以下、本発明を適用した熱転写記録媒体について、図面を参照して詳細に説明する。
熱転写記録媒体1は、図1に示すように、基材2の一方の面2aに、染料層4Y、4M、4Cの塗布性や接着性を調整するプライマー層3が設けられ、このプライマー層3上に、染料を含有するイエロー、マゼンタ、シアンの3色の染料層4Y、4M、4Cと、非転写性の離型性層5を介して、形成された画像を保護する保護層6とが面順次に並設されている。なお、熱転写記録媒体1は、シアンの染料層4Cを備え、イエローの染料層4Y、マゼンタの染料層4Mを必要に応じて設け、離型性層5及び保護層6についても、必要に応じて設けるようにする。基材2の他方の面2bには、熱転写記録媒体1の走行性を良好にする耐熱滑性層7が形成されている。
この熱転写記録媒体1は、熱転写プリンタ装置に取り付けられ、基材2の他方の面2bからサーマルヘッド等の加熱手段によって染料層4Y、4M、4Cが加熱され、熱転写プリンタ装置内に搬送された印画紙等の熱転写受像シートに対して、イエロー、マゼンタ、シアンの色素を熱転写して、カラー画像を形成し、次に、保護層6が加熱され、保護層6が離型性層5との間で界面剥離し、形成したカラー画像上に保護層6を熱転写して、カラー画像を保護する。
熱転写記録媒体1の基材2としては、プラスチックフイルム、紙、合成紙、セロハンなど、特に限定するものではなく、サーマルヘッド等の加熱手段の加熱温度に耐えるとともに、熱伝達が早く、染料層4Y、4M、4Cや保護層6に対する加熱を均一に行えるよう薄膜で厚さむらがないものが好ましい。
基材2としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアミド、ポリイミド、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、エチレン・ビニルアルコール共重合体、ポリカーボネート、フッ素樹脂、ポリメチルメタアクリレート、ポリブテンー1、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリフェニレンサルファイドなどの未延伸又は延伸フィルムを挙げることができる。これらの中でも、基材2としては、耐熱性が優れ、厚さのむらが少なく製造できるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートやポリエーテルエーテルケトンのプラスチックフイルムが好ましい。プラスチックフイルムは、一方の面2a及び他方の面2bに、染料層4Y、4M、4Cや保護層6、耐熱滑性層7との接着を強固にするために、プライマーコート、コロナ放電処理などや、異物付着防止やシートの走行を安定するため帯電防止などの表面処理を行うことが好ましい。
この基材2は、厚さ3.5〜12μmが好ましく、特に好ましくは、4.0〜6.0μmである。基材2の厚さを3.5〜12μmの範囲とすることによって、熱転写記録媒体1の耐熱性が得られ、染料や保護層6を熱転写するために、熱転写記録媒体1と熱転写受像シートと重ね合わせた時に段差が生じず、色調の再現性が低下しない。基材2の破断強度は、縦、横ともに10〜40kg/mm2、破断伸延度が縦、横ともに50〜150%(いずれも、JIS C2318による)ものが好ましい。破断強度を10〜40kg/mm2、破断伸延度を50〜150%とすることによって、巻取りや印画のときに伸びたり、破れたりすることなく、好ましい。
プライマー層3は、基材2と染料層4Y、4M、4Cや離型性層5との間に、染料層4Y、4M、4Cや離型性層5、保護層6の塗布性、接着性を調整する目的で形成される。このプライマー層3は、少なくとも樹脂と、特定のフッ素系界面活性剤とにより形成されている。
プライマー層3を形成する樹脂は、水溶性又は水分散性のポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂の少なくとも1つを含有することが好ましい。
水溶性又は水分散性のポリエステル系樹脂としては、特公昭47−40873号公報,特開昭58−78761号公報などで、公知のポリエステル又はそれらに準じたポリエステル系樹脂を用いることができる。例えば、ポリエステルにおけるジカルボン酸成分のうち、芳香族ジカルボン酸の例としては、テレフタル酸,イソフタル酸,2,5−ナフタレンジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、また脂肪族ジカルボン酸の例としては、アジピン酸,アゼライン酸,セバシン酸およびそれらのエステル形成性誘導体などが挙げられ、オキシモノカルボン酸の例としては、オキシ安息香酸およびそのエステル形成性誘導体などが挙げられる。
更に、ポリエステルのグリコール成分としては、脂肪族,脂環族,芳香族ジオール等が使用でき、その例としてエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、p−キシレンジオールなどが挙げられ、ポリ(オキシアルキレン)グリコールの例としてポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等が挙げられる。
スルホン酸塩基を有するポリエステルは、前述したポリエステル形成成分にスルホン酸塩基が置換されたものであり、この様なポリエステルを製造する為のジカルボン酸成分としては、スルホイソフタル酸、スルホテレフタル酸、4−スルホナフタレン−2,7−ジカルボン酸およびそれらのエステル形成性誘導体などの金属塩が挙げられる。金属塩における金属の例としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウムなどが好適である。これらの中で特に好ましいのは5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ナトリウムスルホテレフタル酸である。
ポリエステル系樹脂のジカルボン酸成分中の芳香族ジカルボン酸の量は、50モル%〜100モル%の範囲が好ましい。これは、ポリエステル系樹脂の軟化点を高め、固着性を良くするためである。ポリエステル系樹脂中のスルホン酸塩基は、樹脂を水溶性又は水分散性とするに必須な量存在する必要があり、スルホン酸塩基を有するジカルボン酸をジカルボン酸中の2モル%〜20モル%の範囲で使用するのが好ましい。スルホン酸塩基の量を2モル%〜20モル%の範囲とすることによって、水溶性又は水分散性が十分であり、塗布後の耐水性が劣らず、フィルムが相互に固着することを防止できる。
アクリル樹脂は、カルボキシル基及び/またはその塩を有する化合物が3重量%以上40重量%以下、好ましくは3重量%以上30重量%以下、更に好ましくは4重量%以上25重量%以下共重合されていることが望ましい。共重合量がこれより少ないと、基材2や染料層4との密着性が安定して得られず、またこれを越えるものは逆に基材2や染料層4との密着性が悪化する。
カルボキシル基及び/またはその塩を有する化合物としては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、フマル酸及び/またはこれらの塩(アンモニウム塩、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アミン塩等)などが挙げられる。中でも、易接着性の点でアクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が好ましく、特にアクリル酸が好ましい。
アクリル樹脂を構成するモノマー成分としては、公知の物を使用することができる。例えば、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート(アルキル基としてはメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ラウリル基、ステアリル基、シクロヘキシル基、フェニル基、ベンジル基、フェニルエチル基等)、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のヒドロキシ基含有モノマー、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、N−メチロールメタクリルアミド、N,N−ジメチロールアクリルアミド、N−メトキシメチルアクリルアミド、N−メトキシメチルメタクリルアミド、N−フェニルアクリルアミド等のアミド基含有モノマー、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有モノマー、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基含有モノマーなどが挙げられ、これらは1種もしくは2種以上を用いて共重合される。更に、これらは、他種のモノマーと併用することができる。
他種のモノマーとしては、例えば、アリルグリシジルエーテル等のエポキシ基含有モノマー、スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸及びそれらの塩(リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、アンモニウム塩等)等のスルホン酸基又はその塩を含有するモノマー、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルトリスアルコキシシラン、アルキルマレイン酸モノエステル、アルキルフマール酸モノエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アルキルイタコン酸モノエステル、塩化ビニリデン、酢酸ビニル、塩化ビニル等が挙げられる。
また、アクリル樹脂としては、変性ポリエステル共重合体、例えばアクリル、ウレタン、エポキシ等で変性したブロック共重合体、グラフト共重合体等を用いることも可能である。
