JP4943714B2 - 広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板 - Google Patents

広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板 Download PDF

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Description

本発明は、広口ボトル缶用のPP(pilfer proof)キャップに好適に使用されるAl−Mg−Mn−Si−Fe(アルミニウム−マグネシウム−マンガン−ケイ素−鉄)系合金板に関する。
PPキャップは、一般に、素材であるアルミニウム合金板に塗装・印刷を施してから、複数の円筒状のカップを同時に成形し、各カップの耳部をトリミングした後、裾部にミシン目を加工するという工程で製造する。こうして成形されたキャップは、飲料容器に内容物を充填後、その容器のネジ部に巻締めされ、市場に出される。
これまで、直径28mm以下の小口のPPキャップには、主にAl−Mn系の3105合金(特許文献1参照)、あるいはAl−Fe系の8011合金が使われていた(非特許文献1参照)。一方、直径38mm等の広口キャップには、強度がより高い必要性があることから、Al−Mg系の5151合金(Al−1.5〜2.1%Mg合金)が使われている。
しかし、例えば内容物が炭酸である場合のように、内容物により高内圧がかかる場合には、キャップの変形による内容物の漏れ、ブローオフ(一気にキャップが吹き飛ぶ)、及び自動販売機での落下衝撃に伴う変形の恐れがある。そのため、より高強度でかつ開栓性の良い板が期待されている。
このような高強度で開栓性の良いという期待に応えうる合金として、Al−Mg−Mn系合金がある。Al−Mg−Mn系合金板の最終冷間圧延率と結晶粒径を限定した先行技術(特許文献2参照)では、200MPa以上の引張強さとして263MPaの実施例があるが、その場合の伸びは2%であり、広口ボトル缶用のPPキャップとしては成形時に割れ等の不具合を発生するおそれがある。
また、Al−Mg−Mn系合金の均質化処理から仕上げ焼鈍までの条件を限定した先行技術(特許文献3参照)では、引張強さは最大でも実施例で141MPa、比較例で152MPaであり、強度が低すぎて広口ボトル缶用PPキャップには適用できない。
さらにまた、急速加熱冷却による最終焼鈍条件を限定した先行技術(特許文献4参照)においても、引張強さの最大が185MPaであり、強度が低すぎる。
一方、引張強さの高いAl−Mg−Mn系合金の例として、200MPaを超える実施例を示している先行技術(特許文献5参照)があるが、深絞りによるPPキャップ用ではなく、リングプルによる引き裂きで開栓する浅絞り広口キャップ用であり、スコア加工部の引き裂き性を重視したものであり、本発明とは用途が異なる。
また、冷間圧延加工度の増加、最終熱処理温度や時間の低下等の方法によって高強度化を行うと、伸びが不足するという問題がある。このような場合には、成形時に割れる、キャップ胴部の凸凹(スクリュー形状)ができにくい等の成形性の低下、開栓時にミシン目部が破断しにくい等の不具合を生じる。
特許第3153541号公報 特開昭58−224142号公報 特開平9−25546号公報 特開2000−282195号公報 特開2000−282164号公報 住友軽金属技報、vol.23(1982),P.36.
