JP2016079502A - 缶蓋用アルミニウム合金板 - Google Patents
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Abstract
【課題】板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板の提供。
【解決手段】Mg:3.8〜5.5%、Fe:0.1〜0.5%、Si、0.05〜0.3%、Mn:0.01〜0.6%、Cu:0.01〜0.3%を含有する、5000系Al合金板で、板厚中心部の組織として、転位密度:0.5×1015〜2×1015/m2であり、サブグレイン面積率:10〜90%の範囲の缶蓋用アルミニウム合金板である。
【選択図】図1
【解決手段】Mg:3.8〜5.5%、Fe:0.1〜0.5%、Si、0.05〜0.3%、Mn:0.01〜0.6%、Cu:0.01〜0.3%を含有する、5000系Al合金板で、板厚中心部の組織として、転位密度:0.5×1015〜2×1015/m2であり、サブグレイン面積率:10〜90%の範囲の缶蓋用アルミニウム合金板である。
【選択図】図1
Description
本発明は、缶蓋用アルミニウム合金板に関し、高強度と優れた成形性、及び優れた開缶性を兼備したイージーオープン缶蓋用アルミニウム合金板に関する。
現在、飲料、食品用途に汎用される包装容器の1つとして、底と側壁が一体構造の有底円筒状の胴部(缶胴、キャンボディ)と、この胴部の開口部に封止されて上面となる円板状の蓋部(缶蓋、キャンエンド)とからなる2ピースのオールアルミ缶が周知である。
このようなアルミ缶の材料として、各々に要求される強度、成形性などの違いから、缶胴にはAA乃至JIS3000系(Al−Mn系)のアルミニウム合金板、缶蓋にはAA乃至JIS5000系(Al−Mg系)のアルミニウム合金板などが使い分けられて、汎用されている。
このうち、缶蓋用5000系アルミニウム合金板に求められる重要な特性として、蓋加工に耐える成形性と、飲料充填後の缶の内圧に耐える耐圧強度、装着したタブによって正常かつ簡単に蓋が開けられるための開缶性などがあげられる。
近年、缶の低コスト化の観点から、これら缶蓋、すなわち缶蓋用5000系アルミニウム合金板も、板厚を0.2mm程度に薄肉化することが求められている。このような薄肉化に対する課題としては、耐圧強度の低下、成形性の低下などが挙げられる。このうち、耐圧強度の低下は、アルミニウム合金板の材料強度を高くすることで補うことができるが、このような高強度化に伴って、成形性が低下するという問題が生じる。このため、缶蓋用アルミニウム合金板を薄肉化するには、強度と成形性とを共に向上させることが必要である。
缶蓋用5000系アルミニウム合金板を薄肉化しても、材料強度を保ったまま成形性を向上させる技術として、従来から、金属間化合物(開缶性、成形性)、結晶粒径(成形性)、サブグレインあるいは集合組織などの組織制御などが種々行われてきた。
例えば、特許文献1には、缶蓋用5000系アルミニウム合金板の前記組織制御のうち、板の内部組織におけるサブグレインの面積占有率を3乃至30%に制御して、缶蓋を缶胴に巻き締める際の、カーリング性及び巻き締め性を向上させることが提案されている。
ただ、従来の缶蓋用5000系アルミニウム合金板には、缶蓋に成形する際のリベット成形性の向上には未だ課題があり、薄肉化した場合に高強度化すると、リベット成形性が低下し、優れたリベット成形性を得るには材料強度を低下させる必要がある、という課題があった。
ここで、缶蓋成形工程について説明する。まず、素材を円板形状に打ち抜いた後に、絞り加工でシェルを成形し、次にコンバージョン成形にて、プレス機で、シェルの中央にタブを取り付けるための凸部を形成するリベット成形を行う。
このリベット成形は、缶蓋中央部を張り出させるバブル成形工程と、この張出部(バブル)を1〜3工程で縮径しつつ急峻な突起とするボタン成形工程とで構成される。
このリベット成形後に、断面がV字形の刃先をした金型を押し付けて、飲み口部の溝である、図2、3のスコア3の成形や、パネルの剛性を高めるための凹凸や文字の成形を行う。その後、ステイク工程として、シェルの中央に加工した凸部に、別途成形したタブをかしめて一体化する。
このリベット成形は、缶蓋中央部を張り出させるバブル成形工程と、この張出部(バブル)を1〜3工程で縮径しつつ急峻な突起とするボタン成形工程とで構成される。
このリベット成形後に、断面がV字形の刃先をした金型を押し付けて、飲み口部の溝である、図2、3のスコア3の成形や、パネルの剛性を高めるための凹凸や文字の成形を行う。その後、ステイク工程として、シェルの中央に加工した凸部に、別途成形したタブをかしめて一体化する。
この際、タブを正常に固定するためには、ステイク後のリベット径の大きさを確保する必要があり、そのため、ボタン成形工程終了後の突起(ボタン)高さを十分に高く成形できるリベット成形性が素材に求められる。
これに対して、前記特許文献1のようにサブグレインの面積占有率を3乃至30%に制御した素材板であっても、高強度化すると、前記リベット成形性が低下し、優れたリベット成形性を得るには、材料強度を低下させる必要があった。すなわち、リベット成形性と高強度化とを両立させることには未だ限界があった。
このような課題に対して、本発明は、高い材料強度を有するにも関わらず、十分なリベット成形性を有することができ、薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための本発明缶蓋用アルミニウム合金板の要旨は、Mg:3.8〜5.5質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.30質量%、Mn:0.01〜0.60質量%、Cu:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板であって、圧延面と平行な面における、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)の領域の組織として、X線回折により測定された転位密度が平均で0.5×1015m-2以上、2.0×1015m-2以下であり、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率が平均で10%以上、90%以下であることとする。
上記のように本発明で規定する板の組織と特性は、缶蓋用アルミニウム合金板として、冷延板に塗装および塗装焼付け処理を施した後のアルミニウム合金板、あるいは、この板を成形した缶蓋の組織と特性として規定している。また、前記冷延板に、塗装焼付け処理を模擬した、後述する特定条件での熱処理を施した後の板の組織と特性であっても良い。
本発明は、缶蓋用アルミニウム合金板の組織として、サブグレイン面積率を増加させるとともに、転位密度を増加させて、サブグレイン面積率と転位密度とが一定の範囲にバランスさせた組織として、成形性を保ったまま高強度化する。これによって、本発明は、従来は兼備させることが困難であった、優れたリベット成形性と高強度とを両立させることができる。
したがって、本発明は、従来のように、リベット成形性を得るために、材料強度を低下させる必要が無く、高い材料強度を有するにも関わらず、十分なリベット成形性を有することができる。このため、板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供できる。
本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金板を実施するための形態について、以下に説明する。
