本発明の水系アレルゲン抑制化剤は、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を水中に分散させてなる水系アレルゲン抑制化剤であって、上記非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を0.1〜50重量%含有すると共に、分散助剤を上記非水溶性アレルゲン抑制有機化合物に対して0.1〜70重量%含有し、更に、懸濁安定剤として天然高分子化合物を含有していると共に塩化ナトリウムを0.1〜10重量%含有していることを特徴とする。
上記非水溶性アレルゲン抑制有機化合物としては、非水溶性であってアレルゲン抑制効果を有するものであれば、特に限定されず、芳香族ヒドロキシ化合物や芳香族ポリエーテルなどの非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の他に、タンニン酸などの水溶性のアレルゲン抑制有機化合物を架橋剤などで架橋して非水溶性としたもの、タンニン酸などの水溶性のアレルゲン抑制有機化合物を重合により高分子量化して非水溶性としたもの、タンニン酸などの水溶性のアレルゲン抑制有機化合物をタルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、シリカ、バーミュライト、パーライトなどの無機担体やポリエチレン、ポリプロピレンなどの有機高分子担体に吸着させて非水溶性としたもの、タンニン酸などの水溶性のアレルゲン抑制有機化合物をグラフトなどの化学結合やバインダーによる結合によって非水溶性としたものなどが挙げられ、単独で用いられても二種以上が併用されてもよい。
ここで、非水溶性とは、20℃で且つpHが5〜9である水100gに対して溶解可能なグラム数(以下「溶解度」という)が1以下であることをいう。
なお、アレルゲン抑制有機化合物とはアレルゲン抑制効果を有するものをいい、又、「アレルゲン抑制効果」とは、ヒョウヒダニのアレルゲン(Der1、Der2)、空気中に浮遊するスギ花粉アレルゲン(Cryj1、Cryj2)、犬や猫に起因するアレルゲン(Can f1、Fel d1)などのアレルゲンを変性し或いは吸着し、アレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制する効果をいう。このようなアレルゲン抑制効果を確認する方法としては、例えば、LCDアレルギー研究所社から市販されているELISAキットを用いてELISA法によりアレルゲン量を測定する方法、アレルゲン測定具(シントーファイン社製 商品名「マイティーチェッカー」)を用いてアレルゲン性を評価する方法などが挙げられる。
先ず、上記芳香族ヒドロキシ化合物について説明する。上記芳香族ヒドロキシ化合物としては、芳香族ヒドロキシル基を有し且つアレルゲン抑制効果を備えたものであれば、特に限定されず、例えば、線状高分子に下記式(1)〜(6)で示される置換基のうちの少なくとも一つの置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物などの、式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロキシ化合物;フェノール樹脂;芳香族複素環式ヒドロキシ化合物;線状高分子に置換基として芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物などの、芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロキシ化合物、鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物などが挙げられる。
先ず、式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロキシ化合物について説明する。この芳香族ヒドロキシ化合物の置換基は、下記式(1)〜(6)で示される。
なお、式(1)〜(6)において、nは、0〜5の整数である。これは、nが6以上となると、式(1)〜(6)で示される置換基が発現するアレルゲン抑制効果が不充分となるからである。
各式中の複数個ある置換基R1 、R1 、R1 ・・・において、各置換基R1 は、水素又は水酸基である。更に、各式中、複数個ある置換基R1 の少なくとも一つは、芳香族ヒドロキシ化合物がアレルゲン抑制効果を発揮するために、水酸基である必要がある。しかしながら、水酸基の数が多過ぎると、水素アレルゲン抑制化剤を施したものが着色したり或いは変色し易くなるため、水酸基の数は一つが好ましい。即ち、各式中、複数個ある置換基R1 のうちの一つのみが水酸基である一方、この置換基以外の置換基R1 が全て水素であることが好ましい。
更に、水酸基の位置は、立体障害の最も少ない位置に結合していることが好ましく、例えば、式(1)では、水酸基がパラ位に結合していることが好ましい。
上記式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体としては、式(1)〜(6)で示される置換基を有しておれば、特に限定されず、例えば、ビニルフェノール、チロシン、1,2−ジ(4−ヒドロキシフェニル)エテン(式(7))などの一価のフェノール基を有する単量体が挙げられる。
更に、芳香族ヒドロキシ化合物のアレルゲン抑制効果を阻害しない範囲内において、式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体、好ましくは、一価のフェノール基を一個以上有する単量体に、この単量体と共重合可能な単量体を共重合させてもよい。
このような単量体としては、例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロシキエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、スチレンなどが挙げられる。
そして、式(1)〜(6)で示される置換基が結合している線状高分子としては、特に限定されず、ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。この線状高分子と式(1)〜(6)で示される置換基との間の化学結合については、特に限定されず、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などが挙げられる。
ここで、線状高分子に式(1)〜(6)で示される置換基のうちの少なくとも一つの置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物としては、例えば、(1) 式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体の重合体又は共重合体、(2) 式(1)〜(6)で示される置換基を少なくとも一つ含む単量体と、この単量体と共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられる。
そして、線状高分子に式(1)〜(6)で示される置換基のうちの少なくとも一つの置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物としては、具体的には、ポリ(3,4,5−ヒドロキシ安息香酸ビニル)、ポリビニルフェノール、ポリチロシン、ポリ( 1−ビニル−5−ヒドロキシナフタレン) 、ポリ( 1−ビニル−6−ヒドロキシナフタレン) 、ポリ( 1−ビニル−5−ヒドロキシアントラセン) が好ましい。
なお、上記単量体を重合させて得られる芳香族ヒドロキシ化合物の分子量としては、特に限定されないが、単量体を2個以上重合させてなる芳香族ヒドロキシ化合物が好ましく、単量体を5個以上重合させてなる芳香族ヒドロキシ化合物がより好ましい。
又、上記芳香族複素環式ヒドロキシ化合物としては、アレルゲン抑制効果を奏すれば、特に限定されず、例えば、2−ヒドロキシフラン、2−ヒドロキシチオフェン、ヒドロキシベンゾフラン、3−ヒドロキシピリジンなどが挙げられる。
次に、線状高分子に置換基として芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する芳香族ヒドロキシ化合物などの、芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体を重合又は共重合してなる芳香族ヒドロシキ化合物について説明する。
上記芳香族複素環式ヒドロキシ基としては、チオフェンやフランなどの複素環骨格にヒドロキシ基が結合したもの(式(8)(9))や、複素環と芳香族環とを持つ骨格にヒドロキシ基が結合したもの(式(10))、複素環骨格にヒドロキシ基及び炭素数が5以下のアルキル基が結合したもの、複素環と芳香族環とを持つ骨格にヒドロキシ基及び炭素数が5以下のアルキル基が結合したものなどが挙げられる。
