JP4899608B2 - 半導体単結晶の製造装置及び製造方法 - Google Patents
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Description
シリコン単結晶中のボイド欠陥は、ウエハの初期の酸化膜耐圧特性の劣化因子である。また、シリコン単結晶中の格子間Si欠陥もデバイス特性を劣化させる。そのため、シリコン単結晶の品質特性上、無欠陥領域での結晶育成が望まれる。
V/G値の意味するところは、引上げ速度に従う空孔の移流と温度勾配に従う格子間Siの拡散とのバランスを示している。すなわち、V/G値が大きい場合、空孔の引上速度に従う移流が温度勾配に従う格子間Siの拡散を上回り、空孔濃度が高くなる。シリコン単結晶の引き上げの進行に伴う温度低下により空孔過飽和となると空孔型欠陥が発生する。逆に、V/G値が小さい場合、空孔の引上げ速度に従う移流が温度勾配に従う格子間Siの拡散を下回り、格子間Si濃度が相対的に高くなる。さらにシリコン単結晶の引き上げの進行に伴う温度低下により格子間Si過飽和となり格子間Si欠陥が発生する。
2.シリコン単結晶の育成時において、シリコン単結晶のショルダー形成から直胴部形成に移行する際に、結晶温度勾配Gと引上げ速度Vの急激な変化が生じ、結晶温度勾配Gおよび引上げ速度Vが安定するまでにかなりのプロセス進行を余儀なくされ、直胴部のTOP側は無欠陥結晶とすることが困難であった。そのため、引き上げた直胴部のうち、かなりの部分が製品としてウェーハにできないという問題があった。
3.結晶面内全域において無欠陥化するには、V/G値を面内均一にする必要があるため結晶温度勾配Gを結晶面内均一にする必要がある。ところが、シリコン単結晶の引上げ進行に伴って炉内の熱的環境が変化するので、シリコン単結晶の引上げ中、面内結晶温度勾配を常に均一にすることは極めて困難である。そのため、結晶引き上げにおける制御パラメータをなるべく減らし、より容易に制御ができ、作業効率の高い単結晶の製造方法が求められていた。
4.ホットゾーンの断熱材の劣化やチャンバー内壁面の輻射率の変化等により、シリコン単結晶を引上げる度に、わずかではあるが熱的環境が変化し、結晶温度勾配Gが変化する。このため、以前と全く同じプロセス条件で結晶を製造しても、元々、狭いV/G値の範囲でしか無欠陥とはならないため無欠陥結晶とならないことがしばしばあった。つまり、収率が悪くなる可能性があり、これらを改善したいという要求があった。
具体的には、本発明の半導体単結晶の製造装置においては、半導体単結晶内部におけるGrown−in欠陥制御をおこなうための半導体単結晶の製造装置であって、
直径110〜460mm、高さ100mm〜500mmの単結晶インゴットとされた前記単結晶内部におけるGrown−in欠陥状態に影響を与える結晶製造時の熱履歴をリセットする熱履歴リセット温度に前記単結晶を加熱維持するリセット加熱手段と、
前記単結晶インゴットを前記熱履歴リセット温度から降温して前記Grown−in欠陥状態を所望の状態とする熱履歴を再付与する熱履歴再付与手段と、
前記熱履歴再付与手段として、前記リセット加熱手段に連続して前記熱履歴リセット温度から降温する温度勾配を有する傾斜加熱手段と、
前記傾斜加熱手段によって形成される温度勾配中を前記単結晶インゴットを移動させることにより、前記単結晶インゴットを降温してGrown−in欠陥制御をおこなうように熱履歴を再付与する単結晶移動手段と、
前記単結晶移動手段として、前記単結晶インゴットを載置し前記熱履歴リセット温度に加熱しても前記単結晶インゴットを支持可能な支持部と、
を有することにより上記課題を解決した。
本発明は、前記単結晶インゴット中のGrown−in欠陥制御を行うための熱処理炉を備え、
前記熱処理炉は、前記単結晶インゴットの周囲に位置して前記単結晶インゴットを前記熱履歴リセット温度に加熱する前記リセット加熱手段と、
一端において前記リセット加熱手段と連設した柱状とされ、前記リセット加熱手段から離れる方向に降温する温度勾配が形成された内部で前記単結晶インゴットを移動させる前記傾斜加熱手段と、
