JP4742341B2 - リング一体式表示盤の製造方法 - Google Patents

Description

本発明は、車載用表示盤、携帯電話機等の表示盤、その他のディスプレイ等の表示盤に設けられた目盛にエッジ感やシャープ感を出すようにしたリング一体式表示盤の製造方法に関する。

近年における車載用表示盤、携帯電話機等の表示盤、その他のディスプレイ等の表示盤には、３次元的な立体感のある形状が求められる傾向にある。また、特に、車載用表示盤、即ち、自動車等のメータに用いられる表示盤においては、バックライティングによって表示盤の目盛から光が透過して輝きを発するように、目盛を透光性樹脂によって形成することが行われている。

このような表示盤を形成するために従来から用いられている方法としては、特許文献１に記載されている方法がある。この文献に記載された合成樹脂成形品の製造方法は、インク膜層を印刷した合成樹脂シートを金型内に装填可能な形状に加工した後、金型内表面に隣接するように装填し、金型を閉じてから溶融樹脂を金型内にて射出成形する方法において、溶融樹脂に透明又は半透明のものが使用されると共に、合成樹脂成形品の所定箇所に透光窓を設けたことを特徴とするものである。

ところが、このような従来の合成樹脂シートの搾り加工に射出成形を組み合わせた方法によれば、目盛にエッジ感やシャープ感を表現することが困難であった。特に、立体的な凸形状の目盛からバックライティングによって宝石のような輝きを発するようにするには、目盛の角部にエッジ感やシャープ感を出すことが要求されるが、上記のような従来の合成樹脂シートの搾り加工に射出成形を組み合わせた方法では、そのような加工は困難である。

従って、従来から、表示盤に立体的な凸形状の目盛を設ける場合は、表示盤とその外形のリングと目盛とを別々に形成してから、夫々の部材を接合するという方法を採用していたため、製造に手間がかかり、コスト的にも高くなるという欠点があった。
特開２００２−１７８３６２号公報

本発明は以上のような事情に鑑みてなされたもので、車載用表示盤、携帯電話機等の表示盤、その他のディスプレイ等の表示盤に設けられた立体的な凸形状の目盛にエッジ感やシャープ感を出す方法を簡単且つ低コストで実現するようにしたリング一体式表示盤の製造方法を提供することを目的とする。

上記の目的を達成するために、本発明における請求項１記載のリング一体式表示盤の製造方法は、合成樹脂シートの周囲にリングを有するリング一体式表示盤を射出成形金型により形成するリング一体式表示盤の製造方法において、前記合成樹脂シートの表面形状を付与するための成形面の周囲に前記リングを固定するリング固定用溝が形成されると共に、該リング固定用溝に固定されたリングの裏面の所要箇所にシート固定用のピンが突出形成され、前記合成樹脂シートの周部に形成された該合成樹脂シートの外端へ向けて切り放された形状の位置決め凹部を前記ピンに係止した状態にして前記合成樹脂シートを前記成形面に固定する一方、前記成形面には前記合成樹脂シートの表面側に突出形成する目盛の形状に応じた目盛用凹部が形成され、該目盛用凹部の形成位置に対応した前記合成樹脂シートの所定位置に開口部が形成され、前記金型を閉じて前記合成樹脂シートの裏側に射出された溶融樹脂が前記合成樹脂シートの開口部を経て前記目盛用凹部に充填されると共に、前記合成樹脂シートの周部に至った前記溶融樹脂が前記ピンを溶融して楔効果を発揮するようにしたことを特徴とする。

また、本発明における請求項２記載のリング一体式表示盤の製造方法は、請求項１において、前記溶融樹脂は透光性樹脂よりなることを特徴とする。

本発明によるリング一体式表示盤の製造方法によれば、表示盤に設けられた目盛の形状は合成樹脂シートを搾り加工することによって得られるのではなく、射出成形において合成樹脂シートの開口部から充填された溶融樹脂が目盛用凹部の形状に従って形成されるため、目盛の外形は目盛用凹部の形状に忠実に形成され、この目盛の立体形状に優れたエッジ感やシャープ感を表現することが可能となる。

また、本発明方法の射出成形時において、合成樹脂シートの周部に形成された外側開口形状の位置決め凹部を、成形面の周囲のリング固定用溝に固定されたリングのピンに係止した状態にして、合成樹脂シートの裏面に溶融樹脂を射出成形するため、合成樹脂シートの裏側に射出された溶融樹脂が合成樹脂シートの開口部を経て目盛用凹部に充填されると共に、合成樹脂シートの周部に至った溶融樹脂がピンを溶融して楔効果を発揮することができるため、リングと合成樹脂シートとの接着強度が増し、上記のピンによって位置出し精度を高めることができ、合成樹脂シートに皺等がよらずに綺麗な状態で形成することが可能となる。