そして、芳香族複素環式ヒドロキシ基が結合している線状高分子としては、特に限定されず、ビニル重合体、ポリエステル、ポリアミドなどが挙げられる。この線状高分子と芳香族複素環式ヒドロキシ基との間の化学結合については、特に限定されず、炭素−炭素結合、エステル結合、エーテル結合、アミド結合などが挙げられる。
このような芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体を重合又は共重合してなる化合物としては、例えば、(1) 芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体の重合体又は共重合体、(2)芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体と、この単量体と共重合可能な単量体との共重合体などが挙げられる。
上記芳香族複素環式ヒドロキシ基を有する単量体と共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、アクリレート、メタクリレート、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロシキエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、スチレンなどが挙げられる。
続いて、鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物について説明する。この鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物は、鎖状高分子の主鎖に脂環式構造を有し且つ鎖状高分子の主鎖或いは側鎖にフェノール基を有する芳香族ヒドロキシ化合物であるが、生活用品の風合いを損ねないという点から、上記脂環式構造が式(11)又は式(12)であることが好ましい。
ここで、式(11)(12)において、R2 〜R9 は、水素、炭化水素基又はフェノール基である。この炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、シクロブテニル基などのシクロアルケニル基、フェニル基、エチルフェニル基などのアリール基、アラルキル基などが挙げられる。
更に、上記脂環式構造部分に式(13)で示される置換基を有することが好ましく、式(11)のR2 〜R5 のうちの少なくとも一つの置換基が式(13)で示される置換基であることがより好ましい。
ここで、式(13)において、R10〜R14は水素又はヒドロキシル基であり、R10〜R14のうちの少なくとも一つはヒドロキシル基である。これは、R10〜R14のうちの少なくとも一つがヒドロキシル基でない場合、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物のアレルゲン抑制効果が低下する虞れがあるからである。しかしながら、ヒドロキシル基の数が増加すると、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の着色性が強くなることがあるので、式(13)におけるR10〜R14のうち、一つの置換基のみがヒドロキシル基であって且つ残余の置換基が水素であることが好ましく、立体障害が少ないことから、R12がヒドロキシル基であって且つR10、R11、R13及びR14が水素であることがより好ましい。
又、式(13)において、Xは直接結合又は炭化水素基であり、このような炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基などが挙げられる。
なお、鎖状高分子の主鎖に式(11)で示される脂環式構造を有し且つこの脂環式構造部分に式(13)で示される置換基を有する芳香族ヒドロキシ化合物は、液状ポリブタジエンとフェノールとを原料に用いて合成することができ、例えば、新日本石油社から商品名「PPシリーズ」で市販されており、鎖状高分子の主鎖に式(12)で示される脂環式構造を有する芳香族ヒドロキシ化合物は、ジシクロペンタジエンとフェノールとを原料に用いて合成することができ、例えば、新日本石油社から商品名「DPPシリーズ」「DPAシリーズ」で市販されている。
更に、芳香族ポリエーテル化合物としては、例えば、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリアリレートなどが挙げられ、生活用品への着色をより効果的に防止することができることから、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルケトンが好ましく、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエーテルスルホン、ポリスルホンがより好ましい。
そして、上記芳香族ポリエーテル化合物のなかでも、ビスフェノールA、テトラクロロビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのモノマーと、エピクロロヒドリンとの重縮合或いは酸化カップリング反応により重合して得られるエポキシ樹脂やフェノキシ樹脂;ビスフェノールのアルカリ金属塩と、−SO2 −、−CO−、−CNなどの電子吸引性基によって活性化された芳香族ジハライドとを極性溶媒中で加熱して重縮合させる芳香族求核置換重合法や、ジフェニルエーテルのような電子に富む芳香族化合物と、芳香族二酸クロリドとをルイス酸触媒下に重合させるFriedel−Craftsシアル化反応を応用した芳香族求電子置換重合法によって得られる、ポリスルホン、ポリアリルスルホン、ポリエーテルスルホン又はポリエーテルケトンがより好ましい。
更に、生活用品への着色を特に効果的に防止することができることから、芳香族ポリエーテル化合物は、式(14)及び/又は式(15)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有するものが好ましい。
(R15〜R26は水素又は炭化水素基であり、同一であっても異なっていてもよい。Xは、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、Z1 及びZ2 は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群から選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合である。)
ここで、式(14)(15)において、R15〜R26は水素又は炭化水素基である。この炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基などのアルキル基、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル基などのシクロアルキル基、ビニル基などのアルケニル基、シクロブテニル基などのシクロアルケニル基、フェニル基、エチルフェニル基などのアリール基、アラルキル基などが挙げられ、R15〜R26の全てが水素である場合が好ましい。
更に、式(14)において、Xは、メチレン基、エチレン基、プロピリデン基、ブチリデン基及びスルホニル基からなる群から選ばれた2価の有機基又は直接結合であり、メチレン基、プロピリデン基、スルホニル基が好ましい。
又、式(14)(15)において、Z1 及びZ2 は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ヒドロキシトリメチレン基及びブチレン基からなる群から選ばれた2価の有機基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合であり、メチレン基、ヒドロキシトリメチレン基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合が好ましく、Z1 は、ヒドロキシトリメチレン基、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基又は直接結合がより好ましく、Z2 は、フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基がより好ましい。
そして、上記フェニルスルホニル構造を有する2価の有機基としては、特に限定されないが、例えば、下記の式(16)〜(18)に示す構造を有する有機基が挙げられる。