アクリル樹脂の分子量は、10万以上が好ましく、更に好ましくは30万以上とするのが密着性の点で好ましい。
好ましいアクリル樹脂としては、アクリル酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレートを基本骨格とし、更にこれに、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリルアミド、N−メチロールアクリルアミド、グリシジルメタクリレートを共重合したものが挙げられる。
前記アクリル樹脂の他に、それとは異なるアクリル樹脂を併用することができる。例えば、前記アクリル樹脂は、通常、ガラス転移点(Tg)が50℃未満と低いため、これよりもガラス転移点(Tg)の高いアクリル樹脂、例えば、ガラス転移点(Tg)が50℃以上、より好ましくは60℃以上のアクリル樹脂を併用することにより、耐湿密着性が更に向上させることができる。また、これら異なるアクリル樹脂の混合比は、特に限定されない。
水溶性又は水分散性のポリウレタン系樹脂としては、特公昭42−24194号公報,特公昭46−7720号公報,特公昭46−10193号公報,特公昭49−37839号公報,特開昭53−126058号公報,特開昭54−138098号公報,特開昭58−78761号公報などで公知のポリウレタン系樹脂を用いることができる。ポリウレタン系樹脂の主要な構成成分は、ポリイソシアネート,ポリオール,鎖長延長剤,架橋剤などである。
ポリイソシアネートの例としては、トリレンジイソシアネート,フェニレンジイソシアネート,4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート,ヘキサメチレンジイソシアネート,イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。
ポリオールの例としては、ポリオキシエチレングリコール,ポリオキシプロピレングリコール,ポリオキシテトラメチレングリコールのようなポリエーテル鎖ポリエチレンアジペート,ポリカプロラクトンのようなポリエステル類,アクリル系ポリオール,ひまし油などが挙げられる。
鎖長延長剤あるいは架橋剤の例としては、エチレングリコール,プロピレングリコール,ブタンジオール、ジエチレングリコール,エチレンジアミン,ジエチレントリアミン,4,4′−ジアミノジフェニルメタン,水などが挙げられる。
アニオン性基を有するポリウレタン系樹脂は、ポリウレタン形成成分であるポリオール,ポリイソシアネート化合物,鎖長延長剤などにアニオン性基を有する化合物を用いる方法、生成したポリウレタンの未反応イソシアネート基とアニオン性基を有する化合物を反応させる方法、ポリウレタンの活性水素を有する基と特定の化合物を反応させる方法などを用いて製造できる。
ポリウレタン系樹脂としては、分子量300〜20000のポリオール、ポリイソシアネート,反応性水素原子を有する鎖長延長剤およびイソシアネート基と反応する基、およびアニオン性基を少なくとも1個有する化合物からなる樹脂が好ましい。
ポリウレタン系樹脂中のアニオン性基としては、−SO3H,−COOH等のリチウム塩,ナトリウム塩,カリウム塩又はマグネシウム塩等が例示され、特に好ましいのはスルホン酸塩基である。ポリウレタン系樹脂中のアニオン性基の量は、0.05重量%〜5重量%が好ましい。アニオン性基の量を0.05重量%〜5重量%とすることによって、ポリウレタン系樹脂の水溶性又は水分散性が良好であり、アニオン性基が多くなり過ぎず、塗布後の耐水性が劣らず、吸湿したりしてフィルムが相互に固着することを防止できる。
プライマー層3に含有させたフッ素系界面活性剤は、シアン染料層4C中に拡散し、シアン染料の非転写時には、シアン染料の結晶化を抑制し、シアン染料の熱転写時には、基材2側にシアン染料が移行することを抑制したり、シアン染料層4Cと熱転写受像シートとの融着及びシアン染料層4Cの異常転写を抑制する。
このようなフッ素系界面活性剤は、下記の一般式(2)乃至一般式(4)で示される少なくとも1種を含有することが好ましい。
Rf−(L1)m−(Y1)n−X ・・・一般式(2)
(一般式(2)において、Rfは少なくとも1つのフッ素原子を含有する脂肪族基を表し、L1は2価の連結基を表し、Y1は置換基を有しても良いアルキレンオキシ基、アルキレン基またはアルケニル基を表し、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アニオン性基またはカチオン性基を表し、mは0または1〜5の整数を表し、nは0または1〜40の整数を表す。)
Rf−(O−Rf′)n1−L2−X′m1 ・・・一般式(3)
(一般式(3)において、Rfは少なくとも1つのフッ素原子を含有する脂肪族基を表し、Rf′は少なくとも1つのフッ素原子を含有するアルキレン基を表し、L2は単なる結合手または連結基を表し、X′はヒドロキシル基、アニオン性基、カチオン性基を表し、n1及びm1はそれぞれ1以上の整数を表す。)
〔(Rf″O)n2−(PFC)−CO−Y2〕k−L3−X″m2・・・一般式(4)
(一般式(4)において、Rf″は炭素原子を1〜4個含有するペルフルオロアルキル基を表し、(PFC)はパーフルオロシクロアルキレン基を表し、Y2は酸素原子または窒素原子を含有する連結基を表し、L3は単なる結合手または連結基を示し、X″はアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基、または両性基を含む水可溶化極性基を表し、n2は1〜5の整数を表し、kは1〜3の整数を表し、m2は1〜5の整数を表す。)
一般式(2)及び一般式(3)に於いて、Rfは少なくとも1つのフッ素原子を含有する脂肪族基を表すが、その該脂肪族基は炭素数が1〜18であることが好ましく、さらに炭素数が2〜12であることが好ましく、炭素数が3〜7であることが特に好ましい。
一般式(2)において、L1は2価の連結基を表すが、2価の連結基としてはスルホンアミド基、アルキレンオキサイド基、フェノキシ基、アルキレンカルボニル基が特に好ましい。
一般式(2)において、Y1は置換基を有しても良いアルキレンオキシ基またはアルキレン基を表すが、アルキレンオキシ基としてはエチレンオキシ基、プロピレンオキシ基等が挙げられ、エチレンオキシ基が特に好ましい。また、アルキレン基としてはメチレン基、エチレン基、プロピレン基等が挙げられ、エチレン基が特に好ましい。
一般式(2)において、Xは水素原子、ヒドロキシル基、アニオン性基またはカチオン性基を表すが、アニオン性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、該アニオン性基のカウンターカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなどが好ましい。また、カチオン性基としては、4級アルキルアンモニウム基が好ましく、該カチオン性基のカウンターアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが好ましく、特にp−トルエンスルホン酸イオンがより好ましい。
一般式(2)において、mは0または1〜5の整数を表し、nは0または1〜40の整数を表すが、mが0であって、nが10〜20であることが特に好ましい。
一般式(3)において、Rf′は少なくとも1つのフッ素原子を含有するアルキレン基を表すが、その炭素数が1〜8であることが好ましく、さらに2〜5であることが好ましく、特に2または3であることが好ましい。
一般式(3)において、L2は単なる結合手かまたは連結基を表すが、該連結基としてはアルキレン基、アリレン基、あるいは、ヘテロ原子を含有した2価の連結基が好ましい。
一般式(3)において、X′はヒドロキシル基、アニオン性基またはカチオン性基を表すが、アニオン性基としてはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、該アニオン性基のカウンターカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなどが好ましい。また、カチオン性基としては、4級アルキルアンモニウム基が好ましく、該カチオン性基のカウンターアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが好ましい。
一般式(3)において、n1及びm1はそれぞれ1以上の整数を表すが、n1が1以上10以下、m1が1以上3以下であることが好ましい。
一般式(4)において、Rf″は炭素原子を1〜4個有するペルフルオロアルキル基を表すが、該ペルフルオロアルキル基としてはトリフロロメチル基が特に好ましい。
一般式(4)において、(PFC)は、パーフルオロシクロアルキレン基を表すが、該パーフルオロシクロアルキレン基としては、パーフルオロシクロオクチレン基、パーフルオロシクロヘプチレン基、パーフルオロシクロヘキシレン基、パーフルオロシクロペンチレン基などが挙げられ、パーフルオロシクロヘキシレン基が特に好ましい。
一般式(4)において、Y2は酸素原子または窒素原子を含む連結基を表すが、該連結基としては−OCH2−、−NHCH2−が特に好ましい。
一般式(4)において、L3は単なる結合手または連結基を表すが、該連結基としては置換または未置換のアルキレン(たとえば、エチレン、n−プロピレン、またはイソブチレン)、アリレン(例えば、フェニレン)、アルキレンとアリレンの組み合わせ(例えば、キシリレン)、オキシジアルキレン(例えば、CH2CH2OCH2CH2)、チオジアルキレン(例えば、CH2CH2SCH2CH2)などの多価、一般に二価の結合基が挙げられる。
