JP3785114B2 - 疲労特性に優れた非調質ボルトおよびその製造方法 - Google Patents

疲労特性に優れた非調質ボルトおよびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は引張強さ700MPa以上の非調質ボルトおよびその製造方法に関し、特にボルト成形に必要な冷間加工、切削加工のための球状化焼鈍やボルト成形後の強度確保のための焼入焼戻し処理が不要なものに関する。
【0002】
【従来の技術】
ボルトは、機械構造用炭素鋼や機械構造用合金鋼を圧延後、球状化焼鈍にて軟質とし、冷間鍛造により成形後、所望の強度、靭性に応じて熱処理し製造されているが、その特性向上や生産性向上を目的にボルト用鋼やその製造方法に関して種々の提案がなされている。
【0003】
特開昭62−280326号公報は靭性に優れた非調質ボルト用鋼に関し、低C鋼と圧延後の加速冷却の組合せによりフェライトと低温変態生成相(ベイナイト、マルテンサイト)とすることが記載されている。しかしながら、圧延冷却後の強度は高く加工率の高いボルトを製造することは困難である。
【0004】
特開平10−53813号公報は非調質ボルトの製造方法に関し、低C鋼と圧延後の高周波誘導加熱またはメッキ用塩浴の組合せにより微細で軟質なフェライト・パーライト組織とした鋼を伸線加工し、その後ボルトに成形することが記載され、成形方法として伸線加工時の減面率を高くし、バウシンガー効果で冷間鍛造時の変形抵抗を抑制することが提案されている。
【0005】
しかしながら、非調質ボルトの場合、ボルト軸部は、伸線加工の段階で、ほぼボルト強度にする必要があり、調質ボルトと比較して伸線材は高強度で、バウシンガー効果によっても変形抵抗を調質ボルトと同程度にすることは困難であった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、非調質ボルトに調質ボルトと同様の強度特性を付与しようとした場合、そのボルト成形時の冷間加工が困難となり、製品寸法に制約が生じることが多かった。
【0007】
そこで本発明では、調質ボルトと同じようにボルト成形時の冷間加工が可能で、且つ強度特性に劣らない非調質ボルトおよびその製造技術の提供を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は、ボルト成形時の冷間加工性およびボルトとしての強度の向上について種々検討を行い、冷間加工性向上のため、伸線材を低C鋼によりフェライト単相組織とし、その引張強さを調質ボルトの球状化処理材と同等まで低減させ、一方、強度向上はボルト成形後の微細析出物の析出強化を利用する方法を着想した。
【0009】
そして、従来にない全く新しい知見として微細析出物により降伏比の向上、疲労特性の向上が得られることを見出した。
【0010】
本発明は以上の知見を基に更に検討を加えてなされたものである。すなわち、本発明は、
1.フェライト単相組織を有し、フェライト相中に粒径が10nm未満の微細析出物が全析出物の90%以上、分散析出していることを特徴とする疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
【0011】
2.鋼組成が、質量%で、C≦0.1%、Si≦0.3%、Mn≦2%、Ti:0.03〜0.20%、Mo:0.05〜0.6%、残部Fe及び不可避的不純物よりなる1記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
【0012】
3.鋼組成として更に式(1)を満足することを特徴とする2記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5(1)
但し、各元素は含有量(質量%)とする。
【0013】
4.微細析出物がTi,Moの炭化物であることを特徴とする1乃至3のいずれか一つに記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
【0014】
5.鋼組成として、更に質量%で、Nb≦0.08%、V≦0.15%、W≦1.5%の一種または二種以上を含有する2記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
【0015】
6.鋼組成として更に式(2)を満足することを特徴とする請求項5記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}≦1.5 (2)
但し、各元素は含有量(質量%)とし、含まれないものは0とする。
【0016】
