JP4903304B2 - コーティング用樹脂組成物および記録シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、コーティング用樹脂組成物および記録シートに関し、さらに詳しくは、紙やプラスチックフィルム(以下、「シート」ということがある。)などの基材の表面を塗布処理するためのコーティング用樹脂組成物であって、表面平滑性が高くクラックのない記録層を形成でき、かつ、光沢が高く、インクの吸収性、画質に優れる記録シートの製造に好適なコーティング用樹脂組成物およびそれを用いた記録シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
インクジェット記録方式は、安価であり、フルカラー化が容易であり、低騒音で印字品質に優れていることから、近年急速に普及しつつある。インクジェット記録には、安全性、記録適性の点から主に水系インクが使用され、ノズルから記録シートに向けてインクドットを飛翔させることにより記録が行われる。このため記録シートは、速やかにインクを吸収することが要求される。さらに、インクの多色化やインクドットの小粒径化により、銀塩写真画像と比較して遜色のない記録を得ることも可能になってきており、記録速度も高速化されてきた。このように、記録装置および記録方法の改良が行われてきたが、これに対応してインクジェット記録材料に対しても高度な特性が求められるようになってきた。
【0003】
インクジェット記録材料としては、従来から様々の記録用紙が用いられている。例えば、普通紙、塗工紙(アート紙、コート紙、キャストコート紙など)、さらにこれらの紙に加えて、透明または不透明のプラスチック製フィルム、合成紙や、紙の両面をプラスチックで被覆したRC紙など各種基材に記録層を設けた記録シートが用いられている。
【0004】
記録層としては、ポリビニルアルコールなど水溶性や親水性樹脂を主体に構成される、いわゆる膨潤タイプ記録層と、シリカなどの微粒子成分を主体に空隙層を形成して記録層とする、いわゆる空隙タイプ記録層に大きく分けることができる。これらの記録層として、例えば、特開昭63−115780号公報には、合成シリカを含む(メタ)アクリル酸アルキル4級アンモニウム塩および/または(メタ)アクリルアミドアルキル4級アンモニウム塩を骨格とする重合体が、また特開平6−227114号公報には、微粒シリカを含む顔料と両性イオンラテックスを主成分とする水性組成物から形成されるものが開示されている。
【0005】
膨潤タイプ記録層を有するインクジェット記録材料は、水および高沸点有機溶媒(グリセリンやエチレングリコールなど)からなるインク溶媒が完全に蒸発した後では、非常に高い光沢と色濃度の銀塩写真の風合いを有する画像が得られるという利点があるが、インク吸収速度(乾燥速度)が空隙タイプ記録層に比べて遅く、場合によってはインク溶媒中の高沸点溶媒の影響で印刷後数時間から数日間に亘り記録層が膨潤した湿潤状態のままであり、べたついたり重ねることができない欠点がある。また、印刷インク量が多い部分では、インク吸収性が足りずにビーディングなどの画像不良が発生したり、インク吸収性と耐水性を両立させるのが難しかったりする問題がある。特に、プリンターの高速化やフォトインク使用、1000dpi以上の高解像度印刷など高画質化が進むにつれ、インク吸収速度(乾燥速度)の遅さが問題となり、空隙タイプ記録層を有するインクジェット記録材料が主流になりつつある。
【0006】
一方、空隙タイプ記録層を有するインクジェット記録材料は、空隙にインクを吸収させるために高いインク吸収性を示す。このため、ビーディングなどの画像不良も発生しにくく、非水溶性の無機微粒子を主成分としているので耐水性も高い。また、十分なインク吸収容量を確保できるように記録層厚さを設定すれば、空隙中に高沸点有機溶媒などインク溶媒が残存していたとしても、表面は印刷直後でも見かけ上乾いた状態になり、触れたり重ねたりすることができる乾燥速度を有している。しかしながら、このような利点にも拘わらず、空隙を有しているために光沢が低すぎるという問題がある。
【0007】
上記のような空隙タイプ記録層としては、例えば、特開昭60−219084号、同63−170074号、特開平2−43083号、同4−93284号、同7−137431号、同8−197832号公報など、各種無機粒子を使用したものが開示されている。このような空隙タイプ記録層を、基材上に形成するための塗布液は、光沢性を上げるために、無機微粒子に対するバインダーの含有量を余り多くし過ぎると、無機微粒子間に形成される空隙を塞いでしまったり、バインダー樹脂の特性によっては、インク溶媒によって該樹脂が膨潤して空隙を塞ぎ、結果としてインク吸収性が十分得られない。従って、バインダー樹脂含有量の低い処方が使用される。しかしながら、インク吸収性や吸収容量を確保するために無機微粒子の比率を上げすぎると、記録層を形成する塗膜の強度が低下して脆弱になり、無機微粒子の脱落が発生したり、ひび割れが発生して高い平面性を有する表面を形成することができず鮮明な印刷画像が得られない。また、無機微粒子の比率を上げると、塗布液の機械安定性が悪いために、塗布液の製造中に無機微粒子が沈降・分離するという製造上の問題をも生ずる。
