JP4879414B2 - 破砕装置および破砕装置を搭載した移動式破砕機 - Google Patents
破砕装置および破砕装置を搭載した移動式破砕機 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、破砕装置および破砕装置を搭載した移動式破砕機に係り、具体的には、分割式のケースを備えた破砕装置、およびこの破砕装置が搭載された移動式破砕機に関する。
【0002】
【背景技術】
砕石場や建物の解体現場等に搬入される移動式破砕機は、例えばクローラ式の走行部を備えていることで現場内を自走可能であるが、そのような現場までの一般公道を自走することはできないために、専らトレーラによって輸送される。
【0003】
一方、このような移動式破砕機に搭載される破砕装置としては通常、被破砕物の投入口が設けられたケースを備えている。
このケースは、例えば図20に示すインパクトクラッシャ(破砕装置)9のケース900でいえば、移動式破砕機の図示しない基台部に固定される固定ケース901と、固定ケース901にピン接合された可動ケース902とを有する分割式であり、固定ケース901側に投入口903が設けられている。
【0004】
このようなケース900では、左右に2分するように固定ケース901および可動ケース902の分割ラインS−Sが設けられ、油圧シリンダ904によって可動ケース902が接合部分のピン905を中心に回動する。そして、可動ケース902を分割ラインS−Sから離間させ、開いた状態にすれば、インパクトクラッシャ内の修理・点検等を実施することが可能である。また、可動ケース902を開いた場合、固定ケース901側には上面部901Aが存在し、可動ケース902の開閉に関係なくケース900の高さ寸法が同じに維持される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、破砕装置としては、砕石現場や解体現場での作業効率を向上させるために、大きな岩、大きなコンクリート塊、あるいはアスファルト塊でも容易に破砕できるよう、より大型のものが要求される場合がある。
しかしながら、搭載される破砕装置を大型化すると、破砕装置のケースも大型化してその高さ寸法が大きくなるため、トレーラでの輸送時に高さ制限を越えてしまう可能性がある。従って、このような場合には、破砕装置と走行部側とを解体して個別に輸送する必要があるうえ、現場での再度の組み立て作業が生じるなど、その作業に手間がかかるという問題がある。
【0006】
本発明の第1の目的は、ケースを大型化しても、輸送時の高さ制限を確実にクリアできる破砕装置および破砕装置を搭載した移動式破砕機を提供することにある。
【0007】
また、図20で示した従来のケース900によれば、可動ケース902が開いた状態では、該可動ケース902が下側のピン905を支点にして前方側(図中の右側であって、投入口903とは反対側)にはみ出すように回動するため、ケース900の前方側を広く空けておく必要があり、この空間が可動ケース902を開くとき以外ではデッドスペースになっていた。従って、デッドスペースの大きさによっては、その分だけ移動式破砕機の全長が長くなって機動性が損なわれるおそれがある。
【0008】
本発明の第2の目的は、ケースを開く際に要するスペースを小さくできる破砕装置および破砕装置を搭載した移動式破砕機を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段と作用効果】
本発明の請求項1に記載の破砕装置は、固定ケースと、この固定ケースに取り付けられた可動ケースとを有する分割式のケースを備え、前記可動ケースは、前記固定ケースの上部側に回動機構を介して上下に回動自在に取り付けられ、前記ケースは少なくとも、前記可動ケースが破砕作業可能な状態にある作業姿勢と、前記回動機構により前記可動ケースに対して下向きに動作した状態にある輸送姿勢とを含む複数の姿勢に維持可能とされ、前記固定ケースの上縁は、前記可動ケースの上縁よりも下方に位置し、前記作業姿勢および前記輸送姿勢では、前記固定ケースの上縁は、前記可動ケースの下縁の内側または外側にあって、側面視で前記上縁と前記下縁とは横方向に重なっていることを特徴とする。
【0010】
このような破砕装置においては、固定ケースの上縁が可動ケースの上縁よりも下方に位置しているので、固定ケースの上縁より高い位置に可動ケースが取り付けられることになる。このため、輸送時において、可動ケースを動かして可動ケース自身の高さ位置を低くしたり、あるいは可動ケースを固定ケース上から外す等すれば、ケースを大型化しても輸送時のケース全体の高さ寸法が小さくなり、高さ制限が確実にクリアされる。
そして、このような破砕装置においては、固定ケースと可動ケースとを接合する回動機構がケース全体の上部側に設けられているので、可動ケースの回動動作がより高い位置で行われるようになる。従って、回動機構よりも低い位置では、ケースを開く際に要するスペースがほとんど不要になり、従来ではデッドスペースであったスペースが有効に利用されるようになる。
以上により、前記第1、第2の目的を達成できる。
【0011】
また、このような破砕装置では、固定ケースおよび可動ケースのうちの一方が他方に呑み込まれるから、固定ケースから可動ケースを完全に取り外すことなく、ケースの高さ寸法が容易に小さくなる。
【0012】
さらに、このような破砕装置によれば、被破砕物の破砕を行う破砕作業時には、可動ケースが閉じた状態の作業姿勢に維持され、トレーラ等での輸送時には、可動ケースが下向きに動作した状態の輸送姿勢に維持される。このため、各状態での姿勢維持によって破砕作業途中および輸送途中での不意な姿勢変化が防止され、破砕作業および輸送が確実に行われる。
なお、可動ケースを作業姿勢や輸送姿勢の他、開いた状態のメンテナンス姿勢に維持可能に設けてもよい。
【0013】
請求項2に記載の破砕装置は、請求項1に記載の破砕装置において、前記可動ケースには、被破砕物の投入口を形成する部位と一体に軒部が設けられていることを特徴とする。
可動ケースを動作させることで、輸送時のケース全体の高さ寸法が小さくなる本発明の破砕装置によれば、破砕作業可能な状態においては、可動ケースの高さ位置を十分に高く設定し、投入口を大きく設けることができる。しかし、投入口を大きくすると、より大きな被破砕物を投入できる反面、破砕時に弾けた被破砕物がケースの内部から飛び出し易くなる。
そこで、稼働ケースにおける投入口を形成する部位に軒部を設け、弾けた被破砕物が軒部にぶつかるようにすれば、被破砕物の外部への飛散が有効に防止される。
