JP4941280B2 - エンジンの残留ガス量推定装置及び残留ガス量推定方法 - Google Patents

エンジンの残留ガス量推定装置及び残留ガス量推定方法 Download PDF

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Description

本発明は、エンジン(内燃機関)の残留ガス量推定装置及び残留ガス量推定方法に関する。
排気バルブ閉時期での燃焼室内温度を算出する手段と、排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力を算出する手段と、燃焼空燃比に応じた排気組成のガス定数を算出する手段と、これら燃焼室内温度、燃焼室内圧力、ガス定数に基づいて排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量を算出する手段と、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間とのオーバーラップ中の吹き返しガス量を算出する手段と、前記燃焼室内ガス量とこのオーバーラップ中の吹き返しガス量とに基づいて燃焼室内残留ガス量を算出する手段とを備えるものがある(特許文献1参照)。
特開2004−108262号公報
ところで、燃焼室内残留ガス量は点火時期や空燃比に影響を与えるため、燃焼室内残留ガス量を推定し、その推定した燃焼室内残留ガス量で点火時期や空燃比等を補正することが望ましい。
その一方で、排気バルブ開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構や吸気バルブの開閉時期を変化させ得る吸気バルブ開閉時期可変機構を備えることへの要求が高まっている。例えば、排気バルブ開閉時期可変機構を作動させ、排気バルブ開時期を非作動状態時より早めてやると、排気温度が高くなり、排気通路に設けてある触媒の暖機を促進できる。また、排気バルブ開時期を非作動状態時より早めて吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップを増やしてやると、燃焼室内残留ガス量が増加し、ポンピングロスを低減できる。また、高回転速度時に非作動状態時より吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップを大きくしてやると吸気の慣性力を大きくできる。このような各種の目的のため排気バルブ開閉時期可変機構や吸気バルブ開閉時期可変機構を備えさせ、排気バルブ開閉時期可変機構や吸気バルブ開閉時期可変機構を非作動状態より作動状態に切換えた場合に、排気圧力、燃焼室内圧力が非作動状態時の値と相違することとなり、その影響を受けて排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のバルブオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量も非作動状態時の値から大きく変化してしまう。
そこで、排気バルブ開閉時期可変機構や吸気バルブ開閉時期可変機構を非作動状態より作動状態に切換えた場合にも、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のバルブオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を精度良く算出させる方法を探るため、各種の実験やシミュレーションを行ってみたところ、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のバルブオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形に三種類の波形が有ることが新たに判明した。三種類の波形とは、排気ポートから燃焼室内へのガスの吹き返しと燃焼室内から排気ポートへのガスの吹き出しの両方が存在する場合の波形、排気ポートから燃焼室内へのガスの吹き返しのみしか存在しない場合の波形、燃焼室内から排気ポートへのガスの吹き出しのみしか存在しない場合の波形の3つである。
このうち、燃焼室内から排気ポートへのガスの吹き出しのみしか存在しない場合の波形となるのは、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されているためであり、その原因は燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になっていることにあることを見出した。
そこで本発明は、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときにも、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のバルブオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量や排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のバルブオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量を精度良く推定し得る残留ガス量推定装置及び残留ガス量推定方法を提供することを目的とする。
本発明は、ピストンの動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定し、この判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、前記燃焼室内容積変化量が前記排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角(CACOMP)として算出し、この算出したチョーク状態開始クランク角(CACOMP)に基づいて燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO’)を算出し、この算出した燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO’)に基づいて燃焼室内から排気ポートへの吹き出しガス量(M23)を算出し、吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量(MR1)とこの吹き出しガス量(M23)とから排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を推定するように構成する。
また、本発明は、ピストンの動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定し、この判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、前記燃焼室内容積変化量が前記排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角(CACOMP)として算出し、この算出したチョーク状態開始クランク角(CACOMP)に基づいて排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力(PEVC’)を算出し、この算出した排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力(PEVC’)に基づいて燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量(MR1’)を算出し、この排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量(MR1’)を排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量として推定するように構成する。
吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)は吸気バルブ開時期(IVO)での排気バルブ開口面積による影響が大きい。吸気バルブ開時期(IVO)に排気バルブが十分に開いている状態では(つまり燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないとき)、図25左に示したように燃焼室内圧力Pcylは排気圧力Pexと等しくなる。
一方、吸気バルブ開時期(IVO)に排気バルブがほとんど閉じている状態になると(つまり燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるとき)、図25中、図35に示したように燃焼室内容積の変化に合わせて燃焼室内圧力Pcylが変化し(排気圧力Pexから離れて上昇し)排気圧力Pexからの乖離が大きくなっている。このため、燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときにも、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)が排気圧力に等しいと仮定して排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を推定したのでは、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力の、排気圧力Pexからの圧力差に相当する誤差が生じてしまう。
これに対して、本発明によれば、ピストンの動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定し、この判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、燃焼室内容積変化量が排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角(CACOMP)として算出し、この算出したチョーク状態開始クランク角(CACOMP)に基づいて燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO’)を算出し、この算出した燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO’)に基づいて燃焼室内から排気ポートへの吹き出しガス量(M23)を算出し、吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量(MR1)とこの吹き出しガス量(M23)とから排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を推定するので、排気行程で燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときにも排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を精度良く推定することができる。
次に、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)が排気圧力に等しいと仮定して吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量(MR1)を状態方程式((1)式参照)により算出し、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときにはこの吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量(MR1)をそのまま燃焼室内残留ガス量とすることが考えられる。
しかしながら、図42に示したように、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときにおいても、排気行程で燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になり、燃焼室内圧力Pcylが排気圧力Pexから離れて上昇することがあることを見出した。従ってこうした場合にも、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力(PIVO)が排気圧力に等しいと仮定して吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量(MR1)を算出したのでは、燃焼室内圧力Pcylの排気圧力Pexからの圧力差に相当する誤差が、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量の推定に生じてしまう。
本発明によれば、ピストンの動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定し、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、燃焼室内容積変化量が排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角(CACOMP)として算出し、この算出したチョーク状態開始クランク角(CACOMP)に基づいて燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力(PEVC’)を算出し、この算出した燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力(PEVC’)に基づいて排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量(MR1’)を算出し、この排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量(MR1’)を排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量として推定するので、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがない場合に排気行程で燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときにも、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量を精度良く推定することができる。
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
図1は、エンジンの残留ガス量推定装置を有するエンジンの制御装置の概略構成を示している。
空気は吸気コレクタ2に蓄えられた後、吸気マニホールド4を介して各気筒の燃焼室5に導入される。燃料は各気筒の吸気ポート4に配置された燃料インジェクタ21より噴射供給される。空気中に噴射された燃料は気化しつつ空気と混合してガス(混合気)を作り、燃焼室5に流入する。この混合気は吸気バルブ15が閉じることで燃焼室5内に閉じこめられ、ピストン6の上昇によって圧縮される。
圧縮上死点より少し手前で点火プラグ14により火花が飛ばされ圧縮混合気に着火されると、火炎が広がりやがて爆発的に燃焼し、この燃焼によるガス圧がピストン6を押し下げる仕事を行う。この仕事はクランクシャフト7の回転力として取り出される。燃焼後のガス(排気)は排気バルブ16が開いたとき排気通路8へと排出される。
排気通路8には三元触媒9を備える。三元触媒9は排気の空燃比が理論空燃比を中心とした狭い範囲(ウインドウ)にあるとき、排気に含まれるHC、CO、NOxといった有害三成分を同時に効率よく除去できる。空燃比は吸入空気量と燃料量の比であるので、エンジンの1サイクル(4サイクルエンジンではクランク角で720deg区間)当たりに燃焼室5に導入される吸入空気量と、燃料インジェクタ21からの燃料噴射量との比が理論空燃比となるように、エンジンコントローラ31ではエアフローセンサ32からの吸入空気流量の信号とクランク角センサ(33、34)からの信号に基づいて燃料インジェクタ21からの燃料噴射量を定めると共に、三元触媒9の上流に設けたO2センサ35からの信号に基づいて空燃比をフィードバック制御している。
吸気バルブ用カムシャフト25、排気バルブ用カムシャフト26及びクランクシャフト7の各前部にはそれぞれカムスプロケット、クランクスプロケットが取り付けられ、これらスプロケットにタイミングチェーン(図示しない)を掛け回すことで、カムシャフト25、26がエンジンのクランクシャフト7により駆動されるのであるが、このカムスプロケットと吸気バルブ用カムシャフト25との間に介在して、作動角一定のまま吸気バルブ用カムの位相を連続的に制御し得る可変吸気バルブタイミングコントロール機構(以下、「吸気バルブ用VTC機構」という。)27と、カムスプロケットと排気バルブ用カムシャフト26との間に介在して、作動角一定のまま排気バルブ用カムの位相を連続的に制御し得る可変排気バルブタイミングコントロール機構(以下、「排気バルブ用VTC機構」という。)28とを備える。吸気バルブ15の開閉時期や排気バルブ16の開閉時期を変えると燃焼室5に残留する不活性ガスの量(燃焼室内残留ガス量)が変化する。燃焼室内残留ガス量が増えるほどポンピングロスが減って燃費がよくなるので、運転条件によりどのくらいの燃焼室内残留ガス量があったらよいかを目標吸気バルブ閉時期や目標排気バルブ閉時期にして予め定めており、エンジンコントローラ31ではそのときの運転条件(エンジンの負荷と回転速度)より目標吸気バルブ閉時期と目標排気バルブ閉時期を定め、それら目標値が得られるように吸気バルブ用VTC機構27、排気バルブ用VTC機構28の各アクチュエータを介して吸気バルブ閉時期と排気バルブ閉時期を制御する。
大気圧力センサ36からの大気圧力の信号、吸気圧力センサ44からの吸気圧力の信号が入力されるエンジンコントローラ31では、これらの信号と吸気バルブ用VTC機構27、排気バルブ用VTC機構28に与える指令値とに基づいて燃焼室内残留ガス量を推定し、この推定した燃焼室内残留ガス量に基づいて目標吸気バルブ閉時期や目標排気バルブ閉時期をフィードバック制御する。
次に、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量の算出方法を説明する。
ここで、本発明は、先願装置(特願2007−191243号参照)と密接に関連する発明であり、本発明の構成要素は先願装置の構成要素と一部重複している。そこで、以下では先願装置についてまず述べ、その後で本発明に言及するものとする。なお、先願装置では第1から第5までの5つの実施形態を記載しているため、本発明に関する実施形態は第6実施形態となる。
先願装置では特に排気バルブ用VTC機構を備える場合を対象としており、話を複雑化しないため以下では吸気バルブ用VTC機構27は非作動状態にあるものとして、つまり吸気バルブ開時期IVOは一定値であるとして説明する。なお、本発明は、吸気バルブ用VTC機構27を備えるものを除外するものではない。吸気バルブ用VTC機構27をも備える場合には、吸気バルブ開時期IVOを可変値で考えればよいだけである。また、本実施形態では排気バルブ用VTC機構を備える場合で説明するが、作動角を連続的に制御し得る可変排気バルブリフト量コントロール機構(排気バルブ用VEL機構)を備える場合や排気バルブ用VTC機構と排気バルブ用VEL機構の両方を備える場合にも本発明を適用することができる。
図2に示したように、吸気バルブ開時期(図では「IVO時」)、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中(図では「O/L中」)、排気バルブ閉時期(図では「EVC時」)、吸気行程の4段階に分けて燃焼室内残留ガス量を考える。
まず、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量をMR1[kg]とする。吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中に、燃焼室5内から吸気ポート4に流出するガス量をM1[kg]、排気ポート11から燃焼室5内に流入するガス量をM2[kg]とすると、排気バルブ閉時期EVCでの燃焼室内ガス量はMR1−M1+M2となる。吸気行程では、吸気ポート4に流出していた既燃ガスM1[kg]が燃焼室5内に再流入してくるため、排気バルブ閉時期での最終的な燃焼室内残留ガス量、つまり吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ終了後(正確にはオーバーラップ終了直後)の燃焼室内残留ガス量は、MR1+M2となる。よって、先願装置では、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1及び吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の排気ポートからの吹き返しガス量M2を算出し、それらの和を吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量として算出する。つまり、次式により吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を算出する。
燃焼室内残留ガス量=MR1+M2 …(補1)
以下では、(補1)式右辺第1項の吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1の算出原理について先に説明し、その後に(補1)式右辺第2項の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出原理について説明する。
1.吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1の算出原理
吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1は次の状態方程式に基づいて算出する。
MR1=PIVO・VIVO/(REX・TIVO) …(1)
ただし、PIVO:吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内圧力[kPa]、
VIVO:吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内容積[m^3]、
TIVO:吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内温度[K]、
REX :排気のガス定数[kJ/kg/K]、
以下、(1)式の排気のガス定数REX、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOの各算出方法をこの順に説明する。
〈1〉排気ガス定数REXの算出方法
吸気バルブ開時期での燃焼室内ガスのモル数EGR molは、次式により与えられる。
EGR mol=(吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス質量)/(排気分子量)
={RESTR/(1−RESTR)}
×(空気燃料混合気質量)/(排気分子量)
={RESTR/(1−RESTR)}
×{(12×n+m)
+(n+m/4)/TFBYA×(32+0.79/0.21×28)}
/(44×A+18×B+28×C+32×D+28×E)×SUM
…(2)
ただし、RESTR:残ガス率、
TFBYA:目標当量比、
n :燃料中の炭素原子数、ガソリンの平均組成Cnm=C818
を用いる
m :燃料中の水素原子数、ガソリンの平均組成Cnm=C818
を用いる
A :CO2のモル数、
B :H2Oのモル数、
C :N2のモル数、
D :O2のモル数(ただし、φ>1の場合、D=0)、
E :COのモル数(ただし、φ≦1の場合、E=0)、
SUM :排気の総モル数、
44 :CO2の分子量[kg/kmol]、
18 :H2Oの分子量[kg/kmol]、
28 :N2の分子量[kg/kmol]、
32 :O2の分子量[kg/kmol]、
28 :COの分子量[kg/kmol]、
ここで、(2)式右辺のRESTR/(1−RESTR)は吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス質量と空気燃料混合気質量との比で、この比を空気燃料混合気質量に乗算することで、吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス質量を求めることができる。(2)式右辺の12×n+mは燃料(Cnm)の質量、(n+m/4)/TFBYA×(32+0.79/0.21×28)は空気の質量で、これらの合計が空気燃料混合気質量である。
上記の残ガス率RESTRは次式により定義される値で、実際にはシミュレーションによる適合値を用いる。
RESTR=既燃ガス量/総ガス量
=(燃焼室内残留ガス量+外部EGR量)
/(吸入空気量+燃料量+燃焼室内残留ガス量)
…(補2)
(2)式右辺の目標当量比TFBYAは、図3のようにエンジンの負荷と回転速度Neによるマップ(適合値)とする。(2)式右辺のA〜Bのモル数を図4に示す。図4においてφは目標当量比のことである。
よって、化学反応式は次のようになる。
nm+(n+m/4)/TFBYA×(O2+0.79/0.21×N2
+RESTR/(1−RESTR)×{(12×n+m)+(n+m/4)
/TFBYA×(32+0.79/0.21×28)}
/(44×A+18×B+28×C+32×D+28×E)×SUM
×(A・CO2+B・H2O+C・N2+D・O2+E・CO)/SUM
→A・CO2+B・H2O+C・N2+D・O2+E・CO
…(3)
質量保存則より、
44×A+18×B+28×C+32×D+28×E
=1/(1−RESTR)×((12×n+m)+(n+m/4)/TFBYA
×(32+0.79/0.21×28) …(4)
となるので、(4)式を(3)式に代入することにより次式を得る。
nm+(n+m/4)/TFBYA×(02+0.79/0.21×N2
+RESTR×(A・CO2+B・H2O+C・N2+D・O2+E・CO)
→A・CO2+B・H2O+C・N2+D・O2+E・CO
…(5)
(5)式より、排気のガス定数REXは、
REX=R0/Mex …(6)
ただし、R0 :一般ガス定数(=8314.3J/kgK)、
Mex:排気分子量[kg/kmol]、
の式により求められる。(6)式右辺の排気分子量Mexは次式により算出する。
Mex=(44×A+18×B+28×C+32×D+28×E)×SUM
…(補3)
ただし、A〜B:各分子のモル数、(2)式参照。
SUM:排気総モル数、(2)式参照。
〈2〉吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOの算出方法
吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOは次式により算出する。
VIVO=π×D^2×H/4+Vc …(7)
ただし、D :ボア径[m]、
H :TDCからの変位量[m]、
Vc:隙間容積[m^3]、
(7)式右辺のTDCからの変位量Hは次式により算出する。
H=((CND+ST/2)^2−(CR off−PIS off^2)^(1/2)
−(ST/2×cos(IVO+θoff)+(CND^2−X^2)^(1/2))
…(8)
ただし、CND :コンロッド長[m]、
CR off :クランクピンオフセット[m]、
PIN off:ピストンオフセット[m]、
ST :ストローク[m]、
IVO :排気バルブ閉時期[degATDC]
θoff :クランク垂直位置からTDCまでの角度[deg]、
X :コンロッド大端部からピストンピン中心までの距離[m]、
ここで、(8)式右辺の吸気バルブ開時期IVOは、吸気バルブVTC機構27に与える指令値により既知である。なお、吸気バルブ開時期IVOの単位としては、適当なクランク角位置(例えば圧縮上死点)を基準として遅角側に計測したクランク角とすればよい。
(8)式右辺のX、θoff、(7)式右辺の隙間容積Vcは次式により算出する。
X=ST/2×sin(EVC−θoff)−CR off+PIN off
…(9)
θoff=arcsin((CR evc−PIS off/CND+ST/2)
…(10)
Vc=(π/4)×D^2×ST/(ε−1) …(11)
ただし、ε:圧縮比、エンジン毎に決まる定数
〈3〉吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOの算出方法
吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO[kPa]は、排気バルブ開度が十分大きいため、排気圧力に等しいと仮定する。平均排気圧力PEX[kPa]を基準としたときの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値(各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分)をマップとして記憶しておき、この記憶させているマップを参照して吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM[kPa]を求め、この求めた吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMと平均排気圧力PEXとの和を吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOとして、つまり次式により吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出する。
PIVO=PEX+PCTRM …(12)
ここで、(12)式のように吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを導入した理由は次の通りである。すなわち、排気流量が分かればPV=nRTより平均排気圧力が分かる。しかしながら、実際の燃焼室内圧力や排気圧力は図14に示したように脈動の影響でクランク角に対して時々刻々に変化しているので、図15に示したように排気圧力の平均値をPEXとし、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力の差分値(つまり吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分)をPCTRMで表すこととしたものである。
ただし、制御上は、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値を負の値で表したくないため、図15の右端に示したように、平均排気圧力PEXを差分値の下端までとし、差分値の下端をゼロとして吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを表している。従って、以下では平均排気圧力PEX、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力の差分値についても)は図15の右端に示した値である。
この吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMの算出方法を次に説明する。
吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは、図5より排気バルブ開時期EVOと回転速度Neが一定の場合、充填効率に比例するとみなせる。そこでクランク角に対して時々刻々の、充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値及び充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値を各マップに記憶させる。充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値または充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ内容を図6に示す。図6においては、横軸にクランク角を、縦軸に回転速度Neを採っており、格子で分割した25の各小区画に小、中、大の圧力値(いずれも正の値)を入れている。このため、5つに区分けした各回転速度域1〜5では、各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値の特性が右外に示したようになっており、回転域が定まれば、その回転域に対応する各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値が定まる。従って、エンジンの仕様により吸気バルブ開時期IVOがわかっているので、その吸気バルブ開時期IVOと一致するクランク角とそのときの回転速度Neから図6に示す各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照することにより、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=後述するPmin)または充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=後述するPmax)を求めることができる。図6は一例であり、充填効率最小時と充填効率最大時とで各小区画に格納されている値は異なっている。充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値、充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値をそれぞれ適合して求めておき、2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップとして記憶させておく。