(アルミニウム合金組成)
缶蓋用アルミニウム合金板は、前記した通り、缶蓋に求められる特性として、蓋加工に耐える成形性、飲料充填後の内圧に耐える耐圧強度、正常かつ簡単に開けられるための開缶性を満たす必要がある。
缶蓋用アルミニウム合金板は、前記した通り、缶蓋に求められる特性として、蓋加工に耐える成形性、飲料充填後の内圧に耐える耐圧強度、正常かつ簡単に開けられるための開缶性を満たす必要がある。
したがって、本発明に係る缶蓋用アルミニウム合金板の合金組成も、この要求特性を合金組成面から満たすために、Mg:3.8〜5.5質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.30質量%、Mn:0.01〜0.60質量%、Cu:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるものとする。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。以下に、含有する各元素の意義につき、順に説明する。
Mg:3.8〜5.5質量%
Mgは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が3.8質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、缶蓋に成形したときの耐圧強度が不足する。一方、Mgの含有量が5.5質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となって、成形性、特にリベット成形性が低下する。従って、Mgの含有量は3.8〜5.5質量%とする。
Mgは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。Mgの含有量が3.8質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度が不十分であり、缶蓋に成形したときの耐圧強度が不足する。一方、Mgの含有量が5.5質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となって、成形性、特にリベット成形性が低下する。従って、Mgの含有量は3.8〜5.5質量%とする。
Fe:0.10〜0.50質量%
Feは、アルミニウム合金板中にAl−Fe(−Mn)系、Al−Fe(−Mn)−Si系金属間化合物を形成し、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Feの含有量が0.10質量%未満の場合、スコア部の引裂き性が向上せず、開缶時にスコア脱線(開缶時にスコア部以外に亀裂が伝播すること)や開缶力の増大によるタブ折れといった開缶不良が生じ易くなる。一方、Feの含有量が0.50質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物の数密度や体積率が大きくなり、リベット成形性が低下する。従って、Feの含有量は0.10〜0.50質量%とする。
Feは、アルミニウム合金板中にAl−Fe(−Mn)系、Al−Fe(−Mn)−Si系金属間化合物を形成し、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Feの含有量が0.10質量%未満の場合、スコア部の引裂き性が向上せず、開缶時にスコア脱線(開缶時にスコア部以外に亀裂が伝播すること)や開缶力の増大によるタブ折れといった開缶不良が生じ易くなる。一方、Feの含有量が0.50質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物の数密度や体積率が大きくなり、リベット成形性が低下する。従って、Feの含有量は0.10〜0.50質量%とする。
Si:0.05〜0.30質量%
Siは、アルミニウム合金板中にMg−Si系、Al−Fe(−Mn)−Si系金属間化合物を形成し、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Siの含有量が0.05質量%未満の場合、Feと同様に開缶性が向上しない。また、アルミニウム合金板の原材料に使用するアルミニウム地金の必要純度が高くなるため、コストが増大する。一方、Siの含有量が0.30質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物が多くなり、リベット成形性が低下する。従って、Siの含有量は0.05〜0.30質量%とする。
Siは、アルミニウム合金板中にMg−Si系、Al−Fe(−Mn)−Si系金属間化合物を形成し、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Siの含有量が0.05質量%未満の場合、Feと同様に開缶性が向上しない。また、アルミニウム合金板の原材料に使用するアルミニウム地金の必要純度が高くなるため、コストが増大する。一方、Siの含有量が0.30質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物が多くなり、リベット成形性が低下する。従って、Siの含有量は0.05〜0.30質量%とする。
Mn:0.01〜0.60質量%
Mnは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果があるとともに、アルミニウム合金板中にAl−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成させ、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Mnの含有量が0.01質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度向上効果や缶蓋に成形したときの開缶性向上効果が得られない。一方、Mnの含有量が0.60質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物が多くなり、リベット成形性が低下する。従って、Mnの含有量は0.01〜0.60質量%とする。
Mnは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果があるとともに、アルミニウム合金板中にAl−Fe−Mn系、Al−Fe−Mn−Si系金属間化合物を形成させ、缶蓋に成形したときのスコア部の引裂き性を高め、開缶性を向上させる効果がある。Mnの含有量が0.01質量%未満の場合、アルミニウム合金板の強度向上効果や缶蓋に成形したときの開缶性向上効果が得られない。一方、Mnの含有量が0.60質量%を超える場合、アルミニウム合金板中の鋳造や熱延時に生成する金属間化合物が多くなり、リベット成形性が低下する。従って、Mnの含有量は0.01〜0.60質量%とする。
Cu:0.01〜0.30質量%
Cuは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。また、固溶させることにより、加工硬化特性が向上する。Cuの含有量が0.01質量%末満の場合、母相への固溶量が少なく、強度が低下する。一方、Cuの含有量が0.30質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、リベット成形性が低下する。従って、Cuの含有量は0.01〜0.30質量%とする。
Cuは、アルミニウム合金板の強度を向上させる効果がある。また、固溶させることにより、加工硬化特性が向上する。Cuの含有量が0.01質量%末満の場合、母相への固溶量が少なく、強度が低下する。一方、Cuの含有量が0.30質量%を超える場合、アルミニウム合金板の強度が過剰となり、リベット成形性が低下する。従って、Cuの含有量は0.01〜0.30質量%とする。