なお、このような軒部に鎖や暖簾状の垂下部材等を吊着することで、被破砕物の飛散をより確実に防止してもよい。
【0016】
請求項3に記載の破砕装置は、請求項1または請求項2に記載の破砕装置において、前記回動機構は、前記ケース内に被破砕物を投入するための投入口とは反対側に設けられていることを特徴とする。
このような破砕装置では、回動機構が投入口とは反対側に設けられ、しかもこの回動機構が上部側に位置しているから、可動ケースを所定の角度だけ上向に回動させた場合など、回動機構が下部寄りにある場合に比して、投入口がより上方に拡がるように大きくなり、投入口への被破砕物の投入が一層容易になる。
【0017】
本発明の請求項4に記載の移動式破砕機は、走行部を備えた基台部と、動力部と、被破砕物を破砕する破砕装置とを搭載し、この破砕装置は、固定ケースと、この固定ケースに取り付けられた可動ケースとを有する分割式のケースを備え、前記可動ケースは、前記固定ケースの上部側に回動機構を介して上下に回動自在に取り付けられ、前記ケースは少なくとも、前記可動ケースが破砕作業可能な状態にある作業姿勢と、前記回動機構により前記可動ケースに対して下向きに動作した状態にある輸送姿勢とを含む複数の姿勢に維持可能とされ、前記固定ケースの上縁は、前記可動ケースの上縁よりも下方に位置し、前記作業姿勢および前記輸送姿勢では、前記固定ケースの上縁は、前記可動ケースの下縁の内側または外側にあって、側面視で前記上縁と前記下縁とは横方向に重なっていることを特徴とする。
【0018】
このような移動式破砕機においては、請求項1に記載の破砕装置が搭載されるので、前述の請求項1で説明したように、破砕装置のケースを大型化しても輸送時のケースの高さ寸法が小さくなり、移動式破砕機ごとトレーラ等で輸送する場合でも、高さ制限が確実にクリアされ、やはり、本発明の第1の目的を達成できる。
さらに、高さ制限がクリアされることにより、破砕装置などを基台部側とは別に輸送する必要がなくなるので、これらを現場で再度組み立てるといった手間が不要になる。
また、請求項1と同様な構成により、スペースの有効利用に関して、本発明の第2の目的を達成できる。
【0020】
このような移動式破砕機においては、請求項4に記載の破砕装置が搭載されるので、前述の請求項4で説明したように、破砕装置のケースを開く際に要するスペースが小さくなるから、本発明の第2目的を達成できる。
加えて、このような破砕機を搭載した場合、破砕機周りのデッドスペースが小さくなるため、その分移動式破砕機がコンパクトになり、機動性が向上する。特に、旋回性能が向上し、狭い現場でも確実に稼働できる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る移動式破砕機1の全体を示す側面図、図2は、移動式破砕機1を被破砕物の投入側から見た図、図3は、移動式破砕機1の平面図である。
【0022】
〔移動式破砕機の全体の説明〕
図1ないし図3において、移動式破砕機1は、基台部2上に作業機3および動力部4を載置した構成である。
基台部2は、作業現場内を自走するための一対のクローラ式の走行部10と、この走行部10が取り付けられ、かつ前記作業機3および動力部4が載置されたフレーム20とを備えている。
作業機3は、基台部2の略中央に搭載された破砕装置としてのインパクトクラッシャ(以下、クラッシャと称す)30と、クラッシャ30に被破砕物を供給する被破砕物供給部40と、破砕された破砕物を排出する排出ベルトコンベア50とを備えている。
動力部4は、走行部10、クラッシャ30、および排出ベルトコンベア50等の動力源であり、図示しないエンジンと、このエンジンで駆動される油圧ポンプと、油圧ポンプからの作動油をコントロールするコントロールバルブ等を備えている。動力部4の上部側には、移動式破砕機1の走行操作および旋回操作を行う走行レバー4Aや、走行用のインジケータ類が配置された上部コントロールボックス(不図示)が設けられ、動力部4の側部近傍には、作業機3を操作するための側部コントロールボックス(不図示)が設けられている。
【0023】
以下には、説明の便宜上、移動式破砕機1の排出ベルトコンベア50側を前方(図1中の右側)とし、被破砕物供給部40側を後方(図1中の左側)とし、この前後方向に直交する向き(図2中の左右方向)を横方向として、各部位の説明を行う。
【0024】
走行部10は、フレーム20の一部を形成するクローラフレーム22に設けられ、クローラフレーム22の前方側に油圧モータ11を備えている。油圧モータ11のスプロケット11Aと他端側のアイドラー12とには、当該油圧モータ11で駆動される無限軌道のクローラベルト13が巻回されている。そして、油圧モータ11は、コントロールバルブを介して動力部4の油圧ポンプからの油圧で駆動される。
【0025】
フレーム20は、一対の前記クローラフレーム22の他、これらのクローラフレーム22が取り付けられるメインフレーム21を備えている。メインフレーム21上にはさらに、被破砕物供給部40を載置するためのホッパフレーム23と、動力部4を載置するためのエンジンフレーム24とが固定されている。
【0026】
クラッシャ30は、図4、図5に示すように、被破砕物の投入口31Aを有したケース31を備え、ケース31内には、ロータ本体321および打撃板322を有したロータ32と、打撃板322先端の回転軌跡Aから隙間を空けて位置した反発板33とが配置されている。
このようなクラッシャ30では、投入口31Aから投入された被破砕物は、回転する打撃板322で打撃されたり、打撃時に飛ばされて反発板33に衝突することで破砕され、ケース31の底面側の排出口31Bから排出ベルトコンベア50上に落ちて排出される。
【0027】
被破砕物供給部40は、被破砕物が積み込まれるホッパ41と、ホッパ41の下方に若干の隙間を持って配置されたグリズリ(篩い)フィーダ42とを備えている。
ホッパ41は、四方の支持部411を介してフレーム20のホッパフレーム23上に支持され、上方に向けて大きく拡開している。
フィーダ42は、動力部4からの油圧で駆動される振動装置421有した振動式であって、複数のコイルバネ422を介してホッパフレーム23上に支持され、ホッパ41と接触しないよう前述の隙間内で振動し、被破砕物をクラッシャ30側に送る。この際、ホッパ41およびフィーダ42の端部は、図4中に二点鎖線で示すように、クラッシャ30の投入口31Aに呑み込まれており、被破砕物がクラッシャ30内に確実に投入される。