エンジン運転中の実際の充填効率は充填効率最小値と充填効率最大値の間にあるから、充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップと、充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップの2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを用いて補間計算により求めればよい。すなわち、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値をPmin、同じく充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値をPmax、充填効率最小値と実際の充填効率の差をa、充填効率最大値と実際の充填効率の差をbとすると、実際の充填効率のときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを次の補間計算式により求めることができる。
PCTRM=Pmin+(Pmax−Pmin)×a/(a+b)
…(13)
a=ITAC−ITACMN …(補4)
b=ITACMX−ITAC …(補5)
ただし、Pmin :充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と 平均排気圧力との差分値[kPa]、
Pmax :充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と 平均排気圧力との差分値[kPa]、
ITAC :実際の充填効率[%]、後に算出方法を説明する
ITACMN:充填効率最小値[%]、
ITACMX:充填効率最大値[%]、
ここで、(補4)式右辺の充填効率最小値ITACMN、(補5)式右辺の充填効率最大値ITACMXはエンジンの負荷と回転速度Neをパラメータとして予め求めておく。
さて、排気バルブ用VTC機構28が備えられる場合に、排気バルブ用VTC機構28を非作動状態から作動状態に切換えたとき、排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが排気バルブ用VTC機構非作動状態での最遅角位置から進角側へと移動し、この排気バルブ開閉時期の移動により排気圧力の圧力脈動にずれが生じる。このため、排気バルブ用VTC機構28の非作動時(つまり排気バルブ用VTC機構を備えない場合)に図6に示す各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを適合している場合に、排気バルブ用VTC機構28の作動時にも、その排気バルブ用VTC機構非作動時に対して適合している図6に示す各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップをそのまま用いて、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを求めたのでは、排気バルブ用VTC機構28の作動に伴う排気圧力の圧力脈動のずれ分だけ吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMの算出に誤差が生じ、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO(燃焼室内残留ガス量)の算出に誤差が生じる。従って、排気バルブ用VTC機構28の作動時には排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを新たに算出する必要がある。
そこで、これについて検討したところを次に述べると、まず、排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構28が非作動状態にあるとき、つまり排気バルブ開時期EVOが初期位置の最遅角位置にあるときの燃焼室内圧力の圧力脈動波形(図では「EVO遅」で示す。)と、排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角しているときの燃焼室内圧力の圧力脈動波形(図では「EVO早」で示す。)とを重ねて示したのが図7である。図7によれば、排気バルブ開時期EVOが例えばクランク角で10度(クランク角の単位を以下[degCA]で表記する。)進角したとき、その同じ10degCAだけ基準の圧力脈動波形を左側(進角側)に平行移動すればぴったり重なる、つまり燃焼室内圧力の圧力脈動波形の波長は変化しないことを表している。ここで、基準の圧力脈動波形とは、基準排気温度の条件で排気バルブ用VTC機構28が非作動状態にあるときの燃焼室圧力の圧力脈動波形である。基準排気温度としては最も低い排気温度を設定しておく。
従って、この場合には次のようにして排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを算出することができる。すなわち、図16にモデル波形を示すと、図16は排気圧力の圧力脈動波形のうち脈動分だけを取り出して示している。排気バルブ用VTC機構28の非作動時に脈動分の波形が実線であるとして、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角したときには脈動分の波形が実線より1点鎖線へと左側に平行移動することとなる。図示の位置に吸気バルブ開時期IVOがあるとすると、排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは●印位置の値であったのが、いま求めたい吸排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは〇印位置の値へと移る。この○印位置の値は、同図より吸気バルブ開時期IVOから所定値ADVだけ遅らせたクランク角(IVO+ADV)での実線上の値、つまり△印位置の値と同じである。ということは、排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ開時期が所定値ADVだけ進角した場合に吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを求めるには、吸気バルブ開時期IVOに代えて、吸気バルブ開時期IVOに所定値ADVを加算した値を用いて実線の特性、つまり排気バルブ用VTC機構非作動時に適合している図6に示す各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照すればよいことを意味する。言い換えると、排気バルブ用VTC機構28が非作動状態にあるときに基準排気温度において充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップと、充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップとの2つの差分値のマップを適合しておけば、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角したとき、吸気バルブ開時期IVOに所定値ADVを加算したクランク角と、そのときの回転速度Neとからこれら2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照して、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値と、充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値とを求めることで、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角しているときにおいても、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(Pmin)及び充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(Pmax)を精度良く求めることができるのである。
図7、図16は排気温度が基準排気温度にある場合、つまり排気バルブ用VTC機構28の非作動時と作動時とで排気温度が変わらない場合であったが、次には排気温度が基準排気温度より高温側に外れる場合を考える。すなわち、排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構28が非作動状態にあるときの燃焼室内圧力の脈動波形(図では「IVO遅」で示す。)と、排気温度が基準排気温度よりも高温側の条件において排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角しているときの燃焼室内圧力の脈動波形(図では「IVO早」で示す。)とを重ねて示したのが図8である。図8によれば、排気バルブ開時期EVOが例えば10degCA進角したとき、その同じ10degCAだけ基準の圧力脈動波形が左側(進角側)に移動するほか、図7と相違して燃焼室内圧力の圧力脈動波形の波長が短くなっていることを表している。
従って、この場合には次のようにして排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを算出することができる。すなわち、図17にモデル波形を示すと、図17も図16と同じに排気圧力の脈動波形のうち脈動分だけを取り出して示している。排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構28の非作動時に脈動分の波形が実線であるとして、排気バルブ用VTC機構28の非作動時でも排気温度が基準排気温度よりも高温側の条件になると、脈動分波形の波長が短くなるため、脈動分の波形が実線より破線へと変化する。つまり、排気温度が基準排気温度よりも高温側の条件では脈動分の波長が短くなる分だけ脈動分波形が、排気バルブ開時期を基準として、排気温度が基準排気温度にある条件にあるときよりも左側に移動する。
このように、排気バルブ用VTC機構の非作動時でも排気温度が基準排気温度より高温側に外れることによって脈動分波形の波長が短くなる(排気温度が基準排気温度より低温側に外れるときには脈動分波形の波長が長くなる)ときには、基準の脈動分波形に対して排気の速度による補正を加えることで、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時の脈動分波形を新たに算出する。ここで、基準の脈動分波形とは、排気温度が基準排気温度にある条件での脈動分波形である。この基準の脈動分波形は、例えば、図6に合わせて5つの各回転域毎に、クランク角をパラメータとして記憶させておく。そして、その新たに算出した、図6に合わせた5つの各回転域毎の脈動分波形を参照して、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを作成する。つまり、図6は排気温度が基準排気温度にある条件での排気バルブ非作動時に適合させて予め作成している各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップであるが、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件になると、その都度、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ非作動時に適合する各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを新たに作成するのである。
次に、排気温度が基準排気温度よりも高温側に外れた条件において排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角したときには脈動分波形が、図17に重ねて示したように破線より1点鎖線へとさらに左側に平行移動することとなる。
さて、いま図示の位置に吸気バルブ開時期IVOがあるとすると、排気温度が基準排気温度よりも高温側に外れた条件において排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは◎印位置の値であったのが、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件において排気バルブ用VTC機構作動時の、求めたい吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMは、〇印位置の値へと移る。この○印位置の値は、同図より吸気バルブ開時期IVOから所定値ADVだけ遅らせたクランク角(IVO+ADV)での破線上の値、つまり△印位置の値と同じである。ということは、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件において排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ開時期が所定値ADVだけ進角した場合に吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを求めるには、吸気バルブ開時期IVOに代えて、吸気バルブ開時期IVOに所定値ADVを加算した値を用いて破線の特性、つまり排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時に適合するように新たに作成した上記の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照すればよいことを意味する。言い換えると、充填効率最小時と充填効率最大時に排気温度が基準排気温度にある条件において排気バルブ用VTC機構非作動時の脈動分波形(つまり基準の脈動分波形)を、図6に示す5つの各回転域毎にクランク角をパラメータとしてそれぞれマップに記憶させておき、排気温度が基準排気温度よりも高温側に外れた条件になると、この基準の脈動分波形に対して排気の速度(排気圧力伝播速度)による補正を加えることで、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時の脈動分波形を算出し、その算出した図6に示す5つの各回転域毎の脈動分波形に基づいて、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時かつ充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップと、同じく排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構非作動時かつ充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップとの2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを、図6と同様にして新たに作成する。そして、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件で排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOが所定値ADVだけ進角したとき、吸気バルブ開時期IVOに所定値ADVを加算したクランク角と、そのときの回転速度Neとから上記新たに作成した2つの各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを参照して、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構作動時かつ充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=Pmin)と、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件での排気バルブ用VTC機構作動時かつ充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=Pmax)を求めることで、排気温度が基準排気温度より高温側に外れた条件で排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ開時期EVOを所定値ADVだけ進角しているときにおいても、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=Pmin)及び充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(=Pmax)を精度良く求めることができるのである。
図8、図17では排気温度が基準排気温度より高温側に外れる場合で説明した。ここでは、基準排気温度として最低の排気温度を設定しているため、運転条件の相違で排気温度が基準排気温度より高温側に外れる場合を考えたが、後述するように基準排気温度として最高の排気温度を設定したときには、運転条件の相違で排気温度が基準排気温度より低温側に外れる場合を考えなければならない。この場合には、排気バルブ用VTC機構28の非作動時でも排気温度が基準排気温度より低温側の条件になると、脈動分波形の波長が長くなるため、その脈動分の波長が長くなる分だけ脈動分波形が、排気バルブ開時期を基準として、排気温度が基準排気温度にある条件にあるときよりも右側に移動することとなるので、後は、本実施形態と同様に考えればよい。
上記排気の速度c[m/s]は、次のように音速の式を用いて算出する。
c=(κ×PIVO/ρ) …(14)
ただし、κ :排気の比熱比、後に算出法を説明する
PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、
ρ :排気の密度、
(14)式右辺の排気の密度ρの算出には次の式を用いる。
ρ=REX×TEX/PIVO …(15)
ただし、REX :排気ガス定数[kJ/kg/K]、(6)式にて算出済
TEX :平均排気温度[K]、後に算出法を説明する
PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、
(14)、(15)式より、排気の速度cは排気の密度ρを消去した次式により算出することができる。
c=(κ×REX×TEX)^(1/2) …(16)
ただし、REX:排気ガス定数[kJ/kg/K]、(6)式にて算出済
TEX:平均排気温度[K]、後に算出法を説明する
燃焼室内から触媒9までの距離Lは既知であるので、次式により排気温度が基準排気温度より高温側に外れたときの脈動分波形の波長λ[m]を算出する。
λ=L/c …(17)
ただし、L:燃焼室内から触媒9までの距離[m]
ここで、基準の脈動分波形の波長λ0は予め定まっているので、補正項はλ/λ0となる。従って、排気温度が基準排気温度より高温側に外れたときの脈動分波形は次のようにして求めることができる。
基準排気温度から高温側に外れたときの脈動分波形
=基準の脈動分波形×(λ/λ0) …(補6)
上記(16)式右辺の比熱比κの算出方法を示す。排気の定圧比熱Cpは、単純化した次の反応式で考える。
Cp=(Cp_CO2(TEX)×A+Cp_H2O(TEX)×B
+Cp_N2(TEX)×C+Cp_O2(TEX)×D
+Cp_CO(TEX)×E)
/(44×A+18×B+28×C+32×D+28×E)
…(18)
ただし、Cp_CO2(TEX):CO2の平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
Cp_H2O(TEX):H2Oの平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
Cp_N2(TEX):N2の平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
Cp_O2(TEX):O2の平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
Cp_CO(TEX):COの平均排気温度での定圧比熱
[J/kmolK]、
(18)式右辺の各定圧比熱は、それぞれ平均排気温度TEXの関数として次式により算出する。(補7−1)式〜(補7−5)においてTEX^4までは一般的に使われているが、先願装置ではTEX^5、TEX^6を追加している。
Cp_CO2(TEX)=5.0×10^(−20)×TEX^6
+1.0×10^(−16)×TEX^5
−5.0×10^(−12)×TEX^4
+2.0×10^(−08)×TEX^3
−6.0×10^(−05)×TEX^2
+0.0727×TEX+20.075
…(補7−1)
Cp_H2O(TEX)=7.0×10^(−21)×TEX^6
−4.0×10^(−16)×TEX^5
+4.0×10^(−12)×TEX^4
−2.0×10^(−08)×TEX^3
+3.0×10^(−05)×TEX^2
−0.0057×TEX+33.393
…(補7−2)
Cp_N2(TEX)=4.0×10^(−19)×TEX^6
−4.0×10^(−15)×TEX^5
+2.0×10^(−11)×TEX^4
−4.0×10^(−08)×TEX^3
+5.0×10^(−05)×TEX^2
−0.0207×TEX+31.894
…(補7−3)
Cp_O2(TEX)=5.0×10^(−19)×TEX^6
−5.0×10^(−15)×TEX^5
+2.0×10^(−11)×TEX^4
−4.0×10^(−08)×TEX^3
+3.0×10^(−05)×TEX^2
−0.0014×TEX+27.941
…(補7−4)
Cp_CO(TEX)=3.0×10^(−19)×TEX^6
−4.0×10^(−15)×TEX^5
+2.0×10^(−11)×TEX^4
−4.0×10^(−08)×TEX^3
+5.0×10^(−05)×TEX^2
−0.0173×TEX+31.175
…(補7−5)
(18)式により求めた排気の定圧比熱CPから排気の比熱比κを次式により算出する。
κ=Cp/(Cp−REX) …(19)
上記(補4)式右辺、(補5)式右辺の充填効率ITACの算出方法を説明すると、この実際の充填効率ITACは次式により算出する。
ITAC=MA/MAMX …(補8)
ただし、MA :吸入空気量[kg/s]
MAMX:充填効率最大時の吸入空気量[kg/s]、
ここで、吸入空気量MAはエアフローセンサ32により検出する。充填効率最大時の吸入空気量MAMXは実機による計測値とする。
次に、上記(12)式右辺第1項の平均排気圧力PEXの算出方法を説明する。
平均排気圧力PEXは次式で算出する。
PEX=((KTBF×MFEXG^2+KLMF×MFEXG)×REX
×TEX/1000000+PPAMB^2)^(1/2)
…(20)
ただし、MFEXG:排気流量[kg/s]、
PPAMB:大気圧力[kPa]、
KTBF :乱流係数、実験による適合値
KLMF :層流係数、実験による適合値
REX :排気ガス定数、(6)式にて算出済
TEX :平均排気温度、後に算出法を説明する
(20)式は、排気管内各部(触媒)の圧力損失及び大気圧PPAMBから平均排気圧力PEXを算出するものである。排気管内圧力損失は、触媒9入口(乱流)、触媒9(層流)にて生じるため、それぞれを分けて、つまり排気流量MFEXGと乱流係数KTBF及び層流係数KLMFから算出している。乱流係数、層流係数は、機種毎(排気マニホールド及び触媒システム)によって決まる適合項である。大気圧力PPAMBは大気圧力センサ36により検出する。1000000で除しているのは、ガス流量[kg/s]を圧力[kPa]へと換算するためである。
(20)式右辺の排気流量MFEXGは次式により算出する。
MFEXG=MA×(1+TFBYA/14.7) …(21)
ただし、MA :吸入空気量[kg/s]、
TFBYA:目標当量比、
ここで、吸入空気量MAはエアフローセンサ32により検出する。目標当量比TFBYAはエンジンの負荷と回転速度をパラメータとするマップ(図3参照)を参照することにより求める。
〈4〉吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOの算出方法
吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOは、平均排気温度TEX、平均排気圧力PEXで代表される状態から吸気バルブ開時期IVOへの状態変化を断熱変化であると仮定して、次の式により算出する。
TIVO=TEX・(PIVO/PEX)^((κ−1)/κ)
…(22)
ただし、PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、(12)式に て算出済
PEX :平均排気圧力[kPa]、(20)式にて算出済
κ :排気の比熱比、(19)式により算出済
上記(20)式、(22)式右辺の平均排気温度TEXの算出方法を説明する。
平均排気温度TEX[K]を、横軸に廃熱量比(そのときの廃熱量を最大廃熱量で除算した値)、縦軸に排気温度をとった図9の特性から得られる次の実験式から算出する。
TEX=TEXMX−(TEXMX−TEXMN)×exp(−KTEX×Q’)
…(23)
ただし、Q’ :廃熱量[kW]、
TEXMX:廃熱量最大時の排気平衡温度[K]、実験値
TEXMN:廃熱量ゼロ時の排気平衡温度[K]、実験値
KTEX :排気温度への廃熱量の感度(任意定数)、
(23)式右辺の廃熱量Q’は、供給熱量から軸仕事を引くことにより算出できると考え、次式により算出する。
Q’=MA×TFBYA/14.7×(HL−HV)×NCYL/2
−2π×TENG×Ne/60 …(24)
ただし、MA :吸入空気量、式(21)参照
TFBYA:目標当量比、式(21)参照
HL :低発熱量[kw]、シミュレーションによる適合値
HV :気化潜熱[kw]、シミュレーションによる適合値
NCYL :総シリンダ数、
TENG :実トルク推定値[Nm]、
Ne :エンジン回転速度[rpm]、
(24)式においては、軸仕事は実トルク推定値TENGに2πをかけることでエンジン一回転当りの軸仕事として算出している。実トルク推定値TENGは充填効率ITACとエンジン回転速度Neとをパラメータとする図10に示すようなマップを参照することにより求める。エンジン回転速度Neはクランク角センサ(33、34)により検出する。
2.吹き返しガス量M2の算出方法
吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップには、図11のようにマイナスオーバーラップとプラスオーバーラップとがある。
〈1〉マイナスオーバーラップの場合
図11上段に示すマイナスオーバーラップでは、吸気バルブ開時期での燃焼室内残留ガス量は排気バルブ閉時期EVCでの燃焼室内残留ガス量に等しい。吸気バルブ開時期IVOに、燃焼室内ガスが吸気ポート側に吹き返すが、吸気行程で再流入されるため、最終的な燃焼室内残留ガス量は、吸気バルブ開時期での燃焼室内残留ガス量と等しくなる。つまり、マイナスオーバーラップの場合、吹き返しガス量M2=0である。
〈2〉プラスオーバーラップの場合
図11下段に示すプラスオーバーラップの場合には、先に説明したように、吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を考慮する必要がある。
図12は、プラスオーバーラップの場合において、燃焼室内圧力(Pcyl)、排気圧力(Pex)、吸気圧力(Ain)、排気バルブ周りガス流量、吸気バルブ、排気バルブの各開口面積が、吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中に、つまり吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ閉時期EVCまでのクランク角区間においてどのように変化するのかをモデルで表している。
オーバーラップ中に排気ポート11から燃焼室内へ吹き返される吹き返しガス量は、図12の排気バルブ周りガス流量をクランク角について吸気バルブ開時期IVOより排気バルブ閉時期EVCまでを積分する(あるいは時間で積分する)ことで算出できる。しかしながら、オンボードでの計算を考慮した場合、クランク角に対し時々刻々と変化する排気バルブ周りガス流量を算出するのは現実的でない。そのため図13のように排気バルブ周りガス流量の波形を右上がりの直線1(第1の直線)と右下がりの直線2(第2の直線)との2本の直線で近似し、その2本の直線と、吸気バルブ開時期IVOの直線(図13でIVOを通る垂直線)と、排気バルブ周りガス流量ゼロの水平線とで構成された2つの三角形の面積を求めることで、吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を推定する。すなわち、図13において点aから点bまでは排気バルブ周りガス流量が負、つまり排気ポート11からのガスが吸気ポート4に吹き返し、点b以降は排気バルブ周りガス流量が正、つまり吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するため、吹き返しガス量M2[kg]を次式により算出する。
M2=|IVO−θ0|×(dm/dθ)ivo/2
+|EVC−θ0|×(dm/dθ)c/2 …(25)
ただし、IVO :吸気バルブ開時期[degCA]、
(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]、
θ0 :排気バルブ周りガス流量がゼロとなる点bのクラン ク角[degCA]、
θ1 :直線1と直線2の交点cのクランク角
[degCA]、
(dm/dθ)c :交点cでの排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]、
排気バルブ周りガス流量は燃焼室内より排気ポート11に流れる向きを正に採っているので、(25)式右辺第1項は負の値、右辺第2項は正の値となり、(25)式右辺全体としては図13より判断して負の値となると思われるので、そのときには(25)式右辺の値を上記(補1)式に代入するときにM2の絶対値を採って加算する。(25)式のクランク角θは適当なクランク角位置(例えば圧縮上死点)を起点として遅角側に計測したクランク角を用いる。
排気バルブ用VTC機構28を備えないエンジンでは、排気バルブ閉時期EVCは固定であるため(ここでは吸気バルブ開時期IVOも固定とする)、図13に示す2直線とも固定となり、従って、(25)式右辺の吸気バルブ開時期IVO、排気バルブ閉時期EVC、吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、排気バルブ周りガス流量がゼロとなる点bのクランク角θ0、交点cでの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)cを予め適合しておけば(25)式により吹き返しガス量M2を算出できる。
しかしながら、本実施形態のように排気バルブ用VTC機構28を備える場合に、排気バルブ用VTC機構28の非作動時に排気バルブ閉時期EVCが図13に示す図示の位置にあったとして、排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ閉時期EVCが、排気バルブ用VTC機構非作動時の初期位置である最遅角位置から進角すると、図13に示す直線2が左方に動くこととなり(直線1は変化しない)、直線1と直線2の交点cのクランク角θ1、従って交点cでの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)cが小さくなる、つまり吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するガス量(図13右側の三角形の面積)が減る。ということは、排気バルブ用VTC機構28を備える場合に、排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ閉時期が、排気バルブ用VTC機構非作動時の初期位置から進角したときにも、排気バルブ用VTC機構非作動時に予め適合している値を用いて吹き返しガス量M2を算出したのでは、吹き返しガス量M2の算出に直線2が移動した分の誤差(つまり吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するガス量が減った分の誤差)が生じることを意味する。従って、排気バルブ用VTC機構28を作動させるときには、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCに合わせて、その都度、直線2を決定し、その決定した直線2に基づいて吹き返しガス量M2を算出する必要があるのである。
以下、直線1、直線2の算出方法を説明する。
〔1〕直線1の算出方法
(ア)吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivoの算出方法
吸気バルブ開時期IVOに吸気バルブ周りガス流量=0であるので、吸気バルブ開時期IVOに、
燃焼室内質量変化=排気バルブ周りガス流量 …(26)
であるとして算出する。状態方程式(M=P×V/R/T)の両辺を微分すると次式を得る。
dM/dt=d(P×V/R/T)/dt
=V/R/T×dP/dt十P/R/T×dV/dt
−V×P/T/R^2×dR/dt
−V×P/T^2/R×dT/dt
…(27)
ただし、M:燃焼室内ガス質量[kg]
P:燃焼室内圧力[kPa]、吸気バルブ開時期にはPIVOとする
V:燃焼室内容積[m^3]、吸気バルブ開時期にはVIVOとする
T:燃焼室内ガス温度[K]、吸気バルブ開時期にはTIVOとする
R:ガス定数[kg/mol・K]、吸気バルブ開時期にはREXとする
吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス温度、ガス定数の各変化は微小なので、
dR/dt=0、dT/dt=0 …(補9)
であると仮定する。吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の燃焼室内圧力変化率を一定とし、また排気バルブ閉時期に燃焼室内圧力が平均マニホールド圧力と等しくなるとすると、次式が成り立つ。
dP/dt=Cpa …(28)
Cpa=(PEVC−PIVO)/((EVC−IVO)/360×Ne/60)
…(補10)
ただし、Cpa :燃焼室内圧力の時間微分値、
PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、上記〈3〉に て算出済
PEVC:排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力[kPa]、平均吸気圧力 と等しいとする
Ne :エンジン回転速度[rpm]、
ここで、PEVC−PIVOを360×Ne/60で除算することにより、[/degCA]の単位を[/sec]の単位へと変換している。平均吸気圧力は吸気圧力センサ44により検出する。エンジン回転速度Neはクランク角センサ(33、34)により検出する。
さらに、
dθ/dt=360×Ne/60=6×Ne …(29)
ただし、θ:クランク角度、クランク角センサ(33、34)にて検出
であるため、(29)式、(28)式を(26)式に代入すると、(26)式は次のようになる。
dM/dθ=V/R/T×Cpa/6/Ne+P/R/T×dV/dθ
…(30)
一方、吸気上死点付近では、燃焼室内容積の変化率は直線的に変化するので、次式で近似する。
dV/dθ=Cva・θ+Cvb …(31)
ただし、Cva:吸気上死点付近で横軸にクランク角、縦軸に燃焼室内容積変化率 を採ったときの直線の傾き[m^3/deg^2]
Cvb:吸気上死点付近で横軸にクランク角、縦軸に燃焼室内容積変化率 を採ったときの直線の切片[m^3]
(31)式を(30)式に代入すると、(30)式は次のようになる。
dM/dθ=V/6/Ne/R/T×Cpa+P/R/T×(Cva・θ+Cvb)
…(32)
ここで、(26)式、(32)式より、吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo[kg/degCA]は次式で与えられることとなる。
(dm/dθ)ivo=VIVO×Cpa/6/Ne/REX/TIVO
+PIVO/REX/TIVO×(Cva×IVO+Cvb)
…(33)
ただし、VIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内容積[m^3]、算出済
TIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内温度[K]、算出済
PIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力[kPa]、算出済
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]、算出済
REX :排気ガス定数[kJ/mol/K]、算出済
Ne :エンジン回転速度[rpm]
(イ)点bのクランク角θ0の算出方法
点bでは排気バルブ周りガス流量=0より、(26)式と同様に
吸気バルブ周りガス流量=燃焼室内質量変化 …(34)
とする。状態方程式から燃焼室内質量変化は次式となる。
dM/dt=d(P×V/R/T)/dt
=V/R/T×dP/dt+P/R/T×dV/dt
−V×P/T/R^2×dR/dt
−V×P/T^2/R×dT/dt …(35)
ただし、M:燃焼室内ガス質量[kg]
P:燃焼室内圧力[kPa]、排気バルブ周りガス流量=0時は排気圧力 に等しく排気圧力=(PEX+PIVO)/2とする
V:燃焼室内容積[m^3]、排気バルブ周りガス流量=0時は吸気上死 点付近であり、かつ燃焼室内容積の変化量は微々たるものなので、吸 気上死点での燃焼室内容積=隙間容積Vc(算出済)を用いる
T:燃焼室内ガス温度[K]、排気バルブ周りガス流量=0時はTEXと する
R:ガス定数[kg/mol・K]、排気バルブ周りガス流量=0時はR EXとする
排気バルブ周りガス流量=0時は吸気上死点付近であり、この吸気上死点付近での燃焼室内ガス温度、ガス定数の変化は微小なので、
dR/dt=0、dT/dt=0 …(補11)
と仮定する。次に、吸気バルブ通過ガス量(dm/dt)inは次式で表せる。
(dm/dt)in=Ain×Pex/(REX×TEX)×κ^(1/2)
×(2/(κ+1))^(κ+1)
/(2/(κ−1))×RMF1 …(36)
ただし、Ain :吸気バルブ開口面積、後に算出方法を説明する
TEX :平均排気温度、算出済
Pex :排気圧力、ここでは(PEX+PIVO)/2とする
REX :排気ガス定数、算出済
κ :排気の比熱比、算出済
RMF1:流量比、
(36)式右辺の流量比RMF1とは、音速時の吸気バルブ通過ガス流量と、通常時の吸気バルブ通過ガス流量の比(排気バルブ周りガス流量=0時のクランク角を算出するときに用いる流量比)であり、次式で表せる。
RMF1=(Pin/Pex)^(1/κ)×(2×κ/(κ−1))
×(1−(Pin/Pex)^((κ−1)/κ))^(1/2)
/κ^(1/2)/(2/(κ+1))^((κ+1)/2/(κ−1))
…(37)
ただし、Pin:平均吸気圧力、実験による適合値とする
Pex:排気圧力、ここでは(PEX+PIVO)/2とする
ここで、(37)式において排気圧力Pexとして(PEX+PIVO)/2としているのは、排気バルブ周りガス流量=0時はオーバーラップ前半にあり燃焼室内での脈動が大きいためである。
また、
β=Pex/(REX×TEX)×κ^(1/2)
×(2/(κ+1))^(κ+1)/(2/(κ−1))×RMF1 …(38)
とすると、(36)式は次式となる。
(dm/dt)in=Ain×β …(補12)
排気バルブ周りガス流量はゼロであるため、dM/dt=(dm/dt)inとなる。また、吸気バルブ開時期直後のバルブプロファイル(マップ値)を2次関数で近似すると、吸気バルブ開口面積Ain[m^2]は次式で表される。
Ain=Cai×(θ−IVO)^2 …(補13)
ただし、Cai:係数、
IVO:吸気バルブ開時期[degCA]、
よって、(35)式は次式となる。
V/R/T×dP/dt+P/R/T×dV/dt
=Cai×(θ−IVO)^2×β …(39)
点aで説明した上記(27)式、(28)式、(30)式を用いて、さらに
VTDC/REX/TEX×6×Ne=X …(補14)
PEX/REX/TEX×6×Ne=α …(補15)
ただし、VTDC:上死点での燃焼室内容積[m^3]、
とおくと、(39)式は次の式となる。
βCaiθ^2−θ×(2×β×Cai×IVO+α×Cva)
−β×Cai×IVO^2−α×Cva−X×Cpa=0
…(補16)
(補16)式はクランク角θについての2次方程式であるので、クランク角θについて解くと、解は次式で得られる。
θ=2×β×Cai×IVO+α×Cva
±((2×β×Cai×IVO+α×Cva)^2−4×β×Cai
×(−β×Cai×IVO^2−α×Cva−X×Cpa))
^(1/2)/2/β/Cai …(補17)
この2つの解のうち正の値となるほうを排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0とおけば、θ0は次式となる。
θ0=2×β×Cai×IVO+α×Cva
−((2×β×Cai×IVO+α×Cva)^2−4×β×Cai
×(−β×Cai×IVO^2−α×Cva−X×Cpa))
^(1/2)/2/β/Cai …(補18)
従って、点a、点bを通る直線1を関数y1とおくと、関数y1はこのようにして得られた排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0、吸気バルブ開時期IVO、吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivoを用いて次式により与えられる。
y1=−(dm/dθ)ivo/(θ0−IVO)×θ
+(dm/dθ)ivo/(θ0−IVO)×θ0
…(補19)
ただし、(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]
θ0 :排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクラン ク角[degCA°]
〔2〕直線2の算出方法
吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ後半(交点cのクランク角θ1以降)の吹き返しガス量を点d、eを通る直線2で近似する。基本的に点dのクランク角θ2は交点cのクランク角θ1以降でかつ排気バブル閉時期EVCより手前であればどこでも良いが、ここではクランク角が吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ期間のうち3/4を経過した点のクランク角位置(2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)とする。すなわち、点dのクランク角θ2を次式により与える。
θ2=EVC−(EVC−IVO)/4 …(補20)
ただし、EVC:排気バルブ閉時期[degCA]、
IVO:吸気バルブ開時期「degCA]、
ここで、吸気バルブ開時期IVOは固定で考えているので一定値である。また、排気バルブ閉時期EVCは、排気バルブ用VTC機構28に与える指令値より知り得る。
クランク角θ2では吸気バルブ16が十分に開いており、燃焼室内圧力が吸気圧力とほぼ等しいと仮定する。点dの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)d[kg/degCA]は次式で算出する。
(dm/dθ)d=Aex×PEX/(REX×TEX)^(1/2)
×κ^(1/2)×(2/(κ+1))^((κ+1)
/(2×(κ−1)))×RMF2/6/Ne
…(40)
ただし、Aex :θ2での排気バルブ開口面積、後に算出方法を説明する
PEX :平均排気圧力、算出済
REX :排気ガス定数、算出済
TEX :排気温度、算出済
κ :排気の比熱比、算出済
RMF2:流量比、
(40)式右辺の流量比RMF2は、オーバーラップ期間のうち3/4を経過した点のクランク角位置で排気バルブ周りガス流量を算出するときに用いる流量比であり、次式で表せる。
RMF2=(Pin/PEX)^(1/κ)×(2×κ/(κ−1))
×(1−(Pin/PEX)^((κ−1)/κ))^(1/2)
/κ^(1/2)/(2/(κ+1))^((κ+1)/2/(κ−1))
…(補21)
ただし、Pin:平均吸気圧力、実験による適合値とする
PEX:平気排気圧力、算出済
ここで、(補21)式において平均排気圧力PEXを用いているのは、オーバーラップ期間のうち3/4を経過した点はオーバーラップ後半にあり燃焼室内での脈動が小さくなるためである。
(40)式右辺の点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aexは次のようにして算出する。図18において排気バルブ用VTC機構非作動時の排気バルブ開口面積の波形が実線であるとして、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ閉時期EVCが所定値ADVだけ進角したときには排気バルブ開口面積の波形が実線より1点鎖線へと左側に平行移動する。図示の位置に点dでのクランク角θ2があるとすると、点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aexは排気バルブ用VTC機構非作動時に●印位置の値であったのが、いま求めたい吸排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ開口面積Aexは〇印位置の値へと小さくなる側に移る。この小さくなった○印位置の値は、同図より点dでのクランク角θ2から所定値ADVだけ遅らせたクランク角(θ2+ADV)での実線上の値、つまり△印位置の値と同じである。ということは、排気バルブ用VTC機構28の作動で排気バルブ閉時期EVCが所定値ADVだけ進角した場合に点dでのクランク角θ2での排気バルブ開口面積Aexを求めるには、点dでのクランク角θ2に代えて、点dでのクランク角θ2に所定値ADVを加算した値を用いて実線の特性、つまり排気バルブ用VTC機構非作動時に適合している排気バルブ開口面積の特性を参照すればよいことを意味する。言い換えると、排気バルブ用VTC機構非作動時に適合している排気バルブ開口面積の特性(図18に示す実線の特性)をクランク角をパラメータとする排気バルブ面積のテーブルとして記憶させておき、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ閉時期EVCが所定値ADVだけ進角したとき、点dでのクランク角θ2に所定値ADVを加算したクランク角からこの排気バルブ面積のテーブルを参照させることで、排気バルブ用VTC機構28の作動により排気バルブ閉時期EVCが所定値ADVだけ進角しているときにおいても、点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aexを精度良く求めることができる。
点eでは排気バルブ16が閉じるため排気バルブ周りガス流量はゼロとなる。したがって、点d、点eを通る直線2を関数y2とおくと、関数y2は、このようにして求めた点dの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)dと、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVC(排気バルブ用VTC機構非作動時には排気バルブ用VTC機構非作動時の排気バルブ閉時期EVC)とを用いて次式により与えられる。
y2=−4×(dm/dθ)d/(EVC−IVO)×(θ−EVC)
…(41)
この(41)式と上記の(補19)式とを連立させて解くと、その解であるクランク角θが点cのクランク角θ1として算出される。
また、点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)cは、(41)式のクランク角θに点cのクランク角θ1を代入することにより得られる。
このようにして求めた吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、点bのクランク角θ0、点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)cの3つの値を上記(25)式に代入して吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を算出する。
これで、排気バルブ用VTC機構28を備える場合に燃焼室内残留ガスを算出するについて検討したところの説明を終える。
次に、図19はエンジンコントローラ31内で行われる燃焼室内残留ガス量推定装置のブロック図で、当該装置は吸気バルブ開時期燃焼室内容積算出部51、排気ガス定数算出部52、平均排気温度算出部53、平均排気圧力算出部54、比熱比算出部55、充填効率算出部56、吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出部57、吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出部58、吸気バルブ開時期燃焼室内ガス量算出部59、オーバーラップ中吹き返しガス量算出部60、残留ガス量算出部61からなる。
まず、吸気バルブ開時期燃焼室内容積算出部51では、吸気バルブ開時期IVOと、上記(7)式〜(11)式を用いて吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOを算出する。ここで、排気バルブ閉時期EVCは排気バルブ用VTC機構28に与える指令値よりわかっている。
排気ガス定数算出部52では、目標当量比TFBYAと、上記(6)式、(補3)式とを用いて排気ガス定数REXを算出する。目標当量比は、図3で示したように、エンジンの負荷と回転速度Neに応じた値である。
平均排気温度算出部53では、実トルク推定値TENG、エアフローセンサ32により検出される吸入空気量MA、目標当量比TFBYA、エンジン回転速度Neから上記(23)式、(24)式を用いて平均排気温度TEXを算出する。
平均排気圧力算出部54では、エアフローセンサ32により検出される吸入空気量MA、目標当量比TFBYA、エンジン回転速度Ne、排気ガス定数REX、大気圧力センサ36により検出される大気圧力PPAMBと、上記(20)式、(21)式とを用いて平均排気圧力PEXを算出する。
比熱比算出部55では、平均排気温度TEX、排気ガス定数REXと上記(18)式、(補7−1)式〜(補7−5)式、(19)式とを用いて排気の比熱比κを算出する。
充填効率算出部56では、エアフローセンサ32により検出される吸入空気量MAと上記(補8)式とを用いて実際の充填効率ITACを算出する。
吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出部57では、平均排気温度TEX、エンジン回転速度Ne、吸気バルブ開時期IVO、排気バルブ閉時期EVC、平均排気圧力PEX、実際の充填効率ITAC、排気の比熱比κと、上記(12)式、(13)式、(16)式、(17)式、(補6)式とを用いて吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出する。
吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出部58では、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、平均排気圧力PEX、平均排気温度TEXと、上記(22)式、(23)式、(24)式とを用いて吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOを算出する。
吸気バルブ開時期燃焼室内ガス量算出部59では、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、排気ガス定数EX、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOと、上記(1)式とを用いて吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を算出する。
オーバーラップ中吹き返しガス量算出部60では、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期IVO、排気バルブ閉時期EVC、平均排気圧力PEX、排気の比熱比κ、エンジン回転速度Ne、吸気圧力センサ44により検出される吸気圧力、排気ガス定数REX、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOと、上記(25)式、(33)式、(補18)式、(補19)式、(補20)式、(40)式、(41)式等とを用いて吸気バルブの開期間と排気バルブの開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2算出する。
燃焼室内残留ガス量算出部61ではこの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2と、吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を加算して、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を算出する。
ここで、先願装置の第1実施形態の作用効果を説明する。
排気バルブ用VTC機構28が非作動時(第1の状態時)から作動時(第2の状態時)へと切換わった場合に、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ開時期での排気圧力、燃焼室内圧力が排気バルブ用VTC機構非作動時の排気バルブ開時期での排気圧力、燃焼室内圧力と相違することとなるため、その相違する圧力分だけ、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量も、排気バルブ用VTC機構非作動時の値から大きく変化してしまう。
この場合に、先願装置の第1実施形態によれば、図19に示したように排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCに基づいて、吸気バルブ開時期燃焼室内圧力算出部57が排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出し、この吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOに基づいて、吸気バルブ開時期燃焼室内温度算出部58が排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOを算出し、これら吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOに基づいて、吸気バルブ開時期燃焼室内ガス量算出部59が排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を算出し、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期に基づいて、オーバーラップ中吹き返しガス量算出部60が排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の吹き返しガス量M2を算出し、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1と、このオーバラップ中の吹き返しガス量M2とに基づいて、燃焼室内残留ガス量算出部61が排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を算出している。すなわち、排気バルブ用VTC機構28が非作動時より作動時に切換わったときには、その排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOと、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVOとを改めて算出し、その算出した値に基づいて排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を算出すると共に、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ閉時期に基づいて、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を算出するので、排気バルブ用VTC機構28が非作動時より作動時に切換わったときにも、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を精度良く推定することができる。
基準排気温度時に排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時へと切換わった場合に、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力は、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と相違することとなる。
この場合に、先願装置の第1実施形態によれば、平均排気圧力PEXを算出し(上記の(20)式、(21)式を参照)、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ開時期と、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値(各クランク角での排気バルブ周りの圧力脈動分)とに基づいて、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを算出し(図16を用いて説明したところを参照)、この算出された基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMと平均排気圧力PEXとに基づいて、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出する(上記の(12)式を参照)ので、基準排気温度時に排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時に切換わったときにも、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを精度良く推定することができる。
排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値(吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分)を実現する方法として、排気バルブ用VTC機構作動時の、相違する排気バルブ開時期ごとに排気バルブ用VTC機構作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップを作成して記憶させておくことが考えられるが、その手法では莫大な記憶容量が必要になってしまう。
これに対して、先願装置の第1実施形態によれば、記憶させる必要があるのは、図6に示したように、排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値についてだけであるので、記憶容量の大幅な削減を行い得る。
排気バルブ用VTC機構非作動時の運転状態の変化により基準排気温度時から基準排気温度より高温側の排気温度時に切換わった場合に、基準排気温度より高温側の排気温度時の排気の速度c(排気圧力伝播速度)が基準排気温度時よりも大きくなり、排気圧力脈動分の波長λが基準排気温度時の波長λ0よりも短くなる。そのため、基準排気温度より高温側の排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力が、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と相違することとなる。さらに、基準排気温度より高温側の排気温度時に排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時へと切換わると、基準排気温度より高温側の排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力は、基準排気温度より高温側の排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と相違することとなる。
この場合に、先願装置の第1実施形態によれば、平均排気圧力PEXを算出し(上記の(20)式、(21)式を参照)、基準排気温度より高温側に外れた排気温度時の排気の速度c(排気圧力伝播速度)を算出し(上記の(16)式を参照)、この算出された排気の速度cと、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ開時期と、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値(吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分)とに基づいて、基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM(吸気バルブ開時期での排気バルブ周りの圧力脈動分)を算出し(図17を用いて説明したところを参照)、この算出された基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMと平均排気圧力PEXとに基づいて、基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出する(上記の(12)式を参照)ので、基準排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構非作動時から基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時に切換わったときにも、基準排気温度より高温側に外れた排気温度時かつ排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを精度良く推定することができる。
排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時に切換わり、例えば、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCが排気バルブ用VTC機構非作動時よりも所定値ADVだけ進角側に移ったとすれば、吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するガス量が小さくなる分だけ、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2が、この排気バルブ閉時期の進角分に対応して排気バルブ用VTC機構非作動時より大きくなる。このため、排気バルブ用VTC機構作動時に排気バルブ閉時期が排気バルブ用VTC機構非作動時より所定値ADVだけ進角側に移ったときにも、排気バルブ用VTC機構非作動時のままの吹き返しガス量を算出したのでは、吹き返しガス量の算出に、排気バルブ閉時期の進角分に対応する誤差(つまり吸気ポート4に吹き返したガスが燃焼室内に流入するガス量が小さくなる分の誤差)が生じる。
これに対して、先願装置の第1実施形態によれば、吸気バルブ開時期から排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期までの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)(各クランク角での排気バルブ周りガス流量)を算出し、この吸気バルブ開時期から排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期までの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)に基づいて、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を算出するので、排気バルブ用VTC機構28が非作動時から作動時に切換わったときにも、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を精度良く推定することができる。
先願装置の第1実施形態によれば、図13に示したように、吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCまでの排気バルブ周りガス流量((dm/dθ)各クランク角での排気バルブ周りガス流量)の波形を直線1(第1の直線)と直線2(第2の直線)との2本の直線で近似し、その2本の直線と、吸気バルブ開時期IVOの直線と、排気バルブ周りガス流量ゼロの水平線とで構成された2つの三角形の面積を求めることで(上記(25)式を参照)、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を算出するので、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出が容易となる。
排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での排気バルブ開口面積と、排気バルブ用VTC機構作動時の各クランク角での排気バルブ開口面積とを別々にテーブル値として記憶させておき、排気バルブ用VTC機構非作動時の排気バルブ閉時期から一方のテーブルを参照して、排気バルブ用VTC機構非作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間の3/4が経過した点d1(2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)での排気バルブ開口面積を求め、その求めた排気バルブ開口面積に基づいて点d1での排気バルブ周りガス流量を算出し、また、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期から他方のテーブルを参照して、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間の3/4が経過した点d2(2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)での排気バルブ開口面積を求め、その求めた排気バルブ開口面積に基づいて点d2での排気バルブ周りガス流量を算出するのでは、テーブルの記憶容量が倍必要になる。
