JP4914682B2 - 車両用発進クラッチのトルク推定および制御装置 - Google Patents

車両用発進クラッチのトルク推定および制御装置 Download PDF

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Description

この発明は車両用発進クラッチのトルク推定および制御装置に関し、より詳しくは車両に搭載された無段変速機の発進クラッチが伝達するトルクを推定すると共に、推定された伝達トルクに基づいて発進クラッチの伝達トルクを目標値に制御するようにした制御装置に関する。
車両用の無段変速機は、通例、出力側に発進クラッチを備え、その発進クラッチの動作を制御することで円滑な発進や停車を図っており、その例として特許文献1記載の技術を挙げることができる。
特許文献1記載の技術にあっては、トルクセンサを用いることなく、弾性カップリング(デュアルマスフライホイール)の前後の回転数を検出し、そのねじれ位相角を求めることで、演算によってクラッチトルクを算出すると共に、算出値に基づいて発進クラッチのクリープトルクを目標値に制御している。
特開平09−145502号公報
しかしながら、特許文献1記載の技術は回転数算出用のハードウェアを必要とすると共に、デュアルマスフライホイールの使用を前提とし、さらにトルク算出が可能な範囲はデュアルマスフライホイールのバネ特性が線形な範囲に限られるため、微小トルク領域でしかトルクを算出できない不都合があった。
またフライホイールの回転は、本来の使用目的から自明なように振動的であるため、トルク算出の際、強度の平均化が必要となって検出の応答性に欠けることから、特許文献1記載の技術は動的な制御には用いることができず、静的な微小トルク範囲、例えばクリープ領域を制御対象とするしかなかった。
従って、この発明の目的は上記した不都合を解消し、追加のハードウェアを必要とすることなく、使用領域の全域にわたって発進クラッチが伝達するトルクを精度良く高応答に推定するようにした車両用発進クラッチのトルク推定装置を提供することにある。
この発明の第2の目的は、推定された伝達トルクに基づき、使用領域の全域において発進クラッチが伝達するトルクを目標値に追従させるフィードバック制御を行うようにした車両用発進クラッチの制御装置を提供することにある。
上記の目的を達成するために、請求項1項にあっては、内燃機関と、前記内燃機関に接続される無段変速機と、前記無段変速機に接続される駆動輪と、前記無段変速機と駆動輪の間に介挿されて前記無段変速機から前記駆動輪へのトルク伝達を断接する発進クラッチとを備えると共に、前記発進クラッチが伝達するトルクを推定する車両用発進クラッチのトルク推定装置において、前記内燃機関から前記駆動輪に至るドライブトレインにおいて前記内燃機関から前記無段変速機に至るまでの前記発進クラッチの上流側の要素の運動と、前記発進クラッチの下流側の前記駆動輪に至るまでの要素の運動は前記発進クラッチが接続されるまでは釣り合うとみなし、前記発進クラッチの上流側の要素の運動を記述すると共に、前記内燃機関の出力トルクと前記発進クラッチの伝達トルクが入力されるとき、前記内燃機関の回転数と前記無段変速機の出力回転数とを出力するモデルと、および前記モデルから出力される前記機関回転数および変速機出力回転数と前記内燃機関の出力トルクとを入力し、前記モデルに基づいて前記発進クラッチが伝達するトルクの推定値を算出する推定器とを備える如く構成した。
請求項に係る車両用発進クラッチのトルク推定装置にあっては、前記ドライブトレインが、前記内燃機関からフライホイールを経て前記無段変速機に至るまでの発進クラッチの上流側の要素と、セカンダリシャフトから前記駆動輪を経て前記駆動輪が取り付けられる車体に至るまでの前記発進クラッチの下流側の要素からなると共に、前記発進クラッチの上流側の要素の運動を記述するモデルは、前記内燃機関と前記フライホイールと前記無段変速機の運動を記述するモデルからなる如く構成した。
請求項にあっては、内燃機関と、前記内燃機関に接続される無段変速機と、前記無段変速機に接続される駆動輪と、前記無段変速機と駆動輪の間に介挿されて前記無段変速機から前記駆動輪へのトルク伝達を断接する発進クラッチとを備えると共に、前記発進クラッチが伝達するトルクを制御する車両用発進クラッチの制御装置において、前記内燃機関から前記駆動輪に至るドライブトレインにおいて前記内燃機関から前記無段変速機に至るまでの前記発進クラッチの上流側の要素の運動と、前記発進クラッチの下流側の前記駆動輪に至るまでの要素の運動は前記発進クラッチが接続されるまでは釣り合うとみなし、前記発進クラッチの上流側の要素の運動を記述すると共に、前記内燃機関の出力トルクと前記発進クラッチの伝達トルクが入力されるとき、前記内燃機関の回転数と前記無段変速機の出力回転数とを出力するモデルと、前記モデルから出力される前記機関回転数および変速機出力回転数と前記内燃機関の出力トルクとを入力し、前記モデルに基づいて前記発進クラッチが伝達するトルクの推定値を算出する推定器と、少なくとも前記機関回転数に基づいて前記発進クラッチが伝達すべきトルクの目標値を算出する伝達トルク目標値算出手段と、および前記算出される伝達トルクの目標値と推定値を入力し、前記目標値と推定値の偏差が減少するように操作量を出力する制御器とを備える如く構成した。
請求項に係る車両用発進クラッチの制御装置にあっては、前記制御器は、前記目標値と前記推定値の偏差が常に零となるように動作するトルクサーボ系として構成される如く構成した。
