JP4886151B2 - セラミックシンチレータとそれを用いた放射線検出器および放射線検査装置 - Google Patents

セラミックシンチレータとそれを用いた放射線検出器および放射線検査装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、放射線を可視光線に変換するセラミックシンチレータとそれを用いた放射線検出器および放射線検査装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
医療診断や工業用非破壊検査などの分野においては、X線断層写真撮影装置(X線CT装置)などの放射線検査装置が用いられている。X線CT装置は、扇状のファンビームX線を照射するX線管(X線源)と、多数のX線検出素子を並列配置したX線検出器とを、被検体の断層面が中央にくるように対向配置した構造を有している。X線CT装置においては、被検体に対してX線管からファンビームX線を照射し、被検体を透過したX線吸収データをX線検出器で収集した後、これらX線吸収データをコンピュータで解析(断層面の個々の位置におけるX線吸収率の算出、およびX線吸収率に応じた画像の再構成)することによって、被検体の断層像を再生している。
【0003】
X線CT装置のX線検出器には、X線の刺激により可視光線を放射する固体シンチレータを用いた検出器が多用されるようになってきている。固体シンチレータを用いたX線検出器では、X線検出素子を小型化してチャンネル数を増やすことが容易であることから、X線CT装置の解像度をより一層高めることができる。固体シンチレータとしては種々の物質が知られているが、特にGd22S:Prのような希土類酸硫化物の焼結体からなるセラミックシンチレータ(特許文献1〜4参照)は、X線吸収係数が大きく発光効率に優れ、また残光(アフターグロー)が短いことから、X線検出器用シンチレータとして好適である。
【0004】
ところで、セラミックシンチレータを構成する希土類酸硫化物蛍光体の焼結体(蛍光体セラミックス)については、光出力の向上、また焼結体の高密度化や機械的強度の向上などに関して種々の提案がなされている。例えば、特許文献1や特許文献4には、PO4を100ppm以下の範囲で含有するGd22S:Prなどの希土類酸硫化物蛍光体、およびそれを用いたセラミックシンチレータが記載されている。ここでは、セラミックシンチレータの光出力を高める上で、PO4の含有量を例えば100ppm以下としている。
【0005】
また、特許文献2には希土類酸硫化物粉末にLiF、Li2GeF6、NaBF4のようなフッ化物を焼結助剤として添加することで、蛍光体セラミックスを高密度化させることが記載されている。ここでは、蛍光体セラミックスを高密度化することによって、シンチレータの光出力の向上などを図っている。さらに、特許文献3には光出力(発光強度)を向上させるために、フッ素(F)や塩素(Cl)などのハロゲン元素を2〜1000ppmの範囲で含有させた希土類酸硫化物蛍光体(Gd22S:Pr)が記載されている。
【0006】
特許文献4には、希土類酸硫化物蛍光体の焼結体(蛍光体セラミックス)を構成する結晶粒構造を制御(不定多角形の粗大結晶粒と細長い微細結晶粒とが混在した焼結組織)することによって、セラミックシンチレータの優れた光出力を維持した上で、検出器の小型化などに対応し得る強度を焼結体(蛍光体セラミックス)に付与している。
【0007】
上述したように、Gd22S:Prなどの希土類酸硫化物蛍光体を用いたセラミックシンチレータについては従来から種々の提案がなされており、光出力などに関しては改善効果が得られている。しかし、最近のX線CT装置では高解像度化(多チャンネル化)などに伴って、X線吸収データをコンピュータで解析して断層像を再生する際に現れるアーチファクトが問題となっている。アーチファクトとは被検体の断面、特に身体頭頂部の断面などを画像処理する際に生じるリング状の虚像であり、このようなアーチファクトが出現すると医療診断や非破壊検査の精度を低下させてしまう。
【0008】
アーチファクトの原因としては、セラミックシンチレータを構成するシンチレータ単位素子(例えばシンチレータチップ)内の特性の不均一化や、複数のシンチレータ単位素子間における特性の不均一化などが考えられている。例えば、特許文献5にはアーチファクトの出現を抑制するために、複数のGd22S:Pr系シンチレータ単位素子を、隣接する単位素子間の線質応答特性Qの差が3.0以内となるように配列することが記載されている。ここでは、シンチレータ単位素子の線質応答特性Qを、Q=7000×logI120/I100(I120はX線管電圧が120kVのときのシンチレータ素子(厚さは1.14mmに統一)の発光出力、I100はX線管電圧が100kVのときの発光出力である)と定義すると共に、このような線質応答特性Qのシンチレータ単位素子間の最大差が3.0以上であることを前提としている。
【0009】
線質応答特性とは、X線管電圧(線質)が異なる2種類のX線(特許文献5では管電圧が120kVのX線と管電圧が100kVのX線)をシンチレータ単位素子に照射したときに、それぞれのX線による発光出力(感度)の比で表されるものである。X線CT装置において、X線源から出射されたX線が人体などの被検体を通過すると、人体の各組織毎にX線の吸収係数が異なるため、各シンチレータ単位素子には線質の異なるX線が入射する。よって、セラミックシンチレータを構成するシンチレータ単位素子には線質応答特性の均一性を高めることが求められ、特許文献5ではシンチレータ単位素子の配列を調整することで特性差の低減を図っている。
【0010】
しかしながら、特許文献5に記載されているセラミックシンチレータ、すなわち隣接するシンチレータ単位素子間の線質応答特性Qの差が3.0以内となるように配列したセラミックシンチレータにおいては、シンチレータ全体として見た場合の線質応答特性Qに最大で3.0以上の差が存在していることから、チャンネル数の増加などに伴って、アーチファクトの出現を必ずしも良好に抑制することができないことが懸念される。
【0011】
また、各シンチレータ単位素子の線質応答特性Qに応じて、多数のシンチレータ単位素子を配列しなければならないため、セラミックシンチレータの作製に要する製造工数や製造コストの増加が避けられない。特に、最近では1つのシンチレータチップをさらに複数のセグメントにスライスし、これら多数のシンチレータセグメントを集積したシンチレータブロックでX線検出器を構成したマルチ断層像タイプのX線CT装置などの実用化も進められている。このようなX線CT装置では、多数のシンチレータセグメントがそれぞれ縦横方向に集積されるため、隣接するシンチレータ単位素子(セグメント)間の線質応答特性Qの差が3.0以内となるように配列するには多大な工数を要することになる。
【0012】
【特許文献1】
特開平7-188655号公報
【特許文献2】
特公平5-16756号公報
【特許文献3】
特許第2989184号公報
【特許文献4】
特開2001-89762号公報
【特許文献5】
特許第3303994号公報
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の希土類酸硫化物蛍光体を用いたセラミックシンチレータにおいては、アーチファクトの出現を抑制するために、隣接するシンチレータ単位素子間の線質応答特性Qの差が3.0以内となるように配列することなどが行われているが、このような構成では必ずしも十分なアーチファクトの抑制効果が得られなかったり、またシンチレータ(シンチレータブロック)の製造工数や製造コストの増加が避けられないというような問題を招いている。また、従来から希土類酸硫化物蛍光体の特性を改善するために種々の提案がなされてきたが、アーチファクトの抑制に対して必ずしも効果的な対策は見出されていない。