しかも、リングと合成樹脂シートとは別体であるが、上記の射出成形時においては、合成樹脂シートがリングのピンに係止された状態で一発成形によって射出形成することができるため、表示盤等の目盛にエッジ感やシャープ感を出す方法を低コストで得ることが可能となる。

以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。

本発明によるリング一体式表示盤の製造方法によって、図１に示す車載用表示盤１が形成される。ただし、本発明による方法は、携帯電話機等の表示盤やその他のディスプレイ等の表示盤にも適用することが可能である。

この表示盤１は、合成樹脂シート２の周囲にリング３を有するリング一体式表示盤１であり、合成樹脂シート２の周囲に設けられたリング３の内側に沿って周状に透明性樹脂よりなる突出形状の目盛４、４…が形成されると共に、表示盤１の中心にメータ針用の回転軸を挿通するための小径穴２ａが形成されてなるものである。

また、図２に示すように、本実施例に用いられる金型５における固定金型６のパーティング面７には合成樹脂シート２（図４参照）に賦与すべき形状の成形面９が形成され、成形面９の中央にはスプルーブッシュ１０が設けられている。このスプルーブッシュ１０の端部はパーティング面７からキャビティ８側に突出した突出部１１を有する。

また、固定金型６には成形面９の周囲にリング３（図３参照）を固定するリング固定用溝１２が形成されている。このリング３は、図９(ａ)又は(ｂ)に示すように、表示盤１の表面をなす合成樹脂シート２の周囲に結合されるものであり、断面が例えば台形の立体形状を有する。このリング３の形状を嵌合すべき溝形状がリング固定用溝１２として形成されている。

図９(ａ)又は(ｂ)に示すように、リング固定用溝１２に固定されたリング３の裏面の所要箇所にはシート固定用のピン３ａが突出形成されている。このピン３ａは、予め合成樹脂シート２の周部に形成された外側開口形状の位置決め凹部１３を係止するためのものであり、図３に示すように、金型５のパーティング面７から可動金型１８側に突出する。この位置決め凹部１３に形成された外側開口形状は、合成樹脂シート２の外端へ向けて切り放された形状を有する。従って、合成樹脂シート２に形成された位置決め凹部１３をリング３のピン３ａに係止した状態にして、合成樹脂シート２を成形面９に固定すると、合成樹脂シート２が半径方向に移動した場合でも、この位置決め凹部１３の形状によって合成樹脂シート２の移動を吸収することができる。

さらに、固定金型６の成形面９には合成樹脂シート２の表面側に突出形成する目盛４の形状に応じた目盛用凹部１４が形成され、該目盛用凹部１４の形成位置に対応した合成樹脂シート２の所定位置には開口部１５が形成されている。

一方、図２に示すように、可動金型１８には上記のスプルーブッシュ１０の下端部に連通するサブマリンゲート１６が設けられている。このサブマリンゲート１６は、キャビティ８に対して垂直状に設けられたボス１７に連結され、溶融樹脂は、このボス１７を経てキャビティ８内に至る流通経路となる。また、可動金型１８には、上記のスプルーブッシュ１０の下端部から多少離間した位置にＺピン１９が設けられている。

上記の金型５の構成により本実施例のリング一体式表示盤の製造方法を実施するには、図２に示すように金型５を開いた状態にし、この状態で、図３に示すように、固定金型６のリング固定用溝１２に予め形成された合成樹脂製のリング３を嵌合することによって、リング３の裏側に設けられた所定数のピン３ａがパーティング面７から可動金型１８側に突出した状態となる。

次いで、図４に示すように、上記の各ピン３ａに合成樹脂シート２に予め形成された位置決め凹部１３を係止することによって固定金型６の成形面９に合成樹脂シート２を固定する。このとき、パーティング面７から突出するスプルーブッシュ１０の突出部１１の外周に、合成樹脂シート２の中央に予め形成してある小径穴５を嵌合し、この状態で合成樹脂シート２を固定金型６と可動金型１８との間に装着するとよい。

この状態で、図５に示すように、可動金型１８を移動して固定金型６に型閉じすることによって、固定金型６と可動金型１８との間に所定形状のキャビティ８が形成される。

次いで、図６に示すように、不図示の射出成形機のシリンダから透明のポリカーボネート等の溶融樹脂を供給すると、この溶融樹脂は、不図示のノズルからスプルーブッシュ１０を経てサブマリンゲート１６を流通し、さらにボス１７を経てキャビティ８内に注入される。