また、フィーダ42は、被破砕物をクラッシャ30に供給する機能の他、破砕不要な小さな投入物を櫛状のグリズリ部423(図3)で選別し、下方に篩い落とす機能を有している。篩い落とされた投入物は、図1ないし図3に示す別のベルトコンベア43上に落ちて排出されるか、図示しないダンパーを切り換えることで、排出ベルトコンベア50上に落ち、破砕物と一緒に排出される。
【0028】
排出ベルトコンベア50は、その移送方向の基端側(図1中の左側)がフレーム20の下側に位置し、クラッシャ30の排出口31Bから排出された破砕物や、必要に応じて排出されるグリズリ部423からの排出物(前記投入物に同じ)を先端側(図1中の右側)に移送する。また、排出ベルトコンベア50は、3段折り曲げ構造であり、先端側での排出高さが十分に確保され、2次ベルトコンベアなしでも作業が確実に行える。この排出ベルトコンベア50も、動力部4からの油圧で駆動される。
排出ベルトコンベア50の中程には、フレーム20に支持されるようにして磁選機51が配置され、コンクリート塊の破砕時に出る鉄筋等の金属材を永久磁石で磁着し、付属のベルトコンベアで排出する。
【0029】
〔クラッシャの説明〕
以下には、図4、図5を参照し、クラッシャ30について詳説する。
先ず、クラッシャ30のロータ32は、横方向の両端側がケース31外部の図示しない軸受に支持され、一端側にプーリ34を備えている。また、ケース31の外部には、二点鎖線で示した油圧モータ35が配置され、この油圧モータ35のプーリ36および前記プーリ34にはVベルト37が巻回されている。つまり、ロータ32は、Vベルト37を介して油圧モータ35で回転駆動される。そして、この油圧モータ35も、コントロールバルブを介して動力部4の油圧ポンプからの油圧で駆動される。
【0030】
ロータ32の打撃板322は、横方向(ロータ本体321の軸線方向)に沿ってケース31の横幅よりもやや狭い範囲にわたって連続して設けられ、ロータ本体321の周方向に等間隔で複数枚(本実施形態では4枚)突設されている。また、打撃板322は着脱自在であり、その摩耗状態に応じて反転させて用いられたり、新たな打撃板と交換される。
【0031】
次に、図5において、クラッシャ30の反発板33は、投入口31A(図4)側からロータ32の回転方向に沿って順に第1反発板331、第2反発板332、および第3反発板333とされている。
【0032】
第1反発板331は他よりも大きく、投入当初の大きな被破砕物を確実に受け止めることが可能である。第1反発板331の裏面側には、一対の係止用突部331Aが設けられており、この係止用突部331Aは、第1アーム334の下部側の係止部334A間に係止されるとともに、一方の係止部334Aに設けられたネジ式の固定具334Bと、横方向の端部側に設けられた止め具334Cで保持されている。このような第1反発板331は、横方向に複数枚密着して並設されており、固定具334Bおよび止め具334Cを解除することで、それぞれが横方向に挿抜可能とされ、その摩耗状態に応じて反転させて用いられたり、新たな反発板と交換される。
【0033】
第2、第3反発板332,333は同一形状とされ、裏面側の係止用突部332A,333Aを介して、第2アーム335の下部側に設けられた係止部335A間にそれぞれ、固定具335Bおよび止め具335Cで保持される。これらの第2、第3反発板332,333もやはり、第2アーム335に対して挿抜可能とされ、摩耗状態に応じて交換される。ただし、さほど大きくない第2、第3反発板332,333は、破砕作業による摩耗が全体的に均一に生じるため、反転して用いられることはないが、第1反発板331と同様に、反転可能に構成されていてもよい。
【0034】
第1、第2アーム334,335はそれぞれ、横方向に間隔を空けて一対並設され、それぞれ連結プレート334D,335Dおよび連結バー334E、335Eで一体に連結されている。また、各第2アーム335は、一対の第1アーム334の内側に配置されている。第1、第2アーム334,335の上部側は、ケース31内上方に回動軸38で共に軸支されている。これに対して、第1、第2アーム334,335の下部側は、連結バー334E、335Eに取り付けられた伸縮自在な第1、第2隙間調整装置60(61,62)によって吊着されている。
【0035】
このような第1、第2隙間調整装置61,62は、上端側の駆動部63の油圧モータ64を駆動することで伸縮する構造であり、例えば、ナット状部材およびボルト状部材を有したネジ式等が採用される。第1、第2隙間調整装置61,62を伸縮させることにより、第1、第2アーム334,335が回動軸38を中心に回動し、打撃板322先端の回転軌跡Aおよび第1〜第3反発板331〜333間の各隙間C1,C2,C3の大きさを調整することが可能である。
【0036】
なお、第2隙間調整装置62では、第2、第3反発板332,333のうち、第3反発板333での隙間C3を調整する。これは、隙間C3を調整することが、破砕物の最終的な粒度を決定するうえで重要だからである。このため、同じ第2アーム335に設けられた第2反発板332での隙間C2の調整は、第2、第3反発板332,333の互いの位置関係から、隙間C3を調整することで自ずと完了する。
【0037】
また、第1アーム334には、第1隙間調整装置61の伸び方向への回動量を規制するために、屈曲式の規制リンク336が設けられている。この規制リンク336によれば、第1隙間調整装置61の過大な伸びが防止され、第1アーム334の回動量が規制される。一方、第2アーム335では、第1アーム334との当接により、その回動量が規制される。
さらに、第1アーム334において、第1反発板331の上方には、やはり挿抜自在とされたライナ337が取り付けられ、被破砕物等から第1アーム334を保護している。
【0038】
〔クラッシャのケースの詳細な説明〕
続いて、図4ないし図6を参照し、クラッシャ30のケース31について詳説する。
図6において、ケース31は、フレーム20(図1)に固定される固定ケース70と、固定ケース70の上部側に取り付けられた可動ケース80とを有する分割式であり、固定ケース70内にロータ32が配置され、図5に示すように、可動ケース80に第1〜第3反発板331〜333、第1、第2アーム334,335、および第1、第2隙間調整装置61,62が取り付けられている。
【0039】
固定ケース70は、投入口31Aの下方側に設けられた正面部71と、横方向の両側に設けられた固定ケース側側面部72と、正面部71に対して対向した位置に設けられた背面部73とを有する箱状とされ、上側が全て開口し、従来のような上面部901A(図20)が存在しない。すなわち、図4に示す状態では、固定ケース70のいずれの部位も、可動ケース80よりも低い位置にある。
