JP4851198B2 - ガソリン基材の製造方法及びガソリン組成物 - Google Patents

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  • Production Of Liquid Hydrocarbon Mixture For Refining Petroleum (AREA)

Description

本発明は、ガソリン基材の製造方法、及び当該方法によって製造されたガソリン基材を配合して製造したガソリン組成物に関する。特には、低オクタン価のナフサ留分を骨格異性化し、得られた異性化生成物から低分岐数の低オクタン価化合物群を分離してさらに骨格異性化を施し、オクタン価の高い多分岐飽和脂肪族炭化水素に富んだガソリン基材を製造する方法に関する。
近年、自動車燃料による環境汚染が社会問題となってきており、環境負荷の少ない自動車燃料が切望されている。燃料油中の硫黄分は燃焼時に排ガス触媒の性能を低下させることが知られており、10質量ppm、さらに1質量ppmに低減する要求が高まっている。加えてガソリン中の芳香族分、オレフィン分も環境に悪影響を及ぼす可能性も指摘されている。高オクタン価燃料としては、例えば芳香族分を多く含むものが知られているが、該燃料は排ガス中の芳香族化合物の量を増加する。また、自動車燃料の低硫黄化によって、排ガス触媒の性能維持による環境負荷の低減(特に排ガス中の炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)、一酸化炭素(CO)などの低減)も望まれている。しかし、使用する基材の性状やブレンド比率によっては、低硫黄化により製品の運転性能の悪化を引き起こす場合がある。
そこで、高オクタン価炭化水素化合物であるアロマ、オレフィンを用いる代わりに、比較的オクタン価の高い分岐状飽和脂肪族炭化水素を主成分とするガソリン基材を製造する必要がある。オクタン価の低い直鎖状飽和脂肪族炭化水素を分岐状飽和脂肪族炭化水素に、あるいは分岐数の少ない飽和脂肪族炭化水素を分岐数の多い飽和脂肪族炭化水素に変換する方法として、骨格異性化反応が挙げられる。骨格異性化反応には、従来から酸触媒が使用されてきたが、この反応は熱平衡に支配されている点が特徴であり、反応温度が低温であるほど分岐数の多い飽和脂肪族炭化水素が安定に存在するため、低温でも高活性を示す触媒が望まれていた。例えば、炭素数が4のブタンには直鎖状でオクタン価94のノルマルブタンと分岐状でオクタン価101のイソブタンの2種類の異性体が存在するが、反応温度300℃における直鎖体/分岐体比は53/47であるのに対し、200℃では47/53、100℃では30/70となり、低温ほどオクタン価の高い分岐体の比率が増加する傾向がある(非特許文献1参照)。異性化触媒としては、非特許文献2に示されているような、硫酸ジルコニア、タングステン酸ジルコニア等の固体超強酸触媒に白金を担持した触媒が例示される。また、固体超強酸の酸強度測定方法としては、ハメット指示薬によるハメット酸度関数を用いる方法が良く使用される(非特許文献3)。
これまでに炭素数6以下の飽和脂肪族炭化水素を原料として用いる異性化反応は利用されている。特に触媒として塩素化アルミナに貴金属を担持した触媒は活性が高く、これを用いるプロセスは既に広く普及している。しかし、このプロセスを用いた場合、触媒中の塩素が反応中に脱離してしまい、触媒活性が低下するのみならず、装置に対して塩素腐食を起こすことや、生成油の安定性を低下させること、環境に悪影響を与えずに廃塩素類を処理するには多大のコストがかかる等の理由から好ましくない。
一方、炭素数7以上の飽和脂肪族炭化水素を原料油に用いて異性化反応を行なうと、安定な三級カルボカチオンが生成しやすいため、ガソリン基材として好ましくない分解反応も並行して起きてしまうことから、効率的な異性化は困難とされてきた。
また、低オクタン価である直鎖状飽和脂肪族炭化水素の分離方法としては、分岐状飽和脂肪族炭化水素と分子サイズの違いから、吸着分離又は膜分離が広く知られている。
直鎖状飽和脂肪族炭化水素、分岐状飽和脂肪族炭化水素及び芳香族炭化水素類に分離する方法は開示されている(特許文献1参照)が、炭素数7以上の留分を異性化した異性化反応生成物などの分離方法については、何ら開示されておらず、多段の分離工程を必要とし、特に困難であると言われている。また、直鎖状飽和脂肪族炭化水素と分岐状飽和脂肪族炭化水素の分離については既に報告例はある(特許文献2参照)が、同様に具体的な異性化反応については、何ら開示されていない。また、炭素数7以上の留分に対する異性化反応、及び直鎖状飽和脂肪族炭化水素と分岐状飽和脂肪族炭化水素の分離について開示されているも(特許文献3参照)のの、イオン性液状触媒を用いるものであり、触媒の分離工程を必要とするため実用的ではなく、また使用する触媒の酸強度が不十分であるため、効果的な低温での高活性を得ることは難しい。さらに、1分岐飽和脂肪族炭化水素と多分岐飽和脂肪族炭化水素とを分離する方法も開示されている(特許文献4参照)が、やはり異性化反応自体は実用的に特段の効果を有するものではなかった。
特開平11−236574号公報 特開2002−348579号公報 特開2003−327972号公報 特許2673907号 石油学会編「石油化学プロセス 3.水素化・脱水素」193頁(1963) 荒田、PETROTECH、733〜739頁、第19巻、9号(1996) 荒田、表面、481〜491頁、第28巻、7号(1990)
本発明は、高オクタン価である分岐状飽和脂肪族炭化水素を多く含有するガソリン基材を効率よく製造するガソリン基材の製造方法を提供することを目的とするものである。さらに、このようにして調製された飽和脂肪族炭化水素を主成分とする高オクタン価のガソリン基材を用いて、環境負荷の高い芳香族分やオレフィン分を低減した高オクタン価のガソリン組成物を効率よく調製し、提供することを目的とする。
これまでは、異性化反応は熱平衡に支配されているため平衡値以上の異性化選択性は期待しにくく、飽和炭化水素系化合物を主成分とし、芳香族分やオレフィン分を低減した高オクタン価のガソリン基材、又はガソリン組成物を製造することは困難であった。
本発明者らは、適切な触媒を使用する異性化工程と適切な分離方法を用いる分離工程とを組み合わせ、この課題を解決した。すなわち、細孔特性が制御されたモレキュラーシーブ、分離膜を用いれば、その分子サイズの差あるいは吸着・透過能力の差から、オクタン価の低い直鎖状飽和脂肪族炭化水素と分岐状飽和脂肪族炭化水素との分離、あるいは1分岐の飽和脂肪族炭化水素と多分岐の飽和脂肪族炭化水素との分離が可能である。また、同一炭素数の飽和脂肪族炭化水素の中で比較すると一般的に分岐数が増えるほど沸点が低いことから、精密蒸留を用いれば、沸点が低くかつオクタン価が高い化合物を分離することが可能となり、熱平衡以上のオクタン価を有するガソリン基材を得ることができることを見出した。
また、本発明者らは、異性化反応が平衡反応であることに着目し、異性化反応生成油中の多分岐飽和脂肪族炭化水素に代表される高オクタン価化合物を分離した後に、分離されたもう一方の低オクタン価化合物をさらに異性化処理をすることにより、一段の異性化反応での平衡以上の多分岐飽和脂肪族炭化水素を有する高オクタン価のガソリン基材が得られることを見出した。特に、反応塔と分離塔の組み合わせは重要であり、どの留分を分離して再反応させるかという点を留意しなければ、場合によっては平衡的に逆反応を起こさせてしまうこともある。例えば、異性化生成物から直鎖状飽和脂肪族炭化水素を除去した留分について再反応させる場合、分岐状炭化水素化合物から直鎖状飽和脂肪族炭化水素への逆反応を起こしてしまい、かえってオクタン価を下げる結果になる。
さらに、異性化生成油を再度反応させる際、先に経験した異性化条件よりも低い温和な温度条件で反応させることにより、より有利に多分岐飽和脂肪族炭化水素を平衡的に得ることができ、かつ望ましくない分解反応も抑制できることを見出した。
