JP4910969B2 - 吸音構造体 - Google Patents
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Description
繊維材料または多孔質材料からなるシートを備えた吸音材は、周波数が低くなるにつれて吸音率が低下する傾向があるので、低周波帯域の音を効率良く吸音させるために、繊維材料または多孔質材料からなるシートの厚みを大きくし、かつ充分な厚みの背面空気層を設ける必要がある。
また、下記特許文献1に示すような制振性樹脂組成物からなるシートを備えた吸音材においては、制振性樹脂組成物からなる樹脂シートの表面側から音による空気振動が印加された際に、樹脂シート自体が1次モードの振動を起こすことが知られている。この1次モード振動によって生じる吸音ピークの周波数は、樹脂シートの剛性や、樹脂シートと背後空気層とのバランスによって決まるので、例えば比較的低周波数の音を吸音するためには、一定の厚み以上の背後空気層が必要になると考えられている。
また、吸音材を設計するにあたっては、従来、評価指標として主に垂直入射吸音率が用いられているが、実際の吸音材の使用に際しては音がランダムな方向から入射するのが普通であることから、吸音材の設計に際して、垂直入射吸音率による評価だけでは不十分な場合があった。
本発明の吸音構造体は、マトリックスポリマー中に有機低分子材料が分散されてなる有機ハイブリッドシートと、前記有機ハイブリッドシートの裏面側に隣接する気密空気室とが備えられ、前記有機ハイブリッドシートの表面側から音による空気振動が印加された際に、400Hz以下の周波数帯域においてランダム入射吸音率が0.3以上の吸音ピークと、前記吸音ピークよりも高周波帯域側においてランダム入射吸音率が0.3以上の別の吸音ピークとが同時に発現するように、前記有機ハイブリッドシートが前記気密空気室に対して振動自在に取り付けられていることを特徴とする。
また本発明の吸音構造体においては、前記気密空気室が複数備えられ、かつ各気密空気室同士が相互に分離されていることが好ましい。
更に本発明の吸音構造体においては、前記気密空気室が、前記有機ハイブリッドシートの裏面と、前記裏面に対向配置された背面部と、前記背面部の周縁部から前記有機ハイブリッドシート側に向けて立設された壁面部とによって区画形成されてなり、前記壁面部と前記有機ハイブリッドシートの裏面とが密着されていることが好ましい。
更にまた、本発明の吸音構造体においては、前記複数の気密空気室がそれぞれ、前記壁面部によって相互に分離されていることが好ましい。
また、本発明の吸音構造体においては、前記気密空気室の厚みが5mm以上30mm以下の範囲であることが好ましい。
更に、本発明の吸音構造体においては、前記有機ハイブリッドシートの厚みが0.3mm以上3mm以下の範囲であることが好ましい。
更にまた、本発明の吸音構造体においては、前記有機ハイブリッドシートが、塩素化ポリエチレンからなるマトリックスポリマー中にN,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルファミンアミドからなる有機低分子材料が分散されたものか、ポリ塩化ビニルからなるマトリックスポリマー中にフタル酸ジエチルヘキシルからなる有機低分子材料が分散されたものであることが好ましい。
また上記の吸音構造体によれば、気密空気室が複数備えられるので、吸音構造体の大面積化が容易になり、建築材料としても利用できる。また、隣接する気密空気室が相互に分離されているので、気密空気室同士の間で空気が流通するおそれがなく、これにより気密空気室同士のクロストークが防止され、400Hz以下の周波数帯域においてランダム入射吸音率の吸音ピークを発現させることができる。
更に、上記の吸音構造体によれば、気密空気室の厚みが30mm以下なので、吸音構造体を従来よりも大幅に薄型にすることができる。
更にまた、上記の吸音構造体によれば、有機ハイブリッドシートの厚みが0.3〜3mmの範囲とされているので、シート自体の剛性が適正なものとなり、吸音ピークをより低周波数側にシフトさせることができる。
有機ハイブリッドシート2は、マトリックスポリマー中に有機低分子材料が分散されて構成されている。有機ハイブリッドシートとしては、塩素化ポリエチレンからなるマトリックスポリマー中にN,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルファミンアミド(以下、DBSという。)からなる有機低分子材料が分散されたものか、ポリ塩化ビニルからなるマトリックスポリマー中にフタル酸ジエチルヘキシル(以下、DEHPという。)からなる有機低分子材料が分散されたものが好ましい。
