ところで、自動車等の車両では、通常、アイドリング時、中速走行時、高速走行時等の走行状況の変化に応じて、上下方向に沿って入力する振動の周波数が広い範囲で変化する。このため、特許文献1の防振装置を車両におけるエンジンマウントとして適用した場合には、上下方向に沿って入力する振動が、第1のオリフィスの断面積及び路長に対応する共振周波数よりも高い周波数を有するもの(高周波域振動)となることがある。
しかしながら、特許文献1の防振装置では、上下方向に沿って入力する振動が高周波域振動になると、この上下方向に沿った振動に対応する第1のオリフィスが目詰まり状態となって、上液室(受圧液室)内の液圧が上昇することにより、高周波域振動に対する装置の動ばね定数が高くなる現象が生じるので、高周波域振動を効果的に吸収できなくなる。
本発明の目的は、上記事実を考慮して、装置の軸方向及び軸直角方向に沿って入力する共振周波数付近の振動を効果的に吸収できることに加え、軸方向に沿って入力する高周波域振動も効果的に吸収できる防振装置を提供することにある。
上記目的を達成するため、本発明の請求項1に係る防振装置は、振動発生部及び振動受部の一方に連結され、略筒状に形成された第1の取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結され、前記第1の取付部材の内周側に略同軸的に配置された第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置され、第1の取付部材と第2の取付部材とを弾性的に連結したゴム製の弾性体と、前記第1の取付部材の内周側であって、前記第2の取付部材の軸方向外側に配設されると共に、内壁の少なくとも一部が前記弾性体により形成され、液体が充填された第1の受圧液室と、液体が充填され、液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされた副液室と、前記第1の受圧液室と前記副液室とを互いに連通させて液体を流通可能とする第1の制限通路と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配設されると共に、内壁の少なくとも一部が前記弾性体により形成され、液体が充填された複数の第2の受圧液室と、前記複数の第2の受圧液室をそれぞれ前記副液室に連通させて複数の第2の受圧液室と副液室との間で液体を流通可能とする複数の第2の制限通路と、前記第1の受圧液室と前記副液室との間に配置されて、前記受圧液室及び前記副液室の内壁面の一部をそれぞれ形成した内部隔壁と、前記内部隔壁の内部に設けられた収納室と、前記収納室を前記第1の受圧液室に連通させるように前記内部隔壁に形成された第1の開口部と、前記収納室を前記副液室に連通させるように前記内部隔壁に形成された第2の開口部と、前記収納室内に配置され、前記第1の取付部材又は第2の取付部材への振動入力時に、前記第1の受圧液室の前記副液室に対する液圧変化に伴って、前記第1の開口部及び前記第2の開口部を交互に開閉するように前記収納室内で往復運動し、前記収納室を通じた前記受圧液室と前記副液室との間の液体流通を制御する流通制御板と、を有することを特徴とする。
本発明の請求項1に係る防振装置の作用を以下に説明する。
請求項1に係る防振装置では、基本的に、第1及び第2の取付部材の何れか一方に振動発生部側から振動が入力すると、この入力振動により第1の取付部材と第2の取付部材との間に配置された弾性体が弾性変形し、この弾性体の吸振作用によって振動が吸収され、振動受け部側へ伝達される振動が低減される。このとき、入力振動が装置の軸方向と略一致する主振幅方向に沿って振幅する振動であっても、軸直角方向と略一致する副振幅方向に沿って振幅する振動の何れでもあっても弾性体の吸振作用により吸収される。
また請求項1に係る防振装置では、第1の取付部材の内周側であって、第2の取付部材の軸方向外側に配設された第1の受圧液室が第1の制限通路を通して副液室に連通することにより、振動発生部側から主振幅方向に沿った振動が入力すると、弾性体が主振幅方向に沿って弾性変形すると共に第1の受圧液室の内容積を拡縮させるので、第1の制限通路を通して第1の受圧液室と副液室とを液体が相互に流通する。このとき、第1の制限通路における路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗を主振幅方向に沿って入力する振動の周波数に対応するように設定(チューニング)しておけば、第1の制限通路を通して第1の受圧液室と副液室との間を、入力振動に同期して第1の受圧液室と副液室との間を行き来する液体に共振現象(液柱共振)が生じるので、この液柱共振により主振幅方向に沿った入力振動を効果的に吸収できる。
また請求項1に係る防振装置では、第2の受圧液室が第1の取付部材と第2の取付部材との間に配設されているが、主振幅方向に沿った振動の入力時に、弾性体が主振幅方向に沿って弾性変形すると、この弾性体の弾性変形に伴って第2の受圧液室が変形すると共に、第2の受圧液室の内容積が増減することから、第2の制限通路を通して第2の受圧液室と副液室とを液体が行き来する。
