本発明は、連続鋳造機の鋳型直下に設置される、鋳片を支持・冷却するためのクーリンググリッド設備、並びに、このクーリンググリッド設備の設置された連続鋳造機を用いた鋳片の製造方法に関するものである。
鋼の連続鋳造においては、取鍋からタンディッシュに注入された溶鋼は、タンディッシュの底部に設置された浸漬ノズルを介して水冷式の鋳型に注入され、その後、鋳型によって形成された凝固シェルを外殻とする鋳片が、冷却されながら鋳型下方に連続的に引き抜かれ、連続鋳造鋳片が製造されている。この場合、先ず、鋳型においては、溶鋼は鋳型と接することによって冷却され、凝固シェルを形成する。その後、鋳型を抜けた鋳片は、ガイドロール、クーリンググリッド、クーリングプレートなどから構成される鋳片支持・案内装置によって支持されながらピンチロールによって鋳造方向に引き抜かれる。鋳片支持・案内装置によって支持されることにより、鋳片の厚み方向への膨らみ(「バルジング」という)が防止される。この鋳片支持・案内装置には水スプレーノズルやエアーミストスプレーノズルなどのスプレーノズル(以下、単に「スプレーノズル」と記載の場合には、水スプレーノズルとエアーミストスプレーノズルの両方を指すものとする)が配置されており、このスプレーノズルから噴霧される冷却水によって冷却されながら鋳片は引き抜かれ、やがて中心部までの凝固を完了させる。その後、連続鋳造機の機端に設置された鋳片切断機によって所定の長さに切断され、連続鋳造鋳片が製造される。
ところで、近年、製造コストを削減するべく、生産性の向上が以前にも増して要求されており、連続鋳造プロセスにおいては、製造ラインのスピード即ち鋳造速度の高速化が行われている。この鋳造速度の高速化を実現するには、様々な問題を解決する必要があるが、その中でも特に、鋳片を鋳型直下でより効率的に冷却し且つ支持する技術が必要となっている。高速鋳造下では、鋳型直下における凝固シェルの厚みが薄くなり、この凝固シェルが破れてブレークアウトが発生したり、或いは、凝固シェルの破れまでには至らないものの、鋳片が鋳型直下で溶鋼静圧によってバルジングしてしまい、これによって鋳型内の溶鋼湯面が上下に変動してモールドパウダーが凝固シェルに巻き込まれ、品質欠陥が発生したりするなどの問題が生じる。つまり、鋳型直下において、バルジングが生じないように凝固シェル厚みの薄い鋳片を支持しながら、且つ、効率良く鋳片を冷却する方法が求められている。
従来、鋳片を鋳型直下で支持する方式としては、大きく分けて、ロール方式、クーリングプレート方式、クーリンググリッド方式の3種類に分類される(例えば、非特許文献1参照)。
ロール方式では、鋳造方向に隣り合うロールの隙間にスプレーノズルを設置し、スプレーノズルから噴霧される冷却水によって鋳片を冷却しながらロールで鋳片を支持する。この場合、鋳片を冷却する観点からは、ロール径を大きくしてロール間隔を拡大させ、鋳片の水冷される面積を広くすることが望ましいが、このようにすると鋳片を支持する間隔が広がるため、バルジングしやすくなってしまうという問題がある。また、ロールと鋳片とは線接触であるため、面で支持する他の2つの方式に比べて鋳片の支持面積が小さいという基本的な問題もある。
クーリングプレート方式では、鋳片の幅方向全体を1つのプレートで支持しており、このプレートは、その内部に冷却水の流れる流路が形成された水冷構造であり、鋳片と接触して鋳片を間接的に冷却するとともに、プレートの表面から鋳片に向けて水を噴出して鋳片を直接冷却する機能をも備えている。このように、クーリングプレート方式では、鋳片の幅方向全体を大きな1つのプレートで支持しており、鋳片のバルジング防止には非常に有効な方式であるが、鋳片を直接冷却する面積が小さいので、鋳片の冷却効率が悪いという問題がある。また、ブレークアウトが発生した場合、プレート表面から噴射された水が鋳片を冷却した後に発生する蒸気の逃げ場がないため、水蒸気爆発が発生する危険性が高く、操業上にもまた安全上にも問題がある。更に、プレートが大きく、しかも一体構造であるため、加工及び補修が難しいことも大きな問題である(例えば、特許文献1参照)。
クーリンググリッド方式は、鋳片と直接接触しこれを支持するためのウェアプレートと、ウェアプレートを支持するバックフレームと、ウェアプレートの隙間に設置される水スプレーノズルと、で構成されており、千鳥配置された多数のウェアプレートが鋳片を支持し、且つ、多数の水スプレーノズルから噴射された冷却水によって鋳片を直接冷却しており、鋳片の支持面積を確保すると同時に、鋳片の直接冷却の面積を確保するという両方を兼ね備えた設備である(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
特開昭57―25268号公報
特開2002−120054号公報
実開平6−23647号公報
三好等、鉄と鋼、Vol.60(1974)No.7.p.860−867