気密空気室3は、図2及び図3に示すように、有機ハイブリッドシート2の裏面2aと、裏面2aに対向配置された背面部3aと、背面部3aの周縁部から有機ハイブリッドシート2側に向けて立設された壁面部3bとによって区画形成されている。壁面部3bと、有機ハイブリッドシート2の裏面2a及び背面部3aとはそれぞれ、相互に密着されており、これにより気密空気室3が完全に密閉状態になっている。また、本実施形態の吸音構造体1においては、図1及び図3に示すように、複数の気密空気室3がマトリックス状に配列されており、各気密空気室3同士が相互に密閉状態のままで分離されている。
また、スペーサ部材4、有機ハイブリッドシート2及び背面板5はそれぞれ、接着剤、両面粘着テープを介して密着させればよい。また、スペーサ部材4及び背面板5が樹脂からなる場合は、これらを相互に熱融着させてもよい。また、スペーサ部材4及び背面板5が金属からなる場合は、これらを相互に溶接、ロウ付けまたはハンダ付けさせてもよい。更に、スペーサ部材4及び背面板5を、金属または樹脂などによって一体に成形してもよい。
また、上記構成の有機ハイブリッドシート2を用いることによって、低音域における吸音率を向上できる。
また上記の吸音構造体1によれば、気密空気室3が複数備えられるので、吸音構造体1の大面積化が容易になり、建築材料としても利用できる。また、隣接する気密空気室3が相互に分離されているので、気密空気室3同士の間で空気が流通するおそれがなく、これにより気密空気室3同士のクロストークが防止され、400Hz以下の周波数帯域においてランダム入射吸音率の吸音ピークを発現させることができる。
更に、上記の吸音構造体1によれば、気密空気室3の厚みが30mm以下なので、吸音構造体1を従来よりも大幅に薄型にすることができる。
更にまた、上記の吸音構造体1によれば、有機ハイブリッドシート2の厚みが0.3〜3mmの範囲とされているので、シート自体2の剛性が適正なものとなり、吸音ピークをより低周波数側にシフトさせることができる。
更に、気密空気室3の平面視したときの大きさも、上記実施形態のように、吸音構造体1の全ての気密空気室3について同一にしてもよいが、気密空気室3毎に大きさを変更してもよい。更にまた、気密空気室3の厚みdも、上記実施形態のように、吸音構造体1の全ての気密空気室3について同一にしてもよいが、気密空気室3毎に厚みdを変更してもよい。
また、上記の実施形態における吸音構造体1は平板状であるが、本発明はこれに限定されるものではなく、吸音構造体1を凹面状、凸面状、凸球面状、凹球面状のいずれかの形状にしてもよい。
いずれの場合にも、有機ハイブリッドシート2の表面2b側から音による空気振動が印加されたときに、400Hz以下の周波数帯域において吸音ピークが発現するように、有機ハイブリッドシート2が気密空気室3に取り付けられていればよい。
また、電器製品の内部に設置することで、電器製品から発する騒音を低減することが可能になり、電器製品の静音化を図ることができる。
更に、スピーカー、楽器、電子楽器等にも適用することができ、これら楽器等の製品における低音域の音響特性を改善することもできる。
更にまた、上述のように、建築物の躯体に対して直接スペーサ部材を密着させるとともに有機ハイブリッドシートを貼り合わせて、吸音構造体を構成できるので、リスニングルーム、防音室などの設計にも有利である。
以下の実施例では、各種の吸音構造体を評価するにあたって、ランダム入射吸音率を評価指標として用いた。ランダム入射吸音率は、残響室法吸音率とも呼ばれるもので、JIS A 1409に準じた方法により、残響室内で音を出して急に止めた際の、残響音の減衰時間から算出したものである。本実施例では、図4に示すように、容積(V)64m3、表面積(S)100m2、V/S=0.64の残響室10内の床面10aのほぼ中央に、縦1m、横1mの大きさの実施例及び比較例の吸音構造体11を設置し、吸音構造体11の周囲には20mm厚のアクリル板からなる高さ800mmの拡散板枠12を設置した。そして、音源13を、吸音構造体11から離れた位置に配置した。このようにして、吸音構造体11の表面11aに対して、ランダムな方向から音(音による空気振動)が入射するようにした。
(実施例1)
塩素化ポリエチレン(以下CPEという)とDBSとが質量比でDBS/CPE=50/50の割合で配合されてなる厚み0.7mmの有機ハイブリッドシートを用意した。また、縦100mm、横100mmの開口部が幅9mmの壁面部によって区画形成されてなる厚み5mmの木製のスペーサ部材を用意した。更に、厚み20mmのアクリル樹脂製の背面板を用意した。これら有機ハイブリッドシート、スペーサ部材及び背面板を重ね合わせ、相互に接着剤で接合することにより、縦1m、横1m、厚さ25.7mmの実施例1の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦100mm、横100mm、厚み5mmであった。