そして、これらの知見を巧みに組み合わせることにより本発明を完成した。
すなわち、本発明は、次のとおりのガソリン基材の製造方法、又はガソリン組成物である。
(1)ナフサ留分を異性化してより高いオクタン価を有するガソリン基材を製造する方法において、ナフサ留分を異性化する第1の異性化反応工程、及び第1の異性化反応工程で生成した第1の異性化反応生成物を直接又は間接的に異性化する第2の異性化反応工程を含み、かつ、前記第1の異性化反応生成物を第1の低オクタン価化合物群と第1の高オクタン価化合物群に分離して第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程に送る第1の分離工程、及び/又は第2の異性化反応工程で得られた第2の異性化反応生成物を第2の低オクタン価化合物群と第2の高オクタン価化合物群に分離する第2の分離工程を含み、さらに、前記の両異性化反応工程で、ハメット酸度関数が−12より小さい固体酸触媒を用い、かつ、後段の第2の異性化反応工程における反応温度が、前段の第1の異性化反応工程における反応温度よりも10℃以上低い温度であるガソリン基材の製造方法。
(2)固体酸触媒は、周期律表第IV族の元素、周期律表第VI族の元素、及び周期律表第VIII族の元素を含み、第1の異性化反応工程に用いる固体酸触媒と第2異性化反応工程に用いる固体酸触媒は、同じものであっても、それぞれ異なっていてもよく、かつ、原料ナフサ留分さらには第1の低オクタン価化合物群及び/又は第2の低オクタン価化合物群を水素の存在下で前記固体酸触媒と接触させる、上記(1)に記載のガソリン基材の製造方法。
(3)周期律表第IV族の元素が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びスズからなる群から選ばれる1種以上であり、周期律表第VI族の元素が、タングステン、硫黄、及びモリブデンからなる群から選ばれる1種以上であり、及び周期律表第VIII族の元素が、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、鉄、コバルト、及びニッケルからなる群から選ばれる1種以上である上記(2)に記載のガソリン基材の製造方法。
(4)第1及び第2の異性化反応工程と、第1の分離工程を含み、第1の分離工程で分離した第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程で処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガソリン基材の製造方法。
(5)第1及び第2の異性化反応工程と、第2の分離工程を含み、第2の分離工程で分離した第2の低オクタン価化合物群を、第1の異性化反応生成物と共に第2の異性化反応工程で処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガソリン基材の製造方法。
(6)第1及び第2の異性化反応工程と、第2の分離工程を含み、第2の分離工程で分離した第2の低オクタン価化合物群を、第1の異性化反応工程でナフサ留分と共に処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガソリン基材の製造方法。
(7)第1及び第2の異性化反応工程と、第1及び第2の分離工程を含み、第1の分離工程で分離した第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程で処理し、第2の分離工程で分離した第2の低オクタン価化合物群を、第1の低オクタン価化合物群と共に、第2の異性化反応工程で処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガソリン基材の製造方法。
(8)第1及び第2の異性化反応工程と、第1及び第2の分離工程を含み、第1の分離工程で分離した第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程で処理し、第2の分離工程で分離した第2の低オクタン価化合物群を、第1の異性化反応工程でナフサ留分と共に処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガソリン基材の製造方法。
(9)第1及び第2の異性化反応工程と、第2の分離工程、及び所望により第1の分離工程を含み、第1の異性化反応工程で得られた第1の異性化反応生成物、又は第1の分離工程で分離された第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程で処理し、得られた第2の異性化反応生成物を第2の分離工程で直鎖状飽和脂肪族炭化水素を主成分とする第2の低オクタン価化合物群、分岐数が1の飽和脂肪族炭化水素を主成分とする第2の中オクタン価化合物群、及び分岐数が2以上の飽和脂肪族炭化水素を主成分とする第2の高オクタン価化合物群に分離し、第2の低オクタン価化合物群をナフサ留分と共に第1の異性化反応工程で処理し、第2の中オクタン価化合物群を第1の異性化反応生成物又は第1の低オクタン価化合物群と共に第2の異性化反応工程で処理する上記(1)〜(3)のいずれかに記載のガソリン基材の製造方法。
(10)
第1及び第2の分離工程が、ケイ素、アルミニウム及び炭素からなる群から選ばれる1種以上の元素を含有する吸着剤による分離工程、分離膜による分離工程、精密蒸留による分離工程、又はそれらの2種以上の組み合わせによる分離工程である上記(1)〜(9)のいずれかに記載のガソリン基材の製造方法。
(11)上記(1)〜(10)のいずれかに記載のガソリン基材の製造方法により得られたガソリン基材を配合して得られた、リサーチ法オクタン価が90以上、硫黄分が10.0質量ppm以下、50容量%留出温度が100℃以下、蒸気圧が65kPa以下、かつ、直鎖状飽和脂肪族炭化水素の含有量が9.0容量%以下であるガソリン組成物。
(12)硫黄分が1.0質量ppm以下である、上記(11)に記載のガソリン組成物。
本発明は、上記のガソリン基材の製造方法により、分岐状飽和脂肪族炭化水素を多く含有する高オクタン価のガソリン基材の製造方法を提供することができる。すなわち、分離工程で異性化反応生成物から高オクタン価化合物を分離することにより、熱平衡以上の高いオクタン価を有するガソリン基材を得ることができ、また、異性化反応生成油中の多分岐飽和脂肪族炭化水素に代表される高オクタン価化合物を分離、除去した後に、低オクタン価化合物をさらに異性化処理することにより、高オクタン価化合物を高収率で得ることができる。
さらに、第2の異性化反応工程で、第1の異性化反応工程における異性化条件よりも低い温度の温和な条件で反応させることにより、平衡的により有利に多分岐の飽和脂肪族炭化水素を高収率で得ることができ、かつ望ましくない分解反応を抑制することができる。
また、このようにして調製された多分岐の飽和脂肪族炭化水素を主成分とする高オクタン価のガソリン基材を用いることによって、相対的に環境負荷の高い芳香族分やオレフィン分を多用せずにオクタン価(RON)の高いガソリン組成物を調製し、提供することができる。前記の「相対的に」なる用語は、本発明のガソリン組成物と従来のガソリン組成物を比較したとき、RONが同じであれば、本発明のガソリン組成物は芳香族分やオレフィン分を少なくすることができ、芳香族分やオレフィン分の含有量が同じであれば、RONを高くすることができることを意味する。
さらに、本発明から得られるガソリン組成物については、分岐状飽和脂肪族炭化水素化合物の含有量が多いことから、ガソリンエンジン用燃料としてはもちろんのこと、これに加えて燃料電池用の燃料としても、エネルギー効率の高い性能を有しており、共用ガソリンとしても使用することができる。