【0014】
また、人体などの生物をX線CT装置などで検査する場合、X線の照射量が過剰になると人体に悪影響を与えることがある。人体への悪影響を低減するためには、X線の照射時間を短くするか、あるいはX線強度(管電圧)を低くして被爆量を少なくすることが必要である。しかしながら、人体の部位によってはX線強度(管電圧)が小さいと良好な画質(診察に必要な画質)が得られない場合もあり、このような場合は人体に悪影響がでない範囲で、ある程度X線強度を大きくしなければならない。一方、生物以外の検査、例えば空港の荷物検査装置においてもX線検査装置が用いられている。近年の社会情勢により各種の検査はより厳しいものになってきており、厳しい検査を行うためにはX線強度(管電圧)を大きくすることが必要になる。
【0015】
このように、各種放射線検査装置においては、使用状況などに応じて管電圧を上下させなければならない。特に、近年は医療技術の進歩や社会情勢の変化などに応じて、管電圧の上下幅がより広くなる傾向にある。このような点に対して、上述した従来のシンチレータでは必ずしも要求を満たすものが得られていないのが現状である。そこで、より広い範囲で管電圧を変化させた場合においても、線質応答特性に優れたシンチレータが求められている。
【0016】
本発明はこのような課題に対処するためになされたもので、良好な光出力(発光効率)などを維持しつつ、アーチファクトの出現を再現性よく抑制することを可能にしたセラミックシンチレータ、さらにそのようなセラミックシンチレータを使用することによって、解像度や画像精度を高め、これにより医療診断能や非破壊検査精度の向上を図った放射線検出器および放射線検査装置を提供することを目的としている。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明者等は上記した目的を達成するために、複数のシンチレータ単位素子(希土類酸硫化物蛍光体の焼結体)を具備するセラミックシンチレータを用いた際のアーチファクト(リング状の虚像)の発生率とシンチレータ単位素子の線質応答特性との関係について調査した結果、アーチファクトの抑制に対しては複数のシンチレータ単位素子間における線質応答特性のばらつきの低減が有効であること、さらにはアーチファクトの出現を実用的に抑制する上で、線質応答特性のばらつき(線質応答特性分布)の許容し得る範囲を見出した。
【0018】
本発明はこのような知見に基づいて成されたものである。すなわち、本発明のセラミックシンチレータは、請求項1に記載したように、0.1〜100ppmの範囲のリンを含有し、かつフッ素および塩素の合計含有量が100ppm以下で
一般式:(RE 1−a Pr
(式中、REはGd、Lu、LaおよびYから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは5×10 −5 ≦a≦1×10 −2 を満足する数である)
で表される組成を有する希土類酸硫化物蛍光体の焼結体で、相対密度が99.5%以上、厚みが1.2mm以上の複数のシンチレータ単位素子を具備するセラミックシンチレータであって、
前記複数のシンチレータ単位素子は、シンチレータ単位素子の線質応答特性の最大値をA、最小値をBとしたとき、線質応答特性分布[{(A−B)/A}×100(%)]が0.5%以下となるようにシンチレータ単位素子を集積して構成したことを特徴としている。
【0019】
なお、本発明におけるシンチレータ単位素子の線質応答特性は、X線照射方向に対する厚さが2mmの試料に対して、X線管電圧が120kVのX線を照射したときの発光出力をI120、X線管電圧が80kVのX線を照射したときの発光出力をI80としたとき、これら発光出力の比(I120/I80)で示される値である。
【0021】
本発明のセラミックシンチレータにおいては、複数のシンチレータ単位素子の線質応答特性分布、すなわち線質応答特性のばらつき自体を抑制している。具体的には、上記した(1)式で表される線質応答特性分布を0.5%以内としている。このように、複数のシンチレータ単位素子間における線質応答特性の均一性を高めることによって、アーチファクトの出現を再現性よく抑制することができる。言い換えると、アーチファクトに対する線質応答特性分布の許容範囲は0.5%以内であり、このような条件を満足させることでアーチファクトの出現を再現性よく抑制することが可能となる。
【0022】
また、複数のシンチレータ単位素子間における線質応答特性のばらつきを低減する上で、希土類酸硫化物蛍光体の焼結体に0.1〜100ppmの範囲のリンを含有させると共に、フッ素および塩素の合計含有量を100ppm以下とすることが有効である。リンは希土類酸硫化物焼結体の高密度化に寄与し、これによって光出力を高めることができると共に、透光性などの向上に伴って線質応答特性のばらつきを低減することができる。また、フッ素や塩素などの不純物としてのハロゲン元素は、直接的に希土類酸硫化物焼結体の発光特性、すなわち線質応答特性の均一性低下要因となるため、これらフッ素と塩素の合計含有量は100ppm以下とすることによって、線質応答特性のばらつきを低減することが可能となる。
【0023】
本発明の放射線検出器は、請求項に記載したように、上記した本発明のセラミックシンチレータを具備し、入射した放射線に応じて前記セラミックシンチレータを発光させる蛍光発生手段と、前記蛍光発生手段からの光を受けて、光出力を電気的出力に変換する光電変換手段とを具備することを特徴としている。また、本発明の放射線検査装置は、請求項に記載したように、被検体に向けて放射線を照射する放射線源と、前記被検体を透過した放射線を検出する、上記した本発明の放射線検出器とを具備することを特徴としている。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施するための形態について説明する。
図1は本発明の一実施形態によるセラミックシンチレータの概略構成を示す斜視図である。同図に示すセラミックシンチレータ1は、希土類酸硫化物蛍光体の焼結体からなる複数のシンチレータチップ2、2…を集積したシンチレータブロック3を有している。図1に示すセラミックシンチレータ1においては、各シンチレータチップ2、2…がシンチレータ単位素子を構成している。なお、図1において、符号4はシリコンフォトダイオードなどの光電変換素子であり、セラミックシンチレータ1と光電変換素子4とで放射線検出器5が構成されている。放射線検出器5については後に詳述する。
【0025】
本発明のセラミックシンチレータ1は、図1に示したような複数のシンチレータチップ2、2…を集積したシンチレータブロック3を有するものに限られるものではない。例えば図2に示すように、矩形棒状のシンチレータチップ2、2…を複数のセグメント6、6…にスライスし、これらシンチレータセグメント6、6…を多数縦横方向に集積したシンチレータブロック7でセラミックシンチレータ1を構成することも可能である。この場合には、各シンチレータセグメント6、6…がシンチレータ単位素子となる。なお、本発明のシンチレータ単位素子としては、上記したシンチレータチップ2やシンチレータセグメント6に限られるものではなく、シンチレータチップ2やシンチレータセグメント6として組み込む前の所定形状に切り出した希土類酸硫化物焼結体をも含むものである。
