以下、図面を適宜参照して、本発明の実施形態におけるアクセルペダル用パッド構造体の成型方法につき詳細に説明する。なお、図中、x軸、y軸及びz軸は、3軸直交座標系をなす。
まず、本実施形態で成型されるアクセルペダル用パッド構造体につき、図1〜6を参照して、詳細に説明する。
図1は、本実施形態で成型されるアクセルペダル用パッド構造体の正面図であり、図2は、図1のX矢視図であり、図3は、図2のY矢視部分拡大図であり、図4は、図1のA−A線による拡大部分断面図である。また、図5は、本実施形態で成型されるアクセルペダル用パッド構造体のヒンジ部材の正面図であり、図3と同様の位置関係で示す。また、図6は、図5のB−B線による断面図である。
図1及び2に示すように、本実施形態におけるアクセルペダル用パッド構造体1は、自動車等の車両における車体の車室内に搭載され、運転者に踏み込み操作をされる樹脂製のパッド部材10及びパッド部12を回動自在に車体側に連絡する樹脂製のヒンジ部材20を備える。
パッド部材10は、運転者に踏み込み操作をされる部分であるパッド部12と、パッド部12の下方(z軸負方向)に形成された融着固定部14と、を有する。ここに、パッド部12は、x−z平面に平行でy軸方向に厚みを持つ概略平板状の形状を有し、その側面には、後述するカバー部材と係止され得る凸部12aが形成される。かかる融着固定部14が、パッド部材側連結部である。また、パッド部12には、図示を省略するが、パッド部材10に適度な踏み込み反力を与えながらパッド部12に印加される踏力を車両側に伝えるべく、車体側に設けられたアーム部材が連結される。一方で、かかるパッド部12の下方に連続的に形成される融着固定部14は、車体側に組み付けられるヒンジ部材20に対して、融着固定されて一体的に連絡される。なお、パッド部12に印加される踏み込みストローク等の踏力情報を車両側に伝達する構成は、パッド部材10の回動に応じてアーム部材が移動して、踏力情報が車両側に伝達される機械的なものに限らず、パッド部材10の回動角を図示を省略するセンサーで検出し、その出力信号を介して踏力情報が車両側に伝達される電気的なものであってもよい。
ヒンジ部材20は、パッド部材10よりも先に単品として成型されるもので、より具体的には、図3から6に示すように、車体の車室下方を画成するフロア部材に設けられた図示を省略する固定部材に嵌装される嵌装部22aが形成されたベース部22と、複数のボス24aが突設して形成された起立部24と、ベース部22と起立部24とを回動自在に連絡するヒンジ部26と、を有する。ここに、起立部24は、x−z平面に平行でy軸方向に厚さを持つ概略平板状の形状であり、起立部24に設けられる複数のボス24aは、図4及び6に示す断面形状において、起立部24の外面からy軸の正方向及び負方向の2方向に向けて突出する概略円柱状の形状を有し、かつ図3及び5に示すように、z軸方向に互いに偏位しながらx軸方向に配列されるような配設パターンを有する。なお、かかる複数のボス24aが突設して形成された起立部24が、ヒンジ部材側連結部である。
かかる複数のボス24aが突設されたヒンジ部材20の起立部24には、パッド部材10の融着固定部14が融着されて固定される。具体的には、パッド部材10の融着固定部14は、ヒンジ部材20の起立部24をその外方から覆うように内部に収容しながらヒンジ部材20に対して成型される過程で、パッド部材10の樹脂材が、高温高圧下でボス24aを有する起立部24の周囲に射出されることにより、起立部24の平板状の外面及びそこから突設するボス24aの周囲において密接に融着されて固定される。ここに、かかる射出成型時において、起立部24のボス24aは、融着固定部14に埋設されるが、ボス24aの端面24sの位置は、パッド部材10の融着固定部14の外面14sの成型形状を規定する成型金型に対する位置基準として用いられて、起立部24のボス24aの端面24sとパッド部材10の融着固定部14の外面14sとは、パッド部12の成型後において面一となる。なお、ボス24aの端面24sの位置は、ボス24aの端面24s自体がパッド部材10の成型金型に対するヒンジ部材20の位置基準として用いられ得るものであれば、必ずしもパッド部材10の融着固定部14の外面14sと面一である必要はなく、例えば、かかるボス24aの位置に対応する成型金型の表面に凸部が別途形成されていれば、それに整合してボス24aの端面24sの位置は、融着固定部14の外面14sからは陥設されていてもよく、逆にボス24aの位置に対応する成型金型の内面に凹部が別途形成されていれば、それに整合してボス24aの端面24sの位置は、融着固定部14の外面14sから突設されているものであってもよい。