7.微細析出物がTiとMoとNb,V,Wの内の少なくとも一種とを含む炭化物であることを特徴とする5または6の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
【0017】
8.鋼組成として更に質量%で、S:0.03〜0.1%、Pb≦0.2%、Ca≦0.0050%、B≦0.0200%の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項2,3、5,6のいずれか一つに記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
【0018】
9.鋼組成が請求項2、3、5、6、のいずれか一つに記載の鋼を1100℃以上で加熱し、800℃以上で圧延を終了後、700〜550℃を0.5℃/sec超えで冷却し、その後、冷間によりボルト形状とした後、550〜700℃で10分以上保持することを特徴とする疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルトの製造方法。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明のミクロ組織、成分組成および製造条件について以下に詳細に説明する。
【0020】
1.ミクロ組織
本発明ボルトはフェライト単相組織に粒径10nm未満の微細析出物を含む組織とする。フェライト単相組織により優れた延性、靭性が得られ、微細析出物の析出により引張強さ700MPa以上の強度が得られる。
【0021】
析出処理後のボルトの組織がフェライト単相組織でない場合、例えばベイナイトやパーライトなどを含む組織の場合、Cが消費されるため10nm未満の微細析出物であっても十分な析出強化が得られず引張強さ700MPa以上の強度が得られない。
【0022】
本発明ボルトは、圧延後においてフェライト単相組織となる棒鋼を素材とし、その後、冷間伸線加工−ボルト成形後、析出処理して製造される。
【0023】
素材の棒鋼をフェライト単相組織とすることで、従来の調質ボルト製造における球状化処理材と同等の優れた冷間加工性が得られる。さらなる冷間加工性向上のため、フェライト単相組織の結晶粒径は50μm以下が望ましい。
【0024】
冷間加工後に析出処理した後においても、圧延後のフェライト単相組織は維持され、優れた延性、靭性が得られる。
【0025】
本発明においてフェライト単相組織とは、断面組織観察(200倍の光学顕微鏡組織観察)でフェライト面積率95%以上とし、好ましくは98%以上とする。
【0026】
冷間伸線加工−ボルト成形後の析出処理により、フェライト単相組織中に微細析出物を分散析出させた場合、圧延後の組織がフェライト単相組織であっても焼入れ焼戻し処理される調質ボルトと同等の優れた強度が得られる。
【0027】
本発明では微細析出物は粒径10nm未満とする。析出物の粒径が10nm以上の場合、ボルトとして必要な引張強さ700MPa以上が得られない。
【0028】
微細析出物の粒径は小さいほど強度向上に有効で、望ましくは5nm,更に望ましくは3nm以下とし、そのような微細析出物としてTi、Moを複合含有した炭化物、またそれらに更にNb,V,Wの一種または二種以上を含む炭化物が好ましい。
【0029】
これらの微細析出物の分布形態は特に規定しないが、母相中に均一分散(分散析出)することが望ましい。
【0030】
また、本発明において、微細析出物の大きさは、全析出物の90%以上で満足すれば良く、目的とする引張強さ700MPa以上が得られる。但し、10nm以上の大きさの析出物は析出物形成元素を消費し、強度に悪影響をあたえるため、50nm以下とすることが好ましい。
【0031】
上述した析出物とは別に少量のFe炭化物を含有しても本発明の効果は損なわれないが、平均粒径が1μm以上のFe炭化物を多量に含むと靭性を阻害するため、本発明においては含有されるFe炭化物の大きさ上限は1μm、含有率は全体の1%以下とすることが望ましい。
【0032】
微細析出物の全析出物に占める割合は、以下の方法により求める。電子顕微鏡試料を、ツインジェット法を用いた電解研磨法で作成し、加速電圧200kVで観察する。
【0033】
その際、微細析出物が母相に対して計測可能なコントラストになるように母相の結晶方位を制御し、析出物の数え落としを最低限にするために焦点を正焦点からずらしたデフォーカス法で観察を行う。
【0034】
また、析出物粒子の計測を行った領域の試料の厚さは電子エネルギー損失分光法を用いて、弾性散乱ピークと非弾性散乱ピーク強度を測定することで評価する。
【0035】
この方法により、粒子数の計測と試料厚さの計測を同じ領域について実行することができる。粒子数および粒子径の測定は試料の0.5×0.5μmの領域4箇所について行い、1μm2当たりに分布する析出物を粒径ごとの個数として算出する。
