以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、機能・作用が共通する機能を有する部材には、全図面を通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
(第1実施形態)
第1実施形態に係る無端ベルトの製造方法は、例えば、外周面に欠陥部を有する無端ベルト本体を準備する準備工程と、無端ベルト本体の外周面の欠陥部又は全面を、研磨・洗浄する研磨・洗浄工程と、無端ベルト本体の外周面の欠陥部又は全面に、加水分解処理を施す加水分解処理工程と、ポリイミド無端ベルトの外周面の欠陥部又は全面に、ポリアミック酸組成物の液滴を吐出して塗膜を形成する塗膜形成工程と、前記塗膜を加熱する加熱工程と、を有している。以下、各工程毎に説明をする。
−準備工程−
準備工程では、外周面に欠陥部を有する無端ベルト本体を準備する。無端ベルト本体は、ポリアミック酸樹脂を含んで構成された無端ベルト本体(即ち、イミド化転化を生じさせずポリアミック酸組成物を成形した無端ベルト本体)であってもよいし、ポリイミド樹脂を含んで構成された無端ベルト本体(即ち、イミド化転化を生じさせてポリアミック酸組成物を成形した無端ベルト本体)であってもよい。
言い換えれば、以下の各工程は、無端ベルトの製造過程に組み込んだ形態であってもよいし、別途、無端ベルト本体の製造過程とは、別途行う形態でもよい。
無端ベルト本体は、その製造時に外周面に欠陥部が生じた無端ベルトであってもよいし、使用により外周面に欠陥部が生じた無端ベルトであってもよい。ここで、外周面に欠陥部が生じた無端ベルトにおいて、「欠陥部」とは、製造時や使用後に生じる、ボイド、へこみ、異物痕、磨耗、傷、汚れなどが相当する。
−研磨・洗浄工程−
研磨・磨耗工程では、準備した無端ベルト本体の外周面に対し、研磨を施した後、洗浄を行う。この研磨は、ベルト外周面における欠陥部(或いは欠陥部を含む所定領域)のみに行ってもよいし、ベルト外周面全面に亘って行ってもよい。言い換ええれば、研磨は後述する欠陥部を修復するための塗膜を形成する領域に施す。洗浄も同様である。但し、洗浄は、研磨粉が全面に亘り付着することがあるので、ベルト外周面全体を洗浄することがよい。
研磨は、例えば、シリカや樹脂粉末からなる研磨粉、研磨粉を塗布した紙、布などの研磨布(例えば、サンドペーパ)、凹凸形状をもつ研磨材(例えば、棒やすり)等を用いて行われる。また、段階的に研磨を行ってもよい。具体的には、例えば、粗さが大きいサンドペーパ(例えば、#500以下)により研磨を行った後、それよりも粗さが小さいサンドペーパ(例えば#1000以上)により研磨を行ってもよい。
一方、洗浄は、例えば、研磨処理を施した無端ベルト表面に純水を吹きつけながら研磨粉を除去する方法、純水中に研磨処理を施した無端ベルトを浸漬して超音波を印加して洗浄処理を施す方法、などにて実施される。洗浄後、無端ベルトを40℃以上200℃以下の温度にて乾燥しても、そのまま加水分解処理を施してもよい。乾燥には、エタノール、プロパノールなどのアルコールを用いて無端ベルト表面に付着している純水を置換して乾燥を容易にする方法を用いてもよい。
−加水分解工程−
加水分解工程では、研磨・洗浄を施した無端ベルト本体の外周面に対し、加水分解処理を行う。この加水分解処理も、研磨と同様に、ベルト外周面における欠陥部(或いは欠陥部を含む所定領域)のみに行ってもよいし、ベルト外周面全面に亘って行ってもよい。言い換ええれば、加水分解処理は後述する欠陥部を修復するための塗膜を形成する領域に施す。
加水分解処理は、例えば、アルカリ溶液に接触させる。また、加水分解処理は、水蒸気を接触させることでも実施される。
アルカリ性溶液(塩基性水溶液)としては、アルカリ金属(例えばリチウム、ナトリウム、カリウムなど)、アルカリ度類金属(マグネシウム、カルシウムなど)の水酸化物又は炭酸塩などの塩基性化合物を水に溶解させた水溶液が挙げられる。塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好適である。アルカリ性溶液の塩基性化合物濃度は、例えば、0.1質量%以上20質量%以下の範囲で選ばれる。
アルカリ性溶液による加水分解処理の温度は、例えば、20℃以上100℃以下の範囲で行われる。また、加水分解処理時間は、例えば、10秒以上から24時間以下の範囲で目的の物性が得られる水準が選択される。
そして、アルカリ溶液によって加水分解処理を施した処理面に対し、酸性溶液を接触させることがよい。なお、酸性溶液による処理前に純水で洗浄してアルカリ溶液を除去することがよい。また、上記純水に加えてアルコール類など、水と混和しやすい溶媒を併用してもよい。
このアルカリ溶液によって加水分解処理を施した処理面には、ポリイミド樹脂が加水分解されてポリアミック酸の金属塩となっている。そこで、酸性溶液によりポリアミック酸金属塩をポリアミック酸に置換させる。
酸性溶液は、塩酸、硝酸、硫酸などの鉱酸が使用される。酸性溶液の濃度は、例えば、0.1質量%以上20質量%以下の範囲で選ばれる。
酸性溶液による処理(アミック酸化処理)の温度は、例えば、20℃以上100℃以下の範囲で行われる。一方、酸性溶液による処理(アミック酸化処理)は、例えば、10秒以上から24時間以下の範囲で目的の物性が得られる水準が選択される。
その後、無端ベルト本体の外周面を、純水で洗浄した後、水分の乾燥行う。
−塗膜形成工程−
塗膜形成工程では、加水分解処理を施したポリイミド無端ベルトの外周面の欠陥部又は全面に、ポリアミック酸組成物の液滴を吐出して塗膜を形成する。塗膜を形成する領域は、研磨と同様に、ベルト外周面における欠陥部(或いは欠陥部を含む所定領域)のみに行ってもよいし、ベルト外周面全面に亘って行ってもよい。欠陥部のみに塗膜が形成された場合、後述する加熱工程を経て、欠陥部を修復する修復部が形成され、ベルト外周面全面に亘って塗膜を形成した場合、後述する加熱工程を経て、欠陥部を覆って修復する表面層が形成される。
ここで、ポリアミック酸組成物の液滴を吐出して塗膜を形成するための塗布装置について説明する。図1は、第1実施形態に係る塗布装置を示す斜視図である。図2は、第1実施形態に係る塗布装置を示す概略構成図である。
第1実施形態に係る塗布装置は、図1〜図2に示すように、ポリアミック酸組成物の塗工液14を円筒状保持体10Aに保持された無端ベルト本体10へ吐出するための吐出ヘッド12と、当該吐出ヘッド12へ送液する塗工液14を貯留する塗工液タンク16と、を有している。
そして、吐出ヘッド12は、吐出する塗工液14が無端ベルト本体10へ着弾する着弾面の法線方向と塗工液の吐出方向とが平行となるように、塗工液14の液滴が無端ベルト本体10へ着弾するように配置している。無論、吐出ヘッド12は、吐出する塗工液14が無端ベルト本体10へ着弾する着弾面の法線方向と塗工液の吐出方向とが角度をなすように、塗工液14の液滴が無端ベルト本体10へ着弾するように配置してもよい。
なお、着弾面の法線とは、被塗布物(無端ベルト本体)の着弾面が平面で構成される場合(例えば被塗布物が板状体の場合)は、その面と直交する線を示し、本実施形態のように被塗布物の着弾面が曲面で構成される場合(例えば被塗布物が球体或いは円筒体などの場合)には、その着弾した位置の接線で構成される面と直交する線を示す。
吐出ヘッド12には、塗工液吐出面側(ノズル面)側に、吐出した塗工液14を帯電させる帯電電極24と、その帯電した塗工液14に電界を付与し偏向を与え吐出方向を変える偏向電極26と、が配設されている。なお、このような帯電・偏向制御は、塗布量を制限したり、塗布にパターンを持たせる場合に行うことが好適である。このようなことが必要なければ、帯電電極24及び偏向電極26を設けなくてもよい。
また、吐出ヘッド12の一端には、塗工液供給管18が連結され、他端には、塗工液排出管20が連結されている。塗工液供給管18及び塗工液排出管20の一端側(吐出ヘッド12と非連結側)は、塗工液タンク16と連結されている。そして、塗工液供給管18には、塗工液タンク側から吐出ヘッド12に向かって、送液用ポンプ18−1(加圧手段:溶剤用高圧無動脈ポンプ:3連プランジャポンプ)、送液用ポンプ18−1の脈動を抑制するダンパ18−2、塗工液のゴミ異物等を除去するフィルタ18−3、吐出ヘッド12への塗工液14の送液を開始・停止を行うための送液用電磁弁18−4が配設されている。一方、塗工液排出管20には、塗工液14の排出を開始・停止する排出用電磁弁20−1が配設されている。
なお、排出用電磁弁20−1は、通常、常に閉状態とし、塗工液14の循環、混入した気泡の除去などを行う際に開放するものである。
円筒状保持体10Aは、円筒体から構成されており、回転するように両端を支持体10−1により支持されている。また、無端ベルト本体10は、駆動装置10−2により回転可能に、具体的には駆動モータ10−2Aにより駆動ベルト10−2Bを介して回転駆動するように連結されている。なお、無端ベルト本体10の製造過程で、本塗布工程を実施、即ち本実施形態を実施する場合、円筒状保持体10Aは、その無端ベルト本体10を製造するための円筒状金型であってもよい。
吐出ヘッド12と無端ベルト本体10との間であって、吐出した塗工液14の液滴を下方へ帯電・偏向制御したときに当該塗工液14を受け止められる位置(塗工液14吐出方向の延長線より下方に上端が配置される位置)に液受け22(吐出塗工液回収手段)が設けられている。液受け22は、塗工液タンク16とフィルタ22−3を介して排出管22−2により連結されており、吐出した塗工液14を受け止めた時、当該塗工液タンク16へ排出するようになっている。
以下、吐出ヘッド12について説明する。ここで、図3は、第1実施形態に係る塗工液吐出ヘッドを示す斜視図である。図4は、第1実施形態に係る塗工液吐出ヘッドの断面図である。