【0026】
上述したシンチレータチップ2やシンチレータセグメント6などのシンチレータ単位素子は、希土類酸硫化物蛍光体の焼結体からなるものである。このようなシンチレータ単位素子を構成する希土類酸硫化物蛍光体としては、例えば付活剤としてプラセオジム(Pr)を含有する酸硫化ガドリニウム蛍光体や酸硫化ルテチウム蛍光体などが挙げられる。希土類酸硫化物蛍光体の母体を構成する希土類元素は、ガドリニウム(Gd)やルテチウム(Lu)に限られるものではなく、ランタン(La)やイットリウム(Y)などを使用してもよく、またこれらLaやYなどはGdやLuの一部を置換する元素として用いてもよい。
【0027】
上述したように、本発明のセラミックシンチレータにおいては、付活剤としてプラセオジムを含有する希土類酸硫化物蛍光体を使用することが好ましく、このような希土類酸硫化物蛍光体の具体例としては、
一般式:(RE1-aPra22S …(1)
(式中、REはGd、Lu、LaおよびYから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは5×10-5≦a≦1×10-2を満足する数である)
で実質的に表される組成を有する蛍光体が挙げられる。
【0028】
Pr付活希土類酸硫化物蛍光体は、X線吸収係数が大きく、優れた光出力が得られることから、放射線検出器の蛍光発生手段として有効である。付活剤としてのPrの含有量は0.005〜1モル%の範囲(上記した(1)式のaの値として5×10-5〜1×10-2の範囲)とすることが好ましい。Pr含有量が0.005モル%未満では付活剤としての効果を十分に得ることができず、セラミックシンチレータの発光効率が低下する。一方、Pr含有量が1モル%を超えても発光効率が低下する。Pr含有量は0.01〜0.3モル%の範囲とすることがより好ましい。なお、上記した希土類酸硫化物蛍光体には、主付活剤としてのPrに加えて、残光の抑制などに効果を示すCeを共付活剤として微量含有させてもよい。
【0029】
上述したような希土類酸硫化物蛍光体の焼結体からなるシンチレータ単位素子は、リン(P)を0.1〜100ppm(質量比)の範囲で含有することが好ましい。PO4のような燐酸根は希土類酸硫化物焼結体の密度向上に寄与することから、シンチレータ単位素子の光出力を高めることができる。さらに、希土類酸硫化物焼結体の高密度化に伴って体色の低下(薄色化など)や透光性の向上などが図れることから、複数のシンチレータ単位素子間における線質応答特性のばらつきを低減することができる。
【0030】
このようなリン(P)による効果を得る上で、シンチレータ単位素子を構成する希土類酸硫化物焼結体は0.1ppm以上のPを含有することが好ましい。希土類酸硫化物焼結体のP含有量が0.1ppm未満であると、焼結体密度を十分に高めることができず、光出力の低下や線質応答特性のばらつきの増大などが生じる。また、焼結体の強度も低下して矩形棒状の長尺なシンチレータチップなどを安定して作製することができなくなる。一方、希土類酸硫化物焼結体のP含有量が多すぎると、逆に焼結体の体色が黒色化(もしくは灰色化)するなどして、シンチレータ単位素子の光出力が低下してしまう。よって、希土類酸硫化物焼結体のP含有量は100ppm以下であることが好ましい。希土類酸硫化物焼結体のP含有量は10〜60ppmの範囲であることがより好ましい。
【0031】
ところで、上述した希土類酸硫化物焼結体中のPは、例えば希土類酸硫化物蛍光体粉末を合成する際に、希土類元素の混合酸化物粉末に硫黄(S)粉末などの硫化剤と共に添加するリン酸系フラックス、すなわちA3PO4(AはLi、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種の元素)の残留成分を利用することができる。希土類酸硫化物蛍光体粉末のP含有量は、希土類酸硫化物蛍光体の合成処理(焼成処理)を行った後に、塩酸(HCl)などの酸液を用いて酸洗浄する際の条件(例えば洗浄回数)を調整することによって、P含有量を0.1〜100ppmの範囲に制御することができる。このようなP含有量が0.1〜100ppmの範囲の希土類酸硫化物蛍光体粉末を使用することによって、希土類酸硫化物焼結体のP含有量を0.1〜100ppmの範囲に制御することができる。
【0032】
希土類酸硫化物焼結体中のP含有量を0.1〜100ppmの範囲に制御する上で、合成処理後の希土類酸硫化物蛍光体粉末に対して塩酸(HCl)などによる酸洗浄を実施することが有効である。ただし、酸洗浄に用いた塩酸を十分に洗い流さないと、希土類酸硫化物蛍光体粉末中に塩素(Cl)が残留してしまう。塩素はフッ素(F)と共に希土類酸硫化物焼結体の発光特性、すなわち線質応答特性の均一性を直接的に低下させる原因となる。このため、希土類酸硫化物蛍光体粉末中に残留する塩素量がフッ素との合計量として100ppm以下となるように、酸洗浄後に十分な水洗を施すことが好ましい。このような希土類酸硫化物蛍光体粉末を用いることによって、希土類酸硫化物焼結体のフッ素と塩素の合計含有量を100ppm以下とすることができる。
【0033】
上述したように、シンチレータ単位素子を構成する希土類酸硫化物焼結体は、フッ素と塩素の合計含有量が100ppm(質量比)以下であることが好ましい。希土類酸硫化物焼結体のフッ素と塩素の合計含有量が100ppmを超えると、複数のシンチレータ単位素子間における線質応答特性のばらつきが増大し、前述した(1)式で表される線質応答特性分布が0.5%を超えるおそれが大きくなる。このため、本発明のシンチレータを用いて放射線検出器や放射線検査装置を構成した際に、アーチファクトの出現を再現性よく抑制することができなくなる。希土類酸硫化物焼結体中のフッ素と塩素の合計含有量は50ppm以下とすることがより好ましい。なお、フッ素および塩素の合計含有量は零であってもよいが、零になるまで洗浄を続けることは製造工程を複雑にし、製造コストの増大に繋がることから、希土類酸硫化物焼結体中の合計含有量として0.1ppm以上の範囲で含むことが製造性の観点から好ましい。
【0034】
フッ素と塩素はそれぞれシンチレータ単位素子間の線質応答特性のばらつきを増大させる要因となるため、希土類酸硫化物焼結体中のフッ素量と塩素量はこれらの元素の合計含有量として100ppm以下とすることが好ましい。ただし、フッ素と塩素は線質応答特性に及ぼす影響力が異なるため、希土類酸硫化物焼結体のフッ素含有量は0.1ppm以上10ppm未満の範囲とすることがより好ましく、また塩素含有量は0.1ppm以上10ppm未満の範囲とすることがより好ましい。なお、フッ素含有量は焼結助剤として添加するフッ素化合物、例えばLiF、Li2GeF6、NaBF4などの量を調整することによって、希土類酸硫化物焼結体中のフッ素量を塩素の合計含有量として100ppm以下に制御することができる。なお、本発明はフッ素と塩素の合計含有量で規定しているものであり、どちらか一方が零である場合を除外するものではない。
【0035】
上記したP含有量が0.1〜100ppmの範囲であると共に、フッ素と塩素の合計含有量が100ppm以下の希土類酸硫化物焼結体は、同様なP含有量およびフッ素と塩素の合計含有量を満足する希土類酸硫化物蛍光体粉末を用い、さらにフッ素化合物からなる焼結助剤量を調整することで得ることができる。なお、希土類酸硫化物焼結体中の他の不純物元素、例えばナトリウム(Na)などのアルカリ金属や臭素(Br)などの不純物元素は、その合計含有量が1000ppm以下(さらに好ましくは100ppm以下)の範囲であれば含んでいてもよい。また、希土類酸硫化物焼結体の具体的な焼結体密度は、真密度に対する相対密度で99.5%以上であることが好ましい。
