まず、本願発明者が見出した、回折起因フレアを説明する。図14は、従来の回折レンズ101の断面を模式的に示している。回折レンズ101は、レンズ基体10と、レンズ基体10の表面10aに設けられた回折格子2’とを備える。回折格子2’は、回折レンズ101の光軸3を中心とする同心円に沿って設けられた位相段差2aと、位相段差2aに挟まれるリング状の輪帯2bによって構成される。
各輪帯2bの表面の形状は、図13を参照して説明したように、レンズ基体10のベース形状と位相関数とを合成した形状を有する。このため、輪帯2bの表面2bsから出射する光は、レンズ基体10の表面10aを含めたレンズ系屈折面での屈折効果に加え、回折格子2による回折効果により、入射光線4を例えば、撮像素子の撮像面5上の点F上に集光する光線6に変換できる。
位相段差2aの表面2asから出射する光は、各輪帯2bを透過した光の波面に対して不連続な波面を有しており、迷光となってあらゆる方向に進行するため、集光点Fへの集光には実質的に寄与しない。したがって、位相段差2aの表面2asと集光点Fを囲む領域6’には、表面2asから出射して点Fに到達する光は実質的には存在しない。集光点Fへ収束する光束中において、集光に寄与する光が無いという意味において、領域6’は「影」領域であるといえる。以下、領域6’を影領域6’と呼ぶ。
集光点Fへの集束光には位相段差2aの数だけ影領域6’が存在する。ただし、位相段差2aの表面2asが光軸3と平行であれば、影領域6’の面積を小さくすることができる。図15は入射光線4が回折レンズの光軸に対して斜めに入射する場合における回折レンズの集光の様子を示している。入射光線4が光軸3に対して傾くため、撮像面5上の集光点Fは光軸3から外れるとともに、影領域6’の幅は著しく増大する。
図16は実際の設計例に於ける2枚組の回折レンズに、光軸に対して60度の角度で光を入射させた場合における、回折格子を透過した直後の光線のスポットダイアグラムである。位相段差2aの表面2as(図14)には、光が入射しないものとしてシミュレーションを行っている。光の傾斜方向は図16におけるy軸方向に一致しており、図16に示される円形領域内で白く示されている三日月形の部分が影領域6’に相当する。影領域6’はy軸と平行な方向において最も大きな幅を有している。図16に示す設計例では、円の中心を通るy軸と平行な直線上において、半径0.72mmの中に幅9μmの影領域6’が24本存在する。なお、実際の影領域6’の幅は位置により変わるが、以下の実施形態では、比較条件を揃えるため、一律の値(9μm)に固定して説明する。
図17は、波長0.538μm、入射光線4の入射角が光軸3に対して60度である場合において、回折レンズを透過した光の撮像面上の光強度分布を波動計算によって求めた結果を示している。ボトムとトップの間、つまり、撮像面上における光度強度を10000分割した等高線で示している。図17において、(a)は、以下において詳細に説明するように、影領域6’にも、輪帯6を透過した光と連続した波面を持つ光が存在すると仮定して計算した場合を示し、(b)は図16に示す条件の影領域6’が存在するとして計算した従来の回折レンズの計算結果を示している。図17(b)に示すように、集光スポット8の周りに回折格子に起因する回折起因フレア9が発生している。このフレア9の強度レベルは最大で集光スポット8のピークの6/10000程度である。
図17(a)に示すように、影領域6’にも、輪帯6を透過した光と連続した波面を持つ光が存在する場合、このようなフレア9の発生は見られない。したがって、フレア9は上述したように、影領域6’が存在することにより発生する、言い換えると、回折格子を構成する位相段差によって実質的に遮光されることに起因すると考えられる。
本願発明者は、このように影領域の存在に着目し、回折レンズを用いた場合に、位相段差による遮光の影響により発生する回折光に起因する、フレアの強度を低減させる構造を想到した。以下、本発明による回折レンズおよび撮像装置の実施形態を説明する。
(第1の実施形態)
本発明による回折レンズの第1の実施形態を説明する。
図1は、本発明による回折格子レンズの第1の実施形態を示す断面図である。第1の実施形態の回折格子レンズ51はレンズ基体10を備える。レンズ基体10は第1の表面510aおよび第2の表面10bを有し、第1の表面10aに回折格子2が設けられている。
本実施形態では、回折格子2は第1の表面10aに設けられているが、第2の表面10bに設けられていてもよく、第1の表面10aおよび第2の表面10bの両方に設けられていてよい。