このとき、主振幅方向に沿って入力する振動の周波数が、第2の制限通路における路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗に対応する値になっていれば、第2の制限通路を通して第2の受圧液室と副液室との間を行き来する液体にも液柱共振が生じるので、この第2の制限通路における液柱共振によっても主振幅方向に沿って入力する振動を効果的に吸収できる。すなわち、第1の制限通路及び第2の制限通路の双方で液柱共振が生じることにより、第1の制限通路のみで液柱共振が生じる場合と比較し、主振幅方向に沿って入力する振動に対する吸収能力を増加でき、又は吸収可能となる振動の周波数範囲を広げることができる。
また請求項1に係る防振装置では、第1の取付部材と第2の取付部材との間に配設された第2の受圧液室が、第2の制限通路を通して副液室に連通することにより、副振幅方向に沿った振動が入力すると、弾性体が副振幅方向に沿って弾性変形すると共に、第2の受圧液室の内容積を拡縮させるので、第2の制限通路を通して第2の受圧液室と副液室とを液体が行き来する。
このとき、第2の制限通路における路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗を副振幅方向に沿って入力する振動の周波数に対応するように設定(チューニング)しておけば、第2の制限通路を通して第2の受圧液室と副液室との間を行き来する液体に共振現象が生じるので、この液体の共振現象に伴う圧力変化及び粘性抵抗によって副振幅方向に沿った入力振動も効果的に吸収できる。
また請求項1に係る防振装置では、収納室内に配置された流通制御板が、第1の取付部材又は第2の取付部材への振動入力時に、第1の受圧液室の副液室に対する液圧変化に伴って、第1の開口部及び前記第2の開口部を交互に開閉するように収納室内で往復運動し、収納室を通じた受圧液室と副液室との間の液体流通を制御することにより、主振幅方向に沿って入力する振動の周波数が所定の共振周波数よりも高く、その振幅が小さい場合には、第1の制限通路が目詰まり状態となり第1の制限通路に液体が流れ難くなるが、この入力振動に同期し、流通制御板が第1の開口部及び第2の開口部を交互に開閉することにより、収納室を通して第1の受圧液室と副液室との間で液体を流通させることにより、第1の受圧液室内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができ、高周波域振動の入力時も弾性体の動ばね定数を低く維持し、弾性体の弾性変形等により高周波域振動を効果的に吸収できる。
また本発明の請求項2に係る防振装置は、振動発生部及び振動受部の一方に連結され、略筒状に形成された第1の取付部材と、振動発生部及び振動受部の他方に連結され、前記第1の取付部材の内周側に配置された第2の取付部材と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配置され、第1の取付部材と第2の取付部材とを弾性的に連結したゴム製の弾性体と、前記第1の取付部材の内周側であって、前記第2の取付部材の軸方向外側に配設されると共に、内壁の少なくとも一部が前記弾性体により形成され、液体が充填された第1の受圧液室と、液体が充填され、液圧変化に応じて内容積が拡縮可能とされた副液室と、前記第1の受圧液室と前記副液室とを互いに連通させて液体を流通可能とする第1の制限通路と、前記第1の取付部材と前記第2の取付部材との間に配設されると共に、内壁の少なくとも一部が前記弾性体により形成され、液体が充填された複数の第2の受圧液室と、前記複数の第2の受圧液室をそれぞれ前記副液室に連通させて複数の第2の受圧液室と副液室との間で液体を流通可能とする複数の第2の制限通路と、前記第1の受圧液室内に面して設けられ、前記第1の受圧液室内の液圧変化に伴って該第1の受圧液室の内容積を拡縮するように弾性変形するメンブラン部材と、を有することを特徴とする。
本発明の請求項2に係る防振装置の作用を以下に説明する。
請求項2に係る防振装置では、第1及び第2の取付部材の何れか一方に振動発生部側から振動が入力すると、この入力振動により第1の取付部材と第2の取付部材との間に配置された弾性体が弾性変形し、この弾性体の吸振作用によって振動が吸収され、振動受け部側へ伝達される振動が低減される。
また請求項2に係る防振装置では、請求項1に係る防振装置と同様に、主振幅方向に沿って入力する振動が第1の制限通路及び第2の制限通路における液柱共振により効果的に吸収できると共に、副振幅方向に沿って入力する振動が第2の制限通路における液柱共振により効果的に吸収できる。
また請求項2に係る防振装置では、第1の受圧液室内に面して設けられたメンブラン部材が、第1の受圧液室内の液圧変化に伴って第1の受圧液室の内容積を拡縮するように弾性変形することにより、主振幅方向に沿って入力する振動の周波数が所定の共振周波数よりも高く、その振幅が小さい場合には、第1の制限通路が目詰まり状態となり第1の制限通路に液体が流れ難くなるが、この入力振動に同期し、メンブラン部材が弾性変形して第1の受圧液室内の液圧上昇を抑制するので、第1の受圧液室内の液圧上昇に伴う装置の動ばね定数の上昇を抑えることができ、高周波域振動の入力時も装置の動ばね定数を低く維持し、弾性体の弾性変形により高周波域振動を効果的に吸収できる。
