分が除去され、含水量の低減された水溶性高分子で担体表面が被覆される。この時に、担体を被覆する水溶性高分子の量も特に制限されない。具体的には膜の用途によって決定されるが、例えば、カラム充填剤の製造では、水溶性高分子の量は担体である多孔性球状微粒子に対し、重量で0.1倍から3倍、より好ましくは0.2倍から1.0倍の量が好ましい。分子内に不飽和結合を有する水溶性高分子の量が少なすぎると、担体に被膜がうまく形成されず、また、多すぎると、被膜した担体の凝集が起こりやすくなるため好ましくない。
好ましくは、次いで、前記高分子の架橋反応を行なう。本発明の分子内に不飽和結合を持つ水溶性高分子の架橋反応は、通常、溶媒中で行われるが、重合方法に特に制限はない。マイルドな反応条件で行うためにラジカル重合開始剤を使用することが好ましいが、熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれでも使用することができる。特にアゾビス系化合物、過酸化物等の熱重合開始剤が好ましい。
架橋反応時に使用する溶媒は、高分子の重合度、架橋度などによって変わるが、使用する水溶性高分子を溶解しない溶媒を選ぶことが好ましい。ここで、「溶解しない」溶媒とは、ある溶媒に該高分子を投入したときに、短期的には均一に分散することなく、その場所に留まるような溶媒を表す。
このことを確かめるには、スライドグラス等適当な担体に、分子内に不飽和結合を持つ水溶性高分子を塗布し、確かめたい溶媒中に浸漬し、使用する温度に加熱し、30分経過した後の重量変化を観察すればよい。この時、塗布前からの重量減少が全塗布量の99%以下であれば、この高分子は使用できる。望ましくは重量減少が50%以下であり、特に10%以下であることが望ましい。低分子のオリゴマーを含む高分子の場合には、あらかじめ溶媒中で可溶性の成分を除いた後、溶解しない成分のみを、次の反応に用いるといった方法も可能である。
かかる有機溶媒は、不飽和結合を持つ水溶性高分子が溶解せず、架橋反応に不都合がない溶媒であれば、特に制限はない。これら溶媒は、単独で使用しても良いし、混合して使用することもできる。例示すると、ベンゼン、トルエン、キシレン、プロピレンカーボネート、テトラヒドロフランなどが挙げられるがこれらに限定されるものではない。また、後述する少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子をさらに用いる場合は、これを溶解する溶媒から選ばれる。場合によっては、少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子が架橋時の溶媒を兼ねることもできる。
本発明の架橋反応工程において、溶媒中に少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子を共存させておくことにより、該官能基が分子内に導入された新しい性能を有する安定した被膜を製造することができる。官能基は特に限定されないが、例えば、高分子被膜にイオン交換性を付与する目的では、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基を用いることができる。
例えば、陽イオン交換性を付与する目的では、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸を共存させておくことができる。
本発明で用い得るエチレン−α,β−不飽和二塩基酸の例としては、弱酸性陽イオン交換性を付与する物質として、エチレン性の重合可能な二重結合の両端にカルボキシ基を有する化合物の誘導体が挙げられる。例えば、無水マレイン酸、無水マレイン酸誘導体(例えば、無水クロルマレイン酸、無水シトラコン酸、無水1,2-ジエチルマレイン酸)、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸ジエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、フマル酸ジエステル等を挙げることができるがこれらに限定されるものではない。特に無水マレイン酸が、反応性の点でも工業的にも好ましい。
従って、架橋時に使用する溶媒は、少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子(例えば、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸)を溶解する溶媒が望ましい。溶媒中に少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子の溶媒への溶解性は、溶解度で判定できる。溶媒100gに溶解しうる溶質の最大質量で表した場合、その溶解度が0.01g/100g以上であることが望ましい。通常は、1g/100g以上の溶媒を選択することが望ましい。少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子(例えば、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸)が液体であるときも同様であるが、液体の場合には、両者が混ざらない場合は、撹拌によって懸濁した状態で使用することも可能である。
分子内に不飽和結合を有する水溶性高分子と架橋時溶媒の組み合わせについての例としては、PBDMA(水溶液を乾燥して得る。)の場合、トルエンやプロピレンカーボネート等が挙げられる。
