JP4858393B2 - 衝撃吸収装置 - Google Patents
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Description
この衝撃吸収装置は、遊星歯車減速装置のインターナルギヤに連結される複数枚の回転ディスクと、この回転ディスクと交互に配置され、且つ回転不能に支持された複数枚の固定ディスクと、固定ディスクと回転ディスクとの間に摩擦面圧力を付与する皿バネ等より構成され、各回転ディスクを両側から固定ディスクで挟み込んでいる。
この衝撃吸収装置は、回転ディスクの滑りトルクを超える過大トルクがインターナルギヤを介して回転ディスクに加わると、その回転ディスクが固定ディスクとの間に生じる摩擦力に抗して滑る(回転する)ことにより、インターナルギヤの回転が許容されて、衝撃力を吸収する働きを有する。
なお、ディンプルが形成された回転ディスク及び固定ディスクの表面(摩擦面)には、パンチを打ち込んでディンプルを形成する際に、パンチの周囲に流動した材料が***することにより、ディンプルの周囲に凸部が形成されている。
本発明は、上記事情に基づいて成されたもので、その目的は、耐摩耗性の向上と滑りトルクの安定化を達成できる衝撃吸収装置を提供することにある。
本発明は、互いの摩擦面が接触する固定ディスクと回転ディスクとを有し、この回転ディスクに所定のトルクを超える負荷トルクが加わった時に、回転ディスクが摩擦力に抗して回転する(滑る)ことで衝撃を吸収する衝撃吸収装置において、固定ディスク及び回転ディスクの摩擦面には、それぞれ同一形状、同一の大きさ、且つ、同一パターンに配置された多数のディンプルが形成されると共に、固定ディスクに形成されるディンプル間のピッチP1と、回転ディスクに形成されるディンプル間のピッチP2とが異なることを特徴とする。
また、両ディスク間の摩擦係数の変動を抑制できるので、回転ディスクの滑りトルクを安定できる。
請求項1に記載した衝撃吸収装置において、ピッチP1とピッチP2との関係は、
P1=P2×(1.1〜1.5)…………(1)
上記(1)式で表されることを特徴とする。
回転ディスクのディンプルの径方向位置を固定ディスクのディンプルの径方向位置から効果的にずらすには、1.1以上が必要である。また、適切な密度で回転ディスクのディンプルおよび固定ディスクのディンプルを配置するには、1.5以下が必要である。
請求項1に記載した衝撃吸収装置において、ピッチP1とピッチP2との関係は、
P2=P1×(1.1〜1.5)…………(2)
上記(2)式で表されることを特徴とする。
回転ディスクのディンプルの径方向位置を固定ディスクのディンプルの径方向位置から効果的にずらすには、1.1以上が必要である。また、適切な密度で回転ディスクのディンプルおよび固定ディスクのディンプルを配置するには、1.5以下が必要である。
請求項1〜3に記載した何れかの衝撃吸収装置は、エンジン始動用のスタータに用いられることを特徴とする。
スタータは、エンジンのリングギヤにピニオンギヤを噛み合わせ、そのピニオンギヤからリングギヤにモータの駆動トルクを伝達してエンジンを始動させる働きを有するため、ピニオンギヤがリングギヤに噛み合う際に衝撃が発生する。これに対し、本発明の衝撃吸収装置をスタータに用いることにより、エンジン始動時に発生する衝撃を衝撃吸収装置によって吸収できるので、スタータのトルク伝達経路に設けられる強度系部品の破損を防止できる。
本実施例のスタータ1は、図2に示す様に、回転力を発生するモータ2と、このモータ2の回転を減速する減速機3と、この減速機3と組み合わせて構成される衝撃吸収装置4と、減速機3にクラッチ5を介して連結されるピニオン軸6と、このピニオン軸6に支持されるピニオンギヤ7と、モータ2の通電回路(モータ回路と呼ぶ)に設けられるメイン接点(後述する)を開閉すると共に、シフトレバー8を介してピニオン軸6を軸方向に移動させる働きを有する電磁スイッチ9等より構成される。なお、図2において、ピニオン軸6及び電磁スイッチ9の中心線より上側は、スタータ1の停止状態を示し、中心線より下側は、スタータ1の作動状態を示している。
