以下、図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について説明する。図2は、本発明の第1実施形態による内燃機関の制御装置1を概略的に示しており、同図に示すように、制御装置1は、後述するECU2や各種のセンサを備えている。
また、図1は、制御装置1を適用した内燃機関3を概略的に示しており、この内燃機関(以下「エンジン」という)3は、車両(図示せず)に駆動源として搭載されたディーゼルエンジンである。図1に示すように、エンジン3のシリンダヘッド3aには、吸気管4および排気管5が接続されるとともに、燃料噴射弁(以下「インジェクタ」という)6が、気筒3b内のピストン3cに臨むように取り付けられている。
このインジェクタ6は、コモンレールを介して、高圧ポンプおよび燃料タンク(いずれも図示せず)に順に接続されている。この高圧ポンプは、燃料タンクの燃料を、高圧に昇圧した後、コモンレールを介してインジェクタ6に送り、インジェクタ6はこの燃料を気筒3b内に噴射する。エンジン3では、この燃料噴射として、エンジン3の吸気行程中から圧縮行程中の任意の期間に燃料を噴射するパイロット噴射と、圧縮行程中に燃料を噴射するメイン噴射の双方が、実行される。また、パイロット噴射用およびメイン噴射用の燃料噴射量および燃料噴射時期は、ECU2によって制御される。以下、パイロット噴射用の燃料噴射時期および燃料噴射量をそれぞれ、「パイロット噴射時期」および「パイロット噴射量」といい、メイン噴射用の燃料噴射時期を「メイン噴射時期」という。なお、本実施形態では、パイロット噴射時期およびメイン噴射時期はそれぞれ、パイロット噴射およびメイン噴射の終了タイミングとして定義されている。
また、インジェクタ6には、筒内圧センサ31が一体に取り付けられている。この筒内圧センサ31は、リング状の圧電素子で構成されており、気筒3b内の圧力の変化量(以下「筒内圧変化量」という)DPVを表す検出信号をECU2に出力する。ECU2は、この筒内圧変化量DPVに基づき、気筒3b内の圧力(以下「筒内圧」という)を後述するようにして算出する。
さらに、エンジン3のクランクシャフト3dには、マグネットロータ32aが取り付けられており、このマグネットロータ32aとMREピックアップ32bによって、クランク角センサ32が構成されている。このクランク角センサ32は、クランクシャフト3dの回転に伴い、パルス信号であるCRK信号およびTDC信号をECU2に出力する。このCRK信号は、所定のクランク角(例えば1゜)ごとに出力される。ECU2は、CRK信号に基づき、エンジン3の回転数(以下「エンジン回転数」という)NEを求める。TDC信号は、ピストン3cが吸気行程開始時のTDC(上死点)付近の所定クランク角度位置にあることを表す信号である。
また、吸気管4には、過給装置7が設けられており、過給装置7は、ターボチャージャで構成された過給機8と、これに連結されたアクチュエータ9と、ベーン開度制御弁10を備えている。
過給機8は、吸気管4に設けられた回転自在のコンプレッサブレード8aと、排気管5に設けられた回転自在のタービンブレード8bおよび複数の回動自在の可変ベーン8c(2つのみ図示)と、これらのブレード8a,8bを一体に連結するシャフト8dとを有している。過給機8は、排気管5内の排ガスによりタービンブレード8bが回転駆動されるのに伴い、これと一体のコンプレッサブレード8aが回転駆動されることによって、吸気管4内の吸入空気を加圧する過給動作を行う。
アクチュエータ9は、負圧によって作動するダイアフラム式のものであり、各可変ベーン8cに機械的に連結されている。アクチュエータ9には、負圧ポンプから負圧供給通路(いずれも図示せず)を介して負圧が供給され、この負圧供給通路の途中に、ベーン開度制御弁10が設けられている。ベーン開度制御弁10は、電磁弁で構成されており、その開度がECU2からの駆動信号で制御されることにより、アクチュエータ9への供給負圧が変化し、それに伴い、可変ベーン8cの開度が変化することにより、過給圧が制御される。
さらに、吸気管4の過給機8よりも下流側には、上流側から順に、水冷式のインタークーラ11とスロットル弁12が設けられている。このインタークーラ11は、過給装置7の過給動作により吸入空気の温度が上昇したときなどに、吸入空気を冷却するものである。上記のスロットル弁12には、例えば直流モータで構成されたアクチュエータ12aが接続されており、スロットル弁12の開度は、このアクチュエータ12aに供給される電流のデューティ比をECU2で制御することによって、制御される。
また、吸気管4には、インタークーラ11とスロットル弁12の間に過給圧センサ33が設けられている。この過給圧センサ33は、吸気管4内の過給圧PACTを検出し、その検出信号をECU2に出力する。
さらに、エンジン3には、EGR管14aおよびEGR制御弁14bを有するEGR装置14が設けられている。EGR管14aは、吸気管4と排気管5の間に、具体的には、吸気管4のスロットル弁12よりも下流側と排気管5の過給機8よりも上流側とをつなぐように接続されている。このEGR管14aを介して、エンジン3の排ガスの一部が吸気管4にEGRガスとして還流し、それにより、気筒3b内の燃焼温度が低下することによって、排ガス中のNOxが低減される。