また、本実施形態では、第1の表面10aおよび第2の表面10bのベース形状は非球面形状であるが、ベース形状は球面や、平板形状であってもよい。第1の表面51aおよび第2の表面51bの両方のベース形状が同一であってもよいし、異なっていてもよい。ただし、回折格子2が設けられる表面は非球面または球面形状であることが好ましい。非球面形状または球面形状の表面に回折格子2を設けることによって、入射光の進行方向を大きく変えられるからである。また、第1の表面10aおよび第2の表面10bのベース形状はそれぞれ凸型非球面形状であるが、凹型非球面形状であってもよい。さらに、第1の表面10aおよび第2の表面10bのベース形状のうち一方が、凸型であり、他方が凹型であってもよい。
本願明細書において、「ベース形状」とは、回折格子2の形状が付与される前のレンズ基体10の表面の設計上の形状を言う。回折格子2などの構造物が表面に付与されていなければ、レンズ基体10の表面がベース形状を有している。本実施形態では第2の表面10bには回折格子が設けられていないため、第2の表面10bは、ベース形状である非球面形状を有する。
第1の表面10aは、ベース形状、つまり非球面形状に回折格子2が設けられることによって構成されている。第1の表面10aには回折格子52が設けられているため、回折格子2が設けられた状態では、レンズ基体10の第1の表面10aは非球面形状ではない。しかし、回折格子2は以下に説明するように所定の条件に基づく形状を有するため、回折格子2が設けられた第1の表面10aの形状から回折格子2の形状を差し引くことによって、第1の表面10aのベース形状を特定することができる。ベース形状は設計上の形状であるため、回折格子2を付与する前のレンズ基体10がベース形状の表面を有している必要はない。
回折格子2は、回折レンズ51の有効領域内において、第1の表面10aのベース形状に沿って設けられている。有効領域10eとは、第1の表面10aおよび第2の表面10bにおいて、回折レンズ51が集光作用を有する領域である。回折レンズ51が撮像装置に用いられる場合には、撮像素子の撮像面上に像を形成するのに寄与する領域を言う。回折格子2は、回折レンズ51の光軸3を中心とする複数の同心円状の輪帯2bおよび複数の輪帯2b間にそれぞれ位置する複数の位相段差2aを有する。複数の位相段差2aも光軸3を中心とし、半径の異なる同心円形上に位置する。
各位相段差2aの高さdは、下記式(2)で示される。
ここで、qは設計次数(1次の回折光の場合はq=1)であり、λは使用波長であり、n
1(λ)は使用波長λにおけるレンズ基体を構成するレンズ材料の屈折率である。レンズ材料の屈折率は波長依存性があり、波長の関数である。式(2)を満たすような回折格子であれば、位相段差の根元と先端とで、位相関数上において位相差が2πとなり、使用波長λの光に対して、光路差が波長の整数倍となる。このため、使用波長の光に対するq次回折光の回折効率(以下、「q次回折効率」という。)を、ほぼ100%にすることができる。
ただし、回折効率が100%でなくても、実質的に式(2)を満足する場合、実用上、十分な集光作用を回折レンズ51は有することができる。具体的には、位相段差2aの高さdが下記式(3)を満足すれば、実用上十分な集光作用を有することができ、式(2)を実質的に満足すると言える。
回折レンズ51において、レンズ基体10の第1の表面10aに設けられた回折格子2の輪帯2bの表面2bsは、上述したようにベース形状に回折格子の形状を重ねることにより形成される。このため、ベース形状による屈折効果および回折格子2による回折効果により、入射光線4を、撮像素子の撮像面5上の点F上に集光させる作用を有する。
しかし、従来の回折レンズと同様、位相段差2aの表面2asから出射する光は集光点Fへの集光には寄与しない。このため、位相段差2aの表面2asと集光点Fを囲む影領域6’には、表面2asから出射して点Fに到達する光は存在せず、影領域6’が形成される。
上述したように、回折起因フレアは、回折レンズ51を透過し、集光に寄与する光が回折格子2の位相段差2bにより、実質的に遮られ、影領域が生じることに起因していると考えられる。本発明では、この回折起因フレアの発生を抑制するため、位相段差2bを特定の位置に形成する。具体的には、図1に示すように、各位相段差2aの位置を、光軸3を中心とする半径r
nとした表わした場合、中心Oから数えてn番目の位相段差2a位置の半径r
nは下記式(4)を満たしている。
ここで、a、cは、a>0、0≦c<1の範囲の定数であり、d
nは−0.25<d
n<0.25の範囲の任意の値である。また、位相段差2aの個数をn
0とした場合、nは0以上n
0以下の整数であり、全てのnに対して式(4)を満たす。ある回折レンズ51において、a、cはそれぞれ上述の条件を満たす1つの値であるが、d
nは、位相段差2bごとに異なっていてもよい。つまり、d
1、d
2、・・・d
n0は互いに異なっていてもよい。
cは位相関数における定数項に対応し、位相段差2aの始まる位置に関係する。回折格子2の位相差(光路差)を中心Oを基準として設計する場合には、c=0である。dnは位相段差2aの位置精度に相当し、−0.25<dn<0.25は位置誤差によって発生する収差が0.25波長以下であることを示している。