ここで、請求項1に係る防振装置と請求項2に係る防振装置とを比較すると、請求項1に係る防振装置では、主振幅方向に沿った振動の入力時に、流通制御板が収納室内で往復運動(振動)すると共に、流通制御板が収納室の内壁面に衝突して打音が発生することがあるが、請求項2に係る防振装置では、主振幅方向に沿った振動入力時に、メンブラン部材からは打音等の異音が発生することがない。
一方、請求項2に係る防振装置では、主振幅方向に沿った振動入力時に、メンブラン部材が第1の受圧液室の内容積を拡縮するように弾性変形することから、共振周波数の振動入力時に、ポンプ力が低下して第1の制限通路における液柱共振の強度が低下するが、請求項1に係る防振装置では、共振周波数の振動入力時には、流通制御板により収納室を通じた第1の受圧液室と副液室との間の液体流通を阻止できるので、ポンプ力の低下により第1の制限通路における液柱共振の強度が低下する現象が殆ど生じない。
また本発明の請求項3に係る防振装置は、請求項2記載の防振装置において、前記第1の受圧液室と前記副液室との間に配置されて、前記受圧液室及び前記副液室の内壁面の一部をそれぞれ形成する内部隔壁を有し、前記メンブラン部材を、前記内部隔壁に配置して、該内部隔壁により前記第1の受圧液室内に面するように支持したことを特徴とする。
また本発明の請求項4に係る防振装置は、請求項3記載の防振装置において、前記内部隔壁に、一端部が前記第1の受圧液室内へ面して開口する筒状の支持部を設け、前記メンブラン部材により前記支持部の一端部を閉塞したことを特徴とする。
また本発明の請求項5に係る防振装置は、請求項3又は4記載の防振装置において、前記内部隔壁に、前記メンブラン部材を介して前記第2の受圧液室と隣接する補助受圧液室を設けると共に、前記補助受圧液室と前記副液室とを互いに連通する第3の制限通路を設けたことを特徴とする。
また本発明の請求項6に係る防振装置は、請求項5記載の防振装置において、前記第3の制限通路における液体の流通抵抗を、前記第1の制限通路及び前記第2の制限通路における液体の流通抵抗よりも小さくしたことを特徴とする。
以上説明したように本発明の防振装置によれば、装置の軸方向及び軸直角方向に沿って入力する共振周波数付近の振動を効果的に吸収できることに加え、軸方向に沿って入力する高周波域振動も効果的に吸収できる。
以下、本発明の実施形態に係る防振装置について図面を参照して説明する。
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る防振装置について説明する。
図1には本発明の第1の実施形態に係る防振装置が示されている。この防振装置10は、例えば、自動車におけるエンジンマウントとして用いられるものであり、振動受部である車体上に振動発生部となるエンジンを支持する。なお、図中、符号Sは装置の軸心を示しており、この軸心Sに沿った方向を装置の軸方向として以下の説明を行う。
図1に示されるように、防振装置10は、略円柱状に形成された装置本体12と、この装置本体12を車体側へ連結固定するためのブラケット14とを備えている。ブラケット14には、円筒状のホルダ16が形成されると共に、このホルダ16の下端部から径方向へ延出する一対の脚部18が一体的に形成されている。これら一対の脚部18の先端部には、それぞれ車体側との連結用の取付穴19がそれぞれ軸方向へ貫通している。またホルダ16の下端部には、内周側へ屈曲された段差部20が一体的に形成されている。
装置本体12には、その外周側に軸方向両端部がそれぞれ開口した薄肉円筒状の外筒24が第1の取付部材として設けられると共に、この外筒24の内周側に略円柱状に形成された取付金具26が第2の取付部材として同軸的に配置されている。外筒24の下端部には、内周側に屈曲されて段差部28が形成されると共に、この段差部28を介して上部側よりも小径の円筒状とされた小径部30が一体的に形成されている。外筒24は、その段差部28がホルダ16の段差部20へ当接するようにホルダ16内に嵌挿されている。このとき、ホルダ16全体が内周側へ縮径されるようにかしめられることにより、ブラケット14内に装置本体12が固定される。
ここで、防振装置10を車体側へ連結する際には、一対の脚部18の取付穴19にそれぞれボルト(図示省略)を挿入し、その先端部を車体側に設けられたボルト穴へねじ込むことより、防振装置10がブラケット14及びボルトを介して車体側へ締結固定される。また取付金具26には、その上面部分に軸心Sに沿って上方へ突出するボルト軸32が立設されており、このボルト軸32を介して取付金具26が車両のエンジン側に連結固定される。
防振装置10には、外筒24の内周面に薄膜状に形成されたゴム製の被覆部34が加硫接着されると共に、被覆部34と一体成形されたダイヤフラム36が小径部30の内周側に加硫接着されている。ダイヤフラム36は上方へ向って凸状に湾曲した略椀状に形成されており、後述する副液室72内に充填された液体の圧力変化に応じて副液室72の内容積を拡縮するように軸方向に沿って弾性変形可能とされている。
