(参考例として示す混成集積回路装置1)
図1を参照して、絶縁性樹脂で封止された混成集積回路装置の構成を説明する。図1(A)は混成集積回路装置1の斜視図であり、図1(B)は図1(A)のX−X‘線に於ける断面図である。
図1(A)および図1(B)を参照して、混成集積回路装置1の構造を説明する。同図に示す混成集積回路装置1は、混成集積回路装置1を樹脂封止したものである。
絶縁性樹脂16は、回路基板10の表面に設けられた回路素子13等から成る混成集積回路を封止する働きを有する。絶縁性樹脂16の種類としては、インジェクションモールドにより封止する熱可塑性樹脂や、トランスファーモールドにより封止する熱硬化性樹脂等を採用することができる。
図1(B)を参照して、回路基板10の側面は垂直部10Aと傾斜部10Bとを有する。具体的には、回路基板10の表面と垂直部10Aとが形成する角度は直角である。そして、回路基板10の裏面と傾斜部10Bが形成する角度は鈍角である。従って、同図のように回路基板10の裏面を露出させて樹脂封止を行った場合、傾斜部10Bに絶縁性樹脂16が回り込む形となり、傾斜部10Bと絶縁性樹脂16との間にアンカー効果が発生する。
図2を参照して、本発明の混成集積回路装置1に於いて、回路基板10上に形成される混成集積回路の構成等を説明する。図2(A)は混成集積回路装置1の斜視図であり、図2(B)は図2(A)のX−X‘線に於ける断面図である。
図2(A)および図2(B)を参照して、混成集積回路装置1は次のような構成を有している。即ち、金属から成る回路基板10と、回路基板10の表面に形成された絶縁層11と、絶縁層11上に形成された導電パターン12と、導電パターン12上の所定の位置に実装された回路素子13等から、混成集積回路装置1は構成されている。このような各構成要素を以下にて詳細に説明する。
回路基板10の材料としては、アルミや銅等の金属が採用される。また、回路基板10の材料として合金を採用しても良い。ここでは、アルミからなる回路基板10を採用し、その両面はアルマイト処理されている。回路基板10の側面は、上面から垂直に延在する垂直部10Aと、垂直部10Aから下方に延在し且つ回路基板10の内側に傾斜する傾斜部10Bとから形成されている。回路基板10の側面に傾斜部10Bが形成される理由は、その製造方法にある。即ち、回路基板10は大判の金属基板を切り分けることにより製造される。具体的には、先ず金属基板の裏面からV型の溝を形成し、その後に表面から溝が形成された箇所の残りの厚み部分を除去する。このV型の溝の部分が傾斜部10Bとなる。なお、回路基板10を形成する具体的な製造方法については、混成集積回路装置の製造方法を後述する。
絶縁層11は、回路基板10の表面に形成されており、導電パターン12と回路基板とを絶縁させる働きを有する。また、回路素子13から発せられる熱を積極的に回路基板10に伝達させるために、絶縁層11にはアルミナが高充填されている。
導電パターン12は、絶縁層11の表面に設けられており、銅等の金属から形成されている。ここで、導電パターン12は回路基板10の表面に全面的に形成されている。具体的には、導電パターン12は、回路基板10の周端から2mm以内の周端部付近にも形成されている。このように、回路基板10の周端部付近の表面まで導電パターン12を形成することができる理由は、回路基板10を分割する方法にある。回路基板10を分割する方法の詳細については後述するが、本発明では、金属基板を切断することによって大判の金属基板から個々の回路基板10を分割している。従来例では、プレスにより回路基板を分割していたので、回路基板10の周端部付近にはマージンが必須であったが、本発明ではこのマージンを排除することが可能となり、回路基板10の表面全域に導電パターン12を形成することができる。
回路素子13は、導電パターン12の所定の箇所に、半田等のロウ材を介して実装される。回路素子13としては、受動素子、能動素子または回路装置等を全般的に採用することができる。また、パワー系の素子を実装する場合は、導電パターン上に固着されたヒートシンク上にその素子が実装される。本発明に於いて、回路素子13は、回路基板10の任意の箇所に配置させることができる。即ち、回路基板10の周端部付近にも、回路素子13を配置させることができる。具体的には、回路基板10の周端部から2mm以内の、回路基板10の表面に回路素子を配置させることが可能である。
ヒートシンク13Aは、導電パターン12の所定の箇所に実装される。そして、その上面にはパワー系の素子が実装され、パワー系の素子と導電パターン12は金属細線15で電気的に接続される。ここで、ヒートシンク13Aは回路基板10の任意の箇所に配置させることができる。具体的には、ヒートシンク13Aは、回路基板10の周端から2mm以内の周端部付近にも配置させることができる。このように、回路基板10の周端部付近の表面までヒートシンク13Aを配置させることができる理由は、回路基板10を分割する方法にある。
回路基板10を分割する方法の詳細については後述するが、本発明では、金属基板を切断することによって大判の金属基板から個々の回路基板10を分割している。従来例では、プレスにより回路基板を分割していたので、回路基板10の周端部付近にはマージンが必須であった。更に、パワー系の素子が実装されたヒートシンク13は、回路素子13の中で最も高さを有するものであるため、回路基板10の周辺部に配置させることができなかった。本発明ではこのマージンを排除することが可能となり、回路基板10の表面のどの箇所にもヒートシンク13Aを配置させることができる。同様のことは、受動素子や能動素子等の他の回路素子13についても言える。
リード14は、導電パターン12より成るパッドに固着されており、外部との入力・出力を行う働きを有する。また、パワー系の素子等はフェイスアップで実装され、金属細線15により導電パターン12と電気的に接続されている。更にまた、導電パターン12に於いて、電気的な接続を行わない箇所は、樹脂等によるオーバーコートが施されても良い。