c=dn=0の時には、式(4)は位相段差2aの位置がルート則に従っていることを示している。すなわち、1番目の位相段差の半径を1とすると、n番目の半径はn1/2になる。以下の説明では簡単のため、cおよびdnがゼロである場合を説明する。
この場合、回折格子2の位相差関数φ(r)は下記式(5)を満たしている。
φ(rn)−φ(rn-1)=2qπ (5)
ただしqは整数である。
図2は本実施形態の回折レンズ51に、光軸に対して60度の角度で光を入射させた場合における、最終面に形成された回折格子を透過した直後の光線のスポットダイアグラムである。従来の回折レンズのスポットダイアグラム同様、光の傾斜方向は図2におけるy軸方向に一致している。図2に示される円形領域内で白く示されている影領域6’は、焦点Fへの集光に寄与しない領域である。半径0.72mmの中に幅9μmのこの影領域6’が24本存在するが、その位置は式(4)、すなわちルート則に従っている。図2における三日月型の領域の位置は図16に示す位置とは異なっている。これにより、回折起因フレアの発生が抑制される。
影領域6’が撮像面5上の光分布に与える影響はバビネの原理を使って次のように推定できる。
(影領域を通過する光の回折像振幅分布)+
(影領域以外の領域を通過する光の回折像振幅分布)
=(全領域[影領域+影領域以外の領域]を通過する光の回折像振幅分布)
(6)
ここで、「影領域を通過する光」とは、影領域以外の領域を通過する光と強さや波面が連続した光を意味する。従って、次の関係が求まる。
(影領域以外の領域を通過する光の回折像振幅分布)
=(全領域を通過する光の回折像振幅分布)−
(影領域を通過する光の回折像振幅分布) (7)
全領域を通過する光の回折像振幅分布には、図17(a)で示したように、集光スポット8の周りのフレア9は存在しない。従って、影領域6’以外の領域を通過する光の回折像に現れるフレアは、影領域6’を通過する光の回折像と等価である。上述したように、「影領域を通過する光」とは、影領域以外の領域を通過する光と強さや波面が連続した光を意味する。言い換えると、仮に、影領域以外の領域(すなわち輪帯)を通過光と連続した波面を持つ光を影領域6’で定義するとして、この影領域を通過して回折する光を意味する。以降、「影領域を通過する光」をこれらの意味で用いることにする。
本実施形態の回折レンズ51に光を入射させた場合、「影領域を通過する光」が実在するわけではない。実際には、輪帯2bの表面2bsを透過する光のうち、表面2bsの両端部分を透過する光の波面が、影領域6’に回り込み、回折することにより、回折起因フレアが生じると考えられる。「影領域を通過する光」は、このような、影領域6’に回り込む光とほぼ等しい振幅分布および逆の位相を持つ。このため、「影領域を通過する光」が存在するならば、影領域6’に回り込む光を打ち消し、フレアが発生しなくなる。
これらの検討において、実際に位相段差2aの表面2asから出射する光は考慮していない。上述したように、位相段差2aの表面2asから実際に出射する光は迷光となり、影領域以外の領域を通過する光と強さや波面が連続した光とはならない。したがって、「影領域を通過する光」はこのような迷光を意味していない。
なお、影領域6’は、各位相段差2aの表面2asを底面とし、回折レンズ51の集光点Fを頂点とする錐体の領域である。具体的には、回折レンズ51の光軸3を含む面と、各位相段差2aの表面2asとが交差する線分の両端と、回折レンズ51の集光点Fとをそれぞれ結んだ三角形を、光軸3の周りに回転させることにより形成される領域である。
本発明は、上述した輪帯2bの端部を透過した光が影領域6’に回り込むことによる回折光を直接考慮するのではなく、この回折光と逆の位相を持つ「影領域を通過する光」を考慮する。以下、影領域を通過する光の回折像について考察する。図1に示すように、影領域6’以外の領域を通過する光の撮像面5上の集光点をFとし、中心から数えてn番目の位相段差2abに対応する影領域を通過する光が撮像面5からΔだけ離れた点F’に集光するとすれば、n番目の位相段差2abの表面2as上の任意の点をPnとして、焦点Fに集光する場合との光路長差(F’Pn− FPn)は以下の式(8)で表される。
(F’Pn− FPn)=−Δ・cosθn (8)
ただしθn=∠PnFO
中心Oは、0番目(θ0=0)の位相段差2aの位置P0に相当する。したがって、0番目の位相段差2a(光軸3上に位置する)の場合の光路長差Δを基準にすると、n番目の位相段差に対応する影領域を通過する光の位相差δnは以下の式(9)で表される。
δn=(1−cosθn) ・Δ (9)
集束光の開口数が小さい時にはθnも小さく、上式は以下の式(10)で近似できる。
位相差δn≒θn 2・Δ/2 (10)
一方、集束光の開口数が小さい時には以下の式(11)が成り立つ。