一般式(4)において、X″はアニオン性基、カチオン性基、ノニオン性基、または両性基を含む水可溶化極性基を表すが、アニオン性基としては、CO2H、CO2M、SO3H、SO3M、OSO3H、OSO3M、(OCH2CH2)OSO3M、OPO(OH)2、およびOPO(OM)2(式中、Mはナトリウム、カリウム、またはカルシウム等の金属イオン、またはアンモニウムイオンを表す)等が挙げられ、これらの中でカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基が好ましく、該アニオン性基のカウンターカチオンとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオンなどのアルカリ金属イオン、アンモニウムイオンなどが好ましい。カチオン性基としては、4級アルキルアンモニウム基が好ましく、該カチオン性基のカウンターアニオンとしては、ハロゲン化物イオン、p−トルエンスルホン酸イオンなどが好ましい。また、ノニオン性基としてはヒドロキシル基が好ましい。
以下に、本発明で用いることができるフッ素系界面活性剤の具体例を例示するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
一般式(2)で示されるフッ素系界面活性剤の例
1−1.C8F17SO3K
1−2.C8F17SO3Li
1−3.C8F17COONH4
1−4.C8F17COOK
1−5.C8F15SO3K
1−6.C8F15SO3Li
1−7.C8F15COONH4
1−8.C8F15COOK
1−9.C9F19−O−C6H4−SO3K
1−10.C9F19−O−C6H4−SO3Na
1−11.C9F17−O−C6H4−SO3K
1−12.C9F17−O−C6H4−SO3Na
1−13.C6F13−O−C6H4−SO3K
1−14.C6F13−O−C6H4−SO3Na
1−15.C6F11−O−C6H4−SO3K
1−16.C6F11−O−C6H4−SO3Na
1−17.C7F15COONH4
1−18.C7F13COONH4
1−19.NaO3S(CH(CHCOOCH2CH2C8F17)COOCH2CH2C8F17)
1−20.C8F17SO2N(C3H7)(CH2COOK)
1−21.C8F17SO2N(C3H7)(CH2CH2OPO3Na2)
1−22.C8F17SO2N(C12H25)((C2H4O)4C4H8SO3Na)
1−23.C6F13CH2CH2SO3NH4
1−24.CF3CF2(CF2CF2)3CH2CH2SO3NH4
1−25.CF3CF2(CF2CF2)4CH2CH2SO3NH4
1−26.C6F13CH2CH2O−PO(ONH4)2
1−27.C6F3CH2CH2O−PO(ONH4)(OCH2CH2OH)
1−28.C2F5(CH2)6SO3NH4
1−29.C3F7(CH2)5SO3NH4
1−30.C2F5(CH2)6COOLi
1−31.C3F7(CH2)3O−C6H4−SO3K
1−32.NaO3S(CH(CHCOO(CH2)9C3F7)COO(CH2)9C3F7)
1−33.C3F7(CH2)5SO2N(C3H7)(CH2COOK)
1−34.C3F7(CH2)5SO2N(C12H25)((C2H4O)4C4H8SO3Na)
1−35.(C2F5CH2O)2PO(OH)2
1−36.C3F7CH2CH2OPO(OH)2
1−37.C3F7CH2CH2SCH2CH2COOLi
1−38.C6F13CH2CH2SCH2CH2COOLi
1−39.(C6F13CH2CH2O)2PO(OH)2
1−40.C6F13CH2CH2O−(CH2CH2O)10−H
1−41.C8F17CH2CH2O−(CH2CH2O)12−H
1−42.C10F21CH2CH2O−(CH2CH2O)8−H
1−43.C4F9CH2CH2O−(CH2CH2O)20−H
1−44.C3F7CH2CH2O−(CH2CH2O)10−H
1−45.C3F7CH2CH2O−(CH2CH2O)12−H
1−46.C2F5CH2CH2O−(CH2CH2O)15−H
1−47.C3F7−(CH2CH2O)2−(CH2C(OH)H−CH2O)10−H
1−48.C4F9−CH(CH3)CH2O−(CH2CH2O)9−H
1−49.C6F13−(CH2CH2O)3−(CH2C(OH)H−CH2O)12−H
1−50.C3F7CH2CH2O−(CH2CH2O)31−H
一般式(3)で示されるフッ素系界面活性剤の例
2−1.C5F11(OCF2)OPO(ONa)2
2−2.HC6F12(OCF2)OPO(ONa)2
2−3.C8F17(OCF2)OPO(ONa)2
2−4.C10F21(OCF2)OPO(ONa)2
2−5.C12F25(O−CF2)OPO(ONa)2
2−6.C3F7(OC2F4)OPO(ONa)2
2−7.C4F9(OC2F4)OPO(ONa)2
2−8.C5F11(OC2F4)OPO(ONa)2
2−9.H−C6F12−(OC2F4)−OPO(ONa)2
2−10.C7F15(OC2F4)OPO(ONa)2
2−11.C9F19(OC2F4)OPO(ONa)2
2−12.C11F23(OC2F4)OPO(ONa)2
2−13.C3F7(OCF2)6OPO(ONa)2
2−14.C4F9(OCF2)6OPO(ONa)2
2−15.C5F11−(O−CF2)5−O−PO(ONa)2
2−16.H−C6F12−(OCF2)3OPO(ONa)2
2−17.C3F7O(CF2)3COONa
2−18.C4F9O(CF2)3COONa
2−19.C5F11O(CF2)3COONa
2−20.H−C7F14−〔O(CF2)3〕−OCH(COONa)2
2−21.C8F17O(CF2)3OCH(COONa)2
2−22.C3F7O(CF2)5COONa
2−23.C4F9O(CF2)5COONa
2−24.C5F11O(CF2)5COONa
2−25.C7F15O(CF2)5COONa
2−26.C3F7(OC2F4)5COONa
2−27.C4F9(OC2F4)2COONa
2−28.C5F11−(O−C2F4)2−COONa
2−29.H−C7F14(OC2F4)2COONa
2−30.C9F19(OC2F4)2COONa
2−31.C2F5(OC2F4)3COONa
2−32.C2F5(OC2F4)5COONa
2−33.C3F7(OC2F4)4COONa
2−34.C4F9(OC2F4)3COONa
2−35.C5F11(OC2F4)3NHCOCH(COONa)2
2−36.H−C6F12(OC2F4)3NHCOCH(COONa)2
2−37.C4F9(OC2F4)2OCF2COONa
2−38.C5F11(OC2F4)2OCF2COONa
2−39.C7F15(OC2F4)2OCF2COONa
2−40.C4F9−OCF2−〔O(CF2)5〕−COOK
2−41.C5F11−OCF2−〔O(CF2)5〕−COOK
2−42.H−C6F12−OCF2−〔O(CF2)5〕−COOK
2−43.C4F9−(OC2F4)5−〔O(CF2)3〕−COOK
2−44.C5F11−(OC2F4)2−〔O(CF2)3〕−COOK
2−45.C6F13−(OC2F4)2−〔O−(CF2)3〕−COOK
2−46.C12F25OCF2OSO3Na
2−47.C7F15OC2F4OC3H6SO3Na
2−48.C4F9−(OCF2)6−OSO3Na
2−49.H−C5F10−(OCF2)5−OC3H6SO3Na
2−50.H−C6F12−(OCF2)3−OSO3Na
2−51.C5F11−(OC2F4)2−OC3H6SO3Na
2−52.C7F15−(OC2F4)2−OSO3Na
2−53.C3F7−(OC2F4)4−OC3H6−SO3Na
2−54.C4F9−(OC2F4)3−O−SO3Na
2−55.H−C5F10−(OC2F4)3−OC3H6−SO3Na
2−56.C5F11OCF2−〔O(CF2)5〕−OSO3Na
2−57.C4F9−(OC2F4)2−〔O(CF2)3〕−OSO3Na
2−58.(HCF2)3C−(OC2F4)3−OSO3Na
2−59.(CF3)2CFCF2CF2−(OCF2)5−OC3H6−SO3Na
2−60.C11F23(OC2F4)OSO3Na
2−61.C4F9−(OC2F4)3−NHCO−(CH2)3−N+(CH3)3・Br−
2−62.C5F11−(OC2F4)2−NHCO−(CH2)3−N+(CH3)3・Br−
2−63.HC6F12−(OC2F4)2−NHCO−(CH2)3−N+(CH3)3・Br−
2−64.C4F9−(OC2F4)3−OCH2−N+(CH3)2(C2H4OH)・Br−
2−65.C5F11−(OC2F4)2−OCH2−N+(CH3)2(C2H4OH)・Br−
2−66.HC6F12−(OC2F4)2−OCH2−N+(CH3)2(C2H4OH)・Br−
2−67.C5F11−OCF2−(OC2F4)−NHCO−(CH2)3−N+(CH3)3・Br−
2−68.(CF3)3C−(OC2F4)3−OCH2−N+(CH3)2(C2H4OH)・Br−
2−69.C12F25OCF2OH
2−70.C7F15OC2F4OH
2−71.C4F9−(OCF2)6−OC3H6OH
2−72.C5F11−(OCF2)5−OC3H6OH
2−73.HC6F12−(OCF2)3−OH
2−74.C5F11−(OC2F4)2−OC3H6OH
2−75.C7F15−(OC2F4)2−OC3H6OH
2−76.C3F7−(OC2F4)4−OC3H6OH
2−77.HC4F8−(OC2F4)3−OC(C2H4OH)3
2−78.C5F11−(OC2F4)3−OC3H6OH
2−79.C5F11OCF2O(CF2)5OH
2−80.C4F9−(OC2F4)2−O(CF2)3OH
2−81.(CF3)3C−(OC2F4)3−OH
2−82.(HCF2)2CFCF2CF2−(OCF2)5−OH
2−83.C11F23(OC2F4)4OH
上記一般式(3)で表される化合物の合成方法については、特表平10−500950号公報、同11−50436号公報を参考にすることが出来る。
一般式(4)で示されるフッ素系界面活性剤の例