上記のEGR制御弁14bは、EGR管14aに取り付けられたリニア電磁弁で構成されており、そのバルブリフト量が、ECU2からの駆動信号によってリニアに制御されることによって、EGRガスの量(以下、単に「EGRガス量」という)が制御される。EGR制御弁14bのバルブリフト量LACTは、バルブリフト量センサ34によって検出され、その検出信号はECU2に出力される。
また、EGR装置14にはEGRガスを冷却するためのEGR冷却装置15が設けられており、このEGR冷却装置15は、バイパス通路15aと、EGR通路切換弁15bと、EGR管14aのEGR制御弁14bよりも下流側に設けられたEGRクーラ15cを有している。このバイパス通路15aは、EGR管14aのEGR制御弁14bよりも下流側に、EGRクーラ15cをバイパスするように設けられており、上記のEGR通路切換弁15bはバイパス通路15aの分岐部に取り付けられている。EGR通路切換弁15bは、ECU2による制御によって、EGR管14aのEGR通路切換弁15bよりも下流側の部分を、EGR管14a側とバイパス通路15a側に選択的に切り換える。
以上により、EGR通路切換弁15bがバイパス通路15a側に切り換えられた場合には、EGRガスは、バイパス通路15aに通され、吸気管4に還流する。一方、逆側に切り換えられた場合には、EGRガスは、EGRクーラ15cで冷却された後、吸気管4に還流する。
また、排気管5には、排ガス流量センサ35が設けられており、この排ガス流量センサ35は、排ガスの流量(以下「排ガス流量」という)QEを検出し、その検出信号をECU2に出力する。さらに、ECU2には、アクセル開度センサ36から、アクセルペダル(図示せず)の操作量(以下「アクセル開度」という)APを表す検出信号が出力される。
ECU2は、I/Oインターフェース、CPU、RAMおよびROMなどからなるマイクロコンピュータで構成されている。前述した各種のセンサ31〜36からの検出信号はそれぞれ、I/OインターフェースでA/D変換や整形がなされた後、CPUに入力される。ECU2は、これらの入力信号に応じ、ROMに記憶された制御プログラムなどに従って、エンジン3の運転状態を判別するとともに、判別した運転状態に応じて、EGRガス量や、燃料噴射量、燃料噴射時期の制御を含むエンジン3の動作を制御する。
ECU2による制御の概要を述べると、ECU2は、エンジン3の動作を制御するための各種の制御用のパラメータを算出する(図3〜図5および図7)とともに、算出された各種の制御用のパラメータに応じ、EGRガス量、パイロット噴射、およびメイン噴射時期をそれぞれ制御する(図8、図9および図10)。また、エンジン3が過渡運転状態にあるか否かを判定する(図6)とともに、その判定結果にさらに応じて、メイン噴射時期を制御する。以下、ECU2で行われる各種の処理について、図3〜図10を参照しながら説明する。
図3は、各種の制御用のパラメータを算出するための制御用パラメータ算出処理を示している。本処理は、前述したCRK信号の発生に同期して、実行される。まず、ステップ1(「S1」と図示。以下同じ)では、検出された筒内圧変化量DPVを積分することによって、筒内圧Pθを算出する。次に、CRK信号に基づいて、筒内容積変化率dVθを算出する(ステップ2)。この筒内容積変化率dVθは、所定クランク角度当たりの気筒3b内の容積(シリンダヘッド3aとピストン3cで規定される気筒3b内の容積)の変化率である。
次いで、TDC信号およびCRK信号に基づいて、筒内容積Vθを算出する(ステップ3)。この筒内容積Vθは、そのときどきの気筒3b内の容積である。次に、CRK信号および筒内圧変化量DPVに応じ、筒内圧変化率dPθを算出する(ステップ4)。この筒内圧変化率dPθは、上記の所定クランク角度当たりの筒内容積Vθの変化率である。
次に、上記ステップ1〜4でそれぞれ算出された筒内圧Pθ、筒内容積変化率dVθ、筒内容積Vθおよび筒内圧変化率dPθを用い、気筒3b内における、所定クランク角度当たりの熱発生率dQθを、次式(1)によって算出する(ステップ5)。
dQθ=(κ・Pθ・1000・dVθ+dPθ・1000・Vθ)
/(κ−1) ……(1)
ここで、κは所定の比熱比であり、例えば1.34に設定されている。
次いで、気筒3b内における燃料の実際の着火時期(以下「実着火時期」という)TFACTを算出する(ステップ6)。この実着火時期TFACTは、次のようにして算出される。すなわち、上記ステップ5で算出された熱発生率dQθを積分することによって、気筒3b内における熱発生量を算出する。そして、前述したTDC信号およびCRK信号に応じ、エンジン3の1燃焼サイクル中において、算出された熱発生量がその総熱発生量の1/2になったときのクランク角度位置を、実着火時期TFACTとして算出する。
次に、エンジン3における図示平均有効圧力IMEPを算出し(ステップ7)、本処理を終了する。この図示平均有効圧力IMEPは、筒内圧変化量DPVを用い、本出願人が特開2006−52647号公報に開示した手法によって算出される。