本発明はかかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、材料設計(成分、強度、伸びの最適化)及び材料組織の限定によって、成形性、強度、開栓性に優れた広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板を提供しようとするものである。
本発明は、塗装・印刷後に、直径28mmを超える円筒状のカップに成形し、該カップの耳部をトリミングした後、裾部にミシン目を加工し、その後、内容物が充填された飲料容器のネジ部に巻き締めされる広口ボトル缶キャップ用の高強度アルミニウム合金板であって、
Mg:1.0〜2.0%(重量%、以下同じ)、
Mn:0.2〜1.0%、
Si:0.01〜0.5%、
Fe:0.01〜0.69%を含み、残部が不可避的不純物とアルミニウムからなり、
MgとMnとの合計量が1.5〜2.5%、
SiとFeとの合計量が0.2〜0.7%であり、
上記アルミニウム合金板の元板の引張強さが200〜270MPa、耐力が170〜240MPa、伸びが3〜8%であり、
上記元板に対して、200℃の温度で10分間保持する熱処理を施した空焼板の引張強さが200〜270MPa、耐力が160〜230MPa、伸びが5〜10%であり、
大きさが0.5μm以上である金属間化合物の分布密度が3000〜10000個/mm2であると共に、上記金属間化合物の面積率が、0.5〜3.0%であり、
大きさが3μm以上である金属間化合物の分布密度が300〜1500個/mm2であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板にある(請求項1)。
まず、本発明における化学組成の限定理由について説明する。
Mgは、本発明の必須の成分であり、その含有量を1.0〜2.5%に限定することにより、強度および成形性を良好に保つことができる。
Mg含有量が1.0%未満の場合、高内圧の内容物対応あるいはゲージダウン対応には強度不足になるため、広口ボトル缶キャップ(以下、適宜、単にキャップという。)として所定の耐圧を得ることができない。また、成形したキャップにおけるネジ部の剛性向上と天面のドーミング防止効果が十分に得られないという問題もある。また、圧延方向に対し0°、90°、180°および270°方向の4箇所の耳が発達しやすくなるため、安定して低い耳率の材料を得ることが難しく、文字曲がりのしにくいキャップを量産していくことは容易ではない。ここで言う文字曲がりとは、平板状態で印刷を施した後にカップ状に成形するキャップの製造方法の特性上、素材の変形の仕方によって、印刷した絵柄や文字等が曲がって表示される現象のことをいう。
Mg含有量が多いほど結晶粒が細かくなるので、Mg含有量を高めて結晶粒微細化効果を高めることで、カップ成形時の肌荒れも抑制しやすくなる。
一方、Mg含有量が2.5%を超える場合、強度が高すぎて、開栓時に多大な力を要するため、開栓しにくくなってしまう。そのため、Mg含有量は2.5%以下が好ましい。なお、Mg含有量は、上述の異方性と強度をバランスよく満足し製造しやすくするために、より好ましくは1.3%超え、2.2%未満、さらに好ましくは1.5%超え、2.0%未満がよい。
Mnは、強度と成形性を良好に保つために、本発明の必須の成分である。また、Feなどの元素とともに金属間化合物を形成し、キャップ開栓によるミシン目破断時の亀裂の起点、伝播経路となりうる。Mn含有量は0.01〜1.0%に限定する。Mn含有量が0.01%未満の場合、強度不足でキャップとして所定の性能を得にくく、高純度の地金を使用する必要がある。また、1.0%超えの場合、強度が高すぎて開栓時に多大な力を要し開栓しにくくなったり、鋳造時にFeなどの元素とともに巨大な金属間化合物を作りやすい。
Mn含有量は、好ましくは0.01〜0.8%とする。このようなMn量の上限抑制の理由は、Mg含有量が多いほど成形性維持のまま高強度化できるが、鋳塊を高温で均質化処理できず、耳率に影響するMn系析出物の制御がしにくくなるからである。