これに対して、先願装置の第1実施形態によれば、排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での排気バルブ開口面積をテーブル値として記憶しておき、排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期とこのテーブル値とに基づいて、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間の3/4が経過した点d(2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)dを算出する。すなわち、先願装置の第1実施形態によれば、記憶させる必要があるのは、排気バルブ用VTC機構非作動時の各クランク角での排気バルブ開口面積についてだけであるので、記憶容量の削減を行い得る。
さて、排気バルブ用VTC機構作動時に(あるいは排気バルブ用VTC機構非作動時についても)吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ期間(以下単に「オーバーラップ期間」という。)が短い場合には、点dでのクランク角θ2を一定値(オーバーラップ期間のうち3/4を経過した点のクランク角位置)で設定しても、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を精度良く算出することができる。曲線で形成される、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量dm/dθの波形を2本の斜めの直線で近似するが、例えば図20(A)に示したように、オーバーラップ期間が所定値より短かければ、オーバーラップ中に排気バルブ周りガス流量dm/dθがゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾きは小さく、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2が少ないため、オーバーラップ期間により決まるクランク角位置である点dでのクランク角θ2が最適値ではなくても、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出精度はそれほど悪化しない。
しかしながら、エンジンや排気バルブ用VTC機構の仕様によっては、オーバーラップ期間が所定値より長い場合がある。このようなエンジンでは、排気バルブ用VTC機構作動時にオーバーラップ期間が所定値より小さい場合に、点dでのクランク角θ2を一定値で設定して、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間中の吹き返しガス量M2を精度良く算出し得ていたとしても、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値より長くなると、オーバーラップ中に排気バルブ周りガス流量dm/dθがゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾きが大きくなりかつ吸気バルブ開時期から排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期までの各クランク角での排気バルブ周りガス流量dm/dθの波形は曲線で構成される部分が多くなるため、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値より長くなった場合にも、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値未満の場合に設定している、点dでのクランク角θ2をそのまま用いたのでは、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出誤差が大きくなる。すなわち、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が長くなるにつれ、図20(B)に示したように排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾きが大きくかつ曲線で構成される部分が多くなり2本の斜めの直線1,2と排気バルブ周りガス流量dm/dθの波形とのずれが大きくなるため、オーバーラップ期間により決まるクランク角位置である点dでのクランク角θ2を最適な位置に設定しない場合、2本の斜めの直線と、吸気バルブ開時期IVOの直線と、排気バルブ周りガス流量dm/dθがゼロの水平線とで構成された2つの三角形の面積として算出している、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の推定精度が悪化してしまうのである。なお、図20(A)、図20(B)では吸気バルブ開時期IVOを一致させたタイミングで示しているが、必ずしも一致するものでない。オーバーラップ期間が長くなるにつれて吸気ポート圧と排気ポート圧の差圧が小さくなって吹き抜けるガス流速がそれ以上大きくならずに一定になるが、オーバーラップ期間が長い場合の後半区間で吸気ポート圧と排気ポート圧の差圧が小さくガス流速が一定となっている。
そこで、先願装置の第2実施形態は、排気バルブ用VTC機構28の作動で、排気バルブ閉時期EVCが排気バルブ用VTC機構非作動時の初期位置である最進角位置から遅角側に移動してバルブオーバーラップ期間が長くなる場合を扱う。すなわち、先願装置の第2実施形態では、排気バルブ用VTC機構作動時にオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、点dでのクランク角θ2(第1の直線と第2の直線の2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)を、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の排気バルブ周りガス流量dm/dθがゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾きに基づいて算出する。
なお、先願装置の第2実施形態の対象は、吸気バルブ開時期IVOは一定のまま排気バルブ用VTC機構28の作動でバルブオーバーラップ期間が長くなる場合に限られるものでない。例えば、上記の先願装置の第1実施形態では、吸気バルブ用VTC機構27は非作動状態にあるものとして説明したが、吸気バルブ用VTC機構27を作動させると、排気バルブ閉時期EVCは変わらないのに吸気バルブ開時期IVOが進角側に移動してバルブオーバーラップ期間が長くなることがあり、この場合にも先願装置の第2実施形態を適用できる。また、吸気バルブ用VTC機構27と排気バルブ用VTC機構28とが共に作動して、バルブオーバーラップ期間が長くなる場合にも先願装置の第2実施形態を適用できる。要は、吸気バルブ用VTC機構27と排気バルブ用VTC機構28の作動、非作動の組合せによりバルブオーバーラップ期間が長くなる場合に先願装置の第2実施形態を適用できる。
次に、排気バルブ用VTC機構の作動でオーバーラップ期間が所定値より長くなった場合の点dでのクランク角θ2の設定方法を図21を参照して具体的に説明する。
図21に示したように、排気バルブ用VTC機構作動時にオーバーラップ期間が所定値より長い場合の排気バルブ周りガス流量の波形が、実測またはシミュレーションによって得られたとする。この場合に、点eより左側に向かって、一定のクランク角毎にθ21,θ22,…,θ2n-1,θ2n(nは正数)を取り、それら各クランク角のときの曲線上の点を順番にd1,d2,…,dn-1,dnとする。nの数を多くするほど吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出精度は向上するが、その反面で算出時間が増えるので、算出精度と算出時間のバランスを考えてnの数を決める。
まず、e点と1番目のd1点を結んだ直線を仮の直線2(図21参照)としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を上記〔2〕で前述したところに従って計算する。すなわち、点d1でのクランク角θ21から上記(40)式を用いて点d1での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)d1を算出し、この点d1での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)d1を上記(41)式に代入して関数y2を決定し、この関数y2と上記の(補7)式とを連立させて、点cのクランク角θ1を算出する。また、点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)cを上記(41)式のクランク角θに点cのクランク角θ1を代入して得る。一方、図21より吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、点bのクランク角θ0を算出する。このようにして求めた吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、点bのクランク角θ0、点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)cの3つの値を上記(25)式に代入して、e点とd1点を結んだ直線を仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を計算し、その計算値をM2theo1とする。図21より当然のことながら、e点と1番目のd1点を結んだ直線を仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量計算値M2theo1は、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の実際の吹き返しガス量より小さい。
次に、e点と2番目のd2点を結んだ直線を仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量を上記〔2〕で前述したところに従って計算し、その計算値をM2theo2とする。図21よりe点と2番目のd2点を結んだ直線を仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量計算値M2theo2も、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の実際の吹き返しガス量より小さい。
後は同様にして、e点とd3,…,dn点を結んだ直線をそれぞれ仮の直線2としたときの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量計算値M2theo3,…,dM2theonを上記〔2〕で前述したところに従って次々と求める。このようにして合計n個の吹き返しガス量計算値M2theo1,…,dM2theonを求めたとき、これらn個の計算値の中には、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の実際の吹き返しガス量に近い値が含まれていると考えられる。
一方、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の実際の吹き返しガス量M2realを、図21の波形図から図上計算で、あるいは実測やシミュレーションにより求める。
次に、この求めた実際の吹き返しガス量M2realと、n個の吹き返しガス量計算値M2theo1,…,M2theonとを比較し、実際の吹き返しガス量M2realに最も近い吹き返しガス量計算値を1つ選択する。例えば、吹き返しガス量計算値M2theo10が実際の吹き返しガス量M2realに最も近い値であったとすれば、図21の波形に対しては点eと10番目の点d10とを結んだ線(一点鎖線参照)を直線2としたとき、実際の吹き返しガス量M2realを最も良く近似する直線となるので、点d10でのクランク角θ210を点dでのクランク角θ2として決定する。
次に、排気バルブ周りガス流量dm/dθがゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0を、図21の波形図から図上計算で、あるいは実測やシミュレーションにより求め、この排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と、実際の吹き返しガス量M2realとn個の吹き返しガス量計算値との比較により得ている点dでのクランク角θ2とをカップルとする1のデータ((dm2/d2θ)0,θ2)を得る。これで、図21の波形図に対して行うべき1のカップルデータの収集操作を終了する。
オーバーラップ期間が図21と異なれば、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形も図21の波形とは相違するものとなる。従って、オーバーラップ期間が長くなることによって吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出誤差が問題となり始めるときのオーバーラップ期間を所定値Aとし、最大のオーバーラップ期間を最大値Bとすれば、所定値Aと最大値Bを含めて所定値Aと最大値Bの間でオーバーラップ期間の異なるk(kは正数)個の排気バルブ周りガス流量の特性を、図21と同様にして、実測やシミュレーションにより求めることができる。kの数を多くするほど吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出精度は向上するが、その反面で実測やシミュレーションの工数が増えるため、算出精度と工数のバランスを考えてkの数を決める。kが例えば32であれば、そのうちの1つが図21であるので、オーバーラップ期間の異なる残り31の排気バルブ周りガス流量の各波形について、上記の操作を繰り返し、31の各波形に対して実際の吹き返しガス量M2realを最も良く近似する直線2を決定する。このようにして、オーバーラップ期間の異なる32の排気バルブ周りガス流量の各波形について、実際の吹き返しガス量M2realを最も良く近似する直線2、つまり当該直線2を決定する点dでのクランク角θ2がそれぞれ得られる。
一方、上記オーバーラップ期間の異なる32の排気バルブ周りガス流量の各波形から、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0を、波形図から図上計算で、あるいは実測やシミュレーションにより順次求めてゆくと、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と、点dでのクランク角θ2とをカップルとする32のカップルデータが得られる。これで、カップルデータの収集を全て終了する。
次に、横軸を排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0とし、縦軸を(EVC−θ2)/(EVC−IVO)とするグラフに上記収集した32のカップルデータをプロットすると、図22に示したように、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と(EVC−θ2)/(EVC−IVO)との間に強い相関がある、つまり両者の間に比例関係(直線参照)があることを初めて見出した。ここで、図22縦軸の(EVC−θ2)/(EVC−IVO)の値は、オーバーラップ期間(EVC−IVO)に対するEVC−θ2の割合を表している。図22縦軸を点dでのクランク角θ2そのものでなく、(EVC−θ2)/(EVC−IVO)としたのは、オーバーラップ期間に対するEVC−θ2の割合とするほうが一般性をもつ、つまりエンジン排気量の相違や排気バルブ用VTC機構のサイズの相違等を排除できるためである。
図22より、相関を示している直線の傾きとy切片とを適合値として求めることができるので(原点とy軸とをどの位置に置くかは適当に定める)、得られた直線の傾きを所定値ROLM1、得られたy切片を所定値ROLA1とおくと、次式が成立する。
(EVC−θ2)/(EVC−IVO)=ROLM1×(dm2/d2θ)0
+ROLA1
…(42)
この(42)式を点dでのクランク角θ2について整理すると次式が得られる。
θ2=EVC−(EVC−IVO)
×((dm2/d2θ)0×ROLM1+ROLA1)
…(43)
ただし、EVC :排気バルブ閉時期[degCA]、
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]、
(dm2/d2m)0:排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときの
排気バルブ周りガス流量の傾き、
ROLM1 :所定値(適合値)、
ROLA1 :所定値(適合値)、
この(43)式が、オーバーラップ期間が所定値より長い場合に、点dでのクランク角θ2を与える式である。ここで、(43)式右辺の、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0は、上記(補19)式をθについて微分してd(y1)/dθを求め、この関数に上記(補18)式により得られる、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0を代入することで求めることができる。
排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と直線1の傾きとはそれほど違わないので(図20(B)参照)、(43)式右辺の、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0として、直線1の傾きを用いる、つまり次式により点dでのクランク角θ2を算出することができる(先願装置の第3実施形態)。
θ2=EVC−(EVC−IVO)
×((dy1/dθ)×ROLM1+ROLA1)
…(44)
ただし、EVC :排気バルブ閉時期[degCA]、
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]、
:直線1の傾き、
ROLM1 :所定値(適合値)、
ROLA1 :所定値(適合値)、
ここで、(44)式右辺の直線1の傾き(dy1/dθ)は、上記(補19)式より、次式で与えられる。
dy1/dθ=−(dm/dθ))ivo/(θ0−IVO) …(45)
先願装置の第1実施形態で点dでのクランク角θ2を与える上記(補20)式と比較してみると、(43)式右辺の(dm2/d2θ)0×ROLM1+ROLA1の部分を定数である1/4と置いたのが先願装置の第1実施形態であることがわかる。これに対して、先願装置の第2、第3の実施形態は、先願装置の第1実施形態で定数と置いていたところを変数で与えるものとなる。言い替えると、先願装置の第1実施形態は点dでのクランク角θ2を定数で置いていたのに対して、先願装置の第2、第3の実施形態はオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、定数に代えて点dでのクランク角θ2を、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0や直線1の傾き(dy1/dθ)の関数で与えるものである。
このように、先願装置の第2、第3の実施形態はオーバーラップ期間が所定値より長い場合を主に扱うものであるが、同じ考え方をオーバーラップ期間が所定値未満の場合にまで拡張し、オーバーラップ期間が所定値未満の場合についても、点dでのクランク角θ2を、上記(43)式や上記(44)式、(45)式により算出する(つまり排気バルブ周りガス流量dm/dθがゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0の関数や直線1の傾き(dy1/dθ)の関数で与える)ようにする。
ただし、先願装置の第2、第3の実施形態は、この場合に限定されるものでない。例えば、オーバーラップ期間が所定値未満の場合と、オーバーラップ期間が所定値より長い場合とで、点dでのクランク角θ2の設定方法を異ならせるようにしてもかまわない。この場合にはオーバーラップ期間が所定値より大きいか否かを判定する必要があるが、この所定値としては、上記の所定値Aを当てればよい。すなわち、エンジン仕様と排気バルブ用VTC機構の仕様とが定まれば、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間がどの範囲に収まるかが定まるので、オーバーラップ期間が所定値より長いか否かを判定するための所定値を適合により定めることができる。
次に、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0として、先願装置の第3実施形態では直線1の傾き(dy1/dθ)で近似したことからわかるように、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0は、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量のうち前半部の値に関係する値である。そこで、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0の他にも代用し得る値がないかと検討してみたところ、吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角θでの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)randや吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivoでもよいことが判明した。つまり、図22の横軸に、吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角θでの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)randや吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivoを採用したときにも、横軸と縦軸の2つの値の間に強い相関がある、つまり両者の間に比例関係があることを見出した。先願装置の第2、第3の実施形態の場合も含めてまとめると、図22において横軸となり得る値は次の4つである。
《1》排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガ ス流量の傾き(dm2/d2m)0
《2》直線1の傾き(dy1/dθ)
《3》吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク 角θ0までの間の任意のクランク角での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ra nd
《4》吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo
上記《1》、《2》の場合の点dでのクランク角θ2の算出式は上記(43)式、(44)式に示したので、上記《3》の場合の点dでのクランク角θ2の算出式を次に示す(先願装置の第4実施形態)。
θ2=EVC−(EVC−IVO)
×((dm/dθ)rand×ROLM2+ROLA2)
…(46)
ただし、EVC :排気バルブ閉時期[degCA]、
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]、
(dm/dθ)rand:吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ周りガス流 量がゼロとなるクランク角θ0までの間の任意のク ランク角θでの排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]、
ROLM2 :所定値(適合値)、
ROLA2 :所定値(適合値)、
ここで、(46)式右辺の、吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)randは、直線1から求める。つまり、吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間で予め定めているクランク角を上記(補19)式に代入して得られる関数y1の値を、吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)randとすればよい。
同様にして、上記《4》の場合の点dでのクランク角θ2の算出式を次に示す(先願装置の第5実施形態)。
θ2=EVC−(EVC−IVO)
×((dm/dθ)ivo×ROLM3+ROLA3)
…(47)
ただし、EVC :排気バルブ閉時期[degCA]、
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]、
(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]、
ROLM3 :所定値(適合値)、
ROLA3 :所定値(適合値)、
ここで、(47)式右辺の吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivoは上記(33)式により算出済みである。
次に、エンジンコントローラ31ではどのようにして点dでのクランク角θ2が算出され、その算出した点dでのクランク角θ2を用いどのようにして吹き返しガス量M2が求められるのかを説明する。ここでは、先願装置の第3実施形態の場合で代表させて述べると、図23は先願装置の第3実施形態のオーバーラップ中吹き返しガス量算出部60(図19参照)のブロック図である。
まず、吸気バルブ開時期ガス流量算出部71では、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、吸気バルブ開時期IVO、排気ガス定数REX、エンジン回転速度Neから上記(33)式を用いて吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivoを算出する。
ガス流量ゼロ時クランク角算出部72では、排気圧力Pex(=(PEX+PIVO)/2)、排気ガス定数REX、平均排気温度TEX、排気の比熱比κ、流量比RMF1、吸気弁開時期IVOから上記(38)式、(補18)式を用いて排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0を算出する。
直線1設定部73では、これら吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0、吸気バルブ開時期IVOから上記(補19)式を用いて関数y1を設定する。直線1の傾き算出部74では、吸気バルブ開時期ガス流量算出部71で算出している吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、同じくガス流量ゼロ時クランク角算出部72で算出している排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0、吸気弁開時期IVOから上記(45)式を用いて直線1の傾き(dy1/dθ)を算出する。
点dのクランク角算出部75では、この直線1の傾き(dy1/dθ)、排気バルブ閉時期EVC、吸気バルブ開時期IVO、所定値ROLM1、ROLA1から上記(44)式を用いて点dでのクランク角θ2を算出する。このように、先願装置の第3実施形態では、点dでのクランク角θ2は、直線1の傾き(dy1/dθ)に基づいて算出されるものである。
排気バルブ開口面積算出部76では、この点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aexを、図18で前述したところに従って算出する。
点dのガス流量算出部77では、この点dでのクランク角θ2に対する排気バルブ開口面積Aex、排気圧力Pex(=(PEX+PIVO)/2)、排気ガス定数REX、排気温度TEX、排気の比熱比κ、流量比RMF2から上記(40)式を用いて点dの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)dを算出する。
直線2設定部78では、この点dの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)d、排気バルブ閉時期EVC、吸気バルブ開時期IVOから上記(41)式を用いて関数y2を設定する。
点cのクランク角算出部79では、上記設定された2つの関数y1、y2を連立させて解くことにより、交点cのクランク角θ1を算出する。
点cのガス流量算出部80ではこの点cのクランク角θ1を上記の関数y1に代入することによって点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)cを算出する。
吹き返しガス量算出部81では、このようにして求めた吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0、点cのクランク角θ1、点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)c、吸気バルブ開時期IVOから上記(25)式を用いて吹き返しガス量M2を算出する。
ここで、先願装置の第2、第3、第4、第5の実施形態の作用効果を説明する。
排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値未満の場合に、直線1と直線2の2本の直線が交わるときのクランク角位置(θ1)より遅角側のクランク角位置(θ2)を一定値(オーバーラップ期間のうち3/4を経過した点のクランク角位置)で設定して、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2を精度良く算出していたとしても、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値より長くなると、吸気バルブ開時期IVOから排気バルブ用VTC機構作動時の排気バルブ閉時期EVCまでの各クランク角での排気バルブ周りガス流量の波形は曲線で構成される部分が多くなるため、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値より長くなった場合にも、排気バルブ用VTC機構作動時のオーバーラップ期間が所定値未満の場合に設定している、点dでのクランク角位置θ2をそのまま用いたのでは、排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M2の算出誤差が大きくなってしまうのであるが、排気バルブ用VTC機構作動時(第2の状態時)にオーバーラップ期間が所定値より長い場合に、点dでのクランク角θ2(第1の直線と第2の直線の2本の直線が交わるときのクランク角位置より遅角側のクランク角位置)を、先願装置の第2実施形態によれば排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0に基づいて(上記(43)式参照)、先願装置の第3実施形態によれば直線1(第1の直線)の傾き(dy1/dθ)に基づいて(上記(45)式、(44)式参照)、先願装置の第4実施形態によれば吸気バルブ開時期IVOでのクランク角から排気バルブ用VTC機構作動時の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0までの間の任意のクランク角での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)randに基づいて(上記(46)式参照)、先願装置の第5実施形態によれば吸気バルブ開時期IVOでの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivoに基づいて(上記(47)式参照)それぞれ算出するので、オーバーラップ期間が所定値より長くなった場合にも、その長くなった、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバラップ中の吹き返しガス量M2を精度良く算出できる。
これで先願装置の説明を終える。
さて、その後の実験やシミュレーションにより、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形には、運転条件の相違、特に排気バルブ開閉時期の相違により、図24において左、中、右に分けて示したように三通りの波形が存在することが判明している。それぞれの波形を説明すると、次の三つである。
(い)燃焼室内から排気ポートへのガスの吹き出しと排気ポートから燃焼室内へのガスの 吹き返しの両方が存在する場合(図24左の場合)の波形
(ろ)燃焼室内から排気ポートへのガスの吹き出しのみの場合(図24中の場合)の波形
(は)排気ポートから燃焼室内へのガスの吹き返しのみの場合(図24右の場合)の波形
ここで、ガス流れの方向については、排気ポート11から燃焼室5内へと流れる方向を正、燃焼室5内から排気ポート11へと流れる方向を負としている。これは便宜的なものであるので、排気ポート11から燃焼室5内へと流れる方向を負、燃焼室5内から排気ポート11へと流れる方向を正としてもかまわない。
このように、運転条件の相違により排気バルブ開閉時期が相違して吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量に3つの異なる波形が出現するとなると、現在の運転条件で吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形が図24の左、中、右のどの波形に属するのかを判定(推定)する必要がある。