θn≒rn/f (11)
ただしf=OF
したがって、位相差δnは、以下の式(12)で示される。
δn≒rn 2 Δ/(2f2 ) (12)
式(12)において、Δが以下の式(13)を満たし、位相段差が式(4)の関係を満たしていれば、式(12)は、下記式(14)で表わされる。
Δ=2f2λ/a (13)
δn=nλ (14)
つまり、各位相段差2aに対応する影領域を通過する光は、波長に関わらず(無収差で)点F’に集光する。上述したように、影領域を通過する光と輪帯2bの端部を透過した光が影領域6’に回り込むことによる回折光とは位相が互いに逆であるが、振幅分布はほぼ等しい。このため、影領域を通過する光と輪帯2bの端部を透過した光が影領域6’に回り込むことによる回折光も波長に関わらず点F’に集光するといえる。
図3(a)は回折レンズ51の集光の様子を示す光線追跡図である。点Fは回折レンズ51の集束光線6の集光点である。影領域を通過する光の回折光(光線群6a)が点F’に無収差で集光することは、光線追跡法では図3(a)で示すように、光線群6aが一点F’で交わることに相当する。この光線群6aは点F’を通過した後、互いに交わることなく撮像面5に到達する。撮像面5において、光線群6aの交差がないことは波動光学的には、光の干渉が少ないことを意味する。従って、光線群6aによる回折光は撮像面5の上で干渉を強めることなく均一に広がり、その光強度を極小化することが可能である。つまり、影領域以外の領域を通過する光の回折像に現れるフレアの撮像面上における干渉を低減することが可能である。この効果は、影領域以外の領域を通過する光の集光点Fよりも影領域を通過する光の集光点F’が回折レンズ51側、つまりΔが正の値であれば得られる。Δが正の値となるためには、式(13)において、a>0であればよいため、位相段差2aの位置が式(4)を満足する場合、式(13)は、成り立つと言える。
本実施形態では、位相段差2aに対応する影領域を通過する光の回折光は、位相段差2aの位置に関わらず点F’に集光する。このため、光軸3側から数えてn番目の輪帯2bを構成する面2bsを透過する光の集光点Fと、光軸3側から数えてn番目の位相段差2aに対応する影領域を通過する光の集光点F’との距離は、nの値にかかわらず一定である。
点F’に集束する光は影領域を通過する光が回折する1次回折光であり、0次回折光は集束光線6に相当する。また、実際には−1次回折光として、図3(b)に示すように、撮像面5に対して点F’と対称な位置にある点F”に集束する光線群6a’が存在する。しかし、この光線群6a’が撮像面5と交差してできるパターンは光線群6aが撮像面5と交差してできるパターンと同一であるため、撮像面5上の光の干渉の仕方は光線群6aを見れば−1次回折光による干渉も考慮できる。このため、本実施形態および以下の実施形態でも1次回折光の光線群6aについてのみ言及する。
図3(c)は従来の回折レンズの集光の様子を示す光線追跡図である。本実施形態の回折レンズ51とは異なり、従来例の回折レンズでは、光線群6aが一点F’に集束することがない。また、光線群6aのうち、撮像面5の上で必ず交差する光線が存在し、光線の密度に疎密が発生する。したがって、撮像面5の上での光の干渉が強まる。その結果、図17(b)で示すようにフレア9で生じる。
このように本実施形態の回折レンズ51によれば、位相段差2aの位置が式(4)を満たす位置に設けられているため、図3(a)に示すように、影領域を通過する光6aによる回折は、波長に依存することなく、回折格子2の集光点Fよりも回折レンズ51側の点F’で集光する。また、点F’を通過した後、互いに交わり、干渉を強めることなく撮像面5到達する。つまり、影領域以外の領域を通過する光の回折像に現れるフレアの撮像面上における干渉を低減することができる。このため、回折起因フレアを抑制することができる。
ただし、光が回折レンズの光軸に対して斜めに入射する場合、影領域を通過する光の回折光は無収差の集光ではなくなる。しかし、光軸に平行な光が入射した場合における回折起因フレアの発生が大幅に抑制されるため、光が光軸に対して斜めに入射する場合でも撮像面5の上での光線の交差は少なく、光の干渉は大きく抑制される。
また、光の入射角度により位相段差で発生する光学的な位相シフト量が変わる。これにより、設計次数以外の次数の回折光が発生し、これがフレアの原因となることもある。この種のフレアも、その集光の振る舞いは上述した影領域を通過する光の回折と同じである。したがって、上述した原理に基づき、同じ条件で設計次数以外の次数(いわゆる不要回折次数)の回折光によるフレアの最大強度を小さくすることができる。