前記熱処理炉内で前記単結晶インゴットを支持するとともに、前記単結晶を前記リセット加熱手段から前記傾斜加熱手段の長手方向にGrown−in欠陥制御をおこなう速度で移動させる前記単結晶移動手段とを備えていることができる。
本発明は、前記支持手段が、複数の前記単結晶インゴットを同時に支持可能とされてなることができる。
本発明の前記熱履歴リセット温度が1320℃〜溶融温度未満の温度とされることがある。
本発明の前記リセット加熱手段が上側に、前記傾斜加熱手段が下側に設けられ、前記単結晶移動手段が下降していくことで熱履歴の再付与がおこなわれることが可能である。
本発明は、半導体単結晶内部におけるGrown−in欠陥制御をおこなうための半導体単結晶の製造装置であって、
前記単結晶内部におけるGrown−in欠陥状態に影響を与える結晶製造時の熱履歴をリセットする熱履歴リセット温度に前記単結晶を加熱維持するリセット加熱手段と、
前記単結晶を前記熱履歴リセット温度から降温して前記Grown−in欠陥状態を所望の状態とする熱履歴を再付与する熱履歴再付与手段と、
を有することができる。
本発明においては、前記熱履歴再付与手段が、前記リセット加熱手段に連続して前記熱履歴リセット温度から降温する温度勾配を有する傾斜加熱手段と、
前記傾斜加熱手段によって形成される温度勾配中を前記単結晶を移動させることにより、前記単結晶を降温してGrown−in欠陥制御をおこなうように熱履歴を再付与する単結晶移動手段と、
を有することが好ましい。
本発明は、前記半導体単結晶中のGrown−in欠陥制御を行うための熱処理炉を備え、
前記熱処理炉は、前記単結晶の周囲に位置して前記単結晶を前記熱履歴リセット温度に加熱するリセット加熱手段と、
一端において前記リセット加熱手段と連設した柱状とされ、前記リセット加熱手段から離れる方向に降温する温度勾配が形成された内部で前記単結晶を移動させる傾斜加熱手段と、
前記熱処理炉内で前記単結晶を支持するとともに、前記単結晶を前記リセット加熱手段から前記傾斜加熱手段の長手方向にGrown−in欠陥制御をおこなう速度で移動させる単結晶移動手段とを備えていることができる。
本発明は、前記単結晶移動手段が、前記半導体単結晶を軸方向に分割して得られた単結晶インゴットを載置し前記熱履歴リセット温度に加熱しても前記単結晶インゴットを支持可能な支持部を備えてなることもある。
本発明は、前記支持手段が、複数の前記単結晶インゴットを同時に支持可能とされてなることも可能である。
本発明の半導体単結晶の製造方法においては、上記のいずれかに記載の製造装置によって半導体単結晶内部におけるGrown−in欠陥制御をおこなうための半導体単結晶の製造方法であって、
直径110〜460mm、高さ100mm〜500mmの単結晶インゴットとされた前記単結晶内部におけるGrown−in欠陥状態を形成せしめた結晶製造時の熱履歴をリセットする熱履歴リセット温度に前記単結晶インゴットを加熱維持するリセット加熱工程と、
前記単結晶インゴットを前記熱履歴リセット温度から降温して前記Grown−in欠陥状態を所望の状態とする熱履歴を再付与する熱履歴再付与工程と、
を有し、
前記熱履歴再付与工程が、前記リセット加熱工程における前記熱履歴リセット温度から連続して降温する温度勾配中で前記単結晶インゴットを移動して降温させ、前記単結晶インゴットのGrown−in欠陥制御をおこなうように熱履歴を再付与することにより上記課題を解決した。
本発明の前記熱履歴再付与工程において、前記単結晶インゴットを移動させる速度をV(mm/min)、前記温度勾配をG(℃/mm)としたとき、V/G値を0.18〜0.24mm 2 /℃minとすることができる。
本発明は、前記リセット加熱工程の前に、単結晶を引き上げる単結晶成長工程と、引き上げた前記半導体単結晶を軸方向に分離して前記単結晶インゴットとするスライス工程と、を有することが好ましい。
前記リセット加熱工程および熱処理再付与工程を、複数の前記単結晶インゴットに同時に行うことを特徴とする請求項6から8いずれかに記載の半導体単結晶の製造方法。
本発明の前記熱履歴リセット温度が1320℃〜溶融温度未満の温度とされることがある。
