JP4907949B2 - 熱可塑性樹脂組成物および成形品 - Google Patents

熱可塑性樹脂組成物および成形品 Download PDF

Info

Publication number
JP4907949B2
JP4907949B2 JP2005316558A JP2005316558A JP4907949B2 JP 4907949 B2 JP4907949 B2 JP 4907949B2 JP 2005316558 A JP2005316558 A JP 2005316558A JP 2005316558 A JP2005316558 A JP 2005316558A JP 4907949 B2 JP4907949 B2 JP 4907949B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
parts
monomer
mass
meth
thermoplastic resin
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2005316558A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2007119681A (ja
Inventor
孝浩 池辺
智紀 高瀬
直樹 小西
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
UMG ABS Ltd
Original Assignee
UMG ABS Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by UMG ABS Ltd filed Critical UMG ABS Ltd
Priority to JP2005316558A priority Critical patent/JP4907949B2/ja
Publication of JP2007119681A publication Critical patent/JP2007119681A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4907949B2 publication Critical patent/JP4907949B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

本発明は、各種工業材料として利用できる熱可塑性樹脂組成物および成形品に関し、特に耐候性に優れ、耐衝撃性、流動性が良好で、さらに広い成形温度領域で良好な艶消し外観を発現する熱可塑性樹脂組成物とそれを成形した成形品に関する。
樹脂材料の耐衝撃性を向上させることは、樹脂材料の用途を拡大させるだけでなく成形物の薄肉化や大型化への対応を可能にするなど、工業的な有用性が非常に高いため、樹脂材料の耐衝撃性向上については、これまでに様々な手法が提案されてきた。
このうち、ゴム質重合体と硬質樹脂とを組み合わせることによって、材料の耐衝撃性を高める手法は既に工業化されている。このような材料としては、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂、ハイインパクトポリスチレン(HIPS)樹脂、アクリロニトリル−スチレン−アクリル酸エステル(ASA)樹脂、変性PPE樹脂およびMBS樹脂強化ポリ塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂組成物が挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物の中でも、ゴム質重合体に飽和ゴムであるアルキル(メタ)アクリレートゴム等の成分を用いたASA樹脂やアルキル(メタ)アクリレートゴムとポリオルガノシロキサンとの複合ゴム等の成分を用いたSAS樹脂やエチレン−プロピレン系ゴム成分を用いたAES樹脂は良好な耐候性を有するという特徴を有する。
最近、ダッシュボードやインストルメントパネル等の自動車内装用部品や住宅用樹脂化建材等の分野を主体に、光沢が著しく低減された材料、いわゆる艶消し材料に対する需要が高まりつつある。
この様な艶消し化方法としては、架橋硬質重合体を熱可塑性樹脂組成物に配合する方法が提案されている(例えば特許文献1〜特許文献9参照)。
しかしながら、近年の厳しい材料スペックの要求は高まっており、これら先行技術により得られる熱可塑性樹脂では耐衝撃性等が不足し、その使用には制限があった。
また、その様な耐衝撃性の低下を避ける目的で、粒子サイズの大なるゴム状重合体を含む艶消し性の熱可塑性樹脂が提案されている(例えば、特許文献10〜特許文献14)。
しかし、これらの方法では耐衝撃性が低下しやすいとの問題は解決できるが、一方で艶消し外観の成形条件に対する依存性が大きくなり、成形品の部位によって光沢差が生じ易く、斑になり易い傾向があった。
さらに、この様な艶消し外観の条件依存性や斑の発生が少ない技術として、反応性の官能基を含有する重合体を配合する方法が提案されている(特許文献15〜特許文献21)。
しかし、これら技術では、樹脂材料の流動性低下が著しく、成形加工に支障がある場合が多く問題があった。
特開昭53−071146号公報 特開昭56−036535号公報 特開昭59−161459号公報 特開昭63−086756号公報 特開昭63−297449号公報 特開平08−073686号公報 特開平08−253641号公報 特開平08−199027号公報 特開2000−212293号公報 特開平02−214712号公報 特表平02−503322号公報 特表平11−508960号公報 特開平09−194656号公報 特開2000−198905号公報 特開昭60−018536号公報 特開昭61−236850号公報 特開昭63−156847号公報 特開昭63−156851号公報 特開平01−056762号公報 特開平01−101355号公報 特開平10−219079号公報
本発明は前記課題を解決するためになされたもので、耐候性、耐衝撃性、流動性、そして広い成形加工条件での艶消し性、のいずれもが優れた熱可塑性樹脂組成物および成形品を目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、酸基含有共重合体ラテックスにより肥大化処理された(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体を含むグラフト共重合体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須成分とする硬質共重合体とからなる熱可塑性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、以下の熱可塑性樹脂組成物および成形品を発明した。