少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子であるエチレン-α,β-不飽和二塩基酸も含めた組み合わせとしては、例えば、工業的にも有利な組み合わせとして、PBDMAと無水マレイン酸とプロピレンカーボネートあるいは、PBDMAと無水マレイン酸とトルエンが挙げられる。
少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子(例えば、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸)の量は、通常実際に反応する量よりも過剰に加えられる。カラム充填剤の製造を例にとると、多孔性球状微粒子に対し、重量で0.1倍から10倍、より好ましくは0.5倍から3.0倍使われる。
少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子(例えば、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸)を添加した場合の反応は、不飽和結合を有する高分子と反応する条件であれば、特に限定されない。ラジカル開始剤を共存させることにより、共重合体を生じさせる方法がもっとも簡便である。ラジカル開始剤も通常用いる熱重合開始剤、光重合開始剤のいずれでも用いることができる。特に好ましくは、アゾビス系化合物、過酸化物等が挙げられる。具体的には、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(以後、AIBNと表す場合がある。)、2,2−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
本発明による製造にあたっては、他のビニル化合物を溶媒中に共存させることもできる。その量についてもとくに制限されない。ただし、ビニル化合物として、単独で重合しやすいものは、多量に使用すると、そのグラフト重合物の生成が主になり、二重結合を有する高分子の架橋反応が進みにくくなるといった問題がある。さらに、イオン交換体を製造する場合には、得られるイオン交換性被膜の膜厚が大きくなってしまうためか、得られるイオン交換体をカラムに充填した場合の分離が悪くなる。このような場合を考え、ビニル化合物は、目的に応じた性能を発揮できるように実験的に求められた量が加えられる。
少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子(例えば、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸)を使用する場合には、ビニル化合物のうち単独の重合は起こしにくく主に少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子(例えば、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸、例えば無水マレイン酸)と交互共重合することが知られている化合物などは、少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子の架橋反応を促進させる意味で、加えることが好適に行われる。この時のビニル化合物の量も、目的に応じた性能を発揮できるように実験的に求められた量が加えられる。
本発明による製造は、担体に水溶性高分子を塗布する工程及び好ましくは架橋反応工程からなる工程を含んでいれば、前後、あるいは、間に、違う工程が入ることも可能である。例えば、塗布する工程で担体に不飽和結合を有する高分子を塗布した後、膜の性質を改善するための工程として、例えば熱処理を行い、その後、架橋反応工程を行うこともできる。さらにこの架橋反応工程の後に、得られた膜状の置換基を目的の形に変換する工程が行われることもある。例えば、置換基が酸無水物の形の場合は、これを適当な条件で加水分解することが行われる。
本発明による製造は、高温を必要とせず有機溶媒中で反応を行えるために、通常用いられる装置、技術を利用できる。さらに、危険性も低いために、多孔性有機重合体粒子などにも、工業的な適応が可能である。多孔性有機重合体粒子の場合には、多孔性有機重合体粒子の表面に反応せずに残されている二重結合等と、二重結合を有する高分子または少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子(例えば、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸)との反応が起こるため、膜は担体に強く結合するという利点もある。
従って、本発明によれば、担体−高分子被膜複合体も提供される。
上述のように、担体の材料や形状は特に限定されないが、本発明による担体−高分子被膜複合体は、官能基の導入が容易であり、微粒子でも凝集がないか顕著に抑えられているため、クロマトグラフィー等の固定相(カラム充填剤)として特に有用である。
従って、担体としては、無機多孔質担体である、シリカゲル、アルミナ、ポーラスガラス、炭素粒等、または、有機多孔質担体である、ポリスチレンゲル、ポリ(メタ)アクリル酸ゲル、ポリビニルアルコールゲル等のポリマーゲルが特に好適に用いられる。粒径は重量平均粒径で通常1〜100μm、好ましくは1〜50μm、より好ましくは3〜30μmであり、BET値により測定した細孔径は3nmから50nmの範囲のものが望ましい。