3−1.(CF3O)3−(PFC)−CONHC3H6N+(CH3)2C2H4COO−
3−2.(CF3O)3−(PFC)−CONHC3H6N+(CH3)2C2H4SO3 −
3−3.(CF3O)−(PFC)−CONHC3H6N+(CH3)2C2H4SO3 −
3−4.(CF3O)3−(PFC)−CON(C3H6SO3 −)C3H6N+(CH3)2H
3−5.(CF3O)−(PFC)−CON(C3H6SO3 −)C3H6N+(CH3)2H
3−6.[(CF3O)3−(PFC)−COOCH2]2CH−CONHC3H6N+(CH3)2C2H4SO3 −
3−7.[(CF3O)2−(PFC)−COOCH2]2CH−CONHC3H6N+(CH3)2C2H4SO3 −
3−8.[(CF3O)−(PFC)−COOCH2]2CH−CONHC3H6N+(CH3)2C2H4SO3 −
3−9.(CF3O)3−(PFC)−CONHC3H6N+(CH3)2C2H4OH・Cl−
3−10.(CF3O)2−(PFC)−CONHC3H6N+(CH3)2C2H4OH・Cl−
3−11.(CF3O)−(PFC)−CONHC3H6N+(CH3)2C2H4OH・Cl−
3−12.(CF3O)3−(PFC)−CONHC3H6N+(CH3)2H・Cl−
3−13.(CF3O)2−(PFC)−CONHC3H6N+(CH3)2H・Cl−
3−14.(CF3O)−(PFC)−CONHC3H6N+(CH3)2H・Cl−
3−15.[(CF3O)3−(PFC)−COOCH2]2C(CH3)N+(CH3)2H・Cl−
3−16.[(CF3O)2−(PFC)−COOCH2]2C(CH3)N+(CH3)2H・Cl−
3−17.[(CF3O)−(PFC)−COOCH2]2C(CH3)N+(CH3)2H・Cl−
3−18.[(CF3O)3−(PFC)−COOCH2]2CHC3H6N+(CH3)2H・Cl−
3−19.[(CF3O)2−(PFC)−COOCH2]2CHC3H6N+(CH3)2H・Cl−
3−20.[(CF3O)−(PFC)−COOCH2]2CHC3H6N+(CH3)2H・Cl−
3−21.(CF3O)3−(PFC)−COO(C2H4O)12H
3−22.(CF3O)2−(PFC)−COO(C2H4O)12H
3−23.(CF3O)−(PFC)−COO(C2H4O)12H
3−24.(CF3O)3−(PFC)−COO(C2H4O)15CH3
3−25.(CF3O)2−(PFC)−COO(C2H4O)15CH3
3−26.(CF3O)−(PFC)−COO(C2H4O)15CH3
3−27.[(CF3O)3−(PFC)−COOCH2]2CHC3H6OH
3−28.[(CF3O)2−(PFC)−COOCH2]2CHC3H6OH
3−29.[(CF3O)−(PFC)−COOCH2]2CHC3H6OH
3−30.(CF3O)3−(PFC)−CONHC3H6COONa
3−31.(CF3O)2−(PFC)−CONHC3H6COONa
3−32.(CF3O)−(PFC)−CONHC3H6COOK
3−33.(CF3O)3−(PFC)−CONHC3H6SO3Na
3−34.(CF3O)2−(PFC)−CONHC3H6SO3Na
3−35.(CF3O)−(PFC)−CONHC3H6SO3K
3−36.(CF3O)3−(PFC)−CON(C3H6SO3Na)C3H7
3−37.(CF3O)2−(PFC)−CON(C3H6SO3Na)C3H7
3−38.(CF3O)−(PFC)−CON(C3H6SO3Na)C3H7
3−39.[(CF3O)3−(PFC)−COOCH2]2C(CH3)COONa
3−40.[(CF3O)2−(PFC)−COOCH2]2C(CH3)COONa
3−41.[(CF3O)−(PFC)−COOCH2]2C(CH3)COONa
3−42.[(CF3O)3−(PFC)−COOCH2]2C(COONa)2
3−43.[(CF3O)2−(PFC)−COOCH2]2C(COONa)2
3−44.[(CF3O)−(PFC)−COOCH2]2C(COONa)2
3−45.[(CF3O)3−(PFC)−COOCH2]2C(CH3)SO3Na
3−46.[(CF3O)2−(PFC)−COOCH2]2C(CH3)SO3Na
3−47.[(CF3O)−(PFC)−COOCH2]2C(CH3)SO3Na
3−48.[(CF3O)3−(PFC)−COOCH2]2CHC3H6SO3Na
3−49.[(CF3O)2−(PFC)−COOCH2]2CHC3H6SO3Na
3−50.[(CF3O)−(PFC)−COOCH2]2CHC3H6SO3Na
ただし上記において、(PFC)はパーフルオロシクロヘキシレン基を表し、(CF3O)の置換位置は、カルボニル基を1位として、(CF3O)3の場合は3,4,5位であり、(CF3O)2の場合は3,4位であり、(CF3O)の場合は4位である。
上記一般式(4)で表される化合物の合成方法については、特開平10−158218号公報、特表2000−505803号公報を参考にすることが出来る。
プライマー層3に含有させるフッ素系界面活性剤としては、パーフルオロアルケニル構造を持つフッ素系界面活性剤が好ましく、プライマー層3中、10〜300μg/m2程度が好ましく、50〜150μg/m2がより好ましい。プライマー層3中のフッ素系界面活性剤の含有量を10〜300μg/m2程度とすることによって、効果の発現が良好であり、塗布の際にはじきや塗布ムラなどの塗布故障の誘発を抑制できるので好ましい。
本発明に好ましい市販のフッ素系界面活性剤としては、例えば具体的に、フタージェント100C、フタージェント150、フタージェント250、フタージェント300、フタージェント400SW(以上、ネオス社製)、ノベックHFE、ノベックEGC−1700、ノベック1720(以上、3M社製)、ゾニール、ゾニールFS(以上、デュポン社製)等の商品名で市場から入手でき、いずれも本発明で使用することができる。
また、プライマー層3には、樹脂やフッ素系界面活性剤の他に、必要に応じて例えば、シリカ(コロイダルシリカ)、アルミナ或はアルミナ水和物(アルミナゾル、コロイダルアルミナ、カチオン性アルミニウム酸化物又はその水和物、疑ベーマイト等)、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン等の無機微粒子等の無機微粒子や、プライマー層3を形成する下引き液の塗工性や帯電防止機能を付与する目的で従来公知のカチオン性界面活性剤、アニオン性活性剤などを用いることも好ましい。
プライマー層3は、例えば、結晶配向が完了する前のポリエステルフィルムに樹脂やフッ素系界面活性剤が含有した下引き液を塗布し、延伸、熱処理により結晶配向を完了させる方法によって形成することによって、高温での熱処理が可能であることや、均一で薄膜のプライマー層3が得られるので特に好ましい。この方法によってプライマー層3を積層する場合には、アクリル系樹脂は水に溶解又は乳化、懸濁し得るものが環境汚染や防爆性の点で好ましく、このようなアクリル系樹脂は反応性乳化剤や界面活性剤を用いた乳化重合、懸濁重合、ソープフリー重合、親水性基を有するモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、アクリルアミド、ビニルスルホン酸およびその塩など)との共重合など公知の方法によって作成することができる。
このプライマー層3上には、少なくともシアン染料層4Cが形成され、必要に応じて、イエロー染料層4Y、マゼンタ染料層4Mが形成される。
シアン染料層4Cは、シアン染料と、この染料を担持するバインダ樹脂とを主成分として形成されている。
シアン染料は、下記の一般式(1)で示されるインドアニリン系のシアン染料である。
(式中、R1及びR2は、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアラルキル基、又は置換又は非置換のアリール基が好ましく、より好ましくはエチル基もしくはプロピル基である。R3、R4、R5およびR6は、水素原子、ハロゲン原子、シアノ基、水酸基、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルコキシ基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアラルキル基、置換又は非置換のアリール基、置換又は非置換のアシル基、置換又は非置換のアシルアミノ基、又は置換又は非置換のスルホニルアミノ基を好ましく、その中でもR3、R4、R5およびR6が水素原子、もしくはR3、R6のいずれか一つがメチル基、もう片一方が水度原子、かつR4、R5が水素原子のものが好ましい。R7は、水素原子が好ましい。R8は、水素原子又は置換又は非置換のアルキル基が好ましく、具体的には水素原子、メチル基、エチル基のいずれかが好ましい。R9は、水素原子又はハロゲン原子が好ましい。R10は、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のシクロアルキル基、置換又は非置換のアラルキル基、置換又は非置換のアリール基、又は置換又は非置換のアルコキシ基が好ましく、具体的にはメチル基がより好ましい。)
以下に、シアン染料層4Cに用いることができるインドアニリン系のシアン染料の具体例を例示するが、これらに限定されるものではない。
なお、シアン染料層4Cには、染料の結晶化の抑制や色相の調整、各種保存性の向上などの目的で、上記インドアニリン系の色素に、他の従来公知の感熱昇華転写方式の感熱転写記録用シートに使用される、アゾ系、アゾメチン系、メチン系、アントラキノン系、キノフタロン系、ナフトキノン系などの構造を持つ染料を混合しても良い。