吐出ヘッド12は、図3〜図4に示すように、例えば、ステンレスやニッケル合金などからなる筒状体で構成されている。そして、吐出ヘッド12には、長手方向に配列された複数のノズル12−1(例えば、ノズル内径25μm)と、各ノズル12−1に共通して繋がる塗工液室12−2と、塗工液室12−2を介してノズル12−1と対向して設けられた圧電素子12−3(例えばPZTセラミック膜、ポリフッ化ビニリデン膜(PVF2膜))と、を有している。
なお、吐出ヘッド12は、塗布時、図示しない駆動装置によりヘッド長手方向に配列されたノズル間隔分、当該ヘッド長手方向に往復して移動するようになっている。これにより、ノズル間隔分の隙間が生じることなく無端ベルト本体10に塗工液14を塗布される。無論、無端ベルト本体10の方を移動可能なようにしてもよい。
ここで、圧電素子12−3は、塗工液室12−2に送液されてきた塗工液14に対し、所定の振動を付与し、ノズル12−1から液柱状に吐出した塗工液14を液滴化するためのものである。圧電素子12−3は、図示しないが、例えばPZTセラミック膜に電極から高周波電圧を印加して振動(音波)を発生せしめ、この振動をピストンにより塗工液室12−2の塗工液14へ伝達せしめる。
圧電素子12−3は、ノズル12−1と対向して設けられ、塗工液14の吐出方向と同一方向から、図示しない外部機器より増幅され例えばピーク間電圧(Vpp)50V程度までの電圧で出力する駆動正弦波が供給されると、定在波(進行波と反射波との混合した波:つまり、照射した進行波とノズル面に反射した反射波との混合波)による振動を付与して、ノズル12−1から液柱状に吐出した塗工液14を液滴化する。
ここで、図5〜図7に、粘度約9mPa・s程度の塗工液14の吐出状態を示す。図5は、振動を付与しない場合における塗工液14の吐出状態を示す模式図である。図6は、90kHzの振動を付与した場合における塗工液14の吐出状態を示す模式図である。図7は、60kHzの振動を付与した場合における塗工液14の吐出状態を示す模式図である。
圧電素子12−3を駆動させず、例えば、送液用ポンプ18−1により0.9MPaで吐出ヘッド12から塗工液14を吐出した場合、図5に示すように、液柱状の塗工液14が吐出する。そして、圧電素子12−3により塗工液14に振動を付与すると、図6及び図7に示すように、液柱状に吐出された塗工液14が液滴化される。図6、7に示すように、90kHzの振動を塗工液14に付与した場合は、60kHz振動を塗工液14に付与したに場合に比べ、塗工液の液滴径が小さく、液滴間距離(液滴間隔)が狭くなっている。しかし、ポンプ圧力は一定であるので、単位時間あたりの噴射量は同一である。
図5に示すように、液滴化せず、液柱状の状態で塗工液を塗布すると、吐出ヘッド12から離れた位置では、無秩序な噴流となるため、塗膜の均一性が確保できないことがある。よって、塗工液14の液滴化が必要である。
ここで、例えば、塗工液14の吐出速度10m/sec、ノズル内径25μmとしたとき、好適周波数は、88.7kHzとなる。また、液滴の体積は、約55pl(pico litre)(55,000μm3)である。但し、液滴化の観点のみで、周波数は決定されず、吐出ヘッドと圧電素子の振動特性を考慮する必要がある。即ち、吐出ヘッドの構造と圧電素子の特性に基づく共振点を考慮することで、圧電素子に印加する電圧の調整を行なう必要がある。例えば、本実施形態では、ピーク間電圧(Vpp)30V程度の電圧を圧電素子に印加する。
また、塗工液14を10m/secで吐出するための圧力は、塗工液14の粘度が9mPa・sの場合例えば0.9MPa、塗工液14の粘度が3mPa・sの場合例えば0.3MPaである。したがって、塗工液14の粘度が100mPa・sの場合は、例えば10MPaであることが予想される。これは、塗工液14に掛かる圧力と流速が流路抵抗を係数とする1次の関係にあることより説明される。ただし、上記の数値は一例である。
塗工液14を所定速度で吐出するために必要な圧力は、ノズル12−1の形状により異なる。それは、上記流路抵抗が、ノズル12−1の形状に依存するからである。
ノズル12−1の加工方法には、一般的に例えば、ポンチ加工方法、エレクトロフォーミング(電鋳)加工方法、放電加工方法、レーザ加工方法などが挙げられる。それぞれの加工方法には得失があり、一概にどの方法が好ましいか決定することはできないが、ノズル12−1の内径を一定にして比較した場合、ノズル12−1における流路抵抗の観点からは、ノズル12−1の断面形状に大きなテーパを有するエレクトロフォーミング(電鋳)が極力、噴射の圧力を低く保つという観点では好ましい。
ノズル12−1の設置数は、塗工液14の物性及び塗工する面積等によって選ばれ設置し得る。各ノズル12−1は吐出量を個別に制御し得る。即ち、吐出ヘッド12は、長手方向全面で塗工液14を吐出してもよいし、長手方向における所定の領域のみで塗工液14を吐出してもよい。これは、塗膜を無端ベルト本体10外周面全面に形成するか、一部(欠陥部)のみに形成するかにより、選択する。
以上説明した塗布装置を利用して、円筒状保持体10Aに保持された無端ベルト本体10の外周面に、塗工液14を塗布する。塗工液14の塗布は、無端ベルト本体10の外周面全面に行ってもよいし、一部(欠陥部)のみに行ってもよいが、以下の説明では、無端ベルト本体10の外周面全面に行う形態を説明する。
塗工液14の塗布は、例えば、まず、送液用ポンプ18−1を駆動すると共に、送液用電磁弁18−4を開放する。また、圧電素子12−3を駆動する。これにより、ノズル12−1から液柱状の塗工液14が吐出すると共に、液柱状の塗工液14が液滴化される。この際、帯電電極24に所定の電圧を印加し、吐出した塗工液14を帯電させると共に、偏向電極26にも所定の電圧を印加して、その帯電した塗工液14に電界を付与して、液受け22が位置する下方(図中)に偏向を与え、吐出方向を変えて当該液受け22に塗工液14を受け止めさせる。
次に、駆動装置10−2を駆動し、円筒状保持体10Aに保持された無端ベルト本体10を回転駆動する(例えば、無端ベルト本体10の回転速度を1回転/1秒(1rps)とする)。
次に、帯電電極24及び偏向電極26への電圧印加を解除して、吐出方向を戻す。これにより、塗工液14の無端ベルト本体10への塗布が開始される。
そして、所定時間経過後、再び、帯電電極24に所定の電圧を印加し、吐出した塗工液14を帯電させると共に、偏向電極にも所定の電圧を印加して、その帯電した塗工液14に電界を付与して、液受け22が位置する下方(図中)に偏向を与え、吐出方向を変えて当該液受け22に塗工液14を受け止めさせる。これにより、塗布を終了させる。
その後、送液用ポンプ18−1の駆動を停止すると共に、送液用電磁弁18−4を閉じる。また、圧電素子12−3の駆動を停止する。最後に、無端ベルト本体10の回転を停止する。
塗工液14の吐出量は、例えば、ノズル12−1の口径、吐出圧、塗工液の粘度、塗工液の固形分率や濃度などによって決定される。塗工を安定に行うために、上記吐出される塗工液量を、それぞれ別個に調整し得る。そして、塗工液14の吐出量の増減は、例えば、ピエゾ素子を利用した圧電素子による方式の場合、印加する電圧周波数を調整することで行われる。この電圧周波数の範囲としては例えば100Hz以上10000Hz以下の範囲である。また、吐出ヘッドの一つのノズルから吐出される液滴の吐出量は例えば1pl以上500pl以下の範囲であることがよい。
なお、塗工液14を塗布し塗膜を形成した後、円筒状保持体10Aの回転を所定時間継続することで、塗膜の平滑化に加え、塗膜の液だれ防止が図られる。
塗工液14の無端ベルト本体10外周面への着弾は必ずしも全面にわたるものではなくてもよく、着弾した液滴間には隙間が存在してもよい。塗工液14は無端ベルト本体10外周面に着弾後、当初、粘度が高いほど、液滴の形状を反映して半球に近い形状で存在する。このため、着弾した液滴間に隙間が存在するように液滴を吐出する場合、均一な塗膜を形成するためには、塗布終了後、無端ベルト本体10外周面を回転させる、即ち平滑化工程における時間管理が重要である。また、無端ベルト本体10外周面を回転させながら塗膜の平滑化を行うと、その遠心力により、塗工液14が無端ベルト本体10外周面に対して凸状の形状を守る方向に働くため、液だれを起こさない程度に回転速度を低下させることが、好ましい。無端ベルト本体10外周面との親和性により塗工液14は広がり、無端ベルト本体10外周面の回転時間と共に隣接着弾滴と引き合いながら、塗膜は平坦化していくことになる。
液滴の着弾位置は、液滴が着弾したあとに液滴が拡がって隣接する液滴と接触し、最終的には膜として均一につながるように吐出の解像度等を調整することが好ましく、被塗布物の表面張力や、着弾した時の液滴の広がり方、吐出時の液滴の大きさ、塗工溶剤濃度や塗工溶媒種などに起因した溶剤蒸発速度等を考慮して塗布すればよい。これらの条件は塗工液の材料種及び材料組成と被塗布物表面の物性により決まるものであり、調整することがよい。
以上のようにして、無端ベルト本体の外周面の欠陥部又は全面に、塗工液14の液滴を塗布して、塗膜を形成する。
なお、本実施形態においては、吐出ヘッド12が、その長手方向が無端ベルト本体10(円筒状保持体10A)の幅方向(軸方向)と平行で配置されているが、この平行配置に限られず、吐出ヘッド12の長手方向と円筒状保持体10Aの幅方向(軸方向)が交差するように配置してもよい。
また、本実施形態においては、吐出ヘッド12からの吐出方法がインクジェット方式であるが、これに限られず、スプレー方式等も用い得る。ただし、液滴を安定して無端ベルト本体10の所定領域に正確に着弾させる得るインクジェット方式が最適である。
また、本実施形態においては、吐出ヘッド12が、微細加工して作製された特定の解像度をもつノズル12−1から連続的に吐出した後に液滴化する連続型であるがであるが、これに限られず、ノズルから圧電素子や発熱抵抗素子により間欠的に塗工液の液滴を吐出する間欠型(オンデマンド方式)でもよい。ただし、比較的高粘度の塗工液を吐出する場合は、連続型の吐出ヘッドであることがよい。