図4は、実着火遅れSFACTなどを算出する着火遅れ算出処理を示している。本処理は、TDC信号の発生に同期して実行される。まず、ステップ11では、実着火遅れSFACTを算出する。この実着火遅れSFACTは、前述したメイン噴射時期から上記の実着火時期TFACTまでの期間(メイン噴射による燃料が着火するまでに要した時間)を、クランク角度で表したものであり、実着火時期TFACTから最終メイン噴射時期TMIOUTを減算することによって、算出される。この最終メイン噴射時期TMIOUTは、後述するように算出されるものであり、それに基づく駆動信号がインジェクタ6に出力されることによって、メイン噴射時期が制御される。なお、実着火遅れSFACTの算出には、前回の燃焼サイクルにおいて算出された実着火時期TFACTおよび最終メイン噴射時期TMIOUTが用いられる。以上により、実着火遅れSFACTは、前回の燃焼サイクルにおけるメイン噴射時期から実着火時期TFACTまでの実際の期間として、算出される。
次に、目標着火時期TFCMDから目標メイン噴射時期TMICMDを減算することによって、実着火遅れSFACTの目標値である目標着火遅れSFCMDを算出する(ステップ12)。これらの目標着火時期TFCMDおよび目標メイン噴射時期TMICMDはそれぞれ、実着火時期TFACTおよびメイン噴射時期の目標値であり、後述するように算出される。なお、本実施形態では、目標着火遅れSFCMDの算出に、実着火遅れSFACTと対応させるために、前回の燃焼サイクルにおいて算出された目標着火時期TFCMDおよび目標メイン噴射時期TMICMDが用いられるが、今回の燃焼サイクルにおいて算出されたTFCMD値およびTMICMD値を用いてもよい。
次いで、ステップ12で算出された目標着火遅れSFCMDと、ステップ11で算出された実着火遅れSFACTとの偏差(SFCMD−SFACT)を、着火遅れ偏差DSFとして算出し(ステップ13)、本処理を終了する。
図5は、着火遅れ偏差DSFの学習値GDSFを算出するためのDSF学習処理を示している。本処理は、TDC信号の発生に同期して実行される。まず、ステップ21では、過渡運転フラグF_TRAが「1」であるか否かを判別する。この過渡運転フラグF_TRAは、図6に示す過渡運転判定処理において、エンジン3が過渡運転状態にあると判定されているときに、「1」にセットされるものである。以下、この過渡運転判定処理について説明する。
図6のステップ31では、要求トルクPMCMDを図3の前記ステップ7で算出した図示平均有効圧力IMEPで除算することによって、トルク圧力比RTIを算出する。この要求トルクPMCMDは、エンジン3に要求されるトルクであり、図7のステップ41において、算出されたエンジン回転数NEと検出されたアクセル開度APに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。このマップでは、要求トルクPMCMDは、アクセル開度APが大きいほど、より大きな値に設定されている。
次に、ステップ31で算出されたトルク圧力比RTIが所定の上限値R_Hよりも小さく、かつ、所定の下限値R_Lよりも大きいか否かを判別する(ステップ32)。これらの上限値R_Hおよび下限値R_Lは、エンジン3が過渡運転状態にあるか否かを適切に判定できるように、実験などによりあらかじめ設定されている。
上記ステップ32の答がYESで、R_L<RTI<R_Hのときには、エンジン3が過渡運転状態にない(定常運転状態にある)と判定するとともに、そのことを表すために、過渡運転フラグF_TRAを「0」に設定し(ステップ33)、本処理を終了する。
一方、ステップ32の答がNOのときには、エンジン3が過渡運転状態にあると判定するとともに、そのことを表すために、過渡運転フラグF_TRAを「1」に設定し(ステップ34)、本処理を終了する。
図5に戻り、前記ステップ21の答がYESで、F_TRA=1のとき、すなわち、エンジン3が過渡運転状態にあるときには、学習値GDSFを算出せずに、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ21の答がNOで、エンジン3が過渡運転状態にないときには、前回の学習値GDSFの算出から所定時間TREFが経過したか否かを判別する(ステップ22)。
このステップ22の答がNOで、前回の学習値GDSFの算出から所定時間TREFが経過していないときには、学習値GDSFを算出せずに、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ22の答がYESのときには、所定の条件、すなわち、次の2つの条件(a)および(b)の双方が成立しているか否かを判別する(ステップ23)。
(a)目標EGRガス量EGRCMDと実EGRガス量EGRACTとの偏差がほぼ値0であること
(b)目標過給圧と検出された過給圧PACTとの偏差がほぼ値0であること
上記の目標EGRガス量EGRCMDは、EGRガス量の目標値であり、後述するようにして算出される。また、実EGRガス量EGRACTは、実際のEGRガス量の算出値であり、後述するようにして算出される。さらに、上記の目標過給圧は、過給圧PACTの目標値であり、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって算出される。