しかしながら、従来のクーリンググリッド方式の設備を精査検討したところ、従来のクーリンググリッド設備には以下に示す問題があることが判明した。
即ち、従来のクーリンググリッド設備では、鋳片の冷却は、主に隣り合うウェアプレートの隙間に設置された水スプレーノズルから噴射される冷却水によって行われており、鋳片を支持するためのウェアプレートと鋳片との接触部には冷却水が直接当たらず、この部分の冷却能力が弱く、現状で求められている高速鋳造時にはクーリンググリッド設備全体の冷却能力が不十分であるという問題である。これは、ウェアプレート自体は、水冷構造ではなく、ウェアプレートの隙間に設置される水スプレーノズルから噴霧されるスプレー水によって冷却されており、鋳片とウェアプレートとの接触部はウェアプレートによる間接冷却になるからである。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳型直下の鋳片支持をクーリンググリッド方式で実施するに当たり、鋳片の支持面積を十分に確保すると同時に、鋳片の冷却能力を向上させた連続鋳造機用クーリンググリッド設備を提供することであり、また、このクーリンググリッド設備を備えた連続鋳造機を用いて連続鋳造鋳片を製造する方法を提供することである。
本発明者等は、上記課題を解決すべく、鋭意検討・研究を行った。以下に、検討・研究結果を説明する。
クーリンググリッド設備の冷却能力を高める手段の1つとして、クーリンググリッド設備の全体の面積に占めるウェアプレートの面積割合を低下させ、噴霧されるスプレー水で直接冷却される面積割合を拡大する方法が考えられる。しかしながら、クーリンググリッド設備の全体の面積に占めるウェアプレートの面積割合は20%から60%程度であり、鋳片を安定して支持する観点からは、この面積割合を現状よりも大幅に減ずることは困難である。そこで本発明では、クーリンググリッド設備の冷却能力を高める手段として、スプレーで直接冷却される部分の冷却能力を一層向上させることを検討した。
実操業の鋳型直下で使用しているクーリンググリッド設備、即ち、ウェアプレートと水スプレーノズルとを組み合わせた構造を模擬した実験装置を製作し、この実験装置において、実操業で使用している水スプレーノズルを他の形式のノズルに変更し、このノズルを用いて加熱した鋼材を冷却する実験を行い、各条件における冷却能力を比較評価した。
その結果、シャワー状の水流群を形成する、図1に示すノズル(以下、「冷却水供給ノズル」と称す)が、冷却能力に優れていることが判明した。図1は、本発明で採用した冷却水供給ノズルの1例を示す概略図で、(A)は正面図、(B)は側面断面図である。但し、図1(B)は、図1(A)のX−X’断面図である。
図1に示すように、冷却水供給ノズル15は、箱状のノズルヘッド16と、整流孔19を有する冷却水供給配管18とから構成され、ノズルヘッド16の前面には複数のノズル孔17が設けられており、これらのノズル孔17からシャワー状に冷却水が噴出する。冷却水供給配管18は、その先端がノズルヘッド16の箱部内に貫通接続され、その側面部に複数の整流孔19を有した閉端管で形成されている。この構造は、ノズルヘッド16の前面に設けられた複数のノズル孔17から冷却水が均一に噴出するための整流機能とヘッダー機能とを持たせたものである。尚、この冷却水供給ノズル15に対して実操業で使用している水スプレーノズルは、一般にフルコーン型水スプレーノズルと呼ばれるもので、冷却水を円錐状に噴霧するものである。
1200℃に保持した電気炉で冷却用の鋼材を約1時間加熱した後、この鋼材を取り出し、実験装置に固定して冷却を開始した。冷却中、鋼材の温度変化を鋼材に埋め込んだ熱電対により計測した。そして、この温度計測値をパーソナルコンピュータで読み込み、数値計算と組み合わせて鋼材表面における熱伝達率を算出した(実験方法の詳細は、実施例1で後述する)。
その結果、従来の水スプレーノズルを用いる場合よりも、上記のシャワー状の水流群を形成する冷却水供給ノズル15を用いた場合の方が、熱伝達率が大幅に向上し、クーリンググリッド設備における鋳片の冷却能力を強化できることが分かった。この場合、シャワー状水流群の本数密度は、0.08本/cm2 以上とすることが好適であることが分かった。シャワー状水流群の本数密度が0.08本/cm2 未満では、水流によって冷却される部位が少なくなり、冷却能力が低下するからである。ここで、シャワー状水流群の本数密度とは、1つの冷却水供給ノズル15から噴出したシャワー状の冷却水流の本数をウェアプレート間隙の面積で除した値であり、ウェアプレート間隙の面積は、「ウェアプレート間隙の面積=(鋳片幅方向に隣り合うウェアプレートの間隙長さ)×(鋳造方向に隣り合うウェアプレートの間隙長さ)」で定義する。