従って、インク吸収性(乾燥性)および光沢性を有し、かつ、塗膜強度、表面平滑性および印刷画質に優れる記録層が得られるインクジェット記録用樹脂組成物およびそれを用いた記録シートの開発が求められていた。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の課題は、従来の空隙タイプインクジェット記録用樹脂組成物の有する問題点を解決するために、表面平滑性が高く、クラックのない記録層の形成が可能であり、光沢が高く、インクの吸収性、かつ、画質に優れる記録シートの製造に好適なコーティング用樹脂組成物およびそれを用いた記録シートを提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記の課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、バインダー樹脂、無機微粒子および有機溶剤を含有するコーティング用樹脂組成物において、バインダー樹脂として特定のアクリル共重合体を用い、さらにこれらの各成分の含有量を特定の割合に設定することにより、本課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明の第1の発明によれば、基材上に、コーティング用樹脂組成物により形成される記録層を有する記録シートであって、該コーティング用樹脂組成物は、バインダー樹脂(A)、無機微粒子(B)および有機溶剤(C)を含有するコーティング用樹脂組成物であり、バインダー樹脂(A)が、加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体(a)0.5〜15重量%と、イオン形成性基を有する重合性不飽和単量体(b)3〜50重量%と、その他の重合性不飽和単量体(c)96.5〜35重量%とを、無機微粒子(B)の存在下で、有機溶剤(C)を使用した溶液重合により、共重合して得られるアクリル共重合体(d)であり、かつ、有機溶剤(C)が、バインダー樹脂(A)3〜60重量%と無機微粒子(B)97〜40重量%とからなる固形分100重量部に対して、100〜5000重量部の割合で配合することを特徴とする記録シートが提供される。
【0012】
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、無機微粒子(B)の粒径が、3〜300nmであることを特徴とする記録シートが提供される。
【0013】
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、有機溶剤(C)の沸点が100℃以下であり、かつ、該コーティング用樹脂組成物に含まれる溶媒中における有機溶剤(C)の比率が、15重量%以上であることを特徴とする記録シートが提供される。
【0014】
また、本発明の第4の発明によれば、第1の発明において、有機溶剤(C)が、アルコール系溶剤であることを特徴とする記録シートが提供される。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明を詳細に説明する。
1.バインダー樹脂(A)
(a)加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体
本発明のバインダー樹脂(A)として使用される、アクリル共重合体(d)には、加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体(a)、イオン形成性基を有する重合性不飽和単量体(b)およびその他の重合性不飽和単量体(c)を共重合したものを用いる。該加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体(a)としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメトキシジメチルシラン、ビニルエトキシジメチルシラン、ビニルイソブトキシジメチルシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルジエトキシメチルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルジフェニルエトキシシラン、ビニルトリフェノキシシラン、γ−(ビニルフェニルアミノプロピル)トリメトキシシラン、γ−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリメトキシシラン、γ−(ビニルフェニルアミノプロピル)トリエトキシシラン、γ−(ビニルベンジルアミノプロピル)トリエトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン、ジビニルジ(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルジアセトキシメチルシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、ビニルメチルジクロロシラン、ビニルジメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルメチルフェニルクロロシラン、アリルトリエトキシシラン、3−アリルアミノプロピルトリメトキシシラン、アリルジアセトキシメチルシラン、アリルトリアセトキシシラン、アリルビス(ジメチルアミノ)メチルシラン、アリルメチルジクロロシラン、アリルジメチルクロロシラン、アリルトリクロロシラン、メタクリルフェニルジクロロシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリメトキシシラン、β−(メタ)アクリロキシエチルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルメチルジクロロシラン、γ−(メタ)アクリロキシプロピルトリス(β−メトキシエトキシ)シランなどが例示できる。好ましくは、アルコキシシリル基(メトキシシリル基,エトキシシリル基などのC1−4アルコキシシリル基)を有する重合性不飽和化合物である。
【0019】
加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体(a)は、全重合性不飽和単量体のうち、0.5〜15重量%用いるが、好ましくは1〜12重量%、さらに好ましくは2〜10重量%である。
加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体(a)が、全重合性不飽和単量体の0.5重量%未満であると、塗膜の耐水性や塗膜強度など十分な改良効果がでなくなる。一方、15重量%を超えると、増粘、ゲル化し易くなる。
【0020】
(b)イオン形成性基を有する重合性不飽和単量体
本発明においては、イオン形成性基を有する重合性不飽和単量体(b)を樹脂の共重合成分の1つとして用いる。イオン形成性基としては、アミノ基、イミノ基などのカチオン形成性基、カルボキシル基などのアニオン形成性基が挙げられる。
