JP4908675B2 - 重合体組成物及びそれを用いた易開封性シール材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、易開封性シール材料として好適なエチレン重合体組成物およびその利用に関する。とくにはポリプロピレン容器用蓋材のシール材料として好適なエチレン重合体組成物およびその利用に関する。
【0002】
【従来の技術】
ゼリー、プリン、ヨーグルトなどの容器として、易開封性蓋材を備えたプラスチック容器が広く使用されている。このような易開封性蓋材のシール層に用いられる熱溶融型接着剤として種々のものが提案され、実用化されてきた。例えばエチレン・酢酸ビニル共重合体やエチレン・アクリル酸エチル共重合体と粘着付与樹脂との組成物、これにポリエチレンや低結晶性エチレン・αーオレフィン共重合体などを配合した組成物などが、密封性と易開封性とを備えた優れたシール材となることが知られている。しかしながら容器本体に使用されるプラスチック材料の種類も増え、新しい材料に対しては従来のシール材では充分に対応できないものもあり、新たなシール材の出現が望まれている。また既存のプラスチック材料を使用した容器であっても、用途によっては望まれるヒートシール特性が異なっていたり、また他の特性が要求されたりすることがあり、このような要求に耐えられるようなシール材料も望まれている。
【0003】
例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリエステルなどが容器材料として古くから使用されてきたが、とくに上記ゼリー等の容器においては、透明性、耐熱性、衛生性、強度、コストなどの問題からポリプロピレンが多用されるようになってきた。プリン、ゼリー、シロップ漬け果物等の包装においては、内容物を容器口部一杯に充填すると、開封時に内容物が漏れ出すことがあるので、内容物と蓋材との間に少し空間を設ける程度に充填し、密封包装される。また充填・包装後に殺菌のために85〜95℃において数十分間熱水中でボイル処理される。
【0004】
このような用途においては、従来のシール材料に要求される諸性質、例えば、低温ヒートシール性、易開封性、、開封部の外観などが良好でヒートシール強度の温度依存性が小さいという性質のほかに、熱水処理時に容器空間の空気膨張によってシール部が破壊されないことや、熱水処理によるシール強度の変動がないことなども求められていた。そしてポリプロピレン製容器に対しては、このような諸性質を全て満足するようなシール材料は見出されていないのが現状であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明者等は、上記要求性能を全て満足し、したがってポリプロピレン容器用に好適なシール材を見出すべく検討を行った。その結果、エチレン・不飽和エステル共重合体と、ポリ−1−ブテンと、粘着付与樹脂とからなる重合体組成物が、種々のシール特性や耐熱水性に優れることを見出すに至り、本発明に到達した。
【0006】
したがって本発明の目的は、易開封性シール材料として好適な、とくにはポリプロピレン製容器の蓋材シーラントとして好適な重合体組成物を提供することにある。さらに詳細には、密封性、低温ヒートシール性、易開封性、開封部の外観に優れ、ヒートシール強度の温度依存性が少なく、また熱水処理によってもシール強度の変動が少ないシール材料となる重合体組成物を提供することにある。本発明の他の目的は、このような重合体組成物を用いた易開封性シール材料、及び基材にこのようなシール材料を積層してなる蓋材を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち本発明によれば、不飽和エステル含量が3〜15重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体とその等重量以下の低密度ポリエチレンとからなり、平均不飽和エステル含量が3〜15重量%である混合成分(A2)であるエチレン重合体成分(A)60〜90重量部、ポリ−1−ブテン(B)5〜30重量部及び粘着付与樹脂(C)1〜20重量部からなる重合体組成物からなる易開封性シール材料が積層されてなる蓋材が提供される。
【0008】
本発明によればまた、上記重合体組成物を使用した易開封性シール材料、及び基材に前記易開封性シール材料を積層してなる蓋材が提供される。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明で使用されるエチレン重合体成分(A)は、不飽和エステル含量が3〜15重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体とその等重量以下の低密度ポリエチレンとからなり、平均不飽和エステル含量が3〜15重量%である混合成分(A2)である。