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、酸基含有共重合体ラテックス(K)により肥大化処理された(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)に、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を含有するビニル系単量体成分がグラフト重合し、且つ、該ビニル系単量体成分に占めるシアン化ビニル系単量体含有量が27〜50質量%であるグラフト共重合体(A)20質量部〜80質量部と、メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体の共重合体であり、該メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体の質量比率が99/1〜90/10である硬質共重合体(B)80質量部〜20質量部からなることを特徴とするものである。
本発明の成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物を用いて成形されたものである。
尚、本明細書で「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」又は「メタクリル酸」を意味する。
本発明の熱可塑性樹脂組成物であれば、耐候性と耐衝撃性、流動性に優れており、特に成形温度などの条件依存性が小さく美麗な艶消し性を発現できる。そして、これらのバランスは従来の熱可塑性樹脂組成物では得られない非常に高いレベルであり、各種工業用材料としての利用価値は極めて高い。
<(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)>
本発明に係るグラフト共重合体(A)を構成する(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)は、(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位を有する重合体である。
用いられる(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルであり、好ましくはアクリル酸n−ブチルおよび/またはアクリル酸−2−エチルヘキシルである。これら(メタ)アクリル酸エステル系単量体においては、炭素数が1〜12であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須成分として用いることが好ましい。
また、(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)は、ゴム状重合体100質量部中に、前述した(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位の1種または2種以上を50質量部以上含むことが好ましい。得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が優れることから、好ましくは60質量部以上、より好ましくは70質量部以上である。
(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)には、上述の(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位以外に他の単量体単位を含ませることも可能である。用いることのできる他の単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族アルケニル化合物、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルやメタクリル酸グリシジル、メタクリル酸N、N−ジメチルアミノエチル等の官能基を有する他の(メタ)アクリル酸エステル、ブタジエンやクロロプレン、イソプレン等のジエン系化合物、アクリルアミドやメタクリルアミド、無水マレイン酸、N−置換マレイミド等である。これらは目的に応じて1種または2種以上を併用して用いることができる。
本発明においては、(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)を構成する単量体単位に、架橋剤単位とグラフト交叉剤単位のどちらか一方から少なくとも一種以上を含有することが好ましい。この様にすると、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と艶消し性とのバランスが良くなる傾向にある。
用いることのできる架橋剤やグラフト交叉剤の例としては、メタクリル酸アリル、シアヌル酸トリアリル、イソシアヌル酸トリアリル等のアリル化合物、ジビニルベンゼン、ジメタクリル酸エチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸プロピレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステル、ジメタクリル酸1,4−ブチレングリコールジエステル等のジ(メタ)アクリル酸エステル化合物が挙げられ、これらのうち2種類以上を併用して用いる。好ましくはグラフト交叉剤としてのアリル化合物と、架橋剤としてのジ(メタ)アクリル酸エステル化合物の組合せであり、より好ましくはグラフト交叉剤としてのメタクリル酸アリルと架橋剤としてのジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールジエステルと組合せである。また、含有される多官能性単量体単位は、(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体100質量部中、0.1質量部〜3質量部が好ましく、更に好ましくは0.1質量部〜1質量部である。
(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須成分とする単量体混合物と、二種以上の多官能性単量体とを混合した混合物を、乳化重合することにより、小粒子径の(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)を調製できる。小粒子径の(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)の質量平均粒子径としては特に限定されないが、酸基含有共重合体ラテックス(K)による肥大化が進行し易いことから、好ましくは30nm〜250nmであり、より好ましくは40nm〜200nm、さらに好ましくは50nm〜150nmである。250nmを越える場合には酸基含有共重合体ラテックス(K)による肥大化が進行し難くなり、結果として得られる熱可塑性樹脂組成物の艶消し性が悪化するため 好ましくない。