カチオン形成性基を有する不飽和単量体としては、例えば、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメチルアンモニウムサルフェートなどが挙げられる。このようなカチオン形成性基を有する不飽和単量体は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0021】
アニオン形成性基を有する不飽和単量体としては、例えば、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、ビニルカルボン酸[(メタ)アクリル酸、クロトン酸、ソルビン酸、マレイン酸、イタコン酸、ケイ皮酸など]、ビニルスルホン酸[ビニルスルホン酸、アリルスルホン酸、ビニルトルエンエンスルホン酸、スチレンスルホン酸など]、(メタ)アクリルスルホン酸[(メタ)アクリル酸スルホエチル、(メタ)アクリル酸スルホプロピルなど]、(メタ)アクリルアミドスルホン酸[2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸など]などが挙げられる。このようなアニオン形成性基を有する不飽和単量体は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0022】
カチオン形成性基を有する不飽和単量体を用いる方が、インクジェット記録におけるインク定着性の点において好ましい。
該イオン形成性基を有する重合性不飽和単量体(b)は、全重合性不飽和単量体のうち、3〜50重量%用いるが、好ましくは5〜40重量%、さらに好ましくは8〜30重量%である。
イオン形成性基を有する重合性不飽和単量体(b)が、全重合性不飽和単量体の3重量%未満であると、インクとの親和性が悪くなり、また、エマルジョン化する時に、凝集物が生じる。一方、50重量%を超えると、べたつきなどの問題を生じ、また、塗膜の耐水性が悪化する。
【0023】
(c)その他の重合性不飽和単量体
本発明においては、その他の重合性不飽和単量体(c)を樹脂の共重合成分の1つとして用いる。
該重合性不飽和単量体は、既知の種々の重合性不飽和単量体から、樹脂組成物が適用される用途に応じて適宜選択される。
【0024】
このような重合性不飽和単量体(c)としては、例えば、(メタ)アクリル系単量体、芳香族ビニル類、ビニルエステル類、ハロゲン含有ビニル類、ビニルエーテル類(例えば、ビニルエチルエテールなど)、ビニルケトン類(例えば、メチルビニルケトンなど)、ビニルヘテロ環化合物(例えば、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾールなどのN−ビニル化合物、N−ビニルピリジンなど)、オレフィン系単量体(例えば、エチレン、プロピレンなど)、アリル化合物(例えば、酢酸アリルなどのアリルエステルなど)などが挙げられる。この重合性不飽和単量体(c)は、単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0025】
上記重合性不飽和単量体(c)の(メタ)アクリル系単量体には、例えば、(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド類、(メタ)アクリロニトリルなどが含まれる。
【0026】
(メタ)アクリレートには、例えば、アルキル(メタ)アクリレート[例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレートなどのC1−18アルキル(メタ)アクリレートなど]、シクロアルキル(メタ)アクリレート[例えば、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなど]、アリール(メタ)アクリレート[例えば、フェニル(メタ)アクリレートなど]、アラルキル(メタ)アクリレート[例えば、ベンジル(メタ)アクリレートなど]、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート[例えば、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどのヒドロキシ−C2−4アルキル(メタ)アクリレートなど]、グリシジル(メタ)アクリレート、ジアルキルアミノ−アルキル(メタ)アクリレート[例えば、2−(ジメチルアミノ)エチル(メタ)アクリレート、2−(ジエチルアミノ)エチル(メタ)アクリレートなどのジC1−4アルキルアミノ−C2−4アルキル(メタ)アクリレートなど]などが含まれる。
【0027】
(メタ)アクリルアミド類には、例えば、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリルアミド、[例えばN−メチロール(メタ)アクリルアミドなどのN−ヒドロキシ−C1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど]、アルコキシアルキル(メタ)アクリルアミド、[例えばN−メトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのN−C1−4アルコキシ−C1−4アルキル(メタ)アクリルアミドなど]、ジアセトキシ(メタ)アクリルアミドなどが含まれる。
【0028】
好ましい(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、(メタ)アクリレート[例えば、C1−18アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシ−C2−4アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジC1−4アルキルアミノ−C2−4アルキル(メタ)アクリレート]など、(メタ)アクリルアミド類などが挙げられる。