上記したような混成集積回路装置10の構成により、以下に示すような効果を奏することができる。
第1に、導電パターン12を回路基板10の端部付近まで形成させることができるので、従来例と同じ回路を形成した場合は、混成集積回路装置全体の大きさを小さくすることができる。
第2に、回路素子13を回路基板10の端部付近まで配置させることができるので、電気回路を設計する自由度を向上させることができる。更に、パターンの密度を向上させることができるので、従来例と同じ回路を形成した場合は、混成集積回路装置全体の大きさを小さくすることができる。
第4に、回路基板10傾斜部10Bと絶縁性樹脂16との間にアンカー効果が発生するので、回路基板10が絶縁性樹脂16から離脱するのを防止することができる。
第5に、回路基板10の裏面と側面とが連続する部分が鈍角に形成されており、丸みを帯びた形状と成っていない。従って、金型を用いて回路基板の裏面を露出させて絶縁性樹脂16で封止を行う工程に於いて、絶縁性樹脂16が金型と回路基板10との隙間に侵入するのを防止することができる。このことから、絶縁性樹脂16が回路基板10の裏面に付着するのを防止することができる。
(参考例として示す混成集積回路装置の製造方法)
図3〜図11を参照して、混成集積回路装置の製造方法を説明する。先ず、図3のフローチャートを参照して全体的な工程を説明する。本説明では、次のような工程により混成集積回路装置を製造する。即ち、大判の金属基板を分割することにより中板の金属基板に切り分ける工程と、中板の金属基板の表面に複数の混成集積回路の導電パターンを形成する工程と、中板の金属基板の絶縁層が設けられない面に格子状に溝を形成する工程と、導電パターン上に回路素子を実装するダイボンドの工程と、ワイヤボンドを行う工程と、金属基板の溝の残りの厚み部分および絶縁層を切除することにより個々の回路基板を分離する工程等で、混成集積回路装置は製造される。更に、分割された回路基板10は絶縁性樹脂で封止される。このような各工程を以下にて説明する。
第1工程:図4参照
本工程は、大判の金属基板10Aを分割することにより、中板の金属基板10Bを形成する工程である。
先ず、図4(A)を参照して、大判の金属基板10Aを用意する。例えば、大判の基板10Aの大きさは、約1メートルの正方形である。ここでは、金属基板10Aは、両面がアルマイト処理されたアルミ基板である。そして、金属基板10Aの表面には絶縁層が設けられている。更に、絶縁層の表面には、導電パターンとなる銅箔が形成してある。
次に、図4(B)を参照して、カットソー31によりダイシングラインD1に沿って、金属基板10Aを分割する。ここでは、複数の金属基板10Aを重ね合わせることで、複数枚の金属基板10Aを同時に分割している。カットソー31は高速に回転しながら、ダイシングラインD1に沿って金属基板10Aを分割している。分割の方法としては、ここでは、正方形の形状を有する大判の金属基板10Aを、ダイシングラインD1に沿って8分割することにより、細長の中板の金属基板10Bとしている。ここでは、中板の金属基板10Bの形状は、長辺の長さが、短編の長さの2倍の長さと成っている。
図4(C)を参照して、カットソー31の刃先の形状等について説明する。図4(C)はカットソー31の刃先31A付近の拡大図である。刃先31Aの端部は平坦に形成されており、ダイヤモンドが埋め込まれている。このような刃先を有するカットソーを高速で回転させることで、ダイシングラインD1に沿って金属基板10Aを分割することができる。
この工程により製造された中板の金属基板10Bは、エッチングを行って銅箔を部分的に除去することにより、導電パターンが形成される。形成される導電パターンの個数は、金属基板10Bの大きさや混成集積回路の大きさにもよるが、数十個から数百個の混成集積回路を形成する導電パターンを1枚の金属基板10Bに形成することができる。
第2工程:図5および図6参照
本工程は、中板の金属基板10Bの絶縁層が設けられない面に格子状に溝20を形成する工程である。図5(A)は前工程にて分割された中板の金属基板10Bの平面図であり、図5(B)はVカットソー35を用いて金属基板10Aに溝を形成する状態を示す斜視図であり、図5(C)は刃先35Aの拡大図である。
図5(A)および図5(B)を参照して、Vカットソー35を高速で回転させて、ダイシングラインD2に沿って金属基板に溝を形成する。ダイシングラインD2は格子状に設けられている。そして、ダイシングラインD2は、絶縁層11上に形成された個々の導電パターンの境界線に対応している。
図5(C)を参照して、Vカットソー35の形状について説明する。Vカットソー35には、同図に示すような形状を有する刃先35Aが多数設けられている。ここで、刃先35Aの形状は、金属基板10Aに設けられる溝の形状に対応している。ここでは、V型の断面を有する溝が、金属基板の裏面(絶縁層11が設けられない面)に形成される。従って、刃先35Aの形状もまたV型となっている。なお、刃先35Aにはダイヤモンドが埋め込まれている。
次に、図6(A)および図6(B)を参照して、溝20が形成された金属基板10Bの形状を説明する。図6(A)はカットソー31により溝が形成された金属基板10Bの斜視図であり、図6(B)は金属基板10Bの断面図である。
図6(A)を参照して、金属基板10Bの絶縁層11が設けられない面には、溝20が格子状に形成されている。本説明では、V型の形状の刃先35Aを有するVカットソー35を用いて溝を形成するので、溝20はV型の断面となる。また、溝20の中心線は、絶縁層11上に形成された個々の導電パターン12の境界線に対応している。
図6(B)を参照して、溝20の形状等を説明する。ここでは、溝20はV型の断面に形成されている。そして、溝20の深さは、金属基板10Bの厚さよりも浅く成っている。従って、本工程では金属基板10Bは個々の回路基板10に分割されない。即ち、個々の回路基板10は、溝20の部分に対応する金属基板10Bの残りの厚み部分で連結されている。従って、個々の回路基板10として分割するまでは、金属基板10Bは1枚のシート状のものとして扱うことができる。また、本工程に於いて、「バリ」が発生した場合は、高圧洗浄を行って「バリ」を除去する。