防振装置10には、外筒24の内周側に下端側から上端側へ向って順に、スペーサ部材38、第1仕切部材40、第2仕切部材42及び中間筒44がそれぞれ嵌挿されている。また防振装置10には、中間筒44と取付金具26との間にゴム製のゴム弾性体22が配置されている。ゴム弾性体22は全体として肉厚円筒状に形成されており、その内周面及び外周面が中間筒44の内周面及び取付金具26の外周面にそれぞれ加硫接着されている。これにより、取付金具26と中間筒44とはゴム弾性体22により弾性的に連結される。
スペーサ部材38は、外筒24の内径に対応する外径を有する円筒状に形成されており、被覆部34を介して外筒24の内周側へ嵌挿され、その下端部が段差部28へ突き当てられている。外筒24内には、スペーサ部材38の上側に第1仕切部材40が嵌挿されている。第1仕切部材40は、内周側が外周側よりも肉厚とされた円板状に形成されており、その外周面下端部には外周側へ延出するフランジ状の延出部50が一体的に形成されている。第1仕切部材40は内周側がオリフィス形成部52とされており、このオリフィス形成部52の上面部分には、軸心Sを中心とする周方向に沿って溝部54が1周近くに亘って形成されている。溝部54の一端部には、オリフィス形成部52の下面まで貫通する連通穴56が穿設されている。
オリフィス形成部52には、溝部54の内周側に円形の凹部58が形成されており、この凹部58の底板部には、オリフィス形成部52の下面まで貫通する複数の開口部60が形成されている。第1仕切部材40には、オリフィス形成部52の上面部分に円板状の閉止板62が固着されており、この閉止板62は、溝部54及び収納室70の上面側から閉止するようにオリフィス形成部52に接着、ねじ止め等により固着されている。また閉止板62には、溝部54の他端部に対向する部位に連通穴64が穿設されると共に、凹部58に面する部位に複数の開口部65が形成されている。
ここで、オリフィス形成部52における連通穴56及び溝部54と閉止板62の連通穴64は、後述する第1受圧液室76と副液室72とを連通させる制限通路である第1オリフィス66を形成している。また、閉止板62により上面側が閉止されたオリフィス形成部52の凹部58は、ゴム製の流通制御板68を収納する収納室70として構成されている。流通制御板68は、肉厚が略一定とされた円板状に形成されており、その肉厚が収納室70の軸方向に沿った厚さよりも所定長だけ短くされると共に、外径が収納室70の内径よりも若干短されている。これにより、流通制御板68は、その肉厚と収納室70の厚さとの差の範囲で軸方向に沿って往復移動(振動)可能となる。
第1仕切部材40は、その延出部50の下面外周部がスペーサ部材38の上端部へ当接するように外筒24内へ嵌挿されている。これにより、外筒24内の下部側にはダイヤフラム36及び第1仕切部材40により外部から区画された空間が形成され、この空間にはエチレングリコール等の液体が満たされて副液室72とされる。
一方、ゴム弾性体22の下面中央部には略円錐台状の凹部74が形成されており、この凹部74内には下面側からオリフィス形成部52が挿入されている。またゴム弾性体22下面における凹部58の外周縁部には、第1仕切部材40の延出部50が全周に亘って圧接している。これにより、第1仕切部材40は、凹部74内の下面側を閉止して凹部74内に外部から区画された空間を形成する。この空間には、副液室72と同一の液体が満たされて第1受圧液室76とされる。第1受圧液室76と副液室72とは第1オリフィス66により互いに連通している。ここで、第1オリフィス66の路長及び断面積は、シェイク振動の周波数(8〜15Hz)に対応するように設定(チューニング)されている。
外筒24内には、第1仕切部材40の延出部50の上側に第2仕切部材42が嵌挿されている。図2に示されるように、第2仕切部材42は肉厚円筒状に形成されており、その外径が外筒24の内径に対応する寸法とされている。外筒24の内周側へ嵌挿された第2仕切部材42は、その下面部を延出部50の上面側へ当接させると共に、外周面を外筒24の内周面に加硫接着された被覆部34へ圧接させている。
第2仕切部材42には、図3に示されるように、外周面に1周近くに亘ってスパイラル方向に沿って延在する第1外周溝80が及び第2外周溝81がそれぞれ形成されている。また第2仕切部材42には、第1外周溝80の一端部から上方へ貫通する上側連通口82と、第1外周溝80の他端部から下方へ貫通する下側連通口84とが形成されると共に、第2外周溝81の一端部から上方へ貫通する上側連通口83と、第2外周溝81の他端部から下方へ貫通する下側連通口85とが形成されている。第1仕切部材40の延出部50には、図1に示すように、外周端から内周側へ向って下側切欠部86が下側連通口84に面するように形成されると共に、この下側切欠部86とは略180°位相が異なる部位に外周端から内周側へ向って下側切欠部87が下側連通口85に面するように形成されている。これらの下側切欠部86,87は、それぞれ下側連通口84及び下側連通口85を副液室72に連通させている。