また、本実施形態においては、吐出ヘッド12は、無端ベルト本体10(円筒状保持体10A)の幅(軸方向長さ)と同等若しくはそれ以上の長さを持つヘッドを適用した形態を説明したが、これに限られず、短尺ヘッドを適用し、当該ヘッド又は円筒状保持体10Aを移動させ筒と出して渡航する形態であってもよい。
−加熱工程−
加熱工程では、無端ベルト本体の外周面に塗布された塗膜に対し、加熱処理を施す工程である。加熱処理としては、塗膜に含まれる溶媒を除去するための乾燥処理と、塗膜に含まれるポリアミック酸の脱水閉環反応を起こしポリイミドに転化させることを目的とした焼成処理とが含まれる。なお、無端ベルト本体が、ポリアミック酸で構成されたものを用いる場合、塗布された塗膜と共に、無端ベルト本体を焼成を行い、イミド化転化を生じさせるように処理してもよい。
加熱方式としては、加熱用ヒータによる熱処理に限られず、乾燥処理、焼成処理ともに、加熱した空気を媒体として塗工液を塗布した無端ベルト本体を加熱する装置による熱処理であれば特に制限はない。かかる装置としては一般的な加熱オーブン、乾燥炉、焼成炉、クリーンオーブン等が例示される。なお、熱処理は円筒状保持体に保持された無端ベルト本体を周方向に回転させながら塗工物の平坦化を図る方式で実施されることがよい。
乾燥処理は、塗工液を塗布後の無端ベルト本体を加熱環境に置き、例えば含有溶媒の30質量%以上望ましくは50質量%以上を揮発させるための乾燥処理を行う。この際、溶媒は膜中に残留していても構わず、塗膜表面が乾燥し、傾けても流動しない状態であれば問題ない。乾燥処理は、例えば50℃以上200℃以下の温度で熱処理をすることにより行われる。
乾燥処理が完了した後に、焼成処理を行う。焼成処理は、例えば、塗布後の無端ベルト本体を、例えば200℃以上450℃以下で加熱し、イミド転化反応を進行させる。イミド化の温度は、原料のテトラカルボン酸二無水物及びジアミンの種類によって、それぞれ異なるが、イミド化が完結する温度に設定しなければならない。イミド化が不充分であると、機械的特性及び電気的特性に劣るものとなる。部分的にイミド化されていないポリアミック酸溶液をイミド化した場合と、部分的にイミド化されたポリアミック酸溶液をイミド化した場合とを比較すると、該部分的イミド化率等によって異なるが、イミドの種類を同一とすると、例えば、概ね50℃以上200℃以下程度と低い温度でイミド化の完結が可能となる。
ここで、無端ベルト本体の外周面の全面に塗膜を形成し、表面層を形成した場合、その厚みは、1μm以上50μm以下であることが望ましく、より望ましくは1μm以上30μm以下であり、さらに望ましくは1μm以上10μmである。この厚みを上記範囲とすることで、修復による表面欠陥を抑制しつつ、簡易に外周面に有する欠陥部が修復される。
一方、無端ベルト本体の外周面の欠陥部に塗膜を形成し、修復部を形成した場合、その厚みは、1μm以下であることが望ましく、より望ましくは0.01μm以上1μm以下であり、さらに望ましくは0.1μm以上1μmである。この厚みを上記範囲とすることで、ポリアミック酸組成物の使用量を抑え、修復による表面欠陥を抑制しつつ、簡易に外周面に有する欠陥部が修復される。
−その他の工程−
無端ベルト本体10の外周面に形成した塗膜に対し、加熱処理を行った後、円筒状保持体から無端ベルト本体を取り外すことで、本実施形態に係る無端ベルトが得られる。得られた無端ベルトは、その後、必要に応じて端部のスリット加工、パンチング穴あけ加工、テープ巻き付け加工等が施されることもある。
以下、塗工液としてのポリアミック酸組成物について詳細に説明する。
ポリアミック酸組成物は、例えば、ポリアミック酸構造を含むポリマーと、塗工溶媒と、触媒としての3級アミンと、を含有して構成されている。また、必要に応じて、カルボン酸無水物、導電剤、分散剤などの添加物を含んでもよい。
なお、ポリアミック酸組成物(又はポリイミド樹脂)の組成は、一例であり、これらに限定されるわけではない。例えば、ポリイミド樹脂類縁材料も用いてもよい。このポリイミド樹脂類縁材料としては、イミド骨格を高分子主鎖構造中に含む高分子材料が使用してもよい。具体的には、後述するポリアミック酸組成物において、テトラカルボン酸に代えて、トリメリット酸を共重合させて高分子主鎖構造中に、アミド基とイミド基をあわせもたせたポリアミドイミド樹脂や、ポリアミック酸に対する反応条件を調整することでイミド化反応を部分的に行うことで、アミック酸残基を残したポリイミド−ポリアミック酸共重合体が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂を使用する場合、後述するテトラカルボン酸二無水物に代えて、例えば、無水トリメリット酸などのトリメロット酸誘導体を原料として使用する。一方、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体の場合は、後述するテトラカルボン酸二無水物を使用する。
以下、ポリアミック酸組成物ついてより詳細に説明する。
(ポリアミック酸構造を含むポリマー)
ポリアミック酸構造を含むポリマーは、ポリイミド前駆体となり得るポリマーであり、ポリアミック酸、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体が挙げられる。
ポリアミック酸としては、下記一般式(1)で表されるポリアミック酸が好適に挙げられる。また、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体としては、下記一般式(2)で表されるポリアミック酸−ポリイミド共重合体が好適に挙げられる。
一般式(1)中、R1は4価の有機基を示し、R2は2価の有機基を示す。一方、一般式(2)中、R3は4価の有機基を示し、R4は2価の有機基を示し、R5は4価の有機基を示し、R6は2価の有機基を示す。
ここで、2価の有機基R2、R4、R6は、対応するジアミン化合物から2つのアミノ基を除いたその残基構造として表される。また、4価の有機基R1、R3、R5は、対応するテトラカルボン酸化合物より4つのカルボニル基を除いたその残基として表される。
以下、ポリアミック酸、及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体をより詳細に説明する。
ポリアミック酸は、テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物とを等モル量を有機極性溶媒中で重合反応させて得られる。また、ポリイミド−ポリアミック酸共重合体は、ポリアミック酸重合後、部分的にイミド化反応を行い合成される。
−テトラカルボン酸二無水物−
ポリアミック酸の製造に用いられ得るテトラカルボン酸二無水物としては、特に制限はなく、芳香族系、脂肪族系いずれの化合物も使用してもよい。
芳香族系テトラカルボン酸としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルエーテルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジメチルジフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−テトラフェニルシランテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−フランテトラカルボン酸二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルフィド二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルスルホン二無水物、4,4’−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシ)ジフェニルプロパン二無水物、3,3’,4,4’−パーフルオロイソプロピリデンジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、ビス(フタル酸)フェニルホスフィンオキサイド二無水物、p−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、m−フェニレン−ビス(トリフェニルフタル酸)二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルエーテル二無水物、ビス(トリフェニルフタル酸)−4,4’−ジフェニルメタン二無水物等を挙げられる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,3−ジメチル−1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、2,3,5−トリカルボキシシクロペンチル酢酸二無水物、3,5,6−トリカルボキシノルボナン−2−酢酸二無水物、2,3,4,5−テトラヒドロフランテトラカルボン酸二無水物、5−(2,5−ジオキソテトラヒドロフラル)−3−メチル−3−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸二無水物、ビシクロ[2,2,2]−オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物等の脂肪族又は脂環式テトラカルボン酸二無水物;1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−5−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン、1,3,3a,4,5,9b−ヘキサヒドロ−8−メチル−5−(テトラヒドロ−2,5−ジオキソ−3−フラニル)−ナフト[1,2−c]フラン−1,3−ジオン等の芳香環を有する脂肪族テトラカルボン酸二無水物等を挙げられる。
テトラカルボン酸二無水物としては、芳香族系テトラカルボン酸二無水物が好ましく、さらに、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、が好適に使用される。