本発明のシリコン単結晶を製造する単結晶成長工程と、単結晶成長工程において育成されたシリコン単結晶中の欠陥の制御を行うための熱処理工程である前記熱履歴再付与工程とを、それぞれ独立したV/G値の制御範囲で行うことができる。
本発明は、半導体単結晶内部におけるGrown−in欠陥制御をおこなうための半導体単結晶の製造方法であって、
前記単結晶内部におけるGrown−in欠陥状態を形成せしめた結晶製造時の熱履歴をリセットする熱履歴リセット温度に前記単結晶を加熱維持するリセット加熱工程と、
前記単結晶を前記熱履歴リセット温度から降温して前記Grown−in欠陥状態を所望の状態とする熱履歴を再付与する熱履歴再付与工程と、
を有することができる。
本発明においては、前記熱履歴再付与工程が、前記リセット加熱工程における前記熱履歴リセット温度から連続して降温する温度勾配中で前記単結晶を移動して降温させ、前記単結晶のGrown−in欠陥制御をおこなうように熱履歴を再付与することが好ましい。
本発明は、前記熱履歴再付与工程において、前記単結晶を移動させる速度をV(mm/min)、前記温度勾配をG(℃/mm)としたとき、V/G値を無欠陥結晶となる0.18〜0.24mm2/℃minの範囲内に容易にすることができる。
本発明は、前記リセット加熱工程の前に、前記単結晶を軸方向に分離して単結晶インゴットとするスライス工程を有することがある。
本発明は、前記リセット加熱工程および熱処理再付与工程を、複数の前記単結晶インゴットに同時に行ってもよい。
このように、本発明では、半導体単結晶内部におけるGrown−in欠陥に寄与する結晶状態制御をおこなうための半導体単結晶の製造装置であって、前記単結晶内部におけるGrown−in欠陥に寄与する結晶状態に影響を与える結晶製造時の熱履歴をリセットする熱履歴リセット温度に前記単結晶を加熱維持するリセット加熱手段と、前記単結晶を前記熱履歴リセット温度から降温して前記結晶状態を所望の状態とする熱履歴を再付与する熱履歴再付与手段と、を有する半導体単結晶の製造装置により上記製造方法を実現したものである。
本発明では、言うなれば、熱履歴再付与工程において、所望のCZ法における引き上げを単結晶における熱履歴として再現することを主目的として、引き上げ炉内の温度状態を再現した温度勾配と、その温度勾配中で単結晶を移動することで、熱履歴を再付与することで、融液の状態とそれに続く引き上げ・冷却の状態とを再現し、その中で、好ましい結晶状態となるように、熱履歴を再付与するものである。これにより、実際に単結晶を成長させる際の引き上げ速度とは関係なく、純粋に結晶状態のみを考えてV/Gの値を決定することができるため、径寸法等は実際の引き上げ時に、結晶状態は熱履歴再付与工程において考慮すればよくなり、作業性が向上するとともに、所望の結晶状態の単結晶を製造することが容易になる。
この際、これまでに収拾された引き上げ時における様々なデータを活用するためには、半導体原料を融解するルツボ、および、引き上げ時に結晶を冷却してゆくホットゾーンに類似して、リセット加熱手段、および熱履歴再付与手段の傾斜加熱手段とを配置して、結晶引き上げ速度を制御する引き上げ側の速度、および、ルツボの上昇速度に類似して、単結晶移動手段を配することが好ましい。すなわち、ルツボのように筒状のヒータとされるリセット加熱手段と、この上方に連続してホットゾーンのように徐々に降温する温度勾配形成手段としてヒータが柱状に設けられて傾斜加熱手段とされ、これらリセット加熱手段と傾斜加熱手段とが同心状に設けられて、これらと同軸に上下方向移動可能な単結晶移動手段がルツボを支持するサセプタのように設けられることができる。この場合、単結晶移動手段は、単結晶がリセット加熱手段の内部に所定時間位置するようにした後、傾斜加熱手段中を所望の速度で上昇することで、熱履歴のリセットおよび再付与をおこなうことになる。
なお、温度勾配の形成は上方が高温のほうが形成しやすいため、実際の引き上げ機とは上下逆さまのように、リセット加熱手段を上側に、傾斜加熱手段を下側に設けることもできる。この場合、単結晶移動手段は下降していくことで熱履歴の再付与がおこなわれる。