図1に示されるように、中間筒44には、上部側に大径の円筒状の大径部88が形成されると共に、この大径部88の下端部から内周側へ延出する段差部90を介して大径部88よりも小径の円筒状の小径部92が一体的に形成されている。ここで、大径部88は外筒24の内径に対応する外径を有しており、小径部92は第2仕切部材42の内径に対応する外径を有している。中間筒44は、小径部92の外周面を第2仕切部材42の内周面に当接させると共に、被覆部34を介して大径部88の外周面を外筒24の内周面上端部へ圧接させている。また中間筒44は、段差部90を第2仕切部材42の上面部に当接させている。これにより、第2仕切部材42は段差部90とで第1仕切部材40の延出部50との間で軸方向への移動が拘束される。また段差部90には、外周端から内周側へ向って第2仕切部材42の上側連通口82及び上側連通口83にそれぞれ対向する部位に上側切欠部94及び上側切欠部95が形成されている。
ゴム弾性体22には、大径部88の内周側の部分に第1空洞部96及び第2空洞部98が凹状に形成されている。第1空洞部96及び第2空洞部98は、ゴム弾性体22の径方向に沿った一端部及び他端部にそれぞれ配置されており、その軸方向に沿った断面形状が略半円状とされている。また空洞部96,98は、図4に示されるように、径方向に沿った断面形状が内周側から外周側へ向って幅広となる略扇状に形成されている。これにより、ゴム弾性体22には、第1空洞部96と第2空洞部98との間に内周側から外周側へ向って徐々に幅広となる隔壁部100が形成される。また中間筒44の大径部88には、図1に示されるように、第1空洞部96と第2空洞部98にそれぞれ面して周方向へ細長い略長方形の第1開口部110及び第2開口部112が形成されている。
第1空洞部96及び第2空洞部98は、それぞれ外周側が被覆部34を介して外筒24の内周面により閉塞される。これにより、第1空洞部96及び第2空洞部98内には外部から区画された空間が形成されることとなり、第1空洞部96内の空間はエチレングリコール、シリコンオイル等の液体が満たされて第2受圧液室102Aとされ、また第2空洞部98内の空間もエチレングリコール、シリコンオイル等の液体が満たされて第2受圧液室102Bとされる。
ここで、第2仕切部材42の外周溝80は、その外周側が被覆部34を介して外筒24の内周面により閉塞される。この外周側が閉塞された外周溝80は、中間筒44の上側切欠部94、連通穴56,64及び第1仕切部材40の下側切欠部86と共に副液室72と第2受圧液室102Aとを互いに連通させる第2オリフィス108Aを構成する。この第2オリフィス108Aは、第2受圧液室102Aと副液室72との間に液体を相互に流通可能としている。
防振装置10では、第2受圧液室102A,102Bと副液室72とを連通する第2オリフィス108A,108Bの路長及び断面積が、主振幅方向に沿った振動に対してはシェイク振動の周波数(8〜15Hz)に対応するように設定(チューニング)されると共に、副振幅方向に沿った振動に対しては5Hz〜20Hzの周波数範囲から選択された特定の周波数に対応するように設定(チューニング)されている。
なお、防振装置10では、第1オリフィス66及び第2オリフィス108A,108Bの主振幅方向に沿った振動に対しては共振周波数は、必ずしも一致させる必要なく、例えば、第1オリフィス66を10Hz未満の周波数を有するバウンズ振動に対応するようにチューニングすると共に、第2オリフィス108A,108Bを10Hz〜15Hzの周波数を有するピッチング振動に対応するようにチューニングしても良い。
図1に示されるように、ゴム弾性体22には、その上端部に一方の第2受圧液室102Aを装置外部の空間から区画する隔壁部114Aが一体的に形成されると共に、他方の第2受圧液室102Bを装置外部の空間から区画する隔壁部114Bが一体的に形成されている。これらの隔壁部114A,114Bは、それぞれ内周側の端部が取付金具26の外周面に加硫接着されると共に、外周側の端部が中間筒44の内周面に加硫接着されている。隔壁部114A,114Bは、その径方向に沿った断面形状が、装置外部の空間へ向って凸状に膨出するような湾曲形状とされている。
また第2仕切部材42の外周溝81は、その外周側が被覆部34を介して外筒24の内周面により閉塞される。この外周側が閉塞された外周溝81は、中間筒44の上側切欠部95、連通穴56,64及び第1仕切部材40の下側切欠部87と共に副液室72と第2受圧液室102Bとを互いに連通させる第2オリフィス108Bを構成する。この第2オリフィス108Bは、第2受圧液室102Bと副液室72との間に液体を相互に流通可能としている。また第2オリフィス108Bは、その路長及び断面積が第1オリフィス66と等しい周波数の振動に対応するようにチューニングされている。
防振装置10では、ゴム弾性体22が径方向における取付金具26を介して第2受圧液室102A及び第2受圧液室102Bが配列された方向(第2の容積拡縮方向)へ弾性変形すると、第2受圧液室102A及び第2受圧液室102Bの内容積がそれぞれ拡縮する。なお、本実施形態の防振装置10は、車両に装着された状態で、前記第2の容積拡縮方向が後述する副振幅方向と実質的に一致するように取付方向が調整される。
防振装置10では、スペーサ部材38、第1仕切部材40、第2仕切部材42並びに、ゴム弾性体22により連結された取付金具26及び中間筒44が外筒24内における所定位置に嵌挿されると、外筒24全体を縮径するように内周側へかしめることにより、スペーサ部材38、第1仕切部材40、第2仕切部材42及び中間筒44を外筒24に対して固定する。これにより、装置本体12の組立てが完了し、この装置本体12は、前述したようにブラケット14のホルダ16内へ嵌挿され、かしめ固定される。