上記ステップ23の答がNOで、上述した所定の条件が成立していないときには、学習値GDSFを算出せずに、そのまま本処理を終了する。一方、ステップ21〜23の答がいずれもYESのときには、学習値GDSFを算出するための実行条件が成立しているとみなす。そして、学習値GDSFを記憶しているECU2のRAMから、そのときのエンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに対応する学習値GDSFを読み出し、その前回値GDSFZとして設定する(ステップ24)。次に、このステップ24で設定した前回値GDSFZと、図4の前記ステップ13で算出した着火遅れ偏差DSFを用い、次式(2)によって、今回の学習値GDSFを算出する(ステップ25)。
GDSF=GDSFZ+(DSF−GDSFZ)・K ……(2)
ここで、Kは値0よりも大きい所定の係数である。
次いで、上記ステップ25で算出された学習値GDSFを、そのときのエンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに対応させて、ECU2のRAMに記憶する(ステップ26)とともに、更新し、本処理を終了する。
図8は、EGRガス量を制御するためのEGR制御処理を示している。本処理は、所定時間(例えば10msec)ごとに実行される。まず、ステップ51では、検出されたバルブリフト量LACTおよび排ガス流量QEに応じ、所定のEGRACTマップ(図示せず)を検索することによって、前述した実EGRガス量EGRACTを算出する。このEGRACTマップは、バルブリフト量LACTおよび排ガス流量QEとEGRガス量の関係を実験などによりあらかじめ求め、マップ化したものである。
次に、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、所定のEGRCMDマップ(図示せず)を検索することによって、前述した目標EGRガス量EGRCMDを算出する(ステップ52)。このEGRCMDマップでは、目標EGRガス量EGRCMDは、適正な燃焼状態が得られるように、実験などによりあらかじめ設定されている。
次いで、ECU2のRAMから、そのときのエンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに対応する学習値GDSFを読み出す(ステップ53)。次に、このステップ53で読み出した学習値GDSFに応じ、所定のCEGRマップ(図示せず)を検索することによって、補正値CEGRを算出する(ステップ54)。このCEGRマップについては後述する。次いで、上記ステップ52で算出された目標EGRガス量EGRCMDに、ステップ54で算出された補正値CEGRを加算することによって、補正後目標EGRガス量CEGRCMDを算出する(ステップ55)。
次に、補正後目標EGRガス量CEGRCMDと、前記ステップ51で算出された実EGRガス量EGRACTとの偏差(CEGRCMD−EGRACT)を、EGR偏差DEGRとして算出する(ステップ56)。次いで、このステップ56で算出されたEGR偏差DEGRに応じ、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、最終EGRガス量EGROUTを算出し(ステップ57)、本処理を終了する。これに伴い、最終EGRガス量EGROUTに基づく駆動信号が、EGR制御弁14bに出力される。以上により、EGRガス量は、補正後目標EGRガス量CEGRCMDになるようにフィードバック制御される。
また、上記のCEGRマップは、第1CEGRマップおよび第2CEGRマップ(いずれも図示せず)で構成されている。この第1CEGRマップは、学習値GDSFが正値のとき、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも短い(期間的に短い)ときに用いられ、上記の第2CEGRマップは、学習値GDSFが負値のとき、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも長い(期間的に長い)ときに用いられる。第1CEGRマップでは、補正値CEGRは、学習値GDSFが大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、学習値GDSFが大きいほど、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも短いほど、気筒3b内における燃料の燃焼速度が高くなりすぎ、燃焼状態が適正ではないので、目標EGRガス量EGRCMDの増大補正によって、EGRガス量を増大させることで、燃焼速度を低下させ、燃焼を緩慢にし、それにより、適正な燃焼状態を得るためである。
また、第2CEGRマップでは、補正値CEGRは、負値である学習値GDSFの絶対値が大きいほど、より小さな値に設定されている。これは、学習値GDSFの絶対値が大きいほど、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも長いほど、燃料の燃焼速度が低くなりすぎ、燃焼状態が適正ではないので、目標EGRガス量EGRCMDの減少補正によって、EGRガス量を減少させることで、燃焼速度を上昇させ、それにより、適正な燃焼状態を得るためである。
図9は、前述したパイロット噴射量およびパイロット噴射時期を制御するためのパイロット噴射制御処理を示している。本処理は、TDC信号の発生に同期して実行される。まず、ステップ61では、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、所定のQPICMDマップ(図示せず)を検索することによって、パイロット噴射量の目標値である目標パイロット噴射量QPICMDを算出する。このQPICMDマップでは、目標パイロット噴射量QPICMDは、気筒3b内の温度を適切に高め、それにより、メイン噴射による燃料の適正な燃焼状態が得られるように、実験などによりあらかじめ設定されている。