【0036】
上述したようなシンチレータ単位素子を構成する希土類酸硫化物焼結体は、例えば以下のようにして製造される。まず、Pr付活酸硫化ガドリニウム蛍光体などの希土類酸硫化物蛍光体の原料粉末を作製する。すなわち、GdやPrなどの各希土類元素を所定量秤量し、これらを十分に混合する。この際、各出発原料には例えば酸化ガドリニウムや酸化プラセオジムなどの酸化物が用いられる。これら各出発原料の混合物としては、シュウ酸共沈塩などを焼成(例えば900〜1000℃)することで得られる均一な混合酸化物を用いることが好ましい。
【0037】
次いで、上記したような希土類元素の混合酸化物粉末に、硫黄(S)粉末などの硫化剤と、A3PO4やA2CO3(AはLi、Na、K、RbおよびCsから選ばれる少なくとも1種の元素)などのフラックスとを配合して十分に混合する。このような混合粉末を1000〜1300℃の温度で5〜10時間焼成した後、塩酸などの酸液および純水で洗浄することによって、希土類酸硫化物蛍光体粉末を得る。この際、焼成後の酸洗浄および純水洗浄の条件を制御することによって、P含有量が0.1〜100ppmの範囲であると共に、フッ素と塩素の合計含有量が100ppm以下の希土類酸硫化物蛍光体粉末を作製する。
【0038】
このようにして得た希土類酸硫化物蛍光体粉末に、必要に応じてLiF、Li2GeF6、NaBF4などのフッ素化合物を焼結助剤として添加する。フッ素化合物の添加量は希土類酸硫化物焼結体中のフッ素量が塩素との合計含有量として100ppm以下となるように調整する。希土類酸硫化物蛍光体粉末の平均粒子径は特に限定されるものではないが、平均粒子径があまり小さいと大型形状の焼結体の作製が困難となり、一方あまり大きいと焼結時により高温にする必要が生じることから、例えば1〜20μmの範囲の平均粒子径を有する希土類酸硫化物蛍光体粉末を使用することが好ましい。
【0039】
次に、上記した希土類酸硫化物蛍光体粉末を焼結して、セラミックシンチレータの構成材料となる希土類酸硫化物蛍光体の焼結体(希土類酸硫化物焼結体)を作製する。希土類酸硫化物蛍光体粉末を焼結するにあたっては、ホットプレスやHIPなどの公知の焼結法を適用することができるが、特に高密度の希土類酸硫化物焼結体を容易に得ることが可能であることから、HIP法を適用して焼結工程を実施することが好ましい。
【0040】
HIP法を適用した焼結工程は、まず希土類酸硫化物蛍光体粉末をラバープレスで適当な形に成形した後、金属容器などに充填封入してHIP処理を施すことにより実施する。この際のHIP条件は、HIP温度を1400〜1600℃とし、HIP圧力は98MPa以上、HIP時間は2〜7時間の範囲とすることが好ましい。このような条件下でHIP処理を行うことによって、例えば相対密度が99.5%以上の希土類酸硫化物焼結体を再現性よく得ることができる。焼結体の相対密度が99.5%未満であると、セラミックシンチレータに求められる光透過性や光出力などの特性を満足させることができない。また、Taなどの高融点金属製カプセルを用いたHIP処理は、リン、塩素、フッ素の含有量のより一層の低減に効果を示すものである。
【0041】
次に、得られた高密度の希土類酸硫化物焼結体をブレードソーやワイヤーソーなどにより所望の形状および寸法に切り出すことによって、シンチレータチップやシンチレータセグメントなどのシンチレータ単位素子を作製する。なお、希土類酸硫化物焼結体から所望形状に切り出した後に、光出力の回復や着色の除去などを目的として熱処理を施してもよい。この熱処理工程は、例えば窒素ガスやアルゴンガスなどの不活性ガス雰囲気中、もしくは酸素や硫黄などの反応性ガスを含む雰囲気中にて900〜1600℃の範囲の温度で実施することが好ましい。このような熱処理工程はリン、塩素、フッ素の低減にも効果を示す。
【0042】
本発明のセラミックシンチレータは、上述したような希土類酸硫化物蛍光体の焼結体(希土類酸硫化物焼結体)からなるシンチレータ単位素子を複数具備するものである。具体的な形状および構成としては、例えば図1に示したように矩形棒状の複数のシンチレータチップ2、2…を集積したシンチレータブロック3を具備するセラミックシンチレータ1、また図2に示したように多数のシンチレータセグメント6、6…を縦横方向に集積したシンチレータブロック7を有するセラミックシンチレータ1などが挙げられる。
【0043】
上述したシンチレータチップ2やシンチレータセグメント6などのシンチレータ単位素子を有するセラミックシンチレータ1においては、複数のシンチレータ単位素子間の線質応答特性分布が0.5%以内とされている。線質応答特性分布は、複数のシンチレータ単位素子の線質応答特性を測定した際に、各素子の線質応答特性値のうちの最大値をA、最小値をBとしたとき、
式:[{(A−B)/A}×100(%)] …(1)
により求められる値を示すものである。
【0044】
このように、複数のシンチレータ単位素子間の線質応答特性の均一性を高める(線質応答特性分布を0.5%以内)とすることによって、セラミックシンチレータ1を用いて放射線検出器や放射線検査装置を構成した際に、アーチファクトの出現を再現性よく抑制することができる。すなわち、アーチファクトと呼ばれるリング状の虚像の出現を実用的に再現性よく抑制する上で、複数のシンチレータ単位素子間における線質応答特性分布の許容範囲は0.5%以内となる。
【0045】
言い換えると、複数のシンチレータ単位素子間の線質応答特性分布が0.5%を超えると、アーチファクトの出現率が顕著に増加する。従って、この許容範囲内に線質応答特性のばらつきを抑えることによって、アーチファクトの出現を再現性よく抑制することが可能となる。複数のシンチレータ単位素子間の線質応答特性分布は0.3%以内とすることがより好ましく、さらに好ましくは0.2%以内である。このような条件を満足するセラミックシンチレータ1は、上述したようにP含有量が0.1〜100ppmの範囲であると共に、フッ素と塩素の合計含有量が100ppm以下の希土類酸硫化物焼結体で各シンチレータ単位素子を構成することにより得ることができる。
【0046】
ここで、本発明で規定するシンチレータ単位素子の線質応答特性は、X線照射方向に対する厚さが2mmの試料(希土類酸硫化物焼結体)に対して、X線管電圧が120kVのX線を照射したときの発光出力をI120、X線管電圧が80kVのX線を照射したときの発光出力をI80としたとき、これら発光出力の比(I120/I80)で示される値とする。このような条件下で測定された各シンチレータ単位素子の線質応答特性値(=I120/I80)に基づいて線質応答特性分布を求めることが重要である。
【0047】
すなわち、図3(線質応答特性の測定状態の模式図)に示すように、管電圧が小さいX線(X80)はシンチレータ単位素子(測定試料)8に対する侵入深さが浅いため、X80線の照射に基づく発光(I80)は測定試料8内の比較的長い距離を通過して出力される。一方、管電圧が大きいX線(X120)はシンチレータ単位素子(測定試料)8に対する侵入深さが深いため、X120線の照射に基づく発光(I120)は測定試料8内の比較的短い距離を通過して出力される。これらのうち、X80線の照射に基づく発光出力I80は測定試料8の厚さtに大きく影響され、厚さtが厚くなるほど発光出力I80が小さくなる傾向がある。また当然ながら、X線(X80)の管電圧が小さいほど発光出力I80が小さくなり、X120線による発光出力I120との差が大きくなる傾向がある。