厚みが10mmのスペーサ部材を用意したこと以外は上記実施例1と同様にして、実施例2の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦100mm、横100mm、厚み10mmであった。
有機ハイブリッドシートに代えて、シリコーンゴムからなる厚み0.7mmのSiゴムシートを用意したこと以外は上記実施例1と同様にして、比較例1の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦100mm、横100mm、厚み5mmであった。
有機ハイブリッドシートに代えて、シリコーンゴムからなる厚み0.7mmのSiゴムシートを用意するとともに、厚みが10mmのスペーサ部材を用意したこと以外は上記実施例1と同様にして、比較例2の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦100mm、横100mm、厚み10mmであった。
表1及び図5に示すように、実施例1では、400Hz付近に、ランダム入射吸音率0.4の吸音ピークが確認されるとともに、1000Hz付近に、ランダム入射吸音率0.56程度の吸音ピークが確認された。
また、実施例2では、315Hz付近に、ランダム入射吸音率0.36を示す吸音ピークが確認されるとともに、630Hz付近に、ランダム入射吸音率0.56の吸音ピークが確認された。
一方、比較例1では、1000Hz付近に、ランダム入射吸音率0.7の吸音ピークが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域では吸音ピークが観察されなかった。同様に、比較例2では、630Hz付近に、ランダム入射吸音率0.56の吸音ピークが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域では吸音ピークが観察されなかった。
(実施例3)
CPEとDBSとが質量比でDBS/CPE=50/50の割合で配合されてなる厚み1.0mmの有機ハイブリッドシート2を用意した。また、縦100mm、横100mmの開口部が幅9mmの壁面部によって区画形成されてなる厚み10mmの木製のスペーサ部材4を用意した。更に、厚み20mmのアクリル樹脂製の背面板5を用意した。これら有機ハイブリッドシート2、スペーサ部材4及び背面板5を重ね合わせ、相互に接着剤で接合することにより、図6(a)に示すような、縦1m、横1m、厚さ31mmの実施例3の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室3(背後空気室)の大きさは、縦100mm、横100mm、厚み10mmであった。
有機ハイブリッドシート2及びスペーサ部材4を接着剤で接合し、スペーサ部材4と背面板5とを厚さ0.1mmの粘土材14を介して重ね合わせたこと以外は実施例3と同様にして、図6(b)に示すような、実施例4の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室3(背後空気室)の大きさは、縦100mm、横100mm、厚み10.1mmであった。なお、スペーサ部材4と背面板5との間に粘土材14を配置したことにより、背後空気室の気密状態は充分であった。
実施例3と同じ有機ハイブリッドシートと、実施例3と同じスペーサ部材を用意し、これら有機ハイブリッドシート2及びスペーサ部材4を重ね合わせて相互に接着剤で接合し、厚み0.1mmの粘土材14を介して有機ハイブリッドシート2及びスペーサ部材4を、図4の残響室10の床面10a上に設置したこと以外は実施例3と同様にして、図6(c)に示すような、実施例5の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室3(背後空気室)の大きさは、縦100mm、横100mm、厚み10.1mmであった。なお、床面10aとスペーサ部材4との間に粘土材14を配置したことにより、背後空気室の気密状態は充分であった。
実施例3と同じ有機ハイブリッドシートと、実施例3と同じスペーサ部材を用意し、これら有機ハイブリッドシート2及びスペーサ部材4を重ね合わせて相互に接着剤で接合し、これら有機ハイブリッドシート2及びスペーサ部材4を残響室の床面10a上に単に設置したこと以外は実施例3と同様にして、図6(d)に示すような、比較例3の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室3(背後空気室)の大きさは、縦100mm、横100mm、厚み10mmであった。なお、スペーサ部材4と残響室の床面10aとの間には僅かな隙間があり、このため背後空気室の気密状態は不十分であった。