第3工程:図7から図9参照
本工程は、導電パターン12上に回路素子13を実装し、回路素子13と導電パターン12との電気的接続を行う工程である。
図7を参照して、導電パターン12上に回路素子13を実装するダイボンドの工程を説明する。図7は、導電パターン12に回路素子13が実装された状態を示す断面図である。回路素子13は、半田等のロウ材を介して導電パターン12の所定の箇所に実装される。前述したように、導電パターン12は回路基板10の周端部付近にも形成されている。従って、回路素子13もまた回路基板10の周端部付近に実装させることが可能である。また、上面にパワー系の素子が実装されたヒートシンク13Aは、他の回路素子と比較すると、高さを有する回路素子である。このことから、プレス機を用いた従来の混成集積回路装置の製造方法では、ヒートシンク13Aを回路素子13の周端部付近に配置させることはできなかった。後述するが、本発明では、丸カッターを用いて回路基板10を個々に分割している。従って、ヒートシンク13A等の高さを有する回路素子13を、回路素子13の周端部付近に配置させることが可能となる。
図8を参照して、回路素子13と導電パターン12との電気的接続を行うワイヤボンドの工程を説明する。図8は、金属細線15を用いて、回路素子13と導電パターン12とを電気的に接続した状態を示す断面図である。ここでは、1枚の金属基板10Bに形成された数十から数百個の混成集積回路について、一括してワイヤボンドを行う。
図9を参照して、具体的に、金属基板10Bに形成された混成集積回路を説明する。図9は金属基板10Bに形成された混成集積回路17の1部分の平面図であり、実際は更に多数個の混成集積回路17が形成される。また、金属基板10Bを個々の回路基板10に分割するダイシングラインD3を、同図では点線で示している。同図から明らかなように、個々の混成集積回路を形成する導電パターン12とダイシングラインD2は、極めて接近している。このことから、金属基板10Bの表面には全面的に導電パターン12が形成されることが分かる。更に、ヒートシンク13A等の回路素子13が混成集積回路の周辺部に配置されていることが分かる。
上記の説明では、細長の形状を有する基板10Bの表面に一括して混成集積回路を形成した。ここで、ダイボンドやワイヤボンドを行う製造装置に制約が有る場合は、本工程の前の工程で金属基板10Bを所望のサイズに分割することもできる。例えば、本工程の前の工程で、金属基板10Bを2分割すると、金属基板は正方形の形状となる。
第4工程:図10参照
本工程は、金属基板10Bの溝の残りの厚み部分および絶縁層11を切除することにより、金属基板10Bを個々の回路基板10に分離する工程である。図10(A)は、丸カッター41を用いて金属基板10Bを個々の回路基板10に分割する状態を示す斜視図である。図10(B)は図10(A)の断面図である。ここで、図示はしていないが、図10(A)では、絶縁層11上には多数個の混成集積回路が形成されている。
図10(A)を参照して、丸カッター41を用いてダイシングラインD3沿いに金属基板10Bを押し切る。このことにより金属基板10Bは個々の回路基板10に分割される。丸カッター41は、金属基板10Bの絶縁層11が設けられた面の、溝20の中心線に対応する部分を押し切る。ここでは、溝20はV型の断面を有する。従って、溝20が最も深く形成された部分の、金属基板10Bの残りの厚み部分と絶縁層11とを、丸カッター41は切除することになる。
図10(B)を参照して、丸カッター41の詳細について説明する。丸カッター41は円板状の形状を有しており、その周端部は鋭角に形成してある。丸カッター41の中心部は、丸カッター41が自由回転できるように支持部42に固定してある。前述したカットソーは、駆動力により高速に回転しながら金属基板10Bを切断していた。ここでは、丸カッター41は駆動力を有さない。即ち、丸カッター41の一部を金属基板10Bに押し当てながら、ダイシングラインD3に沿って移動させることで、丸カッター41は回転する。原理的には、ピザを切り分ける治具と同様である。
次に丸カッター41の大きさについて説明する。溝20が形成された箇所に於いて、金属基板10Bの残りの厚さと絶縁層11の厚さとを加算した長さをdとする。そして、回路素子13の中で最も高い素子の、頂部から絶縁層11の表面までの長さをh1とする。この場合、丸カッター41の半径は、d1とh1とを加算した長さよりも長く設定される。このように設定することで、金属基板10Bから回路基板10を、確実に分割させることができる。それと共に、丸カッター41を支持する支持部42の下端が、回路素子13に接触して、回路素子13が破損するのを防止することができる。
次に、図10(B)を参照して、丸カッター41により金属基板10Bの分割を行う詳細について説明する。上述したように、本発明では、ヒートシンク13A等の高さを有する回路素子13を、回路基板10の周辺部に配置させることができる。このことから、同図に示すようにヒートシンク13Aの位置が、ダイシングラインD3に接近する場合がある。このような場合でも、支持部42がヒートシンク13Aに接触しないように次のように支持部42の位置を設定している。
即ち、回路素子13の中で最も高さを有する素子の、頂部から絶縁層11の表面までの距離をh1とした場合、支持部42の下端から絶縁層11の表面までの長さh2はh1よりも長く設定されている。例えば、本実施例では、ヒートシンク13Aに実装されたパワー系の素子から導出される金属細線15の頂部が、混成集積回路の中で最も高い部分である。この場合、支持部42の下端は、金属細線15の頂部よりも高い位置に設定されている。このように、支持部42の下端の位置を設定することで、金属細線15が断線してしまうのを防止することができる。