また、冷却水供給ノズル15のノズル孔17から噴出する冷却水の吐出流速を2.0m/秒以上とすることが好適であることが分かった。冷却水の吐出流速が2.0m/秒未満の場合には、水流が鋳片に達するまでの間に垂下するため冷却能力が低下するからである。また更に、冷却水供給ノズル15からウェアプレート間隙へ噴出する冷却水の水量密度を、1000リットル/分・m2 から6000リットル/分・m2 の範囲内とすると好適であることも分かった。水量密度が1000リットル/分・m2未満であると、水量そのものが少ないために冷却能が上がらず、一方、水量密度が6000リットル/分・m2 を超えると、ウェアプレートの間隙に冷却水が滞留し、新たに供給された冷却水が鋳片に達しにくくなるためである。ここで冷却水の水量密度とは、1つの冷却水供給ノズル15から噴出した冷却水の1分間当たりの流量をウェアプレート間隙の面積で除した値である。ウェアプレート間隙の面積は上記の通りである。
また、この冷却水供給ノズル15において、鋳片とウェアプレートとの境界部に向けて水流を噴射させるノズル孔をノズルヘッド16に追加配置することで、冷却能が向上することが分かった。ここでは、鋳片とウェアプレートとの境界部に向けて水流を噴射させるノズル孔を追加配置したものを冷却水供給ノズル15Aと表示し、冷却水供給ノズル15と区別する。
具体的には、図2に示すように、冷却水供給ノズル15Aのノズルヘッド16の外周部に、複数の傾角付ノズル孔26、つまり鋳片とウェアプレートとの境界部に向けて傾斜させた傾角付ノズル孔26を追加配置し、ウェアプレート間隙領域内の外周部並びにウェアプレート側面にも水流を衝突させて、これらの部分の冷却を同時に行うものである。ここで、図2は、本発明で採用した冷却水供給ノズルの他の例を示す概略図で、(A)は正面図、(B)は側面断面図であり、冷却水供給ノズル15Aは、傾角付ノズル孔26の追加配置以外の構造は図1に示す冷却水供給ノズル15と同一構造であり、同一の部分は同一符号で表している。但し、図2(B)は、図2(A)のX−X’断面図である。
この冷却水供給ノズル15Aからウェアプレート間隙へ噴出する冷却水の最適水量密度は、傾角付ノズル孔26が追加配置されることによって冷却水供給ノズル15の水量密度よりも多くなり、2000リットル/分・m2 以上8000リットル/分・m2 以下の範囲内とすると好適であることが分かった。水量密度が2000リットル/分・m2未満であると、水量そのものが少ないために冷却能が上がらず、一方、水量密度が8000リットル/分・m2 を超えると、ウェアプレートの間隙に冷却水が滞留し、新たに供給された冷却水が鋳片に達しにくくなるためである。
更に、冷却能を向上させるために、ウェアプレート自体にも冷却機能を付与させることが好適であることが分かった。具体的には、ウェアプレートの鋳片と接触する側に複数個の溝を設けるとともに、この溝の部分に、溝の内部に向けて冷却水を噴射するための噴出孔を設け、噴出孔から噴射する冷却水によって鋳片を冷却する型式のウェアプレートを用いることである。
本発明は、上記検討結果に基づいてなされたものであり、第1の発明に係る連続鋳造機用クーリンググリッド設備は、連続鋳造機の鋳型直下に設置される連続鋳造機用クーリンググリッド設備であって、鋳片と接触して鋳片を支持するウェアプレートの間隙に、箱状のノズルヘッドと、整流孔を有する冷却水供給配管と、から構成される冷却水供給ノズルであって、前記ノズルヘッドの前面には複数のノズル孔が設けられており、これらのノズル孔から鋳片に向けてシャワー状の水流群を噴出して鋳片を冷却する冷却水供給ノズルが設置されていることを特徴とするものである。
第2の発明に係る連続鋳造機用クーリンググリッド設備は、第1の発明において、前記ウェアプレートは、鋳片と接触する側の面に溝が設置され、且つ、この溝の内部に向けて冷却媒体を噴射するための噴出孔が設置されたものであることを特徴とするものである。
第3の発明に係る連続鋳造機用クーリンググリッド設備は、第1の発明において、前記冷却水供給ノズルは、更に、前記ノズル孔の外周に、前記ノズルヘッドに傾斜して配置された、鋳片とウェアプレート外縁との境界部に向けてシャワー状の水流を噴出するための傾角付ノズル孔を有することを特徴とするものである。
第4の発明に係る連続鋳造鋳片の製造方法は、第1の発明に記載の連続鋳造機用クーリンググリッド設備を備えた連続鋳造機を用い、冷却水供給ノズルからシャワー状の水流群を噴出して鋳片を冷却しながら鋳造することを特徴とするものである。
第5の発明に係る連続鋳造鋳片の製造方法は、第2の発明に記載の連続鋳造機用クーリンググリッド設備を備えた連続鋳造機を用い、冷却水供給ノズルからシャワー状の水流群を噴出するとともに、ウェアプレートに設置された噴出孔から冷却水を噴射させて、鋳片を冷却しながら鋳造することを特徴とするものである。
第6の発明に係る連続鋳造鋳片の製造方法は、第3の発明に記載の連続鋳造機用クーリンググリッド設備を備えた連続鋳造機を用い、冷却水供給ノズルからシャワー状の水流群を噴出して鋳片を冷却しながら鋳造することを特徴とするものである。