表1及び図7に示すように、実施例3では、315Hz付近にランダム入射吸音率0.44の吸音ピークが確認されるとともに、500〜630Hz付近にランダム入射吸音率0.55程度の吸音ピークが確認された。
また、実施例4及び5では、400Hz付近にランダム入射吸音率0.42〜0.44の吸音ピークが確認されるとともに、630Hz付近にランダム入射吸音率0.60の吸音ピークが確認された。
一方、比較例3では、630Hz付近にランダム入射吸音率0.6を示す吸音ピークが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域には吸音ピークが観察されなかった。
(実施例6)
CPEとDBSとが質量比でDBS/CPE=50/50の割合で配合されてなる厚み1.0mmの有機ハイブリッドシートを用意した。また、縦75mm、横75mmの開口部が幅9mmの壁面部によって区画形成されてなる厚み10mmの木製のスペーサ部材を用意した。更に、厚み20mmのアクリル樹脂製の背面板を用意した。これら有機ハイブリッドシート、スペーサ部材及び背面板を重ね合わせ、相互に接着剤で接合することにより、縦1m、横1m、厚さ31mmの実施例6の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦75mm、横75mm、厚み10mmであった。
縦100mm、横100mmの開口部を備え、厚みが10mmのスペーサ部材を用意したこと以外は上記実施例6と同様にして、実施例7の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦100mm、横100mm、厚み10mmであった。
縦150mm、横150mmの開口部を備え、厚みが10mmのスペーサ部材を用意したこと以外は上記実施例6と同様にして、実施例8の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦150mm、横150mm、厚み10mmであった。
有機ハイブリッドシートに代えて、シリコーンゴムからなる厚み1.0mmのSiゴムシートを用意するとともに、縦150mm、横150mmの開口部を備え、厚みが10mmのスペーサ部材を用意したこと以外は上記実施例6と同様にして、比較例4の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦150mm、横150mm、厚み10mmであった。
厚みが10mmのグラスウールからなるシートを比較例5の吸音構造体とした。
CPEとDBSとが質量比でDBS/CPE=70/30の割合で配合されてなる厚み1.0mmの有機ハイブリッドシートを用意するとともに、縦1000mm、横1000mmの開口部を備え、厚みが10mmのスペーサ部材を用意したこと以外は上記実施例6と同様にして、比較例6の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦1000mm、横1000mm、厚み10mmであった。
CPEとDBSとが質量比でDBS/CPE=70/30の割合で配合されてなる厚み1.0mmの有機ハイブリッドシートを用意するとともに、縦10mm、横10mmの開口部を備え、厚みが10mmのスペーサ部材を用意したこと以外は上記実施例6と同様にして、比較例7の吸音構造体を製造した。製造された吸音構造体の気密空気室(背後空気室)の大きさは、縦10mm、横10mm、厚み10mmであった。
表1及び図8に示すように、実施例6〜8では、250〜315Hz付近に、ランダム入射吸音率0.3〜0.36程度の吸音ピークが確認されるとともに、500〜630Hz付近に、ランダム入射吸音率0.55〜0.7程度の吸音ピークが確認された。
一方、比較例4では、630Hz付近にランダム入射吸音率0.55の吸音ピークが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域には吸音ピークが観察されなかった。
また、比較例5では、3150Hz付近の高音域にランダム入射吸音率0.8の吸音ピークが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域において吸音ピークは観察されなかった。
更に、比較例6及び7では、400Hz以下の周波数帯域に吸音ピークは確認されなかった。
(実施例9〜14)