この3つの異なる波形のいずれに属するのかを判定する方法を本発明の第6実施形態として次に説明する。なお、先願装置では第5実施形態までを記載しているため、第6実施形態は本発明の第1実施形態となるが、本発明の第1実施形態として説明したのでは第1実施形態が2つ出てきて紛らわしくなるので、本発明の第6実施形態として説明する。
本発明の第6実施形態では、次の2つの操作a、bにより吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形が図24の左、中、右のいずれの場合の波形であるのかを判定する。
操作a:排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0を先願装置と同じに、次の式により算出する。
θ0=2×β×Cai×IVO+α×Cva
−((2×β×Cai×IVO+α×Cva)^2−4×β×Cai
×(−β×Cai×IVO^2−α×Cva−X×Cpa))
^(1/2)/2/β/Cai …(50)
ただし、IVO:吸気バルブ開時期[degCA]
Cpa:燃焼室内圧力の時間微分値、(補10)式により算出
Cai:係数
Cva:吸気上死点付近で横軸にクランク角、縦軸に燃焼室内容積変化率 を採ったときの直線の傾き[m^3/deg^2]
α :=PEX/REX/TEX×6×Ne
X :=VTDC/REX/TEX×6×Ne
(50)式右辺のβは次の式により算出する。
β=Pex/(REX×TEX)×κ^(1/2)
×(2/(κ+1))^(κ+1)/(2/(κ−1))×RMF1 …(51)
ただし、Pex:排気圧力、ここでは(PEX+PIVO)/2とする
REX:排気ガス定数、上記(20)式により算出
TEX:平均排気温度、上記(23)式により算出
κ:排気の比熱比、上記(19)式により算出
RMF1:流量比、上記(37)式により算出
これらの(50)式、(51)式は先願装置の第1実施形態で記載している(補18)式、(38)式と同じ式である。
このようにして算出される、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0が吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中にあれば、図24左の場合の波形であると、これに対して排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0が吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中になければ図24中、右の場合の波形のいずれかであると判定する。これで図24左の場合の波形であることは判定できるので、次には、図24中、右の場合の波形のいずれかであるかを次の操作bによって判定することである。
操作b:図24中、図24右の場合の波形の違いは、吸気バルブ開時期IVOでのガス流れの向きにあり、燃焼室5内から排気ポート11へとガスが吹き出しているのか、それとも排気ポート11から燃焼室5内へとガスが吹き返しているのかに基づけばよい。圧力の関係で考えると、燃焼室5内から排気ポート11へとガスが吹き出しているとき燃焼室内圧力が排気圧力より高くなり、この逆に排気ポート11から燃焼室5内へとガスが吹き返しているとき燃焼室内圧力が排気圧力より低くなるので、燃焼室内圧力>排気圧力であれば図24中の場合であると、これに対して燃焼室内圧力<排気圧力であれば図24右の場合であると判定できる。
そこで、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の燃焼室内圧力と排気圧力とを測定してみたところ、図25に示したように意外な結果が得られた。すなわち、図25は、図24左、中、右の状態での排気バルブ周りガス流量波形に、さらに吸気圧力Pint、排気圧力Pex、燃焼室内圧力Pcylの圧力履歴及び吸排気バルブの各開口面積(吸気バルブ開口面積Ain、排気バルブ開口面積Aex)を加えたものを示しているが、図25において特異であるのは図25中の場合、つまり吸気バルブ開時期IVO付近で燃焼室内圧力Pcylが排気圧力Pexよりも上昇している点である。この点を解析したところ、燃焼室内圧力Pcylが図25中のように排気圧力Pexを超えて盛り上がる理由は、吸気バルブ開時期IVO付近で燃焼室5内と排気ポート11との間のガス流れがチョーク状態になるためであることが分かった。言い替えると、燃焼室5内から排気ポート11へのガス流れがチョーク状態になる理由は、吸気バルブ開時期IVO付近での排気バルブ開口面積が非常に小さいため、ピストン6の動きに伴う燃焼室内容積変化量より排気バルブ通過可能なガス量が小さくなると、排気バルブ16を通過できなかった燃焼室5内ガスが、ピストン6が上昇する排気行程で圧縮されることとなり、これによって燃焼室内圧力が排気圧力よりも上昇するためである。
これについてさらに図26を参照して説明すると、図26右側に拡大して示してあるように、ピストン6の動きに伴う燃焼室内容積変化量(図では「筒内容積変化量」で示す。)は排気上死点(TDC)付近で単純な右上がりの直線となる(近似)のに対して、排気バルブ通過可能なガス量は急激に小さくなってゼロに収束する曲線となる。このため、曲線が直線を超える領域(ハッチングで示す)ではガスが燃焼室5内から排気ポート11へと出ることができず(つまりチョーク状態となり)、排気行程で上昇するピストン6により燃焼室5内で圧縮されることになるのである。曲線は直線と2点で交わるが、曲線が時間的に早く直線と交わるときのクランク角が、チョーク状態開始クランク角(燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角)CACOMPで、チョーク状態が終了するタイミングは二次曲線が時間的に遅く直線と交わるときのクランク角(簡単には吸気バルブ開時期IVO)である。
従って、本発明の第6実施形態では、チョーク状態開始クランク角CACOMPに基づいて燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する。実際にはチョーク状態開始クランク角CACOMPと吸気バルブ開時期IVOとを比較し、チョーク状態開始クランク角CACOMPが吸気バルブ開時期IVOと一致するかまたは吸気バルブ開時期IVOよりも進角側にあるとき、燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になる(図24中に示す排気バルブ周りガス流量の波形となる)と、またチョーク状態開始クランク角CACOMPが吸気バルブ開時期IVOより遅角側にあるとき燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にない(図24右に示す排気バルブ周りガス流量の波形となる)と判定する。ここで、チョーク状態開始クランク角CACOMPと比較する相手を吸気バルブ開時期IVOとしたのは、チョーク状態が生じるときには、吸気バルブ開時期IVOがチョーク状態開始クランク角CACOMPより確実に遅角側にくると考えられるためである。
次には上記のチョーク状態開始クランク角CACOMPを算出することを考える。
理想気体の状態方程式より時間微分は、
dm/dt=(P/RT)・dV/dt …(52)
である。ただし、圧力P、排気のガス定数R、温度Tの変化は小さいとしてそれらの時間微分を無視している。
ここで、時間tでの微分からクランク角θでの微分への変更を行う。dm/dθ・dθ/dt=(P/RT)・dV/dθ・dθ/dtであるから(52)式よりクランク角θでの微分式として次式が得られる。
dm/dθ=(P/RT)・dV/dθ …(53)
チョーク状態でのオリフィス流量式は次のように時間微分の式で与えられている。
dm/dt=〔CD・Aex2・PEX/{(REX・TEX)^(1/2)}〕
・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
…(54A)
そこで、(54A)式もクランク角θでの微分式へと変形する。すなわち、
dm/dt=(dm/dθ)・dθ/dt
=(dm/dθ)・6Ne
であるから、この式を用いてチョーク状態でのオリフィス流量式((54A)式)をクランク角θでの微分式で表した式は次のようになる。
dm/dθ=〔CD・Aex2・PEX
/{6Ne(REX・TEX)^(1/2)}〕
・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
…(54B)
ここで、(53)式は図26右側に示した直線を、(54B)式は図26右側に示した曲線を表している。従って、ピストン6の動きに伴う排気上死点付近での燃焼室内容積変化量と排気バルブ通過可能なガス量とが一致するときのクランク角であるチョーク状態開始クランク角CACOMPは(53)式、(54B)式を連立させて解けばその解がチョーク状態開始クランク角CACOMPとして得られることとなる。すなわち、(53)式、(54B)式を連立させて解くと、次の方程式が得られる。
〔6Ne/{(REX・TEX)^(1/2)}〕(dV/dθ)
−CD・Aex2・{κ^(1/2)}
・〔{(2/(κ+1)}^(κ+1)/{2(κ−1)}〕=0
…(55)
ただし、dV/dθ:ピストン6の動きに伴う排気上死点付近での燃焼室内容積変 化量
Ne :エンジン回転速度[rpm]
Aex2 :排気バルブ開口面積[m^2]
REX :排気のガス定数[kJ/mol/K]
TEX :平均排気温度[K]
κ :比熱比[−]
D :空気抵抗係数[−]
(55)式において、ピストン6の動きに伴う排気上死点付近での燃焼室内容積変化量dV/dθは、図26の右側に示したように、排気上死点(TDC)の近傍では右肩上がりの直線で近似できる。つまり、燃焼室内容積変化量dV/dθはクランク角θの一次関数で表すことができる。この場合、直線の傾きはエンジン仕様とエンジン回転速度Neに依存して定まる。
次に、(55)式の排気バルブ開口面積Aex2は、排気バルブ用VTC機構28を備え、排気バルブ16の開閉時期が変化する場合には、排気バルブ用VTC機構28に与える指令値に依存して定まる。例えば、図27においてA1を、排気バルブ用VTC機構28が非作動状態(最進角位置)にあるときの排気バルブ開口面積Aex2の特性であるとして(このときの排気バルブ閉時期を初期位置EVC0とする。)、排気バルブ用VTC機構28を作動させるため、排気バルブ用VTC機構28に所定の指令値を与えたとする。この指令値を「排気VTC変換角」というものとすると、排気VTC変換角は、排気バルブ閉時期EVCを初期位置EVC0から遅角させる量を表す。排気VTC変換角として例えば5degCA(クランク角で5度のこと)を与えたとき、排気バルブ開口面積Aex2の特性がA1から右方向(遅角側)へ5degCA平行移動してA2へと移り、排気弁閉時期EVCはEVC1(=EVC0+5)となる。排気VTC変換角が例えば10degCAとさらに大きいと、排気バルブ開口面積Aex2の特性はA1からさらに右方向へ10degCA平行移動してA3へと移り、排気弁閉時期EVCはEVC2(=EVC0+10)となる。このように、排気バルブ用VTC機構28の作動状態では排気バルブ用VTC機構非作動状態での排気バルブ開口面積Aex2の特性を排気VTC変換角の分だけ平行移動させた特性となる。つまり、排気バルブ開口面積Aex2は排気VTC変換角に依存して定まる。なお、Aexの後に「2」を付しているのは、先願装置の上記(40)式に出てくる「クランク角θ2での排気バルブ開口面積Aex」と区別するためである。
次に、(55)式の比熱比κは、例えば目標当量比と平均排気温度TEXから図28のマップを参照することにより求めることができる。空気抵抗係数CDは適合値として予め与えておく。エンジン回転速度Neは運転条件により定まる。排気のガス定数REXと平均排気温度TEXは上記(6)式、(23)式により求まる。
以上をまとめると、排気バルブ用VTC機構28を備えない場合には(55)式左辺はクランク角θとエンジン回転速度Neの関数であるため、エンジン回転速度Neが決まれば(55)式の方程式をクランク角θについて解くことで、その解をチョーク状態開始クランク角CACOMPとして求めることができる。また、排気バルブVTC機構28を備える場合には、排気VTC変換角に応じて(55)式中のCD・Aex2が変化するため排気VTC変換角ごとに(55)式の方程式をクランク角θについて解くことでチョーク状態開始クランク角CACOMPを算出する必要がある。この場合、(55)式の方程式は二次方程式のような簡単な方程式ではないので、エンジンコントローラ31においてリアルタイムで解かせるには演算負荷が大きくなる。従って、本発明の第6実施形態では、エンジン回転速度Neと排気VTC変換角とを相違させて(55)式の方程式を解いて得られるチョーク状態開始クランク角CACOMPのデータを、エンジン回転速度Neと排気VTC変換角とをパラメータとする、図34に示されるようなマップにして予めROMに記憶しておき、現在のエンジン回転速度Neと排気VTC変換角とからそのマップを参照することにより、チョーク状態開始クランク角CACOMPを算出するものとする。
図34に示したように、チョーク状態開始クランク角CACOMPは、エンジン回転速度Neが一定の条件で排気VTC変換角が大きくなるほど遅角側の値となり、また排気VTC変換角が一定の条件でエンジン回転速度Neが大きくなるほど遅角側の値となる。
なお、チョーク状態開始クランク角CACOMPの算出方法はこれに限られるものでなく、基本的には排気バルブ開口面積Aex2(上位概念は「排気バルブ開閉時期」)と、エンジンの運転状態(ピストン6の動きに伴う排気上死点付近での燃焼室内容積変化量dV/dθ、エンジン回転速度Ne、排気のガス定数REX、平均排気温度TEX、比熱比κ、空気抵抗係数CD)とに基づいて算出することができるものである。
このようにして算出したチョーク状態開始クランク角CACOMPと吸気バルブ開時期IVOと前述したようにを比較することで、燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定することができる。この場合、チョーク状態開始クランク角CACOMP、吸気バルブ開時期IVOとも、その単位は圧縮上死点を起点として遅角側に計測した値[degCA]である。
これで上記操作bの説明を終える。
エンジンコントローラ31で行われるこの制御を図29のフローチャートに従って説明する。
図29は本発明の第6実施形態の波形判定フラグを設定するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に演算する。
ステップ101では吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがあるか否かをみる。これは、吸気バルブ用VTC機構27、排気バルブ用VTC機構28に与えている指令値からわかる。吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときにはそのまま今回の処理を終了する。
吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがあるときにはステップ102に進み、排気圧力Pex[kPa](=(PEX+PIVO)/2)、平均排気圧力PEX[kPa](上記(20)式により算出済み)、上死点での燃焼室内容積VTDC[m^3](定数)、排気ガス定数REX[kJ/mol/K](上記(6)式により算出済み)、平均排気温度TEX[K](上記(23)式により算出済み)、排気の比熱比κ[−](上記(19)式によりまたは図28より算出済み)、流量比RMF1[−](上記(37)式により算出済み)、エンジン回転速度Ne[rpm]、排気VTC変換角[degCA]、吸気バルブ開時期IVO[degCA]、排気バルブ閉時期EVC[degCA]を読み込む。排気VTC変換角、吸気バルブ開時期IVO、排気バルブ閉時期EVCの値は、吸気バルブ用VTC機構27、排気バルブ用VTC機構28に与えている指令値からわかる。
ステップ103、104では、先願装置の第3実施形態の図23のガス流量ゼロ時クランク角算出部72で説明したところと同様にして、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0を算出する。すなわち、まずステップ103で排気圧力Pex、排気ガス定数REX、平均排気温度TEX、排気の比熱比κ、流量比RMF1を用いて上記(51)式によりβを、また排気ガス定数REX、平均排気温度TEX、エンジン回転速度Neを用いてαとXを、
α=PEX/REX/TEX×6×Ne
X=VTDC/REX/TEX×6×Ne
の式によりそれぞれ算出し、ステップ104でこれらβ、α、X、吸気バルブ開時期IVOを用いて、上記(50)式により、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0[degCA]を算出する。
ステップ105ではこのようにして算出した、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるクランク角θ0が吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中にあるか否か、つまり排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0が吸気バルブ開時期IVO[degCA]よりも遅角側にありかつ排気バルブ閉時期EVC[degCA]よりも進角側にある(IVO<θ0<EVC)か否かをみる。IVO<θ0<EVCであれば、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0が吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中にあると判断してステップ106に進み、波形判定フラグ(エンジンの始動時にゼロに初期設定)=1とする。
ステップ105でIVO<θ0<EVCでない、つまり排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0が、吸気バルブ開時期IVOと等しいかまたは吸気バルブ開時期IVOよりも進角側にあるときや、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0が、排気バルブ閉時期EVCと等しいか排気バルブ閉時期EVCより遅角側にあるときにはステップ107に進み、エンジン回転速度Neと排気VTC変換角とから図34を内容とするマップを参照することにより、チョーク状態開始クランク角CACOMP[degCA]を算出する。
ステップ108では、このようにして求めたチョーク状態開始クランク角CACOMPと吸気バルブ開時期IVO[degCA]とを比較する。チョーク状態開始クランク角CACOMPが吸気バルブ開時期IVOと一致するかまたは吸気バルブ開時期IVOよりも進角側にあれば、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形は燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になる場合の波形であると判断して、ステップ109に進み波形判定フラグ=2とする。これに対してチョーク状態開始クランク角CACOMPが吸気バルブ開時期IVOよりも遅角側にあれば、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形は燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になっていない場合の波形であると判断して、ステップ108よりステップ110に進み波形判定フラグ=3とする。
この結果、波形判定フラグ=1は吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形が図24左のようになることを、波形判定フラグ=2は吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形が図24中のようになることを、波形判定フラグ=3は吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形が図24右のようになることを表す。
このようにして、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形が図24左、中、右のいずれの波形であるのかを判定した後には、判定した各波形毎に、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形を直線で近似して面積を算出する。
これを図30を用いて説明すると、図30は、上記(い)〜(は)の各波形を直線近似する方法と、算出する面積とをまとめて示している。上記(い)の波形となるときには図30左の下段に示したように、左側の三角形の面積を吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M21として、また右側の三角形の面積を吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M22として、上記(ろ)の波形となるときには図30中の下段に示したように、1つの三角形の面積を吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M23として、上記(は)の波形となるときには図30右の下段に示したように、台形の面積と三角形の面積を合計したものを吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M24としてそれぞれ算出する。
以下、上記(い)〜(は)の各波形毎に面積の算出方法を説明する。
〈1〉上記(い)の波形となるときの面積の算出方法
図30左に示したように排気バルブ周りガス流量ゼロの水平線、吸気バルブ開時期IVOの直線(図30中でIVOを通る垂直線)及び直線1で囲まれる三角形の面積を吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M21として、また排気バルブ周りガス流量ゼロの水平線、直線1及び直線2で囲まれる三角形の面積を吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M22として、つまり吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M21と吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M22とを次式により算出する。
M21=|(dm/dθ)ivo|×(θ0−IVO)/2 …(56)
M22=(dm/dθ)c×(EVC−θ0)/2 …(57)
ただし、(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]
(dm/dθ)c :点cの排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]
θ0 :排気バルブが閉じる前に排気バルブ周りガス流量が ゼロとなるときのクランク角[degCA]
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]
EVC :排気バルブ閉時期[degCA]
先願装置の第1実施形態では、上記(25)に示すように、燃焼室5内から排気ポート11への吹き出しガス量も排気ポート11から燃焼室5内への吹き返しガス量に含めて扱っていたのであるが、本発明の第6実施形態では、燃焼室5内から排気ポート11への吹き出しガス量(M21)と排気ポート11から燃焼室5内への吹き返しガス量(M22)とを分けて扱うものである。
〈2〉上記(ろ)の波形となるときの面積の算出方法
図30中に示したように、排気バルブ周りガス流量ゼロの水平線、吸気バルブ開時期IVOの直線(図30中でIVOを通る垂直線)及び直線1で囲まれる三角形の面積を、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M23として算出する。ただし、ここでは直線1を実際に算出する必要はない。すなわち、図30中において点aの座標は(IVO,(dm/dθ)ivo)、点eの座標は(EVC,0)であるので、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M23[kg]は、
M23=|(dm/dθ)ivo|×(EVC−IVO)/2 …(58)
ただし、(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]
EVC :排気バルブ閉時期[degCA]
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]
の式より算出することができる。
〈3〉上記(は)の波形となるときの面積の算出方法
図30右に示したように、排気バルブ周りガス流量ゼロの水平線、吸気バルブ開時期IVOの直線(図30右でIVOを通る垂直線)、直線1及び直線2で囲まれる面積(台形の面積及び三角形の面積の合計の面積)を吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M24として算出する。以下、直線1の算出方法、直線2の算出方法、吹き返しガス量M24の算出方法の順に説明する。
〔1〕直線1の算出方法
先願装置の第1実施形態と同様である。すなわち、直線1は点aと点fとを結ぶ直線として算出する。ここで、点fは排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなる点である。チョーク状態とならない場合に、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるクランク角、つまり点fのクランク角は、排気上死点(TDC)付近に存在するため、ここでは点fのクランク角は排気上死点θTDCにあると近似する。このとき、点aの座標は(IVO,(dm/dθ)ivo)、点fの座標は(θTDC,0)であるので、直線1を与える関数y1を、
y1=(dm/dθ)ivo/(IVO−θTDC)×θ
−(dm/dθ)ivo×θTDC/(IVO−θTDC)
…(59)
ただし、(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]
θTDC :排気上死点[degCA]
の式より求めることができる。
ここでは点fは排気上死点θTDCにあると近似したが、実際には排気上死点θTDCより微妙にずれる(微妙に動く)ので、点fの排気上死点からの微妙なずれまで考慮するときには、エンジン回転速度Neとエンジン負荷とをパラメータとして、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるクランク角(点fのクランク角)を予め求めてマップにして与えておけばよい。
〔2〕直線2の算出方法
先願装置の第1実施形態と同じである。すなわち、上記(41)式をそのまま用いて、つまり直線2を与える関数y2を、
y2=−4×(dm/dθ)d/(EVC−IVO)×(θ−EVC)
…(60)
ただし、(dm/dθ)d:点dの排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]
EVC :排気バルブ閉時期[degCA]
の式により求める。
ここで、(60)式の点dの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)dの算出には上記(40)式を用いればよい。
上記(59)式、(60)式を連立方程式として解くことで、図30右において点cのクランク角θ1が求まり、点cのクランク角θ1での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)cは、点cのクランク角θ1を直線1((59)式)もしくは直線2((60)式)に代入することで求まる。
〔3〕吹き返しガス量M24の算出方法
このようにして点a、点c、点dの各座標が求まると、図30右において台形の面積に相当する吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M25[kg]を、
M25={(dm/dθ)c +(dm/dθ)ivo)}×(θ1−IVO)/2
…(61)
の式により、同じく図30右において三角形の面積に相当する吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M26[kg]を、
M26=(dm/dθ)c×(EVC−θ1)/2 …(62)
の式により算出し、これら2つの吹き返しガス量M25、M26の和を吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M24として、つまり次式により吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き返しガス量M24[kg]を算出する
M24=M25+M26 …(63)
これで、上記(い)〜(は)の各波形毎の面積の算出方法の説明を終える。
エンジンコントローラ31で行われるこの制御を図31、図32、図33のフローチャートに従って説明する。
図31、図32、図33は本発明の第6実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後(正確にはオーバーラップ終了直後)の燃焼室内残留ガス量を算出するためのもので、図29に続けて一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。
ステップ111では波形判定フラグ(図29により設定済み)をみる。波形判定フラグ=1であるときにはステップ112以降に進んで上記(い)の波形となるときの、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を算出する。この場合の燃焼室内残留ガス量の算出方法は先願装置と同じである。すなわち、先願装置は(い)の波形となるときだけを考慮していたものであった。繰り返しになるが、説明すると次のようになる。
ステップ112では、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO[K](上記(22)式により算出済み)、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO[kPa](上記(12)式により算出済み)、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO[m^3](上記(7)式により算出済み)、排気ガス定数REX[kJ/mol/K](上記(6)式により算出済み)、エンジン回転速度Ne[rpm]、クランク角θ2での排気バルブ開口面積Aex[m^2](図18で説明したところに従って算出済)、平均排気圧力PEX[kPa](上記(20)式により算出済)、排気温度TEX[K](上記(23)式により算出済)、流量比RMF2[−](上記(補21)式により算出済)、比熱比κ[−](上記(19)式によりまたは図28より算出済)、吸気バルブ開時期IVO[degCA]、排気バルブ閉時期EVC[degCA]、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0[degCA](図29により算出済み)、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1[kg](上記(1)式により算出済み)を読み込む。
ステップ113では、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、排気ガス定数REX、エンジン回転速度Neを用いて吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo[kg/degCA]を、
(dm/dθ)ivo=VIVO×Cpa/6/Ne/REX/TIVO
+PIVO/REX/TIVO×(Cva×IVO+Cvb)
…(64)
ただし、Cpa:燃焼室内圧力の時間微分値、(補10)式により算出済
Cva:吸気上死点付近で横軸にクランク角、縦軸に燃焼室内容積変化率 を採ったときの直線の傾き[m^3/deg^2]
Cvb:吸気上死点付近で横軸にクランク角、縦軸に燃焼室内容積変化率 を採ったときの直線の切片[m^3]
の式により算出し、ステップ114でこの吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、排気バルブが閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0、吸気バルブ開時期IVOを用いて、直線1を与える関数y1を、
y1=−(dm/dθ)ivo/(θ0−IVO)×θ
+(dm/dθ)ivo/(θ0−IVO)×θ0
…(65)
の式により算出する。
ステップ115では、クランク角θ2での排気バルブ開口面積Aex、平均排気圧力PEX、排気ガス定数REX、排気温度TEX、流量比RMF2、比熱比κ、エンジン回転速度Neを用いて、点dの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)d[kg/degCA]を、
(dm/dθ)d=Aex×PEX/(REX×TEX)^(1/2)
×κ^(1/2)×(2/(κ+1))^((κ+1)
/(2×(κ−1)))×RMF2/6/Ne
…(66)
の式により算出し、ステップ116でこの点dの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)d、排気バルブ閉時期EVC、吸気バルブ開時期IVOを用いて、直線2を与える関数y2を、