上記構成の本発明に係る連続鋳造機用クーリンググリッド設備によれば、鋳片の支持を確実に行うことができると同時に、鋳片の冷却を向上させることができ、高速鋳造条件であっても操業トラブルを生じることなく安定して高品質の鋳片を鋳造することが実現でき、工業上有益な効果がもたらされる。
以下、添付図面を参照して本発明を具体的に説明する。図3は、本発明の実施の形態を示す図であって、本発明に係るクーリンググリッド設備を備えた連続鋳造機の概略図、図4は、図3におけるクーリンググリッド設備の拡大斜視図である。
図3に示すように、連続鋳造機1には、溶鋼10を冷却して凝固させ、鋳片11の外殻形状を形成するための鋳型5が設置され、この鋳型5の上方所定位置には、取鍋(図示せず)から供給される溶鋼10を鋳型5に中継供給するためのタンディッシュ2が設置されている。タンディッシュ2の底部には、タンディッシュ2から鋳型5に注入される溶鋼10の流量を調整するためのスライディングノズル3が設置され、このスライディングノズル3の下面には、溶鋼10を鋳型5に注入するための耐火物製の浸漬ノズル4が設置されている。
一方、鋳型5の下方には、鋳型5の直下にクーリンググリッド設備6が設置され、クーリンググリッド設備6の下方には、対向する複数対の鋳片支持ロール7が設置されている。クーリンググリッド設備6及び鋳片支持ロール7は、鋳型5から引き抜かれる鋳片11を支持しながら下方に案内するための鋳片支持・案内装置であり、鋳片支持ロール7には鋳片11を引き抜くためのピンチロール(図示せず)が含まれる。鋳造方向に隣り合う鋳片支持ロール7の間隙には、水スプレーノズル或いはエアーミストスプレーノズルなどのスプレーノズル(図示せず)が配置され、これらのスプレーノズルから噴霧される冷却水により、鋳片11は引き抜かれながら冷却される。
また、鋳片支持ロール7の下流側には、鋳造された鋳片11を搬送するための複数の搬送ロール8が設置されており、この搬送ロール8の上方には、鋳造される鋳片11から所定の長さの鋳片11aを切断するための鋳片切断機9が配置されている。
クーリンググリッド設備6は、図4に示すように、鋳片11を支持するための、千鳥配置された多数のウェアプレート14と、ウェアプレート14を支持するバックフレーム(図示せず)と、隣り合うウェアプレート14の隙間に設置される冷却水供給ノズル15または冷却水供給ノズル15Aと、で構成されている。尚、図4では、クーリンググリッド設備6を鋳片11の幅方向の一部のみで示しているが、鋳片11の全幅に亘ってクーリンググリッド設備6が設置されている。
シャワー状の水流群を噴出する冷却水供給ノズル15は、前述した図1に示す冷却水供給ノズル15と同一構造であり、また、冷却水供給ノズル15Aは、前述した図2に示す冷却水供給ノズル15Aと同一構造である。以下、図1を参照して冷却水供給ノズル15を説明し、また、図2を参照して冷却水供給ノズル15Aを説明する。先ず、冷却水供給ノズル15について説明する。
図1に示すように、冷却水供給ノズル15は、箱状のノズルヘッド16と、整流孔19を有する冷却水供給配管18とから構成される。ノズルヘッド16の前面には複数のノズル孔17が設けられており、これらのノズル孔17からシャワー状に冷却水が噴出する。冷却水供給配管18は、その先端がノズルヘッド16の箱部内に貫通接続され、その側面部に複数の整流孔19を有した閉端管となっている。この冷却水供給配管18の構造は、ノズルヘッド16の前面に設けられた複数のノズル孔17から均一に冷却水を噴出させるための整流機能とヘッダー機能とを持たせたものである。
ノズル孔17の直径及び孔数は、基本的には供給する冷却水の流量に応じて決定するが、冷却水内に懸濁する異物によるノズル孔17の詰まり防止の観点から、ノズル孔17の直径は3mm以上とすることが望ましい。但し、冷却水の流量が一定のまま、ノズル孔17の直径を大きくし過ぎると、ノズル孔17からの冷却水の吐出流速が低下するために、水流が鋳片11に達するまでの間に垂下してしまい冷却能力が低下する。従って、ノズル孔17の直径及び孔数は、各々のノズル孔17から噴射された水流が、鋳片11に衝突した後に滞留しない範囲で、衝突箇所を最大限確保するようにすることが望ましい。具体的には、ウェアプレート14の間隙の面積に対して0.08本/cm2 以上のシャワー状の水流群を形成するようにノズル孔17の孔数を決定し、これらを千鳥配置した上で、冷却水流量を調整するとよい。