Siは、MnやFeと化合物を形成し、晶出物を形成するために、本発明に必須の成分である。Si含有量は0.01〜0.5%に限定する。Si含有量が0.01%未満の場合、純度の高い地金を使用する必要があり、コストアップとなる。また、Si含有量が0.5%を超える場合には、前記晶出物が多くなり、キャップ成形性を劣化させる。
Feは、結晶粒微細化による成形性に影響を及ぼすために、本発明に必須の成分である。Fe含有量は0.01〜0.69%に限定する。Fe含有量が0.01%未満の場合、その効果が得られないばかりでなく、純度の高い地金を使用する必要があり、コストアップとなる。また、Fe含有量が0.69%を超える場合には、結晶粒微細化効果は飽和し、後述するSi+Fe量の適正範囲を超えてしまう。
さらに、MgとMnとの合計値、及びSiとFeとの合計値の限定理由につき説明する。
MgとMnとの合計値(Mg+Mn)は1.5〜2.5%に限定する。Mg+Mnが1.5%未満の場合には、高強度が得られない。また、Mg+Mnが2.5%を超える場合には、強度が高すぎて、開栓時に多大な力を要するため、開栓しにくくなるという問題がある。
SiとFeとの合計値(Si+Fe)は0.2〜0.7%に限定する。Si+Feが0.2%未満の場合には、開栓時に必要な金属間化合物の量が確保できない。また、Si+Feが0.7%を超える場合には、金属間化合物の量が過剰になり、伸びの低下を招き、成形時に割れやすくなる。
次に、上記元板とは、本発明のアルミニウム合金板そのもの、すなわち製造したままの状態であり、キャップ製造工程に供給される前の状態の板をいう。そして、上記空焼板とは、この元板に、上記の熱処理を施して、便宜上キャップ製造工程における印刷後の状態をある程度反映させた状態の板をいう。
上記元板の強度は、引張強さが200〜270MPa、耐力が170〜240MPa、伸びが3〜8%の範囲に限定する。そして、かつ、上記空焼板の強度は、引張強さが200〜270MPa、耐力が160〜230MPa、伸びが5〜10%の範囲に限定する。
上記元板の引張強さ及び耐力が上記範囲にないと、空焼後に目的とする強度を得ることが困難となる。
上記空焼板の引張強さが200MPa未満の場合及び耐力が10MPa未満の場合には、成形したキャップにおいて所定の耐圧を得ることができない。一方、空焼板の引張強さが270MPaを超える場合及び耐力が230MPaを超える場合には、成形したキャップの開栓がしにくくなるという問題がある。上記空焼板の伸びが5%未満の場合には、キャップ成形時に割れなどの成形不良が出やすくなり、また、10%を超える場合には、
開栓時にミシン目部が切れにくく、開栓角度が大きくなり、開栓しにくくなるという問題がある。
次に、本発明では、大きさが0.5μm以上である金属間化合物の分布密度を3000〜10000個/mm2、面積率を0.5%以上、3.0%以下に限定し、さらに、大きさが3μm以上である金属間化合物の分布密度を300〜1500個/mm2に限定している。
上記特定の大きさの金属間化合物の分布密度が上記の範囲の下限を下回る場合には、キャップ開栓時に上記金属化合物が亀裂の起点、伝播経路になりにくい。また、上限を上回る場合には、伸びが小さく、成形時に割れやすくなるおそれがある。
本発明においてはMn含有量は0.2%以上である。これにより、所定の強度や金属間化合物を得やすいという効果が得られる。また、缶ボディ材3004合金、3104合金をリサイクルして使いやすいという効果が得られる。
また、上記アルミニウム合金板は、さらにCu:0.01〜0.25%、Cr:0.01〜0.25%、Zn:0.01〜0.25%、Ti:0.005〜0.05%のうち1種または2種以上を含むことが好ましい(請求項2)。
Cu:0.01〜0.25%;
Cuは、材料強度に影響を及ぼす元素である。0.01%未満の場合、その効果が得られないばかりでなく、純度の高い地金を使用する必要があり、コストアップとなる。0.25%を超えての添加は、圧延加工しにくくなる。
Cr:0.01〜0.25%、Zn:0.01〜0.25%、;
