JP4846147B2 - 酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生体適合性等の特性に優れる酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料に関し、特に加工性が良く、分子構造の制御された酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料に関する。
【0002】
【従来の技術】
セルロースは、植物の主成分として自然界に最も大量に存在する多糖類である。その化学構造は、D−グルコースがβ1,4グリコシド結合したもので、グルコース単位当たり3個(D−グルコースのC2位、C3位、C6位)の水酸基を有する。セルロースは、分子内に親水性の水酸基を多く持ちながら、分子間で強固に水素結合した高次構造を形成しているため、水には不溶である。
【0003】
また、エビやカニ等の甲殻類、昆虫類の生体構造多糖類はキチンであり、D−グルコースのC2位の水酸基の代わりにアセトアミド基が付いたN−アセチルグルコサミンがセルロースと同様にβ1,4結合したものである。天然に存在するキチンは、C2位にアミノ基が付いたグルコサミンのユニットを一部含み、タンパク質等の生体物質とアミノ基を介して結合していることが知られており、N−アセチルグルコサミン100%からなる訳ではない。一方キトサンは、キチンをアルカリ等により脱アセチル化することで得られる物質である。これらキチンとキトサンは、アセチル化度により明確に区別できるものではない。またキトサンは希酸に対してアミノ基が塩を形成して溶解するが、キチンはセルロース同様に水不溶である。
【0004】
さらに自然界に大量に存在する多糖類として澱粉が挙げられる。澱粉はD−グルコースがα1,4或いは1,6結合したものである。澱粉は、熱水には可溶であるが、冷水には溶けない。
【0005】
これら水不溶性の多糖類の水溶化手法としては、前記水酸基を利用したエーテル化が代表的である。カルボキシメチルセルロース(CMC)、メチルセルロース(MC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)等は、水溶性のセルロース誘導体として、増粘剤、分散安定剤、食品・化粧品添加剤、医療用材料等にも広く用いられている。
【0006】
しかしこれらのエーテル化反応は、前記したグルコース単位当たり3個の水酸基に対してランダムに反応し、選択性が低く、置換基分布は不均一なものである。さらにCMC、MC、HEC、HPCの水溶液は、重合度によるが2%水溶液で粘度が20〜2000mPa・s程度と割合高粘度で、溶液濃度も3〜10%程度が上限である。従って高濃度溶液での含浸加工やコーティング加工等は困難であった。また医療用材料等に用いる場合には、CMC、MC、HEC、HPCの代謝の成り行きが明かでない等の問題もある。
【0007】
また酸化反応による水溶化手法として、クロロホルム中で二酸化窒素によりC6位の1級水酸基をカルボキシル基に酸化して、水溶性のポリグルクロン酸を得る方法が知られている。グルクロン酸は生体内で完全に代謝されると言われている。しかし、二酸化窒素による酸化反応は、副反応で、主鎖の解裂や、C2位、C3位のケトンへの酸化も起こり、反応選択性が高いとは言えない。さらに試薬の有害性にも問題がある。
【0008】
一方で、医療分野において、創傷被覆剤や止血用の生体吸収材料、体器官の癒合を抑制する医療用材料等の生体適合性材料として、酸化セルロースやキチン、キトサン、或いはコラーゲンやヒアルロン酸等の材料の有用性が報告されている(特開平10−66723、特開平10−99422、特開平4−370258、等)。
【0009】
しかしコラーゲンやヒアルロン酸等の生体由来材料は、生体適合性に優れる特徴を有するものの、高価で材料の入手がしにくく、抗原性を有したり、細菌感染による劣化等の問題がある。
【0010】
キチン、キトサンに関しては、創傷治癒促進効果や抗菌性等の優位性も報告されているが、アミド系の溶剤に溶解して湿式紡糸する等の工程が必要となる。
【0011】
酸化セルロースとしては、再生セルロースガーゼを二酸化窒素で酸化したり、CMCやMCを塗工したガーゼを酸化したりする手法(特開平10−66723)が報告されているが、前記したようにCMCやMCの塗工性や、二酸化窒素の有害性に問題点を有する。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、化学構造の均一な水溶性或いは水分散性の多糖類材料を被覆又は含浸させた材料を、加工性良く、安価且つ安全に提供することにある。また化学構造の均一な水溶性或いは水分散性の多糖類材料を被覆又は含浸させた材料からなる生体適合性材料を提供することにある。