このように、溶融樹脂をキャビティ８内に注入すると、溶融樹脂の有する温度と注入圧力によって合成樹脂シート２が変形し、固定金型６の成形面９に応じた賦形がなされる。さらに、合成樹脂シート２の裏側に射出された溶融樹脂が合成樹脂シート２の開口部１５を経て目盛用凹部１４に充填されると共に、合成樹脂シート２の周部に至った溶融樹脂がピン３ａを溶融して楔効果を発揮する。

その後、キャビティ８内の溶融樹脂が冷却固化されることによって合成樹脂シート２の裏側の成形樹脂２０が形成される。図７さらに図８に示すように、パーティング面を開くと、不図示の突出しピンによって合成樹脂成形品（表示盤１）が可動金型１８から突き出され（図８の状態）、Ｚピン１９によって可動金型１８からスプルー部２１とサブマリンゲート部２２とが一体的に突き出される。

そして、図８に示すように、金型５を開いた状態で、合成樹脂成形品（表示盤１）を取り出した後、成形品に付設されているスプルー部２１とサブマリンゲート部２２とを切り放す。なお、合成樹脂成形品（表示盤１）に残されたボス部２３は不要であるため、後加工で切断してもよい。

本発明は、車載用表示盤、携帯電話機等の表示盤、その他のディスプレイ等の表示盤に設けられた立体的な凸形状の目盛に射出成形法によってエッジ感やシャープ感を出す方法を簡単且つ低コストに実現することができるリング一体式表示盤の製造方法として利用することが可能である。

本発明によるリング一体式表示盤の製造方法によって成形した車載用表示盤の正面図である。 本発明によるリング一体式表示盤の製造方法に使用する金型の断面図（図１Ａ−Ａ線に相当する位置の断面図）である。 本発明によるリング一体式表示盤の製造方法において固定金型のリング固定用溝にリングを固定した状態を示す断面図である。 本発明によるリング一体式表示盤の製造方法において固定金型のリング固定用溝にリングを固定した状態を示す断面図である。 本発明によるリング一体式表示盤の製造方法において固定金型の成形面に合成樹脂シートを固定した状態を示す断面図である。 本発明によるリング一体式表示盤の製造方法において金型を閉じた状態を示す断面図である。 本発明によるリング一体式表示盤の製造方法において射出成形後の金型を開いた状態を示す断面図である。 本発明によるリング一体式表示盤の製造方法において開いた金型から成形品を取り出した状態を示す断面図である。 (ａ)は本発明によるリング一体式表示盤の製造方法において使用する合成樹脂シートとリングの一部分解斜視図であり、(ｂ)はそれらの合成樹脂シートとリングとを結合した状態を示す断面図（(ａ)のＢ−Ｂ線に相当する断面図）である。

符号の説明

１ 表示盤
２ 合成樹脂シート
２ａ 小径穴
３ リング
３ａ ピン
４ 目盛
５ 金型
６ 固定金型
７ パーティング面
８ キャビティ
９ 成形面
１０ スプルーブッシュ
１１ 突出部
１２ リング固定用溝
１３ 位置決め凹部
１４ 目盛用凹部
１５ 開口部
１６ サブマリンゲート
１７ ボス
１８ 可動金型
１９ Ｚピン
２０ 成形樹脂
２１ スプルー部
２２ サブマリンゲート部
２３ ボス部

Claims (2)

1. 合成樹脂シートの周囲にリングを有するリング一体式表示盤を射出成形金型により形成するリング一体式表示盤の製造方法において、前記合成樹脂シートの表面形状を付与するための成形面の周囲に前記リングを固定するリング固定用溝が形成されると共に、該リング固定用溝に固定されたリングの裏面の所要箇所にシート固定用のピンが突出形成され、前記合成樹脂シートの周部に形成された該合成樹脂シートの外端へ向けて切り放された形状の位置決め凹部を前記ピンに係止した状態にして前記合成樹脂シートを前記成形面に固定する一方、前記成形面には前記合成樹脂シートの表面側に突出形成する目盛の形状に応じた目盛用凹部が形成され、該目盛用凹部の形成位置に対応した前記合成樹脂シートの所定位置に開口部が形成され、前記金型を閉じて前記合成樹脂シートの裏側に射出された溶融樹脂が前記合成樹脂シートの開口部を経て前記目盛用凹部に充填されると共に、前記合成樹脂シートの周部に至った前記溶融樹脂が前記ピンを溶融して楔効果を発揮するようにしたことを特徴とするリング一体式表示盤の製造方法。
2. 前記溶融樹脂は透光性樹脂よりなることを特徴とする請求項１記載のリング一体式表示盤の製造方法。