Cr、Znは、結晶粒微細化による成形性に影響を及ぼす元素である。それぞれ上記下限未満の場合、その効果が得られないばかりでなく、純度の高い地金を使用する必要があり、コストアップとなる。一方、上記上限を超える場合、結晶粒微細化効果は飽和するため、添加に要するコストアップを考慮すると上記上限とすることが好ましい。
Ti:0.005〜0.05%;
Tiは、鋳塊組織微細化による成形性向上に影響を及ぼす元素である。0.005%未満の場合、その効果が得られない。0.05%を超えると、未固溶のAl−Ti系化合物が最終製品の表面欠陥として現れやすくなる。
なお、鋳塊組織微細化剤としてAl−Ti−B中間合金を添加する場合は、Bが含有されるが、Bは0.02%以下の範囲で添加されるのが好ましい。
次に、上記元板又は上記空焼板の耳率試験に使用する絞りカップの開口部に発生する耳のうち、圧延方向に対し45°方向の4箇所、あるいは0°、90°、180°、270°方向の4箇所に発生する耳の耳率が2.5%以下であり、かつ圧延方向に対し0°と180°方向の2箇所に発生する耳の耳率が2.0%以下であることが好ましい(請求項3)。
上記45°方向4箇所の耳の耳率が2.5%を超えた場合、成形したキャップの裾部の印刷文字等の曲がりは45°方向において顕著となり、防止が困難となる。耳率は小さければ小さい程、つまり下限は0%であるのがよいが、金属板の性質上困難である。実際のところ0.5%〜2.0%の耳率であればより好ましい。
また、0°、90°、180°、270°方向の4箇所に発生する耳の耳率が2.5%を超えた場合においても、上記45°方向4箇所における耳率が2.5%を超えた場合と同様に、印刷文字等の曲がりが顕著になる。
さらに、圧延方向に対し0°と180°方向の2箇所に発生する耳の耳率が2.0%を超えた場合にも、成形したキャップ裾部の印刷文字等の曲がりを防止することが困難となる。Al−低Mg系合金の絞り加工の場合、圧延方向に対し特に0°と180°方向の耳が発生しやすく、この方向の耳を制御することがポイントとなる。そして、より確実に印刷文字等の曲がりを抑制するには、圧延方向に対し0°と180°に発生する耳の耳率を1.5%以下とすることが好ましい。
耳率の発生状態及び強度特性は、Mg、Mn、Si、Feの含有量だけではなく、その他の製造条件などによっても調整できる。
ここで、上記絞りカップは、上記キャップ用Al−Mg系合金板より切り出したブランクを所定の条件で絞り加工して得られるカップ状の試験材である。この絞りカップの開口端において、軸方向に突出した部分を耳、耳と耳との間において最も窪んだ部分を谷という。そして、絞りカップの底から耳先端までの距離を耳高さとし、絞りカップの底から谷先端までを谷高さとする。そして耳率は、次のようにして算出することができる。
<45°方向4箇所の耳の耳率>
45°耳高さ=A、135°耳高さ=B、225°耳高さ=C、315°耳高さ=D、
45°と135°の間の最小の谷高さ=E、
135°と225°の間の最小の谷高さ=F、
225°と315°の間の最小の谷高さ=G、
315°と45°の間の最小の谷高さ=H、
耳部の平均:M45=(A+B+C+D)/4、
谷部の平均:V45=(E+F+G+H)/4とすると、
耳率=〔(M45−V45)/{(M45+V45)/2}〕×100(%)
<0°、90°、180°、270°方向4箇所の耳の耳率>
0°耳高さ=A’、90°耳高さ=B’、180°耳高さ=C’、270°耳高さ=D’、0°と90°の間の最小の谷高さ=E’、
90°と180°の間の最小の谷高さ=F’、
180°と270°の間の最小の谷高さ=G’、
270°と0°の間の最小の谷高さ=H’、
耳部の平均:M’=(A’+B’+C’+D’)/4、
谷部の平均:V’=(E’+F’+G’+H’)/4とすると、
耳率=〔(M’−V’)/{(M’+V’)/2}〕×100(%)
<0°と180°方向2箇所の耳の耳率>
カップの平均高さ=P(開口端の高さを1000点測定した平均高さ)、
0°耳高さ=Q、180°耳高さ=R、
耳部の平均:S=(Q+R)/2、
耳率={(S−P)/P}×100(%)
<カップ絞り成形条件>
ダイス径33.6mm、ポンチ径33mm、ポンチ肩R1.5mmの金型を用い、供試材ブランク径55mmとして、絞り比1.67でカップ絞りを実施。