回折レンズ51は従来とは異なる設計方法で設計される。市販の光学設計ソフトを使った従来の回折レンズの設計では、回折レンズの非球面形状を定義する複数の非球面係数と回折格子の位相関数を定義する複数の位相係数とを区別のない独立したパラメータとして扱い、所望の光学性能を満足するように、それぞれの最適値を帰納的に求めていた。このような手法では、全体の構成の中で光学性能さえ満足すればよく、回折格子の位相段差の位置がどういった関係にあるかは解が出るまで不確定である。ほとんどの場合、屈折側で発生する高次の収差を吸収するために、位相関数には高次成分が残り、位相段差の位置は式(4)をほとんど満たさない。また、多くの場合、位相段差の本数が多くとれるb<0の側に収束する。
これに対し、本実施形態の回折レンズ51を設計する場合、まず、式(4)にしたがって、位相段差の位置を決定する。隣接する位相段差との位相差は2π(または2qπ)であるから、位相段差の位置を決定することは、位相関数を先に決定することを意味する。次に、ベース形状、例えは、非球面形状を決定する関数の非球面係数をパラメータにして、所望の光学特性が得られるようにパラメータを決定する。
図4は、従来の回折レンズで決定された位相関数sp’の一例および本実施形態の回折レンズ51の位相関数Spの一例を模式的に示している。上述したように従来の回折レンズでは、位相関数を決定した後、基準位置(図では原点)から2πの位相差が得られる位置ごとに位相段差の位置r’1、r’2、r’3、r’4・・・を決定していた。これに対して本実施形態の回折レンズ51の設計では、まず、位相段差の位置r1、r2、r3、r4・・・を式(4)にしたがって決定する。図4から分かるように、本実施形態の回折レンズ51の位相段差は、レンズの中心から周辺へ向かうにつれ、従来に比べて急激に位相段差のピッチが狭くなっている。
図5は、回折レンズ51に波長0.538μmの光を光軸に対して60度の角度で入射させた場合における撮像面上の光強度分布を、波動計算によって求めた結果を示している。ボトムとトップの間、つまり、撮像面上における光度強度を10000分割した等高線で示している。影領域の幅と本数の条件は図17の条件と同じである。集光スポット8の周りに発生している回折格子に起因する回折起因のフレア9の強度レベルは、最大で集光スポット8のピークの3/10000程度であり、従来例に比べ半減していることが分かる。
(第2の実施形態)
図1を参照しながら、本発明による回折レンズの第2の実施形態を説明する。第2の実施形態の回折レンズ52は、位相段差2aの位置が第1の実施形態の回折レンズ51と異なっている。このため、位相段差2aの位置について詳細に説明する。
回折レンズ52では、各位相段差2aの位置を、光軸3を中心とする半径r
nとした表わした場合、中心Oから数えてn番目の位相段差2aの半径r
nは下記式(15)を満たしている。
ここで、a、b、c、mはa>0、b>0、0≦c<1、m>1の範囲の定数であり、dnは全てのnに対して−0.25<dn<0.25の範囲の任意の値である。また、位相段差2aの個数をn0とした場合、nは0以上n0以下の整数であり、全てのnに対して式(15)を満たす。ある回折レンズ51において、a、b、cはそれぞれ上述の条件を満たす1つの値であるが、dnは、位相段差2bごとに異なっていてもよい。つまり、d1、d2、・・・dn0は互いに異なっていてもよい。
第1の実施形態との違いは、式(15)がbの項を含む点である。cは第1の実施形態と同様、位相関数における定数項に対応し、位相段差2aの始まる位置に関係する。回折格子2の位相差(光路差)を中心Oを基準として設計する場合には、c=0である。dnは位相段差2aの位置精度に相当し、−0.25<dn<0.25は位置誤差によって発生する収差が0.25波長以下であることを示している。以下の説明では簡単のため、cおよびdnがゼロであるとして説明する。
m>1およびb>0の場合、式(15)は、第1の実施形態(b=0)に比べ位相段差が内側に寄り、その傾向はnの増大に伴い大きくなることを意味する。
位相段差の半径をr、中心から数えた位相段差数をxとし、xに実数を認めると、式(15)は、以下の式(16)で表される。
式(17)において、bが式(18)を満たすとき、式(19)が成立する。
回折レンズ52の有効領域10eにおける位相段差2aの総数をn
0(図2の例ではn
0=24)とした場合、xの最大値はn
0であり、以下の式(20)を満たす。式(20)は、隣接する位相段差2aの間隔がゼロとならないための条件となる。
0<b<b
0 (20)
ただしb
0は以下の式(21)を満たす。
図6は、第2の実施形態の回折レンズ52の集光の様子を示す光線追跡図である。回折レンズ52の場合、影領域を通過する光線群のうち、光軸に近い位相段差2aに対応する影領域を通過する光線6a1は点F’の近傍に集束するが、外周側に位置する位相段差2aに対応する影領域を通過する光線6a2ほど光線の集光点F’2が回折レンズ側にシフトする。つまり、本実施形態では、光軸3側から数えてn番目の輪帯2bを構成する面を透過する光の集光点と、光軸3側から数えてn番目の位相段差に対応する影領域を通過する光の集光点との距離が、nの増大とともに増加する。