本発明によるクロマトグラフィー用カラム充填剤の用途は特に限定されないが、特にイオン交換カラム充填剤として有用であり、高分子被膜に導入する官能基を選択することにより弱酸性陽イオン交換体、強酸性陽イオン交換体または陰イオン交換体とすることができる。
本発明の原理は明らかではないが、架橋時に溶媒中で反応を起こすラジカルなどが自由に移動し、反応しやすい位置の二重結合の反応を進めやすくすることが考えられる。また、溶媒を用いることにより、ラジカル開始剤などの分解反応を溶液中で行なうため、危険性や取扱いの煩雑さが解消されるのも本発明の大きな利点である。
特に上述したように、エチレン-α,β-不飽和二塩基酸を反応させることにより、1価のカチオンを高度に分離でき、1価2価カチオン同時分析に用いることのできる弱酸性陽イオン交換体を得ることができる。
さらに、一般に、エチレン-α,β-不飽和二塩基酸は、単独では高分子量の重合体を与えにくいが、二重結合を有する高分子と同時に用いると高分子の二重結合とエチレン-α,β-不飽和二塩基酸の反応が主になり、得られる膜に弱酸性の官能基を高密度に導入できることになる。このため、高度な分離を与える弱酸性陽イオン交換体を得ることができる。
また、本発明の方法で製造したイオン交換体としての性能を持つポリマー粒子、それを用いた充填剤、特に、多孔性ポリビニルアルコール担体、多孔性シリカゲル担体を用いたイオン交換体である充填剤は、通常の方法でカラムに充填することにより、陽イオンクロマトグラフィー用カラムとすることができる。
以下、実施例、比較例を挙げ本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの記載により何らの限定を受けるものではない。なお、実施例で使用した分析機器及び分析条件は以下の通りである。
・官能基(カルボキシル基)量
自動滴定装置:京都電子工業株式会社製 AT−400
<測定方法>
秤量した試料を0.1mmol塩化カリウム水溶液に分散し、自動滴定装置によりpH8を終点として、0.01N水酸化ナトリウムにより滴定。
・液体クロマトグラフィー(以下HPLC)
CD検出器:東亜電波社製 ICA−5220
ポンプ:ShodexTM製 DS−4
カラムオーブン:ShodexTM製 AO−30
データ処理:システムインスツルメンツ社製 480IIXP
溶離液:6mMメタンスルホン酸水溶液
カラム温度:40℃
流速:0.8ml/min
注入量:20μl
標準測定試料:Li+:0.2mg/L、Na+:1mg/L、NH4 +:1mg/L、K+:2mg/L、Mg2+:1mg/L、Ca2+:2mg/L
・重量平均粒径
コールターカウンター:ベックマン社製 コールター Multisizer3(分散媒:水)
<実施例1>有機高分子担体(ポリビニルアルコールゲル)を用いた例
(ポリビニルアルコールゲルの製造)
酢酸ビニル100g、トリアリルイソシアヌレート180g、酢酸ブチル150g及びAIBN10gよりなる均一混合液と、少量のポリビニルアルコール及びリン酸ナトリウムを溶解した水1400mlとを、還流冷却基を備えた5Lの三口フラスコに入れ10分撹拌した。次いで、窒素気流下で撹拌しつつ、60℃で16時間重合を行い、粒状重合体を得た。該重合体をろ過、洗浄し、アセトン抽出した後、乾燥した。得られた重合体を1N水酸化ナトリウム水溶液3Lとともに還流冷却器、窒素導入管及び撹拌器を備えた5Lの三口フラスコに入れ、窒素気流下で15℃、20時間撹拌して該重合体のケン化を行った後、ろ過、水洗、更に乾燥した。ケン化によって得られたポリビニルアルコール重合体の水酸基の密度は2.1meq/gであった。このようにして、平均粒径5μmのポリビニルアルコール重合体(ポリビニルアルコールゲルともいう)を得た。
(担体に対する塗布工程)
500mlのナスフラスコに40%PBDMA水溶液(ポリサイエンス社製)6.3g、合成されたポリビニルアルコールゲル10.0g、水との混和性を有する有機溶媒としてアセトン55g、水との共沸性を有する有機溶媒としてトルエン120gを加え、超音波を10分間照射して均一に分散させた。10分静置後、ロータリーエバポレーターを用いて、40℃、50mmHgで、回転させながら濃縮し、ゲル表面に被膜を形成した。被膜を形成したゲルは、シャーレに移し、1晩、風乾した。この時点でのゲルの重量は、11.0gであった。目視の結果、このゲルは均一で、凝縮部分は認められなかった。
(架橋反応工程)
100mlのセパレートフラスコに無水マレイン酸11.3gとAIBN0.8gをとり、トルエン50gに溶かした。ここに、被膜を形成したゲルを投入し、超音波照射して均一に分散させた。約30秒間窒素パージした後、85℃に加熱、撹拌して15時間反応させた。反応物をろ過し、濾物をトルエン、純水で洗浄した。濾物として得られたゲルは、さらに6mMメタンスルホン酸水溶液中45℃で16時間撹拌することにより、加水分解した。内容物をろ過し、濾物を、純水、アセトンの順に十分に洗浄し、風乾した。こうして、12.0gの弱酸性陽イオン交換体を得た。
弱酸性の官能基の量は、自動滴定装置により、2022μeq/gであった。
こうして得られた弱酸性陽イオン交換体を、液体クロマトグラフィー用分離カラム(内径6.0mm、長さ150mm)に充填して、標準測定試料の分離を行った。