また、上記アルミニウム合金板は、結晶粒径が50μm以下であることが好ましい(請求項4)。
この場合には、キャップ成形時に肌荒れが起こりにくいという効果が得られる。
また、上記アルミニウム合金板は、90°繰り返し曲げ回数が14〜18回であることが好ましい(請求項5)。
90°繰り返し曲げは、後述する実施例に示すように、水平状態から所定の位置を基点として、曲げR=1.0mmの条件下で、一方に90°折り曲げ(これを1回と数える)、次いで、水平状態に戻した後(これも一回と数える)、反対方向に90°折り曲げる(これも1回と数える)ことを繰り返し、割れに至るまでの曲げ回数を評価し、キャップ開栓時のせん断力の指標とする試験である。
曲げ回数が14回未満の場合には、ミシン目部がせん断破壊しやすいため、内容物による内圧により、内容物の漏れやブローオフの危険性を有するキャップとなる可能性がある。
また、曲げ回数が18回を超える場合には、ミシン目部がせん断破壊し難いため、開栓しにくいキャップとなる場合がある。
次に、本発明のアルミニウム合金板を得るための好ましい製造条件について説明する。
基本的な製造工程は、鋳塊を均質化熱処理した後、熱間圧延をして板を形成し、焼鈍、冷間圧延、焼鈍、冷間圧延を順次行って製品板厚とし、最後に強度の安定化のために安定化熱処理することである。なお、この安定化熱処理の前あるいは後において、脱脂、化成処理等の表面処理をすることが多い。
上記均質化熱処理は、鋳塊を450〜550℃の温度に1〜24時間保持する条件である。保持温度450℃未満あるいは保持時間が1時間未満であると耳の生成が不安定となり制御が困難となる。保持温度が550℃超えあるいは保持時間が24時間超えの場合、表面にMgが拡散しやすく、表面の酸化Mg層が厚くなり、面削量を過度に多くする必要があり非経済的である。
続いて、例えば、熱間圧延−焼鈍1−冷間圧延1−焼鈍2−冷間圧延2−安定化熱処理を順次行う。この工程で、所定の強度と耳率を得ることができる。
上記焼鈍1、2では、300〜550℃の温度に保持する条件で行う。保持温度が300℃未満の場合、最終板で所定の耳率が得られず、また、強度が高くなりすぎて成形性に劣る。保持温度が550℃超えの場合、表面が酸化しやすくなり好ましくない。なお、保持時間は特に限定しないが、連続焼鈍ラインなどによる急速加熱・急速冷却の比較的高温での焼鈍の場合、保持0〜20秒、バッチ式焼鈍炉による比較的低温での焼鈍の場合保持30分〜5時間が適当である。
上記焼鈍2後の冷間圧延2は、30〜70%の範囲で行えばよい。圧延率が30%未満では所定の強度を得にくく、所定の耳率を得にくくなる。圧延率が70%超えでは、成形性が低下し強度が高すぎて開栓しにくくなり、また、圧延集合組織が発達しすぎて45°方向の耳が大きくなる。
キャップ用素材としての性能は冷間圧延のままでほぼ達成されるが、Al−Mg系合金の場合、冷間圧延のままの状態で室温放置すると、強度が次第に低下する現象が起こる。それを防止し強度を安定化させるために、100〜300℃の温度で30分以上加熱する熱処理(安定化熱処理)が必要である。100℃未満では強度が安定せず、上限の300℃を超えると、軟化が大きくなり所定の強度を得ることができない。
本例の内容を具体的な実施例により説明するが、以下は本発明の一実施例を示したものであり、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例及び参考例
表1に示す化学成分を含有する厚さ500mm、幅800mm、長さ2000mmのアルミニウム合金鋳塊をDC鋳造にて造塊し、表面の偏析層を15mm切削後、500℃で12時間保持する均質化熱処理し、均質化熱処理炉から出してすぐに熱間圧延を450℃で開始した。板厚3mmまで熱間圧延を行い、250℃で終了した。その後、380℃で1時間、バッチ式焼鈍炉を用いて焼鈍を行うことで再結晶組織を得た後に、板厚0.5mmまで冷間圧延し、さらに500℃で3秒、連続焼鈍ラインを用いて中間焼鈍して再結晶組織とした後、40%の圧延率で、板厚0.3mmまで冷間圧延し、安定化熱処理を200℃で2時間行い、供試材とした。