第5工程:図11参照
図11を参照して、回路基板10を絶縁性樹脂16で封止する工程を説明する。図11は、金型50を用いて回路基板10を絶縁性樹脂16で封止する工程を示す断面図である。
先ず、下金型50Bに回路基板10を載置する。次に、ゲート53より絶縁性樹脂16を注入する。封止を行う手法としては、熱硬化性樹脂を用いるトランスファーモールド、若しくは熱硬化性樹脂を用いるインジェクションモールドを採用することができる。そして、ゲート53から注入される絶縁性樹脂16の量に応じたキャビティ内部の気体がエアベント54を介して外部に放出される。
上述したように、回路基板10の側面部には傾斜部10Bが設けられている。従って、絶縁性樹脂で封止することにより、傾斜部10B付近に絶縁性樹脂16が回り込む。このことから、絶縁性樹脂16と傾斜部10Bとの間にアンカー効果が発生し、絶縁性樹脂16と回路基板10との接合が強化される。また、回路基板10の裏面と傾斜部10Bが連続する部分の断面形状は鈍角に形成されており、丸みを帯びた形状と成っていない。従って、ゲート53から注入された絶縁性樹脂16が、下金型50Bと回路基板10の裏面に侵入するのを防止することができる。
上記した工程により、樹脂による封止が行われた回路基板10は、リードカットの工程等を経て製品として完成する。
そして、以下に示すような効果を奏することができる。
第1に、高速で回転するカットソー31を用いて、大判の金属基板を分割するので、従来のシャーリングを用いた基板の分割方法と比較すると、「バリ」の発生が非常に少ない。従って、製造工程の途中段階等に於いて、「バリ」により混成集積回路がショートして不良品が発生してしまうのを防止することができる。
第2に、重ね合わされた複数枚の大判の金属基板10Aを、カットソー31を用いて同時に分割するので、作業効率を向上させることができる。
第3に、カットソー31が摩耗した場合でも、カットソー31の交換は比較的簡単な作業であり素早く行うことができる。従って、従来のシャーリングの刃の交換と比較した場合は、作業の効率を向上させることができる。
第4に、金属基板10Bの個々の回路基板10の境界線に対応する部分に、溝を形成する。このことから、金属基板10Bを搬送する際に、金属基板10B全体に「たわみ」が生じた場合でも、溝20の部分が優先的に折り曲がる。従って、個々の回路基板10の平坦性が損なわれるのを防止することができる。
第5に、1枚の金属基板10Bに、数十個から数百個の混成集積回路を組み込むことが可能となる。従って、エッチングの工程、ダイボンドの工程およびワイヤボンドの工程を一括して行うことが可能となる。このことから、生産性を向上させることができる。
第6に、金属基板10Bを個々の回路基板10に分割する工程に於いて、駆動力を有さない丸カッター41を、金属基板10Bに押し当てることにより回転させて金属基板10Bを分割している。従って、丸カッター41は溝20の残りの厚み部分と絶縁層11とを切除するので、研削屑が全く発生しない。このことから、製造工程に於いて、混成集積回路がショートするのを防止することができる。
第7に、丸カッター41を溝20に対応する部分に押し当てることにより、金属基板10Bの分割を行う。従って、樹脂層11にクラックが発生して装置の耐圧性が低下してしまうのを防止することができる。更に、基板10Bの平坦性を確保することができる。
第8に、丸カッター41が摩耗した場合でも、丸カッター41の取り替えは比較的簡単な作業であり短時間で行える。このことから、生産性を向上させることができる。
第9に、本発明では、カットソー31や丸カッター41を用いて金属基板を「切断」することにより、個々の回路基板を分離させている。従来例のように、プレス機を用いて回路基板の分離を行った場合は、製造される回路基板の大きさに応じて、異なる刃を用意する必要があった。本発明では、大きさの異なる回路基板を有する混成集積回路装置を製造する場合でも、ダイシングラインを変更するのみで対応することができる。
第10に、本発明では、1枚の金属基板10Bにマトリックス状に多数個の混成集積回路を組み込む。そして各混成集積回路同士は極めて接近しているので、金属基板10Bのほぼ全面が回路基板10となる。従って、材料の廃棄ロスを少なくすることができる。
(混成集積回路装置1を説明する第1の実施の形態)
図12を参照して、絶縁性樹脂で封止された混成集積回路装置の構成を説明する。図12(A)は混成集積回路装置1の斜視図であり、図12(B)は図12(A)のX−X‘線に於ける断面図である。
図12(A)および図12(B)を参照して、混成集積回路装置1の構造を説明する。同図に示す混成集積回路装置1は、混成集積回路装置1を樹脂封止したものである。
絶縁性樹脂16は、回路基板10の表面に設けられた回路素子13等から成る混成集積回路を封止する働きを有する。絶縁性樹脂16の種類としては、インジェクションモールドにより封止する熱可塑性樹脂や、トランスファーモールドにより封止する熱硬化性樹脂等を採用することができる。
図12(B)を参照して、回路基板10の側面は垂直部10Aと傾斜部10Bとを有する。具体的には、回路基板10の裏面と傾斜部10Bが形成する角度は鈍角である。従って、同図のように回路基板10の裏面を露出させて樹脂封止を行った場合、傾斜部10Bに絶縁性樹脂16が回り込む形となり、傾斜部10Bと絶縁性樹脂16との間にアンカー効果が発生する。また、ここでは、回路基板10の上面から連続する側面にも、傾斜部10Bが形成されている。
図13を参照して、本発明の混成集積回路装置1に於いて、回路基板10上に形成される混成集積回路の構成等を説明する。図13(A)は混成集積回路装置1の斜視図であり、図13(B)は図13(A)のX−X‘線に於ける断面図である。
図13(A)および図13(B)を参照して、混成集積回路装置1は次のような構成を有している。即ち、金属から成る回路基板10と、回路基板10の表面に形成された絶縁層11と、絶縁層11上に形成された導電パターン12と、導電パターン12上の所定の位置に実装された回路素子13等から、混成集積回路装置1は構成されている。このような各構成要素を以下にて詳細に説明する。