又、芳香族ポリエーテル化合物が式(14)及び/又は式(15)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物である場合、式(14)又は式(15)の構成単位を主たる繰返し単位としているか、或いは、式(14)及び式(15)の構成単位を主たる繰返し単位としておればよく、他の構成単位を含有していてもよい。
上記式(14)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物としては、具体的には、ビスフェノールAとビス(4−クロロフェニル)スルホンとを重縮合させて得られるポリスルホン;ビスフェノールAやビスフェノールFと、エピクロロヒドリンとの重縮合により得られるエポキシ樹脂が好ましい。
又、上記式(15)で示される構成単位を主たる繰返単位として含有する化合物としては、具体的には、4−クロロ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンのカリウム塩を用いた溶液重縮合法により得られるポリエーテルスルホン、4−フルオロ−4’−ヒドロキシジフェニルスルホンのカリウム塩を用いた溶液重縮合法により得られるポリエーテルスルホン;4,4’−ビフェニルジスルホニルクロリドとジフェニルエーテルとを重縮合させて得られるポリアリルスルホンなどが好ましい。
そして、上記芳香族ポリエーテル化合物の重量平均分子量は、小さいと、アレルゲン抑制効果が発現しないことがあるので、1500以上が好ましく、2500以上がより好ましいが、大きすぎると、アレルゲン抑制有機化合物の取り扱い性が低下することがあるので、50万以下が好ましい。
又、上記非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の水系アレルゲン抑制化剤中における含有量は、少ないと、アレルゲン抑制効果が発揮されない一方、多いと、水系アレルゲン抑制化剤の粘度が高くなって、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を充分に微細化することができなくなり、充分なアレルゲン抑制効果を発揮できなくなるので、0.1〜50重量%に限定され、0.5〜40重量%が好ましい。
そして、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の形態としては、特に限定されないが、球状、円柱状、針状などの微粒子状が好ましい。更に、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の体積は、大きいと、アレルゲンに対する接触面積が小さくなり、アレルゲン抑制効果が低減する虞れがあるので、0.01mm3 以下が好ましい。
ここで、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の体積は、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の平均粒径を動的光散乱法によって測定し、この平均粒径と同一寸法の直径を有する真球の体積をいう。なお、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の平均粒径は、例えば、HORIBA社から商品名「LA−910」にて販売されている動的光散乱式粒度分布測定装置を用いて測定することができる。
又、上記分散助剤としては、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物が水中に分散した状態を安定化させることができれば、特に限定されず、例えば、陰イオン性界面活性剤、陽イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤、両性界面活性剤などの界面活性剤が挙げられ、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物のアレルゲン抑制効果に与える影響や、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の水中における分散性の点で、陰イオン性界面活性剤が好ましい。
上記陰イオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物の塩、ポリスチレンスルホン酸塩などの芳香族スルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルエトキシ硫酸エステル塩、アルカンスルホン酸塩、α−スルホ脂肪酸塩、リン酸エステル塩等が挙げられ、芳香族スルホン酸塩が好ましい。
又、上記陽イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪アミン塩類、第四アンモニウム塩類、アルキルピリジニウム塩等が挙げられる。
そして、上記非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンに、スチレン、プロピレン、ブチレンなどのオリゴマー・フェノール複合体或いはトリベンジル化フェノールを重合付加したポリオキシエチレン、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどのポリオキシエチレンの長鎖アルキルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルなどのポリオキシエチレンの長鎖アルキル・フェニルエーテルなどのポリオキシエチレン誘導体;高級脂肪酸アルカノールアミド;ソルビタン脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライドなどが挙げられる。
更に、両性界面活性剤としては、例えば、3級アミンオキサイド、ベタイン、アルキルベタイン、スルホベタインなどが挙げられる。
そして、水系アレルゲン抑制化剤中における分散助剤の含有量は、少ないと、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の分散性が低下する一方、多いと、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物との相互作用が大きい場合には、分散助剤が非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の表面を覆ってしまい、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物のアレルゲン抑制効果を低下させ、又、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物との相互作用が小さい場合には、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の水中における分散性を低下させるので、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物に対して0.1〜70重量%に限定され、0.5〜50重量%が好ましく、0.5〜40重量%がより好ましい。
又、水系アレルゲン抑制化剤に懸濁安定剤が添加されている。このような懸濁安定剤としては、特に限定されず、例えば、ゼラチン、ダイユータンガム、ウェランガム、キサンタンガム、アラビアゴム、海藻抽出のガム質などの天然高分子化合物、ベントナイトのようなゲル化剤、カルボキシメチル・メチルセルローズ、ポリビニルアルコールなどの合成高分子化合物などが挙げられる。
そして、懸濁安定剤として天然高分子化合物を水系アレルゲン抑制化剤に添加した場合、水系アレルゲン抑制化剤の腐敗を防止するために、水系アレルゲン抑制化剤中に無機塩を含有させている。このような無機塩としては塩化ナトリウムが用いられる。
上記水系アレルゲン抑制化剤中における無機塩の含有量は、少ないと、水系アレルゲン抑制化剤の組成によっては、長期保管中に水系アレルゲン抑制化剤中に微生物が繁殖して水系アレルゲン抑制化剤が腐敗することがある一方、多いと、水系アレルゲン抑制化剤の保管中に塩が析出することがあるので、0.1〜10重量%に限定され、0.1〜7重量%が好ましく、0.5〜5重量%がより好ましい。
更に、水系アレルゲン抑制化剤に、アレルゲン抑制効果を阻害しない範囲において、分散補助剤、湿潤剤、増粘剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤などの製剤用補助剤や、殺ダニ剤、殺菌剤、防黴剤、消臭剤などが添加されてもよい。
特に、水系アレルゲン抑制化剤を生活用品に使用する場合には、水系アレルゲン抑制化剤に、酸化防止剤や紫外線吸収剤などの黄変防止剤が添加されていることが好ましい。
これは、特に、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物が芳香族ヒドロキシ化合物である場合、光が照射されることによって芳香族ヒドロキシ化合物が分解してキノン類が発生し、着色や変色が生じることがあり、この着色や変色を防止するためである。