【0040】
各固定ケース側側面部72のそれぞれには、二つの点検扉720,721,722,723が設けられており、これらの点検扉720〜723を開けることで、前述の隙間C1〜C3の大きさを確認したり、打撃板322や第1〜第3反発板331〜333の摩耗状態を点検したり、さらには、ケース31の底側の排出口31Bでの破砕物の詰まり具合などを点検することが可能である。ただし、点検扉の大きさや数等は、その実施にあたって任意に決められてよい。
【0041】
また、図4に示す固定ケース側側面部72において、その上縁724(点線で図示)は、最も高い位置にある第1水平部724Aと、投入口31Aから離間するに従って下方に位置するよになる傾斜部724Bと、最も低い位置にある第2水平部724Cとを含む段差状に形成されている。このような上縁724は、可動ケース80が固定ケース70の上部側の全域を覆うように取り付けられることから、図4に示す状態では、可動ケース80の上縁(稜線部分)820よりも下方に位置している。
【0042】
上縁724の背面部73側の上部、すなわちケース31の投入口31Aとは反対側であって、ケース31全体の中でも上部側の位置には、可動ケース80を回動自在に軸支する回動機構39が設けられている。
この回動機構39は、図7にも示すように、固定ケース70に設けられた固定ケース側筒状部391と、可動ケース80側に設けられて、固定ケース側筒状部391の外側に位置する可動ケース側筒状部392と、これらの筒状部391,392に挿通されるケース用支持ピン393とを有して構成され、このケース用支持ピン393のフランジ部393Aが可動ケース側筒状部392にボルト393Bで固定されている。このような回動機構39により、可動ケース80はケース用支持ピン393を回動軸として回動する。
【0043】
この際、固定ケース70と可動ケース80とは、回動機構39より少し投入口31A側において、油圧シリンダ394で連結されている。この油圧シリンダ394は、可動ケース80の回動時に作動し、大重量となる可動ケース80の回動動作をアシストする。このような油圧シリンダ394は、上側がシリンダで、下側がロッドとなるように配置され、シリンダのロッド側の端部に砂塵等が堆積するのを防止し、パッキン等の耐久性の向上が図られている。
【0044】
図8(A)、(B)には、油圧シリンダ394と可動ケース80との連結部分の構造が示されている。この図に示すように、可動ケース80の下縁821には、下方に突出した二枚の連結片821Aが設けられ、これらの連結片821A間に油圧シリンダ394の取付環394Aが挿入され、これらをシリンダ用ピン395が貫通している。シリンダ用ピン395は、そのフランジ部395Aを貫通する一本のボルト395Bで連結片821Aに固定されている。
【0045】
なお、図7、図8(B)において、固定ケース70の内面には、この内面を被破砕物の衝突から保護するための金属製のライナ311が張設されている。このようなライナ311は、固定ケース側側面部72を貫通する外側からのボルト等で固定されている。ただし、固定ケース70の内面であっても、第1〜第3反発板331〜331よりも前方(裏側)の部分には、被破砕物が回り込んで来る可能性が少ないため、そのようなライナ311は設けられていない。勿論、可動ケース80の内面においても、被破砕物が衝突する可能性のある部分には、ライナ311が同様に張設されている。
【0046】
以上のような固定ケース70の両側の固定ケース側側面部72において、その上縁724の直ぐ下方には、図6、図7に示すように、当該上縁724に沿って外側に突出した固定ケース側取付部74が設けられている。この固定ケース側取付部74は、別部材の溶着等によって形成され、後述の中間取付具90を取り付ける部位として用いられるとともに、薄板状の固定ケース側側面部72を補強し、また、中間取付具90の固定に用いられるボルト93のネジ部を十分に刻設するために、固定ケース側側面部72の板厚を補っている。
【0047】
一方、可動ケース80は、図4、図6に示すように、固定ケース70の上側開口を覆うように設けられた上面部81と、上面部81の横方向の両側に鉛直に設けられた可動ケース側側面部82とを有する蓋状であり、可動ケース80自身の後方側の端縁で投入口31Aの一部を形成している。
【0048】
可動ケース80の投入口31Aを形成する部分は、従来のケース900(図20)に比して被破砕物供給部40側に延出して設けられており、この延出した部分が可動ケース80と一体の軒部83(図4)になっている。
本実施形態のケース31は、従来のケース900に比して大型であり、高さ寸法も大きく、投入口31Aの開口面積も大きい。このため、破砕作業時には、投入口31Aに対して大きな被破砕物を投入できる反面、ケース31内で弾かれた被破砕物が投入口31Aから飛び出し易くなる。従って、フィーダ42側に延びた軒部83を設けることにより、被破砕物がこの軒部83に当たり、飛び出しを有効に防止することが可能である。
さらに、この軒部83には、図4のみに図示するが、投入口31Aを塞ぐように鉄製の鎖831およびゴム製で暖簾状の垂下部材832が吊着され、ケース31内からの被破砕物の飛散をより確実に防止している。
【0049】
このような可動ケース80の上面部81は、投入口31A側に向かって緩やかに拡開しており、より大きな投入口31Aを実現している。また、図5に示すように、上面部81の投入口31Aとは反対側の位置には、第1、第2隙間調整装置61,62が挿通される一対の挿通孔81Aが穿設されており、これらの挿通孔81A周りに、第1、第2隙間調整装置61,62の各駆動部63が取り付けられている。
【0050】
可動ケース側側面部82は、固定ケース70の固定ケース側側面部72よりも外側に位置し、可動ケース側側面部82の下縁821部分が、固定ケース側側面部72の上側である上縁724部分を呑み込んで設けられている。つまり、本実施形態のケース31では、上縁724部分および下縁821部分が横方向に重なっており、この重なり部分に沿って、固定ケース70および可動ケース80の分割ラインS−Sが設けられている。
【0051】
可動ケース側側面部82の下縁821部分には、図9にも拡大して示すように、当該下縁821に沿った水平な可動ケース側取付部84が設けられている。可動ケース側取付部84の適宜な箇所には、横方向の外側に延出した延出部841が設けられ、この延出部841には、長孔状の切欠部842が穿設されている。
【0052】
〔可動ケースの取付構造、回動動作、および姿勢の説明〕