<肥大化>
肥大化剤として用いられる酸基含有共重合体ラテックス(K)とは、酸基含有単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル系単量体単位とを有する共重合体を含有するラテックスである。
酸基含有単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸およびクロトン酸等が挙げられ、(メタ)アクリル酸エステルとしては炭素数が1〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステルが好ましい。これについては(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)の製造に用いたものと同様のものが使用できる。ただし、本発明の目的である耐衝撃性と艶消し性、そして成形性に優れた熱可塑性樹脂組成物を得る目的には、酸基含有共重合体のガラス転移温度(Tg)は低い方が好ましく、アクリル酸エステル系単量体を用いることが好ましい。また、この際アルキル基の炭素数が多いアクリル酸エステル系単量体を用いることが更に好ましい。酸基含有共重合体中の(メタ)アクリル酸エステルの質量割合は、肥大化して得られる(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)の質量平均粒子径を制御しやすいこと、得られる熱可塑性樹脂組成物の艶消し性が優れることから、共重合体中0.1質量部〜30質量部が好ましく、さらに好ましくは10質量部〜25質量部である。また、酸基含有重合体ラテックス中の酸基含有重合体の質量平均粒子径は、小粒子径(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)を肥大化させる際のラテックスの安定性が優れ、肥大化して得られる(メタ)アクリル酸エステル系ゴム(G)の質量平均粒子径を制御しやすいこと、得られる熱可塑性樹脂組成物の艶消し性が優れることから、50nm〜250nmが好ましい。
本発明の(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)は、小粒子径の(メタ)アクリル酸エステル系ゴム重合体(g)が、前記酸基含有共重合体ラテックス(K)により肥大化処理されたものである。肥大化処理は、前述のごとく乳化重合で得られた小粒子径(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)ラテックス中に、酸基含有共重合体ラテックス(K)を添加することによって行われ、その肥大化方法については特開昭50−25655号公報や特開昭58−61102号公報、特開昭59−149902号公報等、既知の方法で行うことができる。
用いる酸基含有共重合体ラテックス(K)の適正な使用量としては、小粒子径(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)の性状や酸基含有共重合体ラテックス(K)の組成や性状にもよるが、小粒子径(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)100質量部(固形分)に対し、0.1質量部〜10質量部(固形分)である。好ましくは、0.3質量部〜5質量部である。この量が0.1質量部未満であった場合には、肥大化が進行しないばかりでなく、得られる熱可塑性樹脂組成物の艶消性が悪化し、さらには耐衝撃性が低下する傾向にある。また、10質量部を越える場合には得られる熱可塑性樹脂組成物の艶消性が再び低下する傾向にある。
よって、本発明の要旨は、酸基含有共重合体ラテックス(K)で肥大化処理され、この酸基含有共重合体を含む(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)を用いることによって、優れた艶消し外観を有する熱可塑性樹脂組成物を得ることにある。逆に、酸基含有共重合体ラテックス(K)を用いずに、小粒子径(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)のごとく通常の(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体をグラフト共重合体のベースに用いた場合には、熱可塑性樹脂組成物の艶消し外観を発現せずに光沢が大きく上昇する。
肥大化処理を行う場合、特開昭56−166201号公報に提案されているごとく、無機電解質を少量併用することが肥大化を進行させやすくする点から好ましい。用いる無機電解質はどの様なものでも構わないが、硫酸ナトリウムや塩化ナトリウム、塩化カリウム、炭酸カリウム等、中性ないしアルカリ性の無機電解質が好ましい。無機電解質の使用方法にも限定されず、ゴム状重合体の重合前に予め含ませておいても、肥大化処理前に添加しても一向に差し支えない。また、特開昭50−25655号公報に提案されている様に、肥大化される小粒子径ゴム状重合体ラテックス(g)のpHは7以上になる様に調製することが好ましく、より好ましくは8以上、さらに好ましくは9以上である。pHを調節する方法についてはどの様なものでも構わないが、炭酸ナトリウムや炭酸カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ性物質を添加する方法が例示される。
肥大化された(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)の質量平均粒子径の範囲は、得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と艶消し性とのバランスが優れることから、その上限が1000nm、好ましくは800nm、さらに好ましくは600nm、下限は用いた小粒子径(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)の粒子径を下回らない範囲で200nm、好ましくは250nm、さらに好ましくは300nmである。また、肥大化処理においては、(メタ)アクリル酸エステル系ゴム(G)中、肥大化されていない小粒子径の(メタ)アクリル酸エステル系ゴム(g)の存在割合が、15質量部以下となるよう肥大化することが好ましい。
<グラフト共重合体(A)>
本発明のグラフト共重合体(A)は、前述した酸基含有共重合体ラテックス(K)により肥大化された(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)に、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体、更に必要に応じて共重合可能な他の単量体からなるビニル系単量体をグラフト重合することによって得ることができる。