さらに、傾斜加熱手段の温度勾配の降温する方に単結晶移動手段は移動すればよく、装置構成自体は、上下方向に移動、あるいは水平方向等、移動方向にはこだわらないものである。
また、前記単結晶移動手段が、前記半導体単結晶を軸方向に分割して得られた単結晶インゴットを載置し前記熱履歴リセット温度に加熱しても前記単結晶インゴットを支持可能な支持部を備えてなることにより、上記の製造方法をおこなうことができる。具体的には、単結晶インゴットを載置する載置皿等を有する構成とすることができる。
ここで、本発明は、前記支持手段が、複数の前記単結晶インゴットを同時に支持可能とされてなることにより、上記の製造方法が可能となる。具体的には、支持手段がその移動軸方向に複数の支持部を有する構成や、一つの支持部に複数の単結晶インゴットを同時に載置できる構成、あるいはこれらの組み合わせからなる構成とすることが可能である。
すなわち、シリコン単結晶の引き上げ時には、結晶直径制御あるいは酸素濃度制御の制約はあるが、シリコン単結晶中のGrown−in欠陥状態について制御する際に考慮するパラメータの制約が無いため、シリコン単結晶の引き上げ時の制御が容易となる。また、上述したリセット加熱工程および熱履歴再付与工程などの熱履歴再付与に関する熱処理時には、従来引き上げ時に制御していたパラメータであるシリコン単結晶の直径、シリコン融液からの熱、不純物による汚染、酸素濃度の制御などついて考慮する必要がほとんどない。よって、熱履歴再付与に関する熱処理においては、結晶欠陥状態を制御するV/G値の制御を阻害する制約が従来のシリコン単結晶の引き上げ時と比較して少なくなり、V/G値の制御が容易となるので、所望の品質の結晶を高い歩留まりで製造できる。
さらに、引き上げが終了した後に熱履歴再付与に関する熱処理を行なうことで、断熱材の劣化やチャンバー内壁面の輻射率の変化等の装置の経時変化や、引き上げ時のバッチごとの条件変化が、シリコン単結晶の品質に与える影響を低減することができるので、歩留まりを大幅に向上させることができる。
シリコン単結晶中にボイド欠陥が発生するか、格子間Si欠陥が発生するかあるいは無欠陥となるのかは、シリコン単結晶を成長させるときの引上げにより、シリコン単結晶の下から上へ移動する空孔濃度と拡散に従って下から上へ移動する格子間Si濃度のバランスにより決定される。従って、引き上げ後のシリコン単結晶に、所望の欠陥領域あるいは所望の無欠陥領域を有するシリコン単結晶をシリコン融液から成長させるときの温度履歴を与えて、空孔と格子間Siの移動現象を熱履歴に関する熱処理として再現することにより、所望の欠陥領域あるいは所望の無欠陥領域を有するシリコン単結晶を得ることができる。
空孔および格子間Siは、シリコン単結晶を引き上げる際に取り込まれる。シリコン単結晶の上部の部位を引き上げる際に固液界面で取り込まれた空孔濃度と格子間Si濃度とでは、空孔濃度の方が高い。その高い空孔濃度の部位は、シリコン単結晶の引き上げに伴って上昇していく。一方、拡散現象としては、空孔と格子間Siとでは、格子間Siの拡散速度が空孔のそれを上回る。格子間Siは、拡散により温度の高いところから低いところへ移動するため、結晶の下から上へ上昇する。なお、固液界面で凝固したシリコン単結晶中では、引き上げに伴って温度が低下していく過程において、空孔と格子間Siとの対消滅反応が生じるが、同数消滅のため空孔と格子間Siの濃度差には無関係である。
このようなシリコン単結晶の製造装置とすることで、所望の欠陥状態を有する領域あるいは所望の無欠陥領域を有するシリコン単結晶インゴットを容易に製造可能な装置となる。また、熱処理炉には引き上げに必要な磁場印加装置、炉内圧、熱輻射等を制御する大型の部分がなくてもよいので、熱処理炉としては引き上げ装置に比べて装置の小型化を図ることができる。
このようなシリコン単結晶の製造装置とすることで、複数の単結晶インゴットを同時に熱処理することができるものとなる。
このようなシリコン単結晶の製造方法とすることで、シリコン単結晶を空孔起因の欠陥および格子間シリコン起因の欠陥のない状態とすることができる。