電機子13は、電機子軸15の外周に圧入状態でセレーション嵌合する電機子鉄心16と、この電機子鉄心16に巻線される電機子コイル17とを有し、この電機子コイル17が整流子12を構成する個々のセグメントに接続されている。なお、電機子軸15は、整流子12より後方へ突き出る後端部が軸受18を介してエンドフレーム19に支持され、電機子鉄心16より前方へ突き出る前端側が軸受20を介してセンタプレート21に支持されている(図3参照)。
センタケース22は、スタータ1の前方を覆うフロントハウジング23とヨーク10との間に配置され、クラッチ5と減速機3の外周を覆っている。
このセンタケース22とヨーク10、及びエンドフレーム19は、複数本のスルーボルト24をフロントハウジング23に締め付けて固定されている。
ピニオンギヤ7は、エンジン始動時にエンジンのリングギヤ34(図2参照)に噛み合って、モータ2の駆動トルクをリングギヤ34に伝達する働きを有する。このピニオンギヤ7は、軸受33より前方(図2の左方向)へ突き出るピニオン軸6の先端部にセレーション嵌合すると共に、ピニオンギヤ7の内周に配設されたピニオンスプリング35に付勢されて、ピニオン軸6の先端部に取り付けられたストッパ36に位置決めされている。
2本の外部端子40、41は、バッテリケーブル(図示せず)を介して車載バッテリに接続されるB端子40と、モータ2から取り出されたターミナル44が接続されるM端子41であり、それぞれ電磁スイッチ9の樹脂カバー9aに固定されている。なお、ターミナル44は、ヨーク10とエンドフレーム19との間に挟持されたグロメット45に保持されて、反M端子側の端部が界磁コイル11に接続されている。
シフト用ロッド46は、電磁スイッチ9のプランジャ38にドライブスプリング47と共に組み付けられ、そのドライブスプリング47を介してプランジャ38の動きをシフトレバー8に伝達する働きを有する。
衝撃吸収装置4は、例えば、ピニオンギヤ7がリングギヤ34を駆動する時に発生する衝撃トルクを低減する働きを有し、図3に示す様に、筒状ケース48、固定ディスク49、回転ディスク50、皿バネ51、及びナット52等より構成される。
筒状ケース48は、センタケース22の内周に回転不能に固定されている。この筒状ケース48には、図示右端から内径側へ折り曲げられた環状の底板部48aが設けられている。底板部48aの内径は、減速機3の遊星歯車27と干渉しない大きさを有している。また、筒状ケース48の図示左側内周に雌ねじ部48bが形成されている。
固定ディスク49は、図4に示す様に、外周部に外径方向へ突き出る突起部49aが複数形成され、これらの突起部49aが、筒状ケース48の内周に設けられた凹部48c(図3参照)に係合して回転不能に支持されている。この固定ディスク49は、リング形状の内径が、筒状ケース48に設けられた底板部48aの内径と略等しく、減速機3の遊星歯車27と干渉しない大きさを有している。
皿バネ51は、固定ディスク49と回転ディスク50とを重ね合わせた積層体に荷重を加えて、固定ディスク49と回転ディスク50との間に摩擦力を発生させている。なお、図3では、ワッシャ53を介して皿バネ51を二段に配置しているが、一段だけでも良い。また、一段の場合は、ワッシャ53を廃止することもできる。
ナット52は、筒状ケース48の雌ねじ部48bに結合され、固定ディスク49と回転ディスク50との間に規定の滑りトルクが得られる様に、皿バネ51が積層体を押圧する初期荷重を調節している。
両ディスク49、50に形成されたディンプル49b、50bは、表面に塗布された潤滑剤を保持する働きを有し、それぞれ同一形状、同一の大きさ、且つ、同一パターンに配置されている。個々のディンプル49b、50bは、例えば、断面四角形のパンチ(図示せず)を金属板の表面に打ち込んで形成され、図6(a)に示す様に、正方形の外周形状を有している。また、両ディスク49、50の表面には、図6(b)に示す様に、パンチを打ち込む際に、そのパンチの外側に流動した材料が盛り上がることにより、ディンプル49b、50bの周囲に凸部49c、50cが形成されている。