シアン染料を担持するバインダ樹脂は、従来公知の感熱転写記録用インクシートに使用されるバインダ樹脂を使用することができ、例えば、セルロース付加化合物、セルロースエステル、セルロースエーテル等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセトアセタール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアセタール樹脂、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸−ポリ塩化ビニル共重合体、ポリアクリルアミド、スチレン系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸系エステル、ポリ(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸共重合体等のビニル系樹脂、ゴム系樹脂、アイオノマー樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂の中でも、保存性の優れたポリビニルブチラール、ポリビニルアセトアセタール又はセルロース系樹脂が好ましい。
シアン染料層4Cのバインダ樹脂としては、更に、特公平5−78437号公報に記載のイソシアナート類と、ポリビニルブチラール、ポリビニルホルマール、ポリエステルポリオール及びアクリルポリオールから選択される活性水素を有する化合物との反応生成物、イソシアナート類が、ジイソシアナート又はトリイソシアナートである上記反応生成物、及び活性水素を有する化合物100質量部に対して、10〜200質量部の量である上記反応生成物;
天然及び/又は半合成水溶性高分子の分子内水酸基をエステル化及び/又はウレタン化した有機溶媒可溶性高分子、天然及び/又は半合成水溶性高分子;
特開平3−264393号公報に記載のアセチル化度が2.4以上かつ総置換度が2.7以上の酢酸セルロース;
ポリビニルアルコール(Tg=85℃)、ポリ酢酸ビニル(Tg=32℃)、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体(Tg=77℃)等のビニル樹脂、ポリビニルブチラール(Tg=84℃)、ポリビニルアセトアセタール(Tg=110℃)等のポリビニルアセタール系樹脂、ポリアクリルアミド(Tg=165℃)等のビニル系樹脂、脂肪族ポリエステル(Tg=130℃)等のポリエステル樹脂等;
特開平7−52564号公報に記載のイソシアナート類と、含有するビニルアルコール部分の質量が15〜40%であるポリビニルブチラールとの反応生成物、上記イソシアナート類がジイソシアナート又はトリイソシアナートである上記反応生成物;
特開平7−32742号公報に記載の一般式(I)のフェニルイソシア変性ポリビニルアセタール樹脂;
特開平6−155935号公報に記載のイソシアナート反応性セルロース又はイソシアナート反応性アセタール樹脂の1種と、イソシアナート反応性アセタール樹脂、イソシアナート反応性ビニル樹脂、イソシアナート反応性アクリル樹脂、イソシアナート反応性フェノキシ樹脂及びイソシアナート反応性スチロール樹脂から選ばれる1種の樹脂及びポリイソシアナート化合物を含有する組成物の硬化物;
ポリビニルブチラール樹脂(好ましくは分子量が6万以上、ガラス転移温度が60℃以上、より好ましくは70℃以上110℃以下、ビニルアルコール部分の質量%がポリビニルブチラール樹脂中10〜40%、好ましくは15〜30%のもの);
アクリル変性セルロース系樹脂、セルロース系樹脂としては、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酪酢酸セルロース等のセルロース系樹脂(好ましくはエチルセルロース)等を用いることができる。
前記各種のバインダ樹脂は、その1種を単独で使用することもできるし、又その2種以上を併用することもできる。
このような構成からなるシアン染料層4Cは、基材2上にプライマー層3を介して形成されていることによって、プライマー層3中のフッ素系界面活性剤が拡散し、フッ素系界面活性剤のフッ素原子と染料分子とのファンデルワールス力や、芳香環を持つフッ素系界面活性剤とインドアニリン系シアン染料がπ−πスタッキング相互作用により相互安定化され、熱転写前は、染料の結晶化を抑制し、熱転写時には、相互作用がサーマルヘッドの熱により弱まることにより、濃度発現性が高まる。また、熱転写時には、フッ素置換基の排他作用により、熱転写受像シートとの剥離性が増し、シアン染料層4Cと熱転写受像シートとの融着やシアン染料層4Cがプライマー層3に十分保持され、シアン染料層4Cごと熱転写受像シートに転写されてしまう異常転写も抑制される。また、サーマルヘッドの熱エネルギを印加せず、シアン染料を転写させない白地領域に、シアン染料が転写してしまう、いわゆる地かぶりが発生することも抑制できる。
必要に応じて設けるイエロー染料層4Y及びマゼンタ染料層4Mも、シアン染料層4Cと同様に、染料とこの染料を担持するバインダ樹脂とを主成分として形成されている。
イエロー染料層4Y、マゼンタ染料層4Mに含有させる染料としては、例えば、ジアリールメタン系、チアゾール系等のメチン系、インドアニリン、アセトフェノンアゾメチン、イミダゾールアゾメチン、ピリドンアゾメチンに代表されるアゾメチン系、キサンテン系、オキサジン系、ジシアノスチレンに代表されるシアノメチレン系、アジン系、チアジン系、ベンゼンアゾ系、ピリドンアゾ、イソチアゾールアゾ、イミダゾールアゾ、ピロールアゾ、ジスアゾ、トリアゾールアゾ等のアゾ系、ナフトキノン系、アントラキノン系、キノフタロン系、ローダミンラクタム系などが挙げられる。
具体的には、C.I.(Color Index)ディスパースイエロー3、7、23、51、54、60、79、141等、C.I.(Color Index)ディスパースレッド1、59、60、73、135、167等、C.I.(Color Index)ディスパースバイオレット4、1326、31、36、56等、C.I.(Color Index)ディスパースオレンジ149等、C.I.(Color Index)ソルベントイエロー14、16、29、56、201等、C.I.(Color Index)ソルベントレッド18、19、23、24、25、81、143、182等、C.I.(Color Index)ソルベントバイオレット13等が挙げられる。
シアン染料層4C、イエロー染料層4Y、マゼンタ染料層4Mを形成する各染料層形成用塗工液中の染料の含有量は、染料層4を構成する全成分に対して、5〜90重量%で配合することが好ましく、さらに10〜70重量%であることが好ましい。
これら染料層4と並んで、基材2の一方の面2aに設けられる離型性層5は、プライマー層3と保護層6の間に設けられ、保護層6の剥離性を良好にする。離型性層5は、基材2と保護層6との離型性が適当でない場合、基材2と保護層6との接着性を調整し、保護層6の離型を良好に行うために設けられる。
離型性層5は、例えば、シリコーンワックス等の各種ワックス類、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂、水溶性樹脂、セルロース誘導体樹脂、ウレタン系樹脂、酢酸系ビニル樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、アクリルビニルエーテル系樹脂、無水マレイン酸樹脂等の各種樹脂等やこれらの混合物で形成されている。
離型性層5上に積層される保護層6は、熱転写性であり、サーマルヘッド等の加熱手段によって加熱されることにより、熱転写受像シートの染料等が転写して形成されたカラー画像上に転写され、カラー画像の表面を覆って保護する透明な樹脂層からなる。
保護層6を形成する樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル系樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリルウレタン樹脂、ポリカーボネート樹脂、これらの各樹脂のエポキシ変性樹脂、これらの樹脂をシリコーン変性させた樹脂、これらの各樹脂の混合物、電離放射線硬化性樹脂、紫外線遮断性樹脂等が挙げられる。好ましい樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリスチレン、アクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、エポキシ変性樹脂が挙げられる。
この保護層6は、更に、離型性層5とは反対側の面に接着層を有し、2層構造としてもよい。この接着層は、保護層6が熱転写受像シートに転写された際に、保護層6と熱転写受像シートとの間に介在し、保護層6のカラー画像への接着の役割を担い、保護層6の接着性を向上させる。
この接着層を構成する樹脂としては、従来より公知である粘着剤、感熱接着剤等が配合されている樹脂をいずれも使用でき、ガラス転移温度(Tg)が30〜80℃の熱可塑性樹脂であるのことが好ましい。このような熱可塑性樹脂の具体例として、例えば、ポリエステル系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂、アクリル系樹脂、ブチラール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、塩化ビニル樹脂等を挙げることができる。接着層には、紫外線吸収剤、酸化防止剤、蛍光増白剤等の添加剤を含有させても良い。
基材2の他方の面2bに形成される耐熱滑性層7は、サーマルヘッド等の加熱手段と基材2との熱融着を防止し、走行を滑らかに行うとともに、サーマルヘッドの付着物を除去する目的で設けられる。