これらのテトラカルボン酸二無水物は、単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
−ジアミン化合物−
次にポリアミック酸の製造に用いられ得るジアミン化合物は、分子構造中に2つのアミノ基を有するジアミン化合物であれば特に限定されない。
例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、4,4’−ジアミノベンズアニリド、3,5−ジアミノ−3’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,5−ジアミノ−4’−トリフルオロメチルベンズアニリド、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,7−ジアミノフルオレン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)−ビフェニル、1,3’−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル等の芳香族ジアミン;ジアミノテトラフェニルチオフェン等の芳香環に結合された2個のアミノ基と当該アミノ基の窒素原子以外のヘテロ原子を有する芳香族ジアミン;1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソフォロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6,2,1,02.7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)等の脂肪族ジアミン及び脂環式ジアミン等を挙げられる。
ジアミン化合物としては、p−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、が好ましい。
これらのジアミン化合物は単独で又は2種以上組み合わせて用いてもよい。
−テトラカルボン酸二無水物とジアミン化合物との組み合わせ−
ポリアミック酸としては、望ましくは、芳香族テトラカルボン酸二無水物と芳香族系ジアミンと含むものが好ましい。
−合成溶媒−
このポリアミック酸の生成反応に使用される有機極性溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
−ポリアミック酸重合時の固形分濃度−
ポリアミック酸溶液の固形分濃度は特に規定されるものではないが、例えば5質量%以上50質量%以下が好ましく、さらに10質量%以上30質量%以下が好ましい。
−ポリアミック酸重合温度−
ポリアミック酸重合時の反応温度としては、例えば0℃以上80℃以下の範囲で行われる。
−イミド化反応−
ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、上記ポリアミック酸を加熱処理してイミド化する方法、又は脱水剤及び/又は触媒を作用させる化学的イミド化方法により、ポリアミック酸中のポリアミック酸構造の少なくとも一部を脱水閉環反応によってイミド基に転換して得られる。
加熱処理による方法における加熱温度は、例えば、通常60℃以上200℃以下とされ、望ましくは100℃以上170℃以下とされる。
一方、化学的イミド化方法は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し化学的にイミド化反応を進行させる。脱水剤は、1価カルボン酸無水物であれば特に限定はされない。例えば、無水酢酸、プロピオン酸無水物、トリフルオロ酢酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などの酸無水物から選ばれる1種類又は2種類以上を用いてもよい脱水剤の使用量は、ポリアミック酸の繰り返し単位1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
触媒としては、例えばピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンなどの3級アミンから選ばれる1種類又は2種類以上を用いてもよいが、これらに限定されるものではない。触媒の使用量は、使用する脱水剤1モルに対して0.01モル以上2モル以下とするのが好ましい。
この化学的イミド化反応は、ポリアミック酸溶液中に脱水剤及び/又は触媒を添加し必要に応じて加熱することにより行われる。脱水閉環の反応温度は、通常0℃以上180℃以下、望ましくは60℃以上150℃以下とされる。
部分的にイミド化されていれば、特に制限はないが、イミド化された構造と未反応のアミック酸構造との組成比は、0/100(モル/モル)乃至80/20(モル/モル)であることが好ましい。イミド基とアミック酸基との組成比が、80/20(モル/モル)を超えると、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体が不溶化する可能性がある。
ポリアミック酸−ポリイミド共重合体に、作用させた脱水剤及び/又は触媒は除去しなくとも良いが、以下の方法で除去しても良い。作用させた脱水剤及び/又は触媒を除去する方法としては、減圧加熱、又は再沈殿法を用い得る。減圧加熱は、真空下80℃以上120℃以下の温度で行われ、触媒として使用される3級アミン、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を留去する。また、再沈殿法は、触媒、未反応の脱水剤及び加水分解されたカルボン酸を溶解させ、ポリアミック酸−ポリイミド共重合体は溶解させない貧溶媒を用い、この貧溶媒の大過剰中に、反応液を加えることによって行われる。貧溶剤としては、特に制限はなく、水や、メタノール、エタノールなどのアルコール系溶剤、アセトンやメチルエチルケトンの如きケトン系溶剤、ヘキサンなどの如き炭化水素系溶剤、などが使用され得る。析出するポリアミック酸−ポリイミド共重合体は、ろ別・乾燥後、再度γ−ブチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン等の溶剤に溶解させる。
ポリアミック酸構造を含むポリマーは、そのポリアミック酸組成物中の固形分濃度が、ベルト材料として所望の厚みを得る観点から10質量%以上であることが好ましい。この固形分濃度として望ましくは、15質量%以上であり、その上限は50質量%である。
(塗工溶剤)
塗工溶媒としては、例えば、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシドなどのスルホキシド系溶媒、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミドなどのホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミドなどのアセトアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−ピロリドンなどのピロリドン系溶媒、フェノール、o−、m−、又はp−クレゾール、キシレノール、ハロゲン化フェノール、カテコールなどのフェノール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジオキソラン等のエーテル系溶媒、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、ブチルセロソルブ等のセロソルブ系あるいはヘキサメチルホスホルアミド、γ−ブチロラクトンなどを挙げることができ、これらを単独又は混合物として用いるのが望ましいが、更にはキシレン、トルエンの如き芳香族炭化水素も使用可能である。溶媒は、ポリアミック酸及びポリアミック酸−ポリイミド共重合体を溶解するものであれば特に限定されない。
塗工溶媒は、先のポリアミック酸合成時から使用しても、ポリアミック酸重合後に所定の溶媒に置換してもよい。溶媒の置換には、ポリアミック酸溶液に所定量の溶剤を添加して希釈する方法、ポリマーを再沈殿した後に所定溶媒中に再溶解させる方法、溶剤を徐々に留去しながら所定溶媒を添加して組成を調整する方法のいずれかでもよい。
(ポリアミック酸組成物の固形分濃度)
ポリアミック酸組成物の固形分濃度は特に規定されるものではないが、ポリイミド無端ベルト製造時の塗工プロセスのしやすさより、適当な粘度を発現する範囲が選択される。塗工上最適な粘度範囲としては、一般に1Pa・s以上100Pa・s以下が望ましく、その粘度となる固形分濃度としては、塗工溶媒(例えば有機極性溶媒)100質量部に対して10質量%以上40質量%以下が望ましい。
(3級アミン)
3級アミンは、イミド化反応の触媒と働くものであり、例えば、ピリジン、ピコリン、コリジン、ルチジン、キノリン、イソキノリン、トリエチルアミンから選ばれる1種又は2種以上を好適に使用し得る。
3級アミンの含有率は、例えば、ポリアミック酸組成物中樹脂分100質量部に対して0.1以上30質量部以下添加されうる。
(カルボン酸無水物)
カルボン酸無水物は、イミド化反応時の脱水剤として働き、イミド化反応を促進するものである。カルボン酸無水物としては、無水酢酸、トリフルオロ酢酸無水物、プロピオン酸無水物、ブタン酸無水物及びシュウ酸無水物などが挙げられ、これらの中でも無水酢酸が好適である。これらは、1種類又は2種類以上用いてもよい。
カルボン酸無水物の含有率は、例えばポリアミック酸組成物中樹脂分100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下添加されうる。
(導電剤)
導電剤としては、導電性(例えば体積抵抗率107Ω・cm未満、以下同様である)もしくは半導電性(例えば体積抵抗率107Ω・cm以上1013Ω・cm以下、以下同様である)の粉末(1次粒径が10μm未満の粒子の粉末が好ましく、さらに望ましくは1次粒径が1μm以下の粒子の粉末)が使用でき、所望の電気抵抗を得ることができれば、特に制限はないが、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示される。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。これら中でも、pH5以下の酸性カーボンブラックを望ましくは添加することがよい。