回路基板10の材料としては、アルミや銅等の金属が採用される。また、回路基板10の材料として合金を採用しても良い。ここでは、アルミからなる回路基板10を採用し、その両面はアルマイト処理されている。回路基板10の側面は、上面および下面から傾斜を付けてに延在する傾斜部10Bと、傾斜部10Bに連続する垂直部10Aとから形成されている。回路基板10の側面に傾斜部10Bが形成される理由は、その製造方法にある。即ち、回路基板10は大判の金属基板を切り分けることにより製造される。具体的には、先ず金属基板の表面および裏面からV型の溝を形成し、その後に表面から溝が形成された箇所の残りの厚み部分を除去する。このV型の溝の部分が傾斜部10Bとなる。なお、回路基板10を形成する具体的な製造方法については、混成集積回路装置の製造方法を説明する実施の形態で後述する。
絶縁層11は、回路基板10の表面に形成されており、導電パターン12と回路基板とを絶縁させる働きを有する。また、回路素子13から発せられる熱を積極的に回路基板10に伝達させるために、絶縁層11にはアルミナが高充填されている。
導電パターン12は、絶縁層11の表面に設けられており、銅等の金属から形成されている。ここで、導電パターン12は回路基板10の表面に全面的に形成されている。具体的には、導電パターン12は、回路基板10の周端から2mm以内の周端部付近にも形成されている。このように、回路基板10の周端部付近の表面まで導電パターン12を形成することができる理由は、回路基板10を分割する方法にある。回路基板10を分割する方法の詳細については後述するが、本発明では、金属基板を切断することによって大判の金属基板から個々の回路基板10を分割している。従来例では、プレスにより回路基板を分割していたので、回路基板10の周端部付近にはマージンが必須であったが、本発明ではこのマージンを排除することが可能となり、回路基板10の表面全域に導電パターン12を形成することができる。
回路素子13は、導電パターン12の所定の箇所に、半田等のロウ材を介して実装される。回路素子13としては、受動素子、能動素子または回路装置等を全般的に採用することができる。また、パワー系の素子を実装する場合は、導電パターン上に固着されたヒートシンク上にその素子が実装される。本発明に於いて、回路素子13は、回路基板10の任意の箇所に配置させることができる。即ち、回路基板10の周端部付近にも、回路素子13を配置させることができる。具体的には、回路基板10の周端部から2mm以内の、回路基板10の表面に回路素子を配置させることが可能である。
ヒートシンク13Aは、導電パターン12の所定の箇所に実装される。そして、その上面にはパワー系の素子が実装され、パワー系の素子と導電パターン12は金属細線15で電気的に接続される。ここで、ヒートシンク13Aは回路基板10の任意の箇所に配置させることができる。具体的には、ヒートシンク13Aは、回路基板10の周端から2mm以内の周端部付近にも配置させることができる。このように、回路基板10の周端部付近の表面までヒートシンク13Aを配置させることができる理由は、回路基板10を分割する方法にある。
回路基板10を分割する方法の詳細については後述するが、本発明では、金属基板を切断することによって大判の金属基板から個々の回路基板10を分割している。従来例では、プレスにより回路基板を分割していたので、回路基板10の周端部付近にはマージンが必須であった。更に、パワー系の素子が実装されたヒートシンク13は、回路素子13の中で最も高さを有するものであるため、回路基板10の周辺部に配置させることができなかった。本発明ではこのマージンを排除することが可能となり、回路基板10の表面のどの箇所にもヒートシンク13Aを配置させることができる。同様のことは、受動素子や能動素子等の他の回路素子13についても言える。
リード14は、導電パターン12より成るパッドに固着されており、外部との入力・出力を行う働きを有する。また、パワー系の素子等はフェイスアップで実装され、金属細線15により導電パターン12と電気的に接続されている。更にまた、導電パターン12に於いて、電気的な接続を行わない箇所は、樹脂等によるオーバーコートが施されても良い。
上記したような混成集積回路装置10の構成により、以下に示すような効果を奏することができる。
第1に、導電パターン12を回路基板10の端部付近まで形成させることができるので、従来例と同じ回路を形成した場合は、混成集積回路装置全体の大きさを小さくすることができる。
第2に、回路素子13を回路基板10の端部付近まで配置させることができるので、電気回路を設計する自由度を向上させることができる。更に、パターンの密度を向上させることができるので、従来例と同じ回路を形成した場合は、混成集積回路装置全体の大きさを小さくすることができる。
第4に、回路基板10傾斜部10Bと絶縁性樹脂16との間にアンカー効果が発生するので、回路基板10が絶縁性樹脂16から離脱するのを防止することができる。
第5に、回路基板10の裏面と側面とが連続する部分が鈍角に形成されており、丸みを帯びた形状と成っていない。従って、金型を用いて回路基板の裏面を露出させて絶縁性樹脂16で封止を行う工程に於いて、絶縁性樹脂16が金型と回路基板10との隙間に侵入するのを防止することができる。このことから、絶縁性樹脂16が回路基板10の裏面に付着するのを防止することができる。
(混成集積回路装置の製造方法を説明する第2の実施の形態)
図14〜図23を参照して、第3の実施の形態で説明した混成集積回路装置の製造方法を説明する。本発明の混成集積回路装置の製造方法は、表面に絶縁層11が形成された金属基板10Aを用意する工程と、絶縁層11の表面に複数個の導電パターン12を形成する工程と、金属基板10Bの表面および裏面に格子状に溝20を形成する工程と、導電パターン20上に混成集積回路を組み込む工程と、溝20が形成された箇所で金属基板10Bを分離することにより個々の回路基板10を分離する工程とから構成されている。
