以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態を、複数の形態について説明する。各形態で先行する形態で説明している事項に対応している部分には同一の参照符を付し、重複する説明を略する場合がある。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、先行して説明している形態と同様とする。実施の各形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施の形態同士を部分的に組合せることも可能である。
図1は、本発明の第1の実施の形態のスローアウェイチップ10を示す平面図である。図2は、スローアウェイチップ10を示す側面図である。図3は、スローアウェイチップ10の軸線方向一端部10aを拡大して示す正面図である。スローアウェイチップ(以下、「チップ」ということがある)10は、ホルダ11(図6参照)に装着されて内径加工用の切削工具12として用いられる。チップ10は、棒状をなし、軸線方向一端部10aに切刃13が形成され、軸線方向他端部10bがホルダ11に着脱可能に設けられる。
チップ10は、ホルダ11に固定されるホルダ拘束部14と、ホルダ装着状態でホルダ11から突出する突出部15とを含む。チップ10の軸線方向一端部10a、換言すると、突出部15の先端部10aに設けられる切刃13は、その側面に横切刃13aが設けられ、横切刃13aに続く側面から半径方向外方に凸となるように設けられる。これによって突出部15が、被削材に干渉することを防止することができる。切刃13の先端は、いわゆるシャープエッジであってもよいがたとえばR=0.2mm以下のR面取であってもよい。ここで、切刃13を形成する方法としては、棒状の突出部15を作製した後、突出部15の切刃13より後端の部分を研磨して作製してもよいし、切刃13を成す前駆体が棒状の突出部15よりも予め半径方向外方に大径となるように棒状体を作製してもよい。
突出部15において、切刃13の上面にはすくい面16が形成されており、すくい面16はブレーカとして機能するように凹曲面を成している。切刃13の先端面側には前切刃13bが、切刃13の側面側には横切刃13aがそれぞれ形成されている。さらに、すくい面16と突出部15との間には切屑を効率よく排出するための切り欠き部が形成されている。チップ10の突出部15は、大略的には断面が円形にて形成されるが、内径加工の際に切屑の排出性をよくし、かつ加工後の被削材壁面との干渉を防止するために、突出部15の断面が楕円形状、または円もしくは楕円の一部を切り欠いた形状が選択される。
ホルダ拘束部14は、チップ10の軸線方向他端部10bに形成される。ホルダ拘束部14は、加工の容易性、製造工程の短縮化、チップ10の取付精度向上および拘束力向上の点で、軸線方向に垂直な第1仮想平面33で切断して見た断面の大部分が円形に形成される。換言すると、ホルダ拘束部14は、軸線方向に沿って延びる丸棒状、すなわち略円柱状に形成され、その先端部にカット面部17が形成される。軸線は、本実施の形態では、ホルダ拘束部14の中心軸線である。チップ10は、たとえば超硬合金またはサーメットから成る。ホルダ拘束部14と突出部15との寸法の関係は、ホルダ拘束部14の径r1よりも突出部15の径r2が小径に形成される。ホルダ拘束部14の径r1に対する突出部15の径r2の比r2/r1は、好ましくは「0.15」以上「1」以下に設定され、さらに好ましくは「0.3」以上「0.8」以下に設定される。チップ10の全長L1に対する突出部15の長さL2の比L2/L1は、好ましくは「0.1」以上「0.6」以下に設定され、さらに好ましくは「0.1」以上「0.4」以下に設定される。
図4は、チップ10の軸線方向他端部10bを拡大して示す側面図である。図5は、チップ10の軸線方向他端部10bを、図1に示す切断面線V−Vで切断して示す断面図である。図5では、理解を容易にするために、形状を誇張して示す。チップ10の軸線方向他端部10bであるホルダ拘束部14の先端部10bは、図1に示すように、軸線方向に対する長さが短い部分のある拘束面部であるカット面部17を有する形状からなる。カット面部17は、軸線方向に垂直な第1仮想平面33に交差する拘束面であるカット面17aを有する。したがってカット面部17は、軸線方向に垂直な第1仮想平面33に対して傾斜したカット面17aを有する。ホルダ拘束部14の先端部10bに設けられるカット面部17は、本実施の形態では、軸線方向に対して交差する斜め方向に切断されて設けられる。カット面部17の外方に臨むカット面17aのカット角度θ、すなわちチップ10の軸線方向に対するカット面17aの角度θは好ましくは30以上60度以下、さらに好ましくは40以上50度以下に設定される。