また、導電剤としては、LiCl等のイオン導電性物質やポリアニリン、ポリピロール、ポリサルフォン、ポリアセチレンなどの導電性高分子の添加も可能である。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよい。
ここで、導電剤として導電性高分子を使用する場合、含まれる導電性高分子は、例えば、有機極性溶媒中に溶解/又は分散された状態で存在する。また、分散している導電性高分子粒子の粒径は、10μm以下であることが望ましく、より望ましくは5μm、さらに望ましくは1μ以下が好適に使用される。
加えて、ポリアミック酸成分に対する導電性高分子の配合比率は特に規定されるものではないが、ポリアミック酸樹脂配合量を100質量部としたとき、導電性高分子配合量は、1質量部以上40質量部以下の範囲が特に望ましい。
―酸性カーボンブラック―
酸性カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、水酸基等を付与して製造される。この酸化処理は、高温(例えば、300℃以上800℃以下)雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温(例えば25℃、以下同様)下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温(例えば300以上800℃以下)下での空気酸化後、低い温度(例えば20以上200℃以下)下でオゾン酸化する方法などにより行われる。。
具体的には、酸性カーボンブラックは、例えばコンタクト法により製造される。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸性カーボンブラックは、ガス又はオイルを原料とするファーネスブラック法により製造され得る。。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。
なお、酸性カーボンブラックは、コンタクト法で製造され得るが、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHを調整してもよい。このためファーネス法製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが5以下となるように調節されたカーボンブラックも、適用し得る。
酸性カーボンブラックのpH値は、例えば、pH5.0以下であるが、望ましくはpH4.5以下であり、より望ましくはpH4.0以下である。
ここで、pHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極で測定することで求められる。また、酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、調整される。
酸性カーボンブラックは、例えば、その揮発成分が1%以上25%以下、望ましくは2%以上20%以下、より望ましくは、3.5%以上15%以下含まれていることが好適である。
酸性カーボンブラックとして、具体的には、例えば、デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
カーボンブラックの含有量は、ポリアミック酸組成物中、ポリアミック酸100質量部に対して、20質量部以上40質量部以下配合されることが望ましい。
(分散剤)
分散剤としては、低分子量/高分子量又は、カチオン系/アニオン系/非イオン系から選ばれるいずれの種類の分散剤を使用してもよい。分散剤として非イオン系高分子を使用することが最も望ましい。
−非イオン系高分子−
非イオン系高分子としては、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)、ポリ(N,N’−ジエチルアクリルアジド)、ポリ(N−ビニルホルムアミド)、ポリ(N−ビニルアセトアミド)、ポリ(N−ビニルフタルアミド)、ポリ(N−ビニルコハク酸アミド)、ポリ(N−ビニル尿素)、ポリ(N−ビニルピペリドン)、ポリ(N−ビニルカプロラクタム)、ポリ(N−ビニルオキサゾリン)等が挙げられ、単独又は複数の非イオン系高分子を添加してもよい。本発明においては、カーボンブラックの分散性がより高まることから、ポリ(N−ビニル−2−ピロリドン)を含むことが望ましい。
ポリアミック酸組成物中、非イオン系高分子の配合量は、ポリアミック酸100質量部に対して、0.2質量部以上3質量部以下であることが望ましい。
以下、上記ポリイミド樹脂の前駆体としてのポリアミック酸組成物を用いたポリイミド樹脂層の形成方法の一例について詳細に説明する。
まず、例えば、上記ポリアミック酸組成物を次のようにして調整する。まず、テトラカルボン酸二無水物成分とジアミン成分を有機溶媒中で重合反応させて得られたポリイミド樹脂の前駆体であるポリアミック酸溶液をメタノールなどの貧溶媒中に添加してポリアミック酸を析出させ再沈殿精製する。析出したポリアミック酸ろ別した後、γ−ブチロラクトンなどの溶媒に再溶解させ、ポリアミック酸溶液を得る。
ポリアミック酸溶液に、所定量の3級アミン、必要に応じて無水カルボン酸を加えて攪拌溶解させ、ポリアミック酸組成物を得る。
次に、この溶液に、カーボンブラックなどの導電剤をポリアミック酸樹脂の乾燥質量100質量部に対して合計5質量部以上60質量部以下含有せしめる。
ここで、この導電剤を分散させ、その凝集体を壊砕する方法としては、ミキサーや攪拌子による攪拌、平行ロール、超音波分散などの物理的手法、さらには分散剤の導入などの化学的手法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
以上説明した本実施形態では、外周面に欠陥部を有する無端ベルトの外周面の欠陥部又は全面に、ポリアミック酸組成物による皮膜を形成することで、簡易に外周面に有する欠陥部を修復した無端ベルトが得られる。
そして、無端ベルト本体が、その製造時に外周面に欠陥部が生じた無端ベルトの場合、無端ベルトの製造時の歩留まりを向上され、無端ベルト本体が、使用により外周面に欠陥部が生じた無端ベルトの場合、無端ベルトを初期状態に戻し、再利用される。
また、本実施形態では、無端ベルト本体を準備した後、無端ベルト本体の外周面の欠陥部又は全面を、研磨・洗浄しているので、埃やゴミ等が介在することなく、ポリアミック酸組成物による皮膜が形成され、無端ベルトの剥がれが抑制される。
また、本実施形態では、無端ベルト本体を準備した後、無端ベルト本体の外周面の欠陥部又は全面に、加水分解処理を施しているので、その処理面の一部のイミド骨格が開環される(カルボキシル基が露出した状態なる)。このため、この処理面に、ポリアミック酸組成物による皮膜(表面層、修復部)を形成させると、皮膜と無端ベルト本体と明確な界面が存在することなくなり、無端ベルトの剥がれが抑制される。
また、本実施形態では、この加水分解処理を、取り扱いが容易なアルカリ性溶液を用いて行っているため、加水分解処理が簡易に施される。加えて、加水分解処理を施した面に酸性溶液を接触させているので、加水分解されてポリアミック酸の金属塩がポリアミック酸に置換され、表面抵抗率の低下やバラツキが抑制される。
なお、本実施形態に係る無端ベルトの製造方法により得られた無端ベルトは、電子写真複写機、レーザービームプリンター、ファクシミリ、これらの複合装置といった電子写真方式の画像形成装置における中間転写ベルト、転写搬送ベルト、搬送ベルト、定着ベルトなど種々の用途に供することが可能である。
具体的には、無端ベルトを中間転写ベルトとして用いる場合は、その転写方式が中間転写ベルト方式であり、かつ/又はベルトを直接的若しくは間接的に加熱する機構を有すれば、組み込まれる装置は特に限定されない。例えば、装置内に単色(通常は黒色)のみを有するモノカラー電子写真装置や、感光体上に保持されたトナー像を中間転写ベルトに順次一次転写を繰り返すカラー電子写真装置や、各色毎の現像器を備えた複数の像保持体を中間転写ベルト上に直列に配列した、タンデム型カラー電子写真装置のいずれであってもよい。従って、無端ベルトは、中間転写ベルト、定着ベルトとして用いられるのみならず、転写・定着ベルトとして用いることも可能である。この「転写・定着ベルト」とは、同一ベルト上において中間転写工程と定着工程を行うベルトである。
(第2実施形態)
図8は、第2実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第2実施形態に係る画像形成装置は、中間転写ベルトとして上記第1実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
第2実施形態に係る画像形成装置100は、図8に示すように感光体ドラム101BK、101Y、101M、101Cを備えており、矢線A方向への回転に伴いその表面には周知の電子写真プロセス(図示せず)によって画情報に応じた静電潜像が形成されるものであり。
そして、この感光体ドラム101Y、101M、101C、101BK、の周囲には、それぞれ、イエロー(Y)、マゼンタ(M)シアン(C)及びブラック(BK)の各色に対応した現像器105〜108が配設されており、感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKに形成された静電潜像をそれぞれの現像器105〜108で現像してトナー像を形成するようになっている。従って、例えば、感光体ドラム101Yに書き込まれた静電潜像はイエローの画情報に対応したものであり、この静電潜像はイエロー(Y)のトナーを内包する現像器105で現像され、感光体ドラム101Y上にはイエローのトナー像が形成される。