請求項1項に係る車両用発進クラッチのトルク推定装置にあっては、内燃機関から駆動輪に至るドライブトレインにおいて内燃機関から無段変速機に至るまでの発進クラッチの上流側の要素の運動と、発進クラッチの下流側の駆動輪に至るまでの要素の運動は発進クラッチが接続されるまでは釣り合うとみなし、発進クラッチの上流側の要素の運動を記述すると共に、内燃機関の出力トルクと発進クラッチの伝達トルクが入力されるとき、機関回転数と変速機出力回転数とを出力するモデルと、および出力される機関回転数と変速機出力回転数と内燃機関の出力トルクとを入力し、モデルに基づいて発進クラッチが伝達するトルクの推定値を算出する推定器とを備える如く構成したので、トルクセンサなどの追加のハードウェアを必要とすることなく、発進クラッチの使用領域の全域で伝達トルクを精度良く高応答に推定することができる。また、回転情報を平均化することなく使用するので、推定トルクの応答性が速く、過渡領域でも推定することができる。上記した2つの理由から、後で請求項に関して述べる如く、発進クラッチの使用領域の全域において伝達トルクを目標値に追従させるフィードバックが可能となる。
また、ドライブトレインにおいて内燃機関から無段変速機に至るまでの発進クラッチの上流側の要素の運動と、発進クラッチの下流側の駆動輪に至るまでの要素の運動は前記発進クラッチが接続されるまでは釣り合うとみなし、発進クラッチの上流側の要素の運動を記述するモデルをもって前記したモデルとする如く構成したので、モデルは内燃機関や無段変速機などの運動を記述すれば足りることから、換言すれば、走行路の勾配や走行抵抗などの走行状態や車重の変化などの影響を受けることがないことから、構成が簡易となると共に、推定精度を上げることができる。
請求項に係る車両用発進クラッチのトルク推定装置にあっては、ドライブトレインが、内燃機関からフライホイールを経て無段変速機に至るまでの発進クラッチの上流側の要素と、セカンダリシャフトから駆動輪を経て駆動輪が取り付けられる車体に至るまでの発進クラッチの下流側の要素からなると共に、発進クラッチの上流側の要素の運動を記述するモデルは、内燃機関とフライホイールと無段変速機の運動を記述するモデルからなる如く構成したので、上記した効果に加え、ドライブトレインの運動を良く記述できるモデルを用いることで、推定精度を上げることができる。
請求項に係る車両用発進クラッチの制御装置にあっては、請求項1で述べたと同様のモデルと推定器に加え、少なくとも機関回転数に基づいて発進クラッチが伝達すべきトルクの目標値を算出する伝達トルク目標値算出手段と、および算出される伝達トルクの目標値と推定値を入力し、目標値と推定値の偏差が減少するように操作量を出力する制御器とを備える如く構成したので、推定された伝達トルクに基づき、使用領域の全域において発進クラッチの伝達トルクを目標値に追従させるフィードバック制御を行うことができる。
請求項に係る車両用発進クラッチの制御装置にあっては、制御器は目標値と推定値の偏差が常に零となるように動作するトルクサーボ系として構成される如く構成したので、上記した効果に加え、発進クラッチが伝達するトルクを目標値に迅速に制御することができる。
以下、添付図面に即してこの発明に係る車両用発進クラッチのトルク推定および制御装置を実施するための最良の形態を説明する。
図1は、その車両用発進クラッチのトルク推定および制御装置を全体的に示す概略図である。図において、符号10は内燃機関(以下「エンジン」という)を示す。エンジン10は吸気管12およびその途中の配置されたスロットルバルブ14を備える。エンジン10の出力軸(クランク軸)20はベルト式の無段変速機(Continuously Variable Transmission。以下「CVT」という)24に接続される。
より詳しくは、エンジン10の出力軸20は、デュアルマスフライホイール26を介してCVT24のメインシャフト28に接続される。エンジン10およびCVT24は、車両(図示せず)に搭載される。
CVT24は、メインシャフト28とカウンタシャフト30との間に配設された金属製のVベルト機構32と、メインシャフト28とドライブ側可動プーリ(以下「ドライブプーリ」という)34との間に配設された遊星歯車式の前後進切換機構36と、カウンタシャフト30とセカンダリシャフト38との間に配設された、湿式多板クラッチからなる発進クラッチ42とから構成される。セカンダリシャフト38と左右の駆動輪(タイヤ)Wの間にはディファレンシャル機構44が配置される。
Vベルト機構32は、前記したドライブプーリ34と、カウンタシャフト30上に配設されたドリブン側可動プーリ(以下「ドリブンプーリ」という)46と、両プーリ34,46の間に巻掛けられた金属製のVベルト48とからなる。ドライブプーリ34は、メインシャフト28上に配置された固定プーリ半体50と、この固定プーリ半体50に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体52とからなる。
可動プーリ半体52の側方には、固定プーリ半体50に結合されたシリンダ壁50aにより囲まれてドライブ側シリンダ室54が形成されており、ドライブ側シリンダ室54内に油路54aを介して供給される油圧により可動プーリ半体52を軸方向に移動させる側圧が発生する。
ドリブンプーリ46は、カウンタ軸30に配置された固定プーリ半体56と、この固定プーリ半体56に対して軸方向に相対移動可能な可動プーリ半体58とからなる。可動プーリ半体58の側方には固定プーリ半体56に結合されたシリンダ壁56aにより囲まれてドリブン側シリンダ室60が形成され、ドリブン側シリンダ室60内に油路60aを介して供給される油圧により可動プーリ半体58を軸方向に移動させる側圧が発生する。
上記したドライブ側シリンダ室54とドリブン側シリンダ室60に供給するプーリ制御油圧を決定するレギュレータバルブ群64と、各シリンダ室54,60へのプーリ制御油圧を供給する変速制御バルブ群66とが設けられ、それらによってVベルト48の滑りが発生することがない適切なプーリ側圧が設定されると共に、両プーリ34,46のプーリ幅を変化させ、Vベルト48の巻掛け半径を変化させて変速比を無段階に変化させる。
前後進切換機構36は、メインシャフト28に結合されたサンギヤ68と、固定プーリ半体50に結合されたキャリア70と、後進用ブレーキ72により固定保持可能なリングギヤ74と、サンギヤ68とキャリア70とを連結可能な前進用クラッチ76とからなる。