【0036】
この値と試料厚さから、析出物の1μm3当たりに分布する粒子径ごとの個数を算出し、径が10nm未満の析出物について、測定した全析出物に占める割合を算出する。
【0037】
非調質ボルトは自動車その他の輸送機材、建機用としては、引張強さ700MPa以上が要求されることが多く、また、700MPa未満では、既存の機械構造用鋼であっても球状化焼鈍処理など要せずに冷間伸線加工−ボルト成形が可能なため本発明ボルトは引張強さ700MPa以上とする。
【0038】
2.成分組成
本発明ボルトは上述したミクロ組織で目的とする性能が得られるが、以下の成分組成が好ましい。
【0039】

Cは0.1%超えで含有すると圧延後、フェライト単相組織が得られず、また微細析出物が粗大化し、強度が低下するため0.1%以下とすることが好ましい。
【0040】
Si
Siは冷間加工性を向上させるため添加する。0.3%をこえるとその効果が損なわれるようになるため、0.3%以下とする。
【0041】
Mn
Mnは強度、延性を向上させるため添加する。2%を超えるとその効果が損なわれるため2%以下とする。
【0042】
Ti
TiはMoとともにTi−Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させ、強度を向上させるため添加する。引張強度700MPa以上を確保するため0.03%以上とし、一方、0.20%を超えて添加すると析出物が粗大化し、強度が低下するため0.03〜0.20%とする。
【0043】
Mo
MoはTiとともにTi−Mo系炭化物を含む析出物を微細に析出させ、強度を向上させるため添加する。引張強度700MPa以上を確保するため0.05%以上とし、一方、0.6%を超えて添加するとベイナイト等の低温変態相を形成し、微細析出物による析出強化が不足し、強度が低下するため0.05〜0.6%とする。
【0044】
Moは拡散速度が遅く、Tiとともに析出する場合、析出物の成長速度が低下し、微細な析出物が得やすく顕著な析出強化が得られる。Ti−Mo系炭化物の場合、原子比で0.5≦Ti/Mo≦1.5であることが観察された。
【0045】
(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}
本パラメータは、析出物の大きさに影響を与えるもので、0.5以上、1.5以下とした場合、粒径10nm未満の微細析出物の形成が容易となり好ましい。より好ましくは0.7以上1.2以下である。
【0046】
更に、特性を向上させる場合、Nb,V,Wの一種または二種以上を添加することが好ましい。
【0047】
Nb
NbはTiと微細析出物を形成して強度向上に寄与する。また、組織を微細化し、結晶粒の整粒により延性を向上させる。0.08%を超えると過度に微細化し、延性が低下するため0.08%以下とする。
【0048】

VはTiと微細析出物を形成するが、0.15%を超えると析出物が粗大化するようになるため、0.15%以下とする。
【0049】

WはTiと微細析出物を形成するが、1.5%を超えると析出物が粗大化するようになるため、1.5%以下とする。
【0050】
これらの元素の添加においては、C,Ti,Mo,Nb,V,Wの原子比を規定することが炭化物の微細化に有効で(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}を0.5以上、1.5以下とした場合、粒径10nm未満の微細析出物の形成が容易となる。より微細化させるためには0.7以上1.2以下とすることが望ましい。
【0051】
Ti−Mo−(Nb,V,W)系炭化物の場合、原子比で(Ti+Nb+V)/(Mo+W)が0.5〜1.5以内であることが観察された。
【0052】
本発明鋼では上記添加元素以外の残部はFe及び不可避不純物とするが、脱酸剤としてAlを0.1%以下添加することができる。また、強度、延性を向上させる場合、Ni,Crの一種または二種をNi≦2%、Cr≦2%の範囲で添加しても構わない。冷間加工性を更に向上させる場合には、不可避不純物であるP,NをP≦0.040%、N≦0.0080%に規制することが望ましい。
【0053】
また、被削性を向上させる場合、S:0.03〜0.1%、Pb≦0.2%、Ca≦50ppm,B≦200ppmの一種または二種以上を添加することもできる。
【0054】
尚、これらの元素添加の有無により本発明の効果が損なわれることはない。
【0055】
3.製造条件