不可避不純物
本発明に係るアルミニウム合金は、前記必須成分以外に、残部Alと不可避不純物とからなる。不可避不純物は、Crが0.3質量%以下、Znが0.3質量%以下、Tiが0.1質量%以下、Zrが0.1質量%以下、Bが0.1質量%以下、その他の元素が各々0.05質量%以下の範囲内で許容される。不可避不純物の含有量がこの範囲内であれば、本発明に係るアルミニウム合金板の特性に影響しない。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
本発明に係るアルミニウム合金は、前記必須成分以外に、残部Alと不可避不純物とからなる。不可避不純物は、Crが0.3質量%以下、Znが0.3質量%以下、Tiが0.1質量%以下、Zrが0.1質量%以下、Bが0.1質量%以下、その他の元素が各々0.05質量%以下の範囲内で許容される。不可避不純物の含有量がこの範囲内であれば、本発明に係るアルミニウム合金板の特性に影響しない。なお、各元素の含有量の%表示は全て質量%の意味である。
(アルミニウム合金板の組織)
本発明では、前記した合金組成とした上で、この缶蓋用アルミニウム合金板の組織として、サブグレイン面積率を増加させるとともに、転位密度を増加させて、サブグレイン面積率と転位密度とが一定の範囲にバランスさせた組織として、成形性を保ったまま高強度化する。
本発明では、前記した合金組成とした上で、この缶蓋用アルミニウム合金板の組織として、サブグレイン面積率を増加させるとともに、転位密度を増加させて、サブグレイン面積率と転位密度とが一定の範囲にバランスさせた組織として、成形性を保ったまま高強度化する。
このために、前記焼付塗装処理された後の缶蓋用アルミニウム合金板の、圧延面と平行な面における、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)の板厚中心部の領域(以下、単に板厚中心部と言う)の組織として、X線回折により測定された転位密度が平均で0.5×1015m-2以上、2.0×1015m-2以下であり、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率が平均で10%以上、90%以下であることとする。
従来の製造方法によれば、前記特許文献1を含めて、サブグレイン面積率と転位密度とを共に増加させ、両者をバランスさせた組織とすることは難しい。これに対して、本発明は、後述する通り、板の製造方法、特に冷延条件を工夫して、サブグレイン面積率と転位密度とを共に増加させ、両者を一定の範囲にバランスさせる。
これによって、本発明は、従来は兼備させることが困難であった、リベット成形性と高強度化とを両立させることができる。すなわち、缶蓋用アルミニウム合金板の特性として、冷間圧延後に焼付塗装処理された後の缶蓋用アルミニウム合金板の0.2%耐力と、この板のリベット成形性とを、共に高いレベルとすることができる。
より具体的には、後述する実施例の通り、0.2%耐力が300MPa以上であっても、限界張出高さが1.45mm以上の、高強度、高成形性とすることができる。板の限界張出高さが1.45mm以上であれば、缶蓋の実成形時にも十分な高さの前記した突起(ボタン)を成形することができ、十分なリベット成形性を有している。
なお、このデータは、冷間圧延後に焼付塗装処理された後の缶蓋用アルミニウム合金板の特性として、後述する実施例の通り、塗装焼付け処理を模擬した、255℃×20秒の熱処理後の0.2%耐力と、この板のリベット成形性の評価をφ6mmの微小張出試験を行った際の限界張出高さとした場合の、強度と成形性との関係である。
転位密度
以下に、転位密度の規定につき具体的に説明する。
転位とは、周知の通り、冷延によって缶蓋用アルミニウム合金板に導入された線状あるいは筋状の欠陥である。図1に示す通り、これらの転位は5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により、線状あるいは筋状として識別できる。転位密度が大きいと、転位の切り合いなどにより、林立転位が形成され、別の転位の移動の障害となり、強度が増加する。
以下に、転位密度の規定につき具体的に説明する。
転位とは、周知の通り、冷延によって缶蓋用アルミニウム合金板に導入された線状あるいは筋状の欠陥である。図1に示す通り、これらの転位は5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により、線状あるいは筋状として識別できる。転位密度が大きいと、転位の切り合いなどにより、林立転位が形成され、別の転位の移動の障害となり、強度が増加する。
本発明では、この転位につき、缶蓋用アルミニウム合金板の前記板厚中心の組織として、X線回折により測定された転位密度として、0.5×1015m-2以上、2.0×1015m-2以下とする。
ここで、転位密度とは、転位の量を表す指標であり、1m3当たりの結晶に存在する転位線の長さの総計を表し、転位密度ρ(m/m3=m−2)で表す。
この転位密度が平均で0.5×1015m-2より小さいと強度が低くなる。一方、転位密度が平均で2.0×1015m-2を超えて大きいと、リベット成形性が低下する。従って、転位密度を平均で0.5×1015m-2以上、2.0×1015m-2以下の範囲としないと、例え、前記合金組成を満たし、また、サブグレイン面積率を満たしたとしても、缶蓋用アルミニウム合金板のリベット成形性と高強度化とが両立できない。
転位密度の測定方法
転位密度を透過型電子顕微鏡により計測することも行われているが、本発明では、X線回折により測定する。転位のうち、線状、筋状の転位が密集した領域(セル壁やせん断帯)は、透過型電子顕微鏡では判別しにくく、転位密度ρを求める際の測定誤差となりうる。これに対して、X線回折では、後述する通り、集合組織における各面からの回折ピークの半価幅から転位密度ρを算出するために、このような林立転位であっても誤差が少なくなる利点がある。
転位密度を透過型電子顕微鏡により計測することも行われているが、本発明では、X線回折により測定する。転位のうち、線状、筋状の転位が密集した領域(セル壁やせん断帯)は、透過型電子顕微鏡では判別しにくく、転位密度ρを求める際の測定誤差となりうる。これに対して、X線回折では、後述する通り、集合組織における各面からの回折ピークの半価幅から転位密度ρを算出するために、このような林立転位であっても誤差が少なくなる利点がある。
冷延などの塑性変形を加えて転位を導入した組織では、転位を中心に格子歪みが生じる。また、転位の配列により小傾角粒界、セル構造などが発達する。このような転位やそれに伴うドメイン構造をX線回折パターンからとらえると、回折指数に応じた特徴的な拡がり、形状が回折ピークに現れる。この回折ピークの形状(ラインプロファイル)を解析(ラインプロファイル解析)して、転位密度を求めることができる。
すなわち、具体的には、先ず、缶蓋用アルミニウム合金板の前記板厚中心部のX線回折により、この5000系アルミニウム合金板の板厚中心部の集合組織における主要な方位である、(111)、(200)、(220)、(311)、(400)、(331)、(420)、(422)の各面(各方位面)からの回折ピークの半価幅を求める。転位密度ρが高いほど、これら各面の回折ピークの半価幅は大きくなる。
次に、これらの各面の回折ピークの半価幅から、Williamson-Hall法により、格子ひずみ(結晶歪み)εを求めた上で、下記の式により転位密度ρを算出することができる。