クラッシャ30のケース31において、可動ケース80は、固定ケース70に対して中間取付具90を介して取り付けられている。
中間取付具90は、図4、図6に示すように、固定ケース側側面部72の上縁724に沿って屈曲した連続部材であり、かつ図10、図11に示すように、鉛直部91および水平部92を有した断面T字形状である。
また、図10、図11において、中間取付具90は、固定ケース側側面部72の固定ケース側取付部74に対し、鉛直部91を貫通するボルト93で固定され、水平部92の一端側が固定ケース側取付部74の上面で形成される受け部741に載置されている。
【0053】
ここで、可動ケース側取付部84の内縁は、固定ケース側取付部74の外縁よりも外側に位置しており、中間取付具90の水平部92を受け部741から外すと、可動ケース80全体が下方に沈み込み、固定ケース70の上部側をより呑み込むことが可能である。
【0054】
このような中間取付具90の水平部92において、可動ケース側取付部84の切欠部842(図9)に対応した位置には、回動自在なアイボルト94が取り付けられている。アイボルト94の環状部941は、水平部92の下面に設けられた二枚の支持片921間に配置され、この環状部941には、支持片921間に支持された軸部材922が挿通され、よってアイボルト94全体が軸部材922を中心に回動可能である。そして、アイボルト94を回動させ、ネジ部942を上向きにした状態では、このネジ部942が水平部92の切欠部923に入り込み、水平部92上から鉛直に突出する。
【0055】
この水平部92の上面には、可動ケース80の可動ケース側取付部84が載置される。可動ケース側取付部84が載置された状態では、アイボルト94のネジ部942が可動ケース側取付部84の切欠部842にも入り込み、このネジ部942に螺合したナット943により、可動ケース側取付部84と中間取付具90とが接合され、可動ケース80全体が中間取付具90上に保持される。
【0056】
そして、可動ケース80が中間取付具90で保持された状態、すなわち、図4に示す状態は、可動ケース80の破砕作業時の姿勢であり、この作業姿勢時において、被破砕物が投入口31Aから投入され、破砕作業を実施する。従って、可動ケース80は通常、この作業姿勢に維持されることが多い。
【0057】
次に、図12、図13に基づき、可動ケース80を上方に開ける動作について説明する。
可動ケース80を開けるには先ず、図12に示すように、中間取付具90のアイボルト94に螺合されたナット943をゆるめ、ネジ部942が下方を向くようにアイボルト94を回動させる。このことにより、ネジ部942を可動ケース80側の切欠部842から外し、可動ケース80と中間取付具90との接合状態を解除する。この後、油圧シリンダ394のアシストを伴って、可動ケース80を上方に開ける。
【0058】
図13には、可動ケース80を上方に開けた状態が示されている。この状態では、投入口31Aも2分されるとともに、固定ケース70の上縁724の全域が露出する。また、この状態では、第1〜第3反発板331〜333が完全に露出し、これら第1〜第3反発板331〜333の横方向からの挿抜が、固定ケース70によって遮られことなく確実に行え、それらの反転作業や交換作業が容易に行える。
すなわち、図13に示すように、可動ケース80が開けられた状態は、可動ケース80のメンテナンス姿勢である。
【0059】
また、このメンテナンス姿勢では、可動ケース80が上部側にある回動機構39を中心に回動しているため、可動ケース80を最大に開いた場合でも、固定ケース70の前方には可動ケース80が大きくはみ出さず、この固定ケース70の背面部73に動力部4を近づけて配置することが可能である。
【0060】
さらに、可動ケース80がメンテナンス姿勢にあるとき、回動機構39近傍では、固定ケース70と可動ケース80との重なり部分に、これらを貫通するロックピン396が挿入され、可動ケース80が不意に閉まるのを機械的に防止している。
【0061】
以下に、図14、図15に基づき、可動ケース80を下方に沈み込ませる動作について説明する。
可動ケース80を下方に沈み込ませるむ動作は先ず、図14に示すように、中間取付具90のボルト93を外すとともに、アイボルト94に螺合されたナット943をゆるめ、中間取付具90を固定ケース側取付部74から離間させるよう横方向にスライドさせ、中間取付具90の水平部92を固定ケース側取付部74の受け部741から外す。
【0062】
この際、中間取付具90のスライドは、油圧シリンダ394を動作させて可動ケース80を中間取付具90ごと若干浮かし、可動ケース80の重量が中間取付具90にかからない状態で行われる。また、このときの中間取付具90のスライド量は、アイボルト94のネジ部942が可動ケース側取付部84の切欠部842から外れない程度である。中間取付具90のスライドの後には、ナット943を軽く締め、中間取付具90を可動ケース側取付部84から脱落しない程度に取り付けておく。
【0063】
この後、図中の二点鎖線で示すように、可動ケース80の投入口31A側を、油圧シリンダ394のアシストを伴って、ゆっくりと下方に沈み込ませる。
ここで、固定ケース側取付部74と可動ケース側取付部84は、前述したように、上下方向に互いに干渉しない位置に設けられているから、可動ケース80を沈み込ませた場合でも、可動ケース側取付部84が固定ケース側取付部74に接触しないようになっている。
【0064】
図15には、可動ケース80を下方に沈み込ませた状態が示されている。この状態では、固定ケース70の固定ケース側側面部72の上側が可動ケース80内に大きく呑み込まれ、可動ケース80の上縁820が固定ケース70の上縁724と略平行になる。このため、ケース31全体の高さは、前述した作業姿勢に比較して格段に低くなる。
すなわち、図15に示すように、可動ケース80が沈み込んだ状態は、輸送時の高さ制限をクリアするための姿勢であり、可動ケース80の輸送姿勢である。
【0065】
また、可動ケース80が輸送姿勢にあるとき、可動ケース80の可動ケース側取付部84は、固定ケース側側面部72に設けられた当接部725に当接され、可動ケース80の重量をこの当接部725で受けることで、輸送姿勢が良好に維持される。そして、ホッパ41およびフィーダ42の端部は、投入口31A内に呑み込まれているが、十分に低い位置にあるため、可動ケース80が沈み込んで投入口31Aが狭くなっても、可動ケース80と接触することはない。
【0066】
ところで、可動ケース80は、作業姿勢、メンテナンス姿勢、および輸送姿勢の他、ライナ交換姿勢がある。以下には、このライナ交換姿勢について説明する。