このように位相段差2aの表面2asを透過する光線群6a1、6b2が進行する場合でも、第1の実施形態と同様に、撮像面5上で光線群6a1、6a2は交差せず、第1の実施形態よりも光線6a1、6b2の間隔が撮像面5上において大きくなる。したがって、光線群6a1、6a2による回折光は撮像面5の上で干渉を強めることなく広がり、第1の実施形態以上に、フレアを抑制することができる。
第1の実施形態と同様、光が回折レンズ52の光軸に対して斜めに入射する場合、影領域を通過する光の回折光は無収差の集光ではなくなる。しかし、光軸に平行な光が入射した場合における回折起因フレアの発生が大幅に抑制されるため、光が光軸に対して斜めに入射する場合でも撮像面5上での光線の交差は少なく、光の干渉、つまり、フレアの発生は大きく抑制される。
図7Aの(a)から(f)、図7Bの(g)から(i)、図7Cの(a)から(f)、図7Dの(g)から(i)は、回折レンズ52に波長0.538μmの光を光軸に対して60度の角度で入射させた場合における撮像面上の光強度分布を、波動計算によって求めた結果を示している。ボトムとトップの間、つまり、撮像面上における光度強度を10000分割した等高線で示している。影領域の幅と本数の条件は図17の条件と同じである。
これらの図に示す計算結果を得るために用いた上記式(15)におけるmおよびbを以下の表1に示す。bの値はその上限値b0で規格化した値を用いた。
これらの図から、本実施形態の回折格子レンズを用いた場合、集光スポット8の周りにフレア9は発生するが、フレア9の強度は、いずれも従来例(図17(b))よりも小さいことがわかる。また、b/b0が大きいほど、フレア9の強度が低下することがわかる。たとえば、図7Bの(i)および図7Dの(i)に示すフレア9の強度レベルは、最大でも集光スポット8のピークの1〜2/10000程度である。
図7Eは、b/b0の値と図7Aから図7Dに示す計算結果におけるフレア9のエネルギー(強度の面内積分値)を集光スポット8のエネルギーで割った値(フレアのエネルギー比)との関係を示している。b/b0=0である場合、式(15)は式(4)に一致する。つまり、b/b0=0である場合には第1の実施形態の回折格子レンズの結果を示している。
人間の眼はある強度以下の明るさを感じることはない。このため、集光スポット8のピーク強度に対し、s倍以下のレベルのフレアの光強度をゼロとして計算した。用いたsは0.001と0.0002である。図7Eはmごとおよびsごとにb/b0とフレアのエネルギー比との関係を示している。なお、図17で示した従来例では、s=0.0001、0.0002に対するエネルギー比はそれぞれ0.0668、0.0345である。
図7Eに示すように、いずれの曲線も、b/b0が大きいほどフレアのエネルギー比は低下する。特にs=0.0002の条件では、b/b0≧0.05でフレアのエネルギー比は、従来例の30%(0.0345×0.3=0.010)以下になる。s=0.0001の条件でも、b/b0≧0.20でフレアのエネルギー比は、従来例の55%(0.0668×0.55=0.037)以下になる。また、図7Eから、フレアのエネルギー比はsおよびb/b0に大きく依存するものの、mに対する依存性は小さいことがわかる。
これらの結果から、bの値は以下の式(22)を満たすことが好ましく、以下の式(22’)を満たすことがより好ましい。
0.05b
0<b<b
0 (22)
0.2b
0<b<b
0 (22’)
ただしb
0は以下の式(21)を満たす。
図8は、回折レンズ52に波長0.538μmの光を光軸に対して60度の角度で入射させた場合における撮像面上の光強度分布であって、それぞれのnに対してdnをある範囲内でランダムに与えた場合における撮像面上の光強度分布の計算結果を示している。(a)、(b)はdnが−0.25から0.25の間の値であり、(c)、(d)はdnが−0.5から0.5の間の値である。また、(a)、(c)はb=0.0の条件で、(b)、(d)はm=2.0、b/b0=0.5の条件で計算を行った。その他の条件は、図16と同じである。
図5および図7C、図7Dに示したdn=0.0の場合と比較すると、図8(a)および(b)に示す光強度分布において、フレア9の強度レベルに変化はなく、フレア面積は微増するにとどまっている。これに対して、図8(c)では、フレアの最大強度は変化がなく、図8(d)では、最大強度が約2倍になっており、これらの図において、フレア面積は著しく増大している。s=0.0001、0.0002に対するフレアのエネルギー比は、図8(a)から(d)に示す光強度分布において、以下の表2に示す通りである。