次に、冷却水供給ノズル15Aについて説明する。図2に示すように、ウェアプレート14の間隙領域内のみならず、ウェアプレート14の間隙領域内の外周部及びウェアプレート14の側面にも水流を衝突させて、これらの部分の冷却を同時に行うことのできる冷却水供給ノズル15Aは、冷却水供給ノズル15と同様に、箱状のノズルヘッド16と、整流孔19を有する冷却水供給配管18とから構成される。ノズルヘッド16の前面には、複数のノズル孔17と、このノズル孔17の外周に配置され、鋳片11とウェアプレート14との境界部に向け、ノズルヘッド16に傾斜して配置された複数の傾角付ノズル孔26とが設けられており、ノズル孔17からは鋳片11の表面に向けて、また、傾角付ノズル孔26からは鋳片11とウェアプレート14の外縁との境界部に向けてシャワー状に冷却水が噴出する。冷却水供給配管18は、その先端がノズルヘッド16の箱部内に貫通接続され、その側面部に複数の整流孔19を有した閉端管となっている。この冷却水供給配管18の構造は、ノズルヘッド16の前面に設けられた複数のノズル孔17及び傾角付ノズル孔26から均一に冷却水を噴出させるための整流機能とヘッダー機能とを持たせたものである。
ノズル孔17及び傾角付ノズル孔26の直径及び孔数は、基本的には供給する冷却水の流量に応じて決定するが、冷却水内に懸濁する異物によるノズル孔17及び傾角付ノズル孔26の詰まり防止の観点から、その直径は3mm以上とすることが望ましい。但し、冷却水の流量が一定のまま、ノズル孔17及び傾角付ノズル孔26の直径を大きくし過ぎると、ノズル孔17及び傾角付ノズル孔26からの冷却水の吐出速度が低下するために、水流が鋳片11に達するまでの間に垂下してしまい冷却能力が低下する。従って、ノズル孔17及び傾角付ノズル孔26の直径及び孔数は、各々のノズル孔17及び傾角付ノズル孔26から噴射された水流が、鋳片11に衝突した後に滞留しない範囲で、衝突箇所を最大限確保するようにすることが望ましい。具体的には、ウェアプレート14の間隙の面積に対して0.08本/cm2 以上のシャワー状の水流群を形成するようにノズル孔17及び傾角付ノズル孔26の孔数を決定し、冷却水流量を調整するとよい。ノズル孔17は千鳥配置し、傾角付ノズル孔26はノズルヘッド16の外周部にノズル孔17に対して千鳥配置する。
図4に示すウェアプレート14は、長方形型であるが、非特許文献1に示されるような格子型であってもよい。要は、ウェアプレート14による鋳片11の支持面積が20〜60%となり、その他の部位を冷却水供給ノズル15または冷却水供給ノズル15Aによって冷却できるような構造であるならば、ウェアプレート14の形状はどのようであっても構わない。また、クーリンググリッド設備6の鋳造方向の設置長さは特に限定されるものではなく、少なくともウェアプレート14が鋳造方向に千鳥配置されるならば幾らであっても構わない。但し、クーリンググリッド設備6は、本来、鋳型直下で鋳片11を支持する装置であるので、3m以上の長さは必要としない。
ウェアプレート14は、通常、鋳鋼製或いは鋳鉄製で鋳片11との接触面が平坦な平板状であり、冷却水供給ノズル15または冷却水供給ノズル15Aから噴射される冷却水によって冷却されていて、ウェアプレート14と接触する部位の鋳片11は、冷却水によって直接冷却されず、ウェアプレート14を介して間接的に冷却されている。クーリンググリッド設備6における冷却能を更に高めるために、冷却機能を付与させたウェアプレート14を使用することが好ましい。具体的には、図5に示す形状のウェアプレート14を使用することが好ましい。
図5に示すように、冷却機能を付与させたウェアプレート14には、鋳片11との接触面に溝20が設置され、また、溝20の内部に向けて冷却媒体としての冷却水を噴射するための噴出孔21が、それぞれの溝20に設置されている。ウェアプレート14の内部は冷却水の流路22になっており、導入管23を介して流路22に供給された冷却水が各噴出孔21から噴射するようになっている。従って、冷却水がウェアプレート14の内部に設けられる流路22を通ることから、ウェアプレート14も流路22を通過する冷却水によって水冷される。即ち、冷却機能を付与させたウェアプレート14とは、噴出孔21から噴射する冷却水による冷却の向上と、水冷構造のウェアプレート14による冷却の向上とを意図したウェアプレート14である。これに対して、冷却機能を持たない従来のウェアプレートは、鋳片11と接触する面に溝20はなく平坦であり、また、噴出孔21もなく、内部から水冷される構造にもなっていない。尚、図5は、冷却機能を付与させたウェアプレートの形状の1例を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面断面図である。また、図5では、溝20がウェアプレート14に対して横方向に設置されているが、縦方向であっても、また斜め方向であってもよい。また溝20は直線である必要はなく、曲線であっても構わない。要は、溝20を介して水蒸気が逃げるような構造になっていれば、どんな形状であっても構わない。