ρ= 16.1ε2/b2
ここで、ρは転位密度、εは格子ひずみ、bはバーガースベクトルの大きさである。
また、バーガースベクトルの大きさには2.8635×10-10mを用いた。
ρ= 16.1ε2/b2
ここで、ρは転位密度、εは格子ひずみ、bはバーガースベクトルの大きさである。
また、バーガースベクトルの大きさには2.8635×10-10mを用いた。
上記Williamson-Hall法は、複数の回折の半価幅と回折角の関係から転位密度や結晶粒径を求めるために汎用されている公知のラインプロファイル解析法である。また、これらX線回折による転位密度の一連の求め方も公知であり、これらX線回折による転位密度の一連の求め方を総称して、本発明では転位密度を「X線回折により測定された転位密度」と称している。
サブグレイン
以下に、サブグレインの規定につき具体的に説明する。
サブグレインは、亜結晶とも称され、小さな不定形の粒であり、冷延などにより加工歪を与えられて転位を導入された材料(組織)が、与えられた温度、時間、応力のもと、エネルギーの低い構造になろうと回復を進めることによって生じる。
以下に、サブグレインの規定につき具体的に説明する。
サブグレインは、亜結晶とも称され、小さな不定形の粒であり、冷延などにより加工歪を与えられて転位を導入された材料(組織)が、与えられた温度、時間、応力のもと、エネルギーの低い構造になろうと回復を進めることによって生じる。
すなわち、缶蓋用アルミニウム合金板の場合、サブグレインは、冷延によって導入された転位が、焼付け塗装時の加熱などによって、合体消滅と再配列することにより、転位セル壁や変形帯などの転位密集領域の転位密度が減少して、シャープな境界になることで生じる。前記転位密集領域は、新たに移動してきた転位と合体消滅する確率が高く、加工硬化特性が低下するが、サブグレインの境界は転位の移動を妨げ、加工硬化特性が向上すると考えられる。加工硬化特性が向上すると均一変形能が向上するため、二軸張出変形であるリベット成形性が向上すると考えられる。また、サブグレインは、リベット成形性の向上効果の他に、前記転位密度の効果よりも小さいが、強度の向上効果もある。
このサブグレインは、図1に示す通り、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により、結晶粒の中に出来る、その境界である外縁形状がシャープ(鮮明で明確)な、内部に転位の少ない、独立あるいは孤立した小さな一つ一つの不定形の粒として識別できる。したがって、この透過型電子顕微鏡の観察視野面積に対する、個々のサブグレインの計測面積の総計の割合として、規定するサブグレイン面積率を算出することができる。
これに対して、前記転位密集領域と接するか交わっており、その境界が幅を持っており、独立した小さな粒として識別できにくい粒は、本発明では、サブグレインとは見なさず、カウントしない。このような粒は、具体的には、図1に示すような、その一部か多くの部分が、前記転位密集領域と接するか交わっているか、全体としてその境界(外縁形状)がシャープでなく幅を持っている粒である。このような粒は、独立あるいは孤立した小さな一つ一つの粒として識別できにくいので、サブグレインとは見なさず、カウントしない。これら一連の求め方を総称して、本発明では「5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率」と称している。
本発明では、缶蓋用アルミニウム合金板の板厚中心部における、このようなサブグレイン面積率を平均で10%以上、90%以下であることとする。
このサブグレイン面積率が平均で10%未満と小さいと、板が高強度となるほど、リベット成形性が低下し、優れたリベット成形性と高強度とを両立することができない。すなわち、前記合金組成を満たし、前記転位密度の規定を満たしたとしても、缶蓋用アルミニウム合金板の成形性を保ったまま高強度化できない。
サブグレイン面積率は大きいほどリベット成形性が向上するが、前記転位密度とのバランスで、その面積率の上限を平均で90%とする。また、この面積率の上限は、実際の製造限界でもある。
したがって、本発明では、缶蓋用アルミニウム合金板の板厚中心部における、このようなサブグレイン面積率を平均で10%以上、90%以下であることとする。
したがって、本発明では、缶蓋用アルミニウム合金板の板厚中心部における、このようなサブグレイン面積率を平均で10%以上、90%以下であることとする。
ちなみに、前記特許文献1は、本発明の缶蓋用アルミニウム合金板と、合金組成やサブグレインの面積率(面積占有率)は重複するものの、その製造条件の違いから、転位密度が必然的に低くなる。前記特許文献1は、板の冷間圧延に、シングル圧延機ではなく、圧延スタンドが直列に並ぶタンデム圧延機を使用しており、強制的に冷却しない限り、必然的に圧延時の温度が上昇して、回復が進み過ぎ、転位密度が小さくなる。すなわち、缶蓋用アルミニウム合金板の成形性を保ったまま高強度化できずに、本発明とは、同じ強度レベルで比較した場合の、リベット成形性が低下する。
以上説明した本発明で規定する板の組織そして特性は、前記した通り、缶蓋用アルミニウム合金板として、冷延板(冷延後の板)に塗装および塗装焼付け処理を施した後のアルミニウム合金板(プレコート板)の組織と特性か、この板を成形した缶蓋の組織と特性である。また、このような塗装や塗装焼付け処理を施さずとも、あるいは缶蓋に成形せずとも、冷延板に、塗装焼付け処理を模擬した、後述する特定条件での熱処理を施した後の、板の組織と特性であっても良い。これらの組織と特性とは、前記塗装焼付け処理と前記熱処理との条件が同じであれば、同じか、あるいは僅差により同じと見なすことができる組織と特性となる。
(製造方法)
次に、本発明における缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法を説明する。
本発明のアルミニウム合金板の製造工程自体は、常法のように、前記組成のアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊とする鋳造工程と、鋳塊を熱処理により均質化する均熱処理工程と、均質化した鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、熱間圧延板を冷間圧延する冷間圧延工程によって製造される。
次に、本発明における缶蓋用アルミニウム合金板の製造方法を説明する。
本発明のアルミニウム合金板の製造工程自体は、常法のように、前記組成のアルミニウム合金を溶解、鋳造して鋳塊とする鋳造工程と、鋳塊を熱処理により均質化する均熱処理工程と、均質化した鋳塊を熱間圧延して熱間圧延板とする熱間圧延工程と、熱間圧延板を冷間圧延する冷間圧延工程によって製造される。
ただ、サブグレインは、冷延によって缶蓋用アルミニウム合金板に導入された転位(転位の密度)が減少することで生じるため、前記した常法だけでは、サブグレインと転位密度とを共に増加させることはできない。このため、本発明では、この公知の工程の中でも、後述する通り、熱延条件と冷延条件などを特に制御する。これによって、サブグレイン面積率と転位密度とを共に増加させることで、本発明のアルミニウム合金板で規定する組織として、成形性を保ったまま、高強度化する。以下、工程順に説明する。
まず、アルミニウム合金を溶解し、DC鋳造法等の公知の半連続鋳造法により、前記組成のアルミニウム合金を鋳造する。
次に、鋳塊表層の不均一な組織となる領域を面削にて除去した後、均質化熱処理を施す。これによって、内部応力を除去し、鋳造時に偏析した溶質元素を均質化し、鋳造時に晶出した金属間化合物を拡散固溶させて、組織が均質化される。このために、均質化熱処理は、450℃以上の温度で1時間以上保持する。