グラフト重合に用いる芳香族ビニル系単量体としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等のビニルトルエン類、p−クロルスチレン等のハロゲン化スチレン類、p−t−ブチルスチレン、ジメチルスチレン、ビニルナフタレン類等が使用でき、樹脂の原料としてはスチレンまたはα−メチルスチレンが好ましい。
グラフト重合に用いるシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、シアン化ビニリデン等が使用できるが、樹脂の原料としてはアクリロニトリルが好適である。
また、目的に応じて他の単量体を用いることは特に制限されない。用いることのできる単量体としては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸−n−ヘキシル、タクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸エステル系単量体や、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等の不飽和ジカルボン酸のイミド化合物等が使用できる。これらは、一種単独でも二種以上を併用することもできる。
単量体の使用割合は、芳香族ビニル系単量体/シアン化ビニル系単量体/その他単量体(質量比)=50〜80/27〜50/0〜40、好ましくは50〜70/30〜40/0〜20である。
グラフト重合されるビニル系単量体成分中のシアン化ビニル系単量体の使用割合が上記の範囲を外れると、成形条件によって光沢が容易に変化し、艶消しの効果が十分に発揮できない。
グラフト共重合体(A)は、肥大化された(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体に単量体成分を乳化グラフト重合させたものであることが好ましく、更に(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)10質量部〜80質量部と単量体成分90質量部〜20質量部(ゴム状重合体と単量体成分の合計量が100質量部)となる様にグラフト共重合させることが好ましい。このような質量割合で乳化グラフト重合すると、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性と流動性、艶消し性が優れる。単量体成分の量が10質量部未満の場合は、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物の耐衝撃性が低下する傾向にあり、80質量部を超えると再び耐衝撃性が低下しさらに艶消し性が悪化する傾向にある。さらに好ましくは、グラフト共重合体(A)中、ゴム状重合体(G)が30〜70質量部で、単量体成分は70〜30質量部である。このような場合、最終的に得られる熱可塑性樹脂組成物は、耐衝撃性と成形性、艶消し性を高いレベルでバランス良く発現するため好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)やグラフト共重合体(A)を製造する際の乳化重合は、乳化剤を使用してラジカル重合技術により行うことができる。また、グラフト重合する単量体中には、グラフト率やグラフト成分の分子量を制御するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
グラフト重合に用いる乳化剤としては、特に制限はないが、乳化重合時のラテックスの安定性が優れ、重合率を高めることができるため、サルコシン酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、脂肪酸ナトリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、ロジン酸石鹸等の各種カルボン酸塩、アルキル硫酸エステル、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル硫酸エステルナトリウムなどの中から選ばれたアニオン系乳化剤が好ましく用いられる。これらは目的に応じて使い分けられ、もちろん小粒子(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)の調製に用いた乳化剤をそのまま利用し、乳化グラフト重合時に追添加しなくても良い。
重合に用いるラジカル重合開始剤としては、特に限定されないが、過酸化物、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤を用いることができる。この中でレドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・ピロリン酸ナトリウム・ブドウ糖・ヒドロパーオキサイドや、硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたレドックス系開始剤が好ましい。
乳化グラフト重合で得られたグラフト共重合体(A)ラテックスは、ついで、凝固剤を溶解させた熱水中に投入され、凝析、固化される。凝固剤としては、硫酸、塩酸、リン酸、硝酸等の無機酸や、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸アルミニウム等の金属塩等を用いることができる。凝固剤の選定は重合で用いた乳化剤と対にして選定される。すなわち、脂肪酸石鹸やロジン酸石鹸等のカルボン酸石鹸のみが使用されていた場合にはどの様な凝固剤を用いても回収可能であるが、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウムの様な酸性領域でも安定な乳化力を示す乳化剤が含まれている場合には上記無機酸では不十分であり、金属塩を用いる必要がある。次いで、上述のように凝固剤を使用して固化させたグラフト共重合体(A)を、水または温水中に再分散させてスラリー状とし、グラフト共重合体(A)中に残存する乳化剤残渣を水中に溶出させ、洗浄する。洗浄後、スラリーを脱水機等で脱水し、得られた固体を気流乾燥機等で乾燥すると、グラフト共重合体(A)が粉体または粒子状で得られる。
<硬質共重合体(B)>
本発明において、使用される(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須成分とする硬質共重合体(B)は、(メタ)アクリル系エステル系単量体を20〜100質量部含有していることが好ましく、さらに好ましくは、40〜100質量部、さらに好ましくは80〜100質量部である。