さらに、好ましい(メタ)アクリル系単量体としては、C2−10アルキルアクリレート、C1−6アルキルメタアクリレート、ヒドロキシ−C2−3アルキル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ジC1−3アルキルアミノ−C2−3アルキル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0029】
芳香族ビニル類には、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエンなどが含まれ、スチレンを用いる場合が多い。ビニルエステル類には、例えば、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バーサチック酸ビニル(VeoVa)などが含まれる。ハロゲン含有ビニル類には、例えば、塩化ビニル、塩化ビニリデンなどが含まれる。また、その他の重合性不飽和単量体(c)として、上記した加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体(a)を使用してもよい。
【0030】
このような重合性不飽和単量体(c)として、通常、ハードモノマー[例えば、(メタ)アクリル酸メチル、スチレンなどのガラス転移温度80〜120℃(特に90〜105℃)程度の単独重合体を形成する単量体成分]と、ソフトモノマー[例えば、アクリル酸C2−10アルキルエステルなどのガラス転移温度−85℃〜10℃(特に−85℃〜−20℃)程度の単独重合体を形成する単量体成分]と組み合わせて用いる場合が多い。
【0031】
このように重合性不飽和単量体(c)として、通常、ハードモノマーおよびソフトモノマーを用いる場合、その配合比は特に限定されないが、例えば、ハードモノマー10〜90重量%(例えば、15〜85重量%、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは25〜75重量%、特に30〜70重量%)、ソフトモノマー10〜90重量%(例えば、15〜85重量%、好ましくは20〜80重量%、さらに好ましくは25〜75重量%、特に30〜70重量%)とすることができる。
【0032】
その他の重合性不飽和単量体(c)は、加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体(a)およびイオン形成性基を有する重合性不飽和単量体(b)の残部を占めるが、イオン形成性基を有する重合性不飽和単量体(b)並びにその他の重合性不飽和単量体(c)の合計を100重量%とした場合、イオン形成性基を有する重合性不飽和単量体(b)の含有量は、例えば、1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%とすることが重合体を容易に乳化させやすいという点で好ましい。
【0033】
その他の重合性不飽和単量体(c)は、全重合性不飽和単量体のうち、96.5〜35重量%用いるが、好ましくは95〜38重量%、さらに好ましくは90〜40重量%である。
【0034】
本発明においては、上記の各共重合成分を、溶液重合などの既知の種々の重合法を用いて共重合することができる。すなわち、上記各共重合成分を混合し、適当な有機溶剤の存在下にて、共重合させ、この重合体を、アルカリ(例えば、トリエチルアミンなどのアルキルアミン、モルホリンなどの環状アミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、ピリジン、アンモニアなど)や酸[例えば、無機酸(例えば、塩酸、硫酸など)、有機酸(例えば、酢酸、プロピオン酸などのカルボン酸、スルホン酸など)など]を用いて溶解または分散させてもよい。
また必要に応じて、溶液重合により得られた樹脂溶液に水を添加することによりエマルジョン化してもよい。なお、重合操作は、バッチ式、連続式であってもよい。
【0035】
溶液重合で用いる有機溶剤としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなど)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなど)、脂環族炭化水素(例えば、シクロヘキサンなど)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エーテル(例えば、ジエチルエテール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、などを用いることができる。これら有機溶剤は、単独でまたは2種以上の組み合わせで使用してもよい。有機溶剤としては、通常、イソプロパノールなどのアルコール、トルエンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトンなどのケトンが使用される。
【0036】
有機溶剤の使用量は、特に制限されず、例えば、重合性不飽和単量体の総量に対する有機溶剤量が重量比で0.1/1〜5/1、好ましくは0.5/1〜2/1程度の範囲から選択できる。また、溶液重合で用いる有機溶剤をそのままコーティング用樹脂組成物の有機溶剤(C)として用いてもよい。
【0037】
溶液重合では、電子線または紫外線の照射加熱により重合を開始してもよいが、重合開始剤を用いて重合を開始する場合が多い。重合開始剤としては、例えば、アゾ化合物[例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシアノ吉草酸、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2−アミジノプロパン)アセテートなど)、無機過酸化物(例えば、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウムなどの過硫酸塩、過酸化水素など)、有機過酸化物[例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロキシパーオキサイド、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネートなど]およびレドックス触媒[例えば、亜硫酸塩もしくは重亜硫酸(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩など)、L−アスコルビン酸、エリソルビン酸などの還元剤と、過硫酸塩(例えば、アルカリ金属塩、アンモニウム塩など)、過酸化物などの酸化剤との組合わせからなる触媒系]などが例示できる。重合開始剤は単独で、または2種以上組合わせて使用できる。