前進用クラッチ76が係合されると、全ギヤがメインシャフト28と一体に回転し、ドライブプーリ34はメインシャフト28と同方向(前進方向)に駆動される。後進用ブレーキ72が係合されると、リングギヤ74が固定保持されるため、キャリア70はサンギヤ68とは逆方向に駆動され、ドライブプーリ34はメインシャフト28とは逆方向(後進方向)に駆動される。また、前進用クラッチ76と後進用ブレーキ72が共に解放されると、前後進切換機構36を介しての動力伝達が断たれ、エンジン10とドライブプーリ34との間の動力伝達が遮断される。
発進クラッチ42はカウンタシャフト30とセカンダリシャフト38との間に配置され、その間の動力伝達を断接する。発進クラッチ42は、後述する如く、供給される油圧力に応じてVベルト機構32により変速されたエンジン出力(トルク)を伝達する。
発進クラッチ42によって伝達されるエンジン出力はギヤ78からセカンダリシャフト38に固定されたギヤ80,82を介してギヤ84に伝達され、ディファレンシャル機構44により左右の駆動輪Wに振り分けられる。発進クラッチ42への油圧供給が停止され、発進クラッチ42が解放されると、CVT24は中立状態となる。
発進クラッチ42の制御は発進クラッチ用のバルブ群88(後述)を介して行われる。また前後進切換機構36の後進用ブレーキ72と前進用クラッチ76の制御は、図示しないマニュアルシフトレバーの操作に応じてマニュアルシフトバルブ90を介して行われる。
それらバルブ群の制御は、マイクロコンピュータよりなるミッションコントローラ100からの制御信号に基づいて行われる。
エンジン10のカム軸(図示せず)付近などの適宜位置にはクランク角センサ102が設けられ、所定クランク角度ごとに信号を出力する。吸気管12においてスロットルバルブ14の下流の適宜位置には絶対圧センサ104が設けられ、吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAに比例した信号を出力する。
シリンダブロック(図示せず)の適宜位置には水温センサ106が設けられ、エンジン冷却水温TWに比例した信号を出力する。スロットルバルブ14の付近にはスロットル開度センサ108が設けられ、スロットル開度THに比例した信号を出力する。
メインシャフト28の付近には回転数センサ114が設けられ、メインシャフト28の回転数(CVT24の入力回転数)NDRに比例した信号を出力すると共に、ドリブンプーリ46の付近には回転数センサ116が設けられ、ドリブンプーリ46の回転数(CVT24の出力回転数あるいは発進クラッチ42の入力回転数、即ち、カウンタシャフト30の回転数)NDNに比例した信号を出力する。ギヤ78の付近には回転数センサ118が設けられ、ギヤ78の回転数、即ち、発進クラッチ42の出力軸の回転数NOUTに比例した信号を出力する。
さらに、ドライブシャフトの付近には車速センサ122が設けられ、ドライブシャフトの所定回転ごとに信号を出力する。また、運転席床面のシフトレバー(図示せず)の付近にはシフトレバーポジションスイッチ124が設けられ、運転者によって選択されたレンジ位置(D,N,P,..など)に比例した信号を出力する。
この装置はミッションコントローラ100に加え、同様にマイクロコンピュータよりなり、エンジン10の燃料噴射などを制御するエンジンコントローラ126を備える。
前記したセンサ群のうち、クランク角センサ102、絶対圧センサ104、水温センサ106、スロットル開度センサ108の出力は、エンジンコントローラ126に入力される。同様に、クランク角センサ102、絶対圧センサ104、スロットル開度センサ108および回転数センサ114,116,118ならびに車速センサ122の出力は、ミッションコントローラ100に入力される。
ミッションコントローラ100あるいはエンジンコントローラ126は、クランク角センサ102と車速センサ122の出力をカウントしてエンジン回転数NEと車速Vを算出(検出)する。
ミッションコントローラ100は、目標変速比(レシオ)、即ち、前記したCVT24の入力回転数NDRの目標値を決定し、決定した目標NDRとなるように、可動プーリ34,46を駆動し、変速比を制御する。ここで、目標NDRはCVT24のドライブプーリ34の目標回転数であり、車速Vに対して目標NDRを定義することで変速比(レシオ)が一義的に決定され、制御される。
次いで、上記した発進クラッチ42用のバルブ群88およびそれらと発進クラッチ42の間の油路に配置されるアキュムレータなどの油圧構成要素を説明する。
図2はそれら油圧構成要素の詳細を示す油圧回路図である。
図示の如く、リザーバ(タンク)130から、エンジン10によって回転させられるオイルポンプ132で汲み上げられた作動油(ATF。オイル)は、PH制御バルブおよびPH調圧バルブ(共に図示せず)によって所定の高圧PHに調圧された後、クラッチ減圧バルブ(図示せず)に供給され、そこでPHより低圧のクラッチ圧(PCR)に減圧される。減圧された作動油は、発進クラッチ制御バルブ134にその入力ポート134aから供給される。
発進クラッチ制御バルブ134は、リニアソレノイド(電磁ソレノイド)134bを備えた電磁ソレノイドバルブとして構成され、バルブボディ134cの内部には変位自在なスプール134dが配置される。ミッションコントローラ100によって後述するように電流指令値ICMDが決定され、図示しない車載バッテリから入力端子134b1を介して通電されると、リニアソレノイド134bのプランジャ134b2が同図で左方向に移動してスプール134dを押圧してバルブボティ134cの内部で変位させる。
発進クラッチ制御バルブ134の出力ポート134eは油路136に接続される。油路136は中途で分岐してフィードバックポート134fを介して発進クラッチ制御バルブ134に帰還させられると共に、他方ではシフトインヒビタバルブ140を介して発進クラッチ42に接続されて制御油圧(クラッチ圧)PSCを供給する。