y2=−4×(dm/dθ)d/(EVC−IVO)×(θ−EVC)
…(67)
の式により算出する。
ステップ117ではこの(67)式と上記の(66)式とを連立させて解き、その解であるクランク角θを点cのクランク角θ1[degCA]として算出する。
ステップ118では、点cのクランク角θ1を(67)式または(66)式のクランク角θに代入することにより、点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)c[kg/degCA]を算出する。
ステップ119、120では、このようにして求めた吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、点bのクランク角θ0、点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)c、吸気バルブ開時期IVO、排気バルブ閉時期EVCを用いて上記(56)式、(57)式により、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の燃焼室5内から排気ポート11への吹き出しガス量M21[kg]及び吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気ポート11から燃焼室5内への吹き返しガス量M22[kg]を算出する。
ステップ121では、この吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の燃焼室5内から排気ポート11への吹き出しガス量M21及び吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気ポート11から燃焼室5内への吹き返しガス量M22を吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1に加算した値を、上記(い)の波形となるときの、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量として、つまり次式により上記(い)の波形となるときの、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量[kg]を算出する。
燃焼室内残留ガス量=MR1+M21+M22 …(68)
ここで、上記(56)式、(57)式、(68)式は先願装置で与えている(25)式、(補1)式と実質的に同じ式である。また、上記(64)、(65)、(66)、(67)の各式は、先願装置で与えている(33)式、(補19)式、(40)式、(41)式と同じ式である。
一方、図31においてステップ111で波形判定フラグ=1でないときには図32のステップ123に進み、波形判定フラグ=2であるか否かをみる。波形判定フラグ=2であるときにはステップ124以降に進んで上記(ろ)の波形となるときの、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を算出する。
まず、ステップ124では図31のステップ112、113と同様にして、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO[K](上記(22)式により算出済み)、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO[kPa](上記(12)式により算出済み)、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO[m^3](上記(7)式により算出済み)、排気ガス定数REX[kJ/mol/K](上記(6)式により算出済み)、エンジン回転速度Ne[rpm]、吸気バルブ開時期IVO[degCA]、排気バルブ閉時期EVC[degCA]、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1[kg](上記(1)式により算出済み)を読み込み、ステップ125で図31のステップ113と同様にして、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、排気ガス定数REX、エンジン回転速度Neを用い吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo[kg/degCA]を上記(64)式により算出する。
ステップ126では、この吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、排気バルブ閉時期EVC、吸気バルブ開時期IVOを用いて上記の(58)式により吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M23[kg]を算出し、ステップ127でこの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M23を吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1に加算した値を、上記(ろ)の波形となるときの、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量として、つまり次式により上記(ろ)の波形となるときの、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量[kg]を算出する。
燃焼室内残留ガス量=MR1+M23 …(69)
一方、図32のステップ123で波形判定フラグ=2でないときには図33のステップ128に進み、波形判定フラグ=3であるか否かをみる。波形判定フラグ=3であるときにはステップ129以降に進んで上記(は)の波形となるときの、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を算出する。
まず、ステップ129、130では図31のステップ112、113と同様にして、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO[K](上記(22)式により算出済み)、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO[kPa](上記(12)式により算出済み)、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO[m^3](上記(7)式により算出済み)、排気ガス定数REX[kJ/mol/K](上記(6)式により算出済み)、エンジン回転速度Ne[rpm]、クランク角θ2での排気バルブ開口面積Aex[m^2](図18で説明したところに従って算出済)、平均排気圧力PEX[kPa](上記(20)式により算出済)、排気温度TEX[K](上記(23)式により算出済)、流量比RMF2[−](上記(補21)式により算出済)、比熱比κ[−](上記(19)式によりまたは図28より算出済)、吸気バルブ開時期IVO[degCA]、排気バルブ閉時期EVC[degCA]、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1[kg]を読み込み、吸気バルブ開時期での燃焼室内温度TIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、排気ガス定数REX、エンジン回転速度Neを用いて吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo[kg/degCA]を上記(64)式により算出する。
ステップ131では、この吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、吸気バルブ開時期IVO、排気上死点θTDCを用いて直線1を与える関数y1を上記(59)式により算出する。
ステップ132では、クランク角θ2での排気バルブ開口面積Aex、平均排気圧力PEX、排気ガス定数REX、排気温度TEX、流量比RMF2、比熱比κ、エンジン回転速度Neを用いて、点dの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)d[kg/degCA]を上記(66)式により算出し、ステップ133でこの点dの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)d、排気バルブ閉時期EVC、吸気バルブ開時期IVOを用いて、直線2を与える関数y2を上記(67)式により算出する。
ステップ134ではこの(67)式と上記の(66)式とを連立させて解き、その解であるクランク角θを点cのクランク角θ1[degCA]として算出する。
ステップ135では、点cのクランク角θ1を上記(67)式または上記(65)式のクランク角θに代入することにより、点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)c[kg/degCA]を算出する。
ステップ136、137では、このようにして求めた吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo、点cの排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)c、点cのクランク角θ1、吸気バルブ開時期IVO、排気バルブ閉時期EVCを用いて、上記(61)、(62)式により、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気ポート11から燃焼室5内への吹き返しガス量M25[kg]、M26[kg]を算出し、ステップ138でこれら2つのオーバーラップ中の吹き返しガス量M25、M26を吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1に加算した値を上記(は)の波形となるときの、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量として、つまり次式により上記(は)の波形となるときの、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量[kg]を算出する。
燃焼室内残留ガス量=MR1+M25+M26 …(70)
ここで、本発明の第6実施形態の作用効果を説明する。
排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形には、排気ポート11から燃焼室5内へのガスの吹き返しと燃焼室5内から排気ポート11へのガスの吹き出しの両方が存在する場合の波形の外に、排気ポート11から燃焼室5内へのガスの吹き返しのみしか存在しない場合の波形と、燃焼室5内から排気ポート11へのガスの吹き出しのみしか存在しない場合の波形とがあることを新たに発見した。この新たに発見した現象を解析してみたところ、燃焼室5内から排気ポート11へのガスの吹き出しのみしか存在しない場合の波形となるのは燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されているためであることを、また排気ポート11から燃焼室5内へのガスの吹き返しのみしか存在しない場合の波形となるのは燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されていないためであることを見出した。
本発明の第6実施形態はこうした新たに見出した事項に基づいてなされたもので、本発明の第6実施形態によれば、ピストン6の動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるのか圧縮されない場合であるのかを判定し(図29のステップ108〜110参照)、この判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、燃焼室5内から排気ポート11への吹き出しガス量M23を算出し(図32のステップ123、126参照)、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1とこの吹き出しガス量M23とから排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を推定し(図32のステップ127参照)、前記判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されない場合に、排気ポート11から燃焼室5内への吹き返しガス量(M25、M26)を算出し(図33のステップ128、136、137参照)、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1とこの吹き返しガス量(M25、M26)とから排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を推定する(図33のステップ138参照)ので、燃焼室5内から排気ポート11へのガスの吹き出しのみしか存在しない場合(燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されている場合)の波形となるときや、排気ポート11から燃焼室5内へのガスの吹き返しのみしか存在しない場合(燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されていない場合)の波形となるときにも排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を精度良く推定することができる。
本発明の第6実施形態によれば、吸気バルブ用VTC機構27(吸気バルブの開閉時期を変化させ得る吸気バルブ開閉時期可変機構)と、排気バルブ用VTC機構28(排気バルブの開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構)とを備え、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるのか圧縮されない場合であるのかを判定する判定手段は、排気上死点を含む所定クランク角範囲の排気バルブ開口面積Aex2(排気バルブ開閉時期)と、エンジンの運転状態(ピストン6の動きに伴う排気上死点付近での燃焼室内容積変化量dV/dθ、エンジン回転速度Ne、排気のガス定数REX、平均排気温度TEX、比熱比κ、空気抵抗係数CD)とに基づいて燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する判定手段(図29のステップ107、108、図34参照)であり、燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になる場合に燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であると(図29のステップ108、109参照)、燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になっていない場合に燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されない場合であると(図29のステップ108、110参照)判定するので、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるのか圧縮されない場合であるのかを精度良く判定することができる。
本発明の第6実施形態によれば、排気バルブ開閉時期可変機構28を備え、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるのか圧縮されない場合であるのかを判定する判定手段は、この排気バルブ開閉時期可変機構に与える指令値である排気VTC変換角と、エンジン回転速度Neとに基づいて燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する判定手段(図29のステップ107、108、図34参照)であり、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になる場合に前記燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であると(図29のステップ108、109参照)、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になっていない場合に前記燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されない場合であると(図29のステップ108、110参照)判定するので、エンジンコントローラ31への演算負荷を大きくすることなく燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるのか圧縮されない場合であるのかを簡易に判定することができる。
本発明の第6実施形態によれば、燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する判定手段が、燃焼室内容積変化量が排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角CACOMPとして算出し(図29のステップ107参照)、この算出したチョーク状態開始クランク角CACOMPに基づいて燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する手段(図29のステップ108参照)であるので、燃焼室5内の実際のガス状態に応じて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かの判定を行うことができる。
本発明の第6実施形態によれば、チョーク状態開始クランク角CACOMPが吸気バルブ開時期IVOと等しいか吸気バルブ開時期IVOより進角側にあるとき燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になると、またチョーク状態開始クランク角CACOMPが吸気バルブ開時期IVOより遅角側にあるとき燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にないと判定するので(図29のステップ108〜110参照)、チョーク状態になるか否かを正確に判定できる。
本発明の第6実施形態によれば、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されない場合に、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角(例えば排気上死点)と吸気バルブ開時期IVOでの排気バルブ周りガス流量((dm/dθ)ivo)とによって設定される直線1(図33のステップ131のy1参照)と、排気バルブ閉時期EVCと所定クランク角θ2における排気バルブ周りガス流量((dm/dθ)d)とによって設定される直線2(図33のステップ133のy2参照)とを算出し、排気ポート11から燃焼室5内への吹き返しガス量(M25、M26)を、少なくとも前記直線1と直線2とを用いて算出するので(図33のステップ134〜137参照)、排気ポート11から燃焼室5内への吹き返しのみしか存在しない場合の波形となるときに、排気ポート11から燃焼室5内への吹き返しガス量(M25、M26)を精度良く算出できる。
燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されない場合に、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0は、運転条件の相違で排気上死点より微妙にずれる(微妙に動く)のであるが、本発明の第6実施形態によれば、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0を、エンジンの負荷と回転速度に応じて設定するので、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0が運転条件の相違で排気上死点より微妙にずれる(微妙に動く)ことがあっても、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されない場合における、排気バルブ周りガス流量の波形を精度良く近似することができる。
燃焼室内圧力が排気行程で圧縮されない場合に、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0は全運転領域的に排気上死点付近に存在する。本発明の第6実施形態によれば、排気バルブ16が閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0を排気上死点に設定するので、排気バルブが閉じる前に排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0を、エンジンの負荷と回転速度に応じて設定する場合よりもメモリ容量を削減できる。
本発明の第6実施形態によれば、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量((dm/dθ)ivo)と排気バルブ閉時期EVCと吸気バルブ閉時期IVOとを用いて燃焼室5内から排気ポート11への吹き出しガス量M23を算出するので(図32のステップ125、126参照)、燃焼室5内から排気ポート11への吹き出しガス量M23を精度良く算出できる。
さて、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOは吸気バルブ開時期IVOでの排気バルブ開口面積による影響が大きい。吸気バルブ開時期IVOに排気バルブ16が十分に開いている状態では(つまり燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないとき)、図25左に示したように燃焼室内圧力Pcylは排気圧力Pexと等しくなる。従って、先願装置では吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOは、排気バルブ開度が十分大きいため排気圧力に等しいと仮定している。
一方、吸気バルブ開時期IVOに排気バルブ16がほとんど閉じている状態になると(つまり燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるとき)、図25中に示したように燃焼室内容積の変化に合わせて燃焼室内圧力Pcylが変化し排気圧力Pexからの乖離が大きくなっている。このため、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときにも、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOが排気圧力に等しいと仮定して燃焼室内残留ガス量を推定したのでは、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内圧力の排気圧力Pexからの圧力差に相当する誤差が生じてしまう。
そこで本発明の第7実施形態では、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力の算出方法を、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないときの吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内圧力の算出方法と相違させる。
次に、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力の算出方法を説明する。
以下では、先願装置で算出している吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内圧力PIVOを、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないときの吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内圧力として扱い、また、先願装置のPIVOと区別するため、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を「PIVO’」で表記する。
気体の状態方程式をクランク角で微分すると次の式が得られる。
dm/dθ=(∂m/∂P)・dP/dθ+(∂m/∂V)・dV/dθ
+(∂m/∂T)・dT/dθ+(∂m/∂R)・dR/dθ
…(71)
ただし、m:筒内ガス量[kg]
P:燃焼室内圧力[kPa]
V:燃焼室内容積[m^3]
T:燃焼室内温度[K]
R:排気ガス定数[kJ/kg/K]
θ:クランク角[degCA]
また、排気バルブ16でチョークされたときの排気バルブ周りガス流量はオリフィス流量式より次の式で表される。
dm/dθ=〔CDTP/{6Ne(RT)^(1/2)}〕・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
…(72)
ただし、CD :空気抵抗係数[−]
T :排気バルブ周り開口面積[m^2]
Ne:エンジン回転速度[rpm]
κ :比熱比[−]
(72)式は本発明の第6実施形態で前述した上記(54B)式と基本的に同じ式である。チョーク状態となり排気行程で圧縮が開始するのは(71)の排気バルブ周りガス流量が(72)式の排気バルブ周りガス流量を上回るクランク角以降であるため、(71)式と(72)式とが等しいと置いた次の式をクランク角θについて解くことでチョーク状態開始クランク角CACOMPを算出できることとなる。
(∂m/∂P)・dP/dθ+(∂m/∂V)・dV/dθ
+(∂m/∂T)・dT/dθ+(∂m/∂R)・dR/dθ
=〔CDTP/{6Ne(RT)^(1/2)}〕・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
…(73)
さらに考える。チョーク状態が始まるクランク角付近では温度、ガス定数の変化が少ないと仮定すると、(71)式右辺は(∂m/∂P)・dP/dθと(∂m/∂V)・dV/dθが残るため、(73)式は次のように書き換えられる。
(∂m/∂P)・dP/dθ+(∂m/∂V)・dV/dθ
=〔CDTP/{6Ne(RT)^(1/2)}〕・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
…(74)
ここで、気体の状態方程式であるm=PV/RTより∂m/∂P=V/RT、∂m/∂V=P/RTであるから、これらを(74)式左辺に代入すると、次式が得られる。
(V/RT)・dP/dθ+(P/RT)・dV/dθ
=〔CDTP/{6Ne(RT)^(1/2)}〕・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
…(75)
(75)式の両辺にRTdθを乗算すると共に両辺をPVで除算すると次式が得られる。
dP/P=−dV/V
+〔{CDT(RT)^(1/2)}/(6NeV)〕・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕・dθ
…(76)
(76)式を積分すると、次式が得られる。
lnP=lnP0+lnV0−lnV
+〔{(RT)^(1/2)}/(6Ne)〕・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
・∫(CDT/V)dθ
…(77)
ただし、P0:チョーク状態開始クランク角CACOMPでの燃焼室内圧力
[kPa]
V0:チョーク状態開始クランク角CACOMPでの燃焼室内圧力
[m^3]
上記(77)式の指数を採ると、(77)式左辺はexp(lnP)=Pとなるので、次式が得られる。
P=exp(lnP0+lnV0−lnV
+〔{(RT)^(1/2)}/(6Ne)〕・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
・∫(CDT/V)dθ)
…(78)
ここで、改めて、先願装置、本発明の第6実施形態で用いられている記号と一致させるため、(78)式においてP→PIVO、V→VIVO、R→REX、T→TEX、A→Aex2の置き換えを行うことで、上記(ろ)の波形となるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力、つまり燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を次の式により求めることができることになった。
PIVO’=exp(lnP0+lnV0−lnVIVO
+〔{(REX・TEX)^(1/2)}/(6Ne)〕・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
・∫(CDAex2/V)dθ)
…(79)
ただし、P0:チョーク状態開始クランク角CACOMPでの燃焼室内圧力
[kPa]
V0:チョーク状態開始クランク角CACOMPでの燃焼室内圧力
[m^3]
VIVO:吸気バルブ開時期での燃焼室内容積[m^3]
REX :排気のガス定数[kJ/kg/K]
TEX :平均排気温度[K]
κ :比熱比[−]
Ne :エンジン回転速度[rpm]
D :空気抵抗係数[−]
Aex2:排気バルブ開口面積[m^2]
V :燃焼室内容積[m^3]
この(79)式の値と燃焼室内圧力の波形とを対応づけると、図35に示すようになる。すなわち、図35は、吸気圧力Pint、排気圧力Pex、燃焼室内圧力Pcylの圧力履歴及び吸排気バルブの各開口面積の変化を改めて示したもので、図25中に対応する。図35に示したように、チョーク状態開始クランク角CACOMPで燃焼室内圧力Pcylが排気圧力Pexから離れて上昇し、その後の吸気バルブ開時期IVOで吸気バルブ15が開かれると、そのタイミングより燃焼室内圧力Pcylは吸気圧力Pintに向けて減少している。そして、チョーク状態開始クランク角CACOMPでの燃焼室内圧力がP0、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内圧力がPIVO’である。
上記(79)式は、右辺のチョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0、チョーク状態開始クランク角での燃焼室内容積V0、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、排気のガス定数REX、平均排気温度TEX、比熱比κ、積分値∫(CDAex2/V)dθが分かれば、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を求めることができることを表している。ここで、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO、排気のガス定数REX、平均排気温度TEX、比熱比κは先願装置により既に求めている。従って、未知数として残るのは、チョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0、チョーク状態開始クランク角での燃焼室内容積V0、積分値∫(CDAex2/V)dθの3つだけである。従って、以下この3つの各未知数を検討する。
まず、チョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0は、図35に示したように、燃焼室内圧力Pcylが排気圧力Pexを離れるときの値であるので、先願装置における吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOの算出方法を流用することにより、チョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0を求めることができる。すなわち、先願装置では、排気バルブ用VTC機構28を備えない場合に、吸気バルブ開時期IVOとエンジン回転速度Neから実際の充填効率のときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを算出し、これに平均排気圧力PEXを加算して吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出し、また排気バルブ用VTC機構28を備える場合に排気温度が基準排気温度にある条件においては、吸気バルブ開時期IVOに代えて、このIVOを、排気バルブ用VTC機構28の作動によって排気バルブ開時期、排気バルブ閉時期が進角側にずれた分だけシフトした値を用いることで実際の充填効率のときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRMを算出し、これに平均排気圧力PEXを加算して吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOを算出している。そこで、先願装置の吸気バルブ開時期IVOに代えて、チョーク状態開始クランク角CACOMPを用いることで、排気バルブ用VTC機構28を備えない場合、排気バルブ用VTC機構28を備える場合のいずれの場合にもチョーク状態開始クランク角CACOMPでの燃焼室内圧力P0を算出することができる。
なお、先願装置では、排気バルブ用VTC機構28を備える場合に排気温度が基準排気温度より高温側に外れる条件においても、差分値PCTRMを算出する方法を記載しているが、この場合を除外する趣旨ではない。この場合も記載すると複雑になるため省略して記載していないだけである。