この耐熱滑性層7に用いる樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース、酢酪酸セルロース、ニトロセルロース等のセルロース系樹脂、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン等のビニル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルアミド、アクリロニトリルースチレン共重合体等のアクリル系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、クマロンインデン樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン変性またはフッ素変性ウレタン等の天然または合成樹脂の単体または混合物が用いられる。耐熱滑性層7の耐熱性をより高めるために、上記の樹脂のうち、水酸基系の反応性基を有している樹脂を使用し、架橋剤としてポリイソシアネート等を併用して、架橋樹脂層とすることが好ましい。
更に、サーマルヘッドとの摺動性を付与するために、耐熱滑性層7に固形あるいは液状の離型剤または滑剤を加えて耐熱滑性をもたせてもよい。離型剤または滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、パラフィンワックス等の各種ワックス類、高級脂肪族アルコール、オルガノポリシロキサン、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、フッ素系界面活性剤、金属石鹸、有機カルボン酸及びその誘導体、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、タルク、シリカ等の無機化合物の微粒子等を用いることができる。
耐熱滑性層7に含有される滑剤の量は、5〜50質量%、好ましくは10〜30質量%程度である。このような耐熱滑性層7の厚みは、0.1〜10μm程度、好ましくは0.3〜5μm程度とすることができる。
染料層4Y、4M、4C、離型性層5、保護層6、耐熱滑性層7、接着層の塗工方法としては、従来公知の方法が用いられる。例えば、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ロールコーティング法、ロッドバーコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、押し出し塗布方法、カーテン塗布方法あるいは米国特許第2,681,294号公報に記載のホッパーを使用するエクストルージョンコート法が好ましく用いられる。
上述したプライマー層3、染料層4Y、4M、4C、離型性層5、保護層6、耐熱滑性層7、接着層には、以下に示すワックス、紫外線吸収剤等の各種添加剤を適宜添加するようにしてもよい。
ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、ポリエステルワックス、ポリスチレン系パウダー、オレフィン系パウダー、マイクロクリスタリンワックス、カルナバワッ
クス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックス、各種低分子量ポリエチレン、木ロウ、ミツロウ、鯨ロウ、羊毛ロウ、セラックワックス、キャンデリラワックス、ペトロラクタム、一部変性ワックス、脂肪酸エステル、脂肪酸アミド等を挙げることができる。
紫外線吸収剤としては、サリチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系等の紫外線吸収剤があげられ、例えば具体的にはTinuvin P、Tinuvin 234、Tinuvin 320、Tinuvin 326、Tinuvin 327、Tinuvin 328、Tinuvin 312、Tinuvin 315(以上、チバガイギー社製)、Sumisorb−110、Sumisorb−130、Sumisorb−140、Sumisorb−200、Sumisorb−250、Sumisorb−300、Sumisorb−320、Sumisorb−340、Sumisorb−350、Sumisorb−400(以上、住友化学工業(株)製)、Mark LA−32、Mark LA−36、Mark 1413(以上、アデカアーガス化学(株)製)等の商品名で市場から入手でき、いずれも本発明で使用することが出来る。
また、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとがランダム共重合したTg60℃以上、好ましくは80℃以上のランダム共重合体を用いることも出来る。
上記の反応性紫外線吸収剤は、従来公知のサリシレート系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、置換アクリロニトリル系、ニッケルキレート系、ヒンダードアミン系等の非反応性紫外線吸収剤に、例えば、ビニル基やアクリロイル基、メタアクリロイル基等の付加重合性二重結合、或いは、アルコール系水酸基、アミノ基、カルボキシル基、エポキシ基、イソシアネート基等を導入したものを使用することができる。具体的には、UVA635L、UVA633L(以上、BASFジャパン(株)製)、PUVA−30M(大塚化学(株)製)等の商品名で市場から入手でき、何れも本発明で使用することが出来る。
以上のような反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体における反応性紫外線吸収剤の量は、10〜90質量%、好ましくは30〜70質量%の範囲である。また、このようなランダム共重合体の分子量は、5000〜250000程度、好ましくは9000〜30000程度とすることが出来る。上述した紫外線吸収剤、及び、反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体は、各々単独で含有させても良いし、両方を含有させても良い。反応性紫外線吸収剤とアクリル系モノマーとのランダム共重合体の添加量は、含有させる層に対し5〜50質量%の範囲で含有させることが好ましい。
上記紫外線吸収剤以外にも、他の耐光化剤を含有させても良い。ここで、耐光化剤とは、光エネルギー、熱エネルギー、酸化作用など、染料を変質又は分解する作用を吸収又は遮断して染料の変質や分解を防止する薬剤であり、具体的には上述した紫外線防止剤の他、従来合成樹脂の添加剤などとして知られている酸化防止剤、光安定剤があげられる。その場合も、離型層、保護層、接着層のうち少なくとも1層に含有させてよいが、特に好ましくは、接着剤層に含有させる。
酸化防止剤としては、フェノール系、モノフェノール系、ビスフェノール系、アミン系等の一次酸化防止剤、又は硫黄系、リン系等の二次酸化防止剤が挙げられる。また、光安定剤としてはヒンダードアミン系等が挙げられる。
上記の紫外線吸収剤を含む、耐光化剤の使用量は、特に限定されないが、好ましくは含有させる層を形成する樹脂100質量部当たり0.05〜10質量部、好ましくは3〜10質量部の割合で使用する。耐光化剤の使用量を樹脂100質量部当たり0.05〜10質量部とすることによって、耐光化剤としての効果が得られ、多すぎず不経済とならない。
また、上記の耐光化剤の他にも、例えば、蛍光増白剤、充填剤等の各種の添加剤も同時に接着剤層に適当な量で添加することができる。
以上のよう構成からなる熱転写記録媒体1からイエロー、マゼンタ、シアンの色素及び保護層6が転写される熱転写受像シートは、詳細を図示しないが、支持体上に、中間層を介して、色素を受容する受容層が形成されている。
支持体は、受容層を保持するという役割を有するとともに、熱転写時には加熱されるため、加熱された状態でも取り扱い上、支障のない程度の機械的強度を有することが好ましい。
このような支持体の材料としては、特に限定されないが、例えば、コンデンサーペーパー、グラシン紙、硫酸紙、又はサイズ度の高い紙、合成紙(ポリオレフィン系、ポリスチレン系)、上質紙、アート紙、コート紙、キャストコート紙、壁紙、裏打用紙、合成樹脂又はエマルジョン含浸紙、合成ゴムラテックス含浸紙、合成樹脂内添紙、板紙等、セルロース繊維紙、或いはポリエステル、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリウレタン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、セルロース誘導体、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリスチレン、アクリル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ナイロン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、テトラフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル、ポリビニルフルオライド、テトラフルオロエチレン・エチレン、テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロピレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド等のフィルムが挙げられる。支持体としては、これらの合成樹脂に白色顔料や充填剤を加えて成膜した白色不透明フィルム又は発泡させた発泡シートを使用こともでき、特に限定されるものではない。
また、支持体としては、任意の組み合わせによる積層体も使用できる。代表的な積層体の例として、セルロース繊維紙と合成紙或いはセルロース合成紙とプラスチックフィルムとの合成紙が挙げられる。これらの支持体の厚みは任意でよく、通常10〜300μm程度である。
支持体では、より高い印字感度を有すると共に、濃度ムラや白抜けのない高画質を得るためには、微細空隙を有する層を存在させることが好ましい。微細空隙を有する層としては、内部に微細空隙を有するプラスチックフィルムや合成紙を用いることが出来る。また、各種支持体の上に、各種の塗工方式で微細空隙を有する層を形成できる。微細空隙を有するプラスチックフィルム又は合成紙としては、ポリオレフィン、特にポリプロピレンを主体として、それに無機顔料及び/又はポリプロピレンと非相溶なポリマーをブレンドし、これらをボイド(空隙)形成開始剤として用い、これらの混合物を延伸、成膜したプラスチックフィルム又は合成紙が好ましい。これらがポリエステル等を主体としたものの場合には、その粘弾性的あるいは熱的性質から、クッション性、及び断熱性が、ポリプロピレンを主体としたものに比較して劣るため、印字感度に劣り、濃度ムラなども生じやすい。