発進クラッチ42は、制御油圧PSCでそのピストン42aが移動自在に構成される。具体的には、ピストン42aが制御油圧PSCを供給されて押圧され、図で左側に移動してクラッチ42bと係合すると、変速されたエンジントルクが、供給された制御油圧PSCの油圧力に応じたトルクだけ、セカンダリシャフト38とディファレンシャル機構44を介して左右の駆動輪Wに伝達される。他方、制御油圧PSCが排出(ドレン)されると、ピストン42aはスプリング力によって図で右側に後退してクラッチ42bを開放し、動力伝達が遮断される。
発進クラッチ制御バルブ134と発進クラッチ42の間の油路136には、アキュムレータ142が配置される。アキュムレータ142は、発進クラッチ制御バルブ134のリニアソレノイド134bが励磁されるときPWM駆動されることで、スプール134dが振動して出力される制御油圧が脈動するため、その脈動を除去する意図で配置される。
アキュムレータ142は、図示の如く、スプール(ピストン)142aと、スプール142aを閉じ方向(不飽和方向)に付勢するスプリング142bとからなる。アキュムレータ142は油路136から供給される制御油圧の上昇につれてスプール142aがスプリング142bのバネ力に抗して後退し、その容積が変化する。スプール142aが壁面に突き当たった時点で、アキュムレータ142の容積は最大となる(飽和する)。
油路136においてアキュムレータ142の付近には油圧センサ144が配置され、油路136の油圧(制御油圧)に応じた出力を生じる。油圧センサ144の出力は、ミッションコントローラ100に送出される。
次いで、図3の制御ブロック図を参照し、この実施例に係る車両用発進クラッチのトルク推定および制御装置の動作を説明する。その動作はより具体的には、ミッションコントローラ100の動作である。尚、図示のプログラムは、例えば、10[msec]ごとに実行される。
図示の如く、トルク推定および制御装置は、発進クラッチ42が伝達するトルクの推定値Tcハットを出力するオブザーバ(状態観測器)100aを備えると共に、制御量である、伝達トルクの推定値Tcハットを目標値Trに追従させるトルクサーボ系として構築される。尚、この明細書でTcの頭部に付される推定値を示す記号を「ハット」という。
発進クラッチ42は、温度変化、製造バラツキ、経年変化によって応答性が変化することから、それらに対するロバスト性を有する制御装置が望まれる。従って、制御系はフィードバック制御系によって閉ループを安定化すると共に、フィードフォワード制御系によって閉ループ系の応答を修正する2自由度制御系100bから構成した。
そのフィードバック制御系にはロバストコントローラを用い、構造的な不確かさを考慮してμ―シンセシスによる制御系を設計した。フィードフォワード制御系はH制御を用いて設計した。発進クラッチ42が伝達するトルクは、実機においては特別な計測装置なしには計測不能であると共に、この発明の目的の1つはトルクセンサなどの追加のハードウェアを不要にすることにあるので、上記した如く、オブザーバ100aを構築し、それが出力する伝達トルクの推定値Tcハットを用いてフィードバック系を構成した。
図3の構成を概説すると、ブロック100cにおいてエンジン回転数NE、車速V、およびスロットル開度THなどからトルコン規範モデル(マップ化されたデータ)を検索し、発進クラッチ42が伝達すべきトルクの目標値Trが算出される。
算出された伝達トルクの目標値Trは、2自由度制御系100bに入力され、そこでオブザーバ100aから出力される伝達トルクの推定値(発進クラッチ42が伝達すると推定されるトルク)Tcハットとの偏差が算出され、その偏差が減少するように、前記した電流指令値ICMDが算出されて定電流ドライバ100d以下のプラントに送られる。
図4は、そのプラントをより詳細に示すブロック図である。
図3と図4を参照して説明すると、2自由度制御系100bは、トルクTと圧力(油圧)Pの換算式100eから圧力PSCrを算出し、電流Iと圧力Pの変換テーブル100fを検索して電流指令値ICMDを算出して定電流ドライバ100dに送る。定電流ドライバ100dは、電流指令値ICMDを制御油圧相当電流指令値ISCに変換し、油圧回路(図2に示す発進クラッチ制御バルブ134、シフトインヒビタバルブ140、アキュムレータ142など)のリニアソレノイド(発進クラッチ制御バルブ134のリニアソレノイド)134bを通電する。油圧回路134などはリニアソレノイド134bへの通電量、即ち、プランジャ134b2の推力FSCに比例して動作し、制御油圧PSCを発進クラッチ42に供給する。
発進クラッチ42は、CVT24によって変速されたエンジン10の出力(トルク)を、供給された制御油圧PSCに応じたクラッチトルクTcでドライブトレイン100gを介して伝達する。ドライブトレイン100gは、図3に示す如く、エンジン10、デュアルマスフライホイール26、CVT24(プーリ)、発進クラッチ42、セカンダリシャフト38、タイヤ(駆動輪)W、および車体からなる。
ドライブトレイン100gの後段で走行抵抗や車重が加算段100hで加算され、加速度Gが算出される。次いで、加速度Gは積分ブロック100iで積分され、速度(車速V)に変換される。
図5は、2自由度制御系100bの詳細を示すブロック図である。
2自由度制御系100bは具体的には、フィードフォワードコントローラ100b1と、フィードバックコントローラ100b2とからなる。
フィードフォワードコントローラ100b1は、時間領域で制御入力の大きさを考慮しながら、過渡応答の特性の最適化を図るべく、H制御を用いて設計した。目標値応答の特性に対する評価関数としては、図5の下部の式に示す、Hノルムを採用する。