均質化熱処理温度が450℃未満か保持時間が1時間未満の場合、Mgの固溶量が減り、板の冷延時の中間焼鈍や、缶成形後の焼付け塗装時の加熱によっても、サブグレイン面積率を規定する平均で10%以上とすることができなくなる。また前記均質化効果が低下して、機械的な特性や開缶性が低下する。保持時間の上限は20時間であり、これを超えても、均質化効果に大差なく、生産性が低下する。
熱間圧延:
この均質化熱処理後、鋳塊を冷却することなく続けて、あるいは所定の開始温度まで冷却して、まず熱間粗圧延し、さらに熱間仕上圧延により、所定の板厚のアルミニウム合金熱間圧延板とする。この際、均熱処理によって確保したMgの固溶量を減らさないように、Mgの析出を抑えて、熱間圧延を行う。
この均質化熱処理後、鋳塊を冷却することなく続けて、あるいは所定の開始温度まで冷却して、まず熱間粗圧延し、さらに熱間仕上圧延により、所定の板厚のアルミニウム合金熱間圧延板とする。この際、均熱処理によって確保したMgの固溶量を減らさないように、Mgの析出を抑えて、熱間圧延を行う。
このために、熱間粗圧延は10分以内で行うことが好ましく、このため、全てのパスの定常速度を最低でも25m/分以上とし、かつ、パス間における粗圧延板が最低となる温度を450℃以上、好ましくは460℃以上とする。
全てのパスの定常速度について、このうちの1パスでも、25m/分未満の速度となると、圧延時間が長くなって、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなり、固溶Mg量が低下し、サブグレイン面積率を規定する平均で10%以上とすることができなくなる。
また、パス間における粗圧延板の最低温度が450℃未満となっても、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなり、固溶Mg量が低下し、サブグレイン面積率を規定する平均で10%以上とすることができなくなる。
更に、これら熱間粗圧延時など、熱延時に析出した前記化合物はサイズが大きく、Mgを固溶させるための後述する冷延途中の中間焼鈍条件によっても、固溶しにくい。
全てのパスの定常速度について、このうちの1パスでも、25m/分未満の速度となると、圧延時間が長くなって、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなり、固溶Mg量が低下し、サブグレイン面積率を規定する平均で10%以上とすることができなくなる。
また、パス間における粗圧延板の最低温度が450℃未満となっても、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなり、固溶Mg量が低下し、サブグレイン面積率を規定する平均で10%以上とすることができなくなる。
更に、これら熱間粗圧延時など、熱延時に析出した前記化合物はサイズが大きく、Mgを固溶させるための後述する冷延途中の中間焼鈍条件によっても、固溶しにくい。
この熱間粗圧延に続いて、終了温度を、好ましくは300〜360℃以上とした熱間仕上圧延を、Mg−Si系の化合物析出防止のために、遅滞なく、あるいは連続的に行って、熱延板とする。熱間仕上圧延の終了温度が300℃未満では、圧延荷重が高くなって生産性が低下する。一方、加工組織を多く残さず再結晶組織とするために、熱間仕上圧延の終了温度を高くした場合、この温度が360℃を超えると、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなって固溶Mg量が低下する。
冷間圧延:
次いで、この熱間圧延板を、1次冷間圧延(1次冷延)、中間焼鈍、2次冷間圧延(2次冷延)して冷間圧延板(冷延板)とする。この冷延は、圧延スタンドがシングル(1スタンド)か、圧延スタンドが2スタンド以上直列に配置されたタンデム圧延機で、必要なパス数(通板数)の冷延を行う。
この冷延は、シングル圧延機かタンデム圧延機を、1回あるいは2回以上通板(パス)する1次冷間圧延(1次冷延)工程と、この1次冷延板を焼鈍する中間焼鈍工程と、この中間焼鈍材を再度、シングル圧延機を2回以上通板(パス)するか、タンデム圧延機を1回か2回以上通板(パス)する2次冷間圧延(2次冷延)とからなる。
ここで、通板(パス)数とは、シングル圧延機あるいはタンデム圧延機を通る回数である。また、圧延回数とは、スタンドを板が通る回数であり、例えば圧延機が2スタンド直列に配置されたタンデム圧延機の場合、1回通板すると、前記圧延回数(スタンドを板が通る回数)は2回となる。
次いで、この熱間圧延板を、1次冷間圧延(1次冷延)、中間焼鈍、2次冷間圧延(2次冷延)して冷間圧延板(冷延板)とする。この冷延は、圧延スタンドがシングル(1スタンド)か、圧延スタンドが2スタンド以上直列に配置されたタンデム圧延機で、必要なパス数(通板数)の冷延を行う。
この冷延は、シングル圧延機かタンデム圧延機を、1回あるいは2回以上通板(パス)する1次冷間圧延(1次冷延)工程と、この1次冷延板を焼鈍する中間焼鈍工程と、この中間焼鈍材を再度、シングル圧延機を2回以上通板(パス)するか、タンデム圧延機を1回か2回以上通板(パス)する2次冷間圧延(2次冷延)とからなる。
ここで、通板(パス)数とは、シングル圧延機あるいはタンデム圧延機を通る回数である。また、圧延回数とは、スタンドを板が通る回数であり、例えば圧延機が2スタンド直列に配置されたタンデム圧延機の場合、1回通板すると、前記圧延回数(スタンドを板が通る回数)は2回となる。
前記1次冷延の総圧延率は、好ましくは50%以上とする。総圧延率が50%未満の場合、圧延による蓄積歪みが不足し、次工程の中間焼鈍にて再結晶粒径が大きくなり、リベット成形性を含む成形性が悪くなってしまう。
この1次冷延された冷延板は、中間焼鈍によって再結晶させる。この中間焼鈍は連続焼鈍工程(設備)で行い、材料保持温度450℃〜550℃の範囲、保持時間が10分以内の条件で行うことが好ましく、保持温度までの加熱速度及び前記保持温度からの冷却速度を、いずれも100℃/min以上とすることが好ましい。加熱速度が100℃/min未満の場合、保持温度が550℃を超える場合、保持時間が10分間を超える場合、そして冷却速度が100℃/min未満の場合、それぞれ焼鈍工程終了後の再結晶粒が大きくなり、リベット成形性が低下する。また、中間焼鈍の保持温度が380℃未満の場合、焼鈍工程終了後のアルミニウム合金板に加工組織が残留し、やはり、リベット成形性が低下する。
この1次冷延された冷延板は、中間焼鈍によって再結晶させる。この中間焼鈍は連続焼鈍工程(設備)で行い、材料保持温度450℃〜550℃の範囲、保持時間が10分以内の条件で行うことが好ましく、保持温度までの加熱速度及び前記保持温度からの冷却速度を、いずれも100℃/min以上とすることが好ましい。加熱速度が100℃/min未満の場合、保持温度が550℃を超える場合、保持時間が10分間を超える場合、そして冷却速度が100℃/min未満の場合、それぞれ焼鈍工程終了後の再結晶粒が大きくなり、リベット成形性が低下する。また、中間焼鈍の保持温度が380℃未満の場合、焼鈍工程終了後のアルミニウム合金板に加工組織が残留し、やはり、リベット成形性が低下する。
続いて、前記中間焼鈍した冷延板を、再度、圧延回数(スタンドを板が通る回数)が2回以上で2次冷延するが、この際の2次冷延の総圧延率は、転位密度を高めるために、60%以上と高くし、好ましくは80%超と高くする。この2次冷延の総圧延率が低いと転位密度が低くなる。また、サブグレインは転位密集領域から形成するが、総圧延率が60%未満と低いと、転位密集領域が少なくなり(不足して)、焼付け塗装後のサブグレイン面積率も減少する。