このようなシリコン単結晶の製造方法とすることで、所望の欠陥領域あるいは所望の無欠陥領域を有するシリコン単結晶インゴットを容易に製造できる。また、熱処理工程における温度制御がより一層容易となる。
このような半導体単結晶の製造方法とすることで、生産性を向上させることができる。
図1において符号4はルツボを示している。ルツボ4は、有底円筒状の石英製の内層保持容器4aと、内層保持容器4aの外側に嵌合された同じく有底円筒状の黒鉛製の外層保持容器4bとから構成されている。ルツボ4は、所定の速度で回転する支持軸7に支持されている。ルツボ4の外側には、ヒータ6が同心円筒状に配設されている。ルツボ4の上側には、ガス流れ整流筒9等が設けられ、ホットゾーンを形成している。ルツボ4内には、ヒータ6により溶融されたシリコン融液5が充填されており、ルツボ4の中心軸には引き上げ棒あるいはワイヤー等からなる引き上げ軸3が配設されている。この引き上げ軸3の先にはシ−ドチャック2および種結晶1aが取り付けられている。
加熱手段12は、円筒状のヒータ14により欠陥リセット温度にシリコン単結晶インゴット17の温度が均一に保持されるようになっている。また、加熱装置12の上に位置する温度制御手段13は、円筒状のヒータ15により上下方向に、所望の欠陥領域あるいは所望の無欠陥領域を有するシリコン単結晶インゴット17を形成するための所定の温度勾配を有する温度状態がその内部に形成されたものであり、上方ほど温度が低下するようにされている。加熱手段12、温度制御手段13、ヒータ14、ヒータ15の中心軸は同位置とされている。なお、加熱手段12は、均一に加熱するため、上述したように円筒状とすることが望ましいが、箱状としてもよい。
また、熱処理炉10には、熱処理炉10内の温度を制御する制御手段(図示略)が備えられている。制御手段は、ヒータ14を制御してシリコン単結晶インゴット17を1320℃〜溶融温度未満の欠陥リセット温度となるようにする熱履歴リセット工程としての第1制御と、第1制御後に、所望の欠陥領域あるいは所望の無欠陥領域を有するシリコン単結晶を前記シリコン融液から成長させるときの温度履歴をシリコン単結晶インゴット17に与えるように、ヒータ15と支持手段16とを制御して、温度制御手段13内の温度勾配とシリコン単結晶インゴット17の移動速度とを制御する熱履歴再付与工程としての第2制御とを行うものである。
制御手段としては、その機能として、上記の第1制御と第2制御を実現するためのプログラムを、該制御手段に備わる記憶装置(メモリ)からロードしてCPU(中央処理装置)が実行することによりその機能が実現されるものとする。具体的には、例えば、単結晶引上げ装置を用いてシリコン単結晶を引き上げた場合のV/G値を制御する際に用いる従来の制御装置によって、ルツボ4等におけるシリコン融液5温度制御、および引き上げ速度やホットゾーンの温度状態の制御に対応した状態で、これら第1制御と第2制御をおこなう制御手段として使用することができる。
(単結晶成長工程)
まず、図1に示す単結晶引上げ装置を用い、種結晶1aをルツボ4に収容されたシリコン融液5の表面に接触させて、支持軸7と同一軸心で同方向または逆方向に所定の速度で回転させながら、引き上げ軸3を引き上げていくことにより、シリコン融液が凝固して形成されるシリコン単結晶1を成長させる。
シリコン単結晶1を成長させる際には、まず、シリコン単結晶1を無転位化するためにシ−ドしぼりを行なってネック部1bを形成し、その後ボディとして必要な直径を得るためにショルダ−1cを育成する。シリコン単結晶1が求める直径になったところで肩変えを行ない、直径が一定状態の直胴部1dを育成する。直胴部1dを求める長さまで育成した後、さらに直胴部1d中を無転位の状態で融液から切り離すためにテイルしぼりを行なう。そして、融液からシリコン単結晶1が離れたら、所定の条件でシリコン単結晶1を炉外に取り出し、冷却する。冷却後、シリコン単結晶1をスライスしてシリコン単結晶インゴット17とする。
このとき、シリコン単結晶1の引き上げ速度としては、単結晶状態が維持できてかつ所望の径寸法が維持できる最も速い引き上げ速度とすることができ、Grown−in欠陥を考慮した引き上げ速度に制約されることがない。