式中、Gyr,Gurそれぞれ図5のTrからTcまでと、Trからuまでの伝達関数を表わし、ρは定数の重みを示す。Hノルムの定義から式の第1項はステップ目標値に対する追従誤差の大きさを示し、第2項はインパルス入力に対する制御入力のエネルギを表わしていることから、第1項を小さくすれば追従性が良くなり、第2項を小さくすれば制御入力が小さくなる。ρは、そのトレードオフをとるための重みである。
フィードバックコントローラ100b2は構造的な不確かさを勘案し、図6に示すような不確かさを考慮したフィードバック構造とした。具体的には、図4のTrからTcまでのプラントを線形モデル化してP(s)とし、P(s)全体に対する不確かさを考慮して設計した。
より具体的には、図7に示すような一般化プラントを考慮して設計した。図7において、Wmul_r,Wmul_lは乗法的なモデルの不確かさを、Wperf_r, Wperf_lは性能に関する周波数重みを表わす。また、Wactu_r,Wactu_lは入力の不確かさを、Wsen_r,Wsen_lは出力の不確かさを表わす。さらに、DAはD/A変換の際に生じる位相遅れを、Bfはセンサに用いるフィルタによる位相遅れを表わす。
図5に示す構成において、フィードバックコントローラ100b2は、フィードフォワードコントローラ100b1の出力の一方から測定出力(制御量)yを減算して得た偏差にゲインK(s)を乗じて得た積を、フィードフォワードコントローラ100b1の他方の出力に加算する。よって得られた和は制御入力としてプラントP(s)に与えられる。
次いで、伝達トルクの推定について説明する。
図8に示す如く、エンジン10からデュアルマスフライホイール26、CVT24のドライブプーリ34とドリブンプーリ46、発進クラッチ42、セカンダリシャフト38、タイヤ(駆動輪)Wおよび車体に至るまでのドライブトレインを、発進クラッチ42を境とし、有限要素法に従って6種の要素(質量体。マス)にモデル化し、それらをイナーシャIと加速度θツードットからなる運動方程式で示すと、同図の下部に示すようになる。
尚、運動方程式でイナーシャIなどに付される数字は、図8の有限要素法モデルに括弧で示す通りである。また、θツードットは、角度θの2回微分値、即ち、加速度を示す。
このモデルにあっては、発進クラッチ42が係合されるまでは、エンジン10からプーリ34,46までの3種の要素(マス)で伝達されるトルクと、セカンダリシャフト38から車体までの3種の要素(マス)で伝達されるトルクは、等しいとみなすことができる。
従って、図8に示す如く、図1の構成は、発進クラッチ42の上下流の6種のマスは、上流側のエンジン10からプーリ34,46までの3種の要素でモデル化することができ、それによって、車重や走行路の勾配などの影響を受けることなく、トルクの伝達をモデル化することができる。
従って、図8の上部に示す如く、エンジントルクTEやクラッチトルクTcが与えられると、その3マスモデル100jに従ってエンジン回転数NEやドリブンプーリ回転数(発進クラッチ入力回転数)NDNが変化する。しかしながら、発進クラッチ42の伝達トルクTcは特別なセンサがないと、観測することができない。
そこで、この実施例においては、直接観測することのできない発進クラッチ42の伝達トルクTcを、3マスモデル100jを用いて推定するようにした。即ち、3マスモデルに関してセンサを用いて観測できるのは、エンジン回転数NE、ドリブンプーリ回転数NDN、エンジントルクTEの3つである。これらの情報と3マスモデルからなるトルク推定器に基づいて発進クラッチ42の伝達トルクを推定するようにした。
トルク推定器は、各種のモデル変化、即ち、各機構の経年変化やパラメータの温度依存性に対するロバスト性を有することが要求されることから、トルク推定器をロバストオブザーバの一種であるHフィルタを用いて設計した。
それについて述べると、上記した通り、発進クラッチ42が滑っている場合の6種の要素の運動方程式は、イナーシャIと加速度θツードットとから数1に示す式で与えられる。尚、数1において乗算記号は省略する。
Figure 0004914682
ただし、イナーシャIは数2に示す式で算出される。また、TEはエンジン回転数NEなどからマップ検索して算出されるエンジントルクをプーリレシオρ倍したものである。式で用いられる諸定数の説明を図9に示す。
Figure 0004914682
また、式(2.6)でRAは走行抵抗であり、数3に示す式で与えられる。
Figure 0004914682
さらに、エンジン回転数NE、車速V、DRクラッチとDNクラッチの回転数(発進クラッチ42の入出力回転数)は、数4のように求められる。
Figure 0004914682
次いで、トルク推定器の設計について説明する。
推定器の一般的利点についていえば、推定器とは、制御入力と測定出力から状態変数を再現するものであり、オブザーバ、状態観測器とも呼ばれる。ここでは推定器の基本的な機構、すなわち偏差システムを安定化することにより、状態変数を再現する機構について説明する。
図10に示す構成において、プラントのダイナミクス(およびセンサの式) が数5に示す式のように記述されているとする。
Figure 0004914682
ここでxは状態、yは測定出力(制御量)、uは制御入力、μはプラント内のパラメータを表す。また、推定器のダイナミクスが以下の数6に示す式のように記述されているとする。
Figure 0004914682
このとき、プラントの状態xを推定するシステムは、以下のように構成される。x−xハットの偏差システムは、式(3.1)から式(3.3)を引くことにより以下の数7に示す式のように記述できる。
Figure 0004914682
上式においてo(x−xハット)は、g(x)をxハットの近傍でテイラー展開したときの高次項である。高次項o(x−xハット)が無視できるとすると、偏差システムは以下の数8に示す式のように記述される。
Figure 0004914682
この偏差システムが安定するように推定器が設計されているとすると、推定開始直後はプラントの初期値と推定器の初期値とのずれから推定誤差が生じるが、いずれ漸近的に推定器の状態xハットはプラントの状態xと一致することになる。また、評価指標としてHノルムを用いたり、偏差システムの極配置を行ったりすることによって、漸近していく際の軌道を考慮した設計が可能である。
