JP4844179B2 - 磁気データ処理装置、方法及びプログラム - Google Patents
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Description
特許文献1には、磁気データ群の分布が平面的であっても、オフセットを補正できるアルゴリズムが開示されている。しかし、特許文献1に記載されたアルゴリズムに従うプログラムは複雑になるため、実装が容易ではない。
旧オフセットc0は、新オフセットcと同様の方法で導出されるものでもよいし、予め決められているものでもよい。
この装置によると、分散に対する連続的な対応関係が重み係数にあるため、母集団データ群の実質的利用率を向上させることができる。またこの装置によると、母集団データ群の分布に応じて処理を変更せずに新オフセットを導出可能であるため、オフセットの更新処理が簡素にすることができる。
尚、母集団磁気データ群の分布の主値の比以外に分布の評価指標を導入する場合には、最大の重み係数を1として各重み係数を正規化する必要はない。例えば、母集団磁気データ群に基づいてその母集団磁気データ群の分布がその一部に近似している球面として導出される球面の半径に対する、最大の主値に対応する主軸方向(すなわち主方向)についての磁気データ間の最大距離の比に応じて最大の重み係数を1未満にすることもできる。
この装置によると、母集団データ群の分布に関わらず、その母集団データ群から導出できる最も確からしい新オフセットを簡素な処理で導出することが可能である。
A.第一の実施形態
[1.全体説明]
1−1.ハードウェア構成
1−2.ソフトウェア構成
[2.処理の流れ]
2−1.全体の流れ
2−2.バッファ更新
2−3.分布の評価
2−4.最適化問題による新オフセットの導出
2−5.分布が平面的である場合の制約条件
2−6.分布がやや直線的である場合の制約条件
2−7.分布が立体的である場合の新オフセットの導出
2−8.まとめ
B.第二の実施形態
・概要
・分布の評価
・新オフセットの導出
C.他の実施形態
1−1.ハードウェア構成
図2は、本発明が適用される移動体の一例である携帯型電話機3の外観を示す模式図である。携帯型電話機3には3次元磁気センサ4が搭載されている。3次元磁気センサは互いに直交するx、y、zの3方向について磁界の強さを検出することによって磁界の方向及び強さを検出する。携帯型電話機3のディスプレイ2には、文字や画像の各種情報が表示される。例えば、ディスプレイ2には、地図と、方位を示す矢印や文字が表示される。
図4は、磁気データ処理プログラム90の構成を示すブロック図である。磁気データ処理プログラム90は、ナビゲーションプログラム98に方位データを提供するためのプログラムであって、ROM42に格納されている。方位データは地磁気の方向を示す2次元ベクトルデータである。尚、方位データは例えば移動体の姿勢認識のための3次元ベクトルデータとして他のアプリケーションプログラムに提供されてもよい。磁気データ処理プログラム90は、バッファ管理モジュール92、オフセット導出モジュール94、方位導出モジュール96等のモジュール群で構成されている。
2−1.全体の流れ
図5は、新オフセットを導出する処理の流れを示すフローチャートである。図5に示す処理は、オフセットの更新要求が発生したときにCPU40がオフセット導出モジュール94を実行することによって進行する。
ステップS100では、新オフセットの導出に用いられる磁気データ群(母集団データ群)を蓄積するためのバッファに蓄積されている全ての磁気データが消去される。すなわちこのとき、旧オフセットの導出に用いられた母集団データ群が消去される。
ステップS102では、新オフセットの導出に用いられる磁気データが入力されバッファへ格納される。携帯型電話機3の姿勢がほとんど変化していない状況において、短い時間間隔で順次磁気センサ4から磁気データを入力すると、連続入力される2つの磁気データ間の距離が近くなる。距離が互いに近い複数の磁気データが限られた容量のバッファに格納されることは、メモリ資源の浪費であるし、無駄なバッファの更新処理を発生させる。また、互いの距離が近い磁気データ群に基づいて新オフセットを導出すると、偏った分布を持つ母集団データ群に基づいて精度の低い新オフセットが導出される可能性がある。そこで、バッファの更新必要性が次のように判定されてもよい。例えば、直前にバッファに格納された磁気データと最後に入力された磁気データとの距離があるしきい値より小さければ、バッファの更新必要性がないと判定され、最後に入力された磁気データはバッファに格納されることなく破棄される。
規定個数の磁気データがバッファに蓄積されると、母集団データ群の分布が評価される(ステップS106、ステップS108)。分布は、分布の主値に基づいて評価される。