また、パッド部材10の融着固定部14は、かかるヒンジ部材20の起立部24側の終端において、起立部24に対して起立部24の外周を囲って実質的に直立する壁部16を有し、起立部24は、パッド部材10の融着固定部14における壁部16から下方(z軸の負方向)で融着固定部14から露出し、ヒンジ部26へと連なる。つまり、かかるヒンジ部材20の起立部24における露出した部分及びパッド部材10の融着固定部14における壁部16(その近傍を含む)が、ヒンジ部材20の起立部24とパッド部材10の融着固定部14との間における境界部iとなる。なお、パッド部材10の融着固定部14における壁部16が実質的に直立するとは、x−z平面に平行なヒンジ部材20の起立部24の外面に対して、60°以上90°以下の角度θで立設することをいう。
このように融着されたパッド部材10の融着固定部14とヒンジ部材20の起立部24とは、互いを剥離するような外力を受けたとしても、そもそもこれらは互いに融着しているため剥離に対して充分な耐力を有するが、起立部24のボス24aが、その端面24sを除き融着固定部14に埋設されるため、融着面積が増大されて剥離に対する耐力がより増強されている。更にこのように、起立部24のボス24aが、融着固定部14に埋設されることにより、特にz軸方向において、パッド部材10の融着固定部14とヒンジ部材20の起立部24とが分離するような外力を受けたとしても、ボス24aの剪断強度は充分に大きいため、ボス24aが機械的な係止部として機能して、分離に対しても耐力が増強されている。
また、ヒンジ部材20のヒンジ部26は、ベース部22と起立部24と間に位置する薄肉のくびれ部であり、ベース部22と起立部24とをx軸について回動自在とする。ここに、パッド部材10の融着固定部14とヒンジ部材20の起立部24とは、融着されて固定されているから、かかるヒンジ部26により、パッド部材10のパッド部12が、運転者により踏み込み操作をされると、パッド部材10はヒンジ部材20に対して、つまりヒンジ部材20がそのベース部22に形成された嵌装部22aを介して取り付けられる車体のフロア部材に対して、x軸について回動自在である。
次に、以上の構成のアクセルペダル用パッド構造体1のパッド部材10及びヒンジ部材20に用いられる樹脂材につき、詳細に説明する。
まず、アクセルペダル用パッド構造体1のヒンジ部材20に用いられる樹脂材としては、ベース部22と起立部24とを回動自在に連絡するヒンジ部26における反復回動性を耐久的に確保し、かつ車体のフロア部材に設けられた固定部材に嵌装される嵌装部22aの簡便かつ確実な装着性を実現する観点から、弾性軟質樹脂材としてポリエステルエラストマ(以下、TPCと呼称する)が好適に用いられる。TPCは、射出成型性にも優れた樹脂材であるが、結晶性の硬い部分(ハードセグメント)と、非晶性の柔らかい部分(ソフトセグメント)と、を併せ持つ準結晶的な分子構造を有するため、かかる分子構造を安定化するため、その成型後は、大気中常温下で24時間程度保持する安定化工程を経ることが必要である。かかる安定化工程を施したTPC成型品、つまりヒンジ部材20は、強度耐久特性が安定化するのみならず、その後のヒンジ部材20に対する異種樹脂材を用いた射出成型において、かかる異種樹脂材との間で良好な融着性を実現する。
また、パッド部材10に用いられる樹脂材としては、パッド部材10として機能上要求される剛性や強度を確保でき、かつ弾性軟質樹脂材から成型されるヒンジ部材20との間で融着性を確保した射出成型を自在とする観点から、ポリブチレンテレフタレート(以下、PBTと呼称する)やポリカーボネート(以下、PCと呼称する)が好適に用いられ得る。このようにパッド部材10に用いられるPBTやPCといった樹脂材は、機械的強度が高いものであるから、ヒンジ部材20に用いられるTPCといった樹脂材よりも、成型後における硬度が高いものである。ここに、樹脂材の硬度は、JISショアー硬度Aで規定される。