パラメータ変動に対するロバスト性についていえば、式(3.6)の偏差システムを構成する推定器を設計したとき、パラメータμがμ+Δμ に変動したとする。すると、変動後の偏差システムは以下の数9に示す式のように記述できる。
Figure 0004914682
このとき、式(3.7)で記述される偏差システムの極の実部が正にならない限り、システムは安定である。つまり、ある程度のパラメータ変動が生じたとしても、ロバストに推定が可能ということである。
外乱のモデル化による外乱除去について説明すると、推定器を図11に示すように構成したとする。ここで推定したいシステムに図12に示すように入力外乱が入るときを考える。このような外乱が入ったときには、外乱がある初期値とあるダイナミクス(外乱発生器)から生成されると考え、外乱を生成するシステムを推定器側に付加することによって外乱の影響を除去することができる。具体的に、外乱が次の数10に示す式のようにモデリングできるとする。
Figure 0004914682
そして、図13のブロック線図に示すように推定システムを構成すれば、推定を始めた直後は初期のずれ(d とdハット)が生じるが、いずれ漸近的に推定値xハットは真値xと一致することになる。
この実施例に係る設計の特徴の一つは、未知入力推定オブザーバを使用したことである。
推定器は一般的に図14に示すように、プラントの制御入力と測定出力から状態を再現するものである。しかし、この実施例で設計された推定器は、測定出力から制御入力を推定するという特徴を持っている。
即ち、推定器は一般的には図10に示すように構成される。また、推定した状態を用いて状態フィードバックを行う閉ループ系は一般的に図14に示すように構成され、推定器の設計のために用いる(設計の対象となる)システムと制御器の設計のために用いるシステムが同一である。
しかしながら、この実施例で取り扱うシステムは図15に示すように構成され、それぞれ設計のために用いるシステムが同一でないという特徴を持っている。
即ち、この実施例にあっては、エンジン10から駆動輪Wに至るドライブトレインの運動を記述すると共に、エンジン10の出力トルクTEと発進クラッチ42の伝達トルクTcが入力されるとき、エンジン10の回転数NE(θドット)と前記CVT(無段変速機)24のドリブンプーリ回転数NDN(θドット)とを出力するモデル(3マスモデル)100jと、前記モデルから出力されるエンジン回転数NEとドリブンプーリ回転数NDNとエンジン10の出力トルクTEとを入力し、モデル100jに基づいて発進クラッチ42が伝達する(伝達)トルクの推定値Tcハットを算出する推定器100kと、少なくともエンジン回転数NEに基づいて発進クラッチ42が伝達すべき(伝達)トルクの目標値Trと推定値Tcハットを入力し、目標値と推定値の偏差が減少するように操作量を出力する制御器100mとを備える如く構成した。
次いで、Hフィルタを用いた設計について説明する。
フィルタ設計の初期段階で用いた一般化プラントを図16に示す。続けて、改良した一般化プラントを図17に示す。ここでは、TcからTcハットまでのボード線図の帯域調整を考慮した重みW(s)と油圧むだ時間を考慮した重みW(s)が付加されている。
図15において、3マスモデル100jは、以下の数11に示す式のように示される。
Figure 0004914682
ただし、Asyataiなどは、以下の数12に示す式で示される。
Figure 0004914682
なお、θ,θのツードット値(角度θの2回微分値、即ち、加速度を示す値)を得る際には、次の数13に示す微分器を用いるようにした。
Figure 0004914682
次いで、Hフィルタの設計について説明すると、以下では、重み調整と評価指標として用いたTcからTcハットまでのボード線図の帯域調整との関係がわかりやすいように3つのHフィルタの設計について説明する。まず、フィルタの名称と設計に使用した重み関数をそれぞれ説明する。
1つ目はHフィルタtype1である。重み関数を以下の数14に示す式ように設定した。
Figure 0004914682
ただし、むだ時間L = 0.1であり、設計したフィルタは10次に低次元化(最適Hankel ノルム近似)している。
2つ目はHフィルタtype2である。このフィルタに設計した重み関数はほとんどHフィルタtype1と同じであり、WとWのみ以下の数15に示す式のように変更した。
Figure 0004914682
ただし、設計したフィルタは10次に低次元化(最適Hankel ノルム近似)している。
3つ目はHフィルタtype3である。このフィルタも同様に、WとWのみ以下の数16に示すように変更した。
Figure 0004914682
ただし、設計したフィルタは11次に低次元化(最適Hankel ノルム近似)している。
得られたフィルタのTcからTcハットまでのボード線図を図18に示す。また、設定した重みWとWをそれぞれ図19と図20に示す。
図21は、上記した、この実施例に係る車両用発進クラッチのトルク推定および制御装置の構成を全体的に示すブロック図である。
図21に示す構成により、伝達トルクの推定値Tcハットと実トルクTcの偏差が零となるような、即ち、推定値Tcハットを実トルクTcに一致させることができるトルク推定器Ffil(s)を求めることができる。また、W(s),W(s)などの周波数重みを各情報に課すことで、推定器にある条件の下で所望の周波数特性を持たせることができる。