得られたクロマトグラムを図1に示した。図1において、ピーク1はLi+、ピーク2はNa+、ピーク3はNH4 +、ピーク4はNH4 +、ピーク5はMg2+、ピーク6はCa2+である。1価のカチオンのピーク間隔が広がって、特にナトリウムとアンモニウムのピークがベースラインで分離していることがわかる。理論段数はK+で、11000であり、優れた分離性能を示している。
<比較例1>有機高分子担体(ポリビニルアルコールゲル)を用いた例
(担体に対する塗布工程)
トルエンを使用しない以外は実施例1と同様の操作を行った。被膜を形成したゲルは、シャーレに移し、1晩、風乾した。この時点でのゲルの重量は、13.4gであった。目視の結果、このゲルには一部凝縮が見られた。
(架橋反応工程)
上記担体に水溶性高分子を塗布したゲルを用い、実施例1と同様の操作で架橋反応を行った。こうして、12.5gの弱酸性陽イオン交換体を得た。
弱酸性の官能基の量は、自動滴定装置により、2022μeq/gであった。
こうして得られた弱酸性陽イオン交換体を、液体クロマトグラフィー用分離カラム(内径6.0mm、長さ150mm)に充填して、標準測定試料の分離を行った。
得られたクロマトグラムを図2に示した。図2において、ピーク1はLi+、ピーク2はNa+、ピーク3はNH4 +、ピーク4はNH4 +、ピーク5はMg2+、ピーク6はCa2+である。1価のカチオンのピーク間隔が広がって、特にナトリウムとアンモニウムのピークがベースラインで分離しているが、理論段数はK+で、6800であり、やや、理論段数が実施例1に対し劣っている。
本発明による方法で製造されたカチオンクロマトグラフィー用充填剤は、高温などの特別な条件を必要とせずに、二重結合を含む高分子化合物の膜を、製造することができた。さらに、この方法によって製造された弱酸性陽イオン交換体は、カラムに充填した時に、その他の方法で作られた方法では、実現できなかった1価のカチオンの高分離性を示した。
本発明の方法によれば、高理論段数のクロマトグラフィー用カラムを実現するカラム充填剤を製造することができる。特に溶媒の沸点以下の比較的温和な条件で高性能な弱酸性陽イオン交換体を製造できる。
実施例1の結果得られたクロマトグラム。 比較例1の結果得られたクロマトグラム。

Claims (16)

  1. (a)分子内に不飽和基を有する水溶性高分子の水溶液と、(b)ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン及びクメンから選ばれる、水と共沸する有機溶媒と、(c)メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、メチルエチルケトン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジオキソランおよびアセトニトリルから選ばれる、水と混和する有機溶媒とを含む混合物を微粒子状の担体表面に存在させ、溶媒の留去を行なって含水量の低減された高分子で前記担体表面を被覆する工程を含む高分子被膜の形成方法。

  2. 前記高分子の架橋反応を行なう工程をさらに含む請求項1に記載の高分子被膜の形成方法。
  3. 前記高分子が溶解しない溶媒中で架橋反応を行なう請求項2に記載の高分子被膜の形成方法。
  4. 架橋反応を行なう際に、少なくとも1の官能基と1の不飽和結合を有する分子を共存させ、前記官能基を高分子被膜に導入する請求項2または3に記載の高分子被膜の形成方法。
  5. 前記官能基が、カルボン酸基、スルホン酸基、アミノ基からなる群から選択される少なくとも1種類の官能基である請求項4に記載の高分子被膜の形成方法。
  6. 官能基導入のための前記分子が、エチレン−α,β−不飽和二塩基酸である請求項5に記載の高分子被膜の形成方法。
  7. エチレン−α、β−不飽和二塩基酸が、無水マレイン酸である請求項6に記載の高分子被膜の形成方法。
  8. 分子内に不飽和基を有する水溶性高分子が、不飽和カルボン酸−ジエンモノマー共重合体である請求項1〜7のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
  9. 不飽和カルボン酸−ジエンモノマー共重合体が、ポリ(ブタジエン−マレイン酸)である請求項8に記載の高分子被膜の形成方法。
  10. 水と共沸する有機溶媒が、トルエンである請求項1〜9のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
  11. 水と混和する有機溶媒がアセトンである請求項1〜10のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
  12. 担体が無機多孔質担体またはポリマーゲルである請求項1〜11のいずれかに記載の高分子被膜の形成方法。
  13. 無機多孔質担体がシリカゲルである請求項12に記載の高分子被膜の形成方法。
  14. ポリマーゲルがポリビニルアルコールゲルである請求項12に記載の高分子被膜の形成方法。
  15. 請求項1〜14のいずれかの方法により製造された高分子被膜を表面に有する担体−高分子被膜複合体。
  16. カラム充填剤である請求項15に記載の担体−高分子被膜複合体。
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