中間転写体102は感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKの表面に接触されるように配置されたベルト状の中間転写ベルトであり、複数のロール117〜120に張架されて矢線B方向へ回転する。
中間転写体102には、既述の第1実施形態に係るポリイミド無端ベルトが適用されている。
上記感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKに形成された未定着トナー像は、感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKと上記中間転写体102とが接するそれぞれの1次転写位置で、順次感光体ドラム101Y、101M、101C、101BKから中間転写体102の表面に各色が重ね合わされて転写される。
この1次転写位置において、中間転写体102の裏面側には中間転写体102の不必要な領域へ転写電界が作用するのを防止するための遮蔽部材121〜124により転写前接触領域への帯電を防止したコロナ放電器109〜112が配設されており、このコロナ放電器109〜112にトナーの帯電極性と逆極性の電圧を印加することで、感光体ドラム101Y、101M、101C、101BK上の未定着トナー像は中間転写体102に静電吸引される。この1次転写手段は、静電力を利用したものであれば、コロナ放電器に限らず電圧が印加された導電性ロールや導電性ブラシなどでも良い。
このようにして中間転写体102に1次転写された未定着トナー像は、中間転写体102の回転に伴って記録媒体103の搬送経路に面した2次転写位置へと搬送される。2次転写位置では2次転写ロール120と中間転写体102の裏面側に接している背面ロール117とが中間転写体102を挟んで配設されている。
送りローラ126によって所定のタイミングで給紙部113から搬出された記録媒体103は、この2次転写ロール120と中間転写体102との間に挿通される。この時、上記2次転写ロール120とロール117との間に電圧を印加しており、中間転写体102に保持された未定着トナー像は上記2次転写位置において記録媒体103に転写される。
そして、未定着トナー像が転写された記録媒体103は中間転写体102から剥がされ、搬送ベルト115によって加熱ロール127と加圧ロール128とが対向して設けられた定着器の加熱ロール127と加圧ロール128との間に送り込まれて未定着トナー像の定着処理がなされる。このとき、2次転写工程と定着工程とを同時に行う転写同時定着工程の装置構成とすることも可能である。
中間転写ベルト102は、ベルト用クリーニング装置116が備えられている。このクリーニング装置116は中間転写体102と接離自在に配設されており、2次転写される迄、中間転写体102から離間している。
なお、本実施形態に係る画像形成装置の構成としては、上記形態に限定されるわけではなく、例えば、像保持体、像保持体表面を帯電する帯電手段、像保持体表面を露光し静電潜像を形成する露光手段、像保持体表面に形成された潜像を現像剤にて現像し、トナー像を形成する現像手段、被転写材上のトナー像を転写する転写手段、被転写材上のトナー像を定着する定着手段、像保持体に付着したトナーやゴミ等を除去するクリーニング手段、像保持体表面に残留している静電潜像を除去する除電手段、など必要に応じて公知の方法で備えた画像形成装置であればよい。
この構成の画像形成装置において、中間転写ベルトを利用した2次転写方式の転写手段や、定着ベルトを利用したベルト方式の定着手段のベルトとして、上記第1実施形態に係る無端ベルトをその構成に応じて適用し得る。
ここで、第1の実施形態の無端ベルトをベルト方式の定着手段における定着ベルトに適用する場合、その装置構成は例えば、1つ以上の駆動部材と、前記1つ以上の駆動部材により従動回転可能な無端ベルト(定着ベルト)と、押圧部材とを少なくとも備え、前記1つ以上の駆動部材のいずれか1つの駆動部材表面と、前記無端ベルト外周面とが、前記無端ベルト内周面に接して配置され、前記無端ベルト外周面を前記駆動部材表面へと押圧する前記押圧部材により圧接部を形成し、未定着トナー像をその表面に保持する記録媒体を加熱しながら前記圧接部を通過させることにより、前記未定着トナー像を前記記録媒体体表面に定着させる画像定着装置において、前記無端ベルトとして第1実施形態の無端ベルトを用いることが好ましい。
なお、定着手段は、上記に説明した構成・機能の他にも必要に応じて他の構成・機能を有していてもよく、例えば、無端ベルトの内周面に潤滑剤を塗布して用いてもよい。潤滑剤としては公知の液体状の潤滑剤(例えば、シリコーンオイル等)を用いてもよい。また潤滑剤は、無端ベルト内周面と接して設けられたフェルト等を介して連続的に供給してもよい。
また、定着手段は、押圧部材により、圧接部の無端ベルト軸方向の圧力分布が調整されることが好ましい。例えば、潤滑剤を用いる場合には、圧力分布を調整することにより、潤滑剤を無端ベルトの一端に寄せたり、中央部に集めたり等、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態が制御される。このため、例えば、無端ベルトの一端に余分な潤滑剤を集めて回収したり、無端ベルトの中央部に潤滑剤を移動させるようにしたりすることができ、無端ベルト端部からの潤滑剤の漏れによる装置内の汚染を防がれる。
なお、この圧力分布の調整は、潤滑剤を用いると共に、更に使用する無端ベルトの内周面に既述した筋状凹凸粗さが付与されている場合に特に有用である。この場合、筋状凹凸粗さの筋の方向も考慮して圧接部の圧力分布を調整することにより、内周面に塗布された潤滑剤の存在状態の制御がより容易となる。
(第3実施形態)
図9は、第3実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。第3実施形態に係る画像形成装置は、転写搬送ベルトとして上記第1実施形態に係る無端ベルトを適用した形態である。
第3実施形態に係る画像形成装置200は、図9に示すように、ユニット200Y、200M、200C、200Bkと、記録紙(被転写体)搬送用ベルト(転写搬送ベルト)206と、転写ロール207Y、207M、207C、207Bkと、記録紙搬送ロール208と、定着手段209とを備えている。この記録紙(被転写体)搬送用ベルト206として、前記第1の実施形態の無端ベルトを備える。
ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、矢印の時計方向に所定の周速度をもって回転可能にそれぞれ像保持体である感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkが備えられている。感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkの周囲には、帯電手段202Y、202M、202C、202Bkと、露光手段203Y、203M、203C、203Bkと、各色現像器(イエロー現像器204Y、マゼンタ現像器204M、シアン現像器204C、ブラック現像器204Bk)と、感光体クリーナー205Y、205M、205C、205Bkとがそれぞれ配置されている。
ユニット200Y、200M、200C、200Bkは、記録紙搬送用ベルト206に対して4つ並列に、ユニット200Y、200M、200C、200Bkの順に配置されているが、ユニット200Bk、200Y、200C、200Mの順等、画像形成方法に合わせて適当な順序を設定し得る。
記録紙搬送用ベルト206は、支持ロール210、211、212、213によって、矢印の反時計方向に感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkと同じ周速度をもって回転可能になっており、支持ロール212、213の中間に位置するその一部が感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとそれぞれ接するように配置されている。記録紙搬送用ベルト206は、ベルト用クリーニング装置214が備えられている。
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkは、記録紙搬送用ベルト206の内側であって、記録紙搬送用ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとが接している部分に対向する位置にそれぞれ配置され、感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkと、記録紙搬送用ベルト221を介してトナー画像を記録紙(被転写材)Pに転写する転写領域を形成している。
定着器209は、記録紙搬送用ベルト206と感光体ドラム201Y、201M、201C、201Bkとのそれぞれの転写領域を通過した後に搬送するように配置されている。
記録紙搬送ロール208により、記録紙Pは記録紙搬送用ベルト206に搬送される。
ユニット200Yにおいては、感光体ドラム201Yを回転駆動させる。これと連動して帯電手段202Yが駆動し、感光体ドラム201Yの表面を所定の極性・電位に帯電させる。表面が帯電された感光体ドラム201Yは、次に、露光手段203Yによって像様に露光され、その表面に静電潜像が形成される。
続いて該静電潜像は、イエロー現像器204Yによって現像される。すると、感光体ドラム201Yの表面にトナー画像が形成される。なお、このときのトナーは一成分系のものでもよいし二成分系のものでもよいが、ここでは二成分系トナーである。
このトナー画像は、感光体ドラム201Yと記録紙搬送用ベルト206との転写領域を通過すると同じに、記録紙Pが静電的に記録紙搬送用ベルト221に吸着して転写領域まで搬送され、転写ロール207Yから印加される転写バイアスにより形成される電界により、記録紙Pの外周面に順次、転写される。
この後、感光体ドラム201Y上に残存するトナーは、感光体ドラムクリーナ205Yによって清掃・除去される。そして、感光体ドラム201Yは、次の転写サイクルに供される。