【0048】
上述したように、線質応答特性分布を測定する際の条件に関しては、測定試料8の厚さtが厚くなるほど、さらに低電圧X線の管電圧が小さくなるほど、線質応答特性のばらつきが増大する傾向を示す。一方、測定試料8(シンチレータ)の厚さが小さいと、シンチレータ単位素子間の特性のばらつきは生じにくいが、X線阻止能が低下してしまう。X線阻止能が低下するとシンチレータにてX線を十分に吸収することができず、一部がそのまま透過(通過)してしまいフォトダイオードに悪影響を与えてしまうことになる。特に、近年のX線検査装置はX線強度(管電圧)を大きくして高画質化することも検討されていることから、X線阻止能が高いシンチレータの開発も求められている。X線阻止能を向上させるためには、シンチレータの厚さを厚くすることが有効である。
【0049】
本発明は上記のような条件下で測定した線質応答特性分布を0.5%以内としたものであり、実用レベルでのアーチファクトの出現をより再現性よく抑制することを可能にしたものである。言い換えれば、幅広い管電圧を使用するX線CT装置などの放射線検査装置を構成する上で必要とされる比較的厚いシンチレータ、具体的には厚さ1.2mm以上のシンチレータ単位素子を具備するセラミックシンチレータであったとしても、優れた線質応答特性を示すシンチレータを開発したものである。ここで言うシンチレータ単位素子の厚さとは、放射線の照射方向に対して平行な方向の厚さである。シンチレータ単位素子の厚さは、さらに2mm以上であることがより好ましい。なお、本発明のセラミックシンチレータを厚さ1.2mm未満で用いてもよいことは言うまでもない。
【0050】
本発明のセラミックシンチレータ1は、上述したように光出力に優れると共に、複数のシンチレータ単位素子間の線質応答特性分布が小さい、言い換えると線質応答特性のばらつきが小さく抑えられていることから、そのようなセラミックシンチレータ1を放射線検出器の蛍光発生手段として使用することによって、放射線の検出感度の向上を図った上で、アーチファクトの出現を再現性よく抑制することが可能となる。
【0051】
次に、本発明の放射線検出器および放射線検査装置の実施形態について説明する。図1に示した放射線検出器5は本発明の一実施形態であり、具体的にはX線検出器を構成している。同図に示すX線検出器5は、蛍光発生手段としてセラミックシンチレータ1を有している。セラミックシンチレータ1は、上述した希土類酸硫化物蛍光体の焼結体からなる複数のシンチレータチップ2、2…を集積して構成したシンチレータブロック3を有している。
【0052】
また、シンチレータブロック3の各シンチレータチップ(チャンネル)2、2…の前方には、例えば図4に示すように、X線の入射方向を規制するコリメータ9を設けてもよい。コリメータ9は斜め方向から入射するX線を遮断して、垂直に入射するX線のみを各シンチレータチップ(チャンネル)2、2…に導くものである。コリメータ9は、各シンチレータチップ(チャンネル)2、2…毎にX線の入射方向を規制するように配置されている。
【0053】
シンチレータブロック3の後方には、光電変換部としてフォトダイオード4などの光電変換素子が設けられている。フォトダイオード4はシンチレータブロック3の各シンチレータチップ2、2…に対応させて配置されている。また、図2に示したように、複数のシンチレータセグメント6、6…を縦横方向に多数集積して構成したシンチレータブロック7を用いる場合には、各シンチレータセグメント6、6…に対応させてフォトダイオード4が配置される。
【0054】
上述したX線検出器5においては、セラミックシンチレータ1にX線が入射し、この入射したX線量に応じてセラミックシンチレータ1の各シンチレータ単位素子(シンチレータチップ2またはシンチレータセグメント6)が発光する。各シンチレータ単位素子から放射された光は、フォトダイオード4でそれぞれ検出される。すなわち、入射したX線量に基づいて発光する光の出力は、フォトダイオード4により電気的出力に変換され、これにより入射X線量が測定される。
【0055】
図5は本発明の放射線検査装置を適用したX線CT装置の一実施形態の概略構成を示す図である。同図に示すX線CT装置10は、上述した実施形態のX線検出器5を有している。X線検出器5は、被験者11の撮像部位を安置する円筒の内壁に張り付けられている。X線検出器5が張り付けられた円弧の略中心には、X線を出射するX線管12が配置されている。X線検出器5とX線管12との間には、固定された被験者11が配置される。
【0056】
X線検出器5とX線管12は、被験者11を中心にして、X線による撮影を行いながら回転するように構成されている。そして、被験者11の画像情報が異なる角度から立体的に集められる。X線撮影により得られた信号(フォトダイオード4により変換された電気信号)はコンピュータ13で処理され、ディスプレイ14上に被験者画像15として表示される。被験者画像15は、例えば被験者11の断層像である。また、図2に示したようなセラミックシンチレータ1を用いることによって、マルチ断層像タイプのX線CT装置を構成することも可能である。この場合には、被験者11の断層像が複数同時に撮影され、例えば撮影結果を立体的に描写することもできる。マルチ断層像タイプのX線CT装置には、線質応答特性分布が0.2%以下のものが好適である。
【0057】
このようなX線CT装置10においては、X線検出器5の蛍光発生手段として、複数のシンチレータ単位素子(シンチレータチップ2またはシンチレータセグメント6)間の線質応答特性分布を低減したセラミックシンチレータ1を適用しているため、X線の検出感度を向上させた上で、アーチファクト(疑似画像)の出現を有効かつ再現性よく防ぐことができる。さらに、セラミックシンチレータ1からの出力も高いため、解像度の向上などを図ることができる。これらによって、X線CT装置10による医療診断能を大幅に高めることが可能となる。
【0058】
なお、本発明の放射線検査装置は、医療診断用のX線検査装置に限らず、工業用途のX線非破壊検査装置などに対しても適用可能である。本発明はX線非破壊検査装置による検査精度の向上などに対しても寄与するものである。
【0059】
【実施例】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。
【0060】
実施例1
まず、平均粒子径が10μmのGd22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末を用意した。Gd22S:Pr蛍光体粉末は、GdとPrの混合酸化物粉末(Pr411を含むGd23粉末)に、適量の硫黄粉末とフラックスとしてLi3PO4粉末とNa2CO3粉末を加えて十分に混合し、この混合粉末を1100〜1300℃×4〜8時間の条件で焼成した後に、希塩酸での洗浄と純水洗浄(10回以上)を実施することにより得たものである。このGd22S:Pr蛍光体粉末のP含有量は80ppmで、かつCl含有量は2.6ppmであった。F含有量は検出限界(0.1ppm)以下であった。
【0061】