また、図1に示す様に、固定ディスク49のディンプル49bと、回転ディスク50のディンプル50bとの径方向のずれ量をオフセット量Xとし、径方向に隣合うディンプル間のピッチをPdとした時に、オフセット量XとピッチPdとの関係は、下記(1)式で表される。
X=Pd×(0.1〜0.5)……………(1)
また、上記(1)式に示される定数0.1〜0.5は、固定ディスク49のディンプル49bと、回転ディスク50のディンプル50bとが向かい合った時(両ディンプル49b、50bの周方向位置が一致した時)に、両ディンプル49b、50bの周囲に形成される凸部49c、50c同士が重ならない様に設定される。
始動スイッチ(図示せず)の閉操作により、電磁スイッチ9の電磁コイル37に通電されてプランジャ38が吸引されると、そのプランジャ38の動きがシフトレバー8を介してピニオン軸6に伝達される。その結果、ピニオン軸6は、インナチューブ31に対してヘリカルスプラインの作用で回転しながら反モータ方向(図2の左方向)へ移動し、ピニオンギヤ7の端面がリングギヤ34の端面に当接した後、ピニオンスプリング35を押し縮めた状態で一旦停止する。
エンジン始動後、始動スイッチの開操作により、電磁コイル37への通電が停止して電磁石の吸引力が消滅すると、リターンスプリング39の反力でプランジャ38が押し戻されるため、メイン接点が開いてバッテリからモータ2への給電が停止されることにより、電機子13の回転が次第に減速して停止する。
一方、プランジャ38が押し戻されると、エンジン始動時とは反対方向にシフトレバー8が揺動して、ピニオン軸6が後退する。
上記のスタータ1に設けられた衝撃吸収装置4は、固定ディスク49の摩擦面及び回転ディスク50の摩擦面にそれぞれ多数のディンプル49b、50bが形成されているので、両ディスク49、50の摩擦面に塗布された潤滑剤を長期に渡って保持することができる。また、固定ディスク49に形成された多数のディンプル49bと、回転ディスク50に形成された多数のディンプル50bとは、両者のディンプル位置がパターン全体で径方向に所定量(オフセット量X)ずれている。
この実施例2に示す衝撃吸収装置4は、図8に示す様に、固定ディスク49に形成されるディンプル間のピッチP1と、回転ディスク50に形成されるディンプル間のピッチP2とが異なる場合の一例である。なお、両ディスク49、50に形成される個々のディンプル49b、50bの形状及び大きさは同一であり、配置パターンも同じである。
ピッチP1とピッチP2との関係は、下記(2)式あるいは(3)式で表される。
P1=P2×(1.1〜1.5)…………(2)
P2=P1×(1.1〜1.5)…………(3)
なお、回転ディスク50のディンプル50bの径方向位置を、固定ディスク49のディンプル49bの径方向位置から効果的にずらすには、1.1以上が必要であり、且つ、適切な密度で回転ディスク50のディンプル50bおよび固定ディスク49のディンプル49bを配置するには、1.5以下が必要である。
また、上記(2)、(3)式に用いられるP1、P2に代えて、両ディスク49、50のディンプル49b、50bの径方向ピッチPd1、Pd2を用いても良い。
この実施例3に示す衝撃吸収装置4は、図9に示す様に、固定ディスク49及び回転ディスク50の摩擦面に、それぞれ同一パターン(マトリクス状)に配置された多数のディンプル49b、50bが形成されると共に、固定ディスク49のディンプル49bの配置パターンと、回転ディスク50のディンプル50bの配置パターンとが異なる向きに設定されている。
上記の構成によれば、両ディスク49、50のディンプル49b、50bの周囲に形成される凸部49c、50c同士が周期的に接触する確率が小さくなるため、凸部49c、50c同士の接触により発生する潤滑剤の油膜切れを低減できる。