このような黄変防止剤としては、光や窒素酸化物などのガスによって非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の黄変を抑制することができるものであれば、特に限定されないが、ノニオン系化合物又はアニオン系化合物が好ましく、アニオン系化合物がより好ましい。これは、黄変防止剤が、両性化合物やカチオン系化合物であると、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物のアレルゲン抑制効果を阻害する虞れがあるからである。
上記黄変防止剤としては、具体的には、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ヒンダードフェノール類、サリチル酸類、ベンゾフェノン類、フェノールエステル類、桂皮酸類、パラフェニレンジアミン類、フェノール類、ビスフェノール類、ヒンダードアミン類、α−トコフェロール(ビタミンE)、β- カロチン、アスコルビン酸(ビタミンC)、オキシ安息香酸類、キノリン類、アミン類などが挙げられ、アレルゲン抑制能に影響を与えない点から、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ヒドラジン類、ヒンダードフェノール類が好ましく、ベンゾトリアゾール類、トリアジン類、ヒンダードフェノール類がより好ましく、スルホン化ベンゾトリアゾール類が特に好ましい。なお、黄変防止剤は、単一で用いても二種以上を併用してもよいが、種類の異なる二種類以上の黄変防止剤を併用することが好ましい。
上記ベンゾトリアゾール類としては、例えば、2−(2' −ヒドロキシ−5' −メチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−〔2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ビス(a,a−ジメチルベンジル)−フェニル〕−ベンゾトリアゾール、2−(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−t−ブチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2−2' −ヒドロキシ−3' −t−ブチル−5' −メチル−フェニル)−5−クロロベンゾ−トリアゾール、2−(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−t−ブチル−フェニル)−5−クロロ−ベンゾトリアゾール、2−(2' −ヒドロキシ−3' ,5' −ジ−t−アミル)−ベンゾトリアゾール、2−(2' −ヒドロキシ−5' −t−オクチル−フェニル)−ベンゾトリアゾール、2,2' −メチレンビス〔4−(1,1,3,3−テトラメチル−ブチル)−6−(2−N−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール〕などが挙げられる。そして、ベンゾトリアゾール類としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社から商品名「Ciba TINOFAST CUT-01」で市販されているノニオン系ベンゾトリアゾール類が好ましい。
そして、スルホン化ベンゾトリアゾール類としては、例えば、2−ベンゾトリアゾールスルホン酸ナトリウム、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)スルホン酸などが挙げられる。なお、スルホン化ベンゾトリアゾール類としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社から商品名「Ciba CIBAFAST W liq」 で市販されているアニオン系スルホン化ベンゾトリアゾール類が好ましい。
又、上記トリアジン類としては、例えば、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]−フェノール、2−メチルスルファニン−4,6−ビス(2−ヒドロキシ−4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン、2−(4,6−ビス−メチルスルファニル−1,3,5−トリアミン−2−イル)−5−メトキシフェノールなどが挙げられる。上記トリアジン類としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社から商品名「Ciba CIBAFAST HLF」 などで販売されているアニオン系トリアジン類が好ましい。
更に、上記ヒンダードフェノール類としては、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、2,2−チオ−ジエチレンビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、ペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾールなどが挙げられる。上記ヒンダードフェノール類としては、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社から商品名「CIBAFAST AO」 などで販売されているアニオン系ヒンダードフェノール類が好ましい。
そして、上記サリチル酸類としては、例えば、サリチル酸ベンジル、サリチル酸(4−t−ブチル)ベンジルなどが挙げられる。
又、上記ベンゾフェノン類としては、例えば、2,4−ジハイドロキシベンゾフェノン、2−ハイドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ハイドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルフォニックアシド、2−ハイドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、ビス(5−ベンゾイル−4−ハイドロキシ−2−メトキシフェニル)メタン、2,2' −ジハイドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2' −ジハイドロキシ−4−4' −ジメトキシベンゾフェノンなどが挙げられる。
更に、上記フェノールエステル類とは、光励起により発生したラジカル反応を光フリース転移により安定化するものをいう。このようなフェノールエステル類としては、例えば、p−オキシ安息香酸フェニルなどのオキシ安息香酸類などが挙げられる。
又、上記桂皮酸類とは、オルトヒドロキシ桂皮酸エステルをいう。この桂皮酸類としては、例えば、オルトヒドロキシ桂皮酸メチル、オルトヒドロキシ桂皮酸(t−ブチル)、オルトヒドロキシ桂皮酸フェニルなどが挙げられる。
更に、上記パラフェニレンジアミン類としては、例えば、パラフェニレンジアニリンなどが挙げられる。そして、上記フェノール類としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール(BHT)などが挙げられる。そして、ビスフェノール類としては、例えば、ビスフェノールAなどが挙げられる。
又、上記ヒンダードアミン類としては、例えば、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケート、ビス−〔N−メチル−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル〕セバケート、ビスー(1,2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)−2−(3,5−ジ−t―ブチル−4−ハイドロキシベンジル)−2−nーブチルマロネートなどが挙げられる。なお、ヒンダードアミン類は、チバガイギー社から商品名「Tinuvin622」で市販されている。
更に、上記オキシ安息香酸類としては、例えば、p−オキシ安息香酸エチル、p−ベンジルオキシ安息香酸ベンジル、p−オキシ安息香酸メチルなどが挙げられる。
又、上記キノリン類としては、例えば、2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが挙げられる。
そして、アミン類としては、例えば、フェニル−α−ナフチルアミン、ジアルキルジフェニルアミンなどが挙げられる。
そして、上記アレルゲン抑制化剤中における黄変防止剤の含有量は、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物100重量部に対して10〜1000重量部が好ましく、20〜800重量部がより好ましく、30〜600重量部が特に好ましい。