【0038】
重合開始剤の使用量は、例えば、重合性不飽和単量体の総重量に対して0.001〜20重量%、好ましくは0.01〜10重量%(例えば、0.1〜10重量%)程度の範囲から選択できる。
【0039】
溶液重合における反応温度は、例えば、50〜150℃、好ましくは70〜130℃程度である。また、反応時間は、例えば、1〜10時間、好ましくは2〜7時間程度である。なお、重合の終点は、赤外吸収スペクトルにおける二重結合の吸収(1648cm−1)の消滅、またはガスクロマトグラフィーを用いて、未反応の単量体の減少などにより確認することができる。
【0040】
なお、重合体にアミノ基、イミド基や他のカチオン形成性基などのカチオン性基が含まれている場合、酸を用いると親水性が向上し、重合体を容易に溶解または乳化することができる。このような酸としては、例えば、無機酸(例えば、塩酸、リン酸、硫酸、硝酸など)、有機酸[例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸などの飽和脂肪族モノカルボン酸;シュウ酸、アジピン酸などの飽和脂肪族ポリカルボン酸、(メタ)アクリル酸などの不飽和脂肪族ポリカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸などの不飽和脂肪族ポリカルボン酸;乳酸、クエン酸などの脂肪族オキシカルボン酸など]などが例示できる。
【0041】
重合体がカルボキシル基などの酸性基を有する場合、塩基を用いると重合体を容易に溶解または乳化することができる。このような塩基には、例えば、有機塩基(例えば、トリエチルアミンなどのアルキルアミン、モルホリンなどの環状アミン、トリエタノールアミンなどのアルカノールアミン、ピリジンなど)、無機塩基(例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物など)などが含まれる。塩基の使用量は、例えば、酸性基の合計に対して塩基/酸性基=0.3/1〜1.5/1(モル比)程度の範囲から選択できる。
【0042】
このようなアクリル共重合体(d)の共重合を行う際に、コーティング樹脂組成物からなる塗布液のアクリル共重合体(d)と無機微粒子(B)の混合性を向上させるという観点より、コーティング樹脂組成物に配合する無機微粒子(B)の一部または全ての存在下において共重合を行ってもよい。重合溶液中に存在させる無機微粒子(B)の量は、重合性不飽和単量体の総和重量100重量部に対して、好ましくは3〜80重量部、特に好ましくは5〜30重量部である。
【0043】
なお、溶液重合では、重合体の分子量を調整するために、連鎖移動剤、例えば、カテコールなどのアルコール類、チオール類、メルカプタン類(例えば、n−ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン)などを用いてもよい。
【0044】
また、本発明のアクリル共重合体(d)には、必要に応じて、例えば、滑剤、酸化防止剤、光安定化剤、紫外線吸収剤、熱安定剤などの安定剤、ラジカル補捉剤、消光剤、帯電防止剤、可塑剤、増粘剤、消泡剤などの各種既知の添加剤を添加してもよい。
【0045】
2.無機微粒子(B)
本発明に使用する無機微粒子(B)としては、例えば、アルミナ、シリカ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、珪酸カルシウムなどが挙げられる。好ましくはシリカであり、特に好ましくはコロイダルシリカであり、具体的には、水分散タイプのシリカゾルやオルガノシリカゾルである。記録層の光沢や透明性のためには、小粒径のものが好ましい。例えば、その粒径は3〜300nm、好ましくは5〜50nmである。無機粒子の形状は、球状、平板状、柱状、数珠状のいずれであってもよい。
【0046】
3.有機溶剤(C)
有機溶剤(C)としては、例えば、アルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、n−ブタノールなど)、芳香族炭化水素(例えば、ベンゼン、トルエン、キシレンなど)、脂肪族炭化水素(例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなど)、脂環族炭化水素(例えば、シクロヘキサンなど)、エステル(例えば、酢酸エチル、酢酸n−ブチルなど)、ケトン(例えば、アセトン、メチルエチルケトンなど)、エーテル(例えば、ジエチルエテール、ジオキサン、テトラヒドロフランなど)、などを用いることができる。これら有機溶剤は、単独でまたは2種以上の組み合わせで使用してもよい。有機溶剤としては、通常、イソプロパノールなどのアルコール、トルエンなどの芳香族炭化水素、メチルエチルケトンなどのケトンが使用される。特に、重合、コーティング時の作業性などの面で、イソプロパノールなどのアルコール系溶剤を用いることが好ましい。また、有機溶剤(C)の沸点は、コーティング時の乾燥性を高め、微細クラックの発生を防ぐ点で、100℃以下であることが好ましい。
その他の溶媒として、水などを含有させてもよい。この場合、全含有溶媒中の有機溶剤の比率は、好ましくは15重量%以上、より好ましくは25重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは75重量%以上である。全含有溶媒中の有機溶剤の比率が、15重量%未満であると、塗膜中に微細クラックが発生し易く、光沢が下がるので好ましくない。
【0047】
4.コーティング用樹脂組成物