ここに、パッド部材10の樹脂材としてPBTを用いる場合には、成型後のパッド部材10の剛性等を増強する観点からは、PBTにガラス繊維成分を成型前に予め、30±5重量%の割合で混合しておくことが、より好ましい。また、ヒンジ部材20の樹脂材との融着性を向上するために、ヒンジ部材20の樹脂材を親和材として所定量含有しておくことも、より好ましい。また更に、PBTは成型後、可視光に対する透光性が0%の非透光性であるが、適宜色素を含有する着色材を成型前に予め混入しておくことにより、所望の色に着色することができ、可視光に対する反射特性を適宜調節自在である。一方で、パッド部材10の樹脂材としてPCを用いる場合には、成型後、可視光に対して最大で90%の透光性を呈することになり、更に適宜色素を含有する着色材を成型前に予め混入しておくことにより、所望の色に着色することもでき、かかる観点からは可視光に対する透光性を適宜調節自在である。但し、このようにPCは、成型後、可視光を透過する透光性を呈するものであるため、透光性を確保する観点からは、非透光性のガラス繊維成分や親和材を混合することは適さないが、透光性が必要ない場合には、これらを分散的に混合することも可能であるし、もちろん透光性を呈するガラス繊維成分や親和材を混合することも可能である。つまり、かかる構成を適宜最適化することにより、可視光に対する透光性が0%以上90%以下の範囲内で、適宜パッド部材10の材料成分を調整自在である。
従って、以上の構成によれば、ヒンジ部材は、第1の樹脂材を用いて成型され、車体側に連絡されるベース部と、ヒンジ部材側連結部と、ベース部とヒンジ部材側連結部とを回動自在に連絡するヒンジ部と、を備え、パッド部材は、第1の樹脂材とは成型後の樹脂硬度が異なる第2の樹脂材を用いて成型され、踏み込み操作をされる部分であるパッド部と、パッド部材側連結部と、を備え、パッド部材側連結部がヒンジ部材側連結部の少なくとも一部を外方から覆って内部に収容し、機械的係止部を画成しながら融着固定部を画成することにより互いに融着固定される構成により、パッド部材においては、基本剛性及基本強度を確保することができるのみならず、より剛性があって意匠性に優れたカバー部材を装着したり、透光性を持たして視認性を向上させるに足る構成となる。更に、ヒンジ部材においては、耐衝撃性や反復される回動動作に対する耐久性を確保することができると共に、車体側への組み付け性も簡便かつ確実にすることができ、また更に、複数種の車種や仕様について共通化して適用できるに足る構成となる。そして、かかるパッド部材とヒンジ部材とは、最適材料を各々適用された上で、機械的に係止されながら、確実に融着固定されることができ、このように一体成型されたアクセルペダル用パッド構造体を得ることができる。
具体的には、ヒンジ部材側連結部が、突設された複数のボスを有する起立部であり、パッド部材側連結部が、ヒンジ部材における起立部の複数のボスを埋設しながら、起立部を外方から覆うように起立部に対して融着されてパッド部を起立部に固定する融着固定部であるという構成により、パッド部材とヒンジ部材とは、機械的に係止されながら、確実に融着固定されることができると共に、ヒンジ部材の起立部がパッド部材の融着固定部で保護されることができる。また、かかるヒンジ部材は、複数種の車種や仕様について共通化して適用できることになる。
また、成型後のパッド部材の第2の樹脂材は、その透光性が0%以上90%以下の範囲内で調整自在であるという構成により、パッド部材自体の背面やパッド部材背後の車室空間に発光ダイオード等の光源を配しておけば、その出射光をパッド部材を介して運転者の眼に入射することが可能となり、パッド部材の存在を運転者により確実に認識させることができる。また、必要に応じて、パッド部材の透光性を0%、つまり非透光性に設定することもできる。また更に、このようにパッド部材を非透光性に設定しても、パッド部材とヒンジ部材とを適宜異なった色に着色することも可能であり、視認性を向上できる。
さて、以上の構成のアクセルペダル用パッド構造体に対しては、パッド部の剛性や強度をより増強し得て、かつ意匠的なアピアランスもより向上できるカバー部材が装着可能であるので、かかるカバー部材を装着したアクセルペダル用パッド構造体につき、更に図7及び8をも参照して詳細に説明する。
図7は、本実施形態におけるアクセルペダル用パッド構造体のパッド部材にカバー部材を装着した状態の側面図であり、図2と同様の位置関係で示す。また、図8は、同様にアクセルペダル用パッド構造体のパッド部材にカバー部材を装着した状態の拡大部分断面図であり、図4と同様の位置関係で示す。