以上の転写サイクルは、ユニット200M、200C、200Bkでも同様に行われる。
転写ロール207Y、207M、207C、207Bkによってトナー画像を転写された記録紙Pは、さらに定着器209に搬送され、定着が行われる。以上により記録紙上に所望の画像が形成される。
第3の実施形態では、第1の実施形態における無端ベルトを転写搬送ベルトとして用い、記録紙などの被搬送体を搬送しているが、記録紙の搬送に限定されるものではなく、記録紙以外の被搬送体、例えば、プラスチックで出来た媒体(例えばOHPシートなど)、カード、板などの搬送にも無端ベルトが適用され得る。
なお、上記実施形態では、第1実施形態に係る無端ベルトを画像形成装置用のベルト部材(中間転写ベルト、転写搬送ベルト等)に適用した形態を説明したが、これに限られず、例えばシート等の被搬送物を搬送するためのベルトを備えた搬送装置における、当該ベルトに適用してもよい。
以上、説明した本発明の実施形態は、これらの実施の態様のみに限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で、当業者の知識に基づき、種々なる改良、変更、修正を加えた態様で実施しうるものである。
以下、実施例を用いて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例によって何ら限定されるものではない。
[参考例1A]
−第1の塗工液(A−1)の作製−
N−メチル−2−ピロリドン(以下「NMP」と略す)800g中に、ジアミン化合物として4,4‘−ジアミノジフェニルエーテル(以下「ODA」と略す)81.00g(404.6ミリモル)を加え、常温で攪拌させながら溶解した。次いで、テトラカルボン酸二無水物として3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下「BPDA」と略す)119.00g(404.6ミリモル)を徐々に添加した。テトラカルボン酸二無水物の添加・溶解後、反応液の温度を60℃まで加熱して、その後反応液温度を保持したまま20時間重合反応を行った。反応液を、#800のステンレスメッシュを用いてろ過して室温まで冷却をして溶液粘度10Pa・s(E型粘度計)のポリアミック酸溶液を得た。次いで、得られたポリアミック酸溶液1000gに、ポリビニル−2−ピロリドン(PVP)10gを添加・溶解させた後、導電剤としての乾燥した酸化処理カーボンブラック(SPECIAL BLACK4:Degussa社製、pH4.0、揮発分:14.0%:以下「CB」と略す)60gを徐々に添加した。ポールミルにて室温下12時間分散処理することによりカーボンブラックをポリアミック酸溶液に十分に分散した後、#400ステンレスメッシュでろ過して以下の組成からなるカーボン分散ポリアミック酸溶液を得た。得られたカーボンブラック分散ポリアミック酸溶液を、第1の塗工液(A−1)として用いる。
・第1の塗工液(A−1)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=200/800/60(質量比)
−第2の塗工液(B−1)の作製−
NMP950.0gに、第1の塗工液(A−1)53.0gを徐々に添加・希釈して第2の塗工液(B−1)を調整した。
・第2の塗工液(B−1)の組成:ポリアミック酸(BPDA/ODA)/NMP/CB=10/990/3(質量比)
(参考例A1)
−ポリイミド無端ベルト(C−1)の製造−
外径90mm、長さ450mmのSUS材料からなる円筒型金型を用意し、その外表面にシリコーン系離型剤を均一に塗布・乾燥処理を行った(離型剤処理)。離型剤処置を施した円筒型金型を周方向に10rpmの速度で回転させながら、円筒型金型端部より第1の塗工液(A−1)を口径1.0mmディスペンサーより吐出しながら、金型上に設置した金属ブレードにて一定圧で押し付けながら塗布を行った。ディスペンサーユニットを円筒型金型の軸方向に一定速度(100mm/分)で移動させることによって円筒型金型上に螺旋状に第1の塗工液を塗布した。第1の塗工液塗布後、ブレードを解除して円筒状金型を2分間回転し続けレベリングを行った。
その後、金型及び塗布物を乾燥炉中で150℃空気雰囲気下、10rpmで回転させながら1時間乾燥処理を行った。乾燥後、塗布物より溶媒が揮発することで塗布物は自己支持性を有するポリアミック酸樹脂成形品(無端ベルト本体)と変化した。
得られたポリアミック酸成型品の表面にはベルト内部に閉じ込められた溶媒がベルト表面層を突き破って揮発することによって生じた痕(以下「ボイド」という場合がある)が確認された。得られたポリアミック酸樹脂成形品の端部を切り取り、その膜厚を測定したところ、100μmであった。
次いで、以下の手順(第1実施形態参照)によって乾燥処理後のポリアミック酸成形品表面に表面層を形成した。まず、ポリアミック酸成型品が形成された円筒状金型(円筒状保持体)を、塗工液の液滴を吐出する吐出ヘッドを備えた塗布装置(図1、図2参照)に設置した。この塗布装置には、第2の塗工液(B−1)が装填されている。
そして、ポリアミック酸樹脂成型品が形成された円筒型金型を周方向に50rpmで回転させながら、ポリアミック酸成型品表面に吐出ヘッドから第2の塗工液(B−1)を吐出量0.1マイクロリットル/秒で20分間、吐出して塗工を行った。
次に、円筒型金型を回転させながら、温度120℃にて30分間乾燥処理を行い、表面層の乾燥を行った。乾燥処理後、成形品端部膜厚の膜厚を測定したところ、110μmであった。次いで、クリーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(C−1)を得た。
得られたポリイミド無端ベルト表面は、前述のボイドなどが修復され、均一な表面性状であった。
(参考例A2)
−ポリイミド無端ベルト(C−2)の製造−
参考例A1と同様にしてポリアミック酸成型品を円筒状金型に形成した。ポリアミック酸成型品をクリーンオーブン中で、300℃、約10分間焼成処理を行い、短時間でイミド化反応を行った。ベルト表面にはイミド化反応によって生じた水の揮発によって生じたボイドなどの欠陥が多数発生していた。
その後、金型を室温で放冷した後、ベルト表面に参考例A1と同様の条件にて表面層を形成した。表面層の乾燥処理(150℃×30分)、焼成処理(300℃×30分)を行い、ポリアミック酸成型品・表面層のイミド化反応を完遂させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(C−2)を得た。
得られたポリイミド無端ベルト表面は、前述のボイドなどが修復され、均一な表面性状であった。
(参考例A3)
−ポリイミド無端ベルト(C−3)の製造−
参考例A1と同様にしてポリアミック酸成型品を円筒状金型に形成した。ポリアミック酸成型品をクリーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を行った。その後、金型を室温で放冷した後、金型から樹脂を取り外してポリイミド無端ベルトを作製した。
得られたポリイミド無端ベルトの表面抵抗率(常用対数値)は11.0(log Ω/ □)であり、表面は均一で目立った欠陥は確認されなかった。
次いでポリイミド無端ベルトを富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)に中間転写ベルトとして搭載してA4普通紙を用いて50,000枚複写試験を行った。試験後ポリイミド無端ベルトの表面には微細な傷がベルト一面に発生しており、紙粉などの汚れが付着していた。複写画像に欠陥も生じていた。またベルトの表面抵抗率(常用対数値)は9.0(log Ω/ □)に低下していた。
複写試験後のポリイミド無端ベルトを無端ベルト本体として、円筒状保持体上に設置し、ベルト表面を3000番サンドペーパーにて研磨した。次いでベルト表面をアルコールにて洗浄して汚れ、研磨粉を除去した。
次いで、参考例A1と同様にして表面層を形成して、目的のポリイミド無端ベルト(C−3)を得た。
得られたポリイミド無端ベルトの表面は、傷もなく均一であった。またベルト表面抵抗率(常用対数値)は、11.0(log Ω/ □)に回復していた。さらに、得られたポリイミド無端ベルトを、上記と同様に富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)に中間転写ベルトとして搭載してA4普通紙を用いて50,000枚複写試験を行ったところ、高品質の複写画質が得られることを確認した。
再び、複写試験後のポリイミド無端ベルトを無端ベルト本体として、円筒状保持体上に設置し、ベルト表面を3000番サンドペーパーにて研磨した。次いでベルト表面をアルコールにて洗浄して汚れ、研磨粉を除去した。
次いで、再度、参考例A1と同様にして表面層を形成して、目的のポリイミド無端ベルト(C−3)を得た。これにより、複数回、ポリイミド無端ベルトが再利用(リサイクル)されることがわかる。
(参考例A4)
−ポリイミド無端ベルト(C−4)の製造−
参考例A1と同様にしてポリアミック酸成型品(無端ベルト本体)を円筒状金型に形成した。形成したポリアミック酸成型品の表面に生じたボイドによる欠陥部を3000番サンドペーパーにて研磨した。次いでベルト表面全体をアルコールにて洗浄して汚れ、研磨粉を除去した。
次いで、以下の手順(第1実施形態参照)によって乾燥処理後のポリアミック酸成形品表面の磨耗処理部を修復した。まず、ポリアミック酸成型品が形成された円筒状金型(円筒状保持体)を、塗工液の液滴を吐出する吐出ヘッドを備えた塗布装置(図1、図2参照)に設置した。この塗布装置には、第2の塗工液(B−1)が装填されている。
そして、ポリアミック酸樹脂成型品の研磨処理部のみに第2の塗工液(B−1)を吐出量0.1マイクロリットル/秒で5分間を吐出して塗工を行った。これにより、研磨処理部のみに塗膜を形成した。