一方、径の大きいインゴット17の場合、後述の熱処理工程においてインゴット17の径方向に温度分布が出来やすくなり、インゴット移動の速度の速い場合、その均一化が難しいため、好ましくない。より詳細には、径が大きく、インゴット移動の速度が速いと、結晶内部が高温のまま取り残されやすくなり、径方向に温度分布が出やすくなる。温度分布の均一化を達成するためには、インゴットをゆっくり冷やす必要があり、インゴットの移動速度を低速にせざるを得なくなり生産性が低下する。そのため、Φ300mm結晶インゴットにおいては300mm以下、Φ200結晶インゴットにおいては400mm以下にするのがより好ましい。
次に、図2に示す熱処理炉を用いて、単結晶成長工程において形成されたシリコン単結晶インゴット17中のGrown−in欠陥分布状態のコントロールをおこなうための熱履歴をリセット及び再付与するための制御を行う熱処理工程を行う。
まず、制御手段により加熱手段12によってその内部がシリコン融点温度程度となるようにするとともに、シリコン単結晶インゴット17を支持手段16の載置皿16a上に結晶成長軸が支持手段16の移動方向となるとともに加熱手段12の中心軸と同位置となるように載置し、制御手段によってヒータ14を制御する(第1制御)ことにより、加熱手段12内でシリコン単結晶インゴット17を1320℃〜シリコン融点未満の欠陥リセット温度に加熱する(リセット加熱工程)。このリセット加熱工程により、引き上げ工程においてインゴット17に与えられている熱履歴をリセットして、これにより、シリコン単結晶インゴット17に内在している酸素析出物やボイド等の二次欠陥(Grown-in欠陥)が消去される。その後、制御手段によりヒータ15と支持手段16とを制御(第2制御)して、温度制御手段(傾斜加熱手段)13内に所定の温度勾配を形成するとともに、支持手段16により温度制御手段13内のシリコン単結晶インゴット17を所定の速度Vで上方へと移動させる(熱履歴再付与工程)。このとき、温度制御手段13内の上が低く下が高い上下方向の温度勾配により、インゴット内部の上下方向に温度勾配Gが形成される。
なお、上記のように、本発明の熱処理前段階としての引き上げ工程において、シリコン単結晶1の引き上げ速度としては、単結晶状態が維持できてかつ所望の径寸法が維持できる最も速い引き上げ速度とすることができ、Grown−in欠陥を考慮した引き上げ速度に制約されることがなく、また、熱履歴リセット及び熱履歴再付与工程においては、単結晶径寸法あるいは引き上げ炉内に形成される温度勾配等に制約されることがなく、それぞれ単結晶外形形成とGrown−in欠陥分布とを別々の工程で制御することが可能となるため、従来の引き上げ時にこれら2つのファクターを同時に制御する製法に比べて、結晶欠陥状態および外形の制御を容易におこなうことができる。したがって、これまで、制御することが難しかったGrown−in欠陥フリーの単結晶等を容易に製造することが可能となり、所望の単結晶を歩留まりよく製造することが可能となる。
また、本実施形態においては、ヒータ14とヒータ15とが異なる径寸法を有するように図示しているが、これらヒータ14とヒータ15とを同一の径寸法として、ヒータ14からヒータ15にかけて、熱履歴リセット温度から降温する温度勾配を形成して、上記のように半導体移動手段16によって、熱履歴をリセットおよび、再付与することも可能である。
また、ヒータ14,15は、それぞれ一体であるように図示したが、これらは、より精密な温度状態制御を実現可能とするために複数に分割されてそれぞれが制御手段により出力制御可能なものとすることも可能である。
図3に示す熱処理炉が図2に示す熱処理炉と異なるのは、支持手段16が、支持軸16bに支持された複数の載置皿16a、16cを備え、複数のシリコン単結晶インゴット17を同時に支持するものである点である。載置皿16cは、支持体16dにより載置皿16aに固定されている。載置皿16aと載置皿16cとは、それぞれ支持手段16の移動方向に異なる位置として、かつ、それぞれの載置皿16a、16cに載置されたシリコン単結晶インゴット17、17がシリコン単結晶インゴット17の径方向に対して同位置となるように設けられている。