図7及び8に示すように、かかる構成のアクセルペダル用パッド構造体30には、パッド部材10のパッド部12に対して、それをy軸の正方向に対峙して覆うようにアルミ材等の金属製のカバー部材40が装着されている。具体的には、カバー部材40は、パッド部材10のパッド部12のy軸の負方向側の外面形状に整合する基本形状を有するものであり、更にパッド部材10の融着固定部14における壁部16に対しても形状が整合する壁部42を有する。かかるカバー部材40をパッド部材10のパッド部12に装着するには、まずカバー部材40の壁部42をパッド部材10の融着固定部14における壁部16に対して対向させて当接し、このように対応する壁部16、42同士を面当たり的に位置決めした後、カバー部材40をパッド部12に被せて装着することとなる。またこの際、パッド部材10のパッド部12の側面には、凸部12aが形成されているから、カバー部材40の側部と凸部12aとは係止される。
従って、このようにパッド部材に装着されるカバー部材の壁部が、パッド部材における融着固定部の壁部に外方から当接するという構成により、カバー部材が、その壁部で、パッド部材における融着固定部の壁部に位置決めされながら装着され得て、カバー部材を簡便かつ確実に位置決めして装着することができる。
また、パッド部材のパッド部に凸部が設けられているという構成により、かかる凸部でカバー部材を係止することができ、カバー部材を簡便かつ確実に装着することができる。
次に、以上の構成のアクセルペダル用パッド構造体を製造するための成型方法につき、カバー部材40が装着されていない状態のアクセルペダル用パッド構造体1を例にとり、更に図9から11をも参照しつつ、詳細に説明する。
図9は、本実施形態におけるアクセルペダル用パッド構造体におけるヒンジ部材を成型するための成型金型を示す拡大部分断面図であり、図4と同様の位置関係で示す。また、図10は、かかるアクセルペダル用パッド構造体におけるパッド部材を、ヒンジ部材と一体的に成型する成型金型を示す拡大部分断面図であり、図4と同様の位置関係で示す。また、図11は、かかるアクセルペダル用パッド構造体の成型工程を示すフローチャートである。
図9に示すように、アクセルペダル用パッド構造体1の成型工程で用いられるヒンジ部材を成型する射出成型機の射出成型金型45は、3つの金型片45a、45b及び45cを協働的に組み付けて構成されるもので、組み付けられたそれらの内方には、アクセルペダル用パッド構造体のヒンジ部材20の形状に整合したヒンジ部材用空孔46を有する。ヒンジ部材用空孔46には、図示を省略するゲートから、ヒンジ部材20成型用の樹脂材を溶融状態で射出することになる。
図10に示すように、アクセルペダル用パッド構造体1の成型工程で用いられるパッド部材10を、ヒンジ部材20と一体的に成型する射出成型機の射出成型金型50は、一片52及び他片54からなる2ピースの基本構造を有する。成型金型50の一片52内には、図9の紙面と垂直方向に冷却流路52aが形成され、成型金型50の他片54内には、図9の紙面と垂直方向に冷却流路54aが形成されており、かかる一対の冷却流路52a、54a内には、水等の冷却媒体が流通自在である。また、成型金型の一片52及び他片54が、図9で示す射出成型位置に組み付けられた際には、それらの内方には、アクセルペダル用パッド構造体のヒンジ部材20の形状に整合したヒンジ部材用空孔56と、パッド部材10の形状に整合したパッド部材用空孔58と、が協同的に形成される。ここに、パッド部材用空孔58には、パッド部材10の融着固定部14における壁部16の形状に整合する壁部形成部58a、58bが形成されている。
以上の構成の射出成型金型45及び50を用いて、アクセルペダル用パッド構造体1を成型する工程を、図11をも参照しつつ説明する。アクセルペダル用パッド構造体1を成型するには、まず、射出成型金型45を用いてヒンジ部材20を射出成型する(ステップS1)。ここに、かかる射出工程では、溶融状態の樹脂材をヒンジ部材用空孔46内に過不足なく充填するために、最初は相対的に低い圧力で溶融状態の樹脂材を射出し、その後より高い圧力で溶融状態の樹脂材を射出する。このような工程でヒンジ部材20の成型が完了したならば、かかるヒンジ部材20が、弾性軟質樹脂材として、代表的に準結晶的な分子構造を有するTPCを用いて成型されていることを考慮し、その分子構造を安定化すべく、成型後のヒンジ部材20を所定の保管場所に移動して、ヒンジ部材20を大気中常温下で24時間程度保持する安定化工程を施す(ステップS2)。なお、ここまでを1次工程と呼び、以下の一連の工程を2次工程と呼ぶ。
ついで、このようにヒンジ部材20に対して安定化工程を施した後、ヒンジ部材20を、成型金型の一片52及び他片54が協働して形成されるヒンジ部材用空孔56内に設置する(ステップS3)。この際、ヒンジ部材20における起立部24の一部やボス24aは、成型金型の一片52及び他片54内が協働して形成されるパッド部材用空孔58内に配置されるが、ボス24aの端面24sは、パッド部材用空孔58の表面に当接しており、ヒンジ部材20における起立部24側もパッド部材用空孔58に対して精度よく位置決めされる。