これは、黄変防止剤の含有量が少ないと、水系アレルゲン抑制化剤に充分な着色・変色抑制効果を付与することができないことがある一方、多いと、水系アレルゲン抑制化剤のアレルゲン抑制効果が抑制されたり、水系アレルゲン抑制化剤を繊維に含有させた時に繊維の強度が低下したり品質が損なわれることがあるからである。
又、水系アレルゲン抑制化剤を生活用品に用いる場合には、空気中の水分子を集めることによってアレルゲンとの相互作用を生じ得る反応場を形成するために、水系アレルゲン抑制化剤に吸湿性化合物を添加することが好ましい。
上記吸湿性化合物としては、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、シリカゲルなどの無機物、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシメチレンなどのポリエーテル;ポリビニルアルコールなどのポリアルコール;ポリアクリル酸ナトリウム塩などのポリマー塩;ポリアクリル酸などのポリマー酸などを含む高分子化合物などが挙げられ、吸湿性のみならず捉えた水分子を系中に放出しやすいことからポリエーテルが好ましい。
次に、本発明の水系アレルゲン抑制化剤を製造する方法としては、特に限定されず、例えば、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物及び分散助剤、並びに、必要に応じて他の添加剤を水中に供給し、汎用の攪拌機を用いて非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を粉砕しながら水中に分散させて水系アレルゲン抑制化剤を製造する方法や、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を溶剤中に溶解させ、得られた溶解液を汎用の攪拌機を用いて攪拌しながら溶解液中に水及び分散助剤を添加してエマルジョンを作製し、次に、上記溶剤を除去する転相乳化法により、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を水中に分散させて水系アレルゲン抑制化剤を製造する方法などが挙げられる。
なお、上記攪拌機としては、例えば、ボールミル、コロイドミルなどの粉砕機、ホモジナイザー、高圧ホモジナイザーなどの分散・乳化機などが挙げられ、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の水中における分散を短時間で行うために、集中剪断攪拌機と全体混合翼とを併用することが好ましい。
なお、上記溶媒としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどのアルコール類、トルエン、キシレン、メチルナフタレン、ケロセン、シクロヘキサンなどの炭化水素類、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類、N,N−ジメチルホルムアミドなどのアミド類などが挙げられ、アルコール類、エーテル類、ケトン類が好ましい。
そして、本発明の水系アレルゲン抑制化剤を、アレルゲンが存在する対象物、即ち、アレルゲンを抑制したい対象物(以下、「アレルゲン対象物」という)に噴霧又は塗布することによって供給することにより、アレルゲンを抑制したり、或いは、不織布、織布などの繊維集合体に水系アレルゲン抑制化剤を含浸させて清拭シートを作製し、この清拭シートでアレルゲン対象物を拭くことによってアレルゲンを抑制することができる。その他に、水系アレルゲン抑制化剤を洗剤や柔軟仕上げ剤に添加して用いたり、或いは、水系アレルゲン抑制化剤を人体の皮膚や粘膜に処理してもよい。
なお、上記アレルゲン対象物としては、生活空間においてアレルゲンの温床となる生活用品などが挙げられる。この生活用品としては、例えば、畳、絨毯、床、家具(ソファー、布ばり椅子、テーブル)、寝具(ベッド、布団、シーツ)、車内用品(シート、チャイルドシート、ドアトリム材、天井材、フロアカーペット、フロアマット、シートベルト、トランクルーム用ファブリック、カーシートカバー)、キッチン用品、ベビー用品、カーテン、壁紙、タオル、衣類、ぬいぐるみ、その他の繊維製品、空気清浄機(本体及びフィルター)等が挙げられる。更に、上記アレルゲン抑制化剤は、上述以外に、洗剤や柔軟仕上げ剤などに添加することによってもアレルゲン抑制効果を発揮することができる。
又、水系アレルゲン抑制化剤は、スプレー型、エアゾール型、燻煙型、加熱蒸散型や液剤を塗布するなどの汎用の使用方法で用いることもできる。なお、スプレー型とは、常圧下にある水系アレルゲン抑制化剤に圧力を加えて水系アレルゲン抑制化剤を霧状に噴霧する使用方法をいう。
そして、上記スプレー型の水系アレルゲン抑制化剤に、固体担体(タルク、ベントナイト、クレー、カオリン、珪藻土、シリカ、バーミュライト、パーライトなど)を添加することにより、水系アレルゲン抑制化剤をエアゾール型とすることができる。
ここで、エアゾール型とは、容器内に水系アレルゲン抑制化剤を噴射剤と共に該噴射剤が圧縮された状態に封入しておき、噴射剤の圧力によって水系アレルゲン抑制化剤を霧状に噴霧させる使用方法をいう。なお、噴射剤としては、例えば、窒素、炭酸ガス、ジメチルエーテル、LPGなどが挙げられる。
そして、上記スプレー型の水系アレルゲン抑制化剤に、酸素供給剤(過塩素酸カリウム、硝酸カリウム、塩素酸カリウムなど)、燃焼剤(糖類、澱粉など)、発熱調整剤(硝酸グアニジン、ニトログアニジン、リン酸グアニル尿素など)、酸素供給剤分解用助剤(塩化カリウム、酸化銅、酸化クロム、酸化鉄、活性炭など)などを添加することにより、水系アレルゲン抑制化剤を燻煙型することができる。なお、燻煙型とは、水系アレルゲン抑制化剤を微粒子化して煙状とし、分散させる使用方法をいう。
そして、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物が対象とするアレルゲンとしては、動物性アレルゲン、花粉などの植物性アレルゲンが挙げられる。特に効果のある動物アレルゲンとしては、ダニ類のアレルゲン(ダニ類、節足動物一蛛形綱−ダニ目の生物で、主に7つの亜目に分かれている。アシナガダニに代表される背気門、カタダニに代表される四気門、ヤマトマダニ、ツバメヒメダニに代表される後気門、イエダニ、スズメサシダニ代表される中気門、クワガタツメダニ、ナミホコリダニに代表される前気門、コナヒョウヒダニなどのヒョウヒダニ類、ケナガコナダニに代表される無気門、イエササラダニ、カザリヒワダニに代表される隠気門等)のいずれの種類でも対象となり得るが、室内塵中、特に寝具類に多く、アレルギー疾患の原因となるヒョウヒダニ類に特に効果がある。
本発明のアレルゲン抑制化剤を上記生活用品に処理する場合、使用量が少ないと、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物がアレルゲン抑制効果を発現しないことがある一方、多いと、上記生活用品を痛めることがあるので、生活用品100重量部に対して非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の量が0.01〜100重量部になるように処理するのが好ましく、0.02〜80重量部となるように処理するのがより好ましく、0.03〜50重量部となるように処理するのが特に好ましい。
上述の水系アレルゲン抑制化剤の使用要領によれば、アレルゲン対象物に必要に応じて水系アレルゲン抑制化剤を供給することによって、アレルゲン対象物に存在するアレルゲンの特異抗体に対する反応性を抑制するものであった。
上記水系アレルゲン抑制化剤中の非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を繊維に含有させてアレルゲン抑制繊維とし、繊維自体にアレルゲン抑制効果を付与することができる。このアレルゲン抑制繊維を用いて上記生活用品を作製することによって、生活用品にアレルゲン抑制効果を予め付与しておくことができる。
水系アレルゲン抑制化剤中の非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を繊維に含有させる方法としては、繊維に非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を化学的に結合させたり或いは物理的に固着させる方法が挙げられる。そして、繊維としては、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を含有させることができるものであれば、特に限定されず、例えば、ポリエステル繊維、ナイロン繊維、アクリル系繊維、ポリオレフィン系繊維などの合成繊維、アセテート繊維などの半合成繊維、キュプラ、レーヨンなどの再生繊維、綿、麻、羊毛、絹などの天然繊維、又は、これら各種繊維の複合化繊維、混綿などが挙げられる。