次に、チョーク状態開始クランク角での燃焼室容積V0は、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOの算出方法において吸気バルブ開時期IVOに代えてチョーク状態開始クランク角CACOMPを用いることで求めることができる。すなわち、先願装置では、吸気バルブ開時期IVOから上記(7)式〜(11)式を用いて吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOを求めているので、吸気バルブ開時期IVOに代わる、チョーク状態開始クランク角CACOMPからチョーク状態開始クランク角での燃焼室容積V0を同様にして求めることができる。すなわち、チョーク状態開始クランク角CAcomp[degATDC]から、TDCからの変位量H’[m]を、
H’=((CND+ST/2)^2−(CR off−PIS off^2)^(1/2)
−(ST/2×cos(CACOMP+θoff)+(CND^2−X^2)
^(1/2))
…(補22)
ただし、CND :コンロッド長[m]、
CR off :クランクピンオフセット[m]、
PIN off:ピストンオフセット[m]、
ST :ストローク[m]、
θoff :クランク垂直位置からTDCまでの角度[deg]、
X :コンロッド大端部からピストンピン中心までの距離[m]、
の式により算出し、この算出したTDCからの変位量H’を用いて、
V0=π×D^2×H’/4+Vc …(補23)
ただし、D :ボア径[m]、
Vc:隙間容積[m^3]、
の式によりチョーク状態開始クランク角での燃焼室内容積V0[m^3]を算出する。ここで、(補22)式右辺の距離X、角度θoff、(補23)式の隙間面積Vcは、上記(9)式〜(11)式により算出する。
次に、積分値∫(CDAex2/V)dθについては、空気抵抗係数CD、排気バルブ開口面積Aex2、燃焼室内容積Vがいずれもクランク角θの関数であり、チョーク状態開始クランク角CACOMPから吸気バルブ開時期IVOまでを積分範囲とする積分値であるため、チョーク状態開始クランク角CACOMPと吸気バルブ開時期IVOに依存することが分かっている。従って、まず排気バルブ用VTC機構28を備えない場合には積分値∫(CDAex2/V)dθの値は予め机上で計算しておき、チョーク状態開始クランク角CACOMPと吸気バルブ開時期IVOとをパラメータとするマップとして記憶しておく。
また、排気バルブ用VTC機構28を備える場合には、ある一定間隔の排気VTC変換角を基準排気VTC変換角として定め、この定めた各基準排気VTC変換角ごとに積分値∫(CDAex2/V)dθの値を計算してマップを作成しておく。例えば、最小値(0degCA)、中間値(例えば15degCA)、最大値(例えば30degCA)を基準排気VTC変換角としたときの各マップの内容を図36に示す。そして、現在の排気VTC変換角が基準排気VTC変換角と一致していれば、その一致した基準排気VTC変換角でのマップを、そのときのチョーク状態開始クランク角CACOMPと吸気バルブ開時期IVOとから参照することにより、積分値∫(CDAex2/V)dθの値を算出する。現在の排気VTC変換角が基準排気VTC変換角に一致しないときには、その現在の排気VTC変換角に最も近い2つの基準排気VTC変換角を選択し、その選択した基準排気VTC変換角でのマップを参照することにより、積分値∫(CDAex2/V)dθの値をそれぞれ算出し、その2つの積分値を補間計算して、現在の排気VTC変換角に対する積分値∫(CDAex2/V)dθの値を算出する。この場合の補間計算方法は周知であるのでその説明は省略する。
エンジンコントローラ31で行われるこの制御を図37、図38のフローチャートに従って説明する。
図37、図38は本発明の第7実施形態の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を算出するためのもので、本発明の第6実施形態の図29に続けて一定時間毎(例えば10ms毎)に演算する。つまり、図29は本発明の第7実施形態でもある。
なお、本発明の第7実施形態では、簡単のため排気温度が基準排気温度にある場合で述べる。ただし、排気温度が基準排気温度よりも高温側に外れる場合を除外する趣旨でなく、排気温度が基準排気温度よりも高温側に外れる場合にも適用できる。
また、先願装置では、排気バルブ用VTC機構28の非作動状態で排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが最遅角位置にあり、排気バルブ用VTC機構28の作動時になると排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが進角側に移動する場合で説明したが、本発明の第7実施形態では、本発明の第6実施形態と同じに、排気バルブ用VTC機構28の非作動状態で排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが最進角位置にあり、排気バルブ用VTC機構28の作動時になると排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが排気VTC変換角だけ遅角側に移動する場合で説明する。
ステップ141では、平均排気圧力PEX[kPa](上記(20)式により算出済み)、排気ガス定数REX[kJ/mol/K](上記(6)式により算出済み)、平均排気温度TEX[K](上記(23)式により算出済み)、排気の比熱比κ[−](上記(19)式によりまたは図28より算出済み)、実際の充填効率ITAC[%](上記(補8)式により算出済み)、吸気バルブ開時期IVO[degCA]、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVO[m^3]、エンジン回転速度Ne[rpm]、排気VTC変換角[degCA]を読み込む。排気VTC変換角、吸気バルブ開時期IVO、吸気バルブ開時期での燃焼室内容積VIVOの値は、吸気バルブ用VTC機構27、排気バルブ用VTC機構28に与えている指令値からわかる。
ステップ142では、波形判定フラグ(図29により設定済み)=0であるか否かをみる。波形判定フラグ=0であるときにはまだ波形判定がなされていないので、今回の処理をそのまま終了する。
波形判定フラグ=0でないときにはステップ143に進み波形判定フラグが1、2、3のいずれであるかをみる。波形判定フラグが1または3であれば上記(い)の波形となるときまたは上記(は)の波形となるとき、つまり燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないときであると判断しステップ144〜149に進み、これに対して波形判定フラグ=2であるときには上記(ろ)の波形となるとき、つまり燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときであると判断し図38のステップ150以降に進む。
ステップ141〜149は、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を算出する部分で、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力の算出方法は先願装置と同じである。
まず、ステップ144で、吸気バルブ開時期IVOから排気VTC変換角を差し引いたクランク角とエンジン回転速度Neから、充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)を参照することにより、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値Pminを求める。ステップ145では、同じく吸気バルブ開時期IVOから排気VTC変換角を差し引いたクランク角とエンジン回転速度Neから、充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)を参照することにより、充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値Pmaxを求める。
ここで、吸気バルブ開時期IVOから排気VTC変換角を差し引いたクランク角を用いているのは、次の理由からである。すなわち、先願装置では、排気バルブ用VTC機構28の非作動状態で排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが最遅角位置にあり、排気バルブ用VTC機構28の作動時になると排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが進角側に移動する場合を対象としていたので、排気バルブ用VTC機構28の作動時には吸気バルブ開時期IVOに代えて、IVOに進角側への移動量を加算した値を用いている(図16参照)。ところが、本発明の第7実施形態では、排気バルブ用VTC機構28の非作動状態で排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが最進角位置にあり、排気バルブ用VTC機構28の作動状態になると排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが排気VTC変換角だけ遅角側に移動する場合を対象としているので、排気バルブ用VTC機構28の作動時には吸気バルブ開時期IVOに代えて、IVOから排気VTC変換角を減算した値を用いる必要があるためである。
ステップ146、147では実際の充填効率ITAC[%]、充填効率最小値ITACMN[%]、充填効率最大値ITACMX[%]から、
a=ITAC−ITACMN …(80)
b=ITACMX−ITAC …(81)
の式によりa、b[%]を計算し、これらa、bと上記の差分値Pmax、Pminを用いステップ148で実際の充填効率のときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM[kPa]を、
PCTRM=Pmin+(Pmax−Pmin)×a/(a+b)
…(82)
の式により算出し、この差分値PCTRMと平均排気圧力PEXとを用いステップ149で、
PIVO=PEX+PCTRM …(83)
の式により、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO[kPa]を算出する。
ここで、上記(80)式、(81)式、(82)式、(83)式は、それぞれ先願装置の上記(補4)式、(補5)式、(13)式、(12)式と同じ式である。
次に、ステップ150以降について説明する。ステップ150ではチョーク状態開始クランク角CACOMP[degCA](図29により算出済み)を読み込む。図29のステップ107と同じに、エンジン回転速度と排気VTC変換角とから図34を内容とするマップを参照することによりチョーク状態開始クランク角CACOMPを算出させてもかまわない。
ステップ151〜159は燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を算出する部分である。このうち、ステップ151〜156での操作そのものは図37のステップ144〜149での操作と同じである。すなわち、図37のステップ144〜149では、吸気バルブ開時期IVOでの差分値PCTRMを求め、この差分値PCTRMと平均排気圧力PEXとを加算した値を吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOとして求めたが、図38のステップ151〜156ではチョーク状態開始クランク角CACOMPでの差分値PCTRM’を求め、この差分値PCTRM’と平均排気圧力PEXとを加算した値をチョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0として求める。なお、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならない場合と区別するため、差分値Pmin、Pmax、PCTRMに「’」を付ける。
詳述すると、ステップ151で、チョーク状態開始クランク角CACOMPから排気VTC変換角を差し引いたクランク角とエンジン回転速度Neから、充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)を参照することにより、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値Pmin’を求める。ステップ152では、同じくチョーク状態開始クランク角CACOMPから排気VTC変換角を差し引いたクランク角とエンジン回転速度Neから、充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)を参照することにより、充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値Pmax’を求める。
ステップ153、154では実際の充填効率ITAC[%]、充填効率最小値ITACMN[%]、充填効率最大値ITACMX[%]から、
a=ITAC−ITACMN …(84)
b=ITACMX−ITAC …(85)
の式によりa、b[%]を計算し、これらa、bと上記の差分値Pmax’、Pmin’を用いステップ155で実際の充填効率のときのチョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM’[kPa]を、
PCTRM’=Pmin’+(Pmax’−Pmin’)×a/(a+b)
…(86)
の式により算出し、この差分値PCTRM’と平均排気圧力PEXとを用いステップ156で、
P0=PEX+PCTRM’ …(87)
の式によりチョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0[kPa]を算出する。
ステップ157ではチョーク状態開始クランク角CACOMPから上記(補22)式、(補23)式を用いてチョーク状態開始クランク角での燃焼室内容積V0[m^3]を算出する。
ステップ158では吸気バルブ開時期IVOと排気VTC変換角とから図36を内容とするマップを参照(補間計算付き)することにより、積分値∫(CDAex2/V)dθの値を算出する。
ステップ159ではこのようにして求めたチョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0、チョーク状態開始クランク角での燃焼室内容積V0、積分値∫(CDAex2/V)dθの値を用いて上記(79)式により、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を算出する。
図39〜図41は本発明の第7実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後(正確にはオーバーラップ終了直後)の燃焼室内残留ガス量を算出するためのもので、図37、図38に続けて一定時間毎(たとえば10ms毎)に実行する。本発明の第6実施形態の図31〜図33と同一部分には同一のステップ番号を付けている。
図39〜図41において本発明の第6実施形態と相違するのは、本発明の第6実施形態の図32のステップ124、125にPIVOとあるところを、本発明の第7実施形態の図40のステップ161、162ではPIVO’に置き換えている点だけである。すなわち、本発明の第7実施形態では、図40において波形判定フラグ=2であるとき、ステップ161に進み、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を読み込み、この燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を用いステップ162で吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivo[kg/degCA]を、
(dm/dθ)ivo=VIVO×Cpa/6/Ne/REX/TIVO
+PIVO’/REX/TIVO×(Cva×IVO+Cvb)
…(88)
ただし、Cpa:燃焼室内圧力の時間微分値、(補10)式により算出済
Cva:吸気上死点付近で横軸にクランク角、縦軸に燃焼室内容積変化率 を採ったときの直線の傾き[m^3/deg^2]
Cvb:吸気上死点付近で横軸にクランク角、縦軸に燃焼室内容積変化率 を採ったときの直線の切片[m^3]
の式により算出する。
ステップ126では、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を用いて算出した吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量(dm/dθ)ivoを用いて、
M23=|(dm/dθ)ivo|×(EVC−IVO)/2 …(89)
ただし、(dm/dθ)ivo:吸気バルブ開時期での排気バルブ周りガス流量
[kg/degCA]
EVC :排気バルブ閉時期[degCA]
IVO :吸気バルブ開時期[degCA]
の式により吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M23[kg]を算出し、ステップ127でこの吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の吹き出しガス量M23を吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内ガス量MR1に加算した値を、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量として、つまり次式により燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量[kg]を算出する。
燃焼室内残留ガス量=MR1+M23 …(90)
ここで、本発明の第7実施形態の作用効果を説明する。
吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOは吸気バルブ開時期IVOでの排気バルブ開口面積による影響が大きい。吸気バルブ開時期IVOに排気バルブ16が十分に開いている状態では(つまり燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないとき)、図25左に示したように燃焼室内圧力Pcylは排気圧力Pexと等しくなる。従って、先願装置では吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOは、排気バルブ開度が十分大きいため排気圧力に等しいと仮定していた。
一方、吸気バルブ開時期IVOに排気バルブ16がほとんど閉じている状態になると(つまり燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるとき)、図25中、図35に示したように燃焼室内容積の変化に合わせて燃焼室内圧力Pcylが変化し(排気圧力Pexから離れて上昇し)排気圧力Pexからの乖離が大きくなっている。このため、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときにも、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOが排気圧力に等しいと仮定して排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を推定したのでは、吸気バルブ開時期IVOでの燃焼室内圧力の排気圧力Pexからの圧力差に相当する誤差が生じてしまう。
これに対して、本発明の第7実施形態(請求項1、9に記載の発明)によれば、ピストンの動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定し(図29のステップ108〜110参照)、この判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、燃焼室内容積変化量が排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角CACOMPとして算出し(図37のステップ143、図38のステップ150参照)、この算出したチョーク状態開始クランク角CACOMPに基づいて燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を算出し(図38のステップ159参照)、この算出した燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’に基づいて燃焼室5内から排気ポート11への吹き出しガス量M23を算出し(図39のステップ111、図40のステップ123、126参照)、吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1とこの吹き出しガス量M23とから排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を推定する(図40のステップ127参照)ので、排気行程で燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときにも排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を精度良く推定することができる。
排気バルブ用VTC機構28に与える排気VTC変換角(排気バルブ開閉時期可変機構に与える指令値)が変化すると、例えば排気バルブ用VTC機構28が非作動状態から作動状態に切換えられ、排気バルブ閉時期EVCが遅角側に変化したとすると、吸気バルブ開時期IVOでの排気バルブ開口面積が変化し、チョーク状態開始クランク角CACOMPが遅角側に変化するのであるが(図34参照)、本発明の第7実施形態(請求項2に記載の発明)によれば、チョーク状態開始クランク角CACOMPをエンジン回転速度Neおよび排気VTC変換角に基づいて算出するので(図37のステップ143、図38のステップ150参照)、排気VTC変換角が変化しても、チョーク状態開始クランク角CACOMPを精度良く算出できる。
なお、チョーク状態開始クランク角CACOMPの算出を理論的に行おうとすると、上記(73)式を扱うことになり複雑な演算を要することになってしまう。本発明の第7の実施形態(請求項2に記載の発明)では、チョーク状態開始クランク角CACOMPの値自体はエンジン回転速度Neと排気バルブ開口面積とでほぼ決まると近似し、エンジン回転速度Neと排気バルブ開口面積を知りうる排気VTC変換角とをパラメータとしてチョーク状態開始クランク角CACOMPを算出することとしているので(図34参照)、上記(73)式を扱うような複雑な演算を回避できている。
燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’は排気バルブ開口面積の影響を受ける。例えば、排気バルブ用VTC機構28の作動時になると、排気VTC変換角に応じて排気バルブ閉時期EVCが変化し、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’が排気バルブ用VTC機構28の非作動状態での値から変化する。従って、排気バルブ用VTC機構28の非作動状態で燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’が精度良く算出されるように充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)及び充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)をマッチングしている場合において排気バルブ用VTC機構28の作動時に、排気VTC変換角を考慮することなく同じマップを用いるだけだと、排気バルブ用VTC機構28の作動時に、排気VTC変換角に応じた誤差が、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’の算出に生ずるのであるが、本発明の第7実施形態(請求項3に記載の発明)によれば、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を、排気VTC変換角に基づいても算出するので(図38のステップ151〜156、159参照)、排気バルブ用VTC機構28の作動時にも、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVO’を精度良く算出できる。
本発明の第7実施形態(請求項4に記載の発明)によれば、ピストン6の動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定する判定手段は、排気上死点を含む所定クランク角範囲の排気バルブ開口面積Aex2(排気バルブ開閉時期)とエンジンの運転状態(ピストン6の動きに伴う排気上死点付近での燃焼室内容積変化量dV/dθ、エンジン回転速度Ne、排気のガス定数REX、平均排気温度TEX、比熱比κ、空気抵抗係数CD)とに基づいて燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する判定手段(図29のステップ107、108、図34参照)であり、燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になる場合に燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であると判定するので(図29のステップ108、109参照)、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを精度良く判定できる。
さて、本発明の第6、第7の実施形態では、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがあることを前提に、ピストン6が上昇する排気行程で燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になり、燃焼室内圧力Pcylが排気圧力Pexから離れて上昇する現象があることを説明したが、図42に示すように、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときにも、排気行程で燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になり、燃焼室内圧力Pcylが排気圧力Pexから離れて上昇する現象があることも見出している。
なお、上記図35ではチョーク状態開始クランク角CACOMPより燃焼室内圧力Pcylが排気圧力Pexから離れて上昇し、その上昇途中の吸気バルブ開時期IVOで吸気バルブ15が開くためにこのIVOのタイミングより燃焼室内圧力Pcylが吸気圧力Pintに向かって急激に小さくなっていくのに対して、図42では吸気バルブ開時期IVOが排気バルブ閉時期EVCより遅れたクランク角位置にくるため、燃焼室内圧力Pcylはピークを迎えたあと吸気圧力Pintに向けてゆっくりと低下するという違いがある。
ここで、先願装置では、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOが排気圧力に等しいと仮定して吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を、状態状態方程式である上記(1)式により算出し、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときにはこの吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1をそのまま燃焼室内残留ガス量としている。すなわち、図19において吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときにはM2=0となり、MR1がそのまま吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量となる。
しかしながら、上記図42のように吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがなくても、排気行程で燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になり、燃焼室内圧力Pcylが排気圧力Pexから離れて上昇する現象が生じる場合にも、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOが排気圧力に等しいと仮定して吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を算出した(燃焼室内残留ガス量を推定)のでは、燃焼室内圧力Pcylの排気圧力Pexからの圧力差に相当する誤差が生じてしまう。
そこで本発明の第8実施形態では、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室圧力を算出し、この燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室圧力に基づいて排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量を算出し、この排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量をそのまま吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量とする。
以下では、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならないときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC(上記(補10)式参照)と区別するため、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力を「PEVC’」で表記する。また、排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量を「MR1’」で表記する。
まず、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室圧力PEVC’は、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室圧力PIVO’の算出式である上記(79)式を流用した次の式により算出する。
PEVC’=exp(lnP0+lnV0−lnVEVC
+〔{(REX・TEX)^(1/2)}/(6Ne)〕・{κ^(1/2)}
・〔(2/(κ+1))^{(κ+1)/2(κ−1)}〕
・∫(CDAex2/V)dθ)
…(91)
ただし、P0:チョーク状態開始クランク角CACOMPでの燃焼室内圧力
[kPa]
V0:チョーク状態開始クランク角CACOMPでの燃焼室内圧力
[m^3]
VEVC:排気バルブ閉時期での燃焼室内容積[m^3]
REX :排気のガス定数[kJ/kg/K]
TEX :平均排気温度[K]
κ :比熱比[−]
Ne :エンジン回転速度[rpm]
D :空気抵抗係数[−]
Aex2:排気バルブ開口面積[m^2]
V :燃焼室内容積[m^3]
(91)式において上記(79)式と違っているのは、吸気バルブ開時期での燃焼室容積VIVOに代えて排気バルブ閉時期での燃焼室内容積VEVCが用いられている点と、積分値∫(CDAex2/V)dθが(79)式ではチョーク状態開始クランク角CACOMPから吸気バルブ開時期IVOまでを積分範囲とする積分値であるのに対して(91)式の∫(CDAex2/V)dθはチョーク状態開始クランク角CACOMPから排気バルブ閉時期EVCまでを積分範囲とする積分値となる点だけである。ただし、(91)式における排気バルブ閉時期での燃焼室内容積VEVC、積分値∫(CDAex2/V)dθの算出方法そのものは、上記(79)式における吸気バルブ開時期での燃焼室容積VIVO、積分値∫(CDAex2/V)dθの算出方法と変わりない。
そして、先願装置における吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1に代えて、排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量MR1’を、上記(1)式を流用した次の状態方程式により算出し、この排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量MR1’をそのまま吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量とする。
MR1’=PEVC’・VEVC/(REX・TEVC) …(92)
ただし、PEVC’:燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状 態になるときの排気バルブ閉時期EVCでの燃焼室内圧力
[kPa]、
VEVC :燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状 態になるときの排気バルブ閉時期EVCでの燃焼室内容積 [m^3]、
TEVC :燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状 態になるときの排気バルブ閉時期EVCでの燃焼室内温度 [K]、
REX :排気のガス定数[kJ/kg/K]、