ついで、このようにヒンジ部材20を、成型金型の一片52及び他片54内のヒンジ部材用空孔56及びるパッド部材用空孔58内に設置した後にこれらを組み付け、一対の冷却流路52a、54a内に冷却媒体を流通させる。そして、この状態で、代表的にはPBTやPCといったパッド部材10成型用の硬質樹脂材を、溶融状態で、射出成型金型50のパッド部材用空孔58内に高圧で射出していく(ステップS4)。
ここで、弾性軟質樹脂材で成型されたヒンジ部材20の樹脂硬度は相対的に低いため、パッド部材用空孔58内に高圧の溶融状態で射出されるパッド部材10成型用の硬質樹脂材は、その成型工程において、成型金型の一片52及び他片54内のパッド部材用空孔58内に配置されたヒンジ部材20の起立部24を押圧していく。ここで、かかる成型工程において、パッド部材10成型用の溶融状態の樹脂材は、出射圧力をP1、P2及びP3の3段階に変化される保圧工程を経る。具体的には、まず1段階目の保圧工程での出射圧力P1は、5MPa程度の相対的な低圧であり、次の2段階目の出射圧力P2は、1段階目の圧力P1よりも10倍以上大きい60MPa程度の相対的な高圧であり、最後の3段階目の出射圧力P3は、1段階目の圧力P1よりも倍以上大きいが、2段階目の圧力P2よりも半分以下である20MPa程度の相対的に中間の圧力である。このように低圧の1段目、高圧の2段目及び中間圧の3段目の保圧工程を経ることにより、溶融状態の樹脂材でヒンジ部材20を過剰に押圧して変形させることなく、溶融状態の樹脂材をパッド部材用空孔58内に過不足なく充填することができる。なお、かかる3段階の保圧工程の各保圧時間は、均等に設定すれば足りる。
また、この際、パッド部材用空孔58内に高圧の溶融状態で射出されるパッド部材10成型用の樹脂材は、ヒンジ部材20の起立部24とパッド部材10の融着固定部14との間に位置する境界部iに対応してパッド部材用空孔58に形成された壁部形成部58a、58bおいて、ヒンジ部材20の起立部24を押しのけて、パッド部材用空孔58の外部へ侵出しようとする。しかし、本実施形態においては、かかる境界部iの近傍に配置された一対の冷却流路52a、54a内に冷却媒体が流通しているため、境界部iにおける射出成型金型50の温度が低く維持されており、パッド部材10成型用の樹脂材が、パッド部材用空孔58における境界部i近傍に到達すると、急激に熱を奪われてその温度が低下し、迅速に固化を始めてヒンジ部材20の起立部24を押しのけて外部に侵出することはない。つまり、パッド部材10の融着固定部14における壁部16の観点から説明すれば、かかる壁部16は、このような冷却作用を発現するように、一対の冷却流路52a、54aを境界部i近傍に配することを可能とし、かつカバー部材40の壁部42を当接されてカバー部材40の位置決めを可能とする構成を有しているといえる。
また、併せて、パッド部材10成型用の樹脂材をパッド部材用空孔58内に溶融状態で射出するゲートGは、パッド部材用空孔58に形成された壁部形成部58a、58bからz軸の正方向に離間した位置に設けられる。ここに、パッド部材10成型用の樹脂材をパッド部材用空孔58内に均等に充填する観点からは、ゲートGは、成型後のパッド部材10において、その融着固定部14における壁部16からz軸の正方向に成型後のパッド部材10の全長(z軸方向の長さ)の1/2離間した位置(その近傍を含む)に設けられることが好ましい。このように、ゲートGの位置をz軸の正方向に離間して設けることにより、パッド部材10成型用の樹脂材をパッド部材用空孔58内に均等に充填しながら、その温度をパッド部材用空孔58に形成された壁部形成部58a、58bに向かって、つまり境界部iに向かって下降させることができる。このことは、一対の冷却流路52a、54aの冷却作用を補完して、パッド部材10成型用の樹脂材が、パッド部材用空孔58における境界部iに近づくにつれ、その温度を迅速に低下させて確実に固化させることに寄与するものといえる。なお、パッド部材10成型用の樹脂材の出射圧力が高圧であり、パッド部材用空孔58内への充填性が良好な場合には、その温度をより下降させる観点から、ゲートGを、成型後のパッド部材10の全長の1/2の近傍位置よりも更にz軸の正方向に離間した位置に設けてもよい。