カット面部17には、第1拘束部分30と第2拘束部分31と凹部分32とが形成されている。第1拘束部分30は、カット面17a上の2点35,36であって、チップ10の軸線を含む第2仮想平面34(軸線方向)に交差する第1仮想直線上で、前記第2仮想平面34を挟む位置にある2点35,36のうち、一方の点(以下、単に「第1拘束点」ということがある)35を含む部分である。第2拘束部分31は、前述のカット面17上の2点35,36のうち、他方の点(以下、「第2拘束点」ということがある)36を含む部分である。前述の第1仮想直線は、本実施の形態では、第2仮想平面34に直交する方向に延びるように設定される。カット面部17の幅方向は、前述の第1仮想直線と略平行である。
凹部分32は、前記第1拘束部分30と前記第2拘束部分31とに挟まれ、前記2点(以下、「拘束2点」ということがある)35,36を結ぶ線分37から離間するように形成される。したがって第1拘束部分30と第2拘束部分31とは、凹部分32によって分断されている。凹部分32は、カット面17aから、カット面17aと略垂直な方向に凹となる凹面32aを有する。換言すると、凹面32aは、前述の線分37を含む仮想平面と間隔をあけて形成される。
凹部分32は、少なくともホルダ拘束部14の軸線が通る位置に形成されている。凹部分32は、カット面17a上であって、前記拘束2点35,36を結ぶ線分37に略直交する方向に沿って延びるよう配設される。換言すると、凹部分32は、カット面17aと軸線を含む第2仮想平面34とが交差してできる仮想線に沿って延びるように規定される。凹部分32は、カット面17aの一端から他端に向かって帯状に形成されており、具体的には、カット面17aにおける前記軸線方向の一端から軸線方向の他端に向かって形成されている。凹部分32の幅方向の一端部が第1拘束点35となり、他端部が第2拘束点36となる。したがって拘束2点35,36は、カット面17a上であって、最も突出している部分に形成される2点35,36であり、凹部分32によって拘束2点35,36は離間している。
凹部分32の幅寸法Wは、延びる方向に沿って一様となるように形成される。凹部分32の幅寸法Wは、カット面17aの最大の幅寸法Hに対して、好ましくは0.3H<W<0.7Hの範囲となるように設定される。凹部分32の深さ寸法は、チップ10の軸線方向他端部10bの強度および加工の容易さによって選択される。
図6は、チップ10と、固定部材20を含むホルダ11との関係を示す断面図である。図7は、チップ10のカット面部17と、固定部材20との関係を示す断面図である。図8は、切削工具12を示す分解斜視図である。図9は、ホルダ装着状態におけるホルダ11を示す断面図である。チップ10は、ホルダ11に装着されたホルダ装着状態で、切削工具12として用いられる。ホルダ11は、ホルダ本体19、固定部材20、押え部材21およびクーラントジョイント22を含んで構成される。ホルダ本体19には、チップ10のホルダ拘束部14が挿入される。固定部材20は、固定部であって、ホルダ装着状態でチップ10のカット面17aに当接する。押え部材21は、チップ10を固定部材20およびホルダ本体19に対して押圧する。クーラントジョイント22は、ホルダ11内から冷却液を供給可能に設けられる。
ホルダ本体19は、大略、軸線方向に延びる角棒状であって、その厚み方向一方からみてL字状に構成される。ホルダ本体19には、固定部材20、押え部材21、クーラントジョイント22がそれぞれ着脱可能に構成される。ホルダ本体19の軸線方向一端部19aには、ホルダ拘束部14が挿通可能なチップ凹部23が形成され、さらに押え部材21のタブルねじ21aが螺合可能な内ねじが刻設される押え凹部24が形成される。押え凹部24の軸線は、ホルダ本体19の軸線と交差するように設けられ、換言すると、押え凹部24は開口部から底部に向かうにつれて、チップ凹部23の軸線に向かうように構成される。