噴出孔21の直径は、噴出孔21から噴射する冷却水の流量から決定する。冷却水の流量が一定のまま、直径を大きくし過ぎると、冷却水の鋳片11に当たる衝突圧が下がり、蒸気膜が生成されて冷却能力が減少する。しかしながら、流速を確保するために噴出孔21の直径を小さくし過ぎると、詰まりが発生してしまい、冷却不能になることがある。従って、詰まり防止の観点からは直径を3mm以上とすることが望ましい。また、噴出孔21の個数は、冷却水の流量に応じて決定すればよい。また、複数個の噴出孔21を同じ溝20に設置する場合には、隣り合う噴出孔21との間隔を、各々の噴出孔21から噴射される冷却水が滞留しないように決定するのが望ましく、噴出孔21の直径が3mmの場合には30mm程度離すことが好ましい。
このウェアプレート14を使用して噴出孔21から冷却水を噴射させることによって平均熱伝達率が向上し、冷却水供給ノズル15によって冷却される位置における熱伝達率と、ウェアプレート14と接触する位置における熱伝達率との差が小さくなり、均一冷却が可能になる。
この場合、噴出孔21から噴射させる水量密度は、200リットル/分・m2 以上、8000リットル/分・m2 以下の範囲が好ましい。200リットル/分・m2未満であると、ウェアプレート14による冷却が向上せず、一方、水量密度が8000リットル/分・m2 以上を超えると、新しい水が鋳片表面に直接接触することがなくなるために熱伝達率が向上しない。尚、噴出孔21から噴射させる冷却水の水量密度とは、1つのウェアプレート14に設置された全ての噴出孔21から噴出させる冷却水の1分間当たりの総量を、1つのウェアプレート14の鋳片11との接触面(溝面積を含む)の面積で除して得られる値である。
このような構成の連続鋳造機1を用いて、タンディッシュ2に滞留する溶鋼10を、スライディングノズル3により流量を調整しながら浸漬ノズル4を介して鋳型5に注入する。鋳型5に注入された溶鋼10は、鋳型5と接触して冷却され、凝固シェル12を形成する。鋳型5における溶鋼湯面位置をほぼ一定位置に保ちながら、表面を凝固シェル12とし、内部を未凝固相13とする鋳片11を鋳型5の下方に連続的に引き抜き、溶鋼10の連続鋳造を実施する。鋳型5を引き抜かれた鋳片11は、クーリンググリッド設備6及び鋳片支持ロール7で支持されながら冷却され、やがて内部まで完全に凝固する。鋳造される鋳片11を鋳片切断機9によって切断し、所定の長さの鋳片11aを製造する。
その際に、冷却水供給ノズル15のノズル孔17における吐出流速が2m/秒以上となり、ウェアプレート間隙における冷却水の水量密度が1000リットル/分・m2 以上6000リットル/分・m2 以下の範囲となるように、冷却水供給ノズル15から噴出する冷却水量を調整することが望ましい。また、冷却水供給ノズル15Aの場合には、冷却水供給ノズル15Aのノズル孔17及び傾角付ノズル孔26における吐出流速が2m/秒以上となり、ウェアプレート間隙における冷却水の水量密度が2000リットル/分・m2 以上8000リットル/分・m2 以下の範囲となるように、冷却水供給ノズル15Aから噴出する冷却水量を調整することが望ましい。尚、鋳片支持ロール7の間隙に設置されるスプレーノズルからの冷却水の噴霧量は、特に規定するものではなく、鋳造する鋼種や鋳造速度に応じて適宜最適な範囲を設定するものとする。
上記構成のクーリンググリッド設備6を用いて鋳片11を冷却することで、鋳片11を安定して支持しつつ、効率的に冷却することができるので、鋳造速度の高速化による生産量の増加が可能になる。また、図5に示すウェアプレート14を使用した場合には、クーリンググリッド設備6における冷却の不均一性を改善することができるので、不均一冷却に起因する鋳片11の表面割れを防止することも可能となる。
実操業の鋳型直下で使用しているクーリンググリッド設備、即ちウェアプレートと水スプレーノズルとを組み合わせた鋳型直下の構造を模擬した実験装置を製作し、この実験装置において、従来のフルコーン型の水スプレーノズルと、シャワー状の水流群を噴出して鋳片を冷却する冷却水供給ノズルとを用いて加熱した鋼材を冷却し、冷却能力を比較・評価した。
シャワー状の水流群を噴出して鋳片を冷却する冷却水供給ノズルとしては、前述した図1に示す冷却水供給ノズル15及び図2に示す冷却水供給ノズル15Aを準備した。即ち、箱状のノズルヘッド16と整流孔19を有する冷却水供給配管18とから構成され、ノズルヘッド16の前面には複数のノズル孔17が設けられており、これらのノズル孔17からシャワー状に冷却水を噴出させることが可能な冷却水供給ノズル15、及び、箱状のノズルヘッド16と整流孔19を有する冷却水供給配管18とから構成され、ノズルヘッド16の前面には複数のノズル孔17及び傾角付ノズル孔26が設けられており、これらのノズル孔17及び傾角付ノズル孔26からシャワー状に冷却水を噴出させることが可能な冷却水供給ノズル15Aである。冷却水供給ノズル15及び冷却水供給ノズル15Aともに、ノズルヘッド部の外形寸法は、高さ89mm、幅89mm、奥行95mmである。冷却水供給ノズル15のノズルヘッド前面には千鳥配列されたノズル孔17が設けられ、冷却水供給ノズル15Aのノズルヘッド前面には千鳥配列されたノズル孔17及びノズル孔26がそれぞれ設けられている。これに対して、従来の水スプレーノズルは、ひとつのノズル孔から円錐状に水を噴霧するフルコーン型の水スプレーノズルである。ウェアプレートは、通常の平板上のウェアプレートを使用した。