次に、上記のように構成された本実施形態に係る防振装置10の作用を説明する。防振装置10では、取付金具26に連結されたエンジンが作動すると、エンジンからの振動が取付金具26を介してゴム弾性体22に伝達される。このとき、ゴム弾性体22は吸振主体として作用し、ゴム弾性体22の変形に伴う吸振作用により入力振動が吸収される。
このとき、エンジンから入力する主要な振動としては、エンジン内のピストンがシリンダ内で往復移動することにより発生する振動(主振動)と、エンジン内のクランクシャフトの回転速度が変化することにより生じる振動(副振動)とが挙げられる。エンジンが直列型の場合には、前記主振動は、その振幅方向(主振幅方向)が車両の上下方向と略一致するものとなり、また前記副振動は、その振幅方向(副振幅方向)が主振動の振幅方向とは直交する車両の前後方向(エンジンが横置き)又は左右方向(エンジンが縦置き)と略一致するものになる。ここで、ゴム弾性体22は、入力振動が主振幅方向に沿った主振動であっても、副振幅方向に沿った副振動であっても、その吸振作用により吸収可能である。
また防振装置10では、第1受圧液室76が外筒24の内周側であって、取付金具26の軸方向下側に配設されると共に、この第1受圧液室76が第1オリフィス66を通して副液室72に連通することにより、取付金具26にエンジン側から主振幅方向に沿った主振動が入力すると、ゴム弾性体22が主振幅方向に沿って弾性変形すると共に、第1受圧液室76の内容積を拡縮させるので、第1オリフィス66を通して第1受圧液室76と副液室72とを液体が相互に流通する。このとき、第1オリフィス66における路長及び断面積がシェイク振動の周波数に対応するように設定(チューニング)されていることから、入力する主振動がシェイク振動である場合には、第1オリフィス66を通して第1受圧液室76と副液室72との間を、入力振動に同期して相互に流通する液体に共振現象(液柱共振)が生じるので、この液柱共振に伴う液体の圧力変化及び粘性抵抗によって主振幅方向に沿って入力するシェイク振動を特に効果的に吸収できる。
また防振装置10では、入力する主振動の周波数がシェイク振動の周波数よりも高く、その振幅が小さい場合、例えば、入力振動がアイドル振動(例えば、20〜30Hz)で、その振幅が0.1mm〜0.2mm程度の場合や、こもり音(100〜500Hz)である場合には、シェイク振動に対応するようにチューニングされた第1オリフィス66が目詰まり状態となり、第1オリフィス66には液体が流れ難くなるが、流通制御板68が収納室70内で入力振動に同期して軸方向に沿って往復運動(振動)することにより、収納室70の内壁面と流通制御板68との隙間及び開口部60,65を通って第1受圧液室76と副液室72との間で液体が流通するので、第1受圧液室76内の液圧上昇に伴う動ばね定数の上昇を抑えることができ、このような高周波振動の入力時もゴム弾性体22の動ばね定数を低く維持し、このゴム弾性体22の弾性変形等により高周波振動も効果的に吸収できる。
なお、防振装置10では、入力する主振動の周波数がシェイク振動である場合には、第1受圧液室76内の液圧が副液室72内に液圧に対して実質的に変化(上昇又は低下)している時期には、流通制御板68が開口部60及び開口部65の一方を閉塞することにより、収納室70を通じて第1受圧液室76と副液室72との間で液体が流通することが阻止される。これにより、シェイク振動の入力時に、第1受圧液室76内の液体が収納室70を通して副液室72へリークし、第1オリフィス66における液柱共振の駆動力となる第1受圧液室76と副液室72との液圧差(ポンプ力)が低下することが防止される。
また防振装置10では、外筒24と取付金具26との間に配設された2個の第2受圧液室102A,102Bが、2本の第2オリフィス108A,108Bを通して副液室72にそれぞれ連通することにより、外筒24又は取付金具26にエンジン側から副振幅方向に沿った振動が入力すると、ゴム弾性体22が副振幅方向に沿って弾性変形すると共に、2個の第2受圧液室102A,102Bの内容積をそれぞれ拡縮させるので、これらの第2受圧液室102A,102Bと副液室72との間を、2本の第2オリフィス108A,108Bをそれぞれ通して液体が行き来する。
ここで、第2オリフィス108A,108Bにおける路長及び断面積が、副振幅方向に沿った振動に対しては5Hz〜20Hzから選択された特定の周波数に対応するように設定されているので、入力する副振動が特定の周波数を有する場合には、第2オリフィス108A,108Bを通して第2受圧液室102A,102Bと副液室72との間を相互に流通する液体に共振現象が生じるので、この液体の共振現象に伴う圧力変化、粘性抵抗等によって副振幅方向に沿って入力する特定周波数の振動を特に効果的に吸収できる。
また防振装置10では、第2受圧液室102A,102Bが外筒24と取付金具26との間に配設されているが、主振幅方向に沿った振動の入力時に、ゴム弾性体22が弾性変形すると、このゴム弾性体22の弾性変形に伴って第2受圧液室102A,102Bがそれぞれ変形すると共に、第2受圧液室102A,102Bの内容積が増減する。この時に第2受圧液室102A,102Bに生じる内容積の変化量は、第1受圧液室76の内容積の変化量に較べてかなり小さいものになるが、第2受圧液室102A,102Bには、ゴム弾性体22の変形量に対応する内容積の変化が生じる。