磁気データ群を次式(1)で表すとき、
qi=(qix,qiy,qiz) (i=0,1,2・・・)・・・(1)
分布の主値は、母集団データ群の重心(平均)を始点とし各磁気データを終点とするベクトルの和を用いて式(2)、(3)、(4)で定義される対称行列Aの固有値である。
母集団データ群の分布は、最大固有値に対する最小固有値の比であるλ3/λ1と、最大固有値に対する中間固有値の比であるλ2/λ1とに基づいて評価される。
λ3/λ1>t1 かつ λ2/λ1>t2・・・(6)
t1、t2は、予め決められている定数である。t1、t2の値をどのように設定するかは設計事項であり、オフセットの導出特性をどのように定めるかによって任意に設定することができる。式(6)が満たされる場合、母集団データ群の重心から等方的に母集団データ群が分布していることになる。母集団データ群の重心から等方的に母集団データ群が分布していることは、特定の球面近傍に満遍なく母集団データ群が分布していることを意味する。
λ3/λ1≦t1 かつ λ2/λ1>t2・・・(7)
式(7)が満たされる場合、特定の平面近傍に限定した範囲内では、母集団データ群の重心から等方的に母集団データ群が分布していることになる。特定の平面近傍に限定した範囲内において、母集団データ群の重心から等方的に母集団データ群が分布していることは、特定の球面の断面円の円周近傍に偏って母集団データ群が分布していることを意味する。
ここで新オフセットを導出するための最適化問題について説明する。
母集団データ群が同一平面上にない4つの磁気データで構成されている場合、母集団データ群が分布する球面は統計的手法を用いることなく一意に特定される。この球面の中心の位置ベクトルc=(cx、cy、cz)は連立方程式(8)を解くことによって得られる。尚、3変数に対して等号制約が4つあるが、等号制約の1つは冗長になっているため方程式(8)は必ず解を持つ。
Xc=j・・・(11)
e=Xc−j・・・(12)
図6に示すように母集団データ群の分布が平面的である場合、旧オフセットに対する補正方向を互いに直交する2方向に制限して新オフセットが導出される(ステップS112)。母集団データ群がある特定の平面近傍に分布し、その平面の法線方向から見て離散的に分布している場合、その平面と平行な方向については母集団データ群を十分信頼できる一方でその平面の法線方向については母集団データ群を信頼できないことになる。このような場合には、その平面の法線方向については旧オフセットを補正しないことにより、信頼に値しない情報に基づいてオフセットが更新されることを防止できる。
c=c0+β1u1+β2u2(β1、β2は実数)・・・(14)
式(14)は次式(15)と等価である。
図7に示すように母集団データ群の分布がやや直線的である場合、旧オフセットに対する補正方向を分布の主方向に制限して新オフセットが導出される(ステップS110)。母集団データ群がある特定の直線近傍に分布し、その直線方向には離散的に分布している場合、その直線の方向については母集団データ群を十分信頼でき、それ以外の方向については母集団データ群を信頼できないことになる。このような場合には、その直線の方向以外の方向については旧オフセットを補正しないことにより、信頼に値しない情報に基づいてオフセットが更新されることを防止できる。
分布が立体的である場合、旧オフセットに対する補正方向を制限することなく新オフセットが導出される(ステップS114)。分布が立体的である場合、すなわち、母集団データ群の重心からみてある程度全方位的に母集団データ群が分布している場合、母集団データ群は全方向について十分信頼できる。したがって、このような場合には、新オフセットを導出するために必ずしも旧オフセットを用いる必要が無く、旧オフセットを用いることなく母集団データ群に基づいて新オフセットを導出することもできる。旧オフセットを用いることなく母集団データ群に基づいて新オフセットを導出するアルゴリズムは、種々提案されており、統計的手法を用いるアルゴリズムであってよいし、本件出願人によって既に出願されている特願2005−337412及び特願2006−44289に開示されているように統計的手法を用いないアルゴリズムであってもよい。
本実施形態では、統計的手法により新オフセットが導出される。すなわち、ステップS114では、式(13)の目的関数を制約条件無しで最小にする最適化問題の解として新オフセットcが導出される。
ここで図1、6、7に基づいて、ステップS110、S112、S114の処理を空間的な概念を用いて説明する。母集団データ群を完全に信頼できるものとすれば、旧オフセットc0に対する、母集団データ群のみから導出される球面の中心の位置ベクトルgと、旧オフセットc0との和として新オフセットcを考えることにより、新オフセットcは次式(26)によって定義される。