このようにして得られたアクリル共重合体(d)であるバインダー樹脂(A)と無機微粒子(B)および有機溶剤(C)を混合して、記録層形成に使用するコーティング用樹脂組成物を調製する。混合方法は、従来公知の方法を使用することができる。混合比率は、バインダー樹脂(A)3〜60重量%および無機微粒子(B)97〜40重量%からなる固形分100重量部に対して有機溶剤(C)が100〜5000重量部である。好ましくは、バインダー樹脂(A)5〜30重量%および無機微粒子(B)95〜70重量%からなる固形分100重量部に対して有機溶剤(C)が150〜3000重量部である。
固形分中の無機微粒子(B)が97重量%を超えると、造膜性低下の傾向が見られ、40重量%に満たない場合は速乾性やインク吸収性が低下する。
また、バインダー樹脂(A)と無機微粒子(B)からなる固形分100重量部に対して、有機溶剤(C)が100重量部未満であると、バインダー樹脂(A)、無機微粒子(B)の沈降により保存安定性が低下する。一方、5000重量部を超えると、十分な厚さの塗膜形成が困難であり、かつ、乾燥負荷が大きくなり、生産性が低下する。
【0048】
記録層形成に使用するコーティング用樹脂組成物には、さらに、特性を失わない範囲で慣用のインク定着剤、架橋剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤、アンチブロッキング剤、造膜助剤などインクジェット記録性や記録体の保存安定性や塗布液の特性改良などのための添加剤を配合してもよい。
【0049】
5.記録層
通常、上記のようなコーティング用樹脂組成物を用いて記録層を形成する場合には、塗布剤としての、無機微粒子とバインダー樹脂を含有する水系コーティング組成物から記録層を形成するのが一般的である。しかしながら、溶剤として水を主成分とする塗布剤は、噛み込んだ微細な泡が抜けにくく、泡が基点となってクラックが発生し、均一で表面平滑性や光沢に優れる膜が得られない。また、乾燥性が悪く、バインダー樹脂成分が偏在して形成される緻密層により、インク吸収性が悪くなり、滲みやビーディングなど記録画像の不良が発生する。このような問題点は、コーティング樹脂組成物の溶剤として、有機溶剤(C)を用いることで解決できる。さらに、アクリル共重合体(d)が加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体(a)を含有しているので、無機微粒子(B)との結着力に優れ、記録層塗膜の粉落ちやバインダー樹脂成分の偏在による緻密層形成を防ぐことができる。
【0050】
上記記録層には、必要に応じて、他の成分、例えば、架橋性基を有していない重合体や重合体を含む水性エマルジョン(例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体エマルジョン、酢酸ビニル系エマルジョンなど)を含有させてもよい。
【0051】
また、記録層には、粉粒体(顔料など)を含有させてもよい。ここで粉粒体としては、例えば、無機粉粒体(ホワイトカーボン、微粒子状珪酸カルシウム、ゼオライト、アミノ珪酸マグネシウム、焼成珪成土、微粒子状炭酸マグネシウム、微粒子状アルミナ、タルク、カオリン、デラミカオリン、クレー、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、水酸化アルミニウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、珪酸マグネシウム、硫酸カルシウム、セリサイト、ベントナイト、スクメタイトなどの鉱物質粉粒体など)、有機粉粒体(ポリスチレン樹脂、尿素樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂などの架橋または非架橋有機微粒子、微小中空粒子などの有機質粉粒体など)が挙げられる。これらの粉粒体は1種または2種以上、適宜選択して併用することも可能である。
【0052】
なお、粉粒体を用いる場合、そのバインダー樹脂として、酢酸ビニル系共重合体のケン化物などの親水性高分子が使用できる。粉粒体とバインダー樹脂との割合は、バインダー樹脂100重量部に対して、粉粒体0.1〜80重量部、好ましくは0.2〜50重量部程度である。
【0053】
6.基材
本発明において、表面に記録層が形成される基材は用途に応じて不透明、半透明や透明であってもよく、オーバーヘッドプロジェクター(OHP)などに用いる場合の基材は、通常、透明である。基材の材質には、特に制限はなく、使用し得る基材としては、例えば、紙、塗工紙、不織布、プラスチックフィルムおよび合成紙が挙げられる。
【0054】
プラスチックフィルムおよび合成紙を構成するポリマーとしては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、エチレン−ビニルアルコール共重合体、酢酸セルロースなどのセルロース誘導体、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリアルキレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンナフタレートなどのポリアルキレンナフタレートなど)、ポリカーボネート、ポリアミド(ポリアミド6、ポリアミド6/6、ポリアミド6/10、ポリアミド6/12など)、ポリエステルアミド、ポリエーテル、ポリイミド、ポリイミドアミド、ポリエーテルエステルなどが挙げられ、さらに、これらの共重合体、ブレンド物、架橋物を用いてもよい。
【0055】
これらのフィルムまたは合成紙を構成するポリマーとしては、通常、ポリオレフィン(特にポリプロピレン)、ポリエステル(特にポリエチレンテレフタレートなど)、ポリアミドなどが使用され、特に、機械的強度、作業性、コストなどの点からポリエステル(特にポリエチレンテレフタレート)が好ましい。
紙または塗工紙としては、例えば、上質紙、アート紙、RC紙などが使用できる。
【0056】
基材の厚みは、用途に応じて選択でき、通常、5〜500μm、好ましくは10〜300μm程度である。基材には、その内部または表面に、必要に応じて、サイズ剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、熱安定剤、滑剤、顔料などの慣用の添加剤を使用してもよい。
【0057】