これらの点を考慮すると、プラスチックフィルム及び合成紙の20℃における弾性率は5×108Pa〜1×1010Paが好ましい。また、これらのプラスチックフィルムや合成紙は、通常2軸延伸により成膜されたものであるが故に、これらは加熱により収縮する。これらを110℃下で60秒放置した場合の収縮率は0.5〜2.5%である。上述のプラスチックフィルムや合成紙は、それ自体が、微細空隙を含む層の単層で合っても良いし、複数の層構成であっても良い。複数の層構成の場合には、その構成する全ての層に微細空隙を含有しても良いし、微細空隙が存在しない層が含有しても良い。このプラスチックフィルムや合成紙には、必要に応じて隠蔽剤として、白色顔料を混入させてもよい。また、白色性を増すために、蛍光増白剤等の添加剤を含有させても良い。微細空隙を有する層は、30〜80μmの厚みが好ましい。
微細空隙を有する層としては、支持体の上にコーティング法によって微細空隙を有する層を形成することも可能である。使用するプラスチック樹脂としては、ポリエステル、ウレタン樹脂、ポリカーボネート、アクリル樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル等の公知の樹脂を単独或いは複数をブレンドして使用することができる。
また、必要に応じて、支持体の受像層を設ける側とは反対側の面に、カール防止の目的として、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート等の樹脂や合成紙の層を設けることが出来る。貼り合わせ方法としては、例えば、ドライラミネーション、ノンソルベント(ホットメルト)ラミネーション、ECラミネーション法等の公知の積層方法が使用できるが、好ましい方法はドライラミネーション及びノンソルベントラミネーション法である。ノンソルベントラミネーション法に好適な接着剤としては、例えば、武田薬品工業(株)製のタケネート720L等が挙げられ、ドライラミネーションに好適な接着剤としては、例えば、武田薬品工業(株)製のタケラックA969/タケネートA−5(3/1)、昭和高分子(株)製の、ポリゾール PSA SE−1400、ビニロール PSA AV−6200シリーズ等が挙げられる。これらの接着剤の使用量としては、固形分で約1〜8g/m2、好ましくは2〜6g/m2の範囲である。
上述したような、プラスチックフィルムと合成紙、或いはそれら同士、或いは各種紙とプラスチックフィルムや合成紙、等を積層する場合、接着層により貼り合わせることが出来る。
上記支持体と熱転写受像層との接着強度を大きくする等の目的で、支持体の表面に各種プライマー処理やコロナ放電処理を施すのが好ましい。
中間層は、支持体と受像層との間に、少なくとも1層以上設けられることが好ましい。中間層は、接着層(プライマー層)、バリアー層、紫外線吸収層、発泡層、帯電防止層等、受像層と基材の間に設ける層すべてを意味し、公知のものは、必要に応じていずれも使用できる。さらに、支持体のギラツキ感やムラを隠蔽するために、中間層に酸化チタン等の白色顔料を添加すると、支持体の選択の自由度が広がるので好ましい。中間層中の白色顔料の含有量は、樹脂固形分100質量部に対し、白色顔料固形分30〜300質量部が好ましいが、隠蔽性を高めるには100〜300質量部の範囲で用いることがさらに好ましい。
中間層としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、或いは官能基を有する熱可塑性樹脂を、各種の添加剤その他の手法を用いて硬化させた層を用いることができる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリエステル、塩素化ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート、アイオノマー、単官能及び/又は多官能水酸基含有のプレポリマーをイソシアネート等で硬化させた樹脂等を使用することが出来る。
受像層は、支持体の一方の面に、バインダ樹脂と、必要に応じて離型剤等の各種添加剤から構成されている。
バインダ樹脂は、公知のものを用いることができ、染料が染着しやすいものを用いることが好ましい。具体的には、ポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のハロゲン化樹脂、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エステルなどのビニル系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、フェノキシ樹脂、エチレンやプロピレンなどのオレフィンと他のビニル系モノマーとの共重合体、ポリウレタン、ポリカーボネート、アクリル樹脂、アイオノマー、セルロース誘導体等の単体、又は混合物を用いることができ、これらの中でもポリエステル系樹脂、及びビニル系樹脂が好ましい。
受像層は、染料層との熱融着を防止するために、離型剤を添加することが好ましい。離型剤としては、燐酸エステル系可塑剤、フッ素系化合物、シリコーンオイル(反応硬化型シリコーンを含む)等を使用することができるが、この中でもシリコーンオイルが好ましい。シリコーンオイルとしては、ジメチルシリコーンを始め、各種の変性シリコーンを用いることができる。具体的には、アミノ変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルコール変性シリコーン、ビニル変性シリコーン、ウレタン変性シリコーン等を用い、これらをブレンドしたり、各種の反応を用いて重合させたりして用いることもできる。離型剤は、1種もしくは2種以上のものが使用される。また、離型剤の添加量は、受像層形成用樹脂100質量部に対し、0.5〜30質量部が好ましい。離型剤の添加量を樹脂100質量部に対し、0.5〜30質量部とすることによって、熱転写記録媒体1と熱転写受像シートの受像層との融着もしくは印画感度の低下が抑えられる。尚、これらの離型剤は、受像層に添加せず、受像層上に別途離型層として設けても良い。
受像層は、支持体上に、水又は有機溶剤などの溶媒に溶解又は分散させた塗布液を、バーコーター、グラビア印刷法、スクリーン印刷法、ロールコーティング法、グラビア版を用いたリバースロールコーティング法、エアナイフコーティング法、スプレーコーティング法、カーテン塗布方法、エクストルージョンコート法などの通常の方法で塗布し、乾燥して形成することができる。中間層の形成手段も、上記の受像層の場合と同様の方法で行われる。
また、受像層は、上記のように支持体上に直接塗布液を塗布し、乾燥して形成するだけでなく、別の支持体に受像層を予め形成しておき、別の支持体に形成した受容層を熱転写受像シートの支持体上に転写形成してもよい。また、各層を2層以上を同時に塗布することもでき、特に全ての層を一回の塗布で済ます同時塗布を行うこともできる。
受像層の厚さは、塗布乾燥後の膜厚で、0.1〜10μm程度が好ましい。
本発明で用いられる熱転写受像シートは、熱転写プリンタに枚葉で供給されてもロール形態で供給されても良い。枚葉供給とは、例えば、熱転写受像シートを一定サイズにカットし、50枚程度を1セットとしてカセットに入れ、熱転写プリンタに装着して使用される形態を指す。又、ロール形態とは、その形で熱転写プリンタに受像シートを供給し、印画後、所望のサイズに切断して使用する形態のことである。特に後者は、2枚差し等の給紙不良や排出不良等の搬送系のトラブルが解消される他、印画可能枚数の大容量化にも対応することが出来るため好ましい。
ロール形態で受像シートを供給する場合、特に、上述したようなハガキ仕様にした場合や、ラベルやシールタイプの熱転写受像シートを用いる場合は、裏面側に形成された郵便番号枠等のデザインマークや、シールのハーフカットの位置に対して切断位置を合わせるために、検知マークを裏面側に設けてもよい。
以上のような熱転写受像シートの色素受容層に対して、上述した熱転写記録媒体1のイエローの染料層4Y、マゼンタの染料層4M、シアンの染料層4Cを順次、サーマルヘッド等の加熱手段により加熱して、イエロー、マゼンタ、シアンの染料を転写して、色素受容層によって染料が保持され、カラー画像を形成した後、保護層6を加熱して、離型性層5との界面で剥離し、保護層6をカラー画像上に転写して、保護層6によって保護されたカラー画像を形成することができる。
熱転写記録媒体1では、基材2上に、フッ素系界面活性剤が含有されたプライマー層3が形成され、このプライマー層3上に、イエローの染料層4Y、マゼンタの染料層4M、シアンの染料層4Cが形成され、これらの中でも、一般式(1)に示すインドアニリン系のシアン染料が含有されているシアンの染料層4Cにおいて、プライマー層3中にフッ素系界面活性剤が拡散することによって、フッ素系界面活性剤により、熱転写前は、シアン染料の結晶化を抑制でき、熱転写時には、濃度発現性を高めることができる。また、熱転写時には、フッ素置換基の排他作用により、熱転写受像シートとの剥離性が増し、シアン染料層4Cと熱転写受像シートとの融着やシアン染料層4Cごと熱転写受像シートに転写されてしまう異常転写も抑制される。また、熱転写記録媒体1では、サーマルヘッドの熱エネルギを印加せず、シアン染料を転写させない白地領域に、シアン染料が転写してしまう、いわゆる地かぶりが発生することも抑制できる。
これにより、この熱転写記録媒体1では、高濃度で、高品質な画像を形成することができ、更に、高速印画を行っても、シアン染料層4Cと熱転写受像シートとの融着や異常転写を抑制でき、高濃度で、高品質な画像を形成することができ、熱転写の印画速度の高速化や、熱転写画像の高濃度化、高品質化の要求に対応することができる。