次に、ECU2のRAMから、そのときのエンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに対応する学習値GDSFを読み出す(ステップ62)。次いで、このステップ62で読み出された学習値GDSFに応じ、所定のCQPIマップ(図示せず)を検索することによって、補正値CQPIを算出する(ステップ63)。このCQPIマップについては後述する。次に、このステップ63で算出された補正値CQPIを、上記ステップ61で算出された目標パイロット噴射量QPICMDに加算することによって、最終パイロット噴射量QPIOUTを算出する(ステップ64)。これに伴い、最終パイロット噴射量QPIOUTに基づく駆動信号がインジェクタ6に出力されることによって、パイロット噴射量は、最終パイロット噴射量QPIOUTになるように制御される。
また、上記のCQPIマップは、第1CQPIマップおよび第2CQPIマップ(いずれも図示せず)で構成されている。この第1CQPIマップは、学習値GDSFが正値のとき、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも短いときに用いられ、上記の第2CQPIマップは、学習値GDSFが負値のとき、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも長いときに用いられる。第1CQPIマップでは、補正値CQPIは、学習値GDSFが大きいほど、より小さな値に設定されている。これは、学習値GDSFが大きいほど、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも短いほど、燃料の燃焼速度が高くなりすぎ、燃焼状態が適正ではないので、目標パイロット噴射量QPICMDの減少補正によって、パイロット噴射量を減少させることにより、気筒3b内の温度を低下させることで、燃焼速度を低下させ、それにより、適正な燃焼状態を得るためである。
また、上記の第2CQPIマップでは、補正値CQPIは、負値である学習値GDSFの絶対値が大きいほど、より大きな値に設定されている。これは、学習値GDSFの絶対値が大きいほど、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも長いほど、燃料の燃焼速度が低くなりすぎ、燃焼状態が適正ではないので、目標パイロット噴射量QPICMDの増大補正により、パイロット噴射量を増大させることによって、気筒3b内の温度を上昇させることで、燃焼速度を上昇させ、それにより、適正な燃焼状態を得るためである。
次いで、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、所定のTPICMDマップ(図示せず)を検索することによって、パイロット噴射時期の目標値である目標パイロット噴射時期TPICMDを算出する(ステップ65)。このTPICMDマップでは、目標パイロット噴射時期TPICMDは、パイロット噴射による燃料を良好に燃焼させることによって、気筒3b内の温度を適切に高め、それにより、メイン噴射による燃料の適正な燃焼状態が得られるように、実験などによりあらかじめ設定されている。
次に、前記ステップ62で読み出された学習値GDSFに応じ、所定のCTPIマップ(図示せず)を検索することによって、補正値CTPIを算出する(ステップ66)。このCTPIマップについては後述する。次いで、上記ステップ65で算出された目標パイロット噴射時期TPICMDに、補正値CTPIを加算することによって、最終パイロット噴射時期TPIOUTを算出し(ステップ67)、本処理を終了する。これに伴い、最終パイロット噴射時期TPIOUTに基づく駆動信号がインジェクタ6に出力されることによって、パイロット噴射時期は、最終パイロット噴射時期TPIOUTになるように制御される。
また、上記のCTPIマップは、第1CTPIマップおよび第2CTPIマップ(いずれも図示せず)で構成されている。この第1CTPIマップは、学習値GDSFが正値のとき、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも短いときに用いられ、上記の第2CTPIマップは、学習値GDSFが負値のとき、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも長いときに用いられる。第1CTPIマップでは、補正値CTPIは、学習値GDSFが大きいほど、目標パイロット噴射時期TPICMDをより遅角側に補正するように設定されている。これは、学習値GDSFが大きいほど、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも短いほど、燃料の燃焼速度が高くなりすぎ、燃焼状態が適正ではないので、より遅角側へのパイロット噴射時期の制御によって、パイロット噴射による燃料を一気に燃焼させないことにより、気筒3b内の温度を低下させることで、燃焼速度を低下させ、それにより、適正な燃焼状態を得るためである。