冷却能力を実験室的に評価する方法としては、加熱した鋼材に水を噴霧して冷却し、鋼材の温度履歴から熱伝達率を求める方法が一般的であり、そこで、本実施例では、鋼材の冷却される面とは反対側に穴を設け、そこに熱電対を埋め込み、熱電対で温度履歴を測定した。
実験は、図6に示すように、6個の冷却水供給ノズル15または6個の冷却水供給ノズル15Aと、6個のウェアプレート14とを組み合わせた構成の装置を用いた。比較のために、冷却水供給ノズル15,15Aの代わりにフルコーン型の水スプレーノズルを設置した装置も用いた。加熱した鋼材24をウェアプレート14に接触させた状態として、この鋼材24に、図7に示すように、冷却水供給ノズル15、冷却水供給ノズル15A及び水スプレーノズルから冷却水を噴射して冷却した。何れのノズルを用いた場合も、鋼材表面からノズル前面までの距離は80mmとした。尚、図6は、冷却水供給ノズルの冷却能力を比較・評価するための実験装置の概略図、図7は、冷却水供給ノズルの冷却能力の評価試験方法を示す側面断面図であり、図7は冷却水供給ノズル15を使用した場合を示している。
加熱する鋼材24としては、幅400mm、高さ600mm、厚み20mm、炭素濃度が0.2質量%の炭素鋼の鋼材を用い、この鋼材24の冷却面とは反対側の面に、直径1.8mm、深さ18mmの穴を11個空けて、そこに直径1.6mmのK型シース熱電対25を埋め込んだ。熱電対25の埋め込み位置は、図6に示すように、冷却水が直接かかる冷却水供給ノズル15の直下位置に11箇所とした。実験では、1200℃に保持した電気炉で上記の鋼材24を約1時間加熱し、均一に加熱された鋼材24を取り出して実験装置に固定し、冷却を開始した。鋼材24の冷却中、熱電対25による11点の温度測定値を0.1秒ごとにパーソナルコンピュータに取り込んだ。実験後、計測した温度履歴と数値計算を組み合わせてそれぞれの熱電対の位置における熱伝達率(局所熱伝達率)を算出し、得られた局所熱伝達率の面積平均値で、冷却用ノズルの冷却能を評価した。
試験は、以下の6つの水準で実施した。
水準1:従来のフルコーン型の水スプレーノズルを使用し、水スプレーノズル1本当たりの冷却水量を25リットル/分として試験を行った。以下、水準1を「従来例1」と記す。
水準2:シャワー状の水流群を噴出する冷却水供給ノズル15を使用し、冷却水供給ノズル1本当たりの冷却水量は、従来例1と同一の25リットル/分として試験を行った。冷却水供給ノズル15のノズル孔17の直径は3.0mm、冷却水供給ノズル1本当たりのノズル孔17の設置数は13個であり、これらのノズル孔17は、高さ方向及び幅方向に30mmピッチでノズルヘッド16に千鳥配列されている。この場合、ノズル孔17から噴出する冷却水の吐出流速は4.5m/秒である。以下、水準2を「本発明例1」と記す。
水準3:シャワー状の水流群を噴出する冷却水供給ノズル15を使用し、冷却水供給ノズル1本当たりの冷却水量は、従来例1及び本発明例1と同一の25リットル/分として試験を行った。冷却水供給ノズル15のノズル孔17の直径は4.8mmとし、冷却水供給ノズル1本についてノズルヘッド16の中心と四隅の合計5箇所にノズル孔17を設置した。四隅に設置されたノズル孔17の高さ方向及び幅方向の間隔は48mmとした。この場合、ノズル孔17から噴出する冷却水の吐出流速は、本発明例1とほぼ同等の4.6m/秒である。以下、水準3を「本発明例2」と記す。
水準4:従来のフルコーン型の水スプレーノズルを使用し、水スプレーノズル1本当たりの冷却水量を48リットル/分として試験を行った。以下、水準4を「従来例2」と記す。
水準5:シャワー状の水流群を噴出する冷却水供給ノズル15を使用し、冷却水供給ノズル1本当たりの冷却水量は、従来例2と同一の48リットル/分として試験を行った。冷却水供給ノズル15は本発明例1と同一のものを使用した。この場合、ノズル孔17から噴出する冷却水の吐出速度は8.8m/秒である。以下、水準5を「本発明例3」と記す。
水準6:傾角付ノズル孔26を配置し、ウェアプレート間隙領域内の外周部及びウェアプレート側面にもシャワー状の水流を衝突させることを可能にした冷却水供給ノズル15Aを使用し、冷却水供給ノズル1本当たりの冷却水量は、従来例2及び本発明例3と同一の48リットル/分として試験を行った。冷却水供給ノズル15Aのノズル孔17の直径は3.0mmとし、冷却水供給ノズル1本当たりのノズル孔17の設置数は13個であり、本発明例3と同一に配置した。また、冷却水供給ノズル15Aのノズルヘッド16の外周部に合計12個の傾角付ノズル孔26を配置した。傾角付ノズル孔26の直径はノズル孔17と同一の3.0mmとした。この場合、ノズル孔17及び傾角付ノズル孔26から噴出する冷却水の吐出流速は、4.6m/秒である。以下、水準6を「本発明例4」と記す。