また、記録層との接着性を向上させるため、コロナ放電処理やアンダーコート処理などの表面処理を行ってもよい。
【0058】
7.記録シートの製造方法
本発明の記録シートは、上記基材の少なくとも一方の面に、本発明のコーティング用樹脂組成物からなる塗布液にて、記録層を形成することにより製造する。すなわち、記録層は、調製した塗布液を基材に塗布することにより形成できる。塗布液は、慣用の流延または塗布方法、例えば、ロールコーター、エヤナイフコーター、ブレードコーター、ロッドコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビアコーター、シルクスクリーンコーター法などにより、基材の少なくとも一方の面に流延または塗布される。記録層は、上記成分を含む塗布液を基材の少なくとも一方の面に塗布し、乾燥することにより形成できる。また、必要に応じて、塗布液を塗布した後、50〜150℃程度の範囲から選択される適当な温度で加熱して架橋したインク吸収層を形成してもよい。なお、上記記録層の上には、必要により、多孔質層、ブロッキング防止層、滑性層、帯電防止層などを形成してもよい。さらに、必要に応じて、スーパーカレンダーなど記録層表面の平滑化処理を行ってもよい。
【0059】
上記のバインダー樹脂(A)と無機微粒子(B)および有機溶剤(C)を含有するコーティング用樹脂組成物により形成する記録層の厚みは、用途に応じて選択でき、例えば、1〜60μm、好ましくは3〜40μm程度であり、さらに好ましくは5〜25μm程度である。
【0060】
記録シートの好ましい層構成は、基材上に少なくとも一層以上の乾式シリカおよび/または湿式シリカ微粒子よりなるインク吸収層を形成し、さらに、その上に記録層が形成されてなる層構成である。
【0061】
【実施例】
以下に、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
なお、特に断りのない限り、アクリル共重合体(d)および無機微粒子(B)の重量部は固形分換算とする。
【0062】
実施例および比較例で得られたコーティング用樹脂組成物について、以下のように評価した。
【0063】
(記録層のクラック)
○:目視でクラックが見えないもの。
△:5mm以上のクラックがないもの。
×:5mmを超えるクラックがあるもの。
【0064】
(光沢度)
本発明の記録シートの光沢度(60°)を、光沢度計を用いて測定した。
【0065】
(機械的安定性)
マーロン試験機を用いて15または25kgfの荷重をかけ1000r.p.mにて15分間攪拌したときの凝固物の析出具合を目視にて判断した。
◎:25kgfの荷重をかけたときに凝固物が全く析出しない。
○:15kgfの荷重をかけたときに凝固物が全く析出しない。
×:15kgfの荷重をかけたときに凝固物が析出する。
【0066】
(塗膜強度)
鉛筆引っかき試験機を用いて、塗工した記録層を荷重(50g)をかけながら種々の硬さの鉛筆で引っかき試験を行い、塗膜の破れ具合を目視にて判断した。
○:HB以上の硬さの鉛筆で引っかいたときに、粉落ちが認められない。
△:HBの鉛筆で引っかいたときに、わずかに粉落ちが認められる。
×:B以下の硬さの鉛筆で引っかいたときに、容易に粉落ちが認められる。
【0067】
(インク乾燥性)
プリンタを用いてシアン、マゼンタ、イエロー、ブラックおよびこれらの混色であるレッド、グリーン、ブルーのベタ画像印刷を行った後、30秒後に印字部分にPPCコピー紙を載せ、荷重(500g/cm2)を10秒間かけた後、PPC用紙を剥がし、下記の基準でコピー用紙へのインクの移り具合を目視にて判断した。
○:コピー用紙へのインクの移りが全く認められない。
△:僅かにインクの移りが認められる。
×:インクの移りが著しい。
【0068】
(印刷画質)
プリンタを用いてISO標準画像を印刷し、下記の基準で目視にて判断した。
○:滲みやムラなどの画質不良が全く認められない。
△:僅かに滲みやムラなどの画質不良が認められる。
×:滲みやムラなどの画質不良が著しく、明確な画像が得られない。
【0069】
[合成例1]加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−1)の合成
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素導入管および温度計を備えた2lの反応容器に、イソプロピルアルコール(以下「IPA」と略す。)175重量部を入れ、攪拌しながらアゾビスイソブチロニトリル(以下「AIBN」と略す。)0.62重量部を加えて溶解し、80℃に加温した。共重合成分として、メチルメタクリレート(以下「MMA」と略す。)96重量部、n−ブチルアクリレート(以下「BA」と略す。)62重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、A−174)6重量部、アクリル酸(以下「AA」と略す。)6重量部を混合し、滴下ロートを用いて約4時間かけて反応容器に滴下した。滴下終了後、追加触媒としてAIBN0.25重量部をIPA80重量部に溶解して、反応容器に滴下し、さらに2時間反応を保持した。重合終了後、目的の加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−1)を得た。この樹脂組成物の固形分は40重量%であった。
【0070】
[合成例2]加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−2)の合成
攪拌機、還流冷却器、滴下ロート、窒素導入管および温度計を備えた2lの反応容器に、メチルエチルケトン(以下「MEK」と略す。)175重量部を入れ、攪拌しながらAIBN0.62重量部を加えて溶解し、80℃に加温した。共重合成分として、MMA96重量部、BA62重量部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、A−174)6重量部、AA6重量部を混合し、滴下ロートを用いて約4時間かけて反応容器に滴下した。滴下終了後、追加触媒としてAIBN0.25重量部をMEK80重量部に溶解して、反応容器に滴下し、さらに2時間反応を保持した。重合終了後、目的の加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−2)を得た。この樹脂組成物の固形分は40重量%であった。