用いられる(メタ)アクリル酸エステル系単量体としては、例えばメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル等のメタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸−2−エチルヘキシル等のアクリル酸エステルであり、好ましくはアクリル酸n−ブチルおよび/またはアクリル酸−2−エチルヘキシルである。これら(メタ)アクリル酸エステル系単量体においては、炭素数が1〜12であるアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル系単量体を必須成分として用いることが好ましい。
硬質共重合体(B)としては、メタクリル酸メチル等のメタクリル酸エステル系単量体の重合成分、或いはメタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸メチル等のアクリル酸エステル系単量体および/又は共重合可能なその他の単量体との共重合成分が好ましいが、メタクリル酸エステルとアクリル酸エステルの各単量体の質量比率は100/0〜50/50が好ましく、さらには99/1〜80/20の範囲であることが好ましい。アクリル酸エステルがこの範囲よりも多くなると得られる熱可塑性樹脂組成物の熱安定性および耐熱性が損なわれる傾向にある。
なお、共重合可能なその他の単量体成分としては、シアン化ビニル系単量体、芳香族ビニル系単量体、マレイミド化合物が挙げられる。
シアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリル、メタクリルニトリル等が挙げられ、特にアクリロニトリルが好ましい。
また、芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ブロムスチレン等が挙げられる。特にスチレン、α−メチルスチレンが好ましい。
マレイミド化合物としては、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。
また、場合により官能基により変性された単量体を含んでもよく、例えば、不飽和カルボン酸として、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、フマル酸等が挙げられる。これらは、それぞれ1種を単独で、或いは2種以上を混合して用いることができる。その使用割合は単量体混合物中100質量部に対して30質量部以下、特に10質量部以下であることが好ましい。
硬質共重合体(B)を配合することにより、耐候性および艶消し性、耐熱性や流動性等の特性を改善することができるが、硬質共重合体(B)の配合量がグラフト共重合体(A)と硬質共重合体(B)との合計100質量部に対して80質量部を超えるとゴム強化樹脂中のゴム含有量が低減することにより、耐衝撃強度が低下する。このため、硬質共重合体(B)の配合量は、グラフト共重合体(A)と硬質共重合体(B)との合計100質量部中に20〜80質量部、好ましくは30〜70質量部、より好ましくは40〜60質量部とする。
なお、硬質共重合体(B)は、1種を単独で用いても良く、異なる組成、分子量のものを2種以上混合して用いても良い。
<熱可塑性樹脂組成物>
本発明の良好な艶消し表面を与える熱可塑性樹脂組成物及びその樹脂成形品は、(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)に、グラフト重合されるビニル系単量体成分全体に占めるシアン化ビニル系単量体含有量が27〜50質量%、好ましくは30〜40質量%であることが必須であり、この範囲で極めて良好な艶消し性を付与でき、幅広い成形条件においても安定した艶消し外観の熱可塑性樹脂組成物及びその樹脂成形品を得ることが可能となった。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)と硬質共重合体(B)の混合比率は、グラフト共重合体(A)を20〜80質量部配合し、好ましくは30〜70質量部、更に好ましくは40〜60質量部である。20質量部未満では艶消し効果が小さくなり、衝撃性も低下する。また、80質量部を超えると、成形性が悪くなる。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物には、本効果を損なわない範囲で他の熱可塑性樹脂(C)や、炭酸カルシウムやタルク等の無機充填材を配合し、成形品の改質や成形性の改良を行うことができる。
他の熱可塑性樹脂(C)としては、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート(PBT樹脂)、ポリエチレンテレフタレート(PET樹脂)、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、変性ポリフェニレンエーテル(変性PPE樹脂)、ポリアミドからなる群から選ばれる少なくとも1種以上であることが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)と硬質共重合体(B)とをV型ブレンダやヘンシェルミキサで混合し、その混合物を溶融混練することで製造される。その溶融混練では、押出機または、バンバリーミキサ、加熱ニーダ、ロール等の混練機等を用いることができる。
得られた熱可塑性樹脂組成物は、そのまま成形品の製造原料に供することができる。また、必要に応じて、この熱可塑性樹脂組成物に、顔料や染料等の着色剤、熱安定剤、光安定剤、補強剤、充填材、難燃剤、発泡剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、加工助剤等を配合することができる。
<成形品>
本発明の成形品は、上述した熱可塑性樹脂組成物を、射出成形法、押出成形法、共押出成形法、異型押出成形法、ブロー成形法、圧縮成形法、カレンダ成形法、インフレーション成形法等の各種成形方法によって成形されたものである。
また場合によっては、他の樹脂や金属等に被覆して使用することも可能である。ここで、被覆されることのできる他の樹脂としては特に限定されないが、前述の他の熱可塑性樹脂(C)や、ABS樹脂やハイインパクトポリスチレン樹脂(HIPS)等のゴム変性熱可塑性樹脂、フェノール樹脂やメラミン樹脂などの熱硬化性樹脂等が広く使用できる。
以下、実施例及び比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を越えない限り、以下の例に限定されるものではない。なお、以下の例中の%および部数は明記しない限りは質量基準とする。
[製造例1] 小粒子径(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g−1)の製造