本発明のガソリン基材の製造方法は、基本的には2つの異性化反応工程と、そこで生成した異性化反応生成物を高オクタン価化合物群と低オクタン価化合物群とに分離する1つ又は2つの分離工程からなる方法であり、適切な異性化処理方法と、適切な分離方法とを最適に組み合わせることにより、異性化工程での熱平衡により制約される高オクタン価の分岐状飽和脂肪族炭化水素を、より多く製造する方法である。
すなわち、本発明のガソリン基材の製造方法は、ナフサ留分を異性化してより高いオクタン価を有するガソリン基材を製造する方法において、ナフサ留分を異性化する第1の異性化反応工程、及び第1の異性化反応工程で生成した第1の異性化反応生成物を直接又は間接的に異性化する第2の異性化反応工程を含み、かつ、前記第1の異性化反応生成物を第1の低オクタン価化合物群と第1の高オクタン価化合物群に分離して第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程に送る第1の分離工程、及び/又は第2の異性化反応工程で得られた第2の異性化反応生成物を第2の低オクタン価化合物群と第2の高オクタン価化合物群に分離する第2の分離工程を含み、さらに、前記の両異性化反応工程で、ハメット酸度関数が−12より小さい固体酸触媒を用い、かつ、後段の第2の異性化反応工程における反応温度が、前段の第1の異性化反応工程における反応温度よりも10℃以上低い温度であることを特徴とする。
本発明では、分離工程において分離された各化合物群を各合物群のオクタン価の相対比較により、低オクタン価化合物群あるいは高オクタン価化合物群と称することとする。これら分離された化合物群に含まれる化合物としては、(1)直鎖状飽和脂肪族炭化水素を主成分として含む低オクタン価化合物、(2)分岐数2以上の飽和脂肪族炭化水素を主成分として含む高オクタン価化合物、及び(3)分岐数1の飽和脂肪族炭化水素を主成分として含む中オクタン価化合物の3つの化合物に分離することができる。二成分に分離する場合、(3)の中オクタン価化合物は、(1)の低オクタン価化合物に含めて分けるケースと、(2)の高オクタン価化合物に含めて分けるケースとがあり、前者の場合低オクタン価化合物群は分岐数1以下の飽和脂肪族炭化水素を主成分として含むことになり、後者の場合高オクタン価化合物群は分岐数1以上の飽和脂肪族炭化水素を主成分として含むことになる。
(異性化工程)
分岐数が1以下の飽和脂肪族炭化水素を分岐度の高い化合物へ変換する異性化工程には、異性化触媒としてハメット酸度関数が−12以下、さらに好ましくは−13以下、特に好ましくは−13.5以下である固体酸触媒を使用する。ここで酸度関数が−12よりも大きい、すなわち酸強度が弱い触媒を使用した場合は、異性化反応に要する温度が高くなり、熱平衡的に不利となるため十分な多分岐飽和脂肪族炭化水素を得ることができない。本発明においては、周期律表第IV族の元素、周期律表第VI族の元素、及び周期律表第VIII族の元素を含有する固体酸触媒が好ましい。
周期律表第IV族の元素としては、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、スズからなる群から選ばれる1種以上の元素などが挙げられ、特にジルコニウムが好ましい。周期律表第VI族の元素としては、タングステン、硫黄、モリブデンからなる群から選ばれる1種以上の元素などが挙げられ、特に硫黄あるいはタングステンが好ましい。また、周期律表第VIII族の元素からなる群から選ばれる1種以上の元素としては、白金、パラジウム、ルテニウム、ロジウム、イリジウム、オスミウム、鉄、コバルト、ニッケルからなる群から選ばれる1種以上の元素などが挙げられる。このうち、白金、パラジウム、及びルテニウムが好ましく、特に白金を好ましく用いることができる。
固体酸触媒として、具体的には、ジルコニアを含む担体に硫酸分と白金を担持した「白金硫酸ジルコニア」、ジルコニアを含む担体にタングステンの酸化物成分と白金を担持した「白金タングステン酸ジルコニア」、酸化スズを含む担体に硫酸分と白金を担持した「白金硫酸酸化スズ」などに代表される固体酸触媒が好ましく用いられる。
このような固体酸触媒中に周期律表第IV族の元素として10〜72質量%、好ましくは15〜65質量%、特には20〜60質量%含むことが好ましい。この元素は、前期の範囲を外れて多すぎても少なすぎても、適当な酸強度を維持することができなくなるため好ましくなく。周期律表第VIII族の元素の割合(当該元素含有量の平均値)は、当該元素として、0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、特には0.1〜3質量%である。周期律表第VIII族の元素の含有量が少なすぎると、触媒性能向上効果が低く好ましくない。この元素の含有量が多すぎると、触媒の比表面積や細孔容積の低下を引き起こすため好ましくない。
なお、周期律表第VI族の元素(タングステン、硫黄、モリブデン)の含有量は、個々の固体酸触媒とそこに用いる第VI族の元素によって大きく異なる。例えば、触媒中に占める硫酸分の割合は、白金硫酸ジルコニアでは、硫黄元素として0.7〜7質量%が好ましく、さらには1〜6質量%、特には2〜5質量%が好ましい。一方、触媒中に占めるタングステン分の割合は、白金タングステン酸ジルコニアでは、タングステン金属元素として2〜30質量%、特に5〜25質量%、さらには10〜20質量%含むことが好ましい。モリブデンもタングステンと同様の含有量が好ましい。
また、触媒中にアルミナをアルミニウム元素として5〜30%、好ましくは7〜28質量%、特には8〜25質量%含むことが好ましい。又は、ゼオライトなどの複合金属酸化物として含んでもよい。ジルコニア部分は実質的に正方晶ジルコニアからなることが好ましい。
固体酸触媒の比表面積は50〜500m2/gが好ましく、さらには100〜300m2/g、特には140〜200m2/gが好ましい。比表面積はBET法によって測定できる。
本発明に用いる固体酸触媒の細孔構造に関して、細孔直径は0.002〜10μmが好ましく、細孔直径0.002〜0.05μmの範囲については窒素吸着法により、細孔直径0.05〜10μmの範囲は水銀圧入法により測定できる。0.002〜10μmの細孔直径を有する固体酸触媒の細孔容積は0.2cm3/g以上が好ましく、さらには0.3cm3/g以上、特には0.35〜1.0cm3/gが好ましい。
固体酸触媒の形状は特に限定されるものではなく、粉末状、ペレット状、タブレット状、ビーズ状などどのような形状でもかまわないが、粉体でなく、成形された形状が好ましい。例えば、押出し成形で容易に得ることができる断面が円の円柱状やクローバ型などの異形の柱状(平均径約1.5mm、長さ約4.0mm)のペレットあるいはエクストゥルード(extrude)と呼ばれる形態の固体酸触媒を好ましく用いることができる。
反応温度100〜300℃、反応圧力0.5〜5MPa、水素/原料油比0.5〜20mol/mol、液空間速度(LHSV)0.3〜10h-1の反応条件で異性化反応を進めると、直鎖状飽和脂肪族炭化水素が異性化されて分岐状飽和脂肪族炭化水素が増加する。前記の反応条件の中でも特に好ましい反応条件としては、例えば、反応温度120〜250℃、反応圧力1〜3MPa、水素/原料油比2〜10mol/mol、LHSV:0.5〜5h-1である。
本発明は2工程の異性化反応を要するが、各工程で使用する触媒は同一であっても、また活性の異なる触媒を使用しても構わない。ここで重要なのは、後段の異性化工程では、前段の異性化工程で生成したある程度分岐した異性化油を再度処理するので、前段の異性化工程よりも反応条件を温和なものとし、過分解反応を起こさせないことである。具体的には、反応温度を下げること、LHSVを上げて接触時間を短くすること等の方法が挙げられるが、一般的には反応温度を下げる方が望ましい。さらに詳細に述べると、後段の異性化工程の反応温度は前段の異性化工程の反応温度よりも10℃以上低い温度で反応させることが好ましく、触媒の種類にもよるが、同一触媒であれば20℃以上低い温度で反応させることがさらに好ましい。これにより望ましくない分解反応を抑制できるばかりではなく、熱平衡的に有利な低温反応での処理が可能となり、より分岐度の高い、高オクタン価の異性体を多く得ることができる。異なる種類の触媒を使用する場合は、それぞれの有する酸強度を考慮して、反応温度を選定することが望ましい。