【0010】
エチレン・不飽和エステル共重合体(A1)は、不飽和エステル含量が3〜15重量%、好ましくは5〜12重量%の範囲のものである。不飽和エステル含量が上記範囲より大きいものを使用すると、耐熱性が不足し、熱水処理するような容器のシール材として不適当となり、またポリプロピレンに対するシール強度の温度依存性も大きくなるので好ましくない。また不飽和エステル含量が上記範囲より小さいものを使用すると、ポリプロピレンに対するシール強度が小さくなり、密封性に問題を生じるので好ましくない。
【0011】
このようなエチレン・不飽和エステル共重合体(A1)の代わりに、不飽和エステル含量が3〜15重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体と、それと等重量以下、好ましくはその70重量%以下の低密度ポリエチレンとからなり、平均不飽和エステル含量が3〜15重量%、好ましくは5〜12重量%の混合成分(A2)を使用することができる。混合成分(A2)及びそれに用いるエチレン・不飽和エステル共重合体の不飽和エステル含量の限定理由は、(A1)のそれにおける限定理由と同じである。また混合成分(A2)において低密度ポリエチレンはヒートシール強度を低減させると共に、ヒートシール強度の温度依存性も低下させる働きをするが、その配合割合が、上記範囲より多くなる場合には、ポリプロピレンに対するシール強度が小さくなりすぎるので好ましくない。
【0012】
(A1)成分及び(A2)成分におけるエチレン・不飽和エステル共重合体の不飽和エステル成分としては、ビニルエステルおよび不飽和カルボン酸エステルなどであり、好ましくは酢酸ビニル及びアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸メチルのような(メタ)アクリル酸の低級アルキルエステルである。
【0013】
混合成分(A2)における低密度ポリエチレンは、密度900〜930kg/m3程度の高圧法ポリエチレン又は直鎖低密度ポリエチレンであり、とくに好ましくは高圧法ポリエチレンである。
【0014】
(A1)成分及び(A2)成分に使用される各重合体は、加工性やシール強度等を勘案すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが0.1〜150g/10分、とくに1〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0015】
本発明の重合体組成物の第二成分として使用されるポリ−1−ブテン(B)は、1−ブテンの単独重合体又は主要量の1−ブテンと少量の他のα−オレフィン、例えばエチレン、プロピレン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどの1種又は2種以上との共重合体であり、結晶性のものである。これらの中では単独重合体を使用するのが最も好ましい。
【0016】
本発明の重合体組成物の第三成分として使用される粘着付与樹脂(C)は、脂肪族系炭化水素樹脂、脂環族系炭化水素樹脂、芳香族系炭化水素樹脂、ポリテルペン系樹脂、ロジン類、スチレン系樹脂、クマロン・インデン樹脂などを挙げることができる。脂肪族炭化水素樹脂の例としては、1−ブテン、イソブテン、ブタジエン、1,3−ペンタジエン、イソプレンなどの炭素数4〜5のモノ又はジオレフィンの少なくとも一種以上を含む留分を重合して得られる樹脂を挙げることができる。脂環族系炭化水素樹脂の例として、スペントC4〜C5留分中のジエン成分を環化二量化後重合させて得られる樹脂、シクロペンタジエンなどの環状モノマーを重合させた樹脂、芳香族系炭化水素樹脂を核内水添した樹脂などを挙げることができる。
【0017】
芳香族系炭化水素樹脂の例として、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレンなどのC8〜C10のビニル芳香族炭化水素を少なくとも一種以上含有する留分を重合して得られる樹脂、あるいはこれら留分と上記脂肪族炭化水素留分を共重合して得られる樹脂などを挙げることができる。ポリテルペン系樹脂の例としては、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン・フェノール共重合体、α−ピネン・フェノール共重合体などを挙げることができる。
【0018】
ロジン類としては、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジン及びその変性物などであり、変性物としては水素添加、不均化、二量化、エステル化などの変性を施したものを例示することができる。スチレン系炭化水素樹脂としては、純度の高いスチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロピルトルエンなどのスチレン系単量体の一種又は二種以上を重合して得られる分子量の低い樹脂状重合体を挙げることができる。