図14のフローチャートを参照して本実施の形態の全体的な工程を説明する。本実施の形態では、次のような工程により混成集積回路装置を製造する。即ち、大判の金属基板10Aを分割することにより中板の金属基板10Bに切り分ける工程と、中板の金属基板10Bの表面に複数の混成集積回路の導電パターン12を形成する工程と、中板の金属基板10Bの表面および裏面に格子状に第1の溝20Aおよび第2の溝20Bを形成する工程と、導電パターン12上に回路素子13を実装するダイボンドの工程と、ワイヤボンドを行う工程と、金属基板10Bを溝20が形成された箇所で分割することにより個々の回路基板10を分離する工程等で、混成集積回路装置は製造される。更に、分割された回路基板10は絶縁性樹脂で封止される。このような各工程を以下にて説明する。
第1工程:図15参照
本工程は、大判の金属基板10Aを分割することにより、中板の金属基板10Bを形成する工程である。
先ず、図15(A)を参照して、大判の金属基板10Aを用意する。例えば、大判の基板10Aの大きさは、約1メートルの正方形である。ここでは、金属基板10Aは、両面がアルマイト処理されたアルミ基板である。そして、金属基板10Aの表面には絶縁層が設けられている。更に、絶縁層の表面には、導電パターンとなる銅箔が形成してある。
次に、図15(B)を参照して、カットソー31によりダイシングラインD1に沿って、金属基板10Aを分割する。ここでは、複数の金属基板10Aを重ね合わせることで、複数枚の金属基板10Aを同時に分割している。カットソー31は高速に回転しながら、ダイシングラインD1に沿って金属基板10Aを分割している。分割の方法としては、ここでは、正方形の形状を有する大判の金属基板10Aを、ダイシングラインD1に沿って8分割することにより、細長の中板の金属基板10Bとしている。ここでは、中板の金属基板10Bの形状は、長辺の長さが、短編の長さの2倍の長さと成っている。
図15(C)を参照して、カットソー31の刃先の形状等について説明する。図15(C)はカットソー31の刃先31A付近の拡大図である。刃先31Aの端部は平坦に形成されており、ダイヤモンドが埋め込まれている。このような刃先を有するカットソーを高速で回転させることで、ダイシングラインD1に沿って金属基板10Aを分割することができる。
この工程により製造された中板の金属基板10Bは、エッチングを行って銅箔を部分的に除去することにより、導電パターンが形成される。形成される導電パターンの個数は、金属基板10Bの大きさや混成集積回路の大きさにもよるが、数十個から数百個の混成集積回路を形成する導電パターンを1枚の金属基板10Bに形成することができる。
第2工程:図16および図17参照
本工程は、中板の金属基板10Bの表面および裏面に格子状に第1の溝20Aおよび第2の溝20Bを形成する工程である。図16(A)は前工程にて分割された中板の金属基板10Bの平面図であり、図16(B)はVカットソー35を用いて金属基板10Aに溝を形成する状態を示す斜視図であり、図16(C)は刃先35Aの拡大図である。
図16(A)および図16(B)を参照して、Vカットソー35を高速で回転させて、ダイシングラインD2に沿って金属基板の表面および裏面に第1の溝20Aおよび第2の溝20Bを形成する。ダイシングラインD2は格子状に設けられている。そして、ダイシングラインD2は、絶縁層11上に形成された個々の回路を構成する導電パターンの境界線に対応している。
図16(C)を参照して、Vカットソー35の形状について説明する。Vカットソー35には、同図に示すような形状を有する刃先35Aが多数設けられている。ここで、刃先35Aの形状は、金属基板10Aに設けられる溝の形状に対応している。ここでは、V型の断面を有する溝が、金属基板の両面に形成される。従って、刃先35Aの形状もまたV型となっている。なお、刃先35Aにはダイヤモンドが埋め込まれている。
更に、Vカットソー35の刃先35Aの先端には平坦部35Bが形成されている。即ち、刃先35Aは鋭利に形成されておらず、その先端は平坦に形成されている。従って、Vカットソー35が高速に回転することにより形成される第1の溝20Aおよび第2の溝20Bもまた、平坦部35Bに対応した形状に形成される。
上記のように刃先35Aの先端に平坦部35Bを設けることのメリットを述べる。刃先35Aを平坦に形成することにより、Vカットソー35の摩耗を少なくすることが可能となり、従って、より効率的に溝20を形成することができる。具体的には、特に樹脂層11が形成された面に第1の溝20Aを形成する際は、樹脂層11は非常に硬いものであるので、刃先35Aの先端を鋭利に形成した場合、鋭利な先端部に大きな応力が作用して、先端部が早期に摩耗してしまう。このことから、刃先35Aに平坦部35Bを形成することにより、刃先35Aの先端部は均等に徐々に摩耗するので、刃先35Aの早期の摩耗を防止することができる。このことが、Vカットソー35のカッティング性能の低下を防止することができるので、樹脂層11が形成される面に第1の溝20Aを形成する際に、樹脂層11にクラックが発生するのを防止することができる。
次に、図17(A)および図17(B)を参照して、溝20が形成された金属基板10Bの形状を説明する。図17(A)はカットソー31により溝が形成された金属基板10Bの斜視図であり、図17(B)は金属基板10Bの断面図である。
図17(A)を参照して、金属基板10Bの表面および裏面には、第1の溝20Aおよび第2の溝20Bが格子状に形成されている。ここで、第1の溝20Aと第2の溝20Bとの平面的な位置は正確に対応してしている。本実施の形態では、V型の形状の刃先35Aを有するVカットソー35を用いて溝を形成するので、溝20はV型の断面となる。また、溝20の中心線は、絶縁層11上に形成された個々の回路を構成する導電パターン12の境界線に対応している。ここでは、樹脂層11が形成された面に第1の溝20Aが形成され、その反対面に第2の溝20Bが形成されている。