図3に示す熱処理炉において、シリコン単結晶インゴット17、17は、支持手段16により、加熱手段12内で複数のシリコン単結晶インゴット17、17の中心と加熱手段12の中心とをシリコン単結晶インゴット17の径方向に対して同位置とした状態で支持されるとともに、シリコン単結晶インゴット17、17の中心と温度制御手段13の中心とを同じとした状態で、温度制御手段13内を上下方向に所定の速度で昇降移動される。
本発明の第二実施形態においては、熱処理工程を、複数のシリコン単結晶インゴットに同時に行うことにより、所望の欠陥領域あるいは所望の無欠陥領域を有するシリコン単結晶インゴット17とされる。
(単結晶成長工程)
まず、図1に示す単結晶引上げ装置を用い、種結晶1aをルツボ4に収容されたシリコン融液5の表面に接触させて、支持軸7と同一軸心で所定の速度で回転させながら、引き上げ軸3を引き上げていくことによりシリコン単結晶を成長させた。
このときの、引き上げ条件は、引き上げ速度1.0mm/min、引き上げ径寸法213mm、直胴部長さ1000mm、V/Gの値0.33mm2/℃minとされている。
その後、得られたシリコン単結晶をスライスしてΦ210mm×100mmのシリコン単結晶インゴットとした。シリコン単結晶インゴットと同じシリコン単結晶をスライスすることにより得られたサンプルのFDPを以下に示す方法により調べた。すなわち、サンプルをフッ硝酸液で表面を侵食させてミラー状にした後、セコエッチング液(純水+フッ酸+重クロム酸カリウムの配合液)中に垂直に無攪拌で浸し、光学顕微鏡で観察する方法によって検出した。その結果、FDPが検出された。
次に、図2に示す熱処理炉を用いて、シリコン単結晶インゴット中の欠陥の制御を行うための熱処理工程を行った。まず、シリコン単結晶インゴットを支持手段16の載置皿16a上に載置し、加熱手段12により1,400℃、5時間の欠陥リセット温度に加熱した(加熱工程)。その後、温度制御手段13内で、支持手段16によりシリコン単結晶インゴット17を所定の速度で上昇させた(温度制御工程)。このとき、温度制御手段13内の上下方向の温度勾配により、インゴット内部の上下方向に温度勾配2℃/mmが形成されるようにした。また、支持手段16により、シリコン単結晶インゴット17を、表1に示す上昇速度(mm/min)で500℃以下になるまで上方へと移動させて取出し、評価した。その結果を表1に示す。
(単結晶成長工程)
まず、図1に示す単結晶引上げ装置を用い、種結晶1aをルツボ4に収容されたシリコン融液5の表面に接触させて、支持軸7と同一軸心で所定の速度で回転させながら、引き上げ軸3を引き上げていくことによりシリコン単結晶を成長させた。
このときの、引き上げ条件は、引き上げ速度0.3mm/min、引き上げ径寸法213mm、直胴部長さ1000mm、V/Gの値0.10mm2/℃minとされている。
その後、得られたシリコン単結晶をスライスしてΦ210mm×100mmのシリコン単結晶インゴットとした。シリコン単結晶インゴットと同じシリコン単結晶をスライスすることにより得られたサンプルの格子間Si欠陥を実験例1におけるFDPの検出方法と同様の方法により調べた。その結果、格子間Si欠陥が検出された。
(熱処理工程)
次に、実験例1と同様にして熱処理工程を行った。その結果を表2に示す。
実験例1のシリコン単結晶インゴットに対し、インゴット内部の上下方向に温度勾配4℃/mmが形成されるようにしたことと、表3に示す上昇速度(mm/min)としたこと以外は、実験例1と同様にして熱処理工程を行った。その結果を表3に示す。
実験例2のシリコン単結晶インゴットに対し、インゴット内部の上下方向に温度勾配4℃/mmが形成されるようにしたことと、表3に示す上昇速度(mm/min)としたこと以外は、実験例1と同様にして熱処理工程を行った。その結果、表3に示す実験例3と同じ結果となった。
Claims (10)
- 半導体単結晶内部におけるGrown−in欠陥制御をおこなうための半導体単結晶の製造装置であって、