図16において、可動ケース80は、第1〜第3反発板331〜333などと一体に回動する回動側可動ケース801と、投入口31A側の投入口側可動ケース802とに分割可能であり(図6参照)、投入口側可動ケース802が固定ケース70上に取り付けられたまま、分割ラインS′−S′を境にして回動側可動ケース801が開く。つまり、回動側可動ケース801が開いた状態では、この回動側可動ケース801からは、固定ケース70側のアイボルト94は外れているが、投入口側可動ケース802と固定ケース70とは、他のアイボルト94によって取付状態が維持される。
【0067】
回動側可動ケース801と投入口側可動ケース802との接合構造は、従来のフランジ同士を当接させる構造と基本的に同じであり、回動側可動ケース801側には、可動ケース側取付部84の延長である回動側フランジ部803が設けられ、投入口側可動ケース802には、アイボルト805が取り付けられた投入口側フランジ部804が設けられている。各フランジ部803,804同士の接合は、アイボルト805を回動させて回動側フランジ部803に係合させ、このアイボルトに螺合したナット806を締め付けることで行われる。
【0068】
このような可動ケース80のライナ交換姿勢では、第1反発板331の上方に設けられたライナ337が横方向にも露出し、ライナ337を可動ケース側側面部82側から容易に挿抜して交換することが可能である。ただし、このようなライナ交換姿勢で、第1〜第3反発板331〜333の点検作業や交換作業を行ってもよい。
【0069】
〔移動式破砕機の輸送についての説明〕
図17には、移動式破砕機1の輸送にあたって、この移動式破砕機1をトレーラTの荷台上に積んだ状態が示されている。
このような状態では、クラッシャ30の可動ケース80は、輸送時の高さ制限をクリアするために輸送姿勢とされ、可動ケース80が固定ケース70の上側を呑み込むように沈み込んでいる。
【0070】
また、図1にも示した回転灯25など、輸送時の高さ制限を越えるもので、かつ構造的に簡易なものは、適宜下方にずらしたり等して高さ制限をクリアさせている。そして、フィーダ42の下方のベルトコンベア43は、折曲されて上方に跳ね上げられ、ベルトコンベア43を外すことなく、幅制限をもクリアさせている。
【0071】
さらに、図18、図19には、輸送途中に桁下寸法の低い陸橋の下などを通過する必要があるなど、より厳しい高さ制限をクリアするための輸送形態について示されている。
すなわち、図18に示す移動式破砕機1では、クラッシャ30から可動ケース80が丸ごと取り外されており、可動ケース80を図19に示す別のトレーラT′で輸送する。可動ケース80を固定ケース70から外すには、図6、図7に示したケース用支持ピン393を取り外せばよく、容易に行える。
【0072】
この他、移動式破砕機1からは、ホッパ41、クラッシャ30周りのハンドレール(手摺)26,27、および排出ベルトコンベア50などが外され、これらを同様に、別のトレーラで輸送する。ただし、図19では、排出ベルトコンベア50の図示を省略してある。また、走行レバー4Aは可倒式とされ、倒し込まれた状態にされる。
このように、移動式破砕機1の一部を取り外すことは、輸送時の重量制限に対処する場合にも有効である。
【0073】
〔実施形態の効果〕
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)移動式破砕機1に搭載されたクラッシャ30では、ケース31が固定ケース70および可動ケース80を有した分割式とされているが、固定ケース70の上縁724が可動ケース80の上縁820よりも下方に位置するように分割ラインS−Sが設定され、固定ケース70の上側開口全体を覆うように可動ケース80が取り付けられているので、移動式破砕機1をトレーラ輸送する場合には、最も高い位置に配置される可動ケース80の投入口31A側を固定ケース70に対して下方に沈み込ませればよく、これによりケース31全体の高さ寸法を小さくでき、輸送時の高さ制限を確実にクリアできる。
【0074】
(2)そして、大きなケース31のクラッシャ30を搭載しても、輸送時の高さ制限上何ら問題がないから、クラッシャ30の大型化を確実に促進でき、大型のクラッシャ30を用いて作業効率を大幅に向上させることができる。
また、クラッシャ30(ケース31)の大型化に伴って投入口31Aも大きな開口面積にでき、被破砕物を容易に投入できるうえ、投入口31Aで被破砕物が詰まるのを防止して確実に投入できる。
【0075】
(3)ケース31の可動ケース80は、固定ケース70の上部を呑み込む構造になっているので、可動ケース80を回動機構39によって回動させ、その投入口31A側を下方に沈めればよく、可動ケース80を固定ケース70から完全に取り外さなくとも、ケース31の高さ寸法を容易に小さくできる。
【0076】
(4)ケース31では、回動機構39のケース用支持ピン393を外した後、固定ケース70から可動ケース80を丸ごと外し、さらに、フレーム20からホッパ41および排出ベルトコンベア50などを外すことにより、移動式破砕機1側を一層低くでき、一段と厳しい高さ制限をクリアできる。
そして、移動式破砕機1側から外された可動ケース80やホッパ41等は、高さ寸法がさほど大きくないために、輸送時の高さ制限を気にすることなく、これらを別なトレーラで支障なく輸送できる。
【0077】
(5)クラッシャ30で破砕作業を行う場合には、可動ケース80を作業姿勢にし、中間取付具90を介して固定ケース70と接合させればよく、破砕作業時に不意に下方に沈み込んだりする心配がない。
また、移動式破砕機1の輸送時には、沈み込んだ可動ケース80が当接部725で確実に支持されるため、必要以上に下がり過ぎる心配がなく、輸送姿勢を良好に維持できる。
可動ケース80のメンテナンス姿勢においては、開けられた可動ケース80がロックピン396によって確実にロックされるため、やはりメンテナンス姿勢を良好に維持でき、第1〜第3反発板331〜333の点検や交換作業を負担なく実施できる。このことは、可動ケース80の回動側可動ケース801が開けられるライナ交換姿勢においても、同様である。
以上、可動ケース80を各種作業に応じて適切な姿勢に維持でき、クラッシャ30としての使い勝手を向上させることができる。
【0078】
(6)可動ケース80には、フィーダ42側に延出した軒部83が一体に設けられているため、ケース31内で弾けた被破砕物が軒部83にぶつるようになり、投入口31Aから飛び出すのを防止できる。