CPEとDBSとが質量比でDBS/CPE=70/30の割合で配合されてなる厚み1.0〜1.5mmの有機ハイブリッドシートを用意した。また、縦100mm、横100mmの開口部が幅9mmの壁面部によって区画形成されてなる厚み10〜30mmの木製のスペーサ部材を用意した。更に、厚み20mmのアクリル樹脂製の背面板を用意した。これら有機ハイブリッドシート、スペーサ部材及び背面板を重ね合わせ、相互に接着剤で接合することにより、表1に示すような、縦1m、横1m、厚さ31〜51.5mmの実施例9〜14の吸音構造体を製造した。
表1、図9及び図10に示すように、実施例9〜14では、250〜400Hz付近に、ランダム入射吸音率0.33〜0.73の吸音ピークが確認されるとともに、500〜800Hz付近に吸音ピークが確認された。表1の結果から、気密空気室の厚みが10〜30mmの範囲で、400Hz以下の周波数帯域におけるランダム入射吸音率が改善されることがわかる。
(実施例15、16)
CPEとDBSとが質量比でDBS/CPE=70/30の割合で配合されてなる厚み0.3mm及び3mmの有機ハイブリッドシートを用意した。また、縦100mm、横100mmの開口部が幅9mmの壁面部によって区画形成されてなる厚み30mmの木製のスペーサ部材を用意した。更に、厚み20mmのアクリル樹脂製の背面板を用意した。これら有機ハイブリッドシート、スペーサ部材及び背面板を重ね合わせ、相互に接着剤で接合することにより、表2に示すような、縦1m、横1m、厚さ50.3〜53.0mmの実施例15及び16の吸音構造体を製造した。
有機ハイブリッドシートの厚みが0.2mm及び5mmであること以外は上記実施例15及び16と同様にして、比較例8及び9の吸音構造体を製造した。
表2及び図11に示すように、実施例15では、400Hz付近にランダム入射吸音率0.6程度の吸音ピークが確認されるとともに、500Hz付近にランダム入射吸音率0.8程度の吸音ピークが確認された。
また、実施例16では、250Hz付近にランダム入射吸音率0.4程度の吸音ピークが確認されるとともに、500Hz付近にランダム入射吸音率0.40程度の吸音ピークが確認された。
一方、比較例8では、500Hz付近にランダム入射吸音率0.60程度の吸音ピークと、1000Hz付近にランダム入射吸音率0.40程度の吸音ピークとが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域には吸音ピークが観察されなかった。
また、比較例9では、500Hz付近にランダム入射吸音率0.15程度の吸音ピークが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域には吸音ピークが観察されなかった。
(実施例17、18)
CPEとDBSとが質量比で、DBS/CPE=20/80と、DBS/CPE=80/20との割合でそれぞれ配合されてなる厚み1mmの有機ハイブリッドシートを用意した。また、縦100mm、横100mmの開口部が幅9mmの壁面部によって区画形成されてなる厚み10mmの木製のスペーサ部材を用意した。更に、厚み20mmのアクリル樹脂製の背面板を用意した。これら有機ハイブリッドシート、スペーサ部材及び背面板を重ね合わせ、相互に接着剤で接合することにより、表2に示すような、縦1m、横1m、厚さ31mmの実施例17及び18の吸音構造体を製造した。
CPEとDBSとが質量比で、DBS/CPE=0/100と、DBS/CPE=90/10との割合でそれぞれ配合されてなる有機ハイブリッドシートを用意したこと以外は、上記実施例17及び18と同様にして、比較例10及び11の吸音構造体を製造した。
表2及び図12に示すように、実施例17では、400Hz付近にランダム入射吸音率0.40程度の吸音ピークが確認されるとともに、800Hz付近にランダム入射吸音率0.70程度の吸音ピークが確認された。
また、実施例18では、315Hz付近にランダム入射吸音率0.40程度の吸音ピークが確認されるとともに、630Hz付近にランダム入射吸音率0.70程度の吸音ピークが確認された。
一方、比較例10では、500Hz付近にランダム入射吸音率0.65程度の吸音ピークと、1000Hz付近にランダム入射吸音率0.40程度の吸音ピークとが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域には吸音ピークが観察されなかった。
また、比較例11では、有機ハイブリッドシートが非常に脆くなり、吸音率の測定が不可能であった。
(比較例12)
CPEとDBSとが質量比で、DBS/CPE=50/50の割合で配合されてなる厚み1mmの有機ハイブリッドシートを用意した。また、縦100mm、横100mmの開口部が幅9mmの壁面部によって区画形成されてなる厚み3mmの木製のスペーサ部材を用意した。更に、厚み20mmのアクリル樹脂製の背面板を用意した。これら有機ハイブリッドシート、スペーサ部材及び背面板を重ね合わせ、相互に接着剤で接合することにより、表2に示すような、縦1m、横1m、厚さ24mmの比較例12の吸音構造体を製造した。