【0019】
本発明の重合体組成物における上記各成分の配合割合は、エチレン重合体成分(A)60〜90重量部、好ましくは70〜85重量部、ポリ−1−ブテン(B)5〜30重量部、好ましくは10〜25重量部、粘着付与樹脂(C)が1〜20重量部、好ましくは2〜15重量部((A)、(B)、(C)の合計が100重量部)の範囲である。エチレン重合体成分(A)の配合割合が上記範囲より多く、またポリ−1−ブテンの配合割合が上記範囲より少ない場合は、ポリプロピレンに対するヒートシール強度が強くなりすぎ、開封性が悪化するのみならず、ヒートシール強度の温度依存性も大きくなりすぎるため好ましくない。一方、エチレン重合体成分(A)の配合割合が上記範囲より少なく、またポリ−1−ブテンの配合割合が上記範囲より多い場合には、ポリプロピレンに対するシール強度が大きくならず、密封性に問題を生じる。
【0020】
本発明の重合体組成物において粘着付与樹脂(C)の役割は低温ヒートシール性を改良するものであるが、あまり多量に配合するとシール強度が強くなりすぎ、また食品包装用途においては油抽出分が多くなるので好ましくない。
【0021】
本発明の重合体組成物においては、任意に各種添加剤を配合することができる。かかる添加剤の代表例としては、押出加工性、離ロール性、フイルムの滑り性などの改善の目的で使用される滑剤及び/又は離ロール剤を挙げることができる。より具体的には、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、ベヘニン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、オレイルパルミドアミド、ステアリルパルミドアミド、メチレンビスステアリルアミド、メチレンビスオレイルアミド、エチレンビスオレイルアミド、エチレンビスエルカ酸アミドなどの各種アミド類、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、水添ひまし油、シリカ、タルクなどの無機質添加剤などである。これらの配合量は、無機質添加剤の場合は0.1〜3重量%程度、それ以外のものは0.01〜1重量%程度の範囲が適当である。
【0022】
任意に配合し得る他の添加剤の例としては、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、帯電防止剤、顔料、染料などを例示することができる。
【0023】
本発明の重合体組成物は、上記(A)、(B)、(C)の各成分、及び任意に配合される添加剤を、同時に又は逐次的に混合することによって調製することができる。重合体組成物を調製するに当たっては、単軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー、各種ニーダーなどを用いて溶融混合するのが好ましく、その混合順序にはとくに制限はない。
【0024】
かくして得られる本発明の重合体組成物は、押出加工性、シール強度、耐ボイル性等を考慮すると、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレートが1〜150g/10分、とくに1〜30g/10分程度となるように調製されていることが望ましい。
【0025】
本発明の重合体組成物は、易開封性シール材料、とりわけポリプロピレン容器の蓋材シール材料として好適である。このような用途に使用される場合、通常は各種基材に積層した形で使用される。かかる目的に使用される基材としては、紙、アルミニウム、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、(高衝撃)ポリスチレン、アルミ蒸着ポリエステル、アルミ蒸着ポリプロピレン、シリカ蒸着ポリエステルなどを挙げることができる。このような基材は単層である必要はなく、2層以上の積層体であってもよい。
【0026】
本発明の重合体組成物を基材に積層させるには、該組成物を予めキャスト法やインフレーション法によりフイルム化し、ドライラミネーション法により基材と貼り合わせる方法、該組成物を直接基材上に押出コーティングする方法、ポリエチレン等を接着層として用い、基材上にサンドイッチラミネーションにより接着層を介して積層する方法、基材と該組成物を共押出する方法などを採用することができる。
【0027】