図1に本発明に係る非調質ボルトの概略製造工程図を示す。S1は棒線材製造工程、S2は搬送工程、S3は製品仕上げ過程で、棒線材製造工程(S1)で鋼塊を熱間圧延し棒線材とし、製品仕上げ過程(S3)で棒線材を冷間伸線し、ボルトフォーマ等のボルト製造機器でボルト形状とした後、析出処理で微細析出物を析出させ引張強さ700MPa以上とする。 以下に望ましい製造工程について詳細に説明する。
【0056】
圧延加熱温度
圧延加熱温度は1100℃以上とする。本発明では、圧延後、球状化処理をしない圧延ままの棒線材の冷間伸線加工−ボルト成形において、既存の調質ボルト用伸線材(例えばS45C)の球状化処理材と同等以上の加工性が得られるよう軟質化する必要があり、圧延時に溶解時から残存する炭化物を固溶させる。
【0057】
圧延加熱温度を1100℃未満とした場合、溶解時から残存するTi−Mo系炭化物等が固溶しないため1100℃以上とする。
【0058】
圧延終了温度
圧延終了温度は材質均一性に影響を与え、800℃未満では圧延荷重が高く真円度が劣化するため800℃以上とする。
【0059】
冷却速度
圧延終了後の冷却速度は冷却中に微細析出物を析出させないよう析出温度範囲の700〜550℃を微細析出物が得られる限界冷却速度である0.5℃/sec超えの速度で冷却する。
【0060】
析出処理
圧延材を冷間伸線加工−ボルト成形後、析出処理により引張強さ700MPa以上とする。析出処理においては母相をフェライト単相とし、強度向上に寄与する微細析出物を析出させることが必要で、加熱温度は550℃未満ではベイナイトが生成し、700℃を超えると析出物が粗大化するため550〜700℃とする。
【0061】
また、微細なTi,Moなどの炭化物を生成、析出させることが有効で該温度域において10分以上保持する。
【0062】
【実施例】
表1に示す組成の鋼(No.1〜11)について、伸線加工材の特性、ボルト成形性、およびボルト成形後の特性について調査した。
【0063】
供試鋼を150kg真空溶解炉にて溶製し、11mm径の線材に圧延した。No.1〜10は球状化焼鈍せずに冷間伸線加工で10.5mm径とし、従来材のNo.11は圧延後、球状化焼鈍し、その後冷間伸線加工で10.5mm径とした。
【0064】
圧延は鋼塊を1150℃に加熱して圧延を開始し、950℃にて終了後、3℃/secにて450℃まで冷却した後、巻き取りを行い、コイル形状とした。
【0065】
その後No.1〜10は球状化焼鈍せずに冷間伸線加工で10.5mm径とし、従来材のNo.11は圧延後、球状化焼鈍し、冷間伸線加工で10.5mm径とした。
【0066】
ボルトフォーマでボルト成形し、No.1〜10は、析出処理(525〜725℃に保持された炉で15分間保持)後、室温まで冷却した。No.11は析出処理せず焼入れ焼戻しを行った。
【0067】
伸線加工材から冷間据えこみ加工用の試験片(伸線ままの径,高さ/直径比:1.5)を採取し、同心円状溝突付きダイスを取りつけた拘束圧縮盤により圧縮加工時の変形抵抗、割れ発生限界加工率を平均歪速度0.01/secで調査した。また、引張試験を行った。
【0068】
変形抵抗は平均歪が1.5(圧下率70%)の荷重を拘束係数と変形前の初期面積で除して求めた。割れ発生限界加工率は実際に割れの発生した圧下率とした。
【0069】
尚、変形抵抗、割れ発生限界加工率はボルト加工時の圧造工具寿命、割れ発生不良率と相関があることが知られている。
【0070】
ボルトに成形後、割れ発生の有無を確認し、更にこれらのボルトからの切り出し試験片で引張試験、くさび引張試験(くさび角度15°)、疲労試験および組織観察を行った。
【0071】
疲労試験はサーボパルス型疲労試験機により、引張疲労試験(平均応力420MPa)で疲労限度を求めた。
【0072】
組織観察は断面を光学顕微鏡で観察するとともに、析出物を透過型電子顕微鏡(TEM)で観察し、その組成をエネルギー分散型X線分光装置(EDX)により求めた。
【0073】
表2に伸線加工材の特性、ボルト成形性を、表3にボルト特性を示す。No.1〜6が本発明例、No.7〜10が比較例、No.11が既存の調質ボルト用鋼(従来例)である。
【0074】
表から明らかなように、No.1〜6の圧延まま−冷間伸線加工材とNo.11の従来材の球状化処理−冷間伸線加工材は引張強さが同等で、変形抵抗、限界加工率および析出処理後の強度の全てにおいて従来材と同等の特性が得られ,ボルト成形時の割れも観察されなかった。
【0075】
また、ボルト成形後の引張強さ、くさび引張強さ、永久伸びは従来材と同じであるが、降伏比が高く、疲労強度に優れていた。
【0076】
No.7は析出加熱温度が本発明範囲外で高いため、析出処理後、フェライト+パーライト組織となり、また、析出物の粒径も大きいため引張強さが700MPa以下と本発明範囲外で、疲労強度も劣っている。