ホルダ本体19の軸線方向および厚み方向に直交する幅方向一端部19bには、固定部材20が挿通可能な固定凹部25が形成され、この固定凹部25と前記チップ凹部23との各軸線は略直交するように形成され、固定凹部25とチップ凹部23と連通するように構成される。またホルダ本体19の幅方向他端部19cには、クーラントジョイント22を螺合可能な内ねじが刻設されるジョイント凹部26が形成される。押え部材21は、前記ダブルねじ21aおよび押え金具21bを含む。これらのうちダブルねじ21aには、押え凹部24に螺合可能な外ねじが刻設される。押え金具21bには、ダブルねじ21aの軸線方向一端側を貫通させるとともに軸線方向他端側の貫通を規制する貫通孔が形成される。クーラントジョイント22には、ジョイント凹部26に螺合可能な外ねじが刻設される。クーラントジョイント22は、ジョイント凹部26に予め螺着される。
固定部材20は、ホルダ装着状態では、前述のカット面部17の拘束2点35,36、つまり第1拘束部分30および第2拘束部分31に当接し、拘束2点35,36を結ぶ線分37に沿う側面20aを有する側面部が形成される。固定部材20は、ホルダ装着状態では、カット面17aが当接するホルダ11側の一部分であり、棒状部材に構成され、本実施の形態では加工が容易な円柱状に形成される。固定部材20は、予め固定凹部25に挿通されており、固定凹部25にタイトに設けられ、ホルダ本体19に対して固定部材20の半径方向に不所望に変位しないように構成される。固定部材20は、たとえば鋼材から成り、好ましくは、耐摩耗性、および耐塑性変形性の点で超硬合金、サーメットまたはセラミックスから成る。固定部材20は、チップ10と当接する部分が精度よく合わせられる。
図9に示すように、チップ10のホルダ拘束部14をチップ凹部23に挿通すると、カット面17aが固定部材20の固定面である側面20aに当接する。このようにカット面17aが固定部材20の側面部を形成する側面20aに当接した状態で、押え部材21を螺進させることによって、図9に示すように、ホルダ拘束部14を固定部材20の固定面部である側面部に向かって押圧し、かつホルダ本体19の幅方向に向かって押圧する。
図10は、ホルダ装着状態における固定部材20とカット面17aと、固定部材20の軸線方向に対して垂直な方向から見て、拡大して示す図である。前述したように、ホルダ装着状態では、固定部材20の側面20aは、第1拘束部分30および第2拘束部分31とが有する拘束2点35,36を含む面であって、前記拘束2点35,36を結ぶ線分37に沿う。したがってホルダ装着状態では、側面20aと第1拘束部分30および第2拘束部分31とは、それぞれ当接し、凹部分32とは離間している。したがって固定面とカット面17aとは、拘束2点35,36で接触しているので、チップ10が軸線まわりに角変位することを防止する。
図11は、切削工具12の切削状態を説明するための平面図である。切削工具12は、旋削加工用として用いられ、特に内径加工用として好適に用いられる。切削工具12は、被削材28に予め定め形成された孔の内壁面28aを加工するために、被削材28を軸線まわりに回転させて、チップ10の切刃13を前記内壁面28aに当接させて旋削する。孔の内径が4mm以下、特に3mm以下の極小径の内径加工用として最適であり、かかる極小内径加工においても安定して高精度で滑らかな仕上げ面を有する品質の高い加工を達成することができる。
以上説明したように、本実施の形態の切削工具12では、チップ10の前記軸線方向他端部には、軸線方向に垂直な第1仮想平面33に交差するカット面17aを有するカット面部17が形成される。したがってホルダ11に装着した状態では、軸線回りの角変位をカット面17aによって規制することができる。前記カット面部17には、前述したように第1拘束部分30と第2拘束部分31と凹部分32とが形成されている。第1拘束部分30は、カット面17a上の拘束2点35,36であって、軸線を含む第2仮想平面34に交差する仮想直線上で、前記第2仮想平面34を挟む位置にある拘束2点35,36のうち、一方の点35を含む。また第2拘束部分31は、前記拘束2点35,36のうち、他方の点36を含む。凹部分32は、前記第1拘束部分30と前記第2拘束部分31とに挟まれ、前記拘束2点35,36を結ぶ線分37から離間する。