また、このような軒部83を設けることにより、ケース31内からの被破砕物の飛び出しを気にしなくてよいから、投入口31Aを大きく設計でき、この点からも被破砕物を容易かつ確実に投入できる。
【0079】
(7)しかも、この軒部83には、鎖831および垂下部材832が吊着されるため、被破砕物の飛散をより確実に防止でき、投入された被破砕物を確実に破砕できる。
【0080】
(8)可動ケース80を回動させるための回動機構39は、ケース31全体の上部側に設けられているので、可動ケース80の回動動作をより高い位置で行える。従って、回動機構39よりも低い位置である固定ケース70の前方側では、ケース31を開く際に要するスペースをほとんど不要にでき、その分、動力部4をクラッシャ30側に寄せて配置できるなど、デッドスペースをなくしてスペースを有効に利用できる。
【0081】
(9)動力部4をクラッシャ30に寄せて配置できることにより、移動式破砕機の全長(前後方向の長さ)を短くできるから、移動式破砕機1全体をコンパクトにできる。このため、移動式破砕機1の機動性、特に、旋回性能を向上させることができ、狭い現場でも確実に稼働させることができる。
【0082】
(10)回動機構39は、投入口31Aとは反対側に設けられ、しかも上部側に位置しているため、可動ケース80を所定の角度だけ上向に回動させた場合など、回動機構39が下部寄りにある場合に比して、投入口31Aをより上方に拡がるように大きくでき、投入口31Aへの被破砕物の投入を一層容易にできるうえ、詰まり等もより確実に防止できる。
【0083】
(11)回動機構39が上部側にあると、可動ケース80を回動させた際には、投入口31A側がより鉛直に近い軌跡を描くようになるため、所定量だけ上下動させる際には、その軌跡をより短くでき、特に、作業姿勢から投入口31Aのを沈み込ませて輸送姿勢にしたり、輸送姿勢から作業姿勢に戻すのを迅速に行える。
【0084】
(12)投入口31Aはケース31の上部側に設けられるのが一般的であるが、回動機構39をも投入口31A側に設けると、可動ケース80を開けた時に、ホッパ41やフィーダ42と可動ケース80とが干渉するおそれがあるため、ホッパ41やフィーダ42に何らかの退避手段を設ける必要があり、退避させるための退避スペースをも確保せざるを得ない。従って、その退避スペースが退避時以外には使用されないデッドスペースになり、移動式破砕機1の全長が大きくなって機動性が阻害される心配がある。これに対して、本実施形態では、回動機構39が投入口31Aとは反対側に設けられているので、そのようなホッパ41やフィーダ42を退避させる必要がなく、その分の退避スペースをも不要にでき、移動式破砕機1全体の小型化をより促進できる。
【0085】
(13)可動ケース80を輸送姿勢にするにあたり、固定ケース側取付部74と可動ケース側取付部84とは、可動ケース80を動作させても干渉しない位置にあるため、固定ケース側取付部74から中間取付具90を外すことで、固定ケース70と可動ケース80との固定状態を解除すれば、可動ケース80を固定ケース70の下方側に確実に沈み込ませることができる。
【0086】
(14)この際、固定ケース70と可動ケース80とは中間取付具90を介して固定されているため、この中間取付具90の分、固定ケース側側面部72および可動ケース側側面部82間の隙間を大きくでき、可動ケース80を沈み込ませる時など、各取付部74,84の干渉をより確実に防止でき、沈み込み動作をスムーズに行える。
【0087】
(15)クラッシャ30においては、固定ケース側側面部72および可動ケース側側面部82間の隙間が大きく、各取付部74,84同士が離れていても、可動ケース側取付部84と中間取付具90とを密着させ、また、固定ケース側取付部74と中間取付具90とを密着させることにより、これらの固定ケース70および可動ケース80同士を中間取付具90を介して隙間なく固定することができ、防塵性を向上させることができる。
【0088】
(16)さらに、固定ケース70と可動ケース80との間には、中間取付具90が介装されているだけであり、固定ケース70に対する可動ケース80の保持部分の構造を簡素化できるから、ケース31が必要以上に大型化せず、その分、輸送時のトレーラ等の荷台スペースを有効に利用できる。
【0089】
(17)中間取付具90の水平部92は、固定ケース側取付部74の受け部741で支持されているため、固定ケース側取付部74で中間取付具90ひいては大重量の可動ケース80を支持できる。従って、可動ケース80による大きな荷重は、中間取付具90を固定するためのボルト93には直に作用せず、ボルト93を小さくでき、その取付作業および取外作業を容易にできる。
【0090】
(18)また、可動ケース側取付部84と中間取付具90とにおいても、互いを固定できる程度のアイボルト94およびナット943を採用すればよいから、やはり可動ケース80の大きな荷重を考慮した大きな固定用取付具を不要にでき、その取付作業および取外作業を容易にできる。
【0091】
(19)中間取付具90を固定ケース70から外す場合には、この中間取付具90を可動ケース側取付部84の切欠部842に沿ってスライドさせ、よって固定ケース側取付部74から離間させればよく、反対に、中間取付具90を固定ケース70に取り付ける場合には、中間取付具90を離間した状態からスライドさせて固定ケース側取付部74に近接させればよく、固定ケース70に対する中間取付具90の着脱を容易にできる。
【0092】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
例えば、前記実施形態では、可動ケース80の投入口31A側には、軒部83が一体に設けられていたが、このような軒部83がない場合でも、請求項4の発明を除く他の発明に含まれる。しかしながら、このような軒部83は、可動ケース80が作業姿勢にある時は、最も高い位置に突出することになるが、可動ケース80を輸送姿勢にすることで下方に沈み込むため、高さ制限上は何ら問題にならない。従って、前述の(6)の効果を得ることができることを考慮すると、軒部83を設けることが望ましい。
【0093】
前記実施形態では、可動ケース80として、作業姿勢、メンテナンス姿勢、輸送姿勢、およびライナ交換姿勢の姿勢をとることができたが、このうちのメンテナンス姿勢およびライナ交換姿勢は、ケース31の内部構造、具体的には反発板33やアーム334,335の数、形状、配置位置、さらには破砕装置の種類等を勘案し、適宜に省略可能である。
【0094】