図17(B)を参照して、溝20の形状等を説明する。ここでは、溝20はほぼV型の断面に形成されている。そして、第1の溝20Aおよび第2の溝20Bの深さは、金属基板10Bの厚さの半分よりも浅く成っている。従って、本工程では金属基板10Bは個々の回路基板10に分割されない。即ち、個々の回路基板10は、溝20の部分に対応する金属基板10Bの残りの厚み部分で連結されている。従って、個々の回路基板10として分割するまでは、金属基板10Bは1枚のシート状のものとして扱うことができる。また、本工程に於いて、「バリ」が発生した場合は、高圧洗浄を行って「バリ」を除去する。
第3工程:図18から図20参照
本工程は、導電パターン12上に回路素子13を実装し、回路素子13と導電パターン12との電気的接続を行う工程である。
図18を参照して、導電パターン12上に回路素子13を実装するダイボンドの工程を説明する。図18は、導電パターン12に回路素子13が実装された状態を示す断面図である。回路素子13は、半田等のロウ材を介して導電パターン12の所定の箇所に実装される。前述したように、導電パターン12は回路基板10の周端部付近にも形成されている。従って、回路素子13もまた回路基板10の周端部付近に実装させることが可能である。また、上面にパワー系の素子が実装されたヒートシンク13Aは、他の回路素子と比較すると、高さを有する回路素子である。このことから、プレス機を用いた従来の混成集積回路装置の製造方法では、ヒートシンク13Aを回路素子13の周端部付近に配置させることはできなかった。後述するが、本発明では、丸カッターを用いて回路基板10を個々に分割している。従って、ヒートシンク13A等の高さを有する回路素子13を、回路素子13の周端部付近に配置させることが可能となる。
図19を参照して、回路素子13と導電パターン12との電気的接続を行うワイヤボンドの工程を説明する。図19は、金属細線15を用いて、回路素子13と導電パターン12とを電気的に接続した状態を示す断面図である。ここでは、1枚の金属基板10Bに形成された数十から数百個の混成集積回路について、一括してワイヤボンドを行う。
図20を参照して、具体的に、金属基板10Bに形成された混成集積回路を説明する。図20は金属基板10Bに形成された混成集積回路17の1部分の平面図であり、実際は更に多数個の混成集積回路17が形成される。また、金属基板10Bを個々の回路基板10に分割するダイシングラインD3を、同図では点線で示している。同図から明らかなように、個々の混成集積回路を形成する導電パターン12とダイシングラインD2は、極めて接近している。このことから、金属基板10Bの表面には全面的に導電パターン12が形成されることが分かる。更に、ヒートシンク13A等の回路素子13が混成集積回路の周辺部に配置されていることが分かる。
上記の説明では、細長の形状を有する基板10Bの表面に一括して混成集積回路を形成した。ここで、ダイボンドやワイヤボンドを行う製造装置に制約が有る場合は、本工程の前の工程で金属基板10Bを所望のサイズに分割することもできる。例えば、本工程の前の工程で、金属基板10Bを2分割すると、金属基板は正方形の形状となる。
第4工程:図21および図22参照
本工程は、金属基板10Bを溝20が形成された箇所で分割することにより個々の回路基板10を分離する工程である。図21は、金属基板10Bを折り曲げることにより、回路基板10に分割する方法を示す断面図である。また、図22(A)は、丸カッター41を用いて金属基板10Bを個々の回路基板10に分割する状態を示す斜視図である。図22(B)は図22(A)の断面図である。ここで、図示はしていないが、図22(A)では、絶縁層11上には多数個の混成集積回路が形成されている。
図21を参照して、金属基板10Bを折り曲げることにより、個々の回路基板10に分割する方法を説明する。この方法では、第1の溝20Aおよび第2の溝20Bが形成された箇所が折り曲がるように、金属基板10Bを部分的に折り曲げる。第1の溝20Aおよび第2の溝20Bが形成された箇所は、溝20が形成されていない厚み部分のみで連結されているので、この箇所で折り曲げることにより、この連結部分から容易に分離することができる。また、金属基板10Bの表面に形成された電気回路が破壊されないように、金属基板10Bの部分的な折り曲げは、裏面から行う。
次に、図22を参照して、丸カッター41により、金属基板10Bの分割を行う方法を説明する。図22(A)を参照して、丸カッター41を用いてダイシングラインD3沿いに金属基板10Bを押し切る。このことにより金属基板10Bは個々の回路基板10に分割される。丸カッター41は、金属基板10Bの溝20が形成されていない厚み部分の、溝20の中心線に対応する部分を押し切る。
図22(B)を参照して、丸カッター41の詳細について説明する。丸カッター41は円板状の形状を有しており、その周端部は鋭角に形成してある。丸カッター41の中心部は、丸カッター41が自由回転できるように支持部42に固定してある。前述したカットソーは、駆動力により高速に回転しながら金属基板10Bを切断していた。ここでは、丸カッター41は駆動力を有さない。即ち、丸カッター41の一部を金属基板10Bに押し当てながら、ダイシングラインD3に沿って移動させることで、丸カッター41は回転する。原理的には、ピザを切り分ける治具と同様である。
次に、図22(B)を参照して、丸カッター41により金属基板10Bの分割を行う詳細について説明する。上述したように、本発明では、ヒートシンク13A等の高さを有する回路素子13を、回路基板10の周辺部に配置させることができる。このことから、同図に示すようにヒートシンク13Aの位置が、ダイシングラインD3に接近する場合がある。このような場合でも、支持部42がヒートシンク13Aに接触しないように次のように支持部42の位置を設定している。
第5工程:図23参照