このようなGd22S:Pr蛍光体粉末をラバープレスにより成形し、この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1500℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、Gd22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0062】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Gd22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は40ppm、Cl含有量は0.7ppm、F含有量は検出限界(0.1ppm)以下であった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0063】
実施例2
まず、平均粒子径が10μmのLu22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末を用意した。Lu22S:Pr蛍光体粉末は、実施例1のGd22S:Pr蛍光体粉末と同様にして作製したものである。このLu22S:Pr蛍光体粉末のP含有量は90ppmで、かつCl含有量は3.3ppmであった。F含有量は検出限界以下であった。
【0064】
このようなLu22S:Pr蛍光体粉末をラバープレスにより成形し、この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1450℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、Lu22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0065】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Lu22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は46ppm、Cl含有量は0.7ppm、F含有量は検出限界以下であった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0066】
実施例3
まず、平均粒子径が10μmのLa22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末を用意した。La22S:Pr蛍光体粉末は、実施例1のGd22S:Pr蛍光体粉末と同様にして作製したものである。このLa22S:Pr蛍光体粉末のP含有量は75ppmで、かつCl含有量は2.1ppmであった。F含有量は検出限界以下であった。
【0067】
このようなLa22S:Pr蛍光体粉末をラバープレスにより成形し、この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1460℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、La22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0068】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(La22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は36ppm、Cl含有量は0.7ppm、F含有量は検出限界以下であった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0069】
実施例4
まず、平均粒子径が10μmのY22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末を用意した。Y22S:Pr蛍光体粉末は、実施例1のGd22S:Pr蛍光体粉末と同様にして作製したものである。このY22S:Pr蛍光体粉末のP含有量は70ppmで、かつCl含有量は1.8ppmであった。F含有量は検出限界以下であった。
【0070】
このようなY22S:Pr蛍光体粉末をラバープレスにより成形し、この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1550℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、Y22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0071】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Y22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は28ppm、Cl含有量は0.7ppm、F含有量は検出限界以下であった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0072】
実施例5
実施例1と同様のGd22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末に、焼結助剤としてLi2GeF6を0.01質量%の割合で添加し、十分に混合した後、ラバープレスにより成形した。この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1100℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、Gd22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0073】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Gd22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は40ppm、Cl含有量は0.7ppm、F含有量は36ppmであった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0074】
実施例6
実施例1と同様のGd22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末に、焼結助剤としてLi2GeF6を0.021質量%の割合で添加し、十分に混合した後、ラバープレスにより成形した。この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1100℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、Gd22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0075】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Gd22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は40ppm、Cl含有量は0.7ppm、F含有量は82ppmであった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0076】
実施例7
まず、平均粒子径が10μmのGd22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末を用意した。Gd22S:Pr蛍光体粉末は、GdとPrの混合酸化物粉末(Pr411を含むGd23粉末)に、適量の硫黄粉末とフラックスとしてK3PO4粉末を加えて十分に混合し、この混合粉末を1100〜1300℃×4〜8時間の条件で焼成した後に、希塩酸での洗浄と純水洗浄(3回)を実施することにより得たものである。このGd22S:Pr蛍光体粉末のP含有量は116ppmで、かつCl含有量は78ppmであった。F含有量は検出限界以下であった。