そして、このように、パッド部材10成型用の硬質樹脂材が、パッド部材用空孔58における境界部i近傍で迅速に固化されながら、ヒンジ部材20のボス24aを有する起立部24の周囲に射出されていくことにより、起立部24を内部に収容しながら、起立部24の平板状の外面及びそこから突設するボス24aの周囲において密接に融着されて固定される。この際、パッド部材10の融着固定部14においては、ヒンジ部材20における起立部24のボス24aの周囲において機械的に係止される係止部を画成すると共に、ヒンジ部材20における起立部24の平板状の外面及びボス24aの周囲において融着固定部を画成する。また同時に、起立部24のボス24aの端面24sとパッド部材10の融着固定部14の外面14sとは、パッド部材10の成型後において面一となる。
ついで、このように、パッド部材10の融着固定部14を、ヒンジ部材20の起立部24の平板状の外面及びそこから突設するボス24aの周囲において密接に融着固定して一体成型した後に、冷却流路52a、54a内の冷却媒体の流通を停止し、成型金型の一片52及び他片54を開いて、アクセルペダル用パッド構造体1を取り出すことになる(ステップS5)。この際、ゲートGのアクセルペダル用パッド構造体1側において固化した樹脂の部分が、ニッパ等の切断具で切断され、パッド部材10におけるパッド部12の凸部12aとなる(ステップS6)。また、必要に応じてかかるアクセルペダル用パッド構造体に、カバー部材40を装着してもかまわない。
従って、このようにヒンジ部材を第1の成型金型を用いて成型する1次工程と、成型されたヒンジ部材に対して、第2の成型金型を用いてパッド部材を融着固定する2次工程と、を備えることにより、仕様の種類が少ないヒンジ部材を第1の成型金型を用いて先に成型しておき、そのヒンジ部材に仕様の種類が多いパッド部材を第2の成型金型を用いて確実に融着固定することができると共に、仮にパッド部材の仕様が変更されたとしても、ヒンジ部材成型用の第1の金型は変更することなく、パッド部材成型用の第2の金型を変更するだけで足り、アクセルペダル用パッド構造体の生産性を向上すると共に、その製造コストを削減することができる。更に、2次工程で、成型されたヒンジ部材に突設された複数のボスを埋設してヒンジ部材とパッド部材とを機械的に係止する機械的係止部を画成しながら、ヒンジ部材とパッド部材との間に融着固定部を画成することにより、パッド部材とヒンジ部材とを、機械的に係止しながら確実に融着固定することができる。
また、成型されたヒンジ部材に対して、成型後の樹脂硬度がヒンジ部材の樹脂硬度よりも高いパッド部材の成型用の樹脂材を溶融状態で射出して、ヒンジ部材における複数のボスが形成された部分を外方から覆って内部に収容し、機械的係止部を画成しながら融着固定部を画成することにより、パッド部材とヒンジ部材とは、機械的に係止されながら、確実に融着固定されることができると共に、ヒンジ部材の起立部がパッド部材の融着固定部で保護されることができる。また、軟質のヒンジ部材の起立部が硬質のパッド部材の融着固定部の内部で挟み込まれるように内部に収容されることにより、パッド部材と車体との間での振動伝達を抑制し、防振性を向上することができる。
また、ヒンジ部材における車体側に連絡されるベース部からパッド部材側に起立する起立部の一部が、第2の成型金型に対する、ヒンジ部材の位置基準として適用されることにより、予め成型されているヒンジ部材における起立部の複数のボスの端面や起立部の外面をパッド部材用の成型金型に対する位置決めに使うことができ、形状精度及び特性精度が高いパッド部材を、精度よくヒンジ部材に融着することができる。
また、第2の成型金型は、融着固定部と起立部との境界部に配置されて冷媒が流通自在な冷却流路を有し、2次工程において、パッド部材の成型用の溶融状態の樹脂材が境界部において冷却されることにより、迅速に固化されることができ、ヒンジ部材の起立部を押しのけて外部に侵出することが効果的に抑制され得る。更に、パッド部材の融着固定部の壁部が、テーパ状等ではなく実質的に直立していることにより、パッド部材の成型時に、ヒンジ部材に向かって、パッド部材成型用の溶融状態にある樹脂材を射出する際のいわゆる接着剪断力に対する抗力が増加し得て、パッド部材とヒンジ部材とをより確実に融着固定することができる。
また、第2の成型金型におけるパッド部材の成型用の樹脂材を導入するゲートが、パッド部材の融着固定部における壁部からパッド部材の全長の1/2離間した位置及びその近傍に設けられることにより、パッド部材成型用の溶融状態の樹脂材をパッド部材用の成型金型に均等に充填しながら、その温度を境界部に向かって低下させて確実に固化させることができ、つまりかかる樹脂材の充填と固化のバランスをとりながら、ヒンジ部材の起立部を押しのけて外部に侵出することが効果的に抑制され得る。