このようにカット面部17が形成されるので、従来の技術のようなカット面部17のカット面17aが凸状となってホルダ11に1点で点接触することを、凹部分32によって防ぐことができる。したがってホルダ11に装着された状態では、第1拘束部分30と第2拘束部分31とを拘束2点35,36で確実にホルダ11の側面20aに当接させることができる。これによって安定したホルダ装着状態を維持する切削工具を実現することができる。したがってチップ10の軸線まわりにトルクが作用しても、チップ10が不所望にホルダ11に対して角変位することを容易に防ぐことができる。それ故、チップ10の軸線まわりの角変位を防ぐべく、カット面17aを平面状に研磨加工する工程を増やす必要がなくなる。また、研磨加工以外の特殊な加工方法によってカット面17aを平面状にすることなく、単に前述のような凹部分32を形成するだけで、本発明を実現することができる。このような加工工数の増大を防止し、所期の効果(角変位防止)を達成するとともにチップ10の製造費を低減することが可能となる。
したがってチップ10の軸線方向一端部に形成される切刃が、ホルダ11装着状態で、不所望に変位することを可及的に防止できるので、切刃によって加工される被削材を所望の形状に高精度に加工することができる。これによって機械精密部品の高精度および安定加工と生産性の向上を実現することができる。
また本実施の形態では、凹部分32は、少なくともホルダ拘束部14の軸線が通る位置に形成されている。したがって凹部分32は、カット面部17の中心付近に形成される。このように凹部分32をカット面部17の外周寄りの偏った位置に形成するよりも、軸線が通る位置に形成することによって、ホルダ拘束部14に装着状態で偏った拘束力が作用することを防ぐことができる。これによってチップ10の軸線まわりにトルクが作用しても、チップ10が不所望にホルダ11に対して角変位することを容易に防ぐことができる。
また本実施の形態では、前記凹部分32は、カット面17a上であって、前記拘束2点35,36を結ぶ線分37に略直交する方向に沿って延びるよう配設される。したがって凹部分32をカット面17aの全体にわたって形成することができる。これによってホルダ11に装着するために、ホルダ11に当接させるべき領域を、つまり固定部材20の位置がカット面部17の一部分に限定されず、カット面17aの全体に形成することができる。したがってカット面17a上の位置によって、ホルダ11に装着する状態が制限されることがないので、より簡単にホルダ11に装着して、チップ10をホルダ11に固定することができる。また凹部分32は、カット面17aと軸線を含む第2仮想平面34とが交差してできる仮想線に沿って帯状に延びるように規定される。したがって凹部分32は、図4に示すように、側面から見た場合、軸線方向に沿って帯状に延びるので、凹部分32が、軸線方向に対して傾いているよりも、容易に形成することができる。また凹部分32は、帯状に延びるので、幅寸法Wは一様である。これによって凹部分32の形成が容易である。
また本実施の形態では、凹部分32の幅寸法Wは、カット面17aの最大の幅寸法Hに対して、好ましくは0.3H<W<0.7Hの範囲となるように設定される。凹部分32の幅寸法Wが0.3Hよりも小さくなると、チップ10を用いた切削時にカット面部17に作用する力が凹部分32に集中し、凹部分32が破損するおそれがある。また凹部分32の幅寸法Wが0.7Hよりも大きくなると、カット面部17の強度が低下して、チップ10を用いた切削時にカット面部17に作用する力によって、第1拘束部分30および第2拘束部分31から破損するおそれがある。したがって凹部分32の幅寸法Wは、カット面の最大の幅寸法Hに対して、好ましくは0.3H<W<0.7Hの範囲となるように設定することによって、カット面部17の破損を防止することができる。
また本実施の形態では、カット面17aを固定部材20に当接して固定することによって、チップ10を交換する際にも切刃13を精度よく位置決めして装着することができるとともに、チップ10を強固に拘束できることから切削中にチップ10が回転して切刃13の位置がずれたりチップ10が緩んだりすることを防止できる。
本実施の形態では、チップ10のカット面17aは軸線方向に対して交差する斜め方向に切断された形状に加工され、製造上寸法精度に優れ、製造が容易であるというメリットを有する。