また、2次冷延では、転位密度を高くするために、総圧延率だけでなく、圧延回数(スタンドを板が通る回数)は2回以上行い、最終の圧延以外の、それまでの前スタンドでの圧延後(スタンドの出側)の材料温度は100℃以下とする。より具体的には、シングル圧延機の場合、2回以上通板(パス)し、最終回の圧延(最終通板あるいは最終パス)以外の、前圧延後の材料温度は100℃以下とする。タンデム圧延機の場合には、最終回のスタンド以外の、前スタンドとなる各スタンドの出側での材料温度を100℃以下とする。例えば、スタンドが二つある圧延機の場合、1回の通板で圧延回数は2回となり、1スタンド目の出側での材料温度を100℃以下とする。
これらの2次冷延条件によって、最終圧延前に転位を導入しておくことにより、最終圧延にて転位がタングル(もつれ、からみ)しやすくなり、前記セル壁やせん断帯などの転位密集領域が多く形成される。そして、その後の焼付け塗装などの熱処理により、転位密集領域からサブグレインが形成される。
これらの2次冷延条件によって、最終圧延前に転位を導入しておくことにより、最終圧延にて転位がタングル(もつれ、からみ)しやすくなり、前記セル壁やせん断帯などの転位密集領域が多く形成される。そして、その後の焼付け塗装などの熱処理により、転位密集領域からサブグレインが形成される。
これに対して、2次冷延における最終圧延以外(最終圧延前)の圧延後の材料温度が100℃を超えると、転位の回復が進行し、最終圧延前の転位密度が低くなるため、サブグレイン面積率が少なくなる。
ちなみに、2次冷間圧延での圧延率が高いほど、加工発熱が多くなって、圧延後の材料温度が100℃を超えて、150〜160℃の比較的高温になりやすい。このため、最終圧延前の圧延における、圧延後の(スタンド出側での)材料温度を100℃以下とするために、潤滑油やクーラントの量を、板を冷却するのに十分な量として、圧延される板の加工発熱を抑制して、最終圧延前の通板時における、圧延後の材料温度を100℃以下に制御する。
ちなみに、2次冷間圧延での圧延率が高いほど、加工発熱が多くなって、圧延後の材料温度が100℃を超えて、150〜160℃の比較的高温になりやすい。このため、最終圧延前の圧延における、圧延後の(スタンド出側での)材料温度を100℃以下とするために、潤滑油やクーラントの量を、板を冷却するのに十分な量として、圧延される板の加工発熱を抑制して、最終圧延前の通板時における、圧延後の材料温度を100℃以下に制御する。
以上の工程で製造した缶蓋用アルミニウム合金板は、クロメート系やジルコン系などの表面処理を施し、エポキシ系樹脂や塩ビゾル系、ポリエルテル系などの有機塗料を塗布し、PMT(Peak Metal Temperature:メタル到達温度)が230〜280℃で塗装焼付け処理して、プレコート板とされた後、缶蓋へと成形される。本発明で、強度とリベット成形性の評価のための、塗装焼付け処理を模擬した、前記熱処理は、この塗装焼付け処理条件範囲より、再現性を持たせるために255℃×20秒のワンポイントとして選択している。
(缶蓋の作製方法)
素材アルミニウム合金板(冷延板)から缶蓋を作製する公知の方法の一例を以下に説明する。
素材アルミニウム合金板(冷延板)から缶蓋を作製する公知の方法の一例を以下に説明する。
前記したように、予め塗装および焼付塗装処理された素材アルミニウム合金板(プレコート板)を円板形状に打ち抜いた(ブランキング加工)ブランク材を、プレス機で絞り加工し、外周部のカール加工を施した後、カール部にシール用のコンパウンドを塗布して、シェルを作る。
この後、コンバージョン成形として、以下の成形を行う。プレス機で、シェルの中央にタブを取り付けるための凸部を形成するリベット成形を行う。このリベット成形は、缶蓋中央部を張り出させるバブル成形工程と、この張出部(バブル)を1〜3工程で縮径しつつ急峻な突起とするボタン成形工程とで構成される。
この後、コンバージョン成形として、以下の成形を行う。プレス機で、シェルの中央にタブを取り付けるための凸部を形成するリベット成形を行う。このリベット成形は、缶蓋中央部を張り出させるバブル成形工程と、この張出部(バブル)を1〜3工程で縮径しつつ急峻な突起とするボタン成形工程とで構成される。
次に、断面がV字形の刃先をした金型を押し付けて、飲み口部の溝である、図2、3のスコア3の成形、パネルの剛性を高めるための凹凸や文字の成形を行う。
更に、シェルの中央に加工した凸部に、別途成形したタブをかしめて一体化する(これをステイク工程という)。この一体化した缶蓋の平面図を図2に示す。
そして、別途DI成形され、開口部から内容物(飲料、食品)が充填されたアルミニウム合金製の缶胴の開口部に、この缶蓋を巻き締めて封止される。
更に、シェルの中央に加工した凸部に、別途成形したタブをかしめて一体化する(これをステイク工程という)。この一体化した缶蓋の平面図を図2に示す。
そして、別途DI成形され、開口部から内容物(飲料、食品)が充填されたアルミニウム合金製の缶胴の開口部に、この缶蓋を巻き締めて封止される。
以上、本発明を実施するための形態について述べたが、以下に、本発明の効果を確認した発明例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
(供試材アルミニウム合金板)
表1に示す、No.1〜31の組成の各アルミニウム合金を半連続鋳造法(DC)にて鋳造し、各例とも共通して、鋳塊表層を面削してスラブを作製した。このスラブに、各例とも共通して、500℃×4時間の均質化熱処理を施した後、この500℃の温度で熱間粗圧延を開始し、続く熱間仕上げ圧延の終了温度を330℃として、板厚1.3〜5.1mmの熱間圧延板とした。
表1に示す、No.1〜31の組成の各アルミニウム合金を半連続鋳造法(DC)にて鋳造し、各例とも共通して、鋳塊表層を面削してスラブを作製した。このスラブに、各例とも共通して、500℃×4時間の均質化熱処理を施した後、この500℃の温度で熱間粗圧延を開始し、続く熱間仕上げ圧延の終了温度を330℃として、板厚1.3〜5.1mmの熱間圧延板とした。
この熱間圧延板に対し、各例とも共通して、1次冷間圧延(圧延率65%)後に、最高材料到達温度450℃で、保持時間が1分未満の条件で、連続焼鈍設備にて中間焼鈍を行った。この中間焼鈍の際の、前記保持温度までの加熱速度及び前記保持温度からの冷却速度は、いずれも共通して、100℃/min以上とした。その後、2次冷間圧延を、各例とも共通して、圧延回数2回にて順次行った。
この際、表1に示すように、前記熱間粗圧延における定常速度やパス間における粗圧延板の最低温度、2次冷延における総圧延率と、最終圧延(2回目の圧延)前の1回目の圧延後(スタンド出側)の材料温度とを種々変えた上で、各例とも共通して、板厚0.215mmの缶蓋用アルミニウム合金板を作製した。
このように製造した、表1のNo.1〜30のアルミニウム合金板を、塗装焼付け処理を模擬し、共通して、塗装はせずに、オイルバスによる255℃×20秒の熱処理のみを施したものを、以下の組織や特性の測定、評価のための供試材とした。
(組織解析)
前記供試材の圧延面と平行な面における、各板厚中心部の組織について、X線回折により転位密度、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡によりサブグレイン面積率を各々測定して、それぞれサンプル数あるいは測定視野数に応じた平均値にて算出した。
前記供試材の圧延面と平行な面における、各板厚中心部の組織について、X線回折により転位密度、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡によりサブグレイン面積率を各々測定して、それぞれサンプル数あるいは測定視野数に応じた平均値にて算出した。
