JP4943714B2 - 広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板 - Google Patents
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しかし、例えば内容物が炭酸である場合のように、内容物により高内圧がかかる場合には、キャップの変形による内容物の漏れ、ブローオフ(一気にキャップが吹き飛ぶ)、及び自動販売機での落下衝撃に伴う変形の恐れがある。そのため、より高強度でかつ開栓性の良い板が期待されている。
さらにまた、急速加熱冷却による最終焼鈍条件を限定した先行技術(特許文献4参照)においても、引張強さの最大が185MPaであり、強度が低すぎる。
Mg:1.0〜2.0%(重量%、以下同じ)、
Mn:0.2〜1.0%、
Si:0.01〜0.5%、
Fe:0.01〜0.69%を含み、残部が不可避的不純物とアルミニウムからなり、
MgとMnとの合計量が1.5〜2.5%、
SiとFeとの合計量が0.2〜0.7%であり、
上記アルミニウム合金板の元板の引張強さが200〜270MPa、耐力が170〜240MPa、伸びが3〜8%であり、
上記元板に対して、200℃の温度で10分間保持する熱処理を施した空焼板の引張強さが200〜270MPa、耐力が160〜230MPa、伸びが5〜10%であり、
大きさが0.5μm以上である金属間化合物の分布密度が3000〜10000個/mm2であると共に、上記金属間化合物の面積率が、0.5〜3.0%であり、
大きさが3μm以上である金属間化合物の分布密度が300〜1500個/mm2であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板にある(請求項1)。
Mgは、本発明の必須の成分であり、その含有量を1.0〜2.5%に限定することにより、強度および成形性を良好に保つことができる。
Mg含有量が1.0%未満の場合、高内圧の内容物対応あるいはゲージダウン対応には強度不足になるため、広口ボトル缶キャップ(以下、適宜、単にキャップという。)として所定の耐圧を得ることができない。また、成形したキャップにおけるネジ部の剛性向上と天面のドーミング防止効果が十分に得られないという問題もある。また、圧延方向に対し0°、90°、180°および270°方向の4箇所の耳が発達しやすくなるため、安定して低い耳率の材料を得ることが難しく、文字曲がりのしにくいキャップを量産していくことは容易ではない。ここで言う文字曲がりとは、平板状態で印刷を施した後にカップ状に成形するキャップの製造方法の特性上、素材の変形の仕方によって、印刷した絵柄や文字等が曲がって表示される現象のことをいう。
Mg含有量が多いほど結晶粒が細かくなるので、Mg含有量を高めて結晶粒微細化効果を高めることで、カップ成形時の肌荒れも抑制しやすくなる。
MgとMnとの合計値(Mg+Mn)は1.5〜2.5%に限定する。Mg+Mnが1.5%未満の場合には、高強度が得られない。また、Mg+Mnが2.5%を超える場合には、強度が高すぎて、開栓時に多大な力を要するため、開栓しにくくなるという問題がある。
上記元板の引張強さ及び耐力が上記範囲にないと、空焼後に目的とする強度を得ることが困難となる。
開栓時にミシン目部が切れにくく、開栓角度が大きくなり、開栓しにくくなるという問題がある。
上記特定の大きさの金属間化合物の分布密度が上記の範囲の下限を下回る場合には、キャップ開栓時に上記金属化合物が亀裂の起点、伝播経路になりにくい。また、上限を上回る場合には、伸びが小さく、成形時に割れやすくなるおそれがある。
Cuは、材料強度に影響を及ぼす元素である。0.01%未満の場合、その効果が得られないばかりでなく、純度の高い地金を使用する必要があり、コストアップとなる。0.25%を超えての添加は、圧延加工しにくくなる。
Cr、Znは、結晶粒微細化による成形性に影響を及ぼす元素である。それぞれ上記下限未満の場合、その効果が得られないばかりでなく、純度の高い地金を使用する必要があり、コストアップとなる。一方、上記上限を超える場合、結晶粒微細化効果は飽和するため、添加に要するコストアップを考慮すると上記上限とすることが好ましい。
Tiは、鋳塊組織微細化による成形性向上に影響を及ぼす元素である。0.005%未満の場合、その効果が得られない。0.05%を超えると、未固溶のAl−Ti系化合物が最終製品の表面欠陥として現れやすくなる。
なお、鋳塊組織微細化剤としてAl−Ti−B中間合金を添加する場合は、Bが含有されるが、Bは0.02%以下の範囲で添加されるのが好ましい。