従って、防振装置10では、取付金具26にエンジン側から主振幅方向に沿った主振動が入力した場合にも、ゴム弾性体22が主振幅方向に沿って弾性変形すると共に、第2受圧液室102A,102Bの内容積が拡縮することから、第2オリフィス108A,108Bを通して第2受圧液室102A,102Bと副液室72とを液体が相互に流通する現象が生じる。
このとき、第2オリフィス108A,108Bにおける路長及び断面積が、主振幅方向に沿った振動に対してはシェイク振動の周波数に対応するように設定されているので、入力する副振動がシェイク振動の周波数を有する場合には、第2オリフィス108A,108Bを通して第2受圧液室102A,102Bと副液室72との間を相互に流通する液体に共振現象が生じるので、この液体の共振現象に伴う圧力変化、粘性抵抗等によって主振幅方向に沿って入力するピッチング振動を特に効果的に吸収できる。すなわち、防振装置10では、シェイク振動の入力時には、第1オリフィス66及び第2オリフィス108A,108Bの双方でそれぞれ液柱共振が生じることにより、第1オリフィス66のみで液柱共振が生じる場合と比較し、主振幅方向に沿って入力するシェイク振動に対する減衰が増大するので、シェイク振動に対する吸収能力を増加できる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態に係る防振装置について説明する。
図5には、本発明の第2の実施形態に係る防振装置が示されている。なお、本実施形態に係る防振装置120において、第1の実施形態に係る防振装置10と同一の部分には同一符号を付して説明を省略する。
本実施形態に係る防振装置120が第1の実施形態に係る防振装置10と異なる点は、外筒24の内周側に配置された第1仕切部材122が防振装置10における第1仕切部材40とは形状及び構造が異なる点である。
図5に示されるように、第1仕切部材122には、中央部に肉厚円板状のオリフィス形成部124が形成されると共に、このオリフィス形成部124の外周面上端部から外周側へ延出するフランジ状の延出部126が一体的に形成されている。また第1仕切部材122には、オリフィス形成部124の上面部に略円筒状の支持部材128が同軸的に固定されると共に、オリフィス形成部124の下面部に略円板状の閉止板130が固着されている。
オリフィス形成部124の下面部には、軸心Sを中心とする周方向に沿って溝部132が1周近くに亘って形成されている。溝部132の一端部には、オリフィス形成部124の上面まで貫通する上側連通穴134が形成されている。オリフィス形成部124には、溝部132の内周側に軸方向へ貫通する上側貫通穴136が形成されている。一方、閉止板130には、溝部132の他端部に対向する部位に下側連通穴138が穿設されると共に、中央部に軸方向へ貫通する下側貫通穴140が形成されている。
ここで、オリフィス形成部124の上側連通穴134及び溝部132と閉止板130の下側連通穴138は、第1受圧液室76と副液室72とを連通する制限通路である第1オリフィス142を形成している。またオリフィス形成部124の上側貫通穴136と閉止板130の下側貫通穴140は、後述する補助受圧液室152と副液室72とを連通する制限通路である第3オリフィス144を形成している。
支持部材128には、その上端側に円筒状の筒部146が設けられると共に、筒部146の下端部から外周側へ延出するフランジ部150が一体的に形成されており、フランジ部150が第1仕切部材122の上面部に固着されている。筒部146の内周側には、ゴム材料により円板状に形成されたメンブラン150が配置されている。メンブラン150は、その外周部が筒部146における内周面上端部に全周に亘って加硫接着されている。これにより、筒部146の内周側がメンブラン150により閉塞される。
筒部146の内周側には、メンブラン150とオリフィス形成部124の上面部との間に円板状の空間が形成され、この円板状の空間は副液室72と同一の液体が満たされて補助受圧液室152とされる。メンブラン150は、第1受圧液室76内の液圧が変化すると、この液圧変化に伴って第1受圧液室76の内容積及び補助受圧液室152の内容積をそれぞれ拡縮するように弾性変形する。このとき、メンブラン150は、第1受圧液室76の内容積及び補助受圧液室152の内容積を反対の方向へ、すなわち一方が拡大すると、他方が縮小するように変化させる。
ここで、第1オリフィス142の路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗は、第1の実施形態に係る第1オリフィス66と同様に、シェイク振動の周波数(例えば、8〜15Hz)に対応するように設定(チューニング)されている。また第3オリフィス144の路長及び断面積、すなわち液体の流通抵抗は、第1オリフィス142よりも小さくなっており、アイドル振動の周波数(例えば、20〜30Hz)に対応するように設定(チューニング)されている。