攪拌装置および温度制御ジャケット付き10リットルのステンレス製オートクレーブに、脱イオン水(以後、単に水と略記)400部、アルケニルコハク酸ジカリウム(花王(株)製ラテムルASK)1.0部、硫酸ナトリウム0.3部、アクリル酸n−ブチル97部、アクリロニトリル3部、シアヌル酸トリアリル0.8部、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールエステル0.3部を攪拌下で仕込み、反応器内を窒素置換後、内容物を昇温した。
内温55℃にて、過硫酸カリウム0.2部、水5部からなる水溶液を添加し重合を開始せしめた。重合発熱が確認されたらジャケット温度を50℃とし、重合発熱が確認されなくなるまで重合を継続した。重合開始から3時間後に冷却し、固形分が19.9%、質量平均粒子径が75nmおよびpHが8.6である小粒子径アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g−1)ラテックスを得た。
[製造例2] 小粒子径アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g−2)の製造
製造例1記載例において、ジメタクリル酸1,3−ブチレングリコールエステルを使用しない以外は同様の方法で重合を行い、固形分が19.9%、質量平均粒子径が80nmおよびpHが8.4である小粒子径アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g−2)ラテックスを得た。
[製造例3] 小粒子径アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g−3)の製造
製造例1記載例において、シアヌル酸トリアリルを使用しない以外は同様の方法で重合を行い、固形分が20.0%、質量平均粒子径が75nmおよびpHが8.5である小粒子径アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g−3)ラテックスを得た。
[製造例4] 酸基含有共重合体ラテックス(K)の調製
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ナトリウム2.5部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物0.3部、水200部、オレイン酸カリウム2.2部、ジオクチルスルホコハク酸3.6部、硫酸第一鉄七水塩0.003部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.009部を窒素フロー下で仕込み、60℃に昇温した。
60℃になった時点から、アクリル酸n−ブチル81.5部、メタクリル酸18.5部、クメンヒドロパーオキシド0.5部からなる混合物を120分かけて連続的に滴下した。滴下終了後さらに、2時間60℃のまま熟成を行い、固形分が33.0%、重合転化率が99%および質量平均粒子径が145nmである酸基含有共重合体ラテックス(K)を得た。
[製造例5] (メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)の製造
製造例1〜製造例3で製造したアクリル酸エステル系ゴム状重合体(g−1)〜(g−3)、酸基含有共重合体ラテックス(K)を用い、アクリル酸エステル系ゴム状重合体(g)の内温65℃かつ攪拌下にて、表1に示す所定量を一括で添加し、その温度を保ちながら30分間攪拌を継続し肥大化されたアクリル酸エステル系ゴム状重合体(G−1a)〜(G−1c)、(G−2)、(G−3)ラテックスを得た。またこの際、肥大化処理する前に1%水酸化ナトリウム水溶液にてアクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)のpHを9〜10の間に調節した。
[製造例6] 大粒子径アクリル酸エステル系ゴム状重合体(Z−1)の製造
製造例1記載の例において、用いるアルケニルコハク酸ジカリウムの量を0.2部とし、重合終了後にさらに0.8部を追添加する以外は同様にして重合を行い、固形分が19.4%、質量平均粒子径が370nmおよびpHが8.7である大粒子径なアクリル酸エステル系ゴム状重合体(Z−1)ラテックスを得た。
Figure 0004907949
複合ゴム状重合体の平均粒子径は、MATEC APPLIED SCIENCES社製サブミクロン粒度分布測定器CHDF−2000を用いて測定した。
[製造例7] グラフト共重合体(A−1)の製造
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器に、 アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G−1a)ラテックス(固形分として)50部、水(アクリル酸エステル系ゴム状重合体ラテックス中の水も含む)170部、ロンガリット0.15部、アルケニルコハク酸ジカリウム0.5部を入れ、攪拌しつつ窒素気流下で内温を75℃に昇温した。
次いで、アクリロニトリル4部、スチレン9部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.08部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を1時間保持した後、硫酸第一鉄七水塩0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.15部、イオン交換水10部からなる水溶液を添加し、次いで、アクリロニトリル11部、スチレン26部、t−ブチルハイドロパーオキサイド0.2部からなる混合物を1.5時間にわたって滴下し、その間内温が80℃を越えない様に重合せしめた。
滴下終了後、温度80℃の状態を30分間保持した後冷却し、グラフト共重合体(A−1)ラテックスを得た。次いで1.2%硫酸水溶液150部を75℃に加熱し、攪拌下この中へこのグラフト共重合体(A−1)ラテックス100部を徐々に滴下し凝固し、さらに90℃に昇温して5分間保持した。次いで析出物を脱水、洗浄、乾燥し、アセトン不溶分72%、還元粘度が0.76dl/gである白色粉末状のグラフト共重合体(A−1)を得た。
[製造例8〜16] グラフト共重合体(A−2)〜(A−10)の製造
製造例7記載の例において、用いるアクリル酸エステル系ゴム状重合体(G−1a)を(G−1b)、(G−1c)、(G−2)、(G−3)に変更し、またグラフト組成比を表2のように変更した以外は同様にして重合を行い、グラフト共重合体(A−2)〜(A−10)を得た。その製造結果を表2に示した。
[製造例17] グラフト共重合体(A−11)の製造
製造例7記載の例において、用いるアクリル酸エステル系ゴム状重合体(G−1a)を酸基含有共重合体(K)によって肥大化されていない(Z−1)に変更した以外は同様にして重合を行い、アセトン不溶分69%、還元粘度が0.77dl/gである粉末状のグラフト共重合体(A−11)を得た。
Figure 0004907949
・アセトン不溶分は、次のようにして求めた。