また、パッド部材の成型用の樹脂材は、出射圧力P1で保圧される第1の保圧工程、出射圧力P1より大きい出射圧力P2で保圧される第2の保圧工程、及び出射圧力P1よりも大きく出射圧力P2よりも小さい出射圧力P3で保圧される第3の保圧工程を経ながら出射されることにより、パッド部材成型用の溶融状態の樹脂材でヒンジ部材を過剰に押圧して変形させることなく、かかる樹脂材をパッド部材用の成型金型に過不足なく充填することができる。
次に、本実施形態におけるアクセルペダル用パッド構造体の変形例につき、更に図12をも参照して、詳細に説明する。
図12は、本変形例におけるアクセルペダル用パッド構造体の拡大部分断面図であり、図4と同様の位置関係で示す。
図12に示すように、本変形例におけるアクセルペダル用パッド構造体60においては、前述したアクセルペダル用パッド構造体1に対して、複数のボス24aが突設された起立部24を有するヒンジ部材20の代わりに、複数の凹部84aが陥設された起立部84を有するヒンジ部材80を用いると共に、パッド部材70の融着固定部74には孔74aが形成されていることが主たる相違点であり、残余の構成は原理的に同様である。以下、かかる相違点に着目して、説明をする。
具体的には、ヒンジ部材80は、フロア部材に設けられた図示を省略する固定部材に嵌装される嵌装部82aが形成されたベース部82と、複数の凹部84aが陥設された起立部84と、ベース部82と起立部84とを回動自在に連絡するヒンジ部86と、を有する。かかる複数の凹部84aの配設パターン等の配設構成は、前述した複数のボス24aのものと同様に設定される。なお、起立部84の凹部84aは、起立部84の表面から凹んでいる形状全てを包含する意味で用いており、例えば対向する凹部84a同士は連通して貫通孔となっていてもよい。
かかる複数の凹部84aが形成されたヒンジ部材80の起立部84には、パッド部材70の融着固定部74が融着されて固定される。具体的には、パッド部材70の融着固定部74は、ヒンジ部材80の起立部84を内部に収容しながら、その外方から覆うようにヒンジ部材80に対して成型される過程で、パッド部材10の樹脂材が、高温高圧下で凹部84aを有する起立部84の周囲に射出されることにより、起立部84の平板状の外面及びそこに形成された凹部84aの周囲において密接に融着されて固定される。ここに、かかる射出成型時において、パッド部材70の融着固定部74に形成される孔74aにおいて露出される起立部84の外面は、成型金型に対する位置基準として用いられる。
また、パッド部材70の融着固定部74は、かかるヒンジ部材80の起立部84側の終端において、起立部84に対して起立部84の外周を囲って実質的に直立する壁部76を有し、かかる壁部76(その近傍を含む)及びそこから露出するヒンジ部材80の起立部84が、境界部iとなる。
このように融着されたパッド部材70の融着固定部74とヒンジ部材80の起立部84とは、互いを剥離するような外力を受けたとしても、これらは互いに融着しているため剥離に対して充分な耐力を有し、更に起立部84の凹部84aが、融着固定部74に埋没されるため、融着面積が増大されて剥離に対する耐力が増強されている。更にこのように、ヒンジ部材80の起立部84の凹部84aが、パッド部材70の融着固定部74に埋没されることにより、起立部84の凹部84a及びそこに樹脂材が回り込んだ融着固定部74が機械的な係止部として機能して、分離に対しても耐力が増強されている。
従って、以上の構成によれば、具体的には、ヒンジ部材側連結部が、陥設された複数の凹部を有する起立部であり、パッド部材側連結部が、ヒンジ部材における起立部の複数の凹部を埋設しながら、起立部を外方から覆うように起立部に対して融着されてパッド部を起立部に固定する融着固定部であるという構成により、パッド部材とヒンジ部材とは、機械的に係止されながら、確実に融着固定されることができると共に、ヒンジ部材の起立部がパッド部材の融着固定部で保護されることができる。また、かかるヒンジ部材は、複数種の車種や仕様について共通化して適用できることになる。
次に、以上の本変形例のアクセルペダル用パッド構造体を製造するための成型方法につき、更に図13をも参照しつつ、詳細に説明する。
図13は、本変形例のアクセルペダル用パッド構造体におけるパッド部材を、ヒンジ部材と一体的に成型する成型金型を示す拡大部分断面図であり、図9と同様の位置関係で示す。