(転位密度)
前記X線回折測定には、株式会社リガク製X線回折装置を用い、ターゲットにCuを用い、管電圧45kV、管電流200mA、走査速度1°/min、サンプリング幅0.02°、測定範囲(2θ)30°〜145°の条件で行った。X線回折は、前記供試材の任意の部位5か所の圧延面と平行な面における各板厚中心部(板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)の領域)について行い、前記した要領にて、転位密度を算出した。
前記X線回折測定には、株式会社リガク製X線回折装置を用い、ターゲットにCuを用い、管電圧45kV、管電流200mA、走査速度1°/min、サンプリング幅0.02°、測定範囲(2θ)30°〜145°の条件で行った。X線回折は、前記供試材の任意の部位5か所の圧延面と平行な面における各板厚中心部(板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)の領域)について行い、前記した要領にて、転位密度を算出した。
(サブグレイン面積率)
前記供試材の圧延面と平行な面における、各板厚中心部の組織について、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡によりサブグレイン面積率を測定して、測定視野数に応じた平均値にて算出した。
具体的には、前記供試材を機械研磨して、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)とした後、ツインジェット式電解研磨法にて板厚中心から厚さ100nmの薄膜にし、この薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)にて、5万倍の倍率で4視野撮影した。透明のフィルムに撮影画像からサブグレインのみを転写し、画像解析ソフトImage−Pro Plusを用いて撮影範囲内のサブグレインの総面積を測定し、視野面積(撮影面積)に対する、面積率を、前記4視野の平均で算出した。
前記供試材の圧延面と平行な面における、各板厚中心部の組織について、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡によりサブグレイン面積率を測定して、測定視野数に応じた平均値にて算出した。
具体的には、前記供試材を機械研磨して、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)とした後、ツインジェット式電解研磨法にて板厚中心から厚さ100nmの薄膜にし、この薄膜を透過型電子顕微鏡(TEM)にて、5万倍の倍率で4視野撮影した。透明のフィルムに撮影画像からサブグレインのみを転写し、画像解析ソフトImage−Pro Plusを用いて撮影範囲内のサブグレインの総面積を測定し、視野面積(撮影面積)に対する、面積率を、前記4視野の平均で算出した。
ここで、前記した通り、サブグレインとは、幅を持たないシャープな境界で囲まれている粒とし、全体としてその境界(外縁形状)がシャープでなく幅を持っており、独立あるいは孤立した小さな一つ一つの粒として識別できにくい粒は、サブグレインとは見なさず、カウントしなかった。
(0.2%耐力)
前記供試材を、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS−5号引張試験片を作製した。この試験片を用い、JIS−Z2241に準じて引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。0.2%耐力の適正範囲は300MPa以上であり、この範囲であれば、薄肉化された缶蓋であっても耐圧強度を満足する。
前記供試材を、引張方向が圧延方向と平行になるようにJIS−5号引張試験片を作製した。この試験片を用い、JIS−Z2241に準じて引張試験を行い、0.2%耐力を求めた。0.2%耐力の適正範囲は300MPa以上であり、この範囲であれば、薄肉化された缶蓋であっても耐圧強度を満足する。
(リベット成形性)
リベット成形性は、前記バブル工程を模擬した試験にてリベット成形性を評価した。すなわち、前記供試材に対し、φ6mmの微小張出試験を行い、くびれや割れが発生しない限界張出高さを求めた。限界張出高さの適正範囲は1.45mm以上とした。アルミニウム合金板の限界張出高さが1.45mm以上であれば、実成形時に十分な高さのボタンを成形することができる。
リベット成形性は、前記バブル工程を模擬した試験にてリベット成形性を評価した。すなわち、前記供試材に対し、φ6mmの微小張出試験を行い、くびれや割れが発生しない限界張出高さを求めた。限界張出高さの適正範囲は1.45mm以上とした。アルミニウム合金板の限界張出高さが1.45mm以上であれば、実成形時に十分な高さのボタンを成形することができる。
(開缶荷重)
前記供試材を、204径フルフォーム・エンド金型にてシェル成型、コンバージョン成形、タブのステイクを行った後に、開缶試験を行った。
図2は、開缶試験に用いた缶蓋の平面図である。
図3は、開缶試験に用いた缶蓋のスコア3の断面図である。
図4は、開缶時の荷重を測定する開缶荷重測定機の概要図である。
図4(a)は開缶荷重測定機5の斜視図である。
図4(b)は開缶荷重測定機5の測定時の缶蓋1付近の断面模式図である。
図4(c)は開缶荷重測定機5に缶蓋1を設置するときの缶蓋1の向きを示す正面模式図である。
前記供試材を、204径フルフォーム・エンド金型にてシェル成型、コンバージョン成形、タブのステイクを行った後に、開缶試験を行った。
図2は、開缶試験に用いた缶蓋の平面図である。
図3は、開缶試験に用いた缶蓋のスコア3の断面図である。
図4は、開缶時の荷重を測定する開缶荷重測定機の概要図である。
図4(a)は開缶荷重測定機5の斜視図である。
図4(b)は開缶荷重測定機5の測定時の缶蓋1付近の断面模式図である。
図4(c)は開缶荷重測定機5に缶蓋1を設置するときの缶蓋1の向きを示す正面模式図である。
缶蓋1をスコア3に対してタブ4が上方となるように、開缶荷重測定機5に缶蓋1を設置する(図4(c))。缶蓋1のタブ4に掛止具6を引っ掛けて、掛止部7とする(図4(b))。掛止具6を水平方向へ引っ張って3Nの引張荷重を負荷し、その状態で掛止具6を静止させた後、缶蓋1をX方向に回転させた。ロードセルにて荷重を測定し、最も高い荷重を開缶荷重とした。開缶荷重の適正範囲は25N以下とした。
表1に示すように、本発明の規定範囲内のNo.1〜16の発明例は、成分組成が発明範囲内であり、熱間粗圧延は、好ましい定常速度とされて10分以内で終了し、かつ、パス間における粗圧延板の最低温度も、そして、2次冷延における総圧延率や1回目の圧延後(スタンド出側)の材料温度なども、全て好ましい製造条件で製造されている。
このため、板厚中心部は、図1に示す組織となって、X線回折により測定された転位密度が平均で0.5×1015m-2以上、2.0×1015m-2以下であり、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率が平均で10%以上、90%以下である。すなわち、これら発明例は缶蓋用アルミニウム合金板の組織として、サブグレイン面積率を増加させるとともに、転位密度を増加させて、サブグレイン面積率と転位密度とが一定の範囲にバランスさせた組織としている。因みに、この図1は発明例1の例である。