45°耳高さ=A、135°耳高さ=B、225°耳高さ=C、315°耳高さ=D、
45°と135°の間の最小の谷高さ=E、
135°と225°の間の最小の谷高さ=F、
225°と315°の間の最小の谷高さ=G、
315°と45°の間の最小の谷高さ=H、
耳部の平均:M45=(A+B+C+D)/4、
谷部の平均:V45=(E+F+G+H)/4とすると、
耳率=〔(M45−V45)/{(M45+V45)/2}〕×100(%)
0°耳高さ=A’、90°耳高さ=B’、180°耳高さ=C’、270°耳高さ=D’、0°と90°の間の最小の谷高さ=E’、
90°と180°の間の最小の谷高さ=F’、
180°と270°の間の最小の谷高さ=G’、
270°と0°の間の最小の谷高さ=H’、
耳部の平均:M’=(A’+B’+C’+D’)/4、
谷部の平均:V’=(E’+F’+G’+H’)/4とすると、
耳率=〔(M’−V’)/{(M’+V’)/2}〕×100(%)
カップの平均高さ=P(開口端の高さを1000点測定した平均高さ)、
0°耳高さ=Q、180°耳高さ=R、
耳部の平均:S=(Q+R)/2、
耳率={(S−P)/P}×100(%)
ダイス径33.6mm、ポンチ径33mm、ポンチ肩R1.5mmの金型を用い、供試材ブランク径55mmとして、絞り比1.67でカップ絞りを実施。
この場合には、キャップ成形時に肌荒れが起こりにくいという効果が得られる。
90°繰り返し曲げは、後述する実施例に示すように、水平状態から所定の位置を基点として、曲げR=1.0mmの条件下で、一方に90°折り曲げ(これを1回と数える)、次いで、水平状態に戻した後(これも一回と数える)、反対方向に90°折り曲げる(これも1回と数える)ことを繰り返し、割れに至るまでの曲げ回数を評価し、キャップ開栓時のせん断力の指標とする試験である。
曲げ回数が14回未満の場合には、ミシン目部がせん断破壊しやすいため、内容物による内圧により、内容物の漏れやブローオフの危険性を有するキャップとなる可能性がある。
また、曲げ回数が18回を超える場合には、ミシン目部がせん断破壊し難いため、開栓しにくいキャップとなる場合がある。
基本的な製造工程は、鋳塊を均質化熱処理した後、熱間圧延をして板を形成し、焼鈍、冷間圧延、焼鈍、冷間圧延を順次行って製品板厚とし、最後に強度の安定化のために安定化熱処理することである。なお、この安定化熱処理の前あるいは後において、脱脂、化成処理等の表面処理をすることが多い。
上記焼鈍1、2では、300〜550℃の温度に保持する条件で行う。保持温度が300℃未満の場合、最終板で所定の耳率が得られず、また、強度が高くなりすぎて成形性に劣る。保持温度が550℃超えの場合、表面が酸化しやすくなり好ましくない。なお、保持時間は特に限定しないが、連続焼鈍ラインなどによる急速加熱・急速冷却の比較的高温での焼鈍の場合、保持0〜20秒、バッチ式焼鈍炉による比較的低温での焼鈍の場合保持30分〜5時間が適当である。
(実施例及び参考例)
表1に示す化学成分を含有する厚さ500mm、幅800mm、長さ2000mmのアルミニウム合金鋳塊をDC鋳造にて造塊し、表面の偏析層を15mm切削後、500℃で12時間保持する均質化熱処理し、均質化熱処理炉から出してすぐに熱間圧延を450℃で開始した。板厚3mmまで熱間圧延を行い、250℃で終了した。その後、380℃で1時間、バッチ式焼鈍炉を用いて焼鈍を行うことで再結晶組織を得た後に、板厚0.5mmまで冷間圧延し、さらに500℃で3秒、連続焼鈍ラインを用いて中間焼鈍して再結晶組織とした後、40%の圧延率で、板厚0.3mmまで冷間圧延し、安定化熱処理を200℃で2時間行い、供試材とした。
得られた6種類の供試材E1〜E6を用い、以下の評価試験をした。一部の試験片は、材料組織観察をした。
JIS5号試験片にて、引張試験を行い、引張強さ、耐力、伸びを測定した。
<耳率>
ダイス径33.6mm、ポンチ径33mm、ポンチ肩R1.5mmの金型を用い、供試材ブランク径55mmとして、絞り比1.67でカップ絞りを実施。
耳率は、前述の条件により成形したカップを、前述の式から、45°方向4箇所(A方向)の耳の耳率、0°、90°、180°、270°方向4箇所(B方向)の耳の耳率、及び0°と180°方向2箇所の耳の耳率を測定した。
<結晶粒径>
供試材板面を電解研磨し、偏光顕微鏡で結晶粒を観察した。ASTMカードを用いて、比較法から、結晶粒径を求めた。
<繰り返し曲げ>