【0071】
[合成例3]加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−3)の合成
共重合成分として、MMAの量を110重量部、BAの量を80重量部とし、IPAに分散した、球状コロイダルシリカ(日産化学工業(株)製、IPA−ST、固形分30%、以下「IPA−ST」と略す。)121重量部(wet重量)を加えたこと以外は(d−1)と同様に共重合反応を行い、目的の加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−3)を得た。この樹脂組成物の固形分は40重量%であった。
【0072】
[合成例4]アクリル共重合体(d−4)の合成
上記加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−1)の合成において、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー(株)製、A−174)を用いなかったこと以外は、同様にしてアクリル共重合体(d−4)を得た。この樹脂組成物の固形分は40重量%であった。
【0073】
[実施例1(参考例)]
加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−1)100重量部に対して、IPA−ST400重量部を配合し、コーティング用樹脂組成物の固形分濃度が30重量%となるようにIPAを加えて塗布液1を調製した。全溶剤中の有機溶剤(C)の比率は、100重量%であった。
【0074】
[実施例2(参考例)]
加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−2)100重量部に対して、球状コロイダルシリカ(日産化学(株)製、MEK−ST、固形分30%)400重量部を配合し、コーティング用樹脂組成物の固形分濃度が30重量%になるようにMEKを加えて塗布液3を調製した。全溶媒中の有機溶剤(C)の比率は、100重量%であった。
【0075】
[実施例3]
加水分解性シリル基含有アクリル共重合体(d−3)120重量部に対して、IPA− ST380重量部を配合し、コーティング用樹脂組成物の固形分濃度が30重量%になるようにIPAを加えて塗布液4を調製した。
全溶媒中の有機溶剤(C)の比率は、100重量%であった。
【0076】
[比較例1]
アクリル共重合体(d−4)100重量部に対して、球状コロイダルシリカ(日産化学(株)製、ST−50)400重量部を配合し、コーティング用樹脂組成物の固形分濃度が30重量%になるようにイオン交換水を加えて塗布液5を調製した。全溶媒中の有機溶剤(C)の比率は、0重量%であった。
【0077】
[比較例2]
ポリビニルアルコール(クラレ(株)PVA−405の30%水溶液)100重量部に対して、球状コロイダルシリカ(日産化学(株)製、ST−50)400重量部を配合し、コーティング用樹脂組成物の固形分濃度が30重量%になるようにイオン交換水を加えて塗布液6を調製した。
全溶媒中の有機溶剤(C)の比率は、0重量%であった。
実施例および比較例で調製したコーティング用樹脂組成物(塗布液)の組成を表1に示す。
【0078】
【表1】
【0079】
湿式シリカ(平均粒径4.5μm、(株)トクヤマ製ファインシールX−45)100重量部、ポリビニルアルコール(クラレ(株)R1130)25重量部およびカチオン樹脂(日華化学(株)製ネオフィックスE117)10重量部を配合した水分散塗布液(固形分20%)を、乾燥塗布量で30μmになるように塗布してインク吸収層を、坪量170g/m2の写真用紙上に形成した。
【0080】
該インク吸収層の上に、さらに、実施例および比較例で調製したコーティング用樹脂組成物(塗布液)を塗布して、乾燥塗布量で10μmになるように記録層を形成した。得られた記録シートにエプソンプリンター(エプソンPM770C)で印刷を行った。得られた印刷画像につき、記録層のクラック、光沢度、機械的安定性、塗膜強度、インク乾燥性および印刷画質について評価を行った。
結果を表2に示す。
【0081】
【表2】
【0082】
【発明の効果】
インクジェット記録層の形成に使用する塗布液の機械的安定性に優れ、かつ、鮮明で、高いインク吸収性、乾燥性、光沢性および塗膜強度を有する記録層が得られるコーティング用樹脂組成物およびそれを用いた記録シートが得られる。
Claims (4)
- 基材上に、コーティング用樹脂組成物により形成される記録層を有する記録シートであって、
該コーティング用樹脂組成物は、バインダー樹脂(A)、無機微粒子(B)および有機溶剤(C)を含有するコーティング用樹脂組成物であり、バインダー樹脂(A)が、加水分解性シリル基を有する重合性不飽和単量体(a)0.5〜15重量%と、イオン形成性基を有する重合性不飽和単量体(b)3〜50重量%と、その他の重合性不飽和単量体(c)96.5〜35重量%とを、無機微粒子(B)の存在下で、有機溶剤(C)を使用した溶液重合により、共重合して得られるアクリル共重合体(d)であり、かつ、有機溶剤(C)が、バインダー樹脂(A)3〜60重量%と無機微粒子(B)97〜40重量%とからなる固形分100重量部に対して、100〜5000重量部の割合で配合することを特徴とする記録シート。 - 無機微粒子(B)の粒径が、3〜300nmであることを特徴とする請求項1に記載の記録シート。
- 有機溶剤(C)の沸点が100℃以下であり、かつ、該コーティング用樹脂組成物に含まれる溶媒中における有機溶剤(C)の比率が、15重量%以上であることを特徴とする請求項1に記載の記録シート。
- 有機溶剤(C)が、アルコール系溶剤であることを特徴とする請求項1に記載の記録シート。
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