直径110〜460mm、高さ100mm〜500mmの単結晶インゴットとされた前記単結晶内部におけるGrown−in欠陥状態に影響を与える結晶製造時の熱履歴をリセットする熱履歴リセット温度に前記単結晶を加熱維持するリセット加熱手段と、
前記単結晶インゴットを前記熱履歴リセット温度から降温して前記Grown−in欠陥状態を所望の状態とする熱履歴を再付与する熱履歴再付与手段と、
前記熱履歴再付与手段として、前記リセット加熱手段に連続して前記熱履歴リセット温度から降温する温度勾配を有する傾斜加熱手段と、
前記傾斜加熱手段によって形成される温度勾配中を前記単結晶インゴットを移動させることにより、前記単結晶インゴットを降温してGrown−in欠陥制御をおこなうように熱履歴を再付与する単結晶移動手段と、
前記単結晶移動手段として、前記単結晶インゴットを載置し前記熱履歴リセット温度に加熱しても前記単結晶インゴットを支持可能な支持部と、
を有することを特徴とする半導体単結晶の製造装置。 - 前記単結晶インゴット中のGrown−in欠陥制御を行うための熱処理炉を備え、
前記熱処理炉は、前記単結晶インゴットの周囲に位置して前記単結晶インゴットを前記熱履歴リセット温度に加熱する前記リセット加熱手段と、
一端において前記リセット加熱手段と連設した柱状とされ、前記リセット加熱手段から離れる方向に降温する温度勾配が形成された内部で前記単結晶インゴットを移動させる前記傾斜加熱手段と、
前記熱処理炉内で前記単結晶インゴットを支持するとともに、前記単結晶を前記リセット加熱手段から前記傾斜加熱手段の長手方向にGrown−in欠陥制御をおこなう速度で移動させる前記単結晶移動手段とを備えていることを特徴とする請求項1記載の半導体単結晶の製造装置。 - 前記支持手段が、複数の前記単結晶インゴットを同時に支持可能とされてなることを特徴とする請求項2に記載の半導体単結晶の製造装置。
- 前記熱履歴リセット温度が1320℃〜溶融温度未満の温度とされることを特徴とする請求項2に記載の半導体単結晶の製造装置。
- 前記リセット加熱手段が上側に、前記傾斜加熱手段が下側に設けられ、前記単結晶移動手段が下降していくことで熱履歴の再付与がおこなわれることを特徴とする請求項1に記載の半導体単結晶の製造装置。
- 請求項1から5のいずれか1項に記載の製造装置によって半導体単結晶内部におけるGrown−in欠陥制御をおこなうための半導体単結晶の製造方法であって、
直径110〜460mm、高さ100mm〜500mmの単結晶インゴットとされた前記単結晶内部におけるGrown−in欠陥状態を形成せしめた結晶製造時の熱履歴をリセットする熱履歴リセット温度に前記単結晶インゴットを加熱維持するリセット加熱工程と、
前記単結晶インゴットを前記熱履歴リセット温度から降温して前記Grown−in欠陥状態を所望の状態とする熱履歴を再付与する熱履歴再付与工程と、
を有し、
前記熱履歴再付与工程が、前記リセット加熱工程における前記熱履歴リセット温度から連続して降温する温度勾配中で前記単結晶インゴットを移動して降温させ、前記単結晶インゴットのGrown−in欠陥制御をおこなうように熱履歴を再付与することを特徴とする半導体単結晶の製造方法。 - 前記熱履歴再付与工程において、前記単結晶インゴットを移動させる速度をV(mm/min)、前記温度勾配をG(℃/mm)としたとき、V/G値を0.18〜0.24mm2/℃minとすることを特徴とする請求項6に記載の半導体単結晶の製造方法。
- 前記リセット加熱工程の前に、単結晶を引き上げる単結晶成長工程と、引き上げた前記半導体単結晶を軸方向に分離して前記単結晶インゴットとするスライス工程と、を有することを特徴とする請求項6または7に記載の半導体単結晶の製造方法。
- 前記リセット加熱工程および熱処理再付与工程を、複数の前記単結晶インゴットに同時に行うことを特徴とする請求項6から8いずれかに記載の半導体単結晶の製造方法。
- 前記熱履歴リセット温度が1320℃〜溶融温度未満の温度とされることを特徴とする請求項6から9いずれかに記載の半導体単結晶の製造方法。
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