また、第2CTPIマップでは、補正値CTPIは、負値である学習値GDSFの絶対値が大きいほど、目標パイロット噴射時期TPICMDをより進角側に補正するように設定されている。これは、学習値GDSFの絶対値が大きいほど、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも長いほど、燃料の燃焼速度が低くなりすぎ、燃焼状態が適正ではないので、より進角側へのパイロット噴射時期の制御によって、パイロット噴射による燃料を、予混合燃焼で一気に燃焼させることにより、気筒3b内の温度を上昇させることで、燃焼速度を上昇させ、それにより、適正な燃焼状態を得るためである。
図10は、前述したメイン噴射時期を制御するためのメイン噴射時期制御処理を示している。本処理は、TDC信号の発生に同期して実行される。まず、ステップ71では、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、所定のマップ(図示せず)を検索することによって、前述した目標着火時期TFCMDを算出する。このマップでは、目標着火時期TFCMDは、適正な燃焼状態が得られるように、実験などによりあらかじめ設定されている。
次に、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDに応じ、所定のTMICMDマップ(図示せず)を検索することによって、前述した目標メイン噴射時期TMICMDを算出する(ステップ72)。このTMICMDマップでは、目標メイン噴射時期TMICMDは、上述した目標着火時期TFCMDに対応して設定されており、実着火時期TFACTが目標着火時期TFCMDになるように、実験などによりあらかじめ設定されている。
次いで、図6の前記ステップ33または34で設定された過渡運転フラグF_TRAが「1」であるか否かを判別する(ステップ73)。この答がNOで、エンジン3が過渡運転状態にないときには、上記ステップ71で算出された目標着火時期TFCMDと、図3の前記ステップ6で算出された実着火時期TFACTとの偏差(TFCMD−TFACT)を、着火時期偏差DTFとして算出する(ステップ74)。
一方、上記ステップ73の答がYESで、エンジン3が過渡運転状態にあるときには、図4の前記ステップ13で算出された着火遅れ偏差DSFに応じ、所定のCTFマップ(図示せず)を検索することによって、補正値CTFを算出する(ステップ75)。このCTFマップについては後述する。次に、ステップ71で算出された目標着火時期TFCMDに、ステップ75で算出された補正値CTFを加算することによって、補正後目標着火時期CTFCMDを算出する(ステップ76)。次いで、このステップ76で算出された補正後目標着火時期CTFCMDと、実着火時期TFACTとの偏差(CTFCMD−TFACT)を、着火時期偏差DTFとして算出する(ステップ77)。
上記ステップ74または77に続くステップ78では、算出された着火時期偏差DTFに基づき、所定のフィードバック制御アルゴリズムによって、F/B補正値CMIを算出する(ステップ78)。次に、前記ステップ72で算出された目標メイン噴射時期TMICMDに、ステップ78で算出されたF/B補正値CMIを加算することによって、最終メイン噴射時期TMIOUTを算出し(ステップ79)、本処理を終了する。これに伴い、最終メイン噴射時期TMIOUTに基づく駆動信号が、インジェクタ6に出力される。これにより、メイン噴射時期が制御されることによって、実着火時期TFACTは、エンジン3の過渡運転時でないときには目標着火時期TFCMDになるように、過渡運転時には補正後目標着火時期CTFCMDになるように、それぞれフィードバック制御される。
また、エンジン3の過渡運転時に用いられる上記のCTFマップは、第1CTFマップおよび第2CTFマップ(いずれも図示せず)で構成されている。この第1CTFマップは、着火遅れ偏差DSFが正値のとき、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも短いときに用いられ、上記の第2CTFマップは、着火遅れ偏差DSFが負値のとき、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも長いときに用いられる。第1CTFマップでは、補正値CTFは、着火遅れ偏差DSFが大きいほど、目標着火時期TFCMDをより遅角側に補正するように設定されている。これは次の理由による。着火遅れ偏差DSFが大きいこと、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも短いことは、過渡運転に伴ってEGRガス量がその応答遅れで不足することにより、気筒3b内において燃料が燃焼しやすいという状況であることを表している。そのような状況において、前述したようにTFCMDマップの検索で設定された目標着火時期TFCMDをそのまま用いると、実着火時期TFACTが早くなりすぎることによって、適正な燃焼状態が得られない。このため、目標着火時期TFCMDをより遅角側に補正することによって、実着火時期TFACTを適切に遅らせることにより、適正な燃焼状態を得るためである。