またカット面17aは、局所的に応力が集中して局所的な摩耗や破損を防止するために、連続的または段階的に長さが短くなる構成、特に斜めにカットされた構造が好適である。カット面17aのカット角度θ(チップ10の軸線方向に対して垂直な仮想端面に対するカット面17aの角度)は30〜60度、特に40〜50度であることがチップ10の拘束力向上およびカット面17aの欠損防止、製造の容易性の点で望ましい。またカット面17aは、研磨加工に限らず、たとえばワイヤカットまたはレーザ加工で加工してもよい。
本実施の形態では、ホルダ拘束部14の径r1に対する突出部15の径r2の比r2/r1は、好ましくは0.15〜1に設定され、さらに好ましくは0.3〜0.8に設定されることによって、小径の内径加工が可能となり、かつホルダ11の拘束力を向上することができる。
また本実施の形態では、チップ10の全長L1に対する突出部15の長さL2の比L2/L1は、好ましくは0.1〜0.6に設定され、さらに好ましくは0.1〜0.4に設定されるので、チップ10を強固に拘束できるとともにチップ10を小形化することができる。また、チップ10は用途に応じて突出部15の直径、長さを変えることができ、かつホルダ拘束部14は同じ直径、長さとすることによって突出部15のサイズが異なるチップ10であっても同じホルダ11を用いて取り付けることができる。
また本実施の形態では、固定部材20は、円柱形状であるが、これに限ることはなく、たとえば、側面が長手方向に一部切り欠かれてチップ10と当接する部分が平面をなす形状、または多角柱形状であってもよい。
次に、本発明の第2の実施の形態に関して説明する。図12は、第2の実施の形態のチップ10Aの軸線方向他端部10bを拡大して示す側面図である。本実施の形態では、カット面部17に形成される凹部分32が、カット面部17の中央付近のみに形成されている点に特徴を有する。
凹部分32は、カット面部17の幅方向の中央部であって、幅方向に直交する長さ方向の中央部に形成される。したがって凹部分32の幅方向の両端部分が、第1拘束部分30および第2拘束部分31となる。これによってホルダ装着状態で、固定部材20を、第1拘束部分30および第2拘束部分31とだけに当接させ、換言すると2点接触するように配置することができる。したがって前述の実施の形態と同様の効果を達成することができる。また凹部分32がカット面部17の一部にのみ形成されるので、加工が容易である。したがってチップ10Bを低コストで実現することができる。
次に、本発明の第3の実施の形態に関して説明する。図13は、第3の実施の形態のチップ10Bの軸線方向他端部10bを拡大して示す側面図である。本実施の形態では、前述の第1の実施の形態のチップ10の第1拘束部分30および第2拘束部分31に、溝部18がそれぞれ形成されている点に特徴を有する。溝部18は、前述の第1拘束点35および第2拘束点36を含むように形成される。カット面部17には、ホルダ装着状態でホルダ11側の一部分に当接して、ホルダ11に対する軸線まわりの角変位を規制する溝部18がさらに形成される。図13では、理解を容易にするため、溝部18を誇張して示している。
前記溝部18は、本実施の形態ではカット面17aを研磨加工して形成される研磨筋18であり、前記カット面17aの算術平均粗さ(Ra)は、好ましくは0.02μm以上0.8μm以下に設定される。したがってチップ10Bの軸線方向他端部10bにおいて、複数の研磨筋18が形成される。各研磨筋18は、第1拘束部分30および第2拘束部分31に、前記拘束2点35,36を結ぶ線分37が延びる方向に略平行となるように形成される。本実施の形態では、各研磨筋18のうち少なくとも1つの研磨筋18は、カット面17a上の拘束2点35,36を含む仮想平面に沿って延び、かつ軸線方向に垂直に延びるように規定される。軸線方向他端部10bに形成される複数の研磨筋18の少なくとも1つの頂部18aを含む仮想平面は、カット面17aが有する前記拘束2点35,36を含む仮想平面と同一となるように規定される。