【0077】
このようなGd22S:Pr蛍光体粉末に、焼結助剤としてLi2GeF6を0.015質量%の割合で添加し、十分に混合した後、ラバープレスにより成形した。この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1100℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、Gd22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0078】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Gd22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は60ppm、Cl含有量は42ppm、F含有量は37ppmであった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0079】
比較例1
実施例1と同様のGd22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末に、焼結助剤としてLi2GeF6を0.05質量%の割合で添加し、十分に混合した後、ラバープレスにより成形した。この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1100℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、Gd22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0080】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Gd22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は40ppm、Cl含有量は0.7ppm、F含有量は147ppmであった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0081】
比較例2
実施例1と同様にして作製したGd22S:Pr(Pr濃度=0.05mol%)蛍光体粉末に、焼結助剤としてLi2GeF6を0.1質量%の割合で添加し、十分に混合した後、ラバープレスにより成形した。この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1100℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理して、Gd22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0082】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Gd22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は40ppm、Cl含有量は0.7ppm、F含有量は290ppmであった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0083】
比較例3
GdとPrの混合酸化物粉末(Pr411を含むGd23粉末)に、適量の硫黄粉末とフラックスとしてNa3PO4粉末を加えて十分に混合し、この混合粉末を1150℃×5時間の条件で焼成した後に、希塩酸での洗浄と純水洗浄(1回)を実施することによって、平均粒子径が10μmのGd22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末を作製した。このGd22S:Pr蛍光体粉末のP含有量は320ppmで、かつCl含有量は240ppmであった。F含有量は検出限界以下であった。
【0084】
このようなGd22S:Pr蛍光体粉末をラバープレスにより成形し、この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1500℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、Gd22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0085】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Gd22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は230ppm、Cl含有量は128ppm、F含有量は検出限界以下であった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0086】
比較例4
GdとPrの混合酸化物粉末(Pr411を含むGd23粉末)に、適量の硫黄粉末とフラックスとしてNa3PO4粉末を加えて十分に混合し、この混合粉末を1150℃×5時間の条件で焼成した後に、希塩酸での洗浄と純水洗浄(2回)を実施することによって、平均粒子径が10μmのGd22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末を作製した。このGd22S:Pr蛍光体粉末のP含有量は210ppmで、かつCl含有量は120ppmであった。F含有量は検出限界以下であった。
【0087】
このようなGd22S:Pr蛍光体粉末に、焼結助剤としてLi2GeF6を0.015質量%の割合で添加し、十分に混合した後、ラバープレスにより成形した。この成形体をTa製カプセル中に密封した後、これをHIP処理装置にセットした。HIP処理装置にアルゴンガスを加圧媒体として封入し、圧力147MPa、温度1100℃の条件で3時間処理した。得られた焼結体から長さ30mm×幅1mm×厚さ2mmの棒状材料を切り出した後、微量の酸素とSOxを含む窒素ガス雰囲気中にて1100℃で熱処理することによって、Gd22S:Pr焼結体からなる複数のシンチレータチップを作製した。
【0088】
このようにして得た複数のシンチレータチップ(Gd22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は120ppm、Cl含有量は62ppm、F含有量は63ppmであった。得られた複数のシンチレータチップは後述する特性評価に供した。
【0089】
上記した実施例1〜7および比較例1〜4による各シンチレータチップをそれぞれ100本用意し、各シンチレータチップ2(厚さ=2mm)に管電圧120kVのX線と管電圧80kVのX線を順に照射し、これら各X線照射時の発光出力から前述した(1)式に基づいて線質応答特性分布を求めた。実施例1〜7および比較例1〜4による各セラミックシンチレータの線質応答特性分布を表2に示す。なお、各実施例の蛍光体組成と焼結助剤の有無は表1に示す通りであり、各シンチレータチップのP含有量およびハロゲン元素含有量は表2に示す通りである。
【0090】
次に、上記した実施例1〜7および比較例1〜4による各シンチレータチップを用いて、図1に示したX線検出器5(シンチレータチップの数=20本)をそれぞれ作製し、これらX線検出器5を使用してX線CT装置をそれぞれ構成した。