以下、本発明を適用した熱転写記録媒体について、実施例及び比較例を挙げて具体的に説明する。
〈実施例1〉
実施例1では、先ず、基材として、厚さ4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルム(商品名ルミラー 東レ(株)製)の一方の面に、下記表1に示す組成の背面層(耐熱滑性層)塗工液をダイコーティングにより、乾燥膜厚が0.5μm、となるように塗工、乾燥し、50℃で5日間の条件で硬化して背面層を形成した。他の面に、下記表2に示す組成のプライマー層を乾燥膜厚が0.1μとなるようにグラビアコーティングにより塗工して乾燥し、プライマー層を形成した。プライマー層中に含有させたフッ素系界面活性剤は、一般式(2)に示すフッ素系界面活性剤である。
次に、上記で得られた基材のプライマー層側に、以下の表3に示すシアンインクを乾燥膜が0.5μmとなるように塗工、乾燥して、シアン染料層を形成し、熱転写記録媒体を作製した。
〈実施例2〉
実施例2では、実施例1において、プライマー層塗工液を以下の表4に示す組成に代えた以外は同様にして熱転写記録媒体を作製した。プライマー層中に含有させたフッ素系界面活性剤は、一般式(2)に示すフッ素系界面活性剤である。
〈実施例3〉
実施例3では、実施例1において、プライマー層塗工液を以下の表5に示す組成に代えた以外は同様にして熱転写記録媒体を作製した。プライマー層中に含有させたフッ素系界面活性剤は、一般式(2)に示すフッ素系界面活性剤である。
〈実施例4〉
実施例4では、実施例1において、プライマー層塗工液を以下表6に示す組成に代えた以外は同様にして熱転写記録媒体を作製した。プライマー層中に含有させたフッ素系界面活性剤は、一般式(2)に示すフッ素系界面活性剤である。
〈実施例5〉
実施例5では、実施例1において、プライマー層塗工液を以下表7に示す組成に代えた以外は同様にして熱転写記録媒体を作製した。プライマー層中に含有させたフッ素系界面活性剤は、一般式(2)に示すフッ素系界面活性剤である。
〈実施例6〉
実施例6では、実施例1において、プライマー層塗工液を以下表8に示す組成に代えた以外は同様にして熱転写記録媒体を作製した。プライマー層中に含有させたフッ素系界面活性剤は、一般式(2)に示すフッ素系界面活性剤である。
〈比較例1〉
比較例1では、実施例1において、プライマー層塗工液を以下表9に示す組成に代えた以外は同様にして熱転写記録媒体を作製した。
〈比較例2〉
比較例2では、実施例1において、プライマー層塗工液を以下表10に示す組成に代えた以外は同様にして熱転写記録媒体を作製した。
〈比較例3〉
比較例3では、実施例1において、シアン染料層のインドアニリン染料をアントラキノン系染料の青色403号(日本化薬(株)製)を6重量部に代え、プライマー層塗工液を以下表11に示す組成に代えた以外は同様にして熱転写記録媒体を作製した。
〈比較例4〉
比較例4では、実施例1において、シアン染料層のインドアニリン染料をアントラキノン系染料のESC451(住友化学(株)製)を6重量部に代え、プライマー層塗工液を以下表12に示す組成に代えた以外は同様にして熱転写記録媒体を作製した。
熱転写受像シートは、次のようにして作製した。支持体として、片面をコロナ放電処理した厚み200μmの合成紙(王子油化製:YUPO FPG#200)のコロナ放電処理した面に、下記表13に示す組成の下引層形成用塗工液をワイヤーバーコーティング法により塗布・乾燥し、厚み0.5μmの下引層を形成した。
次いで、下記表14に示す組成の受像層形成塗工液を調製した後、ワイヤーバーにて塗布・乾燥し、厚み4μmの受像層を形成し、受像シートを得た。
以上のようにして作製した実施例1乃至実施例6、及び比較例1乃至比較例4の熱転写記録媒体、熱転写受像シートを用いて、転写濃度、異常転写、染料結晶化、地かぶりの評価を行った。評価結果を表15に示す。
転写濃度の評価方法は、実施例1乃至実施例4、比較例1乃至比較例4の熱転写記録媒体、熱転写受像シートを用い、昇華熱転写型プリンタ(UP−CR10L;ソニー社製)にセットし、マクベス濃度計RD−918(サカタインクス(株)製)にて、印画部の最高濃度(シアン)を測定した。尚、熱転写記録媒体は、純正メディアのシアン部に切り貼りし、シアンのベタ(階調値255/255:濃度マックス)の印画パターンで印画した。印画は、25℃50%環境下で行った。
転写濃度の評価は、以下のようにランク付けした。
◎:濃度が2.2以上
○:濃度が2.0以上
△:濃度が1.8以上
×:濃度が1.6以上
××:濃度が1.6未満
異常転写の評価方法は、次の条件にて、印画を行ない、印画適性を評価した。転写濃度評価の際と同様に、熱転写記録媒体、受像シートを用い、熱転写記録媒体は純正メディアのシアン部に切り貼りし、ブラックのベタ(階調値255/255:濃度マックス)の印画パターンで印画し、以下の基準で評価しランク付けした。尚、未保存の熱転写シート、受像シート、および55℃75%環境下に2日保存した熱転写シート、受像シートを用い、25℃50%環境下、45℃30%環境下の2環境にて印画を行った。
異常転写の評価は、以下のようにランク付けした。
◎:いずれの条件でも異常転写がなかった。
○:55℃75%保存メディアで45℃30%での印画時のみ、異常転写が認められた。
△:55℃75%保存メディアで25℃50%印画時、もしくは未保存メディアで45℃30%での印画時のいずれか一方で異常転写が認められた。
×:55℃75%保存メディアで25℃50%印画時、および未保存メディアで45℃30%での印画時のいずれにおいても異常転写が認められた。
××:未保存メディアで25℃50%印画時においても異常転写が認められた。
染料の結晶化の評価方法は、次の条件にて、熱転写記録媒体の保存を行ない、染料結晶化の有無を評価した。この手法で作成した熱転写記録媒体のシアン部を70℃60%で2日間、55℃75%で2日間、45℃60%で2日間、35℃80%で2日間の各条件で保存した。
染料の結晶化の評価は、以下の基準でランク付けした。
◎:いずれの条件でも染料の結晶化が認められなかった。
○:70℃60%の保存でのみ染料の結晶化が認められた。
△:70℃60%および55℃75%の保存で染料の結晶化が認められた。
×:70℃60%、55℃75%、および45℃60%の保存で染料の結晶化が認められた。
××:70℃60%、55℃75%、45℃60%および35℃80%のいずれの保存環境でも染料の結晶化が認められた。
転写濃度(地かぶり)の評価方法は、昇華熱転写型プリンタ(UP−CR10L;ソニー社製)にセットし、マクベス濃度計RD−918(サカタインクス(株)製)にて、印画部の最高濃度(シアン)を測定した。尚、熱転写記録媒体は純正メディアのシアン部に切り貼りし、白ベタ(階調値0/255:濃度ミニマム)の印画パターンで印画した。印画は25℃50%環境下で行った。
地かぶりの評価は、以下のようにランク付けした。
◎:濃度が0.02以下
○:濃度が0.04以下
△:濃度が0.06以下
×:濃度が0.08以下
××:濃度が0.08より大きい
以上の各評価におけるランク付けにおいて、商品性との関係は次のようになる。
◎:高い商品性が認められるレベル
○:商品として許容できるレベル
△:商品としてはマージンが少なく、許容できないレベル
×:商品として許容できないレベル
××:商品としてまったく許容できないレベル
表15に示す結果から、実施例1乃至実施例6では、プライマー層中にフッ素系界面活性剤が含有され、染料層に一般式(1)に示すインドアニリン系のシアン染料が含有されていることによって、プライマー層中のフッ素系界面活性剤が染料層に拡散し、拡散したフッ素界面活性剤により、染料の結晶化が抑制され、熱転写した場合には、濃度発現性が高くなり、最高濃度が高くなったことが分かる。また、実施例1乃至実施例6では、染料層に拡散したフッ素系界面活性剤によって、受像シートとの剥離性が良くなり、異常転写が抑制され、染料を転写させない白地領域に、染料が転写してしまう、いわゆる地かぶりも抑制できたことが分かる。
実施例1乃至実施例6の中でも、一般式(2)に示すフッ素系界面活性剤が含有させた実施例4及びプライマー層の樹脂にポリエステル樹脂を用いた実施例5は、一般式(2)に示すフッ素系界面活性剤とは異なるフッ素系界面活性剤を用い、プライマー層の樹脂にポリビニルピロリドンを用いた実施例6と比べて、結晶化及び地かぶりがより抑制され、より良好な効果が得られることが分かる。
更に、一般式(2)に示すフッ素系界面活性剤を含有し、プライマー層の樹脂にポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂を用いた実施例1乃至実施例3は、実施例4乃至実施例6と比べて、最高濃度がより高く、異常転写、結晶化、地かぶりが更に抑制され、ほぼすべての評価において、高い商品性が認められ、優れた効果が得られることが分かる。
これらの実施例に対して、比較例1乃至比較例4では、プライマー層中にフッ素系界面活性剤を用いず、シリコン系界面活性剤を用いたり、プライマー層を設けていないため、シアン染料層の保持力が弱く、異常転写が生じたり、最高濃度が低下してしまったことが分かる。また、比較例3及び比較例4では、染料にアントラキノン系の染料を用いているため、異常転写を生じたり、最高濃度が低くなり、効果が得られないことが分かる。
以上、実施例及び比較例より、基材と染料層との間に設けるプライマー層にフッ素系界面活性剤、特に一般式(2)乃至一般式(4)うち少なくと1種のフッ素系界面活性剤を含有し、染料層に一般式(1)に示すシアン染料を用いることによって、最高濃度が高く、異常転写や染料の結晶化、地かぶりを防止できることが分かる。
1 熱転写記録媒体、2 基材、3 プライマー層、4Y イエローの染料層、4M マゼンタの染料層、4C シアンの染料層、5 離型性層、6 保護層、7 耐熱滑性層