表2から、s=0.0002の場合において、フレアエネルギー比は、図8(c)の光強度分布において図8(a)の光強度分布の約2倍になっていることがわかる。また、フレアエネルギー比は、図8(d)の光強度分布において図8(b)の光強度分布の約4倍になっていることがわかる。これらの結果から、dnの範囲は−0.25から0.25の間が好ましく、これを超えると、フレアエネルギーの増大が著しくなることが分かる。
このように、回折レンズ52も第1の実施形態と同様、位相段差2aが式(15)を満たす位置に設けられているため、図5に示すように、位相段差2aに対応する影領域を通過した光6aの焦点は、位相段差2aが光軸側から外周側に向かうにつれて、より回折レンズ52側へシフトする。このため、撮像面5において、影領域を通過した光6a同士が交差し、干渉することによって強めあうことがないため、回折起因フレアを抑制することができる。
また、光の入射角度により位相段差で発生する光学的な位相シフト量が変わる。これにより、設計次数以外の次数(いわゆる不要回折次数)の回折光が発生し、これがフレアの原因となることもある。この種のフレアも、その集光の振る舞いは上述した影領域を通過する光の回折と同じである。したがって、上述した原理に基づき、同じ条件で設計次数以外の次数の回折光によるフレアの最大強度を小さくすることができる。
回折レンズ52も第1の実施形態と同様、まず、式(15)を満たすように位相段差の位置、つまり、位相関数の位相係数を決定する。次に、ベース形状、例えば、非球面形状を決定する関数の非球面係数をパラメータにして、所望の光学特性が得られるようにパラメータを決定する。本実施形態では、特に、式(15)が調整可能なbをパラメータとして含む。このため、bをパラメータとして、位相関数の位相係数を決定し、bの値を式(22)の範囲で調整しながら、非球面係数を決定することができ、所望の特性を有する回折レンズ52の設計解を求め易い。
このように第1および第2の実施形態によれば、式(4)または式(15)を満たす位置に位相段差を設けることによって、フレアの発生を抑制することができる。また、この場合、光軸側から数えてn番目の輪帯を構成する面を透過する光の集光点と、光軸側から数えてn番目の位相段差に対応する影領域を通過する光の集光点との距離が、nに対して一定、または、nの増大とともに増加する。したがって、このような関係を満たすように位相段差の位置を決定してもよい。
(第3の実施形態)
図9を参照しながら、本発明による回折レンズの第3の実施形態を説明する。第3の実施形態の回折レンズ53では、回折格子2’の輪帯2bの形状が第1および第2の実施形態と異なっている。具体的には、第1および第2の実施形態では、光軸を含む平面における各輪帯2bの断面は、光軸3側に先端を有し、外周側に根元を有していた。これに対し、本実施形態の回折レンズ53において、光軸を含む平面における各輪帯2bの断面は、光軸3側に根元を有し、外周側に先端を有している。つまり、各輪帯2aの断面によって形成される鋸刃形状の方向が第11および第2の実施形態とは逆になっている。その他の構造は第1または第2の実施形態と同じである。特に、位相段差2aの位置は、第1および第2の実施形態と同様、式(4)または式(15)を満たしている。
各輪帯2aの断面によって形成される鋸刃形状の方向は、回折パワーをプラスにするかマイナスにするか、また、回折格子2’が形成されたレンズ基体10と隣接する媒質との媒質の屈折率の関係で決まる設計事項である。例えば、回折レンズ53は、レンズ基体10を構成する材料の屈折率よりも回折格子2’が接する媒質13の屈折率よりも大きい場合に適している。
回折レンズ53も第1および第2の実施形態で説明したように、位相段差2aが、式(4)または式(15)の関係を満たす位置に設けられているため、フレアを抑制することができる。
(第4の実施形態)
図10は、本発明による回折格子レンズの第4の実施形態を示す断面図である。図10に示す回折格子レンズ54は、例えば、第1の実施形態の回折レンズ51と、回折レンズ51に設けられた回折格子2を覆うように設けられた光学調整膜11とを備える。回折格子2の位相段差を完全に埋めるように光学調整膜11が設けられている。第1の実施形態の回折レンズ51の替わりに、第2の実施形態の回折レンズ52または第3の実施形態の回折レンズ53を用いてもよい。
回折レンズ51は使用波長λにおいて屈折率n1(λ)である第1の材料からなる。また、光学調整膜11は、使用波長λにおいて屈折率n2(λ)である第2の材料からなる。
回折格子2の位相段差の高さをdとし、qを回折次数としたとき、位相段差は下記(23)で示す高さdを有している。
好ましくは、使用波長λは可視光域の波長であり、可視光域の全域の波長λに対して式(23)を実質的に満足する。実質的に満足するとは、例えば以下の式(24)の関係を満たすことを言う。
この場合、不要次数回折光が発生抑制され、可視光全域で高い回折効率が得られる。