図13に示すように、本変形例で用いられる射出成型機の射出成型金型90の一片92内には冷却流路92aが形成され、他片94内には冷却流路94aが形成されており、成型金型の一片92及び他片94が、図11で示す射出成型位置に組み付けられた際には、それらの内方には、アクセルペダル用パッド構造体のヒンジ部材80の形状に整合したヒンジ部材用空孔96と、パッド部材70の形状に整合したパッド部材用空孔98と、が協同的に形成される。ここに、パッド部材用空孔98には、成型金型の一片92から突出する凸部92b、他片94から突出する凸部94b、及びパッド部材70の融着固定部74における壁部76の形状に整合する壁部形成部98a、98bが形成されている。
かかる射出成型金型90を用いて、アクセルペダル用パッド構造体60を成型するには、前述の実施形態と同様に、まず、ヒンジ部材80成型用の射出成型金型を用いて、予めヒンジ部材80を成型して、かかるヒンジ部材80に、大気中常温下で24時間程度保持する安定化工程を施しておく。そして、かかる安定化工程を施したヒンジ部材80を、成型金型の一片92及び他片94が協働して形成されるヒンジ部材用空孔96内に設置する。この際、ヒンジ部材80における起立部84の一部は、成型金型の一片92及び他片94内が協働して形成されるパッド部材用空孔98内に配置されるが、成型金型の一片92から突出する凸部92b及び他片94から突出する凸部94bが、ヒンジ部材80の起立部84の外面に当接しており、ヒンジ部材80における起立部84側もパッド部材用空孔98に対して精度よく位置決めされる。
そして、このようにヒンジ部材80を、成型金型の一片92及び他片94内のヒンジ部材用空孔96及びるパッド部材用空孔98内に設置した後にこれらを組み付け、一対の冷却流路92a、94a内に冷却媒体を流通させながら、パッド部材70成型用の硬質樹脂材を、溶融状態で、射出成型金型90のゲートからパッド部材用空孔98内に、前述したアクセルペダル用パッド構造体1の場合と同様に3段階の保圧工程下で射出していき、本変形例のアクセルペダル用パッド構造体60を得る。ここで、パッド部材70の融着固定部74においては、ヒンジ部材80における起立部84を内部に収容しながら、その凹部84aの周囲において機械的に係止される係止部を画成すると共に、ヒンジ部材80における起立部84の平板状の外面及び凹部84aの周囲において融着固定部を画成する。また同時に、成型金型の一片92から突出する凸部92b及び他片94から突出する凸部94bが、ヒンジ部材80の起立部84の外面に当接していたため、パッド部材70の融着固定部74には孔74aが形成されて、ここにおいてヒンジ部材80の起立部84の外面は露出される。
従って、このように本変形例においても、ヒンジ部材を第1の成型金型を用いて成型する1次工程と、成型されたヒンジ部材に対して、第2の成型金型を用いてパッド部材を融着固定する2次工程と、を備えることにより、仕様の種類が少ないヒンジ部材を第1の成型金型を用いて先に成型しておき、そのヒンジ部材に仕様の種類が多いパッド部材を第2の成型金型を用いて確実に融着固定することができと共に、仮にパッド部材の仕様が変更されたとしても、ヒンジ部材成型用の第1の金型は変更することなく、パッド部材成型用の第2の金型を変更するだけで足り、アクセルペダル用パッド構造体の生産性を向上すると共に、その製造コストを削減することができる。更に、2次工程で、成型されたヒンジ
部材に陥設された複数の凹部を埋設してヒンジ部材とパッド部材とを機械的に係止する機械的係止部を画成しながら、ヒンジ部材とパッド部材との間に融着固定部を画成することにより、パッド部材とヒンジ部材とを、機械的に係止しながら確実に融着固定することができる。
また、予め成型されているヒンジ部材における起立部の外面を成型金型に対する位置決めに使うことができ、形状精度及び特性精度が高いパッド部材を、確実にヒンジ部材に融着することができる。
なお、以上の変形例を含む本実施形態においては、ボス及び凹部の一方のみをヒンジ部材に設ける構成につき説明したが、もちろん、ボス及び凹部の双方を同時にヒンジ部材に設ける構成を採用してもよい。
また、本発明においては、部材の種類、配置、個数等は前述の実施形態に限定されるものではなく、その構成要素を同等の作用効果を奏するものに適宜置換する等、発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能であることはもちろんである。