上記アレルゲン抑制化剤中の非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を繊維に化学的に結合させる要領としては、グラフト化反応により繊維に非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を化学的に結合させる方法が挙げられる。グラフト化反応としては、特に限定されず、例えば、(1) 繊維となる幹ポリマーに重合開始点をつくり、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を枝ポリマーとして重合させるグラフト重合方法、(2) 非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を高分子反応によって繊維に化学的に結合させる高分子反応法などが挙げられる。
グラフト重合方法としては、例えば、(1) 繊維への連鎖移動反応を利用し、ラジカルを生成し重合する方法、(2) 第2セリウム塩や硫酸銀塩などをアルコール、チオール、アミンのような還元性物質を作用させて酸化還元系(レドックス系)を形成し、繊維にフリーラジカルを生成して重合を行う方法、(3) 繊維と、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の原料となる単量体とを共存させた状態で、繊維にγ線や加速電子線を照射する方法、(4) γ線や加速電子線を繊維だけに照射し、その後に非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の原料となる単量体を加えて重合を行う方法、(5) 繊維を構成する高分子を酸化してペルオキシ基を導入し或いは側鎖のアミノ基からジアゾ基を導入して、これを重合開始点として重合する方法、(6) 水酸基、アミノ基、カルボキシル基などの側鎖の活性基によるエポキシ、ラクタム、極性ビニルモノマーなどの重合開始反応を利用する方法などが挙げられる。
次に、アレルゲン抑制化剤中の非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を繊維に物理的に固着させる方法について説明する。アレルゲン抑制化剤中の非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を繊維に物理的に固着させる方法としては、例えば、(1) 水系アレルゲン抑制化剤中に繊維を浸漬して、繊維に水系アレルゲン抑制化剤を含有させて非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を繊維に固着させる方法、(2) 水系アレルゲン抑制化剤を繊維表面にスプレーなどの手段を用いて塗布する方法、(3) 水系アレルゲン抑制化剤中にバインダーを溶解或いは分散させ、この水系アレルゲン抑制化剤中に繊維を浸漬させ、繊維に水系アレルゲン抑制化剤を含有させて、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物をバインダーによって繊維に固着させる方法、(4) 水系アレルゲン抑制化剤中にバインダーを溶解又は分散させ、この水系アレルゲン抑制化剤を繊維表面にスプレーなどの手段を用いて塗布し、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物をバインダーによって繊維に固着させる方法などが挙げられる。
上記バインダーとしては、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を繊維表面に固着できるものであれば、特に限定されず、例えば、合成樹脂からなるバインダーとしては、一液型ウレタン樹脂、二液型ウレタン樹脂などのウレタン系樹脂、アクリル樹脂、ウレタンアクリレート樹脂、ポリエステル樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、エポキシ樹脂、エポキシアクリレート樹脂、シリコーン系樹脂などが挙げられ、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂が好ましい。
又、上記では、アレルゲン抑制化剤中の非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を別途製造された繊維に化学的に結合させ或いは物理的に固着させることによって、繊維に非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を含有させる要領を説明したが、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を化学的に結合させた繊維原料を紡糸して繊維を作製してもよい。
非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を化学的に結合させた繊維原料の作製要領としては、特に限定されず、例えば、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を置換基として有する重合性単量体と、一般の繊維原料となる重合性単量体とを共重合させて繊維原料を作製する方法が挙げられる。
(実施例1)
トールビーカー内に、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物としてポリ(4−ビニルフェノール)(丸善石油化学社製 商品名「マルカリンカーM」、重量平均分子量(Mw):5500、溶解度:1以下)160重量部、イオン交換水128重量部及びポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤(ライオン社製 商品名「ポリティーPS−1900」)12重量部を供給し、トールビーカ内を攪拌機(エム・テクニック株式会社製 商品名「クリアミックスCLM−0.8S」)を用いて攪拌速度20000rpmで60分間に亘って攪拌した後、更に、トールビーカ内を攪拌速度21500rpmで10分間に亘って撹拌して、水中に球状のポリ(4−ビニルフェノール)微粒子が分散してなる懸濁液を作製した。得られた懸濁液を室温にて30分間に亘って静置した後、懸濁液中の沈殿物を除去して水系アレルゲン抑制化剤を得た。なお、沈殿物の量は10重量部であった。
上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は26.3重量%であり、ポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤はポリ(4−ビニルフェノール)に対して24.0重量%含有されていた。
水系アレルゲン抑制化剤をイオン交換水を用いて重量%換算で10倍に希釈した後、この水系アレルゲン抑制化剤にダイユータンガム( CP Kelco U.S.Inc.製 商品名「ケルコクリート200」)が0.2重量%の濃度となるように供給し、更に、塩化ナトリウムを3.0重量%の濃度となるように添加して水系アレルゲン抑制化剤を得た。なお、ポリ(4−ビニルフェノール)粒子は球状であった。
上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は2.5重量%であり、ポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤はポリ(4−ビニルフェノール)に対して24.0重量%含有されていた。
(実施例2)
非水溶性アレルゲン抑制有機化合物としてポリ(4−ビニルフェノール)(丸善石油化学社製 商品名「マルカリンカーM」、重量平均分子量(Mw):5500、溶解度:1以下)352重量部を6重量%の水酸化ナトリウム水溶液(和光純薬品工業社製、試薬特級をイオン交換水に溶解させて作製したもの)1400重量部に溶解させてポリ(4−ビニルフェノール)水溶液を作製した。
次に、上記ポリ(4−ビニルフェノール)水溶液中に、イオン交換水550重量部及びポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤(ライオン社製 商品名「ポリティーPS−1900」)176重量部を加えた上で、ポリ(4−ビニルフェノール)水溶液を攪拌機(特殊幾化社製 商品名「ホモミクサーMARK II 」)を用いて攪拌速度8000rpmにて撹拌しながら、ポリ(4−ビニルフェノール)水溶液中に4.5重量%の塩酸1600重量部を徐々に供給して、水中に球状のポリ(4−ビニルフェノール)微粒子を析出させて懸濁液を作製した。