次に、上記のように構成された本実施形態に係る防振装置120の作用を説明する。防振装置120では、第1の実施形態に係る防振装置10と同様に、取付金具26に連結されたエンジンが作動すると、エンジンからの振動が取付金具26を介してゴム弾性体22に伝達される。このとき、ゴム弾性体22は吸振主体として作用し、ゴム弾性体22の変形に伴う吸振作用により入力振動が吸収される。
また防振装置120では、第1の実施形態に係る防振装置10と同様に、主振幅方向に沿った振動が入力し、その振動がシェイク振動である場合には、このシェイク振動の入力に伴って第1受圧液室76及び第2受圧液室102A,102Bの内容積がそれぞれ拡縮し、第1オリフィス66及び第2オリフィス108A,108Bを通って第1受圧液室76と副液室72及び第2受圧液室102A,102Bと副液室72との間を液体が行き来すると共に、第1オリフィス66及び第2オリフィス108A,108B内を流通する液体に液柱共振が生じるので、主振幅方向に沿って入力するシェイク振動を効果的に吸収できる。
また防振装置120では、第1の実施形態に係る防振装置10と同様に、副振幅方向に沿った振動が入力し、その振動がシェイク振動である場合には、このシェイク振動の入力に伴って2個の第2受圧液室102A,102Bの内容積がそれぞれ拡縮し、2本の第2オリフィス108A,108Bをそれぞれ通って第2受圧液室102A,102Bと副液室72との間を液体が行き来すると共に、第2オリフィス108A,108B内を流通する液体に液柱共振が生じるので、副振幅方向に沿って入力するシェイク振動を効果的に吸収できる。
また防振装置120では、第1受圧液室76内に面して設けられたメンブラン150が、第1受圧液室76内の液圧変化に伴って第1受圧液室76の内容積及び補助受圧液室152をそれぞれ拡縮するように弾性変形することにより、主振幅方向に沿って入力する振動の周波数がシェイク振動の周波数よりも高く、その振幅が小さい場合には、第1オリフィス66が目詰まり状態となり第1オリフィス66内に液体が流れ難くなるが、この高周波域振動の入力に同期し、メンブラン150が弾性変形して第1受圧液室76内の液圧上昇を抑制するので、第1受圧液室76内の液圧上昇に伴う装置の動ばね定数の上昇を抑えることができ、高周波域振動の入力時も装置の動ばね定数を低く維持し、ゴム弾性体22の弾性変形により高周波域振動を効果的に吸収できる。
また防振装置120では、主振幅方向に沿った高周波域振動の入力時に、メンブラン150が弾性変形すると共に、補助受圧液室152の内容積を拡縮することにより、第3オリフィス144を通って補助受圧液室152と副液室72との間を液体が行き来する。このとき、第3オリフィス144がアイドル振動に対応するようにチューニングされていることから、主振幅方向に沿って入力する高周波域振動がアイドル振動である場合には、第3オリフィス144内を流通する液体に液柱共振が発生し、この液柱共振により主振幅方向に沿って入力するアイドル振動を効果的に吸収できる。
図5に示される防振装置120では、第3オリフィス144をオリフィス形成部124及び閉止板130をそれぞれ軸方向へ貫通する上側貫通穴136及び下側貫通穴140により構成したが、このような構成の第3オリフィス144では、アイドル振動の周波数に対応させるために路長が不足することも考えられる。そのような場合には、図6に示されるように、第3オリフィス160を第1仕切部材122及び閉止板130に軸心Sを中心とする周方向へ延在するように形成することにより第3オリフィス160の路長を十分に長いものにできる。
図6に示される第1仕切部材122には、オリフィス形成部124の下面部における第1オリフィス66の内周側に軸心Sを中心とする周方向に沿って上側溝部162が形成されている。この上側溝部162の一端部には、オリフィス形成部124の上面まで貫通する上側連通穴164が形成されている。一方、閉止板130にも、その上面部に上側溝部162に面するように、軸心Sを中心とする周方向に沿って下側溝部166が亘って形成されると共に、この下側溝部166の他端部に閉止板130の下面まで貫通する下側連通穴168が形成されている。
図6に示される防振装置120では、第3オリフィス160が上側連通穴164、上側溝部162、下側溝部166及び下側連通穴168により構成されている。この結果、図5に示される第3オリフィス144と比較し、上側溝部162及び下側溝部166の周方向に沿った長さを増減することにより、第3オリフィス160の路長を広い範囲で調整できるので、アイドル振動に対応するように第3オリフィス160における液体の流通抵抗をチューニングすることが容易になる。
なお、以上説明した本発明の実施形態に係る防振装置10,120では、第2オリフィス108A,108Bの双方が共通の振動周波数域(例えば、6Hz〜10Hz)に対応するようにチューニングされていたが、第2オリフィス108Aが対応する振動周波数域と第2オリフィス108Bが対応する振動周波数域とがそれぞれ異なるものとなるように、第2オリフィス108A,108Bの路長及び断面積を互いに異なる寸法にしても良い。
また防振装置10,120では、ブラケット14を介して外筒24を車体側へ連結すると共に、取付金具26をエンジン側に連結していたが、これとは逆に、外筒24をエンジン側へ連結すると共に、取付金具26を車体側に連結するようにしても良い。