また、第2CTFマップでは、補正値CTFは、負値である着火遅れ偏差DSFの絶対値が大きいほど、目標着火時期TFCMDをより進角側に補正するように設定されている。これは次の理由による。着火遅れ偏差DSFの絶対値が大きいこと、すなわち、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも長いことは、過渡運転に伴ってEGRガス量がその応答遅れで過剰になることにより、燃料が燃焼しにくいという状況であることを表している。そのような状況において、目標着火時期TFCMDをそのまま用いると、実着火時期TFACTが遅くなりすぎることによって、適正な燃焼状態が得られない。このため、目標着火時期TFCMDをより進角側に補正することによって、実着火時期TFACTを適切に進めることにより、適正な燃焼状態を得るためである。
また、本実施形態における各種の要素と本発明の各種の要素との対応関係は、次の通りである。すなわち、ECU2が、運転状態検出手段、EGRガス量制御手段、燃焼状態パラメータ検出手段、目標燃焼状態パラメータ設定手段、過渡運転判定手段、補正後目標燃焼状態パラメータ算出手段、燃料噴射時期補正手段、乖離度合パラメータ算出手段、学習手段、およびパイロット噴射制御手段に相当する。また、筒内圧センサ31が燃焼状態パラメータ検出手段に、クランク角センサ32およびアクセル開度センサ36が運転状態検出手段に、それぞれ相当する。
さらに、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDが検出された内燃機関の運転状態に、実EGRガス量EGRACTがEGRガスの量に、それぞれ相当する。また、実着火時期TFACTが燃焼状態パラメータおよび着火時期に、目標着火時期TFCMDが目標燃焼状態パラメータに、実着火遅れSFACTが燃焼状態パラメータおよび着火遅れ期間に、それぞれ相当する。さらに、目標着火遅れSFCMDが目標燃焼状態パラメータに、着火遅れ偏差DSFが燃焼状態パラメータとの比較結果および乖離度合パラメータに、補正後目標着火時期CTFCMDが補正後目標燃焼状態パラメータに、それぞれ相当する。また、目標メイン噴射時期TMICMDが気筒内への燃料の噴射時期およびメイン噴射の時期に、学習値GDSFが乖離度合パラメータの学習値に、所定時間TREFが所定期間に、それぞれ相当する。
以上のように、本実施形態によれば、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDを用いて算出された目標EGRガス量EGRCMDに応じて、EGRガス量が制御される(ステップ52、および55〜57)。これにより、EGRガス量を、エンジン3の運転状態に応じた適正な大きさに制御することができる。また、エンジン3の過渡運転時に、着火遅れ偏差DSFに基づき、目標着火時期TFCMDを補正することで、補正後目標着火時期CTFCMDが算出される(ステップ75および76)。さらに、過渡運転時に、実着火時期TFACTが補正後目標着火時期CTFCMDになるように算出したF/B補正値CMIによって目標メイン噴射時期TMICMDを補正するとともに、それにより算出した最終メイン噴射時期TMIOUTに基づいて、メイン噴射時期が制御される(ステップ77〜79)。
また、上記の着火遅れ偏差DSFに基づく目標着火時期TFCMDの補正において、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも短いほど、すなわち、EGRガス量の応答遅れにより燃料が燃焼しやすいほど、目標着火時期TFCMDがより遅角側に補正される。それに加え、実着火遅れSFACTが目標着火遅れSFCMDよりも長いほど、すなわち、EGRガス量の応答遅れにより燃料が燃焼しにくいほど、目標着火時期TFCMDがより進角側に補正される。以上により、EGRガス量の応答遅れによる燃焼状態への影響を補償でき、気筒3b内における燃料の適正な燃焼状態を得ることができる。その結果、エンジン3の過渡運転時において、燃焼音を抑制できるとともに、良好な燃費および排ガス特性を得ることができる。さらに、上記のようなメイン噴射時期の制御に、気筒3b内における燃料の燃焼状態と密接な相関関係を有する実着火時期TFACTを用いるので、過渡運転時において、燃焼音を確実に抑制できるとともに、良好な燃費および排ガス特性を確実に得ることができる。
また、着火遅れ偏差DSFの学習値GDSFにさらに応じて、EGRガス量が制御される(ステップ54〜57)。これにより、燃料の性状や、EGR装置14、EGRクーラ15c、インタークーラ11、および各種のセンサの動作(出力)特性、湿度などの環境要因の変化による影響によって適正な燃焼状態が得られないような場合でも、この影響を補償でき、それにより、目標着火遅れSFCMDで表されるような適正な燃焼状態が得られるので、燃焼音を抑制できるとともに、良好な燃費および排ガス特性を得ることができる。特に、EGRガス量の制御に用いられる実EGRガス量EGRACTの算出を、吸気管4に設けられたエアーフローセンサで検出した吸入空気量に応じて行う場合には、このようなエアーフローセンサの出力特性は特に変化しやすく、それによる燃焼状態への影響が顕著になる。このような場合に、上記の学習値GDSFに応じたEGRガス量の制御を行うことによって、エアーフローセンサの出力特性の変化による影響を補償でき、上述した効果を有効に得ることができる。