表2及び図13に示すように、比較例12では、630Hz付近にランダム入射吸音率0.30程度の吸音ピークと、1000Hz付近にランダム入射吸音率0.36程度の吸音ピークとが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域には吸音ピークが観察されなかった。
(実施例19、20)
フタル酸ジ−2−エチルヘキシル(DEHP)とポリ塩化ビニル(PVC)とが質量比でDEHP/PVC=50/50の割合で配合されてなる厚み1mm及び1.5mmの有機ハイブリッドシートを用意した。また、縦100mm、横100mmの開口部が幅9mmの壁面部によって区画形成されてなる厚み30mmの木製のスペーサ部材を用意した。更に、厚み20mmのアクリル樹脂製の背面板を用意した。これら有機ハイブリッドシート、スペーサ部材及び背面板を重ね合わせ、相互に接着剤で接合することにより、表2に示すような、縦1m、横1m、厚さ51〜51.5mmの実施例19及び20の吸音構造体を製造した。
有機ハイブリッドシートの厚みを0.1mm及び5mmとした以外は上記実施例19及び20と同様にして、比較例13及び14の吸音構造体を製造した。
表2及び図14に示すように、実施例19では、315Hz付近にランダム入射吸音率0.60程度の吸音ピークが確認されるとともに、630Hz付近にランダム入射吸音率0.40程度の吸音ピークが確認された。
また、実施例20では、250Hz付近にランダム入射吸音率0.60程度の吸音ピークが確認されるとともに、500Hz付近にランダム入射吸音率0.40程度の吸音ピークが確認された。
一方、比較例13では、630Hz付近にランダム入射吸音率0.64程度の吸音ピークが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域において吸音ピークは観察されなかった。
また、比較例14では、500Hz付近にランダム入射吸音率0.14程度の吸音ピークが確認されたが、400Hz以下の周波数帯域において吸音ピークは観察されなかった。
Claims (7)
- マトリックスポリマー中に有機低分子材料が分散されてなる有機ハイブリッドシートと、前記有機ハイブリッドシートの裏面側に隣接する気密空気室とが備えられ、前記有機ハイブリッドシートの表面側から音による空気振動が印加された際に、400Hz以下の周波数帯域においてランダム入射吸音率が0.3以上の吸音ピークと、前記吸音ピークよりも高周波帯域側においてランダム入射吸音率が0.3以上の別の吸音ピークとが同時に発現するように、前記有機ハイブリッドシートが前記気密空気室に対して振動自在に取り付けられていることを特徴とする吸音構造体。
- 前記気密空気室が複数備えられ、かつ各気密空気室同士が相互に分離されていることを特徴とする請求項1に記載の吸音構造体。
- 前記気密空気室が、前記有機ハイブリッドシートの裏面と、前記裏面に対向配置された背面部と、前記背面部の周縁部から前記有機ハイブリッドシート側に向けて立設された壁面部とによって区画形成されてなり、前記壁面部と前記有機ハイブリッドシートの裏面とが密着されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の吸音構造体。
- 前記複数の気密空気室がそれぞれ、前記壁面部によって相互に分離されていることを特徴とする請求項3に記載の吸音構造体。
- 前記気密空気室の厚みが5mm以上30mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の吸音構造体。
- 前記有機ハイブリッドシートの厚みが0.3mm以上3mm以下の範囲であることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の吸音構造体。
- 前記有機ハイブリッドシートが、塩素化ポリエチレンからなるマトリックスポリマー中にN,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルファミンアミドからなる有機低分子材料が分散されたものか、ポリ塩化ビニルからなるマトリックスポリマー中にフタル酸ジエチルヘキシルからなる有機低分子材料が分散されたものであることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の吸音構造体。
Priority Applications (1)
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