かくして得られる積層体は、各種包装材料として使用することができる。とくに各種容器、とりわけポリプロピレン製容器の蓋材として使用するときに密封性、易開封性、耐ボイル性等に優れた蓋材となる。またポリプロピレン製容器のみならず、他の材料の容器、例えば、ポリスチレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリ塩化ビニル等の容器の蓋材としても利用できる。このような蓋付容器は、例えば、ゼリー、プリン、ヨーグルト、みつ豆、サワー、豆腐、乳酸飲料、和菓子、加工肉などの飲食物、薬品、医療容器、トナーなどの各種包装に使用することができる。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。尚、実施例及び比較例において用いた原料及び得られた積層体の物性評価方法は、以下の通りである。
【0029】
1 原料
EVA−1:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量10重量%、MFR9g/10分)
EVA−2:エチレン・酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含量6重量%、MFR7.5g/10分)
LDPE:低密度ポリエチレン(商品名ミラソンM11、密度917kg/m3、MFR7g/10分)
PB−1:1−ブテン単独重合体(商品名タフマーBL4000、三井化学社製)
PB−2:1−ブテン・α−オレフィン共重合体(商品名タフマーBL3450、三井化学社製)
P115:水素添加芳香族炭化水素樹脂(商品名アルコン、荒川化学社製)
ELA:滑剤(エルカ酸アミド)
PEG:離ロール剤(ポリエチレングリコール)
【0030】
2 積層材の作成
重合体組成物を、65mm径の押出機によってダイ出口温度230℃の条件でTダイより溶融押出し、予め作成されていた延伸PET(厚さ12μm)/低密度ポリエチレン(厚さ20μm)からなる2層構成の積層フイルムのポリエチレンフイルム面に対して、ライン速度60m/分、コーティング厚さ30μmの条件で押出コーティングし、積層材を得た。
【0031】
3 積層材物性測定法
(1)ヒートシール強度
ヒートシーラーを用いて、積層材の重合体組成物面とポリプロピレンをヒートシールし、そのヒートシール強度を測定した(N/15mm)。
ヒートシール条件
温度 120℃、140℃、160℃、180℃、200℃
時間 1秒
圧力 0.2MPa
測定は、ヒートシール後、23℃×50%RH条件にて1日エージング後に行った。
【0032】
(2)開封時の剥離感及び糸曳き
開封時の剥離感は上記160℃、180℃、200℃でヒートシールした試料について、積層材を引き剥がしたときの感触により、次の3段階評価で行った。
○:スムースに剥離 △:ややパルス剥離 ×:激しいパルス剥離
また糸曳きは、引き剥がすときの状態観察により評価した。
【0033】
(3)耐ボイル性
・PPシートを用いたテスト
前記180℃でヒートシールした試料につき、87℃の熱水中に20分間浸漬した後のヒートシール強度を測定し、浸漬前のそれと比較した。
・PP容器を用いたテスト
上部径80mm、下部径60mm、深さ70mm、上部フランジ幅8mmの円錐台形状ポリプロピレン容器に空気約5mlを混在した水を充填し、カップシーラーを用いて180℃、1秒の条件で該容器のフランジ部に前記積層材をヒートシールしたものを試料に用い、87℃の熱水中に20分間浸漬した後のシール部の洩れ状況を観察した。
【0034】
[参考例1〜4、6、実施例5、比較例1]表1に示す各原料の混合物を、単軸押出機にて樹脂温度150℃の条件下で溶融混合し組成物とした。この組成物から上記方法にて積層材を作成し、その物性を測定した。ポリプロピレンシートによる評価を表1に併記し、実容器による評価を表2に示す。
【0035】
【表1】
【0036】
【表2】
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、易開封性シール材料として好適な重合体組成物を提供することができる。とくにポリプロピレンに対してヒートシールする場合、低温で適度なシール強度でシールすることができ、またヒートシール強度の温度依存性が小さく、ボイル処理をしてもシール強度の大きい変動がないので、ポリプロピレン容器の蓋材シール材料として好適である。
Claims (2)
- 不飽和エステル含量が3〜15重量%のエチレン・不飽和エステル共重合体とその等重量以下の低密度ポリエチレンとからなり、平均不飽和エステル含量が3〜15重量%である混合成分(A2)であるエチレン重合体成分(A)60〜90重量部、ポリ−1−ブテン(B)5〜30重量部及び粘着付与樹脂(C)1〜20重量部からなる重合体組成物からなる易開封性シール材料が積層されてなる蓋材。
- ポリプロピレン容器用に使用される請求項1に記載の蓋材。
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