【0022】
【課題を解決するための手段】
請求項1の発明は、酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料の製造方法であって、セルロース、再生セルロース、微細化セルロースから選ばれる多糖類材料を水中にてN−オキシル化合物の存在下で酸化処理することにより、前記多糖類材料の分子の還元末端またはピラノース環の第6位のみを選択的に酸化してカルボキシル基とした水溶性のウロン酸構造を有する水溶性あるいは水分散性の酸化多糖類材料を得る工程と、前記酸化多糖類材料を水溶液もしくは水分散液とする工程と、該酸化多糖類材料を含む水溶液もしくは水分散液を材料に含浸あるいは塗布する工程とを備え、かつ、前記酸化多糖類材料を被覆または含浸させるための材料が天然セルロース、再生セルロース、或いは酸化再生セルロースからなることを特徴とする酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料の製造方法である。
【0023】
請求項記載の発明は、前記酸化多糖類材料の水溶液もしくは水分散液のB型粘度計で測定される25℃での粘度が、7〜70mPa・sであることを特徴とする請求項1記載の酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料の製造方法である。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0025】
本発明は、多糖類材料を水中にて、N−オキシル化合物(オキソアンモニウム塩)の存在下で、酸化処理された酸化多糖類材料を材料に被覆又は含浸させた材料に関するものである。本発明でいう被覆又は含浸させたとは、被覆のみをしていること、含浸のみをしていること、一部含浸し表面を被覆していることの3態様を意味するものである。
【0026】
本発明における酸化多糖類材料の酸化は、多糖類分子の還元末端、または構成単糖のピラノース環中一級水酸基を選択的に酸化するものである。また、酸化の程度に応じて、多糖類材料にカルボキシル基を均一かつ効率よく導入できる。
この酸化方法は、N−オキシル化合物を触媒として、共酸化剤を用いて酸化することを特徴とする。N−オキシル化合物としては水溶性の安定ラジカルである2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンN−オキシル(以下TEMPOと称する)などが含まれる。N−オキシル化合物は触媒量で済み、例えば、多糖類の構成単糖のモル数に対して10ppm〜5%あれば充分であるが、0.05%〜3%が好ましい。
【0027】
この共酸化剤としては、ハロゲン、次亜ハロゲン酸,亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、目的の酸化反応を推進し得る酸化剤であれば、いずれの酸化剤も使用できる。
【0028】
本酸化反応は、前記N−オキシル化合物と、臭化物又はヨウ化物との共存下で行うのが有利である。臭化物又はヨウ化物としては、水中で解離してイオン化可能な化合物、例えば、臭化アルカリ金属やヨウ化アルカリ金属などが使用できる。
臭化物及び/又はヨウ化物の使用量は、酸化反応を促進できる範囲で選択でき、例えば、多糖類材料の構成単糖のモル数に対し0〜100%、好ましくは1〜50%である。
また、特にN−オキシル化合物にはTEMPOを用い、臭化ナトリウムの存在下、共酸化剤として次亜塩素酸ナトリウムを用いるのが好ましい。
【0029】
本発明の酸化反応条件などは特に限定されず、材料、及び使用する設備などによって最適化されるべきであるが、反応温度は室温以下で反応させると構成単糖の一級水酸基への酸化の選択性を上げ、副反応を抑えることができ、望ましい。
また、反応系のpHは、反応の効率の面から、pH9〜12の間で反応を行うことが望ましい。また、臭化物やヨウ化物との共存下で酸化反応を行うと、温和な条件下でも酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシル基の導入効率を大きく改善できるため、好ましい。
【0030】
上記酸化方法では、共酸化剤の量と、系内のpHを一定に保つために加えられるアルカリの量と、反応時間をコントロールすることで、酸化度(1級水酸基を変換して導入されるカルボキシル基量)をコントロールすることが可能である。
【0031】