塗膜の乾燥処理(150℃×30分)、焼成処理(300℃×30分)を行い、ポリアミック酸樹脂成型品・修復部のイミド化反応を完遂させ、研磨処理部のみを修復する修復部を形成した。その後、金型を室温で放冷し、目的のポリイミド無端ベルト(C−4)を得た。
得られたポリイミド無端ベルトの表面は、ボイドも修復され均一であった。またベルト表面抵抗率(常用対数値)は、修復部/未修復部ともに11.0(log Ω/ □)で均一であった。
(参考例A5〜A8)
−ポリイミド無端ベルト(C−5)〜(C−8)の製造−
表1及び表2に従って塗工液(B−1)の吐出時間を変量した以外は、参考例A1と同様に処理してポリイミド無端ベルト(C−5)〜(C−8)を製造した。
(参考例A9)
−ポリイミド無端ベルト(C−9)の製造−
表1及び表2に従って塗工液(B−1)の吐出時間を変量した以外は、参考例A4と同様に処理してポリイミド無端ベルト(C−9)を製造した。
(比較例A1)
−ポリイミド無端ベルト(D−1)の製造−
参考例A1と同様にして円筒状金型上に、ポリアミック酸樹脂成形品(無端ベルト本体)を形成した。得られたポリアミック酸成型品の表面にはベルト内部に閉じ込められた溶媒がベルト表面を突き破って揮発することによって生じたボイド痕が確認された。
次いで、クリーンオーブン中で、300℃、約30分間焼成処理を行い、イミド化反応を進行させた。その後、金型を室温で放冷し、金型から樹脂を取り外し、目的のポリイミド無端ベルト(D−1)を得た。
得られたポリイミド無端ベルト表面は、前述のボイドなどが修復されずに残存しており、電子写真装置にて複写画質の試験を行ったところ、ボイド部が画質欠陥となって現れた。
(評価A)
上記参考例A及び比較例Aで得られたポリイミド無端ベルトにつき、以下の評価を行った。結果を表1及び表2に示す。
(膜厚の測定)
ベルト膜厚測定には、サンコー電子社製渦電流式膜厚計CTR−1500Eを用い、同一試料ついて5回測定を行い、その平均値をベルト膜厚とした。
また、表面層、及び修復部の膜厚は、表面層形成前後の膜厚差をもって、修復部の膜厚保は修復処理前後の膜厚差をもって定めた。
(ベルトの表面性状の評価)
得られたポリイミド無端ベルト表面の外観を目視観察した。表面のうねり、折れ、表面グロスムラ等のポリイミド無端ベルト表面内での均一性を以下のように評価した。
「○」:まったく欠陥の発生が見られず、膜の均一性に優れる。
「○〜△」:欠陥の発生がやや見られるが、実用には問題ない。
「△」:欠陥の発生が見られ、実用にはやや支障がある。
「×」:欠陥が多発し、実用できない。
(表面抵抗率の測定)
得られたそれぞれのポリイミド無端ベルトを円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、JIS K6911(1995)に従って測定した。具体的には、22℃/55%RH環境下、電圧100Vを印加し、10秒後における電流を測定
し、表面抵抗率(ρs)の常用対数値を算出した。
表面抵抗率の測定方法の詳細は、以下の通りである。図10に示すように、表面抵抗率の測定に用いる円形電極は、第一電圧印加電極300Aと板状絶縁体300Bとを備える。第一電圧印加電極300Aは、円柱状電極部300Cと、該円柱状電極部300Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部300Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部300Dとを備える。第一電圧印加電極300Aにおける円柱状電極部300C及びリング状電極部300Dと板状絶縁体300Bとの間に測定試料であるポリイミド無端ベルト300Tを挟持し、第一電圧印加電極300Aにおける円柱状電極部300Cとリング状電極部300Dとの間に電圧V(V)を印可したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により表面抵抗率ρs(Ω/□)を求める。
式:ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
ここで、上記式中、d(cm)は円柱状電極部300Cの外径を示す。D(cm)はリング状電極部300Dの内径を示す。
(体積抵抗率の測定)
得られたそれぞれのポリイミド無端ベルトを円形電極(三菱油化(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極部の外径Φ16mm、リング状電極部の内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、JIS K6911(1995)に従って測定した。具体的には、22℃/55%RH環境下、電圧100Vを印加し、30秒後における電流を測定
し、体積抵抗率(ρv)の常用対数値を算出した。
体積抵抗率の測定方法の詳細は、以下の通りである。図11に示すように、表面抵抗率の測定に用いる円形電極は、第一電圧印加電極400Aと第二電圧印加電極400Bとを備える。第一電圧印加電極400Aは、円柱状電極部400Cと、該円柱状電極部400Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部400Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部400Dとを備える。第一電圧印加電極400Aにおける円柱状電極部400C及びリング状電極部400Dと第二電圧印加電極400Bとの間に、測定試料であるポリイミド無端ベルト400Tを挟持する。そして、第一電圧印加電極400Aにおける円柱状電極部400Cと第二電圧印加電極400Bとの間に電圧V(V)を印可したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により表面抵抗率ρv(Ω/□)を求める。
式:ρv=πd2/4t×(V/I)
ここで、上記式中、d(cm)は円柱状電極部400Cの外径を示す。t(cm)はポリイミド無端ベルト400Tの膜厚を示す。
(耐折性の評価)
得られたそれぞれのポリイミド無端ベルトから150mm×15mmの試験片を作製した。なお、ベルトの膜厚について、塗工時に条件を様々制御して、80μmになるように調整した以外は、各例と同様にしてポリイミド無端ベルトを作製した。JIS−C5016(1994年)に準じて、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定した。同一試料について10回の測定を行い、その平均値をもって耐折性の評価結果とした。測定機は、東洋精機MIT耐揉疲労試験機MIT−DAを使用した。
(ボイド数の評価)
得られたポリイミド無端ベルトから10cm四方の試験片をランダムに5箇所切りだし、ボイドの発生を目視にて観察した。試験片中に発生している1mm以上及び3mm以上のボイド数を評価した。
(印字画質の評価)
富士ゼロックス社製DocuCentreColor2220改造機(プロセス速度:250mm/sec、一次転写電流:35μAに改造)を使用し、得られたポリイミド無端ベルトを中間転写ベルトとして搭載して、高温高湿(28℃85%RH)及び低温低湿(10℃15%RH)で、Cyan、Magentaの50%ハーフトーンを富士ゼロックス社製C2紙に出力し、以下の規準で濃度ムラ及び斑点ディフェクトを目視で評価した。
−濃度ムラ−
10枚目の印字サンプルの印字部を3×3=9等分に分割してそれぞれの色度を色彩色度計CR−210(ミノルタ社製)を用いて測定して色度の最大と最小との差である色差ΔEを求めた。
◎:色差ΔEが0.3未満濃度ムラが確認されない。
○:色差ΔEが0.3以上0.5未満
△:色差ΔEが0.5以上1.0未満
×:色差ΔEが1.0以上
−斑点ディフェクト−
10枚目の印字試料の印字部内を目視観察した。
◎:0.5mm未満の大きさの斑点が10個未満。
○:0.5mm未満の大きさの斑点が10個以上50個未満発生する。
△:0.5mm未満の大きさの斑点が50個以上100個未満発生する。又は、0.5mm以上1.0mm未満の大きさの斑点が50個未満発生する。
×:0.5mm未満の大きさの斑点が100個以上発生する。又は、0.5mm以上1.0mm未満の大きさの斑点が50個以上発生する。又は、1.0mm以上の大きさの斑点が1個以上発生する。
(通紙テスト後特性の評価)
膜厚、表面抵抗率、体積抵抗率、及び耐折性について、1000枚の通紙テスト後(30%ハーフトーン画像形成後)においても測定を行い、通紙前との比較を行った。
但し、表1及び表2中、*1)ポリアミック酸からポリイミド化に伴い、ベルト本体の厚みが100μmから80μmに変化した。*2)修復部の膜厚差は1μm未満であった。表2中*3)、*4)は修復部の膜厚を、*5)は未修復部の膜厚を示す。
[実施例B]
(実施例B1〜B3)
塗工液(B−1)を塗工する前に、次のようにして、成形品表面をアルカリ性溶液により加水分解処理を施した後、酸性溶液により処理を施した以外は、それぞれ参考例A1〜A3と同様にしてポリイミド無端ベルト(E−1)〜(E−3)を得た。
得られた成形品を、円筒状金型の外面に設置した。ベルト端部より処理液の進入を防ぐため、ベルト端部をテープにて円筒状金型に貼り付けた。成形品と円筒状金型を、70℃に加熱した水酸化ナトリウム水溶液(水100質量部に対して水酸化ナトリウム5質量部を配合した水酸化ナトリウム水溶液)中に浸漬した。30分間加水分解処理を施した後、成形品と円筒状金型を水酸化ナトリウム水溶液中より取り出し、純水にて洗浄を行った。塩酸水溶液(水100質量部に対して塩化水素5質量部を配合した塩酸水溶液)中に浸漬して25℃で30分間処理を行った。塩酸水溶液より取り出して、純水にて洗浄を行った。このようにして、成形品表面をアルカリ性溶液により加水分解処理を施した後、酸性溶液により処理を施した。
得られたポリイミド無端ベルトにつき、評価Aと同様にして評価した。結果を表3に示す。
以上の結果から、本実施例では、簡易に外周面に有する欠陥部を修復した無端ベルトが得られることがわかる。