グラフト共重合体2.5gを80mlのアセトンに添加し、65〜70℃にて3時間還流し、得られた懸濁アセトン溶液を14000rpmにて30分間遠心分離して、沈殿成分と上澄み溶液(アセトン溶液)をそれぞれ分取した。そして、沈殿成分を十分に乾燥させてその質量(Y(g))を測定した。そして、次式よりアセトン不溶分を算出した。
アセトン不溶分(%)=(Y/2.5)×100
・還元粘度は次のようにして求めた。
アセトン可溶成分0.2gを100ccのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の溶液粘度を自動粘度計(サン電子工業(株)製)を用いて25℃で測定し、同条件で測定した溶媒粘度よりアセトン可溶分の還元粘度を求めた。
[製造例18] 硬質共重合体(B−1)
アクリロニトリル8部、スチレン22部、メタクリル酸メチル70部よりなり、 N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.39dl/gであるアクリロニトリル−スチレン−メタクリル酸メチル三元共重合体(B−1)を公知の懸濁重合により製造した。
[製造例19] 硬質共重合体(B−2)
メタクリル酸メチル90部およびアクリル酸メチル10部からなり、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.28dl/gであるアクリル樹脂(B−2)を公知の懸濁重合により製造した。
[製造例20] 硬質共重合体(B−3)
メタクリル酸メチル99部およびアクリル酸メチル1部からなり、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.25dl/gであるアクリル樹脂(B−3)を公知の懸濁重合により製造した。
[製造例21] 硬質共重合体(B−4)
アクリロニトリル27部およびスチレン73部よりなり、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.61dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体(B−4)を公知の懸濁重合により製造した。
[製造例22] 硬質共重合体(B−5)
アクリロニトリル39部およびスチレン61部よりなり、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から25℃で測定した還元粘度が0.75dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体(B−5)を公知の懸濁重合により製造した。
Figure 0004907949
[実施例1〜7、実施例9、比較例1〜比較例
熱可塑性樹脂組成物の製造
上記製造したグラフト共重合体(A−1)〜(A−11)、ビニル系共重合体(B1)〜(B−5)を、表4に示す割合で配合し、さらにエチレンビスステアリルアミド0.4部、光安定剤(旭電化工業(株)製「アデカスタブLA−63P」0.2部、紫外線吸収剤(旭電化工業(株)製、「アデカスタブLA−36」)0.2部、着色剤として酸化チタン(石原産業(株)製「CR60−2」)3部とを添加した後、ヘンシェルミキサを用いて混合し、この混合物をバレル温度230℃に加熱した脱気式二軸押出機(池貝鉄工(株)製「PCM−30」)で賦形し、ペレットを作製した。
得られたペレットを、中央機器(株)製40mmφ単軸押出機を用い、バレル温度190℃および250℃、冷却ロール温度55℃で、幅60mmTダイから樹脂をシート状に吐出させ、巻き取り速度を調節することによって厚み約1.0mmに調節した幅200mmのシートを押出成形した。
実施例および比較例で得られた熱可塑性樹脂組成物を下記の評価試験によって評価した。なお、評価の結果を表4に示す。
(i)シャルピー衝撃強度
ISO 179に準拠した方法により行い、ノッチあり試片を用い、23℃雰囲気下で12時間以上試験片を放置した後に測定を行った。
(ii)メルトボリュームレート(流動性)
ISO 1133に準拠する方法で、バレル温度220℃、加重98Nの条件で測定した。
(iii)成形光沢度、その温度依存性
光沢度は入射光60°の反射率として測定した。
バレル温度190℃と250℃条件下おける成形シートの温度依存性は以下の式(1)にて求めた。
[光沢差(%)]=(250℃成形品の光沢度)−(190℃成形品の光沢度) ・・・式(1)
(iv)成形外観
目視判定より、その艶消し性、フィッシュアイやダイラインの発生状態、表面のきめの細かさを判定し、問題なく良好なシートと認められたものを○、問題が多く実用に耐えないものを×、その中間を△と評価した。
(v)耐候性(加速暴露試験)
上記の白着色シートを、サンシャインウェザーメーター(スガ試験機(株)製)でブラックパネル温度63℃、サイクル条件60分(降雨:12分)にて1,000時間処理した。色差計で測定した暴露後試験片と未暴露試験片との色の違いを変色度ΔEで評価した。
Figure 0004907949
実施例および比較例より、次のことが明らかとなった。
実施例1〜9の熱可塑性樹脂組成物は、シャルピー衝撃強度とメルトボリュームレートが共に高く、成形温度190℃と250℃において良好な艶消し性を、そしてさらにサンシャインウェザーメーターによる耐候性試験では変色は小さいものであった。このような樹脂組成物は工業的価値が高い。
比較例1〜3の熱可塑性樹脂組成物は、グラフト共重合体(A)中のシアン化ビニル系単量体の含有量が範囲を外れているため、190℃における艶消し性は比較的良好なものの、250℃において光沢が著しく向上し艶消しが不十分であり、この様に成形温度によって艶消し外観が変化する樹脂組成物は工業的利用価値が低い。
比較例4の熱可塑性樹脂組成物は、酸基含有共重合体ラテックス(K)を適用しない(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)を含むグラフト共重合体(A−11)を用いたために、成形温度190℃および250℃のいずれの条件においても艶消し性が得られていない。この様な樹脂組成物は工業的利用価値が低い。
比較例5〜6の熱可塑性樹脂組成物は、硬質重合体に(メタ)アクリル酸エステル系単量体を含まないため、サンシャインウェザーメーターによる耐候性試験での変色が大きいものであった。このような樹脂組成物は工業的価値が低い。
本発明の成形品は様々な用途で使用され、例えば、工業的用途として、車両部品、特に無塗装で使用される各種外装・内装部品、壁材、窓枠等の建材部品、食器、玩具、掃除機ハウジング、テレビジョンハウジング、エアコンハウジング等の家電部品、インテリア部材、船舶部材および通信機器ハウジング、ノートパソコンハウジング、PDAハウジング、液晶プロジェクターハウジング等の電機機器ハウジングに好適である。