本発明に用いられる多糖類材料としては、特に制限するものではないが、セルロース、再生セルロース、澱粉、キチン、キトサン、再生キチン、再生キトサン、微細化セルロース等が挙げられ、目的、用途に応じて様々なものを用いることができる。
【0032】
本発明において、多糖類材料としてセルロースやキチン等の結晶性の高い材料を用いる場合は、アルカリにより膨潤させたり、溶解−再生の処理を行うことで、均一に、選択性高く1級水酸基のみを酸化して、ポリウロン酸類を得ることができる。
【0033】
また本発明における微細化セルロースとは、物理的にセルロース繊維を微細化したもので、例えばミクロフィブリル化セルロースや結晶セルロースのコロイダルグレード等が好ましく用いられる。これらの酸化物は水溶性とはならないが、表面のセルロース分子がウロン酸化され、安定性の高い水分散体を得ることができる。
【0034】
酸化多糖類中のカルボキシル基量が、多糖類材料の構成単糖のモル数に対して60%以上(酸化度60%以上)まで酸化されると、水に対する溶解性が向上してくる。一方結晶性の微細化セルロース等の酸化においては、酸化度を60%以上に上げるには、反応条件を厳しくする必要があり、副反応の増加や、分子量低下を招き好ましくない。これらの材料においては、水不溶でも酸化度を10〜60%に調整することが好ましい。
【0035】
上記酸化反応により得られた酸化多糖類は、アルコール或いは水に可溶な有機溶剤で十分に洗浄し、必要に応じて乾燥工程を経て、所定濃度の水溶液或いは水分散液に調製される。
【0036】
こうして得られた、酸化多糖類材料の水溶液或いは水分散液は、CMCやMC等、従来の水溶性多糖類の水溶液に比べて低粘度であり、より高濃度で溶解させることが可能である。本発明の酸化多糖類材料の溶液粘度は、多糖類原料の重合度にもよるが、例えば重合度600の再生セルロースから得られた酸化度100%の酸化セルロースの5%水溶液では、25℃での粘度が3〜20mPa・sと低粘度であり、20%程度の水溶液まで調製することも可能である。
【0037】
本発明の酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料は、前記酸化多糖類材料の水溶液或いは水分散液を、公知の含浸或いはコーティング設備を用いて、ディッピングコートやロールコート、スプレーコート、ブレードコート、コンマコート、サイズプレス等公知の手法により、材料に被覆することが可能である。
【0038】
本発明の酸化多糖類材料を被覆又は含浸させるための材料は、特に制限するものではなく、用途に応じて適宜選択することができる。例えば、ガーゼなどの織布、不織布、スポンジ、紙材などのシートなどが挙げられる。これらは、天然セルロース或いは再生セルロース或いは酸化再生セルロース繊維等からなるものであってもよいし、セルロース系以外の材料からなるものであってもよい。酸化多糖類材料を含浸させる場合は、多孔質又は網目状質の材料が好ましい。
【0039】
本発明に用いられる酸化多糖類材料の水溶液或いは水分散液は、低粘度で、溶液濃度も高く設定できることから、含浸やコーティングの加工における加工性および効率を高めることができる。つまり、例えばセルロース織布基材に3kgの酸化多糖類材料をコーティングする場合、3%濃度の水溶液では100kgの液量を必要とするが、10%濃度であれば液量は30kgで済み、乾燥工程に要する熱量の大幅な低減、および加工速度の向上が可能である。また低粘度であるため、特に含浸加工において基材への浸透性が高く、加工速度は上がり、より均一な含浸物が得られる。
【0040】
本発明の酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料を、生体適合性材料として、医療用途に用いる場合は、医療用に利用可能な材料を用いるとともに、酸化多糖類を被覆後、適切な滅菌処理を施すことが望ましい。
【0041】
【実施例】
以下、本発明の実施例について詳細に説明するが本発明を限定するものではない。
【0042】
<実施例1>
TEMPO0.192g、臭化ナトリウム2.54gを200mlの水に溶解し冷却しておく。再生セルロース繊維ベンリーゼ(旭化成工業(株)製)の小片10gを200mlの水中に分散させ、前記TEMPO溶液と混合し、反応系を冷却し、次に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)100mlを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。6位の一級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、水:アルコール=2:8により十分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白色粉末の酸化セルロースを得た。