この結果、No.1〜16の発明例は、表1に示すように、0.2%耐力及び開缶荷重が適正で、リベット成形性が優れる。すなわち、成形性を保ったまま高強度化させており、リベット成形性と高強度化とを両立させることができている。具体的には、0.2%耐力が300MPa以上、かつ、限界張出高さが1.45mm以上の、高強度、高成形性とすることができている。従って、発明例のアルミニウム合金板は、板厚が0.215mmと薄いが、イージーオープン缶蓋用として好適に使用し得る。
一方、表1のNo.17〜30の比較例は、成分組成、板厚中心部の組織として、X線回折により測定された転位密度、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率、のいずれかが本発明の規定範囲内でなく、下記のとおり、0.2%耐力、開缶荷重及びリベット成形性のいずれかが適正値を満たさない。
No.17は、Mg含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が低すぎる。
No.18は、Mg含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、限界張出高さが缶蓋のリベット成形性に必要な1.45mmを満たさず、リベット成形性が劣る。
No.19は、Fe含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、開缶荷重が大きい。
No.20は、Fe含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、限界張出高さが缶蓋のリベット成形性に必要な1.45mmを満たさず、リベット成形性が劣る。
No.21は、Si含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、開缶荷重が大きい。
No.22は、Si含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、限界張出高さが缶蓋のリベット成形性に必要な1.45mmを満たさず、リベット成形性が劣る。
No.23は、Mn含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が低すぎ、開缶荷重も大きい。
No.24は、Mn含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、限界張出高さが缶蓋のリベット成形性に必要な1.45mmを満たさず、リベット成形性が劣る。
No.25は、Cu含有量が下限未満で不足するため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、0.2%耐力が低すぎる。
No.26は、Cu含有量が上限を超えて過剰なため、好ましい製造条件で製造され、板厚中心部の組織の転位密度やサブグレイン面積率を満たしているものの、限界張出高さが缶蓋のリベット成形性に必要な1.45mmを満たさず、リベット成形性が劣る。
No.27は、合金組成は本発明範囲内であるものの、熱間粗圧延の最低の定常速度が遅すぎて、熱間粗圧延が10分以内で終了せず、Mgの析出を抑制できず、サブグレイン面積率が10%未満となって少なすぎる。この結果、限界張出高さが缶蓋のリベット成形性に必要な1.45mmを満たさず、リベット成形性も低い。
No.28は、合金組成は本発明範囲内であるものの、また、パス間における粗圧延板の最低温度が450℃未満となっており、Mg−Si系の化合物が析出しやすくなり、Mgの析出を抑制できず、サブグレイン面積率が10%未満となって少なすぎる。この結果、限界張出高さが缶蓋のリベット成形性に必要な1.45mmを満たさず、リベット成形性が劣る。
No.29は、合金組成は本発明範囲内であるものの、2次冷延における総圧延率が60%未満と低すぎ、サブグレイン面積率と転位密度ともに、下限を外れて少なすぎる。この結果、0.2%耐力が低すぎる。
No.30は、合金組成は本発明範囲内であるものの、2次冷延における1回目の圧延後の材料温度が100℃を超えて高すぎ、サブグレイン面積率か転位密度が、下限を外れて少なすぎる。この結果、リベット成形性か0.2%耐力が低すぎ、高いリベット成形性と高強度とを兼備できていない。因みに、この比較例30は前記特許文献1に相当する。
以上の結果から、高いリベット成形性と高強度とを兼備するための、本発明の各要件や好ましい製造条件の意義が裏付けられる。
以上、本発明は、従来のように、リベット成形性を得るために、材料強度を低下させる必要が無く、高い材料強度を有するにも関わらず、十分なリベット成形性を有することができる。このため、板厚を0.2mm程度に薄肉化した場合でも、飲料充填後の耐圧強度に不足がなく、リベット成形性及び開缶性にも優れた缶蓋用アルミニウム合金板を提供できる。
このため、缶蓋厚さが薄肉化、高強度化され、より厳しい使用条件での高いリベット成形性と高強度とが要求される缶蓋に用いられるアルミニウム合金板に最適である。
このため、缶蓋厚さが薄肉化、高強度化され、より厳しい使用条件での高いリベット成形性と高強度とが要求される缶蓋に用いられるアルミニウム合金板に最適である。
1 缶蓋
2 リベット部
3 スコア
4 タブ
5 開缶荷重測定機
6 掛止具
7 掛止部
2 リベット部
3 スコア
4 タブ
5 開缶荷重測定機
6 掛止具
7 掛止部
Claims (1)
- Mg:3.8〜5.5質量%、Fe:0.10〜0.50質量%、Si:0.05〜0.30質量%、Mn:0.01〜0.60質量%、Cu:0.01〜0.30質量%を含有し、残部がAl及び不可避不純物からなるアルミニウム合金板であって、圧延面と平行な面における、板厚中心から両厚さ方向に0.05mm(厚さ0.1mm)の領域の組織として、X線回折により測定された転位密度が平均で0.5×1015m-2以上、2.0×1015m-2以下であり、5万倍の倍率の透過型電子顕微鏡により測定されたサブグレイン面積率が平均で10%以上、90%以下であることを特徴とする缶蓋用アルミニウム合金板。
Applications Claiming Priority (2)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2014213736 | 2014-10-20 | ||
JP2014213736 | 2014-10-20 |
Publications (1)
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Family
ID=55955941
Family Applications (1)
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---|---|---|---|
JP2015162958A Pending JP2016079502A (ja) | 2014-10-20 | 2015-08-20 | 缶蓋用アルミニウム合金板 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP2016079502A (ja) |
Cited By (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
CN109357622A (zh) * | 2018-11-01 | 2019-02-19 | 广州荣鑫容器有限公司 | 一种易开盖铆钉结构的检测方法 |
-
2015
- 2015-08-20 JP JP2015162958A patent/JP2016079502A/ja active Pending
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