(原料油)
本発明に用いる原料油のナフサ留分は、典型的には、石油精製工程から得られた蒸留操作などにより分取されるいわゆるナフサ留分である。原油の常圧蒸留や各種の留出油の水素化脱硫装置、水素化分解装置、接触改質装置、流動接触分解装置などから得られるナフサ留分、また、必要に応じてさらに蒸留分離した留分を用いることができる。また、石炭液化や天然ガスから合成された飽和炭化水素油や、さらに、これらを分解して得られた炭化水素油も、後述の蒸留性状を有するナフサ留分相当の炭化水素油であれば原料として用いることができる。
ナフサ留分として、具体的には、少なくとも40〜50℃の、好ましくは30〜60℃の沸点成分を含むライトナフサ留分や、少なくとも90〜110℃の、好ましくは90〜140℃の沸点成分を含むヘビーナフサ留分が挙げられる。さらには、ライトナフサ留分は10容量%留出温度が10〜50℃、特には、20〜45℃であり、95容量%留出温度が50〜90℃、特には、60〜80℃である蒸留性状を有する。ヘビーナフサ留分は10容量%留出温度が80〜140℃、特には、90〜120℃であり、95容量%留出温度が140〜220℃、特には、140〜200℃である蒸留性状を有する。本願発明に用いるナフサ留分として、ライトナフサ留分及びヘビーナフサ留分のいずか一方、またはこれらの適宜の混合物を使用できる。
(分離工程)
一般的に炭化水素の分離方法としては、吸着分離、膜分離、及び化合物の沸点差を利用する蒸留分離が知られている。蒸留分離の場合、石油精製で用いられる炭化水素は、通常多数の化合物から構成される混合物であり、炭素数の幅が広いために、分子形状(分子構造ないし分子の骨格)で分離するには限界がある。それに対して、吸着分離や膜分離のように、分子形状の違いを利用して分離するプロセスでは、分子量の違いの影響も多少あるものの、それよりも分子形状の違いに影響を受けやすいため、多成分混合油の中から、直鎖状飽和脂肪族炭化水素のみを分離することには有用な手法である。
吸着分離に用いる吸着剤として、多孔質無機酸化物が好ましく、例えば、A型ゼオライト、ZSM−5型(MFI型)ゼオライト、Y型ゼオライト、X型ゼオライトに代表される各種ゼオライト、シリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、白土、ケイソウ土、活性炭、合成樹脂等が挙げられる。吸着剤は、上記化合物の1種のみで用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良い。例えば、A型ゼオライトの場合、分子サイズの小さい直鎖状飽和脂肪族炭化水素のみが細孔の中に取り込まれて吸着され、吸着された直鎖状飽和脂肪族炭化水素は、より吸着力の高い化合物によって脱離されて、直鎖状飽和脂肪族炭化水素のみを分離することができる。脱離の際に、温度差や圧力差を利用して脱離させることもできる。
各種ゼオライトにおいて、吸着分離性能に寄与する陽イオンは、プロトン(H)タイプの他、ナトリウム(Na)、カリウム(K)などのアルカリ金属、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)などのアルカリ土類金属が好ましいが、遷移金属でも良い。遷移金属としては、具体的には、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)等が挙げられる。また、ゼオライト以外の上記のシリカ、アルミナ、シリカアルミナ、チタニア、マグネシア、ジルコニア、白土、ケイソウ土、活性炭、合成樹脂等の吸着剤も、これらの陽イオンを含有し、吸着性能を向上させたものであっても良い。吸着剤の形状は、粉末状、ペレット状、タブレット状、又はビーズ状であることが好ましい。
吸着分離において、圧力は、分離能の面から低圧が好ましく、特に0.1〜0.5MPaが好ましい。分離操作温度は、特に限定されるものではないが、吸着速度と吸着平衡から適した温度を求めて用いればよく、一般的には0〜200℃が好ましく、より好ましくは20〜100℃が採用される。空間速度(液体の場合はLHSV、気体の場合はGHSV)は過剰に高すぎると分離能力が低下し、逆に低すぎると装置が大きくなりすぎるため、適した範囲に設定する。具体的には、液体の場合、LHSVは0.05〜10h-1が好ましく、0.1〜5h-1が特に好ましい。また、吸着した炭化水素を吸着剤から脱着させる際、水素や窒素などのガスを共存させても良い。
膜分離の場合も、例えば、分子篩機能を有するMFI型ゼオライト膜などのように、分子サイズの小さい直鎖状飽和脂肪族炭化水素のみを透過させて分離する方法と、Y型ゼオライト膜、シリカ膜、高分子膜などのように、分離膜素材の吸着特性や溶解特性により特定の化合物をより多く透過する方法がある。
分離膜としては、アルミナやステンレスに代表される多孔質支持体を基板として、ゼオライト膜やシリカアルミナ膜に代表される無機性膜やポリイミド樹脂膜等に代表される有機性膜を多孔質支持体の表面あるいは細孔内部に形成した分離膜を使用することができる。前記多孔質支持体としては、ステンレスの面に垂直方向に針状の空孔が連なったものであってもよいし、アルミナや金属の微粒子が結合したものであってもよい。また物性的には機械的強度が高く、かつゼオライト層を形成するための水熱処理及びその後の熱処理において材質的に安定であることが必要であり、例えば、アルミナ、チタニア、ムライト等のセラミック、ステンレスやチタンなどの金属、ガラスなどを用いることができ、好ましくはチタニア、アルミナ等の多孔質支持体である。また、多孔質支持体及び分離膜の形状は、炭化水素を分離するのに適したものであれば、どのような形状でもよく、例えば、膜状、板状、筒状、円筒状、ハニカム状などが挙げられる。
膜による分離操作は、供給側と透過側の両側とも気相である蒸気透過法(vapor permeation)、供給側が液相で透過側が気相である浸透気化法(pervaporation)、供給側と透過側の両側とも液相である液相法の何れの方法を採用してもよいが、異性化反応生成物の状態に適した分離操作方法を採用することにより、より効率化を図ることができる。具体的には、例えば、第1の異性化反応工程と第2の異性化反応工程との間での分離操作は、蒸気透過法が好ましい。分離操作温度は特に限定されるものではないが、透過速度と分離係数から適した温度が求められ、0〜300℃が好ましく、より好ましくは100〜200℃が採用される。圧力は、分離膜の損傷を避けるために低圧が好ましく、特に絶対圧として0.5kPa〜0.5MPaが好ましい。
膜分離における分離係数は、一般に供給側の濃度比に対する透過側の濃度比で表される。例えば、2成分A及びBの供給側の濃度(又は分圧)をそれぞれXa及びXb、透過側の濃度(又は分圧)をそれぞれYa及びYbとすると分離係数α=(Ya/Yb)/(Xa/Xb)と表せる。一般に、分離係数αは40以上が望ましいとされている。例えば、Xa=0.5、Xb=0.5からYa=0.98、Yb=0.02と分離される場合、分離係数α=(0.98/0.02)/(0.5/0.5)=49である。MFI型ゼオライトを用いたC6飽和脂肪族炭化水素の異性体分離では、100℃において、ノルマルヘキサン/2−メチルペンタンの分離係数は約100、ノルマルヘキサン/2,2−ジメチルブタンの分離係数は1,000以上、2−メチルペンタン/2,2−ジメチルブタンの分離係数は数十以上となることが示されており(例えば、松方ら、石油学会第35回石油・石油化学討論会講演要旨、1B07(2005)参照)、十分に実用可能な分離係数である。