【0043】
得られた酸化セルロースから10%水溶液を調製した。酸化セルロースは完全に溶解し、25℃でB型粘度計にて測定した粘度は10〜15mPa・sであった。この溶液に日本薬局方ガーゼ3gを10秒間浸漬して、金網上に広げて風乾し、実施例1の酸化セルロース被覆ガーゼを得た。
【0044】
酸化セルロースの被覆状態は均一であり、重量増加から約1.5gの酸化セルロースが被覆されていた。
【0045】
<実施例2>
TEMPO0.192g、臭化ナトリウム2.54gを200mlの水に溶解し冷却しておく。でんぷん試料としてACS(ACROS社製)10gを200mlの水中に分散させ、60℃にて加熱溶解後、5℃まで冷却し、前記TEMPO溶液と混合し、次に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)100mlを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。6位の一級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、水:アルコール=2:8により十分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させ、白色粉末の酸化澱粉を得た。
【0046】
得られた酸化澱粉から10%水溶液を調製した。酸化澱粉は加熱することなく完全に溶解し、25℃でB型粘度計にて測定した粘度は7〜12mPa・sであった。この溶液に日本薬局方ガーゼ3gを10秒間浸漬して、金網上に広げて風乾し、実施例2の酸化澱粉被覆ガーゼを得た。
【0047】
酸化澱粉の被覆状態は均一であり、重量増加から約1.5gの酸化澱粉が被覆されていた。
【0048】
<実施例3>
キチン(和光純薬工業(株)製)10gを、45%水酸化ナトリウム水溶液150gに浸漬し、室温以下で2時間攪拌した。これに砕いた氷850gを少しずつ加え、容器の周囲を氷水で冷却しながら攪拌した。この処理によりキチンはほぼ溶解する。その後塩酸を加えて中和し、十分に水洗した後、乾燥させずに、この再生キチンを水200mlに懸濁した。TEMPO0.192g、臭化ナトリウム2.54gを200mlの水に溶解した水溶液を加え、反応系を冷却し、次に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)90mlを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。6位の一級水酸基の全モル数に対し、100%のモル数に対応するアルカリ添加量に達した時点で、エタノールを添加し、反応を停止させ、水:アルコール=2:8により十分洗浄した後、アセトンで脱水し、40℃で減圧乾燥させて、白色粉末の酸化キチンを得た。
【0049】
得られた酸化キチンから10%水溶液を調製した。酸化キチンは完全に溶解し、25℃でB型粘度計にて測定した粘度は50〜70mPa・sであった。この溶液に日本薬局方ガーゼ3gを10秒間浸漬して、金網上に広げて風乾し、実施例3の酸化キチン被覆ガーゼを得た。
【0050】
酸化キチンの被覆状態は均一であり、重量増加から約1.6gの酸化キチンが被覆されていた。
【0051】
<実施例4>
市販のペースト状微結晶セルロース セオラスクリームFP−03(旭化成工業(株)製)の絶乾重量10g分に、TEMPO0.125g、臭化ナトリウム1.25gを200mlの水に溶解し冷却しておいた水溶液を添加し、反応系を冷却して、次に次亜塩素酸ナトリウム水溶液(Cl=5%)100mlを添加し、酸化反応を開始する。反応温度は常に5℃に維持した。反応中は系内のpHが低下するが、0.5N−NaOH水溶液を逐次添加し、pH10.8付近に調整した。1日後にエタノールを添加して反応を停止し、水或いはアルコールにて十分洗浄し、最終的に10%濃度の酸化セルロース水分散液に調製した。ここで酸化反応中に添加されたアルカリの量は、グルコース単位の6位の一級水酸基の全モル数に対し、100%であった。
【0052】
この溶液に日本薬局方ガーゼ3gを10秒間浸漬して、金網上に広げて風乾し、実施例4の酸化セルロース被覆ガーゼを得た。
【0053】
酸化セルロースの被覆状態は均一であり、重量増加から約1.2gの酸化セルロースが被覆されていた。