繰り返し曲げ試験は、まず、図1に示すごとく、圧延方向を長手とする長さ200mm、幅12.5mmの供試材1をチャック5で保持し、供試材1が撓むことなく荷重がかかるようにする。そして、供試材1に、耐力の約15%程度の応力を負荷した状態で、同図に示すごとく、上記チャック5を回転させて曲げR=1.0mmの曲げを与えることで行う。
すなわち、上記繰り返し曲げ試験は、基点から一方に90°折り曲げ(a)、次いで、基点に戻した後(b)、反対方向に90°折り曲げ(c)、再び基点に戻す(d)ことを繰り返す両振り試験である。
曲げ回数は、90度折り曲げる度に1回とカウントし、割れに至るまでの繰り返し曲げ回数を評価した。
90°曲げた回数をXとし、X回繰り返し曲げを行った後、繰り返し曲げ試験機が止まるまでに動いた角度を90°で割ったものをYとする。そして、繰り返し曲げ回数=X+Yとして、小数点以下1桁までの数字を採用する。また、各供試材において、割れに至るまでの繰り返し試験を5回行った平均値を測定結果とする。
本例の供試材E1〜E6は、引張強さ、耐力、伸び、耳率、結晶粒径というすべての評価項目において、いずれも広口ボトル缶キャップ用のキャップ材として良好な結果を示した。
表3に示す本発明の請求範囲外である成分を有するアルミニウム合金鋳塊を、前述の実施例及び参考例と同じ条件で製造し、供試材C1〜C6を得た。
表4から知られるように、試料C1は、Mg及びMg+Mnの含有量が本発明の上限を超えているため、引張強さ、耐力が大きく、強度が高すぎになる。また、異方性のバランスが悪くなり、45°方向4箇所の耳の耳率が本発明の好ましい範囲の上限を超えるため、文字曲がりの防止が困難となる。また、繰り返し曲げ回数が本発明の好ましい範囲の下限を下回っているため、ミシン目部がせん断破壊しやすいため、内容物による内圧により、内容物の漏れやブローオフの危険性を有するキャップとなる可能性がある。
また、0°と180°方向2箇所の耳の耳率が本発明の好ましい範囲の上限を超えるため、文字曲がりの防止が困難となる。
5 チャック
Claims (5)
- 塗装・印刷後に、直径28mmを超える円筒状のカップに成形し、該カップの耳部をトリミングした後、裾部にミシン目を加工し、その後、内容物が充填された飲料容器のネジ部に巻き締めされる広口ボトル缶キャップ用の高強度アルミニウム合金板であって、
Mg:1.0〜2.0%(重量%、以下同じ)、
Mn:0.2〜1.0%、
Si:0.01〜0.5%、
Fe:0.01〜0.69%を含み、残部が不可避的不純物とアルミニウムからなり、
MgとMnとの合計量が1.5〜2.5%、
SiとFeとの合計量が0.2〜0.7%であり、
上記アルミニウム合金板の元板の引張強さが200〜270MPa、耐力が170〜240MPa、伸びが3〜8%であり、
上記元板に対して、200℃の温度で10分間保持する熱処理を施した空焼板の引張強さが200〜270MPa、耐力が160〜230MPa、伸びが5〜10%であり、
大きさが0.5μm以上である金属間化合物の分布密度が3000〜10000個/mm2であると共に、上記金属間化合物の面積率が、0.5〜3.0%であり、
大きさが3μm以上である金属間化合物の分布密度が300〜1500個/mm2であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。 - 請求項1において、上記アルミニウム合金板は、さらにCu:0.01〜0.25%、Cr:0.01〜0.25%、Zn:0.01〜0.25%、Ti:0.005〜0.05%のうち1種または2種以上を含むことを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。
- 請求項1又は2において、上記元板又は上記空焼板の耳率試験に使用する絞りカップの開口部に発生する耳のうち、圧延方向に対し45°方向の4箇所、あるいは0°、90°、180°、270°方向の4箇所に発生する耳の耳率が2.5%以下であり、かつ圧延方向に対し0°と180°方向の2箇所に発生する耳の耳率が2.0%以下であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。
- 請求項1〜3のいずれか1項において、上記アルミニウム合金板の結晶粒径が50μm以下であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。
- 請求項1〜4のいずれか1項において、上記アルミニウム合金板の90°繰り返し曲げ回数が14〜18回であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。
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