更に、この懸濁液に4.5重量%の塩酸を供給して、懸濁液のpHが7〜8となるように調整した後、懸濁液を攪拌機(特殊幾化社製 商品名「ホモミクサーMARK II 」)を用いて攪拌速度9000rpmにて60分間に亘って攪拌した。
得られた懸濁液4000重量部にダイユータンガム( CP Kelco U.S.Inc.製 商品名「ケルコクリート200」、濃度:1重量%)450重量部を加えて水系アレルゲン抑制化剤を得た。
上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は7.2重量%であり、ポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤はポリ(4−ビニルフェノール)に対して50.0重量%含有されており、水酸化ナトリウムと塩酸との中和反応によって生成した塩化ナトリウムは水系アレルゲン抑制化剤中に2.5重量%含有されていた。
(実施例3)
実施例2で得られた水系アレルゲン抑制化剤10重量部に、イオン交換水9.55重量部、バインダーとして特殊シリコーンバインダー(北広ケミカル社製 商品名「TF−3500」)の4重量%水溶液10重量部及びポリアクリル酸ナトリウム(アルドリッチ社製、重量平均分子量:2100)0.2重量部、並びに、帯電防止剤の3重量%水溶液10重量部を供給して混合した。
上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は1.8重量%であり、ポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤はポリ(4−ビニルフェノール)に対して50重量%含有されており、水酸化ナトリウムと塩酸との中和反応にて生成した塩化ナトリウムは水系アレルゲン抑制化剤中に0.6重量%含有されていた。
そして、得られた水系アレルゲン抑制化剤を綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)に40マイクロリットル/cm2 となるように噴霧して50℃で15時間に亘って放置して乾燥させ清拭シートを得た。
(実施例4)
実施例2で得られた水系アレルゲン抑制化剤をイオン交換水で1.5倍に希釈して得られた希釈液50ミリリットルに、黄変防止剤としてアニオン系トリアジン類(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製 商品名「CIBAFAST HLF」)を10重量%含有する黄変防止剤水溶液50ミリリットルを添加して、黄変防止剤を含有する水系アレルゲン抑制化剤を得た。
上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は2.4重量%であり、ポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤はポリ(4−ビニルフェノール)に対して50.0重量%含有されており、水酸化ナトリウムと塩酸との中和反応によって生成した塩化ナトリウムは水系アレルゲン抑制化剤中に0.8重量%含有されており、ポリ(4−ビニルフェノール)100重量部に対してトリアジン類が208.3重量部含有されていた。
(実施例5)
黄変防止剤水溶液として、ノニオン系ピペリジンエステル類(チバ・スペシャリティ・ケミカル社製 商品名「TINOFAST RSC」)を2重量%含有する黄変防止剤水溶液を用いたこと以外は、実施例4と同様にして、黄変防止剤を含有する水系アレルゲン抑制化剤を得た。
上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は2.4重量%であり、ポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤はポリ(4−ビニルフェノール)に対して50.0重量%含有されており、水酸化ナトリウムと塩酸との中和反応によって生成した塩化ナトリウムは水系アレルゲン抑制化剤中に0.8重量%含有されており、ポリ(4−ビニルフェノール)100重量部に対してトリアジン類が41.7重量部含有されていた。
(実施例6)
ピペリジンエステル類の代わりにノニオン系特殊窒素化合物(大京化学社製 商品名「スタビライザー LH-2」) を用いたこと以外は実施例5と同様にして、黄変防止剤を含有する水系アレルゲン抑制化剤を得た。
上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は2.4重量%であり、ポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤はポリ(4−ビニルフェノール)に対して50.0重量%含有されており、水酸化ナトリウムと塩酸との中和反応によって生成した塩化ナトリウムは水系アレルゲン抑制化剤中に0.8重量%含有されており、ポリ(4−ビニルフェノール)100重量部に対してトリアジン類が41.7重量部含有されていた。
(実施例7)
黄変防止剤水溶液として、カチオン系2級アミンポリマー系化合物(センカ社製、商品名「チェーエルカット CF-2」)を2重量%含有する黄変防止剤水溶液を用いたこと以外は実施例4と同様の要領で、黄変防止剤を含有する水系アレルゲン抑制化剤を得た。
上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は2.4重量%であり、ポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤はポリ(4−ビニルフェノール)に対して50.0重量%含有されており、水酸化ナトリウムと塩酸との中和反応によって生成した塩化ナトリウムは水系アレルゲン抑制化剤中に0.8重量%含有されており、ポリ(4−ビニルフェノール)100重量部に対して2級アミンポリマー系化合物が41.7重量部含有されていた。
(比較例1)
非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を用いなかったこと以外は、実施例1と同様にして水溶液を得た。
(比較例2)
ポリ(4−ビニルフェノール)を80重量部の代わりに160重量部としたこと以外は実施例1と同様にして水系アレルゲン抑制化剤を作製しようとしたが、懸濁液が固まってしまい、水系アレルゲン抑制化剤を得ることができなかった。
(比較例3)
トールビーカ内に、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物としてポリ(4−ビニルフェノール)(丸善石油化学社製 商品名「マルカリンカーM」、重量平均分子量(Mw):5500)20重量部及びイオン交換水200重量部を供給して、トールビーカ内を攪拌機(特殊幾化社製 商品名「ホモミクサーMARK II 」)を用いて攪拌速度8000rpmにて30分間に亘って攪拌し、水中に球状のポリ(4−ビニルフェノール)微粒子をさせてなる懸濁液を作製した。
得られた懸濁液を室温にて30分間に亘って静置した後、沈殿物を除去し、更に、懸濁液中にダイユータンガム( CP Kelco U.S.Inc.製 商品名「ケルコクリート200」)が0.2重量%になるように供給して混合し水系アレルゲン抑制化剤を得た。なお、沈殿物の量は19.8重量部であった。上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は0.1重量%未満であった。
(比較例4)
非水溶性アレルゲン抑制有機化合物としてポリ(4−ビニルフェノール)(アルドリッチ社製、重量平均分子量(Mw):8000、溶解度:1以下)12重量部に24重量%の水酸化ナトリウム水溶液48重量部を加えて、水酸化ナトリウム水溶液中に非水溶性アレルゲン抑制有機化合物を溶解させてポリ(4−ビニルフェノール)水溶液を作製した後、このポリ(4−ビニルフェノール)水溶液中に、イオン交換水50重量部、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩(花王社製 商品名「デモールSNB」)15重量部及び18重量%の塩酸(pH1)50重量部を供給した上で、ポリ(4−ビニルフェノール)水溶液を攪拌機(特殊幾化社製 商品名「ホモミクサーMARK II 」)を用いて攪拌速度8000rpmにて45分間に亘って攪拌し、水中に球状のポリ(4−ビニルフェノール)微粒子を析出、分散させ、更に、18重量%の塩酸をポリ(4−ビニルフェノール)水溶液中に加えて、pHが8.3の水系アレルゲン抑制化剤を得た。なお、水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は6.8重量%であり、特殊芳香族スルホン酸ホルマリン縮合物のナトリウム塩は、ポリ(4−ビニルフェノール)に対して125.0重量%含有されており、水酸化ナトリウムと塩酸との中和反応によって生成した塩化ナトリウムは水系アレルゲン抑制化剤中に12.1重量%含有されていた。