表1に、これら6つの水準で測定された、鋼材24の表面温度が850℃の時点におけるウェアプレート間隙部の平均熱伝達率を示す。ここで平均熱伝達率は、図6に示した熱電対設置位置において局所熱伝達率を求め、ウェアプレート間隙部に対する面積平均値をとったものである。
表1に示すように、従来例1におけるウェアプレート間隙部の平均熱伝達率は、2156kcal/m2 ・hr・Kであった。これに対して、本発明例1では、ウェアプレート間隙部の平均熱伝達率は、2753kcal/m2・hr・Kであり、従来例に比べて冷却能率が約28%向上した。また、本発明例2では、熱伝達率の平均値は2235kcal/m2 ・hr・Kであり、冷却水流量及び冷却水の吐出流速が本発明例1とほぼ同じであるにも拘わらず、冷却能力は従来例よりも4%程度向上しただけであった。このことから、シャワー状の水流群を形成する場合にも、冷却能を高めるためには、冷却単位面積当たりの水流数を或る程度以上確保することが重要であることが分かった。この点に関し、冷却水供給ノズル15のノズル孔数及びノズル径を種々変化させた試験結果から、ウェアプレート間隙の面積に対して0.08本/cm2以上のシャワー状の水流群を形成して鋳片を冷却することが好適であることが分かった。
また、本発明例1で使用した冷却水供給ノズル15を用い、冷却水の流量を変化させた試験結果から、ノズル孔17から噴出する冷却水の吐出流速が2.0m/秒以上であり、且つ、前記冷却水供給ノズル1個当たりに供給される冷却水が、ウェアプレート間隙の面積に対して1000リットル/分・m2 以上、6000リットル/分・m2 以下の範囲であることが最適であることが分かった。冷却水の吐出流速が2.0m/秒未満の場合は、水流が鋳片に達するまでの間に垂下するため冷却能力が低下する。また、水量密度が1000リットル/分・m2未満であると水量そのものが少ないために冷却能が上がらず、6000リットル/分・m2 を超えるとウェアプレート間隙に冷却水が滞留し、新たに供給された冷却水が鋳片に達しにくくなるためである。
また、水量密度を高めた従来例2におけるウェアプレート間隙部の平均熱伝達率は、2847kcal/m2 ・hr・Kであった。これに対して、本発明例3では、ウェアプレート間隙部の平均熱伝達率は、3559kcal/m2 ・hr・Kであり、従来例2に比べて冷却能率が約25%向上した。また、本発明例4では、平均熱伝達率は4609kcal/m2・hr・Kであり、冷却水流量が本発明例3とほぼ同じであるにも拘わらず、冷却能力は従来例2より62%も向上した。このことから、シャワー状の水流群を形成する場合にも、冷却能を高めるためには、ウェアプレート間隙領域内の外周部及びウェアプレート側面にもシャワー状の水流を衝突させて、これらの領域の冷却能を高めることが重要であることが分かった。
また、本発明例4で使用した冷却水供給ノズル15Aを用い、冷却水の流量を変化させた試験結果から、ノズル孔17及び傾角付ノズル孔26から噴出する冷却水の吐出速度が2.0m/秒以上であり、且つ、冷却水供給ノズル1個当たりで供給される冷却水が、ウェアプレート間隙の面積に対して2000リットル/分・m2 以上、8000リットル/分・m2以下の範囲であることが最適であることが分かった。冷却水の吐出速度が2.0m/秒未満の場合には、水流が鋳片に達するまでの間に垂下するため冷却能力が低下する。また、水量密度が2000リットル/分・m2未満であると水量そのものが少ないために冷却能が上がらず、8000リットル/分・m2を超えるとウェアプレート間隙に冷却水が滞留し、新たに供給された冷却水が鋳片に達しにくくなるためである。
本発明で採用した冷却水供給ノズルの1例を示す概略図で、(A)は正面図、(B)は側面断面図である。
本発明で採用した冷却水供給ノズルの他の例を示す概略図で、(A)は正面図、(B)は側面断面図である。
本発明に係るクーリンググリッド設備を備えた連続鋳造機の概略図である。
図3におけるクーリンググリッド設備の拡大斜視図である。
冷却機能を付与させたウェアプレートの形状の1例を示す図で、(A)は正面図、(B)は側面断面図である。
本発明で採用した冷却水供給ノズルの冷却能力を比較・評価するための実験装置の概略図である。
本発明で採用した冷却水供給ノズルの冷却能力の評価試験方法を示す側面断面図である。
符号の説明
1 連続鋳造機
2 タンディッシュ
3 スライディングノズル
4 浸漬ノズル
5 鋳型
6 クーリンググリッド設備
7 鋳片支持ロール
8 搬送ロール
9 鋳片切断機
10 溶鋼
11 鋳片
12 凝固シェル
13 未凝固相
14 ウェアプレート
15 冷却水供給ノズル
16 ノズルヘッド
17 ノズル孔
18 冷却水供給配管
19 整流孔
20 溝
21 噴出孔
22 流路
23 導入管
24 鋼材
25 熱電対
26 傾角付ノズル孔