さらに、パイロット噴射時期およびパイロット噴射量の双方が、学習値GDSFに応じて制御される(ステップ63、64、66および67)。このため、燃料の性状などの変化による影響によって適正な燃焼状態が得られないような場合でも、この影響をより適切に補償することができる。それにより、目標着火遅れSFCMDで表されるような適正な燃焼状態が確実に得られるので、燃焼音を確実に抑制できるとともに、良好な燃費および排ガス特性を確実に得ることができる。
また、学習値GDSFを、その前回値GDSFZと今回の着火遅れ偏差DSFに基づいて算出する(ステップ24、25)ので、筒内圧センサ31で検出された筒内圧変化量DPVに含まれうるノイズや実際の燃焼状態の変動などによって、実着火遅れTFACTが一時的に変動した場合でも、それによる影響を抑制しながら、EGRガス量、パイロット噴射時期およびパイロット噴射量を制御することができる。
さらに、エンジン3の過渡運転時(ステップ21:YES)に、学習値GDSFの算出が禁止される。したがって、この学習値GDSFに応じたEGRガス量などの制御によって燃料の性状などの変化による影響をより適切に補償することができ、ひいては、燃焼音をより確実に抑制できるとともに、良好な燃費および排ガス特性をより確実に得ることができる。また、前回の学習値GDSFの算出から所定時間TREFが経過していないとき(ステップ22:NO)に、学習値GDSFの算出が禁止される。したがって、EGR装置14の動作特性などの変化による影響を適切に補償しながら、ECU2の演算負荷を軽減することができる。
なお、本発明は、説明した実施形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。例えば、実施形態では、本発明における内燃機関の運転状態として、エンジン回転数NEおよび要求トルクPMCMDを用いているが、検出されたエンジン3の出力トルクや、気筒3bに吸入される新気の量などを用いてもよい。また、本発明における燃焼状態パラメータとして、実着火時期TFACTおよび実着火遅れSFACTの双方を用いているが、それらの一方を用いてもよい。それに加え、両者TFACT,SFACTの少なくとも一方に代えて、または、この少なくとも一方とともに、気筒3b内における燃料の燃焼状態を表すものであれば、例えば、筒内圧変化率dPθを用いてもよい。さらに、実施形態では、目標着火時期TFCMDの補正と、EGRガス量、ポスト噴射時期およびポスト噴射量の制御に、着火遅れ偏差DSFを用いているが、目標着火遅れSFCMDと実着火遅れSFACTとの比較結果や乖離度合を表すパラメータであれば、例えば、両者SFCMDおよびSFACTの一方に対する他方の比を用いてもよい。
また、実施形態では、学習値GDSFの算出を、前記式(2)によって行っているが、この算出手法はこれに限らず、例えば、今回の着火遅れ偏差DSFと学習値の前回値GDSFZとの加重平均によって算出してもよい。それに加え、学習値GDSFの算出に、今回から複数回前にそれぞれ算出された複数の学習値GDSFまたは着火遅れ偏差DSFを用いてもよい。さらに、実施形態では、学習値GDSFに応じてパイロット噴射時期およびパイロット噴射量の双方を制御しているが、両者の一方を制御してもよい。また、実施形態では、パイロット噴射時期およびメイン噴射時期はそれぞれ、パイロット噴射およびメイン噴射の終了タイミングであるが、開始タイミングでもよい。
さらに、実施形態では、前回の算出から所定時間TREFが経過していないという条件が成立しているときに、学習値GDSFの算出を禁止しているが、この所定時間TREFに関する条件に代えて、例えば、前回の算出から、車両の走行距離が所定距離に達していないという条件を用いることもまた、本発明の範囲内である。
さらに、エンジン3の過渡運転状態の判定について、実施形態におけるトルク圧力比RTIに基づく条件に代えて、または、これとともに、次の(A)〜(F)の条件の少なくとも1つが成立しているときに、エンジン3が過渡運転状態にあると判定してもよい。
(A)アクセル開度APの変化量の絶対値が所定値よりも大きいこと
(B)メイン噴射による燃料量の変化量の絶対値が所定値よりも大きいこと
(C)車両の速度の変化量の絶対値が所定値よりも大きいこと
(D)エンジン回転数NEの変化量の絶対値が所定値よりも大きいこと
(E)要求トルクPMCMDの変化量の絶対値が所定値よりも大きいこと
また、実施形態では、EGR装置14は、EGR管14aによってEGRガスを吸気管4に還流させる、いわゆる外部EGR装置であるが、既燃ガスの一部をEGRガスとして気筒3b内に存在させられるものであれば、他の装置でもよい。例えば、エンジン3の吸気弁や排気弁のバルブタイミングの制御により気筒3b内に既燃ガスを残留させる、いわゆる内部EGR装置でもよい。さらに、実施形態では、本発明における内燃機関としてのエンジン3は、車両を駆動するためのディーゼルエンジンであるが、気筒内に燃料が噴射されるとともに、ピストンによる圧縮によって燃料が自己着火するエンジンであれば、例えば、ガソリンエンジンや、液化石油ガスを燃料とするエンジン、クランク軸を鉛直方向に配置した船外機などのような船舶推進機用エンジン、その他、産業用の各種のエンジンでもよい。その他、本発明の趣旨の範囲内で、細部の構成を適宜、変更することが可能である。