図23を参照して、回路基板10を絶縁性樹脂16で封止する工程を説明する。図23は、金型50を用いて回路基板10を絶縁性樹脂16で封止する工程を示す断面図である。
先ず、下金型50Bに回路基板10を載置する。次に、ゲート53より絶縁性樹脂16を注入する。封止を行う手法としては、熱硬化性樹脂を用いるトランスファーモールド、若しくは熱硬化性樹脂を用いるインジェクションモールドを採用することができる。そして、ゲート53から注入される絶縁性樹脂16の量に応じたキャビティ内部の気体がエアベント54を介して外部に放出される。
上述したように、回路基板10の側面部には傾斜部10Bが設けられている。従って、絶縁性樹脂で封止することにより、傾斜部10B付近に絶縁性樹脂16が回り込む。このことから、絶縁性樹脂16と傾斜部10Bとの間にアンカー効果が発生し、絶縁性樹脂16と回路基板10との接合が強化される。また、回路基板10の裏面と傾斜部10Bが連続する部分の断面形状は鈍角に形成されており、丸みを帯びた形状と成っていない。従って、ゲート53から注入された絶縁性樹脂16が、下金型50Bと回路基板10の裏面に侵入するのを防止することができる。
上記した工程により、樹脂による封止が行われた回路基板10は、リードカットの工程等を経て製品として完成する。なお、上記の説明では、大判の金属基板10Bの表面に多数個の電気回路を形成した後に、個々の回路基板10に分割したが、このプロセスを変更することも可能である。具体的には、先ず、金属基板の表面に電気回路を組み込む前に、並列した回路基板が2〜8個形成されるような細長の金属基板を形成する。そして、細長の金属基板に複数個の電気回路を構成した後に、個々の回路基板を分割する。ここで、回路基板を分割する方法としては、上記したように折り曲げによる方法や、丸カッター41による方法を採用することができる。
本実施の形態により、以下に示すような効果を奏することができる。
第1に、金属基板10Bに第1の溝20Aおよび第2の溝20Bを形成するVカットソー35の刃先35Aに、平坦部35Bを設けたので、刃先35Aの摩耗を少なくすることができる。このことにより、Vカットソー35のカッティングの性能が早期に低下してしまうのを防止することができる。更には、樹脂層11が設けられた金属基板10Bの面に第1の溝20Aを形成する場合でも、樹脂層11にクラックが発生するのを防止することができる。
第2に、金属基板10Bの表面および裏面に格子状に第1の溝20Aおよび第2の溝20Bを形成したので、容易に溝が形成された箇所で回路基板10を分割することができる。この各回路基板10の分割は、折り曲げによる分割と、丸カッター41による分割の2つの方法が考えられ、このどちらでも容易に分割を行うことができる。
本発明では、以下に示すような効果を奏することができる。
第1に、高速で回転するカットソー31を用いて、大判の金属基板を分割するので、従来のシャーリングを用いた基板の分割方法と比較すると、「バリ」の発生が非常に少ない。従って、製造工程の途中段階等に於いて、「バリ」により混成集積回路がショートして不良品が発生してしまうのを防止することができる。
第2に、カットソー31が摩耗した場合でも、カットソー31の交換は比較的簡単な作業であり素早く行うことができる。従って、従来のシャーリングの刃の交換と比較した場合は、作業の効率を向上させることができる。
第3に、1枚の金属基板10Bに、数十個から数百個の混成集積回路を組み込むことが可能となる。従って、エッチングの工程、ダイボンドの工程およびワイヤボンドの工程を一括して行うことが可能となる。このことから、生産性を向上させることができる。
第4に、金属基板10Bを個々の回路基板10に分割する工程に於いて、駆動力を有さない丸カッター41を、金属基板10Bに押し当てることにより回転させて金属基板10Bを分割している。従って、丸カッター41は溝20の残りの厚み部分と絶縁層11とを切除するので、研削屑が全く発生しない。このことから、製造工程に於いて、混成集積回路がショートするのを防止することができる。
第5に、丸カッター41を溝20に対応する部分に押し当てることにより、金属基板10Bの分割を行う。従って、樹脂層11にクラックが発生して回路基板の耐圧性が低下してしまうのを防止することができる。更に、基板10Bの平坦性を確保することができる。
第6に、丸カッター41が摩耗した場合でも、丸カッター41の取り替えは比較的簡単な作業であり短時間で行える。このことから、生産性を向上させることができる。
第7に、本発明では、カットソー31や丸カッター41を用いて金属基板を「切断」することにより、個々の回路基板を分離させている。従来例のように、プレス機を用いて回路基板の分離を行った場合は、製造される回路基板の大きさに応じて、異なる刃を用意する必要があった。本発明では、大きさの異なる回路基板を有する混成集積回路装置を製造する場合でも、ダイシングラインを変更するのみで対応することができる。
第8に、本発明では、1枚の金属基板10Bにマトリックス状に多数個の混成集積回路を組み込む。そして各混成集積回路同士は極めて接近しているので、金属基板10Bのほぼ全面が回路基板10となる。従って、材料の廃棄ロスを少なくすることができる。
第9に、金属基板10Bに第1の溝20Aおよび第2の溝20Bを形成するVカットソー35の刃先35Aに、平坦部35Bを設けたので、刃先35Aの摩耗を少なくすることができる。このことにより、Vカットソー35のカッティングの性能が早期に低下してしまうのを防止することができる。更には、樹脂層11が設けられた金属基板10Bの面に第1の溝20Aを形成する場合でも、樹脂層11にクラックが発生するのを防止することができる。
第10に、金属基板10Bの表面および裏面に格子状に第1の溝20Aおよび第2の溝20Bを形成したので、容易に溝が形成された箇所で回路基板10を分割することができる。この各回路基板10の分割は、折り曲げによる分割と、丸カッター41による分割の2つの方法が考えられ、このどちらでも容易に分割を行うことができる。