図14は、ホルダ装着状態における固定部材20とカット面17aとを拡大して示す図である(固定部材の軸線方向から見た図)。図15は、ホルダ装着状態における固定部材20とカット面17aとの当接領域を説明するための図であって、図13のカット面17aを拡大して示す図である。前述したように研磨筋18が延びる方向は、カット面17a上の拘束2点35,36を含む仮想平面と、チップ10Bの軸線を含む仮想平面とに略直交する方向に設定される。換言すると、前記研磨筋18は、ホルダ装着状態で固定部材20の軸線方向に平行となるように形成される。ホルダ装着状態では、複数の研磨筋18のうち、少なくとも1つの研磨筋18の頂部18aが、固定部材20の軸線方向の全域にわたって当接する。このようにホルダ装着状態にて、固定部材20に当接している領域が、拘束2点35,36を有する第1拘束部分30および第2拘束部分31として機能する。図15に示すように、当接領域27はチップ10Bの軸線に略直交する方向に延びるような領域27であるので、換言すると線接触しているので、チップ10Bが軸線まわりに角変位することを防止する。
以上説明したように、本実施の形態のチップ10Bでは、前記第1拘束部分30および前記第2拘束部分31には、前記拘束2点35,36を結ぶ線分37が延びる方向に略平行となる溝部18がそれぞれ形成されている。これによってホルダ11に装着したホルダ装着状態では、前記拘束2点35,36に当接し、さらに溝部18が延びる方向にわたって、固定部材20に当接させることができるので、第1拘束部分30および第2拘束部分31と固定部材20とを図15に示すように、線接触させることができる。これによってさらに安定してホルダ装着状態を維持することができる。
また本実施の形態では、前記溝部18は、ホルダ11側の一部分に当接するカット面17aを研磨加工して形成される研磨筋18であるので、スローアウェイチップ10Bの軸線方向他端部になんら特別な加工をすることなく、本発明を実現することができる。また溝部18は研磨筋18であるので、比較的微小に形成される。したがって当接領域の軸線方向の寸法を可及的に小さくすることができるので、接触圧力を大きくすることができ、さらに安定してホルダ装着状態を維持することができる。
また本実施の形態では、前記カット面17aの算術平均粗さ(Ra)は、0.02μm以上0.8μm以下であるので、研磨筋18を確実に固定部材20に当接させることができる。カット面17aの算術平均粗さ(Ra)は、0.02μmが研磨加工では加工限界であるので、0.02μm未満に加工するためには、ラッピング加工など特殊な加工方法を用いる必要があるため、加工コストが増加する。したがってコストを低く抑えることができる研磨加工によって、本発明を好適に実現することができる。
また固定部材20の少なくともカット面17aと当接する部分に、固定部材20の軸線方向に延びる溝部18を、カット面部17と同様に形成してもよい。これによって当接部分を微視的にみて、より線状に当接させることができ、よりチップ10Bをホルダ11に安定した状態で固定することができる。
また本実施の形態では、カット面17aの溝部18は研磨筋18によって実現されているが、これに限ることはなく、研磨加工を除く残余の加工方法によって形成してもよい。また溝部18は、カット面17aの全域にわたって延びて設けられる必要はなく、断続的に延びる、または不連続に延びるように設けても良い。このような溝部18によっても、ホルダ装着状態で、チップ10Bが軸線まわりに不所望に角変位することを防ぐことができる。
次に、本発明の第4の実施の形態に関して説明する。図16は、チップ10のホルダ拘束部14を拡大して示す平面図であって、カット面部17の他の形状を示す図である。カット面部17の形状は、前述の斜面の形状に限定されるものではなく、図16に示すように、図16(a)段階的に軸線に対する長さが短くなる構成、図16(b)カット面17aが曲面をなすように連続的に長さが短くなる構成等、カット面17aが連続的または段階的に長さが変化するようにカットされているものであってもよく、図16(c)断面方向の中央部に軸線方向の長さが短くなる凹部を設けて、ホルダの固定面部20がスローアウェイチップ14の2点の拘束点に当接し、固定面部20がこの2つの拘束点を結ぶ線分に沿う固定面を有する構成、またはこれら図16(a)〜図16(c)を組合わせ等いずれの構成であってもよい。このような構成であっても、カット面部17に形成される第1拘束部分30、第2拘束部分31および凹部分32によって、同様の作用効果を達成することができる。なお、図16(a)は、ホルダの固定面部20がスローアウェイチップ14の2つの拘束点に当接してはいるものの、固定面部20にはこの2つの拘束点を結ぶ線分に沿う固定面とはなっていないので、本発明外の参考例である。