この実施例4に示す固定ディスク49と回転ディスク50の摩擦面には、それぞれ多数のディンプル49b、50bが形成され、その多数のディンプル49b、50bは、図10に示す様に、周方向に沿って並ぶ複数のブロックを形成すると共に、径方向に沿って並ぶ複数の層を形成している。また、各ブロックのディンプル49b、50bは、周方向において同位置であり、各層のディンプル49b、50bは、径方向において同位置である。つまり、両ディスク49、50に形成された各ディンプル49b、50bは、両ディスク49、50の径方向および周方向のそれぞれに沿って、一定ピッチ〔径方向ピッチPd、平均の周方向ピッチPdtanθ(0<θ<90度)〕に配置されている。
上記の構成によれば、回転ディスク50の各ディンプル50bの位置は、固定ディスク49の各ディンプル49bの位置に対して径方向に異なっているため、回転ディスク50が回転した時に、回転ディスク50に形成されたディンプル50bは、固定ディスク49に形成されたディンプル49bの真上を通過しないことになる。その結果、各ディンプル49b、50bの周囲に形成された凸部49c、50c同士の接触により発生する潤滑剤の油膜切れを低減できるので、両ディスク49、50の耐摩耗性が向上して、衝撃吸収装置4の寿命を延ばすことが可能である。
この実施例5は、図11に示す様に、固定ディスク49と回転ディスク50の両方、または、どちらか一方のディスク49または50に形成されるディンプル49b、50bをランダムに配置した場合の一例である。
本実施例の場合も、両ディスク49、50のディンプル49b、50bの周囲に形成される凸部49c、50c同士が周期的に接触する確率を小さくできるので、凸部49c、50c同士の接触により発生する潤滑剤の油膜切れを低減できる。
実施例1〜実施例3では、固定ディスク49のディンプル49bの配置パターンと、回転ディスク50のディンプル50bの配置パターンとが同一であるが、両ディスク49、50の配置パターンを変更しても良い。この場合、個々のディンプル49b、50bの形状及び大きさが同一であっても、両ディスク49、50に形成されるディンプル49b、50bの配置パターンが異なることにより、ディンプル49b、50bの周囲に形成される凸部49c、50c同士が周期的に接触する確率が小さくなり、凸部49c、50c同士の接触により発生する潤滑剤の油膜切れを低減できる。
実施例1では、固定ディスク49と回転ディスク50とを1枚ずつ交互に配置した多板式構造の衝撃吸収装置4を記載しているが、本発明は、固定ディスク49と回転ディスク50を1枚ずつ使用する単板式構造の衝撃吸収装置4にも適用できる。
4 衝撃吸収装置
49 固定ディスク
50 回転ディスク
49b 固定ディスクの摩擦面に形成されたディンプル
50b 回転ディスクの摩擦面に形成されたディンプル
Claims (4)
- 互いの摩擦面が接触する固定ディスクと回転ディスクとを有し、この回転ディスクに所定のトルクを超える負荷トルクが加わった時に、前記回転ディスクが摩擦力に抗して回転する(滑る)ことで衝撃を吸収する衝撃吸収装置において、
前記固定ディスク及び前記回転ディスクの摩擦面には、それぞれ同一形状、同一の大きさ、且つ、同一パターンに配置された多数のディンプルが形成されると共に、前記固定ディスクに形成されるディンプル間のピッチP1と、前記回転ディスクに形成されるディンプル間のピッチP2とが異なることを特徴とする衝撃吸収装置。 - 請求項1に記載した衝撃吸収装置において、
前記ピッチP1と前記ピッチP2との関係は、
P1=P2×(1.1〜1.5)…………(1)
上記(1)式で表されることを特徴とする衝撃吸収装置。 - 請求項1に記載した衝撃吸収装置において、
前記ピッチP1と前記ピッチP2との関係は、
P2=P1×(1.1〜1.5)…………(2)
上記(2)式で表されることを特徴とする衝撃吸収装置。 - 請求項1〜3に記載した何れかの衝撃吸収装置は、エンジン始動用のスタータに用いられることを特徴とする衝撃吸収装置。
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