一方、蒸留方法では、還流比を上げ分離能を高くすると、極めて小さい沸点の差でも分離することができる。同一の炭素数の場合、一般的に分岐数の多い化合物ほど沸点が低い傾向があることから、分岐数ごとに分離するためには有用な方法である。例えば、炭素数が8であるオクタンには多くの異性体が存在するが、直鎖のノルマルオクタン、1分岐体の3-メチルヘプタンの沸点は、それぞれ126℃、119℃であるのに対して、2分岐体の2,4-ジメチルヘキサン、3分岐体の2,2,4-トリメチルペンタンではそれぞれ110℃、99℃となり、分岐数が増えるほど沸点は低下する傾向にある。これら4種の炭素数が8の化合物のオクタン価は、それぞれ−22、27、65、100であり、分岐度が増すほどオクタン価が高くなる。これら化合物類の特性から考慮すると、多分岐飽和脂肪族炭化水素を分離する際、分子形状での分離効率が悪い場合、精密蒸留方法を適用することで分岐数の異なる同一炭素数の飽和脂肪族炭化水素を分離することが可能となる。
このような精密蒸留方法として、具体的には、充填材を充填した蒸留塔を用い、還流比を少なくとも1/1、好ましくは3/1、より好ましくは5/1とし、理論段数は多いほど好ましく、少なくとも15段、好ましくは30段以上、より好ましくは50段以上とする。充填材は特に限定されないが、熱履歴や水分などによって形状を損なうことがないようにするため、ステンレス製、金属製、耐火性無機物製などが広く使用される。形状としては、円筒状、サドル状、ハニカム状、メッシュ状や、それらを改良した形状が挙げられるが、具体例としては、ラシヒリング、ヘリパック、ディクソンパッキング、グッドロールパッキングなどが挙げられる。蒸留の温度、圧力条件は、蒸留分離する原料によって異なるため限定されるものではなく、蒸留分離して目的化合物が得られるように、供給原料温度、塔頂温度、リフラックス温度や蒸留塔の真空度などを適宜設定すればよい。
本発明の分離工程において使用する分離方法は、前述の吸着剤による分離方法、分離膜による分離方法及び精密蒸留による分離方法のいずれの方法でも、また、2種以上の方法を組み合わせた分離方法でも構わない。また、本発明の第1の分離工程と第2の分離工程での分離方法は、同じ分離方法であっても、異なっていても構わない。
本発明のガソリン基材の製造方法によれば、ナフサ原料を異性化して高オクタン価化合物の含有量を高めるだけでなく、得られた異性化反応生成物を上記の方法で分離することにより、さらに高オクタン価の化合物を得ることができる。
本発明において分離された直鎖状飽和脂肪族炭化水素を主成分として含む低オクタン価化合物は、さらに、異性化することによりオクタン価を高めることができる。また、外部に抜き出して石油化学の原料など、別の用途に利用することもできる。
(プロセスフロー例)
本発明のガソリン基材の製造方法は、基本的には2つの異性化反応工程と、そこで生成した異性化反応生成物を高オクタン価化合物群と低オクタン価化合物群とに分離する1つ又は2つの分離工程からなる方法であるが、以下、プロセスフローを用いて詳しく説明する。
図1は、本発明のガソリン基材の製造方法の基本的なプロセスフローを示す。図1において、R1、R2はそれぞれ固体触媒を用いて異性化反応を行う第1の異性化反応工程2、第2の異性化反応工程4を示し、S1はR1で生成された第1の異性化反応生成物3を第1の高オクタン価化合物群7と第1の低オクタン価化合物群8に分離する第1の分離工程6を示し、S2はR2で生成された第2の異性化反応生成物5を第2の高オクタン価化合物群10と第2の低オクタン価化合物群11に分離する第2の分離工程9を示す。なお、S1で分離された第1の低オクタン価化合物群8は、R2に送られてR1よりも10℃以上低い温度で異性化されること、及び高オクタン価化合物が除去された化合物を原料に用いることにより、さらに分岐度は増し、効果的に高オクタン価化合物を得ることができる。
最終的に、ガソリン基材としては、(a)S1及びS2がある場合、第1及び第2の高オクタン価化合物群(7及び10)が得られ、(b)S1だけがある場合には、第1の高オクタン価化合物群7と第2の異性化反応生成物5が得られ、(c)S2だけがある場合には第2の高オクタン価化合物群10が得られる。S2がある場合((a)及び(c)の場合)、第2の低オクタン価化合物群11も得られるが、これはガソリン基材としては、低オクタン価で好ましいものではないので、後述のようにR1、R2に戻して再処理するか、あるいは系外に送ってガソリン基材以外の他の用途、例えば、石油化学の原料などに用いても良い。
また、図1において、第1の分離工程(S1)6と第2の分離工程(S2)9を破線の括弧でくくったのは、S1及びS2の2つとも設けられていてもよいが、いずれか1つが必須であり、もう一方は必ずしも必要でないことを示す。
図2は、第1の異性化反応工程(R1)2の後に設置した第1の分離工程(S1)6において、第1の異性化反応生成物3を第1の高オクタン価化合物群7と第1の低オクタン価化合物群8とに分離し、第1の低オクタン価化合物群8を第2の異性化反応工程(R2)4でさらに処理して、第2の異性化反応生成物5を得るガソリン基材の製造方法を示している。第1の低オクタン価化合物群8は、直鎖状飽和脂肪族炭化水素を主成分として含むものであっても、分岐数1以下の飽和脂肪族炭化水素を主成分として含むものであってもよく、R2でR1よりも低い温度で処理することにより、また、第1の高オクタン価化合物群7を分離した残りであるから反応平衡がずれて、R2においてより効果的に異性化反応が進む。ガソリン基材としては、第1の高オクタン価化合物群7、及び第2の異性化反応生成物5が該当し、両者を混合して用いることもできる。
図3は、第1の異性化反応工程(R1)2、第2の異性化反応工程(R2)4及び第2の分離工程(S2)9を含むプロセスフローを示し、第2の分離工程(S2)で分離された第2の低オクタン価化合物群11は、第1の異性化反応工程2に戻されて再び異性化処理されるか(図3(b))、又は第2の異性化反応工程4に戻されて再び異性化処理される(図3(a))。基本的には、ガソリン基材として第2の高オクタン価化合物群10だけが製造される。第2の低オクタン価化合物群11をR1に戻す場合は、直鎖状飽和脂肪族炭化水素を主成分として含む低オクタン価化合物として分離して戻すことが好ましい。
図4は、2つの異性化反応工程(R1及びR2)と2つの分離工程(S1及びS2)を組み合わせたガソリン基材の製造方法を示すプロセスフローである。図3のフローとは、第1の分離工程6を含んでいる点で異なる。すなわち、第2の異性化反応工程では、第1の異性化反応生成物3を第1の分離工程(S1)で分離して得た第1の低オクタン価化合物群8を異性化処理する。図3と同様に、第2の分離工程(S2)で分離された第2の低オクタン価化合物群11は、第1の異性化反応工程2に戻されて再び異性化処理されるか(図4(b))、又は第2の異性化反応工程4に戻されて再び異性化処理される(図4(a))。ガソリン基材として、第1の高オクタン価化合物群7と、及び第2の高オクタン価化合物群10の高オクタン価化合物のみを製造し、両者は混合して得ることもできる。
図5は、2つの異性化反応工程(R1及びR2)と1つの分離工程(S2)を組み合わせたガソリン基材の製造方法を示すプロセスフローであり、もう1つの分離工程(S1)はあっても(図5(b))、なくてもよい(図5(a))。特に特徴的な点は、第2の分離工程9で、第2の高オクタン価化合物群10、及び第2の低オクタン価化合物群11に加えて、これらの中間のオクタン価を有する化合物群(第2の中オクタン価化合物群)12の3成分に分離して、第2の低オクタン価化合物群11と第2の中オクタン価化合物群12をそれぞれ第1の異性化反応工程2と第2の異性化反応工程4に戻して再び異性化する点にある。