(92)式右辺の燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内温度TEVCは、上記(22)式を流用した次の式により算出すればよい。
TEVC=TEX・(PEVC’/PEX)^((κ−1)/κ)
…(93)
ただし、PEVC’:燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状 態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力
[kPa]、
PEX :平均排気圧力[kPa]、(20)式にて算出済
κ :排気の比熱比、(19)式により算出済
エンジンコントローラ31で行われるこの制御を図43、図44のフローチャートに従って説明する。
図43は本発明の第8実施形態の燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’を算出するためのもので、一定時間毎(例えば10ms毎)に演算する。
ただし、本発明の第8実施形態では簡単のため、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがない場合において燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になることを前提とする。なお、吸気バルブ用VTC機構27と排気バルブ用VTC機構28に与える指令値から吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがない場合であるのか否かを判定し、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがない場合に、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定し、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になると判定した場合にだけ、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’を算出する構成としてもかまわない。ここで、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かの判定は、次のようにすればよい。すなわち、図42のように排気バルブ閉時期EVCとなる前にチョーク状態になるので、チョーク状態開始クランク角CACOMPと排気バルブ閉時期EVCとを比較し、チョーク状態開始クランク角CACOMPが排気バルブ閉時期EVCと同じかまたは排気バルブ閉時期EVCよりも進角側にある場合に排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になると、またチョーク状態開始クランク角CACOMPが排気バルブ閉時期EVCより遅角側にある場合に排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にないとそれぞれ判定すればよい。
また、排気温度と排気バルブ用VTC機構28の構成とは本発明の第7実施形態と同じとする。すなわち、排気温度は基準排気温度にあるものとする。また、排気バルブ用VTC機構28の非作動状態で排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが最進角位置にあり、排気バルブ用VTC機構28の作動時になると排気バルブ開時期EVO及び排気バルブ閉時期EVCが排気VTC変換角だけ遅角側に移動するものとする。
ステップ171では、平均排気圧力PEX[kPa](上記(20)式により算出済み)、排気ガス定数REX[kJ/mol/K](上記(6)式により算出済み)、平均排気温度TEX[K](上記(23)式により算出済み)、排気の比熱比κ[−](上記(19)式によりまたは図28より算出済み)、実際の充填効率ITAC[%](上記(補8)式により算出済み)、排気バルブ閉時期EVC[degCA]、排気バルブ閉時期での燃焼室内容積VEVC[m^3]、エンジン回転速度Ne[rpm]、排気VTC変換角[degCA]を読み込む。排気VTC変換角、排気バルブ閉時期EVC、排気バルブ閉時期での燃焼室内容積VEVCの値は、吸気バルブ用VTC機構27、排気バルブ用VTC機構28に与えている指令値からわかる。
ステップ172では、エンジン回転速度Neと排気VTC変換角とから図34を内容とするマップを参照することにより、チョーク状態開始クランク角CACOMP[degCA]を算出する。
ステップ173〜178での操作そのものは図37のステップ144〜149での操作と同じである。すなわち、図37のステップ144〜149では、吸気バルブ開時期IVOでの差分値PCTRMを求め、この差分値PCTRMと平均排気圧力PEXとを加算した値を吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOとして求めたが、図43のステップ173〜178ではチョーク状態開始クランク角CACOMPでの差分値PCTRM”を求め、この差分値PCTRM”と平均排気圧力PEXとを加算した値をチョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0として求める。なお、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態にならない場合と区別するため、差分値Pmin、Pmax、PCTRMに「”」を付ける。
詳述すると、ステップ173で、チョーク状態開始クランク角CACOMPから排気VTC変換角を差し引いたクランク角とエンジン回転速度Neから、充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)を参照することにより、充填効率最小時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値Pmin”を求める。ステップ173では、同じくチョーク状態開始クランク角CACOMPから排気VTC変換角を差し引いたクランク角とエンジン回転速度Neから、充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)を参照することにより、充填効率最大時の吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値Pmax”をめる。
ステップ175、176では実際の充填効率ITAC[%]、充填効率最小値ITACMN[%]、充填効率最大値ITACMX[%]から、
a=ITAC−ITACMN …(94)
b=ITACMX−ITAC …(95)
の式によりa、b[%]を計算し、これらa、bと上記の差分値Pmax”、Pmin”を用いステップ177で実際の充填効率のときのチョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値PCTRM”[kPa]を、
PCTRM”=Pmin”+(Pmax”−Pmin”)×a/(a+b)
…(96)
の式により算出し、この差分値PCTRM”と平均排気圧力PEXとを用いステップ178で、
P0=PEX+PCTRM” …(97)
の式によりチョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0[kPa]を算出する。
ステップ179ではチョーク状態開始クランク角CACOMPから上記(補22)式、(補23)式を用いてチョーク状態開始クランク角での燃焼室内容積V0[m^3]を算出する。
ステップ180では排気バルブ閉時期EVCと排気VTC変換角とから図45を内容とするマップを参照(補間計算付き)することにより、積分値∫(CDAex2/V)dθの値を算出する。図45に示したように、積分値∫(CDAex2/V)dθの特性は上記図36と同様の特性である。
ステップ181ではこのようにして求めたチョーク状態開始クランク角での燃焼室内圧力P0、チョーク状態開始クランク角での燃焼室内容積V0、積分値∫(CDAex2/V)dθの値を用いて上記(91)式により、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’を算出する。
図44は本発明の第8実施形態の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量を算出するためのもので、図43に続けて一定時間毎(例えば10ms毎)に演算する。
ステップ191では、図43のステップ171と同様に、排気ガス定数REX[kJ/mol/K](上記(6)式により算出済み)、平均排気温度TEX[K](上記(23)式により算出済み)、排気の比熱比κ[−](上記(19)式によりまたは図28より算出済み)、排気バルブ閉時期での燃焼室内容積VEVC[m^3]、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’[kPa](図43より算出済み)を読み込む。
ステップ192では平均排気温度TEX、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’、排気ガス定数REX、排気の比熱比κを用いて、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内温度TEVC[K]を上記(92)式により算出し、ステップ193でこの排気バルブ閉時期での燃焼室内温度TEVC、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’、排気バルブ閉時期での燃焼室内容積VEVC、排気ガス定数REXを用いて排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量MR1’[kg]を上記(93)式により算出し、ステップ194でこの排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量MR1’をそのまま吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量とする。
ここで、本発明の第8実施形態の作用効果を説明する。
先願装置では、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOが排気圧力に等しいと仮定して吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を上記(1)式により算出し、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときにはこの吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1をそのまま燃焼室内残留ガス量としている(図19参照)。
しかしながら、図42に示したように、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときにおいても、排気行程で燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になり、燃焼室内圧力Pcylが排気圧力Pexから離れて上昇することがあることを見出している。従ってこうした場合にも、吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力PIVOが排気圧力に等しいと仮定して吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量MR1を算出したのでは、燃焼室内圧力Pcylの排気圧力Pexからの圧力差に相当する誤差が、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量の推定に生じてしまう。
本発明の第8実施形態(請求項5、10に記載の発明)によれば、ピストン6の動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定し、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、燃焼室内容積変化量が排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角CACOMPとして算出し(図43のステップ172参照)、この算出したチョーク状態開始クランク角CACOMPに基づいて燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’を算出し(図43のステップ173〜181参照)、この算出した燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’に基づいて排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量MR1’を算出し(図44のステップ191〜193参照)、この排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量MR1’を排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量として推定する(図44のステップ194参照)ので、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがない場合に排気行程で燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときにも、排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量を精度良く推定することができる。
燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’は排気バルブ開口面積の影響を受ける。例えば、排気バルブ用VTC機構28の作動時になると、排気VTC変換角に応じて排気バルブ閉時期EVCが変化し、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’が排気バルブ用VTC機構28の非作動状態での値から変化する。従って、排気バルブ用VTC機構28の非作動状態で燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’が精度良く算出されるように充填効率最小時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)及び充填効率最大時の各クランク角での燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ(図6参照)をマッチングしている場合において排気バルブ用VTC機構28の作動時に、排気VTC変換角を考慮することなく同じマップを用いるだけだと、排気バルブ用VTC機構28の作動時に、排気VTC変換角に応じた誤差が、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’の算出に生ずるのであるが、本発明の第8実施形態(請求項6に記載の発明)によれば、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’を、排気VTC変換角に基づいても算出するので(図43のステップ173〜178、181参照)、排気バルブ用VTC機構28の作動時にも、燃焼室5から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力PEVC’を精度良く算出できる。
本発明の第6、第7、第8の実施形態では、排気バルブ用VTC機構28に与える指令値が排気VTC変換角であり、この排気VTC変換角によって排気バルブの閉時期EVCや開時期(バルブ開閉時期)が定まる場合で説明したが、これに限られるものでない。例えば、排気バルブの開閉時期は排気バルブ中心角によっても定まるので、排気バルブ用VTC機構28に与える指令値が排気バルブ中心角を指示するものであれば、その排気バルブ中心角を、排気VTC変換角に代えて用いることができる。
本発明の第6実施形態では、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるのか圧縮されない場合であるのかを判定する判定手段が、排気バルブ開口面積Aex(排気バルブ開閉時期)と、エンジンの運転状態(ピストン6の動きに伴う排気上死点付近での燃焼室内容積変化量dV/dθ、エンジン回転速度Ne、排気のガス定数REX、平均排気温度TEX、比熱比κ、空気抵抗係数CD)とに基づいて燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する判定手段である場合で説明したが、これに限らず、吸気バルブ用VTC機構27(吸気バルブの開閉時期を変化させ得る吸気バルブ開閉時期可変機構)と、排気バルブ用VTC機構28(排気バルブの開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構)との少なくとも一方を備え、燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるのか圧縮されない場合であるのかを判定する判定手段が、吸気バルブ開閉時期と排気バルブ開閉時期の少なくとも一方と、エンジンの運転状態とに基づいて燃焼室5内から排気ポート11に吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する判定手段であってもかまわない。
本発明の第6、第7、第8の実施形態では、排気バルブ用VTC機構28の非作動時に排気バルブ開閉時期が初期位置としての最進角位置にあり、作動時になると、排気バルブ開閉時期をこの初期位置より遅角側に変化させる場合で説明したが、この場合に限定されるものでない。例えば、排気バルブ用VTC機構28の非作動時に排気バルブ開閉時期が初期位置としての最遅角位置にあり、作動時になると、排気バルブ開閉時期をこの初期位置より進角側に変化させる場合にも本発明の適用があることはいうまでもない。
請求項1に記載の発明において、判定手段の機能は図29のステップ108〜110により、推定手段の機能は図37のステップ143、図38のステップ150、159、図39の111、図40のステップ123、126、127によりそれぞれ果たされている。
請求項5に記載の発明において、判定手段の機能はエンジンコントローラ31により、推定手段の機能は図43のステップ172、181、図44のステップ193、194によりそれぞれ果たされている。
請求項9に記載の発明において、判定処理手順は図29のステップ108〜110により、推定処理手順は図37のステップ143、図38のステップ150、159、図39の111、図40のステップ123、126、127によりそれぞれ果たされている。
請求項10に記載の発明において、判定処理手順はエンジンコントローラ31により、推定処理手順は図43のステップ172、181、図44のステップ193、194によりそれぞれ果たされている。
先願装置の第1実施形態のエンジンの残留ガス量推定装置の概略構成図。 吸気バルブ開時期での燃焼室内残留ガス量の算出方法を説明するための行程図。 目標当量比のマップ特性図。 反応後の生成分子のモル数をまとめた表図。 充填効率、回転速度、吸気バルブ開時期での差分値の関係を示す特性図。 充填効率最小時または充填効率最大時の燃焼室内圧力と平均排気圧力との差分値のマップ特性図。 排気温度が基準排気温度にある条件で排気バルブ開時期を最遅角位置から所定値進角させたときの燃焼室内圧力の圧力脈動波形のずれを表す波形図。 排気温度が基準排気温度より高温側の条件へと変化しかつ排気バルブ開時期を最遅角位置から所定値進角させたときの燃焼室内圧力の圧力脈動波形のずれを表す波形図。 排気温度と廃熱量比の関係を表す特性図。 実トルク推定値のマップ特性図。 マイナスオーバラップとプラスオーバーラップの違いを表す行程図。 排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ中の燃焼室内圧力、排気圧力、排気バルブ周りガス流量、吸気バルブ及び排気バルブの各開口面積の変化波形図。 2直線による吹き返しガス量の算出を説明するための図。 排気バルブ開時期から吸気バルブ閉時期までのクランク角区間における燃焼室内圧力、排気圧力、吸気圧力の関係を示す波形図。 燃焼室内圧力の脈動を表す波形図。 排気温度が基準排気温度にある条件で排気弁用VTC機構を作動させたときの脈動分のずれを表す波形図。 排気温度が基準排気温度より高温側の条件へと変化したときの脈動分のずれ及びこの状態でさらに排気バルブ開時期を最遅角位置から所定値進角させたときの脈動分のずれを表す波形図。 排気弁用VTC機構を作動させたときの、クランク角θ2での排気バルブ開口面積のずれを表す波形図。 エンジンコントローラで実行される排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量の算出のためのブロック図。 オーバーラップ期間が所定値未満の場合と、オーバーラップ期間が所定値より長い場合の、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の各変化波形図。 先願装置の第2実施形態のオーバーラップ期間が所定値より長い場合の、吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の変化波形図。 先願装置の第2実施形態の、排気バルブ周りガス流量がゼロとなるときのクランク角θ0での排気バルブ周りガス流量の傾き(dm2/d2θ)0と(EVC−θ2)/(EVC−IVO)との関係を示す特性図。 先願装置の第3実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ中吹き返しガス量算出部のブロック図。 本発明の第6実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量の波形図。 図24左、中、右の状態での排気バルブ周りガス流量波形に、さらに吸気圧力、排気圧力、燃焼室内圧力の圧力履歴及び吸排気バルブの各開口面積を加えた波形図。 燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される理由を説明するための特性図。 排気バルブ開口面積の特性図。 比熱比の特性図。 本発明の第6、第7の実施形態の波形判定フラグの設定を説明するためのフローチャート。 排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ中の排気バルブ周りガス流量波形を直線近似する方法と、算出する面積とを示す特性図。 本発明の第6実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第6実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第6実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第6実施形態のチョーク状態開始クランク角の特性図。 本発明の第7実施形態の吸気圧力、排気圧力、燃焼室内圧力、排気バルブ開口面積、吸気バルブ開口面積の各変化を示すタイミングチャート。 本発明の第7実施形態の3つの基準排気VTC変換角での積分値∫(CDAex2/V)dθの各特性図。 本発明の第7実施形態の燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第7実施形態の燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第7実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第7実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第7実施形態の排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第8実施形態の吸気圧力、排気圧力、燃焼室内圧力、排気バルブ開口面積、吸気バルブ開口面積の各変化を示すタイミングチャート。 本発明の第8実施形態の燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第8実施形態の吸気バルブ開期間と排気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量の算出を説明するためのフローチャート。 本発明の第8実施形態の3つの基準排気VTC変換角での積分値∫(CDAex2/V)dθの各特性図。
符号の説明
1 エンジン
5 燃焼室
15 吸気バルブ
16 排気バルブ
28 排気バルブ用VTC機構(排気バルブ開閉時期可変機構)
31 エンジンコントローラ

Claims (10)

  1. ピストンの動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定する判定手段と、
    この判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、
    前記燃焼室内容積変化量が前記排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角として算出し、
    この算出したチョーク状態開始クランク角に基づいて燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を算出し、
    この算出した燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力に基づいて燃焼室内から排気ポートへの吹き出しガス量を算出し、
    吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量とこの吹き出しガス量とから排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を推定する推定手段と
    を備えることを特徴とするエンジンの残留ガス量推定装置。
  2. 少なくとも排気バルブの開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構を備え、
    前記チョーク状態開始クランク角をエンジン回転速度および前記排気バルブ開閉時期可変機構に与える指令値に基づいて算出することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  3. 少なくとも排気バルブの開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構を備え、
    前記吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を、前記排気バルブ開閉時期可変機構に与える指令値に基づいても算出することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  4. 少なくとも排気バルブの開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構を備え、
    前記判定手段は、前記排気バルブ開閉時期とエンジンの運転状態とに基づいて燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する判定手段であり、
    前記燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になる場合に前記燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であると判定することを特徴とする請求項1に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  5. ピストンの動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定する判定手段と、
    この判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、
    前記燃焼室内容積変化量が前記排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角として算出し、
    この算出したチョーク状態開始クランク角に基づいて排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力を算出し、
    この算出した排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力に基づいて燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量を算出し、
    この排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量を排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量として推定する推定手段と
    を備えることを特徴とするエンジンの残留ガス量推定装置。
  6. 少なくとも排気バルブの開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構を備え、
    前記燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力を、前記排気バルブ開閉時期可変機構に与える指令値に基づいても算出することを特徴とする請求項5に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  7. 少なくとも排気バルブの開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構を備え、
    前記チョーク状態開始クランク角をエンジン回転速度および前記排気バルブ開閉時期可変機構に与える指令値に基づいて算出することを特徴とする請求項5に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  8. 少なくとも排気バルブの開閉時期を変化させ得る排気バルブ開閉時期可変機構を備え、
    前記判定手段は、前記排気バルブ開閉時期とエンジンの運転状態とに基づいて燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるか否かを判定する判定手段であり、
    前記燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になる場合に前記燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であると判定することを特徴とする請求項5に記載のエンジンの残留ガス量推定装置。
  9. ピストンの動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定する判定処理手順と、
    この判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、
    前記燃焼室内容積変化量が前記排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角として算出し、
    この算出したチョーク状態開始クランク角に基づいて燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力を算出し、
    この算出した燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの吸気バルブ開時期での燃焼室内圧力に基づいて燃焼室内から排気ポートへの吹き出しガス量を算出し、
    吸気バルブ開時期での燃焼室内ガス量とこの吹き出しガス量とから排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップ終了後の燃焼室内残留ガス量を推定する推定処理手順と
    を含むことを特徴とするエンジンの残留ガス量推定方法。
  10. ピストンの動きに伴う燃焼室内容積変化量と、排気バルブ通過可能なガス量とに基づいて燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合であるか否かを判定する判定処理手順と、
    この判定結果により燃焼室内圧力が排気行程で圧縮される場合に、
    前記燃焼室内容積変化量が前記排気バルブ通過可能なガス量と等しくなるクランク角を、燃焼室内から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態を開始するクランク角として算出し、
    この算出したチョーク状態開始クランク角に基づいて排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力を算出し、
    この算出した排気バルブ閉時期での燃焼室内圧力に基づいて燃焼室から排気ポートに吹き出すガスの流れがチョーク状態になるときの排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量を算出し、
    この排気バルブ閉時期での燃焼室内ガス量を排気バルブ開期間と吸気バルブ開期間のオーバーラップがないときの燃焼室内残留ガス量として推定する推定処理手順と
    を含むことを特徴とするエンジンの残留ガス量推定方法。
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