Claims (2)

  1. 酸基含有共重合体ラテックス(K)により肥大化処理された(メタ)アクリル酸エステル系ゴム状重合体(G)に、芳香族ビニル系単量体とシアン化ビニル系単量体を含有するビニル系単量体成分がグラフト重合し、且つ、該ビニル系単量体成分に占めるシアン化ビニル系単量体含有量が27〜50質量%であるグラフト共重合体(A)20質量部〜80質量部と、
    メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体の共重合体であり、該メタクリル酸エステル系単量体とアクリル酸エステル系単量体の質量比率が99/1〜90/10である硬質共重合体(B)80質量部〜20質量部からなることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物からなる成形品。
JP2005316558A 2005-10-31 2005-10-31 熱可塑性樹脂組成物および成形品 Active JP4907949B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005316558A JP4907949B2 (ja) 2005-10-31 2005-10-31 熱可塑性樹脂組成物および成形品

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005316558A JP4907949B2 (ja) 2005-10-31 2005-10-31 熱可塑性樹脂組成物および成形品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2007119681A JP2007119681A (ja) 2007-05-17
JP4907949B2 true JP4907949B2 (ja) 2012-04-04

Family

ID=38143851

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2005316558A Active JP4907949B2 (ja) 2005-10-31 2005-10-31 熱可塑性樹脂組成物および成形品

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4907949B2 (ja)

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2906112B2 (ja) * 1993-04-28 1999-06-14 三菱レイヨン株式会社 熱可塑性樹脂組成物
JPH09216987A (ja) * 1996-02-09 1997-08-19 Kanegafuchi Chem Ind Co Ltd 熱可塑性樹脂組成物
JP3685939B2 (ja) * 1998-12-22 2005-08-24 株式会社カネカ グラフト共重合体及び樹脂組成物
JP2003049042A (ja) * 2001-08-09 2003-02-21 Mitsubishi Rayon Co Ltd 艶消し性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれを用いた成形品
JP2004346237A (ja) * 2003-05-23 2004-12-09 Umg Abs Ltd 熱可塑性樹脂組成物および成形物

Also Published As

Publication number Publication date
JP2007119681A (ja) 2007-05-17

Similar Documents

Publication Publication Date Title
AU2012234110B2 (en) Acrylic rubber-based graft copolymer and thermoplastic resin composition
EP2231777B1 (en) Chemical and impact resistant thermoplastic resin composition having improved extrudability.
WO2007142473A1 (en) Acrylate-vinyl aromatic-unsaturated nitrile graft copolymer with excellent impact strength, colorability, and weatherability, and thermoplastic resin composition containing the same
EP1820807B1 (en) Graft copolymer and thermoplastic resin composition
KR20100044215A (ko) 비대화 고무의 제조 방법, 그라프트 공중합체, 열가소성 수지 조성물 및 성형품
JP5776391B2 (ja) 耐熱・耐塗装性熱可塑性樹脂組成物
JP4969911B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物および成形品
JP2004346237A (ja) 熱可塑性樹脂組成物および成形物
JP2003049042A (ja) 艶消し性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびそれを用いた成形品
JP4907949B2 (ja) 熱可塑性樹脂組成物および成形品
JP7200542B2 (ja) アクリルゴム系グラフト共重合体および熱可塑性樹脂組成物
JP2002194034A (ja) グラフト共重合体及びこれを用いた熱可塑性樹脂組成物、成型物
JP2000017170A (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP2006016524A (ja) 熱可塑性樹脂組成物およびその成形品
JP5106725B2 (ja) グラフト共重合体、およびこれを用いた熱可塑性樹脂組成物ならびに成形品
JPH10204237A (ja) 熱可塑性樹脂組成物
JP2004244518A (ja) 熱可塑性樹脂組成物及び成形体
JP2007126532A (ja) 熱可塑性樹脂組成物及び樹脂成形品
JP2004352841A (ja) 熱可塑性樹脂組成物および成形品
JP2005343925A (ja) 熱可塑性樹脂組成物、及びそれを用いた成形品
JP2005206670A (ja) 難燃性樹脂組成物及びその製造方法
JP2000072836A (ja) グラフト共重合体及び樹脂組成物
JP2005272699A (ja) 熱可塑性樹脂組成物、及びそれを用いた成形品
JP2007297536A (ja) アクリルゴムラテックス、その製造法、複合ゴムグラフト共重合体及び熱可塑性樹脂組成物
JP2006143924A (ja) 肥大化ゴム質重合体、ゴム含有グラフト共重合体、それらの製造方法、熱可塑性樹脂組成物およびその成形品

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20081006

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20110420

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20110426

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20110617

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20110809

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20111104

A911 Transfer to examiner for re-examination before appeal (zenchi)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A911

Effective date: 20111115

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20120104

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20120112

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20150120

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4907949

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250