c=c0+g・・・(26)
・概要
第一の実施形態では、母集団データ群の分布を離散的に評価し、分布が平面的である場合には主値が最小になる主軸方向の成分について補正ベクトルfを0とし、分布が直線的である場合には主値が中間値と最小値になる2つの主軸方向の成分について補正ベクトルfを0として新オフセットcを導出した。第二の実施形態では、第一の実施形態のように分布の評価に応じて異なる処理を実行する必要がなく、また母集団データ群を効率よく用いてより確からしい新オフセットを導出できる、簡素かつ高精度なアルゴリズムが説明される。
ステップS206では、母集団データ群の分布指標が導出される。すなわち、次式(27)、(28)によって定義するm2、m3を分布指標として導出することにより、母集団データ群の分布が連続的な値として評価される。
0≦m2<1 かつ 0≦m3≦1・・・(29)
最適化問題の解を特定の制約条件の下で導出することが困難である場合、その制約条件を緩めて最適化問題を解くことに相当する緩和問題が導入されることがある。本実施形態では、このような緩和問題を応用することにより、母集団データ群の分布の主値の比に連続的に対応する重み係数によって前述した位置ベクトルg(図1参照)の係数gα、gβ、gγを重み付けして得られる補正ベクトルfと、旧オフセットc0との和として新オフセットcを導出する処理が実現される。具体的には次の通りである。
Bx=b・・・(36)
連立方程式(36)の解を求めることは、母集団データ群の分布の主値の比に連続的に対応している重み係数fα/gα、fβ/gβ、fγ/gγによって、各主値に対応する分布の主軸方向の位置ベクトルgの係数を重み付けした値を各成分とする補正ベクトルfと旧オフセットC0との和として新オフセットを求めることを制約条件として、式(13)の目的関数を最小にする最適化問題を解くことと等価である。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の形態で実施可能である。例えば、本発明がPDAに搭載される磁気センサや車両に搭載される磁気センサにも適用できることは当然である。
Claims (7)
- 3次元磁気センサから出力される磁気データを順次入力する入力手段と、
複数の前記磁気データを母集団データ群として蓄える蓄積手段と、
予め設定されている前記磁気データの旧オフセットと前記母集団データ群とに基づいて前記磁気データの新オフセットを導出するオフセット導出手段であって、前記母集団データ群の分散が小さな主軸方向の成分よりも分散が大きな主軸方向の成分を重く重み付けしつつ前記新オフセットを導出するオフセット導出手段と、
を備える磁気データ処理装置。 - 前記オフセット導出手段は、前記母集団データ群の分散が小さな主軸方向の成分よりも分散が大きな主軸方向の成分を重く重み付けしつつ前記母集団データ群を用いて係数が定まるベクトルを補正ベクトルとするとき、前記旧オフセットと前記補正ベクトルの和として前記新オフセットを導出する、
請求項1に記載の磁気データ処理装置。 - 前記補正ベクトルは、前記旧オフセットを始点とし前記母集団データ群の重心を終点とするベクトルの基本ベクトル群の各係数を、前記母集団データ群の分布の固有値に応じて重み付けした値を係数とする前記基本ベクトル群の一次結合である、
請求項2に記載の磁気データ処理装置。 - 前記基本ベクトル群の方向は、前記母集団データ群の分布の主軸方向である、
請求項3に記載の磁気データ処理装置。 - 3次元磁気センサから出力される磁気データを順次入力する入力手段と、
複数の前記磁気データを母集団データ群として蓄える蓄積手段と、
前記母集団データ群の分布の主値を表す固有値に基づいて前記磁気データのオフセット更新アルゴリズムを選択しながら前記磁気データのオフセットの更新を繰り返すオフセット更新手段と、
を備える磁気データ処理装置。 - 前記オフセット更新手段は、前記母集団データ群の分布の主値を表す固有値に基づいて前記母集団データ群が平面的に分布しているか否かを判定し、判定結果に基づいて前記磁気データのオフセット更新アルゴリズムを選択する、
請求項5に記載の磁気データ処理装置。 - 前記オフセット更新手段は、前記母集団データ群の分布の主値を表す固有値に基づいて前記母集団データ群が直線的に分布しているか否かを判定し、判定結果に基づいて前記磁気データのオフセット更新アルゴリズムを選択する、
請求項5に記載の磁気データ処理装置。
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