以上述べた如く、この実施例にあっては、エンジン(内燃機関)10と、前記エンジン(内燃機関)10に接続されるCVT(無段変速機)24と、前記CVT(無段変速機)24に接続される駆動輪(タイヤ)Wと、前記CVT(無段変速機)24と駆動輪Wの間に介挿されて前記CVT(無段変速機)24から前記駆動輪Wへのトルク伝達を断接する発進クラッチ42とを備えると共に、前記発進クラッチ42が伝達するトルクTcを推定する車両用発進クラッチのトルク推定装置において、前記エンジン(内燃機関)10から前記駆動輪Wに至るドライブトレインにおいて前記エンジン(内燃機関)10から前記CVT(無段変速機)24に至るまでの発進クラッチ42の上流側の要素の運動と、前記発進クラッチ42の下流側の駆動輪Wに至るまでの要素の運動は発進クラッチ42が接続されるまでは釣り合うとみなし、発進クラッチ42の上流側の要素の運動を記述すると共に、前記エンジン(内燃機関)10の出力トルクTEと前記発進クラッチ42の伝達トルクTcが入力されるとき、前記エンジン(内燃機関)10の回転数NEと前記CVT(無段変速機)24のドリブンプーリ回転数(出力回転数)NDNとを出力するモデル100jと、および前記モデルから出力される前記エンジン(機関)回転数NEおよびドリブンプーリ(変速機出力)回転数NDNと前記エンジン(内燃機関)10の出力トルクTEとを入力し、前記モデルに基づいて前記発進クラッチ42が伝達する(伝達)トルクの推定値Tcハットを算出する推定器100kとを備える如く構成した。
このように、エンジン10から駆動輪Wに至るドライブトレインの運動を記述すると共に、エンジン10の出力トルクTEと発進クラッチ42の伝達トルクTcが入力されるとき、エンジン回転数NEとドリブンプーリ回転数(変速機出力回転数)NDNとを出力するモデル(3マスモデル)100jと、および出力されるエンジン回転数NEとドリブンプーリ回転数NDNとエンジン10の出力トルクTEとを入力し、モデルに基づいて発進クラッチ42が伝達する伝達トルクの推定値Tcハットを算出する推定器100kとを備える如く構成したので、トルクセンサなどの追加のハードウェアを必要とすることなく、発進クラッチ42の使用領域の全域で伝達トルクを精度良く高応答に推定することができる。また、回転情報を平均化することなく使用するので、推定トルクの応答性が速く、過渡領域でも推定することができる。上記した2つの理由から、後で述べる如く、発進クラッチ42の使用領域の全域において伝達トルクを目標値に追従させるフィードバックが可能となる。
このように、ドライブトレインにおいてエンジン(内燃機関)からCVT(無段変速機)24に至るまでの発進クラッチ42の上流側の要素の運動と、発進クラッチ42の下流側の駆動輪に至るまでの要素の運動は発進クラッチ42が接続されるまでは釣り合うとみなし、発進クラッチ42の上流側の要素の運動を記述するモデルをもって前記したモデルとする如く構成したので、上記した効果に加え、モデルはエンジン(内燃機関)10やCVT(無段変速機)24などの運動を記述すれば足りることから、換言すれば、走行路の勾配や走行抵抗などの走行状態や車重の変化などの影響を受けることがないことから、構成が簡易となると共に、推定精度を上げることができる。
また、前記ドライブトレインが、前記エンジン(内燃機関)10から(デュアルマス)フライホイール26を経て前記CVT(無段変速機)24に至るまでの発進クラッチ42の上流側の要素と、セカンダリシャフト38から前記駆動輪Wを経て前記駆動輪Wが取り付けられる車体に至るまでの前記発進クラッチ42の下流側の要素からなると共に、前記発進クラッチ42の上流側の要素の運動を記述するモデルは、前記エンジン(内燃機関)10と前記フライホイール26と前記CVT(無段変速機)24の運動を記述するモデルからなる如く構成した。これにより、上記した効果に加え、ドライブトレインの運動を良く記述できるモデルを用いることで、推定精度を上げることができる。
また、この実施例にあっては、エンジン(内燃機関)10と、前記エンジン(内燃機関)10に接続されるCVT(無段変速機)24と、前記CVT(無段変速機)24に接続される駆動輪Wと、前記CVT(無段変速機)24と駆動輪Wの間に介挿されて前記CVT(無段変速機)24から前記駆動輪Wへのトルク伝達を断接する発進クラッチ42とを備えると共に、前記発進クラッチ42が伝達するトルクTcを制御する車両用発進クラッチの制御装置において、前記エンジン(内燃機関)10から前記駆動輪Wに至るドライブトレインにおいて前記エンジン(内燃機関)10から前記CVT(無段変速機)24に至るまでの発進クラッチ42の上流側の要素の運動と、前記発進クラッチ42の下流側の駆動輪Wに至るまでの要素の運動は発進クラッチ42が接続されるまでは釣り合うとみなし、発進クラッチ42の上流側の要素の運動を記述すると共に、前記エンジン(内燃機関)10の出力トルクTEと前記発進クラッチ42の伝達トルクTcが入力されるとき、前記エンジン(内燃機関)の回転数NEと前記CVT(無段変速機)24のドリブンプーリ回転数(出力回転数)NDNとを出力するモデル(3マスモデル)100jと、前記モデルから出力される前記エンジン(機関)回転数NEおよびドリブンプーリ(変速機出力)回転数NDNと前記エンジン(内燃機関)10の出力トルクTEとを入力し、前記モデルに基づいて前記発進クラッチ42が伝達する(伝達)トルクの推定値Tcハットを算出する推定器100kと、少なくとも前記エンジン(機関)回転数NEに基づいて前記発進クラッチ42が伝達すべき(伝達)トルクの目標値Trを算出する伝達トルク目標値算出手段(トルコン規範モデル100c)と、および前記算出される伝達トルクの目標値Trと推定値Tcハットを入力し、前記目標値と推定値の偏差が減少するように操作量を出力する制御器100mとを備える如く構成した。
これにより、推定された伝達トルクTcハットに基づき、使用領域の全域において発進クラッチの伝達トルクTcを目標値Trに追従させるフィードバック制御を行うことができる。
また、前記制御器は、前記目標値Trと前記推定値Tcハットの偏差が常に零となるように動作するトルクサーボ系として構成される如く構成した。これにより、発進クラッチ42の伝達トルクTcを目標値Trに迅速に制御することができる。