得られた6種類の供試材E1〜E6を用い、以下の評価試験をした。一部の試験片は、材料組織観察をした。
Figure 0004943714
<強度>
JIS5号試験片にて、引張試験を行い、引張強さ、耐力、伸びを測定した。
<耳率>
ダイス径33.6mm、ポンチ径33mm、ポンチ肩R1.5mmの金型を用い、供試材ブランク径55mmとして、絞り比1.67でカップ絞りを実施。
耳率は、前述の条件により成形したカップを、前述の式から、45°方向4箇所(A方向)の耳の耳率、0°、90°、180°、270°方向4箇所(B方向)の耳の耳率、及び0°と180°方向2箇所の耳の耳率を測定した。
<結晶粒径>
供試材板面を電解研磨し、偏光顕微鏡で結晶粒を観察した。ASTMカードを用いて、比較法から、結晶粒径を求めた。
<繰り返し曲げ>
繰り返し曲げ試験は、まず、図1に示すごとく、圧延方向を長手とする長さ200mm、幅12.5mmの供試材1をチャック5で保持し、供試材1が撓むことなく荷重がかかるようにする。そして、供試材1に、耐力の約15%程度の応力を負荷した状態で、同図に示すごとく、上記チャック5を回転させて曲げR=1.0mmの曲げを与えることで行う。
すなわち、上記繰り返し曲げ試験は、基点から一方に90°折り曲げ(a)、次いで、基点に戻した後(b)、反対方向に90°折り曲げ(c)、再び基点に戻す(d)ことを繰り返す両振り試験である。
曲げ回数は、90度折り曲げる度に1回とカウントし、割れに至るまでの繰り返し曲げ回数を評価した。
上記繰り返し曲げ試験においては、割れが発生して荷重に変化が起きると曲げが止まるように構成してある。繰り返し曲げ回数は次のようにして算出する。
90°曲げた回数をXとし、X回繰り返し曲げを行った後、繰り返し曲げ試験機が止まるまでに動いた角度を90°で割ったものをYとする。そして、繰り返し曲げ回数=X+Yとして、小数点以下1桁までの数字を採用する。また、各供試材において、割れに至るまでの繰り返し試験を5回行った平均値を測定結果とする。
表2にこれらの評価結果を示す。なお、同表の耳率におけるA、Bは、A:45°方向4箇所、B:0°、90°、180°、270°方向4箇所の耳の耳率であることを示している(表4においても同様である。)。
本例の供試材E1〜E6は、引張強さ、耐力、伸び、耳率、結晶粒径というすべての評価項目において、いずれも広口ボトル缶キャップ用のキャップ材として良好な結果を示した。
Figure 0004943714
(比較例
表3に示す本発明の請求範囲外である成分を有するアルミニウム合金鋳塊を、前述の実施例及び参考例と同じ条件で製造し、供試材C1〜C6を得た。
Figure 0004943714
これらの評価結果を表4に示す。
表4から知られるように、試料C1は、Mg及びMg+Mnの含有量が本発明の上限を超えているため、引張強さ、耐力が大きく、強度が高すぎになる。また、異方性のバランスが悪くなり、45°方向4箇所の耳の耳率が本発明の好ましい範囲の上限を超えるため、文字曲がりの防止が困難となる。また、繰り返し曲げ回数が本発明の好ましい範囲の下限を下回っているため、ミシン目部がせん断破壊しやすいため、内容物による内圧により、内容物の漏れやブローオフの危険性を有するキャップとなる可能性がある。
また、試料C2は、Mg及びMg+Mnの含有量が、本発明の下限を下回っているため、引張強さ、耐力を得ることができず、強度が不足し、所定の耐圧を得ることができない。また、結晶粒組織が本発明の好ましい範囲の上限を超えているため、キャップ成形時に肌荒れが起こりやすくなる。
試料C3は、Mg+Mnの含有量が本発明の上限を超えているため、引張強さ、耐力が大きく、強度が高すぎになり、また、異方性のバランスが悪くなり、45°方向4箇所の耳の耳率が本発明の好ましい範囲の上限を超えるため、文字曲がりの防止が困難となる。また、繰り返し曲げ回数が本発明の好ましい範囲の下限を下回っているため、ミシン目部がせん断破壊しやすいため、内容物による内圧により、内容物の漏れやブローオフの危険性を有するキャップとなる可能性がある。