前記実施形態では、可動ケース80が固定ケース70の上部側を呑み込む構造であったが、本発明はこれに限定されず、例えば、可動ケース80の下部側が固定ケース70の内部に呑み込まれる構造であってもよく、いずれのケースが呑み込まれるかは、その実施にあたって任意に決められてよい。
【0095】
前記実施形態では、可動ケース80を回動させるための回動機構39が、投入口31Aとは反対側に設けられていたが、このような回動機構39を投入口31A側に設けた場合でも、請求項3の発明を除く他の発明に含まれる。ただし、回動機構39を投入口31A側に設けると、前述の(12)の効果が得られないため、やはり投入口31Aとは反対側に設けることが望ましい。
【0098】
さらに、図20のように、ケース900を左右に2分するように分割ラインS−Sが設けられている場合でも、その回動機構がケース900全体の上部側に設けられていれば、請求項5の発明に含まれる。
【0099】
前記実施形態の移動式破砕機1は、クローラ式の走行部10を備えた自走式であったが、クローラ式に限らず車輪式であってもよく、また、自走式に限らず、牽引式であってもよい。要するに、移動可能に構成されていれば、本発明の移動式破砕機に含まれる。
【0100】
本発明の破砕装置としては、前記実施形態で説明したインパクトクラッシャ30に限らず、例えば、ジョークラッシャ、シェアクラッシャ、コーンクラッシャ、ロールクラッシャ等、任意のクラッシャであってよい。
【0101】
そして、本発明の破砕装置は、移動式破砕機1に搭載されるものに限定されず、例えば、専用の破砕場に置かれた定置式であってもよい。このような場合でも、何らかの理由によって破砕装置の輸送が必要になった場合には、可動ケース80を輸送姿勢にすることで、輸送時の高さ制限を確実にクリアできる。
【0102】
その他、フレーム20、被破砕物供給部40、排出ベルトコンベア50等の構成は勿論、ケース31の固定ケース側取付部74、可動ケース側取付部84、中間取付具90の具体的な形状等も、本発明の目的を達成できる範囲で任意に変更可能であり、前記実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態に係る破砕装置を搭載した移動式破砕機を示す側面図である。
【図2】前記移動式破砕機を被破砕物の投入側から見た図である。
【図3】前記移動式破砕機を示す平面図である。
【図4】前記破砕装置のケースを構成する可動ケースが作業姿勢にある状態を示す側面図である。
【図5】前記破砕装置の内部構造の一部を示す断面図である。
【図6】前記破砕装置を示す分解斜視図である。
【図7】図4のVII−VII線断面図であり、前記ケースの要部を示す断面図である。
【図8】前記ケースの別の要部を示す側面図(A)および断面図(B)である。
【図9】前記可動ケースの要部を示す斜視図である。
【図10】前記ケースに用いられる中間取付具を示す斜視図である。
【図11】前記固定ケースおよび可動ケースの保持部分を示す断面図である。
【図12】前記可動ケースを開ける動作を説明するための断面図である。
【図13】 前記可動ケースがメンテナンス姿勢にある状態を示す側面図である。
【図14】前記可動ケースを沈み込ませる動作を説明するための断面図である。
【図15】 前記可動ケースが輸送姿勢にある状態を示す側面図である。
【図16】前記可動ケースがライナ交換姿勢にある状態を示す側面図である。
【図17】前記移動式破砕機を分解せずに輸送する場合を示す図である。
【図18】前記移動式破砕機を一部分解して輸送する場合を示す図である。
【図19】前記移動式破砕機から分解した部位の輸送を説明するための図である。
【図20】従来の破砕装置のケースを示す側面図である。
【符号の説明】
1…移動式破砕機、2…基台部、4…動力部、10…走行部、30…破砕装置であるインパクトクラッシャ、31…ケース、31A…投入口、39…回動機構、70…固定ケース、80…可動ケース、83…軒部、724,820…上縁。
Claims (4)
- 破砕装置において、
固定ケース(70)と、
この固定ケース(70)に取り付けられた可動ケース(80)と
を有する分割式のケース(31)を備え、
前記可動ケース(80)は、前記固定ケース(70)の上部側に回動機構(39)を介して上下に回動自在に取り付けられ、
前記ケース(31)は少なくとも、前記可動ケース(80)が破砕作業可能な状態にある作業姿勢と、前記回動機構(39)により前記可動ケース(80)に対して下向きに動作した状態にある輸送姿勢とを含む複数の姿勢に維持可能とされ、
前記固定ケース(70)の上縁(724)は、前記可動ケース(80)の上縁(820)よりも下方に位置し、
前記作業姿勢および前記輸送姿勢では、前記固定ケース(70)の上縁(724)は、前記可動ケース(80)の下縁(821)の内側または外側にあって、側面視で前記上縁(724)と前記下縁(824)とは横方向に重なっている
ことを特徴とする破砕装置(30)。 - 請求項1に記載の破砕装置(30)において、
前記可動ケース(80)には、被破砕物の投入口(31A)を形成する部位と一体に軒部(83)が設けられている
ことを特徴とする破砕装置(30)。 - 請求項1または請求項2に記載の破砕装置(30)において、
前記回動機構(39)は、前記ケース(31)内に被破砕物を投入するための投入口(31A)とは反対側に設けられている
ことを特徴とする破砕装置(30)。 - 移動式破砕機において、
走行部(10)を備えた基台部(2)と、
動力部(4)と、
被破砕物を破砕する破砕装置(30)とを搭載し、
前記破砕装置(30)は、固定ケース(70)と、この固定ケース(70)に取り付けられた可動ケース(80)とを有する分割式のケース(31)を備え、
前記可動ケース(80)は、前記固定ケース(70)の上部側に回動機構(39)を介して上下に回動自在に取り付けられ、
前記ケース(31)は少なくとも、前記可動ケース(80)が破砕作業可能な状態にある作業姿勢と、前記回動機構(39)により前記可動ケース(80)に対して下向きに動作した状態にある輸送姿勢とを含む複数の姿勢に維持可能とされ、
前記固定ケース(70)の上縁(724)は、前記可動ケース(80)の上縁(820)よりも下方に位置し、
前記作業姿勢および前記輸送姿勢では、前記固定ケース(70)の上縁(724)は、前記可動ケース(80)の下縁(821)の内側または外側にあって、側面視で前記上縁(724)と前記下縁(824)とは横方向に重なっている
ことを特徴とする移動式破砕機(1)。
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