【0077】
No.8は析出加熱温度が本発明範囲外で低いため、析出処理後、ベイナイト組織となり、Cが固溶されたため、析出強化が不足し引張強さが700MPa以下と本発明範囲外で、降伏比が低く永久伸びも大きく、疲労強度に劣っている。
【0078】
No.9はCが本発明範囲外で高いため冷間伸線加工材の引張強さが高く、変形抵抗、限界加工率が従来材に及ばず、ボルト成形時に割れが観察された。また、析出処理後、フェライト・パーライト組織となり、析出物も大きく十分な析出強化が得られず、従来材より強度が低い。
【0079】
No.10は低Ti、Moのため、十分な炭化物が得られず、またCがパーライトになるために圧延ままの強度が高くなり、冷間加工性が悪くなる。また析出物は粗大化するので十分な析出強化が得られない。
【0080】
【表1】
Figure 0003785114
【0081】
【表2】
Figure 0003785114
【0082】
【表3】
Figure 0003785114
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、ボルト成形前の球状化処理や、ボルト成形後の焼入れ焼戻しを行うことなく、調質ボルトと同等の冷間伸線加工性、ボルト成形性を備え、且つ優れた疲労特性の引張強さ700MPa以上の非調質ボルトおよびその製造方法が得られ、産業上極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明ボルトの製造工程の一例を示す図。

Claims (9)

  1. フェライト単相組織を有し、フェライト相中に粒径が10nm未満の微細析出物が全析出物の90%以上、分散析出していることを特徴とする疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
  2. 鋼組成が、質量%で、C≦0.1%、Si≦0.3%、Mn≦2%、Ti:0.03〜0.20%、Mo:0.05〜0.6%、残部Fe及び不可避的不純物よりなる請求項1記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
  3. 鋼組成として更に式(1)を満足することを特徴とする請求項2記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
    0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)}≦1.5(1)
    但し、各元素は含有量(質量%)とする。
  4. 微細析出物がTi,Moの炭化物であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一つに記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
  5. 鋼組成として、更に質量%で、Nb≦0.08%、V≦0.15%、W≦1.5%の一種または二種以上を含有する請求項2記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
  6. 鋼組成として更に式(2)を満足することを特徴とする請求項5記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
    0.5≦(C/12)/{(Ti/48)+(Mo/96)+(Nb/93)+(V/51)+(W/184)}≦1.5 (2)
    但し、各元素は含有量(質量%)とし、含まれないものは0とする。
  7. 微細析出物がTiとMoとNb,V,Wの内の少なくとも一種とを含む炭化物であることを特徴とする請求項5または6の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
  8. 鋼組成として更に質量%で、S:0.03〜0.1%、Pb≦0.2%、Ca≦0.0050%、B≦0.0200%の一種または二種以上を含有することを特徴とする請求項2、3、5、6のいずれか一つに記載の疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルト。
  9. 鋼組成が請求項2、3、5、6、のいずれか一つに記載の鋼を1100℃以上で加熱し、800℃以上で圧延を終了後、700〜550℃を0.5℃/sec超えで冷却し、その後、冷間によりボルト形状とした後、550〜700℃で10分以上保持することを特徴とする疲労特性に優れた引張強さ700MPa以上の非調質ボルトの製造方法。
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