可視光全域で式(23)または式(24)を満足するためには、可視光域においてdがほぼ一定となるような波長依存性を持つ屈折率n1(λ)の第1の材料と屈折率n2(λ)の第2の材料とを組み合わせればよく、例えば、第2の材料は第1の材料よりも低屈折率高分散材料であればよい。言い換えれば、第2の材料の屈折率は第1の材料の屈折率より小さく、かつ、第2の材料のアッベ数は第1の材料のアッベ数よりも小さいことが好ましい。
当然、第1の材料および第2の材料として、ガラスや樹脂に無機粒子を分散させて屈折率や波長分散性を調整したコンポジット材料を用いてもよい。屈折率n2(λ)が屈折率n1(λ)より大きい場合、dは負の値となる。この場合、回折レンズ51に換えて回折レンズ53を用いることになる。
上述したように本実施形態の回折光学レンズ54、光学調整膜54で回折格子2が覆われている点で第1の実施形態の回折光学レンズ54と異なっているが、光学調整膜54が空気層であるとすれば、回折光学レンズ54と回折光学レンズ51とは同じ構造であるといえる。式(23)と式(2)とを比較すれば明らかなように、一般に光学材料である第2の材料の屈折率n2(λ)は1より大きいため、第1の実施形態の回折光学レンズ51の場合に比べて位相段差の高さdは大きくなる。位相段差部での遮光幅も大きくなるが、第1の実施形態と同様、回折起因フレアの発生が抑制される。また、式(23)を満たすことにより、使用波長域の全域で不要次数回折光によるフレアを低減することができる。
(第5の実施形態)
図11(a)は、本発明による光学系の実施形態を示す模式的断面図であり、図11(b)はその平面図である。光学素子55は、回折レンズ21と回折レンズ22とを備える。回折レンズ21は、例えば第1の実施形態の回折レンズ51であり、第1の実施形態で説明した構造を有する回折格子2が設けられている。回折レンズ22は、回折格子2と対応する形状を有する回折格子2’が設けられている。回折レンズ21と回折レンズ22とは所定の間隙23を隔てて保持されている。
図11(c)は、本発明による光学系の他の実施形態を示す模式的断面図であり、図11(d)はその平面図である。光学素子55’は、回折レンズ21Aと回折レンズ21Bと光学調整膜24と備える。回折レンズ21Aの一面には第1の実施形態で説明した構造を有する回折格子2が設けられている。同様に回折レンズ21Bにも回折格子2が設けられている。光学調整膜24は、回折レンズ21Aの回折格子2を覆っている。回折レンズ21Aと回折レンズ21Bとは、回折レンズ21Bの表面に設けられた回折格子2と光学調整膜24との間に間隙23が形成されるように保持されている。
回折レンズが積層された光学素子55および光学素子55’においても、第1の実施形態で説明したように、所定の位置に位相段差が設けられた回折格子2を備えているため、第1の実施形態で説明したように、回折起因フレアの発生が抑制される。
(第6の実施形態)
図12は、本発明による撮像装置の実施形態を示す模式的断面図である。撮像装置56は、レンズ31と、回折レンズ33と、絞り32と撮像素子34とを備える。
レンズ31は、レンズ基体55を含む。レンズ基体55の第1の表面55aおよび第2の表面55bは、球面形状、非球面形状など、公知のレンズの表面形状を有している。本実施形態では、レンズ基体35の第1の表面55aは凹形状を有し、第2の表面55bは凸形状有している。
回折レンズ32は、基体36を含む。基体36の第1の表面36aおよび第2の表面36bのベース形状は、球面形状、非球面形状など、公知のレンズの表面形状を有している。本実施形態では、第1の表面36aは凸形状を有し、第2の表面36bは凹形状有している。第2の表面36bには第1の実施形態で説明した回折格子2が設けられている。
レンズ31の第2の面35bから入射した被写体からの光は、レンズ31および回折レンズ33によって集光され、撮像素子34の表面において、結像し、撮像素子34によって電気信号に変換される。
本実施形態の撮像装置56は2枚のレンズを備えているが、レンズの数やレンズの形状に特に制限はなく、1枚であってもよいし、3枚以上のレンズを備えていてもよい。レンズ枚数を増やすことで、光学性能を向上させることができる。撮像装置56が、複数のレンズを備える場合、回折格子2は複数のレンズのうちのどのレンズに設けられていてもよい。また、回折格子2が設けられた面は、被写体側に配置されてもよいし、撮像側に配置されてもよく、複数面であってもよい。また、絞り56はなくてもよい。
本実施形態による撮像装置は、第1の実施形態で説明した回折格子が設けられた回折レンズを備えているため、強い光源を撮影する場合にも回折起因フレア光の少ない画像を得ることができる。
なお、上記第1から第6の実施形態では、回折格子によって発生するフレアを説明するために、回折格子が設けられた面から出射した光が撮像素子の撮像面に照射する例を挙げて、本発明を説明した。しかし、本発明は、撮像素子の撮像面に光を集光させる用途に限られず、種々の光学系に本発明を適用することができる。