【0054】
この酸化セルロースの酸化度を、以下のIR分析による方法で求めたところ、その酸化度は約50%であった。
【0055】
十分に乾燥した試料を用いて、KBr法によりIR分析を行った。試料中の水酸基に由来する3350cm−1付近の吸光度と、カルボキシルアニオンに由来する1620cm−1付近の吸光度比から、酸化度を求めた。この際、未酸化の乾燥セルロース試料と実施例1で作成した酸化度100%の乾燥酸化セルロース試料を所定の混合比で混合して同様にIR分析を行い、100%酸化セルロースの含有率と上記吸光度比から検量線を作成した。100%酸化セルロース含率をもって、上記酸化セルロースの酸化度とした。
【0056】
<比較例1>
置換度が0.6〜0.7のCMC セロゲンPR(第一工業製薬(株)製)5gを、水95gに懸濁した。完全には溶解せず、粘調な液体となった。これに日本薬局方ガーゼ3gを10秒間浸漬して、金網上に広げて風乾し、比較例1のCMC被覆ガーゼを得たが、CMCの被覆状態にはムラがあり、不均一なものであった。
【0057】
<比較例2>
置換度が0.6〜0.7のCMC セロゲンPR(第一工業製薬(株)製)2gを、水98gに溶解し、2%水溶液を得た。溶液の粘度を25℃にてB型粘度計で測定したところ100〜110mPa・sであった。これに日本薬局方ガーゼ3gを10秒間浸漬して、金網上に広げて風乾し、比較例2のCMC被覆ガーゼを得た。
【0058】
CMCの被覆状態はおよそ均一であったが、重量増加から計算した被覆されたCMC量は約0.1gと少なかった。
【0059】
【発明の効果】
本発明の酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料は、被覆又は含浸されている酸化多糖類の化学構造が均一であり、完全に代謝されるウロン酸構造を有するため、生体に対する安全性が高い。またその酸化反応も水系で温和な条件下で行われ、二酸化窒素による酸化方法に比べて安全性が高いと言える。
【0060】
さらに本発明における酸化多糖類は、水に対する溶解性が高く、溶液粘度も低いことから、材料に対して含浸やコーティング加工を行う際の加工性が良く、均一で良好な酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料が得られる。さらに、溶液濃度を高く設定できることから、乾燥熱量の低減、加工速度の向上による、加工コストの削減にも繋がる。
【0061】
またさらに、保湿性や生体適合性に優れるヒアルロン酸やコンドロイチン等の生体由来材料の化学構造は、グルクロン酸とN−アセチルグルコサミンの共重合構造を成しているが、本発明における酸化キチン及び酸化キトサンの化学構造はN−アセチルグルコサミン或いはグルコサミンのC6位にカルボキシル基が導入された構造であり、化学構造が類似しており、同様の機能を発現することも期待できる。本発明の酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料、特に酸化キチン及び酸化キトサンの被覆材料は、生体適合性材料としての可能性が大きく、未確認ではあるが、生理活性等を有することにも期待が持たれる。

Claims (2)

  1. 酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料の製造方法であって、
    セルロース、再生セルロース、微細化セルロースから選ばれる多糖類材料を水中にてN−オキシル化合物の存在下で酸化処理することにより、前記多糖類材料の分子の還元末端またはピラノース環の第6位のみを選択的に酸化してカルボキシル基とした水溶性のウロン酸構造を有する水溶性あるいは水分散性の酸化多糖類材料を得る工程と、
    前記酸化多糖類材料を水溶液もしくは水分散液とする工程と、
    該酸化多糖類材料を含む水溶液もしくは水分散液を材料に含浸あるいは塗布する工程と
    を備え、かつ、
    前記酸化多糖類材料を被覆または含浸させるための材料が天然セルロース、再生セルロース、或いは酸化再生セルロースからなる
    ことを特徴とする酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料の製造方法。
  2. 前記酸化多糖類材料の水溶液もしくは水分散液のB型粘度計で測定される25℃での粘度が、7〜70mPa・sであることを特徴とする請求項1記載の酸化多糖類材料を被覆又は含浸させた材料の製造方法。
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