また、前記制御器がフィードフォワードコントローラ(制御器)100b1とフィードバックコントローラ(制御器)100b2とを備えると共に、前記フィードバックコントロール(制御器)とフィードフォワードコントローラ(制御器)100b1が目標値応答の特性に対する評価関数として所定のHノルムとHノルムからなる評価関数を備える如く構成した。これにより、追従性と応答性とを最適にバランスさせることができる。
この発明の実施例に係る車両用発進クラッチのトルク推定および制御装置を全体的に示す概略図である。 図1に示す装置の中の発進クラッチ用のバルブ群などの油圧構成要素の詳細を示す油圧回路図である。 図1に示す装置の動作を示す制御ブロック図である。 図3中のプラントの構成をより詳細に示す制御ブロック図である。 図3の中の2自由度制御系の構成を詳細に示すブロック図である。 図5の中のフィードバックコントローラが設計時に前提とする構造的な不確かさを示すブロック図である。 図5の中のフィードバックコントローラが設計時に前提とする一般化プラントの構成を示すブロック図である。 図1の構成を有限要素法に従ってモデル化してブロック図である。 図8に示す運動方程式で使用される定数の諸元を示す表である。 オブザーバによる状態推定を一般的に示すブロック図である。 同様に、オブザーバによる状態推定を一般的に示すブロック図である。 外乱が加わったときのシステムの状態推定を示すブロック図である。 外乱のモデル化による外乱除去を示すブロック図である。 一般的な併合系を示すブロック図である。 この実施例における併合系を示すブロック図である。 一般化プラントの初期型を示すブロック図である。 一般化プラントの改良型を示すブロック図である。 図17のフィルタTcからTcハットまでのボード線図である。 図17の重みWのプロットを示すグラフである。 図17の重みWのプロットを示すグラフである。 この実施例に係る車両用発進クラッチのトルク推定および制御装置の構成を示すブロック図である。
符号の説明
10 内燃機関(エンジン)、24 無段変速機(CVT)、34 ドライブ側可動プーリ(ドライブプーリ)、38 セカンダリシャフト、42 発進クラッチ、46 ドリブン側可動プーリ(ドリブンプーリ)、100 ミッションコントローラ、126 エンジンコントローラ、134 発進クラッチ制御バルブ、134b リニアソレノイド、140 シフトインヒビタバルブ、142 アキュムレータ、W 駆動輪(タイヤ)

Claims (4)

  1. 内燃機関と、前記内燃機関に接続される無段変速機と、前記無段変速機に接続される駆動輪と、前記無段変速機と駆動輪の間に介挿されて前記無段変速機から前記駆動輪へのトルク伝達を断接する発進クラッチとを備えると共に、前記発進クラッチが伝達するトルクを推定する車両用発進クラッチのトルク推定装置において、
    a.前記内燃機関から前記駆動輪に至るドライブトレインにおいて前記内燃機関から前記無段変速機に至るまでの前記発進クラッチの上流側の要素の運動と、前記発進クラッチの下流側の前記駆動輪に至るまでの要素の運動は前記発進クラッチが接続されるまでは釣り合うとみなし、前記発進クラッチの上流側の要素の運動を記述すると共に、前記内燃機関の出力トルクと前記発進クラッチの伝達トルクが入力されるとき、前記内燃機関の回転数と前記無段変速機の出力回転数とを出力するモデルと、
    および
    b.前記モデルから出力される前記機関回転数および変速機出力回転数と前記内燃機関の出力トルクとを入力し、前記モデルに基づいて前記発進クラッチが伝達するトルクの推定値を算出する推定器と、
    を備えたことを特徴とする車両用発進クラッチのトルク推定装置。
  2. 前記ドライブトレインが、前記内燃機関からフライホイールを経て前記無段変速機に至るまでの発進クラッチの上流側の要素と、セカンダリシャフトから前記駆動輪を経て前記駆動輪が取り付けられる車体に至るまでの前記発進クラッチの下流側の要素からなると共に、前記発進クラッチの上流側の要素の運動を記述するモデルは、前記内燃機関と前記フライホイールと前記無段変速機の運動を記述するモデルからなることを特徴とする請求項記載の車両用発進クラッチのトルク推定装置。
  3. 内燃機関と、前記内燃機関に接続される無段変速機と、前記無段変速機に接続される駆動輪と、前記無段変速機と駆動輪の間に介挿されて前記無段変速機から前記駆動輪へのトルク伝達を断接する発進クラッチとを備えると共に、前記発進クラッチが伝達するトルクを制御する車両用発進クラッチの制御装置において、
    a.前記内燃機関から前記駆動輪に至るドライブトレインにおいて前記内燃機関から前記無段変速機に至るまでの前記発進クラッチの上流側の要素の運動と、前記発進クラッチの下流側の前記駆動輪に至るまでの要素の運動は前記発進クラッチが接続されるまでは釣り合うとみなし、前記発進クラッチの上流側の要素の運動を記述すると共に、前記内燃機関の出力トルクと前記発進クラッチの伝達トルクが入力されるとき、前記内燃機関の回転数と前記無段変速機の出力回転数とを出力するモデルと、
    b.前記モデルから出力される前記機関回転数および変速機出力回転数と前記内燃機関の出力トルクとを入力し、前記モデルに基づいて前記発進クラッチが伝達するトルクの推定値を算出する推定器と、
    c.少なくとも前記機関回転数に基づいて前記発進クラッチが伝達すべきトルクの目標値を算出する伝達トルク目標値算出手段と、
    および
    d.前記算出される伝達トルクの目標値と推定値を入力し、前記目標値と推定値の偏差が減少するように操作量を出力する制御器と、
    を備えたことを特徴とする車両用発進クラッチの制御装置。
  4. 前記制御器は、前記目標値と前記推定値の偏差が常に零となるように動作するトルクサーボ系として構成されることを特徴とする請求項記載の車両用発進クラッチの制御装置。
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