第2の分離工程9で、低、中、高オクタン価化合物群の3成分に分離するが、3成分を分離する順序はどのような順序でもかまわない。また、3成分は、具体的には、低オクタン価化合物群11は直鎖状飽和脂肪族炭化水素を主な成分として含み、中オクタン価化合物群12は1分岐飽和脂肪族炭化水素を主な成分として含み、そして、高オクタン価化合物群10は2分岐以上の飽和脂肪族炭化水素を主な成分として含むことが好ましい。
第2の低オクタン価化合物群11は第1の異性化反応工程2でナフサ留分と共に再度処理され、第2の中オクタン価化合物群12は第2の異性化反応工程4で第1の異性化反応生成物と共に(図5(a))、あるいは、第1の低オクタン価化合物群8と共に(図5(b))再度異性化処理される。リサイクルされる低、中オクタン価化合物群は、第1及び第2の異性化反応工程で処理する原料の飽和脂肪族炭化水素の構造に近い構造を有しているから、より効率的に異性化反応が進む。図5(a)では、第2の高オクタン価化合物群10が、図5(b)では、第1と第2の高オクタン価化合物群7、10が高オクタン価のガソリン基材として生産される。
〔ブレンド工程〕
本発明のガソリン組成物は、前記のように処理して得られた異性化ガソリンに他のガソリン基材を適切な割合でブレンドすることによって製造することができる。
他のガソリン基材とは、本発明のガソリン組成物を調製するに際して、前記の異性化ガソリン以外に用いるガソリン基材を指し、従来のガソリン製造に用いられるガソリン基材を使用することができる。具体的には、ナフサ留分を水素化脱硫後、その軽質分を蒸留分離することにより得た脱硫直留ナフサ留分、ブチレン留分とイソブタン留分をアルキル化して得たアルキレートガソリン、接触分解ナフサ留分(FCCG)を蒸留して得た軽質留分の接触分解軽質ナフサ留分(FL)、脱硫重質ナフサを固体改質触媒により改質して得た改質ガソリン及びそれを蒸留して得られた特定の炭素数で芳香族リッチの改質ガソリン留分(例えば、炭素数7個の芳香族をリッチに含むAC7、炭素数9個の芳香族をリッチに含むAC9など)、原油の各種の精製工程から副生されるガソリン留分、さらに、単離されたブタン、ペンタンや、いわゆるBTXなどの芳香族化合物などが挙げられる。さらに、エタノールなどのアルコール類や、エタノールなどのアルコールからの誘導体であるエーテル類やエステル類の、いわゆる「含酸素化合物」を使用しても良い。
この含酸素化合物としては、例えば、炭素数2〜5のアルコール類、炭素数4〜8のエーテル類が好適であり、具体的には、エタノール、プロピルアルコール類、ブチルアルコール類などのアルコールや、アルコール類からの誘導体である、エチルイソプロピルエーテル、エチルターシャリーブチルエーテル、エチルセカンダリーブチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ターシャリーアミルエチルエーテル等のエーテル類、及び酢酸エチル、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられる。
これらの含酸素化合物は、全ガソリン組成物基準で、1〜15容量%、好ましくは3〜12容量%、より好ましくは、5〜10容量%使用される。これは、少なすぎると添加効果が少なく、また、多すぎると水分等の不純物を同伴してしまい、配管やシール材の腐食等のトラブルを引き起こすためである。例えば、エタノールは水を際限なく溶解することから、燃料中に多く含まれる場合、自動車燃料タンク内で水分が濃縮され、蓄積して悪影響を与える可能性がある。さらに、燃料油中に含酸素化合物が多く場合、例えば15容量%を超える量が含まれると、既存エンジンの空気/燃料比最適値から外れてしまい、酸素過剰気味となることから、排ガス中の窒素酸化物(NOx)量が増加してしまう欠点がある。また、含酸素化合物は、他のガソリン基材と比較すると発熱量が総じて低く、燃費を下げてしまうことがあるため、あまり多く使用することは好ましくない。
〔ガソリン組成物〕
本発明のガソリン組成物は、上記の方法で異性化、分離されたガソリン基材を配合して得られたガソリン組成物であり、リサーチ法オクタン価が90以上、硫黄分が10.0質量ppm以下、50容量%留出温度が100℃以下、蒸気圧が65kPa以下、かつ、直鎖状飽和脂肪族炭化水素の含有量が9.0容量%以下であることを特徴とする。オクタン価は好ましくは93以上、より好ましくは95以上であり、硫黄分は、好ましくは1.0質量ppm以下、より好ましくは0.5質量ppm以下である。ガソリン中の硫黄分は排気ガス中で硫黄酸化物となり、窒素酸化物除去触媒を被毒して触媒活性を低下する。被毒した窒素酸化物除去触媒は還元雰囲気下で再生して活性を回復するが、このとき通常還元雰囲気の形成するために燃料が使用され、その分燃費が悪化する原因となっている。したがって、ガソリン中の硫黄分が少ないほど燃費は向上する。50容量%留出温度は、低温運転性からは98℃以下が好ましく、さらには96℃以下がより好ましい。蒸気圧は62kPa以下が好ましく、さらには60kPa以下がより好ましい。RVPが高いと蒸発損失の増加、ベーパーロックの懸念、危険性の増加などの問題が起こりやすい。
また、直鎖状飽和脂肪族炭化水素の含有量は、1.0容量%以上7.0容量%以下が好ましく、2.0容量%以上6.0容量%以下がより好ましく、さらには2.0容量%以上5.5容量%以下が好ましい。ここで、直鎖状飽和脂肪族炭化水素の含有量が9容量%を超える場合、従来通りの蒸留性状、蒸気圧及びオクタン価を維持するために、環境に悪影響を与える可能性がある芳香族分やオレフィン分を多く含む基材多く使用せざるを得ない結果となってしまうので好ましくない。
さらに、本発明のガソリン組成物は、排気ガス性状や低温運転性維持の観点から芳香族分はできるだけ少ない方が好ましく、5.0容量%以上35.0容量%以下であることが好ましく、さらには5.0容量%以上32.0容量%以下が好ましい。一方、オレフィン含有量はRON維持、燃費、光安定性及び貯蔵安定性の観点から5.0容量%以上30.0容量%以下が好ましく、さらに好ましくは10.0容量%以上25.0容量%以下である。さらに、ガソリン車両の燃料タンク液面計に銀が一部使用されていることから、銀板腐食が1以下であることが望ましい。
〔添加剤〕
本発明のガソリン組成物の好ましい態様として、必要に応じて公知の燃料添加剤をさらに配合することができる。これらの配合量は適宜選べるが、通常は添加剤の合計量として0.1容量%以下とすることが好ましい。本発明のガソリン組成物で使用可能な添加剤としては、アミン系、フェノール系、アミノフェノール系などの酸化防止剤、シッフ型化合物、チオアミド型化合物などの金属不活性化剤、有機リン系化合物などの表面着火防止剤、コハク酸イミド、ポリアルキルアミン、ポリエーテルアミンなどの清浄分散剤、多価アルコールやそのエーテルなどの氷結防止剤、有機酸のアルカリ金属塩やアルカリ土類金属塩、高級アルコールの硫酸エステルなどの助燃剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などの帯電防止剤、アルケニルコハク酸エステルなどのさび止め剤、キニザリン、クマリンなどの識別剤、アゾ染料などの着色剤を挙げることができる。
以下に、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明は、これらに限定されるものではない。
実施例1
(異性化工程)
第1の反応器に白金タングステン酸ジルコニア触媒(触媒A)を充填し、原料油のナフサ留分としてノルマルヘプタンを第1の反応器に通油して異性化反応を実施して、第1の異性化反応生成物Aを得た。反応条件は、反応温度:200℃、反応圧力:1.0MPa、LHSV:1.5h-1、H2/Oil:5.0mol/molとした。用いた触媒Aは、外径約1.5mm、高さ約4.0mmのペレット状で、白金を1.6質量%、ジルコニウムを37.6質量%、タングステンを15.5質量%、アルミニウムを13.7質量%含有しているものであり、ハメット指示薬によるハメット酸度関数は、−13.75だった。