これら各X線CT装置の管電圧を80〜120kVの範囲で変化させて、約800ch(チャンネル)においてアーチファクトの出現の有無を測定した。表2にアーチファクトが確認されたチャンネル数を示す。
【0091】
【表1】
Figure 0004886151
【0092】
【表2】
Figure 0004886151
【0093】
表2から明らかなように、実施例1〜7による各セラミックシンチレータは、複数のシンチレータチップ間の線質応答特性分布が0.5%以内に抑えられていることが分かる。そして、このようなセラミックシンチレータを用いて構成したX線検出器によれば、アーチファクトの出現を再現性よく抑制することが可能となる。一方、比較例1〜4による各セラミックシンチレータは、複数のシンチレータチップ間の線質応答特性分布が0.5%を超えており、これによってアーチファクトがかなりの確率で出現することが分かる。
【0094】
実施例8〜11、比較例5〜7
上述した実施例1において、Gd22S:Pr蛍光体粉末の作製時におけるフラックス(Li3PO4粉末)の添加量および焼成後の洗浄条件を変更し、P含有量を調整する以外は、実施例1と同様にしてGd22S:Pr(Pr濃度=0.1mol%)蛍光体粉末(実施例8〜11、比較例5〜7)をそれぞれ作製した。なお、比較例5〜7はP含有量を本発明の範囲外に調整したものである。
【0095】
上述した各Gd22S:Pr蛍光体粉末を用いて、それぞれ実施例1と同様にしてシンチレータチップ(長さ30mm×幅1mm×厚さ2mm)を作製した。このようにして得た複数のシンチレータチップ(Gd22S:Pr焼結体)のP含有量、Cl含有量、F含有量を測定したところ、P含有量は表2に示す通りであり、またCl含有量は0.7ppm、F含有量は検出限界(0.1ppm)以下であった。このようなシンチレータチップを具備するセラミックシンチレータをそれぞれ以下に示す特性評価に供した。なお、比較例5のGd22S:Pr蛍光体粉末については、長さ30mmのチップ形状を維持することができなかったため、特性評価は行っていない。
【0096】
上記した実施例8〜11および比較例6〜7による各セラミックシンチレータの線質応答特性分布を、前述した方法にしたがって求めた。さらに、管電圧120kVのX線を照射した際の光出力を、実施例11の光出力を100としたときの相対値として求めた。これらの測定結果を表3に示す。
【0097】
【表3】
Figure 0004886151
【0098】
表3から明らかなように、実施例8〜11による各セラミックシンチレータは、線質応答特性分布が0.5%以内に抑えられていることに加えて、優れた光出力を有していることが分かる。一方、P含有量が100ppmを超えるシンチレータチップを具備する比較例6、7のセラミックシンチレータは、光出力が劣るだけでなく、線質応答特性のばらつきも大きいことが分かる。
【0099】
実施例1A〜1B、参考例1A〜1B
上述した実施例1および比較例1と同様の希土類酸硫化物焼結体を用いて、厚さ2mmのシンチレータ(実施例1Aおよび参考例1A)と、厚さ1.1mmのシンチレータ(実施例1Bおよび比較例1B)をそれぞれ作製した。これら各シンチレータについて、管電圧I120/I80の条件での線質応答特性分布(%)と管電圧I120/I100の条件での線質応答特性分布(%)をそれぞれ測定した。これらの測定結果を表4に示す。
【0100】
【表4】
Figure 0004886151
【0101】
表4から明らかなように、シンチレータの厚さが1.1mmと薄いときには線質応答特性分布の差が小さいのに対して、シンチレータの厚さが1.2mm以上と厚くなれば線質応答特性分布の差が大きくなることが分かる。また、線質応答特性分布の測定条件に関しても、I120/I80とI120/I100とを比較すると管電圧の幅が広い方ほど、線質応答特性分布のばらつきが大きくなることが分かる。言い換えれば、本発明の実施例によるシンチレータは、厚さが厚くなった場合においても、さらに管電圧の幅が広くなった場合においても、優れた線質応答特性分布を示すと言える。
【0102】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のセラミックシンチレータは、良好な光出力を有することに加えて、線質応答特性のばらつきが小さいことから、そのようなセラミックシンチレータを用いて放射線検出器、さらには放射線検査装置を構成した際に、アーチファクトの出現を再現性よく抑制することができる。従って、このようなセラミックシンチレータを用いた本発明の放射線検出器および放射線検出装置によれば、例えば解像度や画像精度を高めることができ、これにより医療診断能や非破壊検査精度の向上を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施形態によるセラミックシンチレータおよびX線検出器の概略構成を模式的に示す斜視図である。
【図2】 本発明の他の実施形態によるセラミックシンチレータの構成を模式的に示す平面図である。
【図3】 本発明で規定する線質応答特性分布の測定状態を説明するための図である。
【図4】 本発明のセラミックシンチレータおよびX線検出器の変形例を示す側面図である。
【図5】 本発明の一実施形態によるX線CT装置の概略構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1……セラミックシンチレータ、2……シンチレータチップ、3,7……シンチレータブロック、4……光電変換素子、5……X線検出器、6……シンチレータセグメント、10……X線CT装置

Claims (3)

  1. 0.1〜100ppmの範囲のリンを含有し、かつフッ素および塩素の合計含有量が100ppm以下で
    一般式:(RE 1−a Pr
    (式中、REはGd、Lu、LaおよびYから選ばれる少なくとも1種の元素を示し、aは5×10 −5 ≦a≦1×10 −2 を満足する数である)
    で表される組成を有する希土類酸硫化物蛍光体の焼結体で、相対密度が99.5%以上、厚みが1.2mm以上の複数のシンチレータ単位素子を具備するセラミックシンチレータであって、
    前記複数のシンチレータ単位素子は、シンチレータ単位素子の線質応答特性の最大値をA、最小値をBとしたとき、線質応答特性分布[{(A−B)/A}×100(%)]が0.5%以下となるようにシンチレータ単位素子を集積して構成したことを特徴とするセラミックシンチレータ。
    なお、前記シンチレータ単位素子の線質応答特性は、X線照射方向に対する厚さが2mmの試料に対して、X線管電圧が120kVのX線を照射したときの発光出力をI 120 、X線管電圧が80kVのX線を照射したときの発光出力をI 80 としたとき、これら発光出力の比(I 120 /I 80 )で示される値である。
  2. 請求項1記載のセラミックシンチレータを具備し、入射した放射線に応じて前記セラミックシンチレータを発光させる蛍光発生手段と、
    前記蛍光発生手段からの光を受けて、前記光の出力を電気的出力に変換する光電変換手段と
    を具備することを特徴とする放射線検出器。
  3. 被検体に向けて放射線を照射する放射線源と、
    前記被検体を透過した放射線を検出する、請求項記載の放射線検出器と
    を具備することを特徴とする放射線検査装置。
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