(比較例5)
比較例1で得られた水溶液を不織布(綿:80重量%、ポリエステル繊維:20重量%、目付:100g/m2 )に40マイクロリットル/cm2 となるように噴霧し、50℃で15時間に亘って放置して乾燥させ清拭シートを得た。
(比較例6)
塩化ナトリウムを添加しなかったこと以外は、実施例4と同様にして水系アレルゲン抑制化剤を得た。上記水系アレルゲン抑制化剤中におけるポリ(4−ビニルフェノール)の濃度は2.7重量%であり、ポリスチレンスルホン酸塩型高分子界面活性剤はポリ(4−ビニルフェノール)に対して24.0重量%含有されていた。
得られた水系アレルゲン抑制化剤中における非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の微粒子の平均粒径及び体積を上述の要領にて測定すると共に、水系アレルゲン抑制化剤及び水溶液の長期保存性(塩析出及び腐敗性)、アレルゲン抑制能、アレルゲン抑制率、耐光性及び耐窒素酸化物性を下記に示した要領にて測定し、その結果を表1〜4に示した。
〔長期保存性〕
(塩析の評価)
実施例1、2,4〜7、比較例1,3,4,6で得られた水系アレルゲン抑制化剤又は水溶液を37℃で2週間に亘って保管した後、水系アレルゲン抑制化剤又は水溶液中における塩の析出の有無を目視観察し、塩が析出しているものを塩析あり、塩が析出していないものを塩析なしとした。
(腐敗性の評価)
実施例1、2,4〜7、比較例1,3,4,6で得られた水系アレルゲン抑制化剤又は水溶液を37℃で2週間に亘って保管した後、水系アレルゲン抑制化剤又は水溶液をポテトデキストロース培養液を用いて重量%換算で10倍に希釈した。次に、この希釈した水系アレルゲン抑制化剤又は水溶液100マイクロリットルをポテトデキストロース寒天培地に塗布し、37℃にて3日間に亘って培養し菌の繁殖の有無を目視観察した。菌が繁殖した場合を腐敗性あり、繁殖しなかった場合を腐敗性なしとした。
(アレルゲン抑制能1)
アレルゲンの冷結乾燥粉末(コスモ・バイオ社製 商品名「Mite Extract-Dp」 )をタンパク量が10ng/ミリリットルになるようにリン酸バッファー(pH7.6)に溶解させてアレルゲン溶液を作製した。
次に、アレルゲン溶液を試験管ミキサーを用いて攪拌しながら、実施例1、2,4〜7、比較例4,6の水系アレルゲン抑制化剤については、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の濃度が2重量%になるように希釈した液を用い、比較例1,3については希釈することなく用い、水系アレルゲン抑制化剤又は水溶液100マイクロリットルをアレルゲン溶液1ミリリットルに添加して37℃で2時間に亘って振とうした。
続いて、アレルゲン溶液100マイクロリットルをアレルゲン測定具(シントーファイン社製 商品名「マイティーチェッカー」)に添加してアレルゲン性を評価した。そして、アレルゲン測定具の発色度合いを目視観察して下記の通り評価した。
4・・・アレルゲンタンパク濃度:8ng/ミリリットル
3・・・アレルゲンタンパク濃度:4ng/ミリリットル
2・・・アレルゲンタンパク濃度:2ng/ミリリットル
1・・・アレルゲンタンパク濃度:1ng/ミリリットル
(アレルゲン抑制能2)
アレルゲンの冷結乾燥粉末(コスモ・バイオ社製 商品名「Mite Extract-Df」 )をタンパク量が10ng/ミリリットルになるようにリン酸バッファー(pH7.6)に溶解させてアレルゲン溶液を作製した。
次に、アレルゲン溶液を試験管ミキサーを用いて攪拌しながら、実施例2,4〜7の水系アレルゲン抑制化剤については、非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の濃度が2重量%になるように希釈した液を用い、比較例1,3については希釈することなく用い、水系アレルゲン抑制化剤又は水溶液100マイクロリットルをアレルゲン溶液1ミリリットルに添加して37℃で2時間に亘って振とうした。
続いて、アレルゲン溶液100マイクロリットルをアレルゲン測定具(シントーファイン社製 商品名「マイティーチェッカー」)に添加してアレルゲン性を評価した。そして、アレルゲン測定具の発色度合いを目視観察して下記の通り評価した。なお、発色が濃いほどアレルゲンが溶液中に濃い濃度で存在している。
4・・・濃く、太くはっきりとしたラインが観測された。
3・・・ラインであることがはっきりとわかる。
2・・・うっすらと発色しているのがわかる。
1・・・全く発色していない。
(ダニのアレルゲン抑制率)
実施例3及び比較例5で作製された清拭シートから一辺が10cmの平面正方形状の試験片を各清拭シートごとに5枚づつ切り出した。そして、エチルアルコール90重量部及び精製水10重量部を混合してなる液に塵ゴミ(Der p1アレルゲン:10μg/g含有)1重量部を分散させてなるアレルゲン溶液を作製し、このアレルゲン溶液を各試験片に5ミリリットルづつ振り撒いた後、50℃のオーブンで5分間乾燥させた。
各試験片について、乾燥直後のアレルゲン量(W1 )と、25℃、相対湿度60%の恒温恒湿槽内に15時間放置した後のアレルゲン量(W2 )を下記の方法により測定し、アレルゲン抑制率を下記式に基づいて算出した。なお、各清拭シートごとに、5枚の試験片のアレルゲン抑制率の相加平均値を求め、この相加平均値をアレルゲン抑制率とした。
アレルゲン抑制率(%)=100×(1−W2 /W1 )
各試験片のアレルゲン量の測定は下記の要領で行った。先ず、アレルゲンを含有させた試験片を15ミリリットルのガラス試験管に丸めて入れ、ガラス試験管に10ミリリットルの抽出液(リン酸バッファー(pH7.35)に1重量%のBSAと0.05重量%のポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレートを加えたもの)を供給した。
しかる後、ガラス試験管を20分間に亘ってよく振とうした後、直ちに抽出液を採取した。得られた抽出液中のアレルゲン量を、ELISAキット(LCDアレルギー研究所社製)を用いて測定し、1m2 当たりのDer p1量に換算した。
(スギ花粉のアレルゲン抑制率)
実施例3及び比較例5で作製された清拭シートから一辺が10cmの平面正方形状の試験片を各清拭シートごとに5枚づつ切り出した。そして、採取したスギ花粉を0.125Mの重炭酸アンモニウムで抽出し、得られた抽出液のCryj1濃度が40g/ミリリットルとなるように、リン酸バッファー溶液(pH:7.6)で希釈してアレルゲン溶液とした。
このアレルゲン溶液10ミリリットル中に各試験片を丸めて入れ、37℃で1時間に亘って震とうした後、20時間に亘って静かに放置した。そして、アレルゲン溶液から測定液を抽出して、この測定液中のアレルゲン量をELISAキット(LCDアレルギー研究所社製)を用いて測定し、Cryj1量(W3 )(ng/ミリリットル)を求め、アレルゲン抑制率を下記式に基づいて算出した。なお、各清拭シートごとに、5枚の試験片のアレルゲン抑制率の相加平均値を求め、この相加平均値をアレルゲン抑制率とした。
アレルゲン抑制率(%)=100×(1−W3 )
(耐光性)
実施例2,4〜7の各水系アレルゲン抑制化剤を非水溶性アレルゲン抑制有機化合物の濃度が2重量%になるように水で希釈した液に綿布(かなきん3号:JIS L0803準拠品)を1分間に亘って浸漬した後、ピックアップ率が100%となるようにマングルを用いて絞り、続いて、綿布を120℃で3分間に亘って乾燥してアレルゲン抑制加工布を得た。なお、ピックアップ率は下記式により算出した。
ピックアップ率(%)=100×(浸漬後の綿布重量−浸漬前の綿布重量)
/浸漬前の綿布重量
次に、アレルゲン抑制加工布から一辺が5cmの平面正方形状の試験片を切り出し、この試験片を紫外線照射器(スガ試験器社製 商品名「スーパーキセノンウェザーメータSX−75」)内に配設し、しかる後、上記試験片に紫外線を放射照度150W/m2 、ブラックパネル温度63℃の条件下にて24時間に亘って照射した。
そして、紫外線を照射する前の試験片を標準試験片とし、この標準試験片に対する試験片の変色の程度を下記基準に基づいて評価した。
0・・・変化なし
1・・・僅かに変色あり(標準試験片と比較して着色がわかるレベル)
2・・・少し着色あり(標準試験片と比較しなくても何となく着色がわかるレベル)
3・・・着色あり(着色がわかるレベル)
4・・・顕著な着色あり(はっきりと着色がわかるレベル)
(耐窒素酸化物性)
上記耐候性の評価の時と同様の要領で作製したアレルゲン抑制加工布の耐窒素酸化物性をJIS L0855に準拠して測定し、グレースケールに基づいて黄変度合いを評価した。