試料C4は、Mg+Mnの含有量が本発明の下限を下回っているため、引張強さ、耐力を得ることができず、強度が不足し、所定の耐圧を得ることができない。また、繰り返し曲げ回数が本発明の好ましい範囲の上限を上回っているため、ミシン目部がせん断破壊し難いため、開栓しにくいキャップとなる可能性がある。
また、0°と180°方向2箇所の耳の耳率が本発明の好ましい範囲の上限を超えるため、文字曲がりの防止が困難となる。
試料C5は、Si+Feの含有量が本発明の上限を超えており、さらに0.5μm以上である金属間化合物の分布密度及び面積率が本発明の上限を超え、また、大きさが3μm以上である金属間化合物の分布密度が本発明の上限を超えているため、金属間化合物の量が過剰になり、伸びの低下や、成形時に割れやすくなる。
また、試料C6は、Si+Feの含有量が本発明の下限を下回るため、開栓時に必要な金属間化合物の量が確保できない。すなわち、表2に示すごとく、0.5μm以上である金属間化合物の分布密度及び面積率、また大きさが3μm以上である金属間化合物の分布密度が本発明の下限を下回る。そのため、キャップ開栓時の亀裂の起点、伝播経路となる金属間化合物が少ないため、開栓し難いキャップとなる可能性がある。
Figure 0004943714
繰り返し曲げ試験機を示す説明図。
符号の説明
1 供試材
5 チャック

Claims (5)

  1. 塗装・印刷後に、直径28mmを超える円筒状のカップに成形し、該カップの耳部をトリミングした後、裾部にミシン目を加工し、その後、内容物が充填された飲料容器のネジ部に巻き締めされる広口ボトル缶キャップ用の高強度アルミニウム合金板であって、
    Mg:1.0〜2.0%(重量%、以下同じ)、
    Mn:0.2〜1.0%、
    Si:0.01〜0.5%、
    Fe:0.01〜0.69%を含み、残部が不可避的不純物とアルミニウムからなり、
    MgとMnとの合計量が1.5〜2.5%、
    SiとFeとの合計量が0.2〜0.7%であり、
    上記アルミニウム合金板の元板の引張強さが200〜270MPa、耐力が170〜240MPa、伸びが3〜8%であり、
    上記元板に対して、200℃の温度で10分間保持する熱処理を施した空焼板の引張強さが200〜270MPa、耐力が160〜230MPa、伸びが5〜10%であり、
    大きさが0.5μm以上である金属間化合物の分布密度が3000〜10000個/mm2であると共に、上記金属間化合物の面積率が、0.5〜3.0%であり、
    大きさが3μm以上である金属間化合物の分布密度が300〜1500個/mm2であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。
  2. 請求項1において、上記アルミニウム合金板は、さらにCu:0.01〜0.25%、Cr:0.01〜0.25%、Zn:0.01〜0.25%、Ti:0.005〜0.05%のうち1種または2種以上を含むことを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。
  3. 請求項1又は2において、上記元板又は上記空焼板の耳率試験に使用する絞りカップの開口部に発生する耳のうち、圧延方向に対し45°方向の4箇所、あるいは0°、90°、180°、270°方向の4箇所に発生する耳の耳率が2.5%以下であり、かつ圧延方向に対し0°と180°方向の2箇所に発生する耳の耳率が2.0%以下であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。
  4. 請求項1〜3のいずれか1項において、上記アルミニウム合金板の結晶粒径が50μm以下であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。
  5. 請求項1〜4のいずれか1項において、上記アルミニウム合金板の90°繰り返し曲げ回数が14〜18回であることを特徴とする広口ボトル缶キャップ用高強度アルミニウム合金板。
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