表1に第1の異性化反応生成物Aの性状を示す。原料のノルマルヘプタンはオクタン価が0であるので、表1から明らかなように、オクタン価は異性化反応により55.6に向上した。
Figure 0004851198
(蒸留分離工程)
次いで、得られた第1の異性化反応生成物Aを、東京特殊金網株式会社製の充填物、GOODROLL TYPE D(SUS304製)を充填した塔高4200mmH、塔径42.8mmφの蒸留塔を用いて、還流比3/1〜5/1(理論段数85段)、設定圧力を0.1MPaで蒸留し(第1の分離工程)、塔頂温度が68℃までの留分(ガス分)、68〜88℃の留分(軽質分、すなわち第1の高オクタン価化合物B)、そして残りの88℃以上の留分(重質分、すなわち第1の低オクタン価化合物C)を得た。それぞれの収率は、ガス分が9.0容量%、第1の高オクタン価化合物Bが42.6容量%、第1の低オクタン価化合物Cが48.4容量%であった。上記蒸留分離後の第1の高オクタン価化合物B、及び第1の低オクタン価化合物Cの性状を、蒸留前の第1の異性化反応生成物Aの性状と共に表1に示す。
次いで、上記のようにして得られた第1の低オクタン価化合物Cを、第2の反応器に供給して第2の異性化反応を実施した。第2の異性化反応は、触媒Aを用い、反応温度:180℃、LHSV:1.5h-1、H2/Oil:5.0mol/mol、及び反応圧力:1.0MPaの反応条件下に実施し、第2の異性化反応生成物Dを得た。
第2の異性化反応生成物Dを、上記の第1の分離工程で得たガス分、及び軽質分の第1の高オクタン価化合物Bと混合しガソリン基材Hを得た。
実施例2〜4
実施例1で調製した第1の低オクタン価化合物Cを用いて、触媒及び反応条件を変えた第2の異性化反応を行い、第2の異性化反応生成物E(実施例2)、F(実施例3)及びG(実施例4)を得た以外は、実施例1と全く同様な方法で、ガソリン基材I(実施例2)、J(実施例3)及びK(実施例4)を調製した。得られた第2の異性化反応生成物E〜Gの性状、及びガソリン基材I〜Kを、実施例1の第2の異性化反応生成物D、及びガソリン基材Hと同様に、それぞれ表3、及び表4に示す。
実施例1〜4で、第1及び第2の異性化反応器において、使用触媒、反応器の温度(反応温度)及びLHSVは表2に示す条件で行い、実施例2〜4でその他の条件は実施例1と同じ条件で実施した。
なお、触媒Bは、外径約1.5mm、高さ約4.0mmのペレット状の白金硫酸ジルコニア触媒で、白金を0.4質量%、ジルコニウムを42.1質量%、硫黄を2.5質量%、アルミニウムを15.5質量%含有し、ハメット指示薬によるハメット酸度関数が−16.0であった。
Figure 0004851198
Figure 0004851198
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比較例1〜3
比較例として、高オクタン価炭化水素を得るために、一段反応の分解指向型運転を行った。過分解型反応条件としては、反応圧力:1.0MPa、H2/Oil:5.0mol/molとし、使用触媒、反応温度、及びLHSVは、表5上部に示した条件にて実施した。
比較例1及び比較例2では、白金硫酸ジルコニア触媒(触媒B)を用い、比較例1の場合、オクタン価が実施例1と同等レベルになるように、また、比較例2の場合には、C5+留分が実施例3と同等レベルになるように、反応温度を調整した。比較例3では、触媒に白金タングステン酸ジルコニア触媒(触媒C)を用い、C5+留分が実施例3と同等レベルとなるよう反応温度を調整した。
触媒Cは、外径約1.5mm、高さ約4.0mmのペレット状の触媒であり、金属元素として白金を0.5質量%、ジルコニウムを41.8質量%、タングステンを12.8質量%、アルミニウムを14.5質量%含有し、ハメット指示薬によるハメット酸度関数は、−13.75だった。
その結果、得られた過分解異性化反応生成物L(比較例1)、M(比較例2)、N(比較例3)の性状を表5に示す。
Figure 0004851198
表4及び表5を比較すると明らかなように、オクタン価を高めようとすると、比較例1に示すよう、液体として得られるC5+留分が50容量%を下回る結果となる。これに対して、実施例1では、若干オクタン価は低いが、80容量%以上のC5+留分、すなわちガソリン基材として有用な液体留分が大量に得られる。また、比較例2及び比較例3のように液収率を高めようとするとオクタン価が50にも及ばず、実施例1〜4のような、約60以上の高オクタン価を得ることができない。
実施例5〜9、比較例4〜8
本発明で得られたガソリン基材として実施例1における第1の高オクタン価化合物B、実施例3における第2の異性化反応生成物F、比較例2における過分解異性化反応生成物M、及び従来のガソリン基材を用い、表7の上部に示す混合割合でブレンドして実施例5〜9、及び比較例4〜8のガソリン組成物を調合した。なお、用いたガソリン基材の性状を表6に、また、得られたガソリン組成物の性状を表7の下部に示す。
Figure 0004851198
Figure 0004851198
なお、従来のガソリン基材は、次のようにして調製したものを用いた。
接触分解軽質ナフサ留分(FL)
脱硫軽油あるいは脱硫重油を原料油に用い、固体触媒存在下、流動床式反応装置での接触分解反応によりオレフィン分の高い接触分解ナフサ留分(FCCG)を得、このFCCGを軽質留分と重質留分に蒸留分離して得た軽質留分(FL)である。
脱硫分解ナフサ留分(DS−FCCG)
上記FCCGを収着脱硫することにより硫黄分の低い炭化水素油を得た。アルミナにニッケルを20質量%担持した触媒を硫化処理した後、反応温度:250℃、反応圧力:常圧、LHSV:4h-1、H2/油比:340NL/Lの条件のもと、中東系原油の減圧軽油留分を水素化精製処理したものを主たる原料油とする流動接触分解で得られた接触分解ナフサ留分(FCCG)を通油してジエン低減処理を行った。さらに、共沈法にて調製した銅亜鉛アルミニウム複合酸化物(銅含有量35質量%、亜鉛含有量35質量%、アルミニウム含有量5質量%)の還元処理を行った後、ジエン処理された接触分解ガソリンを、反応温度100℃、反応圧力常圧、LHSV2.0h-1、H2/油比0.06NL/Lの条件のもと20時間通油して脱硫分解ナフサ留分(DS−FCCG)を得た。
接触改質ガソリン(AC9)
脱硫重質ナフサを固体改質触媒により移動床式反応装置を用いて反応させることにより、芳香族分の含量の多い炭化水素に改質して接触改質ガソリンを得る。改質ガソリンはそのまま使用することもできるが、ここでは蒸留分離することにより炭素数9の芳香族炭化水素を85%以上含有する留分(AC9)を得た。
エチルターシャリーブチルエーテル(ETBE)
イオン交換樹脂触媒(Amberlyst-15)を用い、エタノールとイソブチレンとを反応し、次いで蒸留法により精製し、純度95%以上のETBEを得た。
エタノール(EtOH)
市販の発酵エタノール(99度1級、日本アルコール販売(株)製)を使用した。
なお、ガソリン基材及びガソリン組成物の性状は、次の方法により測定した。
密度はJIS K 2249の振動式密度試験方法、蒸気圧はJIS K 2258のリード法蒸気圧試験方法、蒸留性状はJIS K 2254の常圧法蒸留試験方法によって測定した。硫黄分は、JIS K 2541の硫黄分試験方法によって測定した。銀板腐食はJIS K2513(石油製品−銅板腐食試験方法:対応 ASTM D130)のボンベ法(ジェット燃料)で、銅板の代わりにJIS K2276(石油製品−航空燃料油試験方法)の「14.銀板腐食試験方法」に用いる銀板を使用して評価した。芳香族分、オレフィン分、飽和炭化水素分等の各種炭化水素の成分組成はJIS K 2536のガスクロマトグラフ法による全成分試験方法により測定した。オクタン価はヒューレッドパッカード社製PIONA装置を用いて、ガスクロマトグラフ法によって測定した。
表7に示すように、本発明の方法で製造したガソリン基材をブレンドして製造した実施例5〜9のオクタン価向上ガソリンは、比較例4〜8の従来型ガソリンと比較して、異性化工程と分離工程を最適に組み合わせて得た異性化ガソリンを用いることにより、直鎖状飽和脂肪族炭化水素の含有量が低いため、蒸気圧が低く、オクタン価が高い。すなわち、実施例5〜9のオクタン価向上ガソリンは、比較例4〜8のガソリンと比較して、硫黄分や蒸留性状が同程度であっても、高いオクタン価、低い蒸気圧であり、優れた実用性能を有することがわかる。
本発明のガソリン基材の製造方法により、オクタン価の高い分岐状飽和脂肪族炭化水素の含有量を多くすることができるようになるため、これを配合して得られるガソリン組成物は、分岐状の飽和脂肪族炭化水素の高オクタン価を有効に利用して、従来オクタン価を稼ぐために使用されていた芳香族分やオレフィン分を多用しなくても良い。芳香族分やオレフィンの含有量の少ないガソリン組成物は、環境保全上からガソリンエンジン用燃料として好ましいことはもちろんのこと、これに加えて燃料電池用の燃料としても、燃焼性、エネルギー効率の高い性能を有しており、共用ガソリンとしても使用することが期待される。
本発明のガソリン基材の製造方法の概略を示す基本的なプロセスフローである。2つの分離工程(S1、S2)は、両方は必須でなく、いずれか一方あればよい。 本発明のガソリン基材の製造方法の一実施態様を示すプロセスフローである。第1の分離工程のみ含む。 本発明のガソリン基材の製造方法の一実施態様を示すプロセスフローである。第2の分離工程のみ含む。図3(a)は、第2の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程(R2)にリサイクルし、図3(b)は、第1の異性化反応工程(R1)にリサイクルしている。 本発明のガソリン基材の製造方法の一実施態様を示すプロセスフローである。2つの分離工程のみ含む。図4(a)は、第2の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程(R2)にリサイクルし、図4(b)は、第1の異性化反応工程(R1)にリサイクルしている。 本発明のガソリン基材の製造方法の一実施態様を示すプロセスフローである。第2の分離工程で高、中、低3つのオクタン価化合物群に分離して、低オクタン価化合物群を第1の異性化反応工程(R1)にリサイクルし、中オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程(R2)にリサイクルする。図5(a)は、第1の分離工程がなく、図5(b)は、第1の分離工程を有する。
符号の説明
1 ナフサ留分
2 第1の異性化反応工程(R1)
3 第1の異性化反応生成物
4 第2の異性化反応工程(R2)
5 第2の異性化反応生成物
6 第1の分離工程(S1)
7 第1の高オクタン価化合物群
8 第1の低オクタン価化合物群
9 第2の分離工程(S2)
10 第2の高オクタン価化合物群
11 第2の低オクタン価化合物群
12 第2の中オクタン価化合物群

Claims (9)

  1. ナフサ留分を異性化してより高いオクタン価を有するガソリン基材を製造する方法において、ナフサ留分を異性化する第1の異性化反応工程、及び第1の異性化反応工程で生成した第1の異性化反応生成物を直接又は間接的に異性化する第2の異性化反応工程を含み、かつ、前記第1の異性化反応生成物を第1の低オクタン価化合物群と第1の高オクタン価化合物群に分離して第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程に送る第1の分離工程、及び/又は第2の異性化反応工程で得られた第2の異性化反応生成物を第2の低オクタン価化合物群と第2の高オクタン価化合物群に分離する第2の分離工程を含み、さらに、前記の両異性化反応工程で、ハメット酸度関数が−12より小さい周期律表IV族の元素と周期律表VI族の元素と白金とを含む固体酸触媒を用い、ナフサ留分さらには第1の低オクタン価化合物群及び/又は第2の低オクタン価化合物群を水素の存在下で、反応温度100〜300℃、反応圧力0.5〜5MPa、水素/原料油比0.5〜20mol/mol、液空間速度(LHSV)0.3〜10h -1 の反応条件で前記固体酸触媒に接触させ、かつ、後段の第2の異性化反応工程における反応温度が、前段の第1の異性化反応工程における反応温度よりも10℃以上低い温度であることを特徴とするガソリン基材の製造方法。
  2. 周期律表第IV族の元素が、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、及びスズからなる群から選ばれる1種以上であり、周期律表第VI族の元素が、タングステン、硫黄、及びモリブデンからなる群から選ばれる1種以上である請求項に記載のガソリン基材の製造方法。
  3. 第1及び第2の異性化反応工程と、第1の分離工程を含み、第1の分離工程で分離した第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程で処理する請求項1又は2に記載のガソリン基材の製造方法。
  4. 第1及び第2の異性化反応工程と、第2の分離工程を含み、第2の分離工程で分離した第2の低オクタン価化合物群を、第1の異性化反応生成物と共に第2の異性化反応工程で処理する請求項1又は2に記載のガソリン基材の製造方法。
  5. 第1及び第2の異性化反応工程と、第2の分離工程を含み、第2の分離工程で分離した第2の低オクタン価化合物群を、第1の異性化反応工程でナフサ留分と共に処理する請求項1又は2に記載のガソリン基材の製造方法。
  6. 第1及び第2の異性化反応工程と、第1及び第2の分離工程を含み、第1の分離工程で分離した第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程で処理し、第2の分離工程で分離した第2の低オクタン価化合物群を、第1の低オクタン価化合物群と共に、第2の異性化反応工程で処理する請求項1又は2に記載のガソリン基材の製造方法。
  7. 第1及び第2の異性化反応工程と、第1及び第2の分離工程を含み、第1の分離工程で分離した第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程で処理し、第2の分離工程で分離した第2の低オクタン価化合物群を、第1の異性化反応工程でナフサ留分と共に処理する請求項1又は2に記載のガソリン基材の製造方法。
  8. 第1及び第2の異性化反応工程と、第2の分離工程、及び所望により第1の分離工程を含み、第1の異性化反応工程で得られた第1の異性化反応生成物、又は第1の分離工程で分離された第1の低オクタン価化合物群を第2の異性化反応工程で処理し、得られた第2の異性化反応生成物を第2の分離工程で直鎖状飽和脂肪族炭化水素を主成分とする第2の低オクタン価化合物群、分岐数が1の飽和脂肪族炭化水素を主成分とする第2の中オクタン価化合物群、及び分岐数が2以上の飽和脂肪族炭化水素を主成分とする第2の高オクタン価化合物群に分離し、第2の低オクタン価化合物群をナフサ留分と共に第1の異性化反応工程で処理し、第2の中オクタン価化合物群を第1の異性化反応生成物又は第1の低オクタン価化合物群と共に第2の異性化反応工程で処理する請求項1又は2に記載のガソリン基材の製造方法。
  9. 第1及び第2の分離工程が、ケイ素、アルミニウム及び炭素からなる群から選ばれる1種以上の元素を含有する吸着剤による分離工程、分離膜による分離工程、精密蒸留による分離工程、又はそれらの2種以上の組み合わせによる分離工程である請